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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2018>星を届けに

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ほしまつりの村
 夜ともなれば空いっぱいに星が見える、小さな村。
 いつしか星を奉るようになったその村では、付近の山に祭壇をこしらえ、お供え物をしている。
 供えるのはチョコレイトでできた『星』。
 一緒に供えるロウソクは、星々にお供えの存在を知らせるためのもの。
 星とロウソクの灯りの下、捧げる祈りは繁栄と平穏を願うもの。
『輝く星々よ、これからも我らをお守りください』
 祈りを終えて見上げる星空は、応えるように瞬いてくれるという。

 それが、小さな村で行われる行事の概要。
「でも、村人の高齢化でチョコレイトの星づくりや山を登ってのお供えがなかなか難しくなってきたそうなのです……そこで!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、手元の依頼状から顔を上げてイレギュラーズをじっと見る。
「イレギュラーズの出番、なのです! みなさんでチョコレイトのお星さまをつくって、祭壇に供えに行くのです!」
 やるべきことは、こうだ。
 村に到着したら、昼間はチョコレイトで『星』をつくる。固めたチョコレイトを薄くてきらきらした素材で包んだり、散らしてみたり。星が完成したら、それを瓶詰めする。
 準備ができたら、日没直前時に村を出る。片手には瓶詰めの星、もう片方の手には火を灯したロウソクを手にして山道を登るのだ。
 山頂の祭壇に着く頃には夜。祭壇に瓶詰めの星とロウソクを供えたら、祈りを捧げる。このとき小さな村の平穏を祈ってもいいし、個人的な願いでも構わないそうだ。
 説明を終えたユリーカは、村と山に印がついた地図を取り出し、イレギュラーズに配り始める。
「お手すきの方はもちろん、お菓子をつくるのが好きな方や、満天の星空を見たい方は、ぜひ協力をお願いしますね!」
 と、付け足して。

GMコメント

雨音瑛です。
このたびは、星をまつる村のお手伝いをお願いします。
以下、補足情報です。

●達成条件
星を模したチョコを山頂の祭壇に届けること

●できること
チョコづくりからお供えまで全ての作業を行ってもらっていますが、リプレイでは以下の3つのうちの「どれか1つ」について描写します。そのため、どれか1つを選んでプレイングを記述することをおすすめします。

【A】チョコづくり
昼、村の広場で星を模したチョコをつくって瓶に詰めます。
使用するきらきらした素材は、食べられる金箔のようなものです。さまざまな色があります。ちりばめてもよし、豪快にチョコを包んでもよし。完成したら瓶に入れます。

【B】星をとどける
日没直前に村を出て、作ったチョコを祭壇まで運びます。
ロウソクに火を灯して、チョコの入った瓶を手に夜道を歩きます。星のきれいな夜空も見えます。物思いにふけったり、共に行く人と会話を楽しんでも。

【C】そなえて祈る
夜、チョコとロウソクを祭壇にそなえます。祭壇は、石材でできた円形の低い台のようなものとなっています。祈りについては、個人的な願いでも大丈夫です。

●村について
広場を中心に、民家が点在する小さな村。
比率として高齢の方が多めですが、多少は子どもや若者もいます。

●プレイング記述方法
1行目:メインでやりたいこと(例:【A】)
2行目:お連れさまの名前(例:レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)と一緒に)やグループ名(例:【チームA】)
3行目以降:メインでやりたいことを具体的に記述

  • <グラオ・クローネ2018>星を届けに完了
  • GM名雨音瑛
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年03月04日 20時50分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)
神秘を恋う波
ウィリア・ウィスプール(p3p000384)
彷徨たる鬼火
銀城 黒羽(p3p000505)
クー=リトルリトル(p3p000927)
ルージュ・アルダンの勇気
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
ヨキ(p3p001252)
なんでも食べる
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
セレン・ハーツクライ(p3p001329)
虹彩の彼方
黒杣・牛王(p3p001351)
月下黒牛
ユズ(p3p001745)
狼の娘
九条 侠(p3p001935)
無道の剣
リック・狐佚・ブラック(p3p002028)
狐佚って呼んでくれよな!
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
アルファード=ベル=エトワール(p3p002160)
α・Belle=Etoile
メリル・S・アステロイデア(p3p002220)
ヒトデ少女
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
セレスタイト・シェリルクーン(p3p003642)
万物読みし繙く英知
白銀 雪(p3p004124)
銀血
ロスヴァイセ(p3p004262)
麗金のエンフォーサー
ラパン=ラ=ピット(p3p004304)
優しきうさぎさん
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
ブローディア(p3p004657)
静寂望む蒼の牙
ルーニカ・サタナエル(p3p004713)
魔王勇者
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束

リプレイ

●昼の星
 提供された材料や素材を前に、『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)は腕まくりをする。村人の助言をもとに作ったチョコはどれも小ぶりで、定規で測ったならば2cmほどになるだろうか。
 それを丁寧にきらきらした素材で包み、ひとつ、またひとつと仕上げてゆく。なるべく星に見えるようにと、丁寧な手つきで。
「こうすると、星がいくつも煌めいてるように見えねぇかね?」
 そう言って村の老人に見せる黒羽の表情は楽しげで、満足げであった。
 特に料理ができる訳ではないのですけれども、と、『万物読みし繙く英知』セレスタイト・シェリルクーン(p3p003642)もチョコを溶かし始めた。
「適当に溶かして型に入れればなんとかなるでしょうねぇ」
 言いつつまだ塊が残るチョコを型に流し込むセレスタイト。言いづらそうな顔をしたおじいさんがが見ている。おそらく、ざらざらとした舌触りのチョコレートになっているのを指摘したいのだろう。
「まあ……お供えですしぃ。次はくるくるつつんでいきましょうねぇ。僕は手先は器用じゃあないですがまあ何とかなるでしょうねぇ」
 のほほんと行う次の工程。しかし今度はおばあさんが言いづらそうな顔で見ているのは、セレスタイトの手元で完成した、見るも無惨な「星のような何か」だ。
 それを瓶に詰めれば完成、だ。一応。
 村人の助力を得ながら、イレギュラーズは次々と星を作り、瓶に詰めてゆく。気付けば、十分なほどのお供えが完成していた。
「おお、さすがじゃのう!」
「みなさん、ありがとうねえ。これで今年もお供えができるよ、良かった良かった……」
「どういたしまして、これくらいお安いご用だ。そんで次は作った星を山頂に届ける、か……なんかロマンチック? だな」
 瓶を目の高さまで持ち上げ、黒羽が笑う。
 そう、星をつくる作業だけでは終わらない。これを運んで山頂に届け、祈りを捧げるまでが依頼なのだ。
「グラオ・クローネ……バレンタインの季節も早いな」
 手をひさしにして、黒羽は夕日に照らされる山を見遣った。

●星を手に
 間もなく日没直前だと、村人が報せてくれる。各々がつくった星を手に、イレギュラーズがひとり、またひとりと山頂への道を歩み始めた。
「よいしょっと……たくさん作ったな! 頑張って運ぶか!」
 気合い十分、たくさんのチョコ星を手に『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)は歩く。ときどき視線を空へと移し、のんびりと星空を楽しみながら。
 次第に濃さを増す空の星を見て思い出すのは、星が好きな友人のこと。そして、少女らしい衣装に身を包んで星型のプレゼントを貰ったハロウィンの夜。
 あの時から、ラノールも星が好きになってしまったことに気付く。
「……来年は誘えるといいなぁ……」
 不意に口からこぼれた言葉はまるで乙女が呟くそれで、ラノールは思わず笑ってしまった。ついでとばかりに星に願いを託す。来年は誘えますように、と。
 空の色は濃さを増し、でもいうように、見える星が増えてゆく。
 『形代兎』ラパン=ラ=ピット(p3p004304)は昼間に掃除した道を楽しげに行く。
「……僕のお嬢さんは星空より遠い所にいるけれど、違う星空を眺めていてくれるかな? 独りで寂しがってないかな?」
 ラパンはもう、涙を拭う手拭いの代わりにはなれない。だから彼女が幸せであるようにと、願う。
「そうだ、帰ったらたくさんの人に祭りを伝えよう!」
 この催しが広がれば、来年は村人が困らずに済むかもしれない。期待を胸に、ラパンは山頂へと急ぐ。
 それぞれの視界に映るものは同じでも、そこに見るものや思うことはまるで異なる。星の海を眺めるとき郷愁を覚えるというのは『特異運命座標』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)だ。
「『混沌肯定』なる全く異質な理屈が支配するこの世界は、無論私の元いた世界と同じものではあり得ないだろうがね」
 そのうえ、目を開けている限り光がなくても視界を確保できるというギフトで、見え方までも変わってしまった。それでも、冷たくて果ての無い漆黒の世界にこそ、イシュトカは郷愁を覚えて止まないのだ。
「……今夜の空も、とても綺麗だ」
 一方で空を行くのは、『梟の郵便屋さん』ニーニア・リーカー(p3p002058)だ。
「お星様が綺麗だね〜。それに歩いてる皆のロウソクの灯も道みたいに続いてて綺麗!」
 列を成して揺れる光は、さながら地上の星。上下の絶景を見ながら行けるのは、飛べる種族の特権かもしれない。
 とはいえ、見とれすぎないようにと気をつけて移動する。夜の配達気分を味わいながら、ニーニアはのんびりと安全に移動する。
 見える星の数が、徐々に増えてゆく。見事な星空を見て、ロスヴァイセ(p3p004262)は感嘆の溜息をもらした。
「どんな世界でも、夜空の星の美しさは共通してるのね」
 それを知れただけでも、この世界に来た意味はあるのだろう。そうして物思いに耽りつつ思い至ったことに、ロスヴァイセはわずかに表情を曇らせた。
「まあ、星空と同じくどの世界も戦いがあるのだけど」
 という、現実。同時に吐き出したため息は、呆れによるものであった。
 考え事をする者も多い中、『狼の娘』ユズ(p3p001745)は元気いっぱいにチョコを運ぶ。
「ユズ 山 登るの得意! マー の 背中 乗って チョコ一杯 運ぶ!」
 周囲や星空をきょろきょろと眺めたユズは、真上に光る白い星を指差した。
「『マー』の星!」
 楽しそうに叫び、母親代わりの狼の毛並みを撫でる。砂漠で狼たちと暮らしていたときは空でキラキラしているものが何か、なんて考えたことはなかった。また、同じ目的を持ったイレギュラーズと一緒に実を行けば、不思議と寒さは感じない。
「あれくらいの光の強さだと、一等星かな?」
 ユズの指差した星に反応するのは、『ヒトデ少女』メリル・S・アステロイデア(p3p002220)。
「星がいっぱい見えてきたね。綺麗だなあ」
 星がいつもより近く感じるのは、空気が澄んでいるからだろうか。星々が本当に村の人たちを見守ってくれていそうだ。
 それに、イレギュラーズが手にする蝋燭が夜道を照らしているのも幻想的な光景だ。
「山頂に 着いたら マー と 遠吠え する! みんなの 大切 しっかり 届ける!」
「ふふ、ルアミィも山頂に着くのが楽しみなのです」
 灯りとチョコの星を手に、『神秘を恋う波』ルアミィ・フアネーレも星空の下を歩く。
「星空もチョコの星もとっても綺麗なのです、歩いてるだけでも楽しいのです!」
 浮き立つような、厳かな気分になるような、不思議な感じだ。
「うん、確かに綺麗だよな……腹減ったな〜」
 そうつぶやくのは、『狐佚って呼んでくれよな!』リック・狐佚・ブラック(p3p002028)。
「ほんとに忍者になれるかなあ」
 見とれた星に少しばかりセンチな気分になってしまい、思わず思考が口に出てしまう。
「リックさんは忍者になるのが夢なんですか? それじゃ、祭壇では忍者になれるように、ってお祈りするんですね?」
「……そっか。そうだな、それも悪くないな」
 チョコが崩れないようにと丁寧に持った星と空の星を交互に見て、リックは小さく笑った。
 山を登るについれ、星がより近くに見えるようになってきている。
「星に近いところに行くんやねぇ」
「ああ。山の、一番、高いところ」
 『ルージュ・アルダンの勇気』クー=リトルリトルが白い息を吐きながら空を見上げると、獣姿の『なんでも食べる』ヨキ(p3p001252)がうなずいた。
「蝋燭、危なない? 毛にうつって燃えるとか怖いで」
「あ、う。それ以前、に、火は苦手だ。クーの、火を、頼りにしてもいいか?」
 もちろん、と少し蝋燭を持ち上げ、クーは笑顔を向ける。
 クーがいつも見ていたのは、海面に落ちてきた揺れる星と海星。いま空を見上げると、陸の人たちが見上げながら歩くのもわかる気がして。
「綺麗やねぇ」
 上を見たまま歩いたところでよろめくクーをを支えようと、ヨキは後ろに回りこむ。何度か休憩を提案するクーに、山道になれているヨキは嫌な顔ひとつせず、背中に乗るようにと提案したりして。
 そんな中、夜空の星よりも手にしたチョコの方が気になってしょうがないヨキである。
「キラキラ、なんだな。お腹がすいた、ら、食べてもいい?」
「えらい豪奢なチョコよなぁ……あっあかんで! 帰ったら他のん買いに行って食べるんやから! そういえば、ヨキはんは何を祈るん? うちはまだ何もないから、ヨキはんのお願い事応援するで!」
 ヨキの気を逸らそうと、クーは登頂後の話を持ち出した。
「クーは、無欲だ」
 短く告げた後、ヨキはゆっくりと話始める。
「そうだ、な。行ったことのない、新しい場所に、行きたい。一緒、に」
 クーはしばしの間目を見開き、次いで笑った。その願いなら、応援する、というよりは。思いつつ言葉にはせず、クーは笑みをヨキに向ける。
「てっぺん着くのが楽しみやな!」
 見上げた空では、また星が瞬いた。
 村を出る前、『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)は星が「ぱなく」きれいかと思っていた。の、だが。
「がちめに寒くてちょっとエモい。あと、あし、しんどい、飛んだらだめ? ……もっとつかれる?」
 カンテラとチョコの瓶を持った『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)に質問するさなか、セティアの言葉が止まる。
「へぶしっずびっ」
 薄いきらきらした素材をつまみ食いしたからバチがあたったのだろうか。でもきらきらのは味しなかったし、つまみ食いはチョコにしとけばよかったか、なんて考えているうちに、ティミが自身のマフラーを巻いてくれた。
「ふふ……どうですか?」
「あったかい、ありがとう。ロウソク、もつ?」
「あっ」
 気付いたように小さく声を上げたティミはセティアに蝋燭を持ってもらい、代わりに瓶二つを手に持つ。そして空いた方の手で、セティアの手を握った。
「こうすると温かいですね」
「すごい、あったかい!」
 暖かそうにするセティアを見て、ティミは満足げに微笑む。
「星、すごいきれい」
 そう言ったセティアは、次いで山のふもとを見て目を細めた。
「村、ここから見るとちいさい」
 テンアゲ、なのかな、とつぶやくセティアに、ティミは笑顔のままうなずく。星はきれいだし、何より
大好きな友だちと一緒に居られることがこんなにも幸せだなんて、奴隷時代には思っても見なかったことだ。
「一緒に居てくれてありがとうございます」
 そんな言葉が、思わず、ティミの口を突いて出る。突然のことに驚きながらも、セティアは口を開く。
「……わたしも、ありがとう」
 こういうのも結構いい気分かもしれないと、セティアは握った手にじんわり伝わる温度を確かめた。
 自身の作った不格好なチョコを苦笑交じりに眺めるのは、『無道の剣』九条 侠(p3p001935)。
「チョコなんて初めて作ったが、綺麗に作るのって難しいな。セレンは逆に綺麗に作れたもんだな……素直に尊敬するぜ、俺の出来ない事出来る奴はさ」
「ん、上手にできた……気がします」
 侠が隣を歩く『虹彩の彼方』セレン・ハーツクライ(p3p001329)を見遣ると、少し小さめの星チョコをを見つめて満足げな様子だ。でも、とセレンは続ける。
「こういうのは、形より気持ちが大事、ですよ……」
 そういうもんかね、と首をひねる侠に、セレンは山頂の方を見遣った。
「山頂の祭壇、どんなところでしょうね……。楽しみ、です」
「だな。しっかし冷えるなあ……空気なんかは澄んでて……って、見ろよ。星空、凄い綺麗だぜ」
 侠が指差したのは、満天の星がきらめく夜空。セレンも侠の指の先を見上げる。
「星、綺麗……。お供え終わったら、ゆっくり見たいです……」
「お祈りは個人的な願いでも良いって話だったがセレンはどうすんだ?」
 問われ、セレンは少しの間空を見上げて考えた。
(みんなと、もっとなかよくできますように)
 しかし口にはせず、小さく微笑んで。
「ないしょ、です」
「なんだ、教えちゃくれないのか? ……まあ、こういうのは言うとダメだって話もあるか」
 勝手に納得し、侠は小さく息を吐いた。
「じゃ、行こうぜ。お祈り終わらせて、良い場所探して星でも眺めようか」
 その言葉にセレンはうなずき、手元の星を見て微笑んだ。
 山頂までの道を行くイレギュラーズの中で、最後尾を行くのは『銀血』白銀 雪(p3p004124)。溶かしすぎて焦げてしまったチョコを手に、人の出が収まった頃を見計らって村を出たのだ。
 道中、思い返すのは今まで歩んできた道だ。最初に受けた依頼から、今この依頼まで。それは思ったよりも短いもので、ひょっとしたらこの道でさえもそう感じるのかもしれない。
「私の蝋燭を持つ手は、瓶を持つ手はただ、戦うためにあるだけのようなものなのに」
 こういう日くらいはこんなことをしてもいいのか、判断に迷う。
 しかし、たった一つ確かなことがあるとすれば、こんな機会は二度はないということだ。
 この時間を大切にしようと、雪は蝋燭の光を手に歩み続ける。

●届けた星
 山頂に到着していっそう、星の輝きが増しているように見える。
 『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は星を供え、灯と共に祈りを捧げた。
「繁栄と平穏、か……」
 言葉にしながら、ウィリアムは過去を思い返す。
 星が降り、星に滅ぼされた故郷。星を学び、星を掴む為に生きてきた日々。いわば、『星』はウィリアムの全てだ。
 こうして願いをするのも『星』だと判ってはいる。昔のウィリアムであったら、くだらないと一蹴していた狩野背もある。しかし、いま口にする言葉は――。
「どうか……星の下、皆が平穏に生きられるように」
 平穏など、イレギュラーズにはあって無いようなもの。しかし願うくらいなら許されるはず、それに、穏やかなひと時があってもいいはず。
 ウィリアムは、ギフトで創り出した石をチョコの側に供えた。
 淡く青く光る石を見遣り、ウィリアムはその場を後にする。眩しそうに、満天の星空を見上げて。
 『終焉を追う徒花』アマリリス(p3p004731)も、星のチョコを供え終えて空を見上げた。自身の瞳のなかへライトを灯すほどの星々に、アマリリスは心を奪われそうになる。
「わあ……綺麗……」
 こんな風に心がときめくのは、アマリリスにとって何時ぶりだろうか。何せ、今の今まで「力を求めて心ここにあらず」という状態であったのだ。
「でも……天義からの夜空も綺麗だったけれど、此処の空はまた格別ね! やんっ、ちょっとお酒とか持ってくるべきだったかなっ」
 上機嫌に言って、アマリリスは瞬きをする。イレギュラーズとなって数日、ここでやっていけるのかどうか。母が心配してなければいいが。
 祈り手を作り、アマリリスは星へと祈る。
(嗚呼、どうかこの世界の全てが、せめて今日だけでも幸せでありますように)
 この世界の悲しみを、少しでもなくすために。力を求め戦うことを、アマリリスは再度、決意した。
 山頂に到着したイレギュラーズは、次々とチョコを供え、祈りを捧げてゆく。
 村人から託されたものに粗相があってはいけないと、『没落お嬢様』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は、慎重に、厳かにチョコと蝋燭を供えた。
 次は星に向かい、祈りを捧げる。
(これからの私達に降りかかる困難、苦境も、今この星が見守る空の下で生きる皆さんと共に乗り越えられるように)
 どうか見守って欲しいと、今日この日、満天の星輝く空のもとに手作りの星を供えられた事を感謝しながら。シフォリィは、手を組んで祈った。
 瓶に詰められたチョコは、共に供えられた蝋燭の光を受けて輝いている。
 『月下黒牛』黒杣・牛王(p3p001351)は初めて作ったチョコを供え、拝み始めた。
「……私が初めて人間になった頃のことを思い出しますね」
 それは、牛王が元いた世界でのこと。牛王は飼い主で義母でもある人間の娘に恋をしていると気付いた途端、急に芽生えた人間としての自我、そして姿に戸惑っていた。そんな牛王に、娘――杣は微笑み、夜空の下で優しく手を差し伸べてくれたのだ。
「この思い出のおかげで、今の世界でも、辛いことも乗り越えられたし、これからも人間として生きていこうと覚悟を決めたのですよ」
 故に、これから捧げる祈りはただ一匹の畜生の祈りでもあり、我儘だ。
「杣、これからも私を見守ってください」
 小さく、それでも確かに告げ、牛王は目をつむった。
 祭壇に供えられるチョコと蝋燭が、ひとつ、またひとつと増えてゆく。
 『静寂望む蒼の牙』ブローディア(p3p004657)は、現在の契約者であるサラがチョコを供えたあと、星空を刀身に映した。
「話には聞いていたが、なかなかに見事な星空……心に留めておきたいものだ。あるいは過去に見たことがあるのやも知れないが、私は契約者が死ねば一切を忘れてしまう。サラよ。今はただ、私がこの星空とお前を少しでも長く忘れずにいられるように願うばかりだ」
 ブローディアの言葉を聞きながら、サラも星空を仰ぎ見て祈る。
「時にお前は何を願ったのだろう」
 問われるものの、サラは、優しく微笑むばかり。
「何だ……教えてはくれないのか?」
 星もまた、叶えるとも叶わぬとも言わず、空で輝くだけであった。
 皆が笑顔で元気で居られるように、と大々的に祈るのは、『魔王勇者』ルーニカ・サタナエル(p3p004713)。
「他にもない魔王と勇者の願いだ!」
 なんて付け足せば、誰かの笑い声も聞こえてくるから、つられてルーニカも笑う。
(神様が居るのなら、どうか宜しくお願いします)
 もう一度空を見上げて、ルーニカは星へと笑みを向けた。
 村の人々が繁栄と平穏を願ってきたささやかな催しは、イレギュラーズの活躍で今年も無事に終えることができそうだ。
「俺のような戦闘狂が祈ったところで効果はないだろうが……まあ、依頼は依頼だ。村の繁栄と平和を祈り、星へ黙祷を捧げよう」
「祈りの内容は個人的なものでも大丈夫って話だし、そのへんはお星様も度量が広いんじゃない?」
 『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)のつぶやきを、『魔剣少女』琴葉・結(p3p001166)が拾う。
「……だと、いいな。俺としても、穏やかな村が戦火に包まれるなんぞあってはならないことだと思っているのは確かだからな」
 ハロルドは笑みをこぼし、ゆっくりと目を閉じる。チョコとロウソクを祭壇に備えた結も、祈りに参加する。
(元の身体に戻って、元の世界に帰れますように)
 ただ、この世界を放って帰るのも気分が悪い。だから、きちんと世界を救ってから、と、結は願いに注釈を付け足してみたりする。
 その願いが魔剣ズィーガーに知られようものなら、からかわれることは確実だ。そんなことを考える結に、祈る最中こそ邪魔しないようにと黙っていたズィーガーがさっそくちょっかいを出してくる。
「イヒヒヒ。熱心に祈ってたみたいだが何を願ってたんだ?」
「村人の代わりに来てるんだから、村の繁栄と平穏に決まってるでしょう」
 溜息をつきつつ言った言葉で、はぐらかせたかどうか。
 そんな二人の会話を聞きながら、ハロルドはもう一つの星を供えた。個人的なことだから村人にうかがいを立てたが、代わりに供えてくれるというだけでもありがたいのだからと快く許可してくれたのだ。
「これは、俺なんぞのために命を捧げた“アイツ”のために――」
 ハロルドの脳裏に、自らの死期を悟った聖女の姿が浮かぶ。彼女が命を捧げて完成させた聖剣、そしてそれによる加護が、ハロルドに与えられたギフトだ。
 刃に写る星が流れていった、ように見えた。
 山頂は、ことのほか冷える。『風花之雫』アルファード=ベル=エトワール(p3p002160)はチョコレイトの星を置いた祭壇の前で膝をつき、祈りを捧げた。
 『彷徨たる鬼火』ウィリア・ウィスプール(p3p000384)も、続いて祈りを捧げる。
(トーチベアラーと『彷徨たる鬼火』の肩書きは、人を導き誘う光……想いや魂を送る炎)
 そう祈る中、ウィリアは少しだけ目を開けて静かにアルファードの様子を伺う。
 祈りのさなか、アルファードは途中で目を開けて星空を見上げ、元いた場所へと思いを馳せる。
(あちらの世界は大事ないでしょうか。今の私には、何が出来るでもありませんが……)
 それでも、アルファードだって今は星のひと欠片のようなもの。願うくらいは許されようと、願わくば此方と彼方の世界に加護があらん事をと、静かな表情で天の星を見つめ続ける。
 二人を見守る『Dáinsleif』ライセル(p3p002845)も、少し遅れて祈りを捧げる。
 とはいえ、自由気ままに生きているライセルにとって、強い願いはそんなに無いのだ。
(そうだな、強いて言うなら――)
 ライセルは目を閉じ、願いを心中でつぶやいた。
 全員の祈りが終わったところで、アルファードは二人に笑みを向ける。
「ライセル様はお願い事はされましたか?」
「うん、願い事したよ。皆の笑顔を守りたいってね。その為に強くなる」
 鉄騎種のライセルにとって、強くなる事は生きる事と同じなのだ。
「ライセルさんの、願いは……とっても、優しいですね。ベラさんも、私も……いつも、気にかけてもらえて……安心します」
「ウィリアちゃんは?」
「私は……このチョコみたいに……遠い遠い、どこかまで。いつか……辿り着けたらなって」
 ウィリアの視線は、祭壇に供えられたチョコへ。目的地も不定の漂流者として、自分を重ねて一抹の羨望を抱いているのだ。ウィリアの話に耳を傾けつつ、ライセルは優しく告げる。
「ウィリアちゃんは何処かに行きたいんだね。遠い所か……ウィリアちゃんには、これから先まだまだ沢山の可能性がある。それこそ空に浮かぶ星の様にね。大丈夫。きっと、いつかたどり着けるよ。助けが必要ならいつでも頼ってね」
「ええ、何時でも力になりますよ。どうか素敵な旅をなされませ。いつか必ず、辿り着けますから」
 二人の心強い言葉に、ウィリアはきゅっと拳を握った。
「……ありがとう、ございます。いつか、叶ったら……嬉しいです」
「お二人の願い、きっと叶えてくださいますよ。さぁ、星を見ながら帰りましょうか」
 そう言って、アルファードは二人に手を差し出した。
「帰りは星を見ながら一緒に帰ろうか」
 と、ライセルは手を取る。ウィリアは差し出された手に手を伸ばし、小さく微笑んだ。
「はい……帰りましょう」
 共に『帰る』ところへ向かえることに、暖かい気持ちになりながら。
 つとめを終えたイレギュラーズは、元来た道を行く。柔らかな、月と星の灯りをたよりにして。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
村人も星も、喜んでいることでしょう。

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