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シナリオ詳細

<夏祭り2019>光彩の夜に
<夏祭り2019>光彩の夜に

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●花火を見上げて
 低く腹に響く轟音が断続的に鼓膜を揺らす。
 夜の浜辺を繰り返し照らす光彩はまるで浮かれたサマーフェスティバルのハイライトのようである。ドン、ドンと打ち上げ花火が上がる度、誰のものかも知れない歓声が沸き、空気は否が応無く華やぐのである。
「ふふ」
 リーゼロッテが少しおかしそうに笑う。
「きっと、ソルベ卿が張り切っているのでしょうね。皆さんは彼に好かれているようだから」
 成る程、夜空のアートは彼の尽力によるものか。
 早く早くとあくせくと。部下と共に動き回る彼の姿は想像がつく。
「つい先日まで皆さんは、ネメシスで大変だったと伺いましたけれど。
 おかしな話。海洋も、私も、あの黄金双竜だって――
 ――不思議ですわね? 皆さんにかかると、こんな風になってしまう。
 こんな時間が過ごせるなんて、少し前までは想像もしなかったのに」
 イレギュラーズに語りかけたリーゼロッテはそこで言葉を切って、現れたもう一人に水を向けた。
「ねぇ、そうは思いませんこと? それともこれも貴方の手腕なのかしら?」
「冗談。俺も『可能性の獣』を受動してる方に過ぎねえよ」
「あら、謙虚ですこと。蒼剣レオン(あなた)にしては珍しい」
「その言葉はそのままそっくりお返しするぜ。
 イレギュラーズに影響を受ける、ね。暗殺令嬢(オマエ)らしくもない」
 令嬢は口元に手を当て、鈴が鳴るような声でコロコロと笑う。
「確かに、否定し難い事実ですわね!」
 彼女は現れたレオンの横柄な物言いにも気分を悪くした風も無い。
「ま、オマエ達も楽しんでるようで何よりだ。
 戦争の先――待ちに待った時間だしな」
「うふふ! 妬いてしまいそうな活躍だったとか。
 今度、ゆっくり話を聞かせて貰いませんと――」
 何時もと同じく青薔薇を思わせる衣装――今夜は浴衣である――に身を包んだリーゼロッテは華やかに冗句めいていて。澄んだ夜空のキャンバスを見上げて「きれい」と零す。

 ドン、ドン……

 音が弾ければ薄い唇の紡ぐ幽かな言葉は届かない。
 光彩が闇を照らし『幻の薔薇』を夜に浮かべている。
 令嬢の完璧なる美貌は少しの憂いを帯び、同時に白い肌には朱色が差していた。
(確かに、大した『魔法』だぜ――)
 嘆息したレオンは今日という日を迎えられた事に心底安堵していた。
 夜の浜辺には気の置けない仲間しか居ない。
 去年と同じく女王イザベラの計らいで『特等席』を宛がわれたローレット――と、その関係者、或いは賓客――はあくまで特別。人が人を呼ぶサマーフェスティバルの中では例外的に静やかに誰かとの時間を過ごすに好都合な場所だった。

 ――これから本番を迎える、そんな夏祭りの夜に。
   貴方には共に過ごしたい『誰か』が居るだろうか?

 何をしなければいけない事も無い。
 何かをしたいならば当然したって構わない。
 これはそんなバカンスの時間の一幕である――

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 遅ればせながらサマフェスです。
 今回はお疲れモードなので30人限定で。

●依頼達成条件
・バカンスを楽しむ

●シチュエーション
 沖合の大型船から景気よく花火を打ち上げるソルベ主催の花火大会を眺めながら、浜辺で夏祭りの夜を過ごします。イザベラが用意したプライベートビーチにはイレギュラーズやその関係者、或いは賓客以外の姿はありません。

●出来る事
 出来そうな事は何をしても良いです。
 花火を見たり、夜の浜辺を散策したり、カップルでいちゃついたり。
 綺麗よりの話なので、空気感をぶっ壊す内容は程々に。
 同行者が居る場合、必ず一行目に記載して下さい。
 又、現場に居そうな(海洋・幻想・ローレット等の)NPCは指定してくれれば居る事にして措置します。指名されない場合、無理目な場合は特に扱いません。
 レオンとリーゼロッテは浜辺でぶらぶらしています。
 例外的にソルベは船で打ち上げ作業中です。(確定)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 人生で初めて30人限定とか運営してみました。
 宜しければ御参加下さいませませ。

  • <夏祭り2019>光彩の夜に完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年08月01日 01時00分
  • 参加人数 30/30人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
二輪
十夜 縁(p3p000099)
黄昏き蒼の底
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
自称・旅人
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
朝を呼ぶ剱
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
リゲル=アークライト(p3p000442)
死力の聖剣
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
悩める魔法少女
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
リインカーネーション
ヨハン=レーム(p3p001117)
孤高装兵
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
希望の聖星
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
オトモダチ
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
繋手
桜咲 珠緒(p3p004426)
吐血の方
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
さいわいの魔法
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
闇討人
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
コロナ(p3p006487)
ホワイトウィドウ
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
戦神
古田 咲(p3p007154)
裏ファンドマネージャ

リプレイ

●幕間の夜
 苛烈にして情熱的たるサマーフェスティバル――
 ネオフロンティア海洋王国が国を挙げて行う一年に一度のバカ騒ぎが『とんでもない時間』になる事は去年の時点で知れていた。
 青春もある。波乱もある。そして戦いがある――
 多くの人間の多くの思惑を、まさにまとめて呑み込んだ夏の決戦は、めいめい事前に気合を入れて用意した戦闘服(みずぎ)に、一張羅(ゆかた)に身を包むイレギュラーズにとっても忘れられない時間になる事はもう約束されている。
 その中でもこの夜は特別なのだ。
 夜空に咲く大輪を見上げる人々の想いは様々だ。
 それは悲喜こもごも、人間だからこそ鮮やかで、人間だからこそ一筋縄ではいかない『光彩』を造り出す――
(どうにかすれば彼女を殺さずに済まなかったのか……)
 例えば暁蕾は瞬く空に割り切れない憂いを帯びた。
(彼女と一緒にこの綺麗な花火や浜辺の美しい光景を見ることができたなら)
 はしゃぐ気にもなれず、救えなかった恩師との邂逅に思いを馳せる彼女は、手にした眼鏡ケース――『どうしてか』執着を感じるそれに、その為の力が欲しいと願っている。憂いこそあれ、見上げた花火の残光にふと煙を燻らせるシルエットを見たような気がした彼女の唇の端は漸く僅かばかり綻んでいた。
(バカンス……か)
 夜空に想いを馳せたのはヨハンもまた同じであった。
(天義での決戦から逃げ出していたらきっと後悔していただろうなぁ。
 しかし、寂しい。きみが危険な戦場に出て命を落とす事がないとしても、それでもきっと寂しいんだ。
 きみは元気にしているだろうか?
 俺……いや、僕はまだローレットで戦っているよ。
 戦い続けた先に何があるのかわからなくても……きみのぶんまで頑張って立派な剣士になってみせる。だからどうか元気でいて、僕は君の盾で居たかったから)
 見上げた夜空で遠く少女が笑っていた――そんな気がした。
「ふふ……」
 一方で波打ち際、素足を水に晒したシフォリィが見上げた夜空で弾ける光彩は、素直に少女を喜ばせる祝福のようだった。
(召喚されなかったら、家にいたままだったら、特異運命座標にならなかったら、弾ける大輪の下で、こうして思いを馳せることもなかったでしょう。
 愛しい人も失い、家も失い、己の大事な物も失ってしまったけれど。
 こんな綺麗な景色を見ることができる、今がとても嬉しい――
 戦いの日々が続いても、心に残しましょう、この夏の一瞬を)
 花火は誰もがそうと知る通り美しい。
 そして、誰もがそうと知る通り――余りにも刹那的である。
 花火を見て感動を覚えるか、ある種の寂寥感を感じるか、その両方か――『それ』が人を捉えて離さないのは儚いからでもあるだろう。
 ドン、ドン……と、遠雷のように花火の音が木霊するこの夜の一時は、或いは誰にとっても『特別な幕間』足り得る時間になるのかも知れない。
 絶好の観覧場所だから花火大会をごくごく素直に楽しむ人間も多い。
「おおお……花火すごいですわっ、大輪にきらめいておりますわねー!」
 個人的にはタント様程ではないと思うのだが、タント様が喜んでいると皆嬉しいのはデフォルトである。
「何だかおかしなナレーションが聞こえた気がいたしますわ!」
「うふふ。いつも輪の中心にいるタント様を独り占めなんて、嬉しい夜ねぇ」
 花火に満足気なタント様にアーリアが艶やかな笑みを見せた。
「むむ……! 花火に照らされるほろ酔いアーリア様……おセクシーですわ……
 どうしたらそんなにセクシーになれますのかしら……?
 やはりお酒ですの? お酒が女を大人にしますの!?
 20歳まであと7年……先は長いですわ!
 せめて、せめて今夜はノンアルコールのカクテルを。
 アーリア様、何かお勧めはございませんかしら!」
 背伸びする少女の様子は、有様はいよいよ可愛らしい。
「そうねぇ。ふふー、色んな経験をして、色んな恋をして
 いろーんなお酒を飲めばもっと素敵なレディになれるんじゃないかしらぁ?」
 そう言って思案をしたアーリアは彼女にピッタリの一杯を口にした。
「でも、今夜に魔法をかけるなら断然それは『シンデレラ』」
 やれば出来るじゃんへべれけちゃん。
「へーい、そこのおねーさん!
 せっかくだし、スティアと一緒に花火見ない?」
「あら、お誘い頂けますなら是非とも」
 飲み物を片手に空を見上げていたイレーヌにスティアが元気良く声をかけた。
「イレーヌさんはどんな花火が好き?
 私はあれかな。柳みたいにしだれてるやつ。しだれ柳で良いんだっけ?
 あ、ちなみに枝垂れ桜も好きだよ!」
「……あ、聞いてない?」と小さく舌を出した少女に「いいえ」と微笑んだイレーヌは悪戯な顔をして彼女の耳元で「ロケット花火」と些か聖職者らしからぬ冗句(?)まで言ってのける。
「リーゼロッテ」
「ああ、シャルロットさん。夜は愉しまれておりまして?」
「それはこれからね。私は貴女と楽しむから。
 貴女も花火観賞でしょう? 良ければ一緒にどう?」
「あらあら、まあまあ!」
 飲み物を差し出したシャルロッテに浴衣姿のリーゼロッテはコロコロ笑う。
「ああ、綺麗……でもすぐに消えてしまうのが儚いわね。
 その美しさは、労力に見合わない一瞬だからこそなのかしら……?」
「だからこそ、最高の贅沢――と言えるのは確かでしょうね」
「こんばんは、リーゼロッテ様」
 何だかんだで人気者の令嬢に、次に挨拶にきたのは彼女にとっては『宿敵』とも言うべき寛治である。
「遅ればせながら浴衣、お素敵ですね。もう少し近くで拝見しても?」
「……私、獅子身中の虫を近付ける趣味はないのですけれども?」
「はっは、面白い冗談です。流石ユーモアに溢れておられます」
 警戒を滲ませるリーゼロッテの一方で、寛治はといえばやれば出来るエリートビジネスマン然と良く回る舌をフル稼働させている。
「青薔薇の柄と、対になる青薔薇の帯。これ程鮮やかに夏に薔薇が咲くのは、世界広しといえどもこの砂浜だけでしょうね。
 嗚呼、警戒なさらずとも。本日は『案件』とは全く別でして。もう一つ我儘をお許しいただけるなら。浴衣に合わせて、日本酒を冷やしておいたんです。宜しければ少し、お付き合いいただけませんか?」
「まぁ、そういう事なら」
「実はね。覚えていらっしゃらないかもしれませんが、一周年なんです。
 去年の夏祭りで、私がリーゼロッテ様にお会いしてから」
「――――」
 少しだけ、ほんの少しだけ罰が悪く照れくさそうな顔をした事を眼鏡を光らせた新田寛治は見逃さない。
 閑話休題。
「次々と花火が上がるのね。素敵ね、綺麗♪
 これが花火なのね。夜空を彩る花火は、天下をも照らす。
 今宵、打ち上がる天花に、人々は何を想うのか、何を視るのか…ふふ、ふふ♪」
「あらあら、そちらも面白い方ですこと」
 リーゼロッテが不意に興味を示したのは、面立ちにも名前の通りの花が綻ばせるフルールだ。
 彼女の言葉に興味を惹かれたのか愉快そうな顔をしたリーゼロッテは、歌うような彼女の言葉の続きを待っているかのようだった。
「今日も夜が更けていく。人々の想いが交差する。
 伝わるかしら? 届くかしら? 廻り巡って還ってくるのかしら?
 ねぇ、おにーさん、おねーさん、イレギュラーズは楽しい?
 それが聞きたいの。聞かせて。聞かせて?」
 さもありなん、問い掛けにリーゼロッテはにっこりと笑い、傍らに居たレオンも肩を竦めてそんな彼女に同意した。
「よぉ。良い夜だな。俺は、一人で手持無沙汰でさ――混ぜてくれよ」
 やって来たウィリアムにリーゼロッテはひらひらと手を振る。
「浴衣、よく似合ってるな。流石に綺麗だ。
 ……別に、褒めるくらい普通だからな。茶化すなよ?」
「あら、残念。先回りをされてしまいました」
 嗜虐的なリーゼロッテに「これだからお嬢様は」とウィリアム。
「そういえば大活躍したって聞きましたわよ」
「天義の決戦の話はどこまで聞いたか知らないけど。
 まぁ、俺はそんな大した働きが出来た訳でも無いけど……
 実際、もっと力が欲しいって思ったな。
 俺は魔術師。後方から支えるのが役目だ。
 だけど、これから先それだけで足りるのか?
 技術だけじゃない。心構えも己で立てる強さが要る、ってな」
「そういや……レオン、俺らの天義での戦はどうだった?」
 沈んだ赤に月下美人が描かれた和服、夜色の外套。
 ウィリアムの言葉を受けて、レオンが「美人は何でも様になるね」と軽口を叩いたレイチェルが問い掛けた。
「強欲ですわねぇ。そうは思いませんこと?」
「茶化すなって言われただろ。それに、答えるまでもないな。満点だろ」
 水を向けたリーゼロッテに呆れた顔をしたレオンは太鼓判を押した。
 レイチェルは「そうか」と夜空に弾ける花火を見上げていた。
「だが、俺はまだまだ弱い。強くならねぇと――強くなきゃ。
 いつか大切なものがこの手から零れ落ちる事になるだろうから。
 それだけ強くなきゃ――大切なものを守り切れねぇから」
 手にした煙管から紫煙を燻らせたレオンは真剣な顔で空を見つめるレイチェルに否定も肯定も返さなかった。
「そう! つかれたもん! がんばったもん! ねぎらってー!
 私はおぜうさまと居れるだけで私は幸せなのです><」
「あらあら、甘えん坊さんもおりました」
 これぞ好機、ここが勝負と駄々をこねる秋奈の頭をよしよしとやるリーゼロッテを余所に、唯、そんな彼女の横顔を見つめている。
 サマーフェスティバルの喧騒を動とするならば、花火大会の『特等席』たるイザベラのビーチはある種珍しい静の趣に満ちていた。
 少なくないイレギュラーズがこの特等席――女王からのご褒美に預かろうとこの場所に顔を出していたが、それでも芋煮の外界――祭りの現実である――と比すればここは大いに落ち着いたものである。
「ふふふ、素敵な景色ですね」
「……………」
「私、昔は夏とか、お祭りとかが嫌いだったんです。
 ただ暑苦しくて、騒がしいだけだって――でも、今は」
「……………………」
「……あ、すいません。私、公爵様の前で舞い上がっちゃって!
 うるさいですね、ごめんなさい!」
「……いや、良い。或る意味でわしがこの場に来たのは貴様の『お陰』であるやも知れぬのだからな」
 その特別感はまさに舞い上がって饒舌になった咲にそう応じたレイガルテの殊の外の上機嫌が証明しているとも言えるだろう。
「娘、光栄に思うがいい!」
「は、はいっ!」
 何故か全力で胸を張るザーズウォルカの暑苦しい黄金鎧も夕涼みの時間なら目玉焼きも焼けず、大変結構な話である。
「こんな風に、気の置けない友と酒を酌み交わすだなんて……
 混沌に来た頃は想像も出来なかったが。
 いやはや、人生どう転ぶかはわからないものだ」
「俺もね、気の合うヤツが増えて嬉しいよ」
 即席のテーブルを用意して結構なペースで酒宴を始めたのはゲオルグとショウの二人である。
「情報屋であるショウには色々と力を借りることになるだろうが、これからもよろしく頼む……と」
 肩を竦めたショウにゲオルグは「そうだな」と合点した。
「堅苦しい話はここまでにして、今はこの夜を楽しむとしようか!」
「はぁ、役得ですねぇ。今日くらいはこうして居ても罰は当たりません」
 男同士の友情だか何だか世界観を傍目に眺めつつ、これぞ夏のバカンスと決め込んですっかりオフの顔をした聖女(コロナ)がカクテルを口に含んだ。
「……次は天義復興で忙しい彼らとも、一緒に来たいですねぇ」
 彼女が脳裏に描いた堅物の聖騎士団長達がイレギュラーズの(中々思い切りの良すぎる事もある)水着や浴衣姿を何と評するかも想像するに愉快である。
(精霊達にも『俺たちの最高の場所』を見せられたかな)
 ただただゆっくりと流れる夜の時間に行人もまた満足気である。
 幸運は努力の先に訪れるものなのか。先に支払った苦労が彼等に報いたからなのか――何れにせよ、このゆったりとした時間は決戦を終えたイレギュラーズに、もたらされた正当な報酬なのだから。

●砂ゾーン
「浜辺に一人です? ふふ、では僕が『足』になってあげましょうか」
 アルプスが一人で居た理由は簡単だ。
 周囲には友人――らしきもの――も居る。『それなりに』共に過ごしたい相手もあった。しかして『彼女』が想う『誰か』はきっと後にも先にも一人きり。
(――あれから他の誰にもハンドルを握らせてないんですよ。
 なんて言い方したら僕も少しは人間っぽいでしょうか――?)
 ……光彩の夜は幻想的である。
 ひとときの魔法にかけられた時間は浮かれて、溺れ、普段言えない事も、出来ない事も出来てしまいそうな位に場の誰しもを『酩酊』させる。
 故に今夜は誰か特別な人間と過ごすには格好の機会でもあった。
 彼女? いねぇよ。海行った? 引きこもりだよ。
 お望みのようなので全力で砂喰らわせてやろうじゃねえかこのやろう。

「綺麗な海に花火だ。夏にこれ以上の贅沢なんてないぜ」
「花火といえば夏のイメージ。
 だから昔はあんまりいい印象がなかったんだけどね」
 ――シラスが敢えて口にしなかった言葉の後半「何よりアレクシアがいるからな」を知ってか知らずか、アレクシアの面立ちが淡い微笑みを浮かべていた。
「でもね」

 ――今はこうやって素敵なお祭りや花火を楽しめて。
 夏も素敵な季節なんだなって思えるようになったかな。
 そんな夏を、花火の時間を、一番の友達と過ごせるのって、ほんとに幸せだなあって――

 夜空で弾ける花火の光に浮かぶ彼女の顔は美しく、傍らで共に見上げるシラスの口数は気恥ずかしさも手伝って徐々に減っていた。
「……ごめんね。変な事言ったかも」
「い、いや! 俺も幸せ! ずっと続くようにっていつも思う!
 いいや、それを守るって誓うよ!」
 小首を傾げたアレクシアの手を反射的に握ってシラスは、遅れて『それ』に気付いて「ご、ごめん!」と赤面する。



 ボーイミーツガールやら青春やらは当然二人だけではない。
「はぁー、平穏さが身に染みるわね。
 平和のために剣を取れって、やっぱり正しいのかな」
「種の敵性存在がいる世界においては、生存のため武力は容認されざるを得ません。
 なればこそ、使いどころは弁えた者でありたい所ですが」
 珠緒の言葉に生真面目に応じた蛍はそこで一つ咳払いをした。
「大真面目な話はここまでで――
 珠緒さん、その浴衣よく似合ってるわ。花から花へ舞う蝶が、まるでたくさんの楽しみにご一緒してくれるあなたみたいでとても素敵」
「桜咲がご一緒できるのは、沢山のお花が導いてくださるからなのです。
 よい香りがするのは、気のせいでしょうか……」
 二人が文字通り『生きた心地もしない』戦いを乗り越えたのはつい先日の話だった。どれだけ強がっても蛍は確かにその時が『怖かった』し、珠緒もまた自分と別れる事が何より辛いと独白した少女に同じ気持ちを差し出した。
「珠緒さん。私は、貴女のことが、す――」
 花火の音が覚悟を決めた蛍の言葉を掻き消せば。
 ガールミーツガールな展開も負けじと風情を造り出すもんだねぇ。

「また打ちあがります。一体、何発用意したのでありましょう」
「沢山の方が面白いからね。ドンドン上がるよ。だってソルベさんだし!」
 夜空に断続的に咲く花火を二人で座って見上げている。
 食べ物を用意してあーんと口を開けるセララにそれなりに甲斐甲斐しく食べさせて……
 そうしてどれ位の時間を過ごしていただろう。
 気付いた時にはハイデマリーの手はセララの手に重なっていた。
「……綺麗ですね」
「うん!」
「本当に――綺麗」
 昼間程では無いけれど、汗ばむ陽気に浜風が吹き抜ける。
 僅かな潮の香りと火薬の匂いが鼻腔をくすぐる。
 ハイデマリーの胸のもやもやはきっと花火の所為だけではなくて。隣のセララの息遣いが、指先から伝わる熱が、きっと彼女に魔法をかけている。
「ボクはねー。マリーが友達でいてくれて良かったと思ってるよ」
「……ええ」
「一緒に遊んでて楽しいし。戦場では頼りになるしね。魔法少女にも付き合ってくれてるし――これからも相棒としてよろしくね!」
 ハイデマリーは全てを分かっていた訳ではないが、きっとそれを良いものなのだとだけは認識している。

「嘘みたい、だよな」
「……うん?」
 浜辺の喧騒からは離れて二人きり。体温さえ感じられそうな距離でリゲルが零したその一言に傍らのポテトは視線を投げた。
「いや、つい先日までは、毎日が戦争だっただろう。
 今だって一歩間違えれば、夏を楽しむどころじゃなかったかも知れないし」
 リゲルは穏やか過ぎるサマーフェスティバルの時間をまるで夢のように感じていた。天義での戦いは全てが紙一重のものだった。紙一重で『冠位』は倒され、父は死んだ。自分は、愛するポテトはここに居る――
「そうだな……毎日必死だった。
 もう無理だと思った事も……無いと言えばきっと嘘だ。
 でも、失ったものも大きいけど、今こうして一緒にゆっくりと夏を楽しめる――この幸せを大切にしたいな」
「ああ」
 頷いたリゲルはこれより先、名実共に家督を継ぐ事になったアークライト家が自身の双肩に掛かっている事を知っている。気丈な母が、自分を改めて励ました母が一人で泣いていたのを知っていた。だからこそ、彼は誰よりも――リゲル・アークライトであらねばならない。父の背を追うだけではなく、遥か遠く越える男でいなければならないと知っていた。
 だからこそ――
「天義の復興もアークライト家を支えるのも大変だと思うけど。
 一緒に頑張ろう、私に出来ることは何でもするぞ!
 女神様や兄様たちにリゲルのこと紹介したいし――
 こんな素敵な旦那様だって、きっと凄く驚いて、凄く喜んでくれ――」
「――ああ、俺にはポテトが必要だ」
「……!?」
 絡めた指かた伝わるその熱が鮮やかだった。
 嬉しそうに言うポテト、少しはにかんだ顔のポテト。
 自分を支えるんだと得意気なポテト、口付けに目を白黒させるポテト。
 その何れもが余りに愛しくてリゲルは不意の意地悪をせずにいられない。
(不正義でしょうか――)
 不正義だ。されど。
 光彩の夜のこんな小さな不埒は父も白獅子も褒めてくれるに違いない。

 本来をして善と悪を敷く天鍵の女王(レジーナ・カームバンクル)は可愛くない女である。
「綺麗ですね」
 そんな言葉は月並みでしょうか――?
 可愛げのある言葉に可愛くない言葉を添えてしまう程に、本当は可愛くない女なのである。
「とっても、綺麗ですわね」
 空の花火はとても綺麗に咲いていたけれど、レジーナが視線を注いでいるのはもうずっと幻想の薔薇だけだ。
 目は口ほどにモノを言い、分かり易いレジーナの態度を目ざといリーゼロッテが見落とすはずはない。だが、レジーナは虚勢を半分、言い訳を半分に言わずにはいられない。
「一応お断りしておきますが――花火のことですよ」
「あら?」
「本当に」
「私の方はその素敵な浴衣をお召しになったレジーナさんの事ですけれどもね」
「んな!?」
 この日の為に気合を入れた新調だ。
 この日を、どれだけ、どれだけ彼女は焦がれていた事か。
 リーゼロッテはその全てを知っていながら余りに涼しくそんな風に言ってくる。

 ――貴女はずるい。
 貴女は恋を知らないから。
 この苦い想いも、甘いトキメキも。
 貴女が、貴女だけが知らないのは――どうしたって悔しくて仕方ない――


「お嬢様」
「はい?」
「好きですよ、その浴衣」
 蒼薔薇は笑う。
「それから、キス、してもいいですか」

「こうして落ち着いて夏祭りの夜を過ごして参りますと……
 ついこの間の聖都の激戦が既に昔の事みたいですね」
 ヘイゼル・ゴルドブーツは兎角好奇心に旺盛である。
「実際には天義は復興や変革などでこれからが大変なのですが。
 そんな事実を一時なれど忘れてしまうほどに、これは本当に、良い夜なのですよ」
 ヘイゼル・ゴルドブーツは非常に面白がりでもある。
「そんな良い夜なのですから、何かが起った方が愉しいですよね?
 自覚はあるのかないのか最近とみに接近を見せるようになり、今日などは浴衣の色を青に合わせるという気合の入りよう。
 ならば、せめても空振りをしないよう心を砕くのは友人甲斐なのですよ。
 まあ、私自身にはレオンさんに用がある訳では無いのですが。
 ……はて、ではこれはいったい何故なのでせうか?」
「オマエなあ」
 レオンの浴衣の袖を引いて――上目遣いの似合わない――長身のヘイゼルに誘い出されてみれば、謎かけ(リドル)のように言葉は遊ぶ。
 彼女の気質と一連の台詞から『何となく』それを察した彼は「あとはケセラセラなのですよ」とのたまうヘイゼルに嘆息した。
 それが暫く前の事。気配を感じた彼はゆっくりと夜に振り返る。

 ……浜辺で、レオン君を見つけた時、心臓が一回飛び跳ねました。
 彼は人気者だから、『一人でいる事なんて滅多にない』。
 どうしてかは分からないですが……
 だからそれは確かにチャンスで――いえ、恋とかはしてないです。
 ああ、もう! 声を掛けよう、そう思った時、いつもと違った浴衣姿の彼をを認識した時、心臓がもう一回飛び跳ねたのです。
 こうなってしまったのは、いつからだったろう、そう考えました。
 特異運命座標として呼ばれた後ローレットで会い、ローレットトレーニングで師事し、街角で良くからかわれたりもしました。
 それからそれから……
 考える程に頬は熱くなり、考える程に目の前がぐるぐるしました。
 これでは駄目です。今、レオン君は一人なのです。
 だから、今は深呼吸を一つ、二つ……もう大丈夫。
 きっと彼は意地悪で――から。少し位、失敗しても大丈夫!

「レオン君! こんばんは!」
「良く出来ました」
「……へ?」
 レオンはそれを見ていなかったが、見てきたようにモノを言う。
 間違いなく物陰で深呼吸を重ね、間違いなくシミュレーションのような練習を重ねた『頭でっかち』は成る程、ヘイゼルの言った通り青い浴衣で彼の前に現れた。
「こっちの事。その浴衣、俺とお揃い?」
「そ、そそそそんなことは、えっと――ぐ、偶然で!」
 やり取りはまるで決められていたように不恰好だ。
「くくっ」と鳩が鳴くように笑ったレオンは今夜の物語に酷く余計な言葉を添える。
「――似合ってるよ。すごく可愛いし」
 上手過ぎる嘘吐きと下手過ぎる嘘吐きのやり取りは喜劇(ドラマ)めいていて。
 ――空の月だけが特等席から眺めていた。

●〆のお話
「おー、おー。景気が良いでござるなぁ!」
 夜空には花火。
 鼓膜を揺らし、腹を揺らす轟音さえ咲耶は楽しんでいた。
「たまには、と思い竿を持ち出して来てみたが……
 酒の肴に月や花火を眺めて釣りをするのも乙なものでござるな」
 人と騒ぐような歳でなし、と思って始めた夜釣りだが、咲耶にとってこの時間は中々良いものとなっていた。
「何せ、これだけの花火でござる。
 さぞ、ソルベ卿も大変でござろうなぁ」
 沖合の『軍船』ではソルベが全力の指揮を取っている事であろう。

「――次、弾幕薄いですよ。何やってるんですか!」
「手伝うとは言ったけどよ、中々人使いが荒いねぇ」
「まだ云百発残ってるんです。コンテュール家は伊達じゃない!」
「――はは、罪滅ぼしも大変だ」
 軽口は飄々と、手伝いの手は黙々と。
 ソルベに協力した縁は肩を竦める。
 思いのほか大変だが――きっとこの夜は誰かの特別になるだろうと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 YAMIDEITEIっす。
 恋愛小説書きです。
 全員書いたと思います。
 万が一抜けてたらお知らせ下さい。

 30人制限イベシナとか人生で初めて書きましたが
 書き過ぎ症候群からは結局逃げられないのでありました。

 シナリオ、お疲れ様でした。

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