シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2020>飴色ベリル
オープニング
●
アルパイン・ブルーの空は何処までも高く広がって。
手を伸ばしても届かない青と凍える寒さが身に染みる。
こんな日は誰かと一緒に居たい。
たとえば。寄り添って、指先から感じる温もりを掴んでいたい。
鼻先を赤くして、相手の事を想いながら待っていたい。
遠くに見える相手の笑顔に少しだけ涙がにじんでしまっても。
小さな手が期待にみちた瞳が。
頭を撫でてくれるのを待っている。
こんな日は誰かを想って居たい。
蕩けるチョコレイトに四苦八苦しながら。
甘いココアを飲みながら。
少しだけほろ苦い思い出に浸っても構わない。
だって、灰色の王冠は誰かのための、想いだから――
●
「今日はグラオ・クローネ。大切な人に贈り物を届ける日ですね」
ぱちりとアクアマリンの瞳で瞬きをした『彩光』ベリル・トラピチェはふわりと微笑んだ。
療養の為に幻想国首都メフ・メフィートにやってきたベリルは、自国とはまた違った風情を楽しんでいるようだった。
この時期にはチョコレイトの甘い香りが何処からか漂ってくる。
ルミネル広場のホットチョコは行列が出来るほど賑わっているし、ラドクリフ通りの洋菓子店は期間限定のチョコケーキが販売されているらしい。
シルバプラッツ通りのショコラティエでは洗練されたショコラが綺麗に並んでいた。
「このルミネル広場のホットチョコ、私もさっき飲みました。待ち合わせしていたのですが、かなり早く着いてしまって……」
ベンチに座ったベリルは隣へどうぞと誘う。
「この国は良いですね。強いとか弱いとか関係なく、言いたい事を言い合える自由がここにはあって。泣きたい時に泣けて、笑いたいときに笑える。ありのままの自分で居ることが出来る」
貴族として鉄帝軍人としてレールの上を歩いてきたベリルにとって、ありのままの自分でいることは有ってはならない事だったから。
療養という形ではあれ、比較的自由に国外へ出ることが出来たのは初めてだったのだ。
街がこんなに賑わっているのを知った。
いろんな人の声が耳に入っていくのに。どれも楽しげで。
時には喧嘩もあるようだけれど。それでも、人々は自由に生きている。
「私もこの国に居る間は、少しだけ自由にしてみようと思います」
頬を赤らめて。まるで少女のように笑うベリル。
「あ、友達が来たみたいです。じゃあ、またどこかで」
去り際にコロンと掌に落としていったチョコレイトの包みには、可愛らしいビクスバイトのリボンがついていた。
- <グラオ・クローネ2020>飴色ベリル完了
- GM名もみじ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年03月07日 22時05分
- 参加人数31/30人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 31 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(31人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
飴色のタイルが陽光を優しく反射している。
広場は活気づき、何処からともなく甘い香りが漂っていた。
ローレットの入口でチョコを配るのはメリー。
快活な笑顔で可愛い包みを手渡ししている。
「はい! ホワイトデーのお返しは古代金貨でヨロシク!」
「えっと」
メリーの勢いに通りかかったベリルは瞳を丸くしながら受け取って。
それを雪之丞が微笑ましく見守る。
歩き疲れたら広場のカフェで一息ついた二人。
「グラオ・クローネですから」
そっと差し出したのは、緑のリボンで飾られた小包。
「大切な友人へ」
親愛を込めて。手の中のチョコに、ふわりとベリルの笑顔が花開く。
屈託の無い笑顔を見ると小さい子供みたいで。自然と手が頭の上に乗ってしまう。
「私からも」
ビクスバイトのリボン。甘いチョコレイト。口の中に転がせば甘くて顔が綻んだ。
「ベリルに困ったことがあれば、また駆けつけますから」
お礼はいつもの喫茶店で。いつものお茶を。
友人が抱えるものを肩代わりは出来ないけれど。
それでも、居場所になれるなら。
雪之丞は灰王冠の日に願った――
あたたかい小さなお家。
ラノールとエーリカと。ブラウニーと精霊達の住まう家。
物陰に潜んで座りながら取る睡眠とは違う。安心していられる場所。
深い眠りでベッドに沈むラノールはエーリカの温もりが離れた事に気づかない。
朝日がラノールを照らし、ドアが開く音に振り向けば。
「……あ、あのね」
遠慮がちにエーリカが差し出す包み。
ラノールの瞳と同じ色のリボンに、ハートの形をしたフォンダン・ショコラ。
「おぉ!」
寝ぼけ眼もすっかりと覚めて、ラノールの胸に広がるのは少女からの『あい』だ。
その甘さに込められた想いは『とろけるようなあいを』。
照れ屋な少女は彼の薬指に嵌まる光に小さく触れた。
「ふふ、ありがとう、エーリカ」
少女の耳は熱に染まり。
青年は愛しき人の柔らかい頬に手を伸ばして引き寄せる。
ちょっぴり意地悪な獣の瞳をしたラノールの温もり。
しっとりと蕩けるチョコレイトの味は。
彼女の唇にあって。
酷く甘く。
オペラ・モーブに頬は染まり。
アニーの手には、丁寧に作り上げられたチョコがある。
「手作りのチョコなんて渡したら零くんビックリするかなぁ」
まだ、ほんのり冷たい風が少女の髪を浚った。
好きと伝えれば、何と応えるだろう。
いつもの照れたような顔で喜んでくれるだろうか。
心は一歩踏み出す毎に高鳴っていく。
けれど、残酷な神様は確かに居て。
彼の隣に立つ知らない女の子。手渡されるチョコ。
それを見た瞬間、心臓が跳ねた。
喉元を鷲づかみにされたような感覚に涙が溢れる。
彼が振り向く。視線が――合う前にアニーは走り出した。
だって、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
嬉しそうにチョコを受け取る彼の笑顔に向き合えない。
――私の恋は終わってしまったんだ。
走り去ったアニーの落としたチョコはガラスの靴。
見つけ出すまで想い残る煌めきの涙。
零は女の子に礼をして視線を上げる。
アニーからのチョコを、こんな形で受け取るわけにはいかない。
だから、待っていてほしい。
必ず見つけ出すから。
少年は青空に駆け出した――
ボロボロの指先と絆創膏。
レイチェルを自身の研究所に招き入れたシグは、恋人の傷にこっそりと苦笑いを浮かべる。
料理を振る舞いレイチェルの挙動を観察するシグ。
金銀妖眼の麗しき吸血鬼は、そわそわと落ち着かない様子でソファに座っていた。
「どうしたのかね?」
「な、何でも、ない……」
足下に置かれた鞄に視線を落とした彼女の頬は赤く染まり。
いよいよもって、愛らしさが湧き上がる。
くつくつと笑い出すシグにレイチェルは眉を吊り上げて頬を膨らませた。
「と言うか! 絶対に分かっててやってるだろ、シグ!」
「勿論だとも」
恋人を逃がさない様にソファへ手を付いたシグ。
「……チョコ、作ってきた」
観念したレイチェルから差し出される包み。箱の中身は不格好な生チョコが並んでいる。
シグは彼女の耳元で感謝を囁く。
「ありがとう。嬉しいさ」
耳朶から伝わる吐息にレイチェルの胸は高鳴って。
今日はグラオ・クローネだから。
少しばかりの期待を胸にヨハンは待ち合わせのルミネル広場に向かう。
視線を上げれば、プラチナブロンドの髪が風に揺れていた。
少し寒そうに身を震わす少女の姿。
「ぼ、ぼく遅刻してませんよね! あわわわミーちゃんごめんなさ~~い!!」
「ヨハンくん!」
駆け寄ってくるミーティアは鼻を赤くしている。
結構な時間この場所で風に吹かれていたに違いない。
「急に呼び出してごめんなさい。それで……」
差し出されたチョコレイト。
ライトブルーのリボンはヨハンの色彩に似せてある。
「あの……今日、お世話になってる人にチョコを渡す日だから」
チョコを受け取って、ヨハンは頬を染める。
「あ、あー……! ともだち! 友チョコですね!」
「そう、これは友チョコ……っ!」
包みを開けてヨハンがパクリと頬張る。
「……んむ、これは手作りです? ふふ、美味しいです」
「よかった」
自分が作ったチョコを頬張るヨハンに。ミーティアの体温が灯り。
「よっ、ラビ。元気か?」
散歩の街角で、ウィリアムはラビに手を上げた。
灰王冠の日。誰かに贈り物をしたのかと青年が問えば、少女は小さく首を振る。
「ウィリアムさんは?」
「俺は……考えてなかったな」
目を細めて空を見上げるウィリアムはポケットから「ほら」と小さな包みを取り出した。
「暇つぶしに作ったんだ。自分用……」
折角だからやると微笑めば、ラビは嬉しそうに笑う。
「まあ、今日会った縁と……そこそこ話す仲だし、ってことで」
ビターチョコレイト。甘くない灰王冠。
ラビの好みはどうだろうと、ウィリアムは少女の顔を覗き込んだ。
ちらつく雪が景色を彩る。
蛍と珠緒はお洒落なカフェで人心地。
暖かいコーヒーから湯気が立ち、チョコの甘い香りが二人を包んだ。
灰王冠の日は特別な時間。
「その……今日を一緒に過ごしてくれて、ありがとう」
夢にまで見たひととき。愛する人と二人で過ごすグラオ・クローネ。
蛍は瞳を潤ませて珠緒を見つめる。
「ふふ、それでは、夢が叶ったお祝いをしましょうね」
広げられたチョコを一粒。蛍の唇へ。
「えっ」
それの意味を理解して蛍の頬が赤く染まる。
「あ、あーん」
窓ガラスに写る自分たちの姿に照れる蛍。
「お味はいかがですか?」
珠緒の言葉に今まで食べたどんなチョコよりも甘く美味しいのだと少女は微笑んだ。
だって、愛しい人と時間を共にしているのだから。
「本当よ?」
「なんと、そんなにも……さすがに盛り過ぎでは?」
コロコロと笑う珠緒の口元にチョコが差し出される。
そんなに言うなら試してみてと蛍の瞳が語る。
「お口を開けて……あーん」
珠緒は微笑みながら愛しき人のチョコを頬張った。
●
「よし……!」
メイメイはエプロンと三角巾を締めてレシピとにらめっこ。
今年は棒のついたロリポップチョコ。
型の中に可愛い羊の顔を描くため。少しずつチョコを重ねる。
(あっ、これは……っ)
謎の生き物になったチョコはつまみ食い。
少しずつ上手くなって。
喜んで貰えるといいなと、優しい想いで紡いでいく。
ありがとうを伝えるために。
二人きりを期待した灰王冠のチョコケーキ作り。
けれど、イーリンは洋菓子店の料理教室を予約していて。
ウィズィは少しお気に召さない。失敗しても構わないのにと指先で相手の肘をつつく。
お揃いのエプロンに身を包み。
半分このデコレーション。
ポニテ姿のイーリンはウィズィの前だと緊張してしまうようで。
「……ちょっと、真ん中はみ出てるわよ」
「なーに、イーリンだって超はみ出てるじゃん!」
ぐるぐると不器用に引かれたクリームは領域を侵犯していて。
「しょ、しょうがないじゃない上手く絞れなかったんだから……!」
「強引なんだから、もうっ」
からかう言葉と反応の応酬。
小さくは無い声でじゃれ合う二人に店員も微笑ましく見守っている。
あたたかな空気に。二人きりじゃなくても。こういうのも悪くないとウィズィは思った。
出来上がったチョコケーキに満足気に表情を緩めるイーリン。
「た、食べる時は帰ってから二人でよ」
そっぽを向いた恋人に寄り添って、甘い時間を過ごすのも楽しみだと囁いた。
カドー・デュ・ソレイユのキッチンに佇む二人。
クロバの隣に立つシフォリィは苛烈に闘志を燃やしていた。
「――これは打倒クロバさんのチョコを目指して作るんです!」
「って、対抗意識バリバリだね君……」
だってズルいではないか。
味覚の無いクロバの作るチョコの方が自分で作るよりも美味しいだなんて。
シフォリィだって料理の腕前はそれなりであるはずなのに。
恋人に贈るものは愛を込めてさえいればいいなんて。そういう問題ではないのだ。
贈るのであればより美味しいものを。例えばお肉の一番美味しい部分をあげるような。そんな。
「でも、いくらやっても超えられないんです! いったいどんな手品なんですか!」
「んー。まあ。妹が喜んで食べてくれたからついつい研究に熱が入ったというか……」
クロバ自身も甘い物は好きだったから。
好きな人の為にどこまで頑張れたか。ただ、それだけのこと。
青年は手にしたフルーツを慣れた手つきで剥いていく。
「まぁなんだ――誰よりも好きな君の為に」
手品を尽くそうじゃないか。
●
あたたかなリビングのソファ。
今の季節のカバーはチョコレイト色。
お揃いのマグカップに入ったホットチョコはポテトの手作り。
リゲルの舌に広がるのは甘さを控えたビター。彼の好みに合わせたものだ。
窓の外は雪がちらついている。
けれど、リゲルの掛けてくれた毛布があれば寒さなんて感じない。
触れあった部分から相手の温もりが伝わって。
幸せだと胸が満たされる。
見上げた視線の先。シリウス・ブルーの色合いに自分の姿が映り込む。
「綺麗な瞳だね」
なんて真面目な顔していうものだから。照れ隠しにぺしぺしと胸を叩いた。
赤くなったポテトの頬。ミルクティー色の髪を撫でる。
何気ない時間。幸せの詰まったあたたかさ。
リゲルが天義で暮らしていた頃には感じたことの無かった、ぬくもり。
それは腕の中の彼女が居るから。
「君とめぐる世界は、暖かくて、色彩に満ちていそうだ」
色々な世界の四季を。共に感じたい。
「あぁ。これから先も――」
二人で歩いて行こう。
抱きしめた温もりと唇を重ね。
チョコレートリキュールを手にルーキスはカクテルを作り上げる。
「たまにはこういう変わり種も如何?」
「おー?珍しい、チョコ系のお酒かー……」
テーブルの上にはジェントルマンズショコラとチョコレートマティーニ。
甘いチョコレートリキュールの中にほろ苦さが織り込まれた大人の味わい。
ルナールはショットグラスを傾ける。
「こういうのも悪くないよな、俺は甘味も酒も好きだし丁度いい」
赤金の瞳を細めて微笑む青年。
前回はルナールが用意したケーキを貰ったから。今年はルーキスが振る舞う番だ。
青年のおかわりの声に。ルーキスも微笑む。
「おにーさんも気に入った? 飲みすぎて潰れないようにね」
「うむ、流石ルーキスの手製。美味いし気に入ったー」
次々と舌を擽るチョコレートリキュール。
ルナールの肩にそっと頭を預けるルーキス。
指先は彼の手に絡み。
「今年もよろしくね」
彼女の少し赤くなった頬。握り返す掌はしっとりとしていて。
今年だけなんて言わずに。来年も。
この先だって。一緒に居たいと願うのだ。
シラスは目の前に差し出されたケーキに心高鳴る。
だって、今日は灰王冠の日。少しぐらい甘えたって許されるだろうと。
「えっ、食べさせて欲しい……?」
アレクシアの蒼穹の瞳が瞬き。眉を下げて破顔する。
「……うーん、しょうがないなあ、こんな日だしね!」
食べやすい大きさにケーキを掬ってシラスの口元に差し出す。
緊張で指先が震えるけど、目を瞑った彼には見えていない。
「はい、どうぞ」
アレクシアの声と共にチョコの香りととびきりの甘さが口の中に広がる。
「どうかな? 美味しいかな?」
恥ずかしさを紛らわすようにこくこくと頷くシラス。
「ねね、もう1回! 緊張し過ぎて味がっ!」
こんな嘘だってバレバレなのに。嬉しくて。顔がにやけてしまう。
「そういえば、去年も一緒にケーキ食べたよね」
思い返し、飲み下した気持ちを噛みしめる。
割り切れない想い。幻想種と人間種の命の長さ。
胸が締め付けられる。
シラスは堪えきれない心地でアレクシアの手を握った。
頑張って。また、笑って。
感謝と大好きを伝えるために――
ルミネル広場で舞姫が花咲く。
弥恵のしなやかな身体が道行く人を魅了する。
白のレオタードに煌めくドレス。
紡がれる歌は大切な人の元へ駆ける勇気をくれる魔法。
祝福の舞は落ちる涙を掬い上げた。
その涙はいつか糧となり、思い出となる日が来る。
だから、大丈夫だと背中を押した。
華やかな曲と共に流れる弥恵の流線。
艶やかな黒髪が陽光にキラキラときらめいて。
流麗なる舞姫は誰かのために祈り踊った――
白塗りの窓の外。
雪の如く軽やかな少女が金の髪を揺らす。
左目を隠した冬の娘。
可愛い可愛い愛し子。
お裾分けだと手にした包みを差し出されれば、ほんのり苦く笑ってしまう。
期待した訳では無い。
幼子の愛情を一身に受けたいと駄々を捏ねる程、人間を止めた心算もない。
「おじいさんにも、おばあさんにも、きちんと同じものをお渡ししていますよ」
鈴の様な声で小首を傾げる少女。
少女の心の内。込めた想いは未だ、形容し難く。言葉も曖昧で。
けれど、不思議なことに。此処に足が赴いてしまったのだから。
胸を擽るこれは。悪い物ではないのだと感じる。
「今日は……」
柄にも無くへなちょこさんもキッチンに立ってみた。
成形に失敗したそれを。ホットチョコに溶かして。
中身が何だったかなんて詮索しない方が良いのだろう。
「どんな形であれ」
気持ちを貰えたのなら。空っぽだった少女には過ぎたるものだと儚く紡ぐ。
「読んでいくかい」
誘う手に招かれる指先。
グラオ・クローネの話は酷く冬の少女を彷彿とさせる。
君にとっての大樹は何処にいるのだろう。
これは、ヘーゼルとアッシュの灰王冠の物語。
円い窓の外は蒼穹が広がり、雪がちらつく。
視線を相手に向ければ濃い疲れと首の痣。
その理由を聞くことは出来ないけれど。
「……ま、ひょっとしたら趣味じゃねぇかもしれんが」
十夜から手渡されるオルゴール。和の意匠。三日月が彫ってあり。
奏でる音色は寂し気で儚い。伏せられる睫毛に言葉が乗った。
「人にもの渡す時は……そないな言い方したら損やの」
こんなに綺麗な音色を趣味じゃないと渡すなんて。
十夜らしいと蜻蛉は瞳を上げる。
「……おおきに。今度はうちの番」
言われるまま腕を差し出せば、陽光に蒼色が光った。
三日月の石がついた水晶の数珠。三日月がいつも貴方を照らしてくれますように。
蜻蛉がぽんぽんと膝を叩けば。いつかの勝負を思い出す。
細い指先触れて。
約束を交す。
首の痣を指して笑う。『――絶望の青に勝ったら』なんて。
絶対に勝つと言ってくれない。臆病な十夜に。
何も言わず、瞳を閉じて頷く蜻蛉。
手首に嵌めた数珠が小さく音を立てた。
見え透いた強がりに。気づかないふりをして――
ルアナが自宅のリビングを開け放ち、グレイシアに戦利品を見せつける。
「おじさま! チョコ買いに行ったら、チョコに合うお酒もらったの! 一緒に飲も?」
少女の見た目はいま28歳になっている。
だが。
「ふむ……少し待つが良い」
グレイシアはチョコと酒を受け取りキッチンへ。
こっそりと酒は戸棚にしまい込み。
わくわくしながら瞳を輝かせるルアナをみながらホットチョコを手早く作る。
「わあ! ホットチョコ! いただきまー……。あれ。さっきのお酒は?」
流石に騙されなかったかとグレイシアは肩を落とす。
「お酒を飲むのは、ちゃんと成長してからだ」
「どっからどう見ても今のわたし大人でしょ! せめて一滴!」
見た目が二十歳を超えていようとも中身はまだ子供。
飲酒による影響がどう出るか分かったものではないのだから。
だから。きちんと大人になった暁には共に杯を傾けよう。
「ほんとう? ……それまでちゃんと一緒にいてね?」
少女が大人になるまで。
「……あぁ、勿論だ」
勇者が大人になる時。魔王は傍にいるのだろうか。
思い馳せ。
大切な人と過ごせる時間は。甘い香りに包まれて――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。如何だったでしょうか。
甘いひとときを彩れていたら嬉しいです。
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
グラオ・クローネの甘い香りに誘われて。
●目的
好きな場所でグラオ・クローネを楽しむ
●ロケーション
自宅やいつもの街角、ギルドの一室など。
オープンでもプライベートでも。
●出来る事
適当に英字を振っておきました。字数節約にご活用下さい。
【A】チョコを渡す、食べる
ドキドキしながらチョコを渡したり、ソファに座りながらまったり食べたりしましょう。
【B】チョコを作る
キッチンで悪戦苦闘したり、心を込めてラッピングしたり
【C】その他
自宅やギルドでゆっくりお話したり、飲みあかしたり。
●プレイング書式例
強制ではありませんが、リプレイ執筆がスムーズになって助かりますのでご協力お願いします。
一行目:出来る事から【A】~【C】を記載。
二行目:同行PCやNPCの指定(フルネームとIDを記載)。グループタグも使用頂けます。
三行目から:自由
例:
【A】
【ドキドキ】
好きな人にチョコを渡します
●NPC
絡まれた分程度しか描写されません。
呼ばれれば何処にでも居ます。
・『Vanity』ラビ(p3n000027)
・『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
●関係者
・『彩光』ベリル・トラピチェ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)さんの関係者です。
●諸注意
描写量は控えます。
行動は絞ったほうが扱いはよくなるかと思います。
未成年の飲酒喫煙は出来ません。
Tweet