シナリオ詳細
天義祝勝祭 イレギュラーズカーニバル
オープニング
●聖義の日は昇る
大魔種討伐の知らせが行き渡った時、人々は喝采に沸いた。
イレギュラーズたちを讃えるようにコールする声が、今でも耳の奥に残る。
「此度の聖都大魔種襲撃事件は、魔種であった枢機卿アストリアとその協力者執政官エルベルトによるクーデターに加え、『煉獄篇第五冠強欲』ベアトリーチェ・ラ・レーテという例を見ない規模の襲撃であり、被災地の悲惨な状況に深く心を痛めている――」
未だ破壊の跡が残る宮殿のバルコニーにて。
シェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世は国民に向けた御言葉を述べていた。
包帯だらけの騎士やぼろぼろの服を着た民間人たちはその様子を黙って見上げている。
今や過ぎ去った危機を改めて思い返し、今になって恐怖と心の痛みを覚えているのだろうか。
「どれだけの犠牲が出たことか分からない。一人でも多くの無事が確認できることを願っている。また、枢機卿と執政官の不在とそれに連なる派閥の喪失による国力低下を深く案じ、騎士たちの尽力によりさらなる悪化が回避されることを、願っている――」
失ったものは大きい。
だが得たものも大きかった。
『煉獄篇第五冠強欲』という大魔種のひとりを打ち倒したことは、この世界そのものの救済に他ならない。
何代にもわたってなしえなかったことが、今この世代になって達成されたのだ。
その喜びは人々を確かに明日へ向かわせ、前を向かせた。
包帯で腕を吊ったマーチングバンドたちは使える腕や足をフル活用して楽器を吹き鳴らし、力強く太鼓を叩き鳴らした。
晴れ渡る青空に白いハトの群れが飛び、人々は思わず顔に笑みを浮かばせた。
「故に今は。この時は祝おう。
日の光を浴びられることを、朝陽を目にしたことを、明日という今を生きて迎えたことを。
確かに我々は喪った。だが最も大切なもの――命と明日を手に入れた!
今ある命と動く腕が、子を育み教会を建て、必ずやネメシス聖教国を復興させるだろう。
そのために。その活力のために。未来の明るい我々のために、もてる全てで祝おう……!」
空に魔法の花火が打ち上がり、音楽がより盛大なものとなる。
人は強い。例えがれきに埋もれ倒れても、立ち上がり再びビールジョッキを手にすることができる。
怪我をした騎士たちが、避難所から戻ってきた人々が、生き残った今を喜びによって迎えた。
破壊によって広くなった教会跡地や公園には沢山の出店屋台が並び国外の商人たちが押し寄せ看板に零円の札を掲げている。国民が再び立ち上がり明日を生きるため、今日の費用は国庫から放出されているのだ。
人々はビールジョッキを掲げ、ソーセージを焼き、ジプシーの団体が舞い踊り陽気な音楽があちこちで流れた。
「今日この日を祝日とする! 祝勝祭である!」
- 天義祝勝祭 イレギュラーズカーニバル完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年07月22日 22時05分
- 参加人数49/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 49 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(49人)
リプレイ
●ホリデイの主役たち
今日はネメシス聖教国にとって記念日となった。
国を長らく揺るがしてきた『コンフィズリーの不正義』が覆されたことや、枢機卿や執政官が魔種であったことの発覚など、国そのものがねじれかねない大事件が頻発し、大魔種ベアトリーチェによる襲撃とその撃滅という世界的大事件も合わさりネメシスには多くの人々が訪れていた。
各国の記者や冒険者。復興を聞きつけてやってきた建設業者や勝利の祝いに乗じる形で沢山の商人や芸人がやってきては出店や音楽で大通りを彩っている。
未来への不安を吹き飛ばし今と明日を生きるべく、祭りが開かれているのだ。
「さぁさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 異世界の王子様のブロマイドだよ~!」
そんな中でいきなり異彩を放っているのがクリスティアン=リクセト=エードルンドのクリスティアンショップであった。
「ハイパーイケメンブロマイド。今回は驚きの大特価でご提供! 今ならH・C・Cクラブにも入会できる! もちろん無料(タダ)!年会費もなし!」
そんな店でバイトとして働く雨宮 利香。
(あの暗闇の海を切り裂いた仲間達や、戦い抜いた国民達の為にも、精一杯お祭りを盛り上げましょうか!)
普段はなんじゃこれと思われそうなものでも、祭りの空気とイレギュラーズヤッターの空気によってばりばり売れていく。
「どうせだし思い切り商売して儲けないとですね! もう強欲の魔種の親玉もいないんですから平気平気!」
その一方ではヨハン=レーム、セララ、ゲオルグ=レオンハート、新田 寛治といった面々が続々と店舗を出し、思い思いの商品を売っていた。
店舗のノボリにはそれぞれ『ねこパン屋』『にゃんたまクッキー』『セララコミック』『百衣乳業』といった具合に商品の名前やメーカー名が書かれている。
「あぁ、僕はこの国をよく知らなかったのですが守りきれて良かったです。何処の国であれ皆が笑って過ごせるというのは尊い物ですね」
「とにもかくにもこの可愛さを見て頂きたい。いや、実物はもっと可愛いのだが、もう、可愛いの権化といっても過言ではなかろう。少しでも癒されてくれれば嬉しいのだがな」
その場でサンドイッチを作るヨハンと、箱詰めされたクッキーを店頭にがしがし並べていくゲオルグ。クッキーはプレーンとチョコの二種類である。
一方でセララが本の切り抜き拡大ポップを掲げて道行く人々に宣伝をしまくっていた。
「最前線を走り抜けたイレギュラーズが執筆した大迫力バトル!
見所いっぱい、感動の超大作漫画『冥刻のエクリプス』の販売はこちら!
決戦の詳細を誰よりも早く読めるのはこの本だけ!」
なかなかの売れ行きにキラリと目を光らせる寛治。
「売り込んだかいがあったというものです。随分と派手に出店が並びましたね。しかしやはり人気なのは……イレギュラーズ本人が売り出す店舗、でしょうか」
イレギュラーズは今や大魔種を倒し国を救った英雄である。一部ではトレーディングカード(聖コレやポテチのオマケ)にまでなっているという話である。
それゆえ、クリスティアンやセララのようなネームバリュー商売が成り立ち、そして――。
「『愛の心を賦活する正義の輝き!魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』」
無限乃 愛の『天の杖ゲーム』が異様な人気を見せていた。
ある学説では災害や事故はそれを遊びによって繰り返すことで恐怖を克服するというパターンがあるという。特に子供たちにはそれが顕著で、愛の開いた暗黒の海を打ち払う遊びは子供たちに笑顔を取り戻していた。
そして、笑顔を取り戻したのはなにも民衆たちばかりではない。
フロウ・リバーや透垣 政宗、笠鷺 舞香たちも民衆に混じって自由に出店や音楽を楽しんでいた。
「整った街並みというのもこれはこれで…悪くないですね」
(思えば天義には魔種絡みの慌ただしい時期にしか来たことがないので……)
未だ破壊のあとは残っているが、それを補って大通りは賑やかだ。
悲しいことがあった人たちも、今はあえてといった具合に楽しもうとしている。
(天義の人々の笑顔を見ていると本当に守れて良かった。わりと嫌な仕事ばかりしてきた国だけれど、心からそう思うよ……)
「只、今を生きてる。それってとても尊い事だ。…じいさんも、昔こんな事言ってたっけね?」
のんびりと風景を眺め、サンドイッチやクッキーを手に政宗はそんなことを考えていた。
一方で舞香は賑やかな空気と上がる花火にテンションをぴょんぴょんさせていた。心も躍れば身体も跳ねるしなんなら花びらも散っていた。
「おは、な。おはなー!」
だがそんな中で、舞香はふと大柄な人影を発見した。
コレット・ロンバルド。身長302cmの美少女である。
どうやら一人で行動するのが好きなタイプらしくサンドイッチやクッキーを食べ歩きしつつ、ショーやコンサートをただ遠目に眺めているだけだったが……。
「うわ、普通にいる」
「指名手配されてた英雄じゃ」
「ほんとに可愛いんだな」
「一人で千人くらい倒したんだって?」
「ふぁびゅらす」
「寿命が延びそう」
更に遠巻きに色んな人から『聖なる巨人』として拝まれていたのを本人は知っているのか、いないのか。
●祭りの隙間に
立ち並ぶ沢山の出店の中に、ビヤガーデンスペースが開かれている。
その一角。アラン・アークライトとハロルドは顔をつきあわせ、小さなテーブルを挟んでいた。
「男二人は浮かない顔、か。…『アイツ』は来なかったよ。気分じゃねーだとさ」
「……まぁ、俺もどんな顔をして会えば良いのか分からん。俺は最初から殺す気で彼女に挑んだからな……」
「…わかってんだよ。あれが最善の方法だったってのは。死ぬ寸前……良い顔してたしな。
……お前を責めるつもりはねぇ。むしろ、辛い役目を押し付けてすまなかった…。でもよ、お前はあれで良かったと思うか?」
「……さぁな。だが、これだけは言える。最初から諦めていた俺とは違い、アンタたちは最後まで諦めなかった。アンタたちがいなければ、俺を含めイレギュラーズは彼女を“ただの敵”として殺しただろうさ」
グラスを小さく掲げ合い、二人はなんともいえない複雑な表情をした。
「アンタたちは“仲間”を“救った”。“聖剣使い”である俺には決して出来なかったことだ。俺はアンタに敬意を表する。アンタは立派に“勇者”だった」
「…そんなこと言うな。俺はまだまだだ」
一方で、戦死者たちを弔う大きな石碑の前に黒星 一晃の姿があった。
石碑は未だ作成途中で、職人が今も尚名前を彫り続けている。
(生きていれば今日この日祭りの喧騒に酔えたかもしれんが、それはならなかった。……だが、今日だけはこの場で騒いでも許されよう)
酒瓶を置き、座り込む。そしてゆっくりと楽器を鳴らし始めた。
「おっと、こっちは会場じゃなかったか」
そこへ銀城 黒羽が小さな子供をつれてやってきた。
「邪魔したな。迷子がいたんで助けてやろうと……。
ほら、もう泣く泣くな。一緒に親御さん探してやるから」
黒羽は子供の頭を撫で、大通りへと連れていく。祭りの賑やかな音が近づいていく。
(鬱々としてちゃ生きる気力もなくなるってもんだ。
それじゃあ、天義を守った意味がねぇ。
だから、今は無理してでも楽しまねぇといけねぇんだな)
●聖なるかな
こちらは大通りにいくつも作られたステージのひとつ。
人々が集まり、ショーを楽しんでいた。
(かの戦場で戦った者達と、それを支え見守った民への労いと、追悼の意を込めて……と)
そんな中で、イリス・フォン・エーテルライトは明るい雰囲気の歌を民衆へと披露していた。
(あくまで「聖歌」のようなものだから、魔法少女魂が伝わるかどうかは分からないが。
私は魔法少女だ。人々の祈りを代わりに、届けようじゃないか。
魔法少女と言う、刹那の幻想に刮目せよ!)
「ハッピーなムード! いっぱい作っちゃおう!!
神出鬼没の踊り子とは私の事だー!」
そこへ飛び入り参加したスー・リソライト。
歌にあわせて元気に踊り出した。
「せっかくのお祭りなんだから、精一杯楽しまないと。
楽しんだ分だけ、明日から頑張れるんだから!
今日は笑って笑って、笑顔で過ごそう…ねっ!」
そうしてできた人混みの中を、錫蘭 ルフナとアイラは手を繋いでいた。
「わぁ、可愛いお店、沢山……! それなら、向こうのお店も、行きましょう」
「甘い菓子に綺麗な雑貨、女の子の目を惹くものはいくらでもあるだろうし。いくらでも付き合ってあげるから感謝してよね。
子供みたいな見た目だけど、きっと君のお父さんよりも歳上だからね。精々たかってみせな」
「そうですね……今日は、少しだけ、甘えちゃいましょう」
「ああ、もう、何それ。髪に免罪符ついてるんだけど?」
「えっ、ど、どこですか?!取ってください!」
「あははっ、どこで貰ってきたのさ。変なの!」
「も、貰いたくて貰ったわけじゃ!」
風で飛んできた免罪符をとってあげたりしながら、二人は祭りの中を歩いて行く。
(これじゃあデートによく似た、観光です……ま、間違ってはないけれど!)
そんな二人を横目に、亘理 義弘はのんびりと酒を飲みながら、そしてタバコでも吸いながら花火や踊りを眺めていた。
「政治的な事はわからねえがよ、国主導で盛り上げ役を買って出るのは凄い事だな。
まして、天義がこういう事をするとは思っていなかったからよ。
印象が変わったのは一緒に死線を潜り抜けたからか……」
「かもね、戦場に散って行った勇気ある我らがトモに!」
横で同じように呑んでいたイグナート・エゴロヴィチ・レスキンがジョッキを翳した。
「オレ流の戦友の弔い方なんだけれど、ナカマが死んだときは呑んで呑んで呑んで、何回もカンパイするんだ。ゼンリョクで叫びながらね!」
「ま、それもいいか。折角の祭りだ、楽しまなきゃ損だろうし、よ」
二人はかちんとグラスを打ち鳴らした。
「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
旅一座【Leuchten】だよ!
これから紐解かれる物語は、あなた方の物語。
見ている間、胸が痛くなるかもしれない、目を逸らしたくなるかもしれない。
けれどきっと、最後まで見届けなくては気が収まらなくなるだろう。
さぁさぁ、一時その耳を、目を、身体を、我ら旅一座【Leuchten】に委ねておくれ!」
ノアルカイム=ノアルシエラの呼び込みに誘われてみれば、ジェイク・太刀川や夜乃 幻、ヨタカ・アストラルノヴァたちが辻芝居を披露していた。
(今までの天義は僕は嫌いです。神の為に死んでもいいなんて、あっていいはずがありません。でも天義は変わろうとしている。ならば僕達はそんな天義の人々をショーで元気づけようではありませんか)
イレギュラーズに扮した幻が、市民に扮したヨタカを人質にとった魔種役のジェイクを倒すという芝居である。
「さすが、イレギュラーズ!魔種であるこの俺達が負けるとは!」
倒れた演技をしてみせた後、ヨタカが希望と自由に満ちた音色を演奏し始める。
「さぁ…果てしない青空へ飛んで行け…君達の翼は…もう、折れることはないのだから…」
(一つの国が今、復興し蘇ろうと一丸となって空へと羽ばたこうとしているのだ。俺達はその広げた翼の為に吹く風となる。国へショーの申請は完了した…。皆に希望を与え笑顔を溢れさせる…そんな演目となればと思う…)
ヨタカの想いは、きっと見ている人々に届いたことだろう。
実際、食べ歩きの最中に立ち寄ったイーリン・ジョーンズとエマにも思わず足を止める程だった。
「ねぇエマ、覚えてる。最初にここに来た時は逆立ち天義の時期で」
「「聖ジェロニモ牛ステーキ串」」
二人はクレープを手にくすくすと笑いあった。
「アレ、今日は売ってますかね。ご神託の書かれたクッキーも探してみますか」
「そうね……ねぇ、エマ。今回もありがとう。一緒に最後まで付き合ってくれて」
「えひひ……。その甲斐あったというものです。いいお顔ですよ。
最近ずっと目にクマ作ってぶつぶつ言ってましたからね!」
「ん」
普段のしかめっ面も、戦乙女のフリも、物憂げなリアリストでもない、ただの年頃の小娘の顔でイーリンは笑った。
「ほら、荷物重そうじゃない、ちょっと貸しなさいよ」
「ってあぁ、いいですってそんなそんな荷物くらい……」
そういって通り過ぎていく二人と入れ違いに、祇龍院・栞とアリシア・アンジェ・ネイリヴォームがお茶を手にショーステージの前で立ち止まった。
「国中が盛り上がっているわね」
そう言いながらも、アリシアは次の戦いに向けて考えを巡らせていた。
周りの笑顔に比べてどこか深刻そうな表情をする彼女を察し、トンと肩をノックする栞。
「貴女の事だから次に向けて考えていると思うけど……今は祝勝祭を楽しみましょう?」
「ん……そうですね。そういえば知人が歌声か何かを披露するとか。行ってみますか?」
「どんな歌声がこの祭に添われるのか、楽しみね……」
二人は頷き合って、また別の大きなステージへと歩いて行った。
(今日この時は笑顔で。それが私達からの『贈り物』だから……)
シリル=エンフィールドとフラン・ヴィラネル、そしてアルメリア・イーグルトンの深緑トリオが賑やかな大通りをきょろきょろしながら歩いて行く。そんな中で浮かぶのは戦いの思い出話。
「いやー、大仕事だったわね。救護や自衛のための魔力消費が絶え間なさ過ぎ て、最後のほうはもう魔法をうまく使えなくなってきてたわ……」
「あたし達もちょっとは強くなれたかなー。
それに、あの泣き虫なシリルが守ってくれるようになったなんてねー。
でもちょっと泣きそうになってたから、やっぱりそこは変わってないけど!」
「いやぁー私たちもすっかり冒険者ね。ふっふん」
「うん、でも確かに最後はバテバテだったし……もっともっと、力を付けなきゃいけないね!
深緑が、故郷の村があんな風になったらって思うと怖いもん
もっともっと、守れるようにならなきゃ!」
「そう。ここにいる三人ともよ! 私も回復以外の魔法も納めないといけないわ。ヒーラー三人だけじゃバランス悪いし。
知識を広く、深く。大樹ファルカウの名に懸けて!」
そんな風に気合いを入れていたのは彼女たちだけに留まらない。
藤野 蛍と桜咲 珠緒も、お手伝いロボに囲まれながら祝勝会を開いていた。
「珠緒さんのおかげでたくさんの悲劇を防げたんだもの。胸張ってお祝いされてね」
「ちょっと照れますね……」
照れ笑いを浮かべながら買ってきた食べ物をカフェテーブルに広げていく。
「くれーぷとか、小さな焼き菓子とか……」
「美味しそうね! ボクも甘いの大好きだから、楽しみよ」
「ボクが買ってきたのはガッツリ系ばかりだけど……二人で食べれば怖くないわよね」
言いながら、蛍はお手伝いロボと一緒にお茶のカップを掲げた。
「天義とボク達の明るい未来に!」
「ええ、皆の未来が明るくありますように」
「「乾杯!!」」
あちこちで乾杯が交わされる。
ウェール=ナイトボートとアクセル・ソート・エクシルはそんな風景の中でのんびりと過ごしていた。
「お酒! お肉! 沢山のヒトがいる熱気を冷ますためにアイス! あ、花火も見に行こ!」
「楽しむのはいいが、腹痛や泥酔にあの魔法は効かないだろうから食い過ぎや飲み過ぎないよう気を付けろよ。
それと野菜も食べなさい……あのケバブサンドっぽいのなんか食べやすくていいんじゃないか?」
そんな風にしてウェールとアクセルは気になった食べ物をたくさん試しては楽しんでいた。
そんななかで、ふと。
「ウェール、守りたかったものは守れた?
天義を通して、なにかを見ていたみたいだけど・・・それは、傷つけられずに済んだ?」
「全部は無理だったが、一番守りたいものは……な。
名も知らない少年、依頼で生き残らせたあの子が帰ってこれる場所を、
最後は辛い思い出だったが、楽しい思い出も残ってるはずの孤児院と墓参りできるこの場所がある天義を、
あの子の将来の選択肢を守れたと思う……」
●花唄ライブ
「みんなの、へとへとな心、楽しませる、したい、から!
みんなも、いっぱい盛り上がる、してくれたら
シュテ、とーっても、嬉し!
さぁ、いっぱい歌おっ!」
マイクを手に大きなステージの真ん中に立ち、シュテルンは何人もの仲間たちと共にショーを公開しはじめた。
「辛い事もあるけど、生きてることを祝おう、勝ったことを喜ぼう! いっくよー!」
バイオリンを構えたアリア・テリアが陽気なミュージックを演奏し始め、ダンサーたちを呼び寄せる。
「みんな一緒に、せーのっ!」
アリアの合図で飛び出した津久見・弥恵が人々の心が陽気になるようなダンスを披露しはじめる。
驚いた様子の観客たちも、弥恵のダンスを見るうちに少しずつ気持ちが高まっていくのが見てわかった。
「月の舞姫、華拍子!天爛乙女の津久見弥恵、存分に見て行ってくださいませ♪(とても厳しい時を乗り越えてようやく迎えた天儀の皆様。生きてくださった皆様に最高の踊りを捧げ心から闇を取り払う為に魅せましょう)」
ステージのあちこちから仲間たちが飛び出し演奏や歌やダンスに加わっていく。
「これでしばらくは天義も安泰っスね!(…気に食わない故郷っスけど…それでも故郷っスから…本当によかったっス)」
ミリヤム・ドリーミングは複雑な心境を胸の内に納め、マイクを手に歌を披露した。
「期待の新生!チャイナ系アイドルのミリヤム・ドリーミングっスよ!先輩方、ボクの美声も聞かせてあげるっスよ!」
「いやなことがあっても、たのしくおまつりすれば、みんなハッピー!
たくさんもりあげて、たくさんハッピーになろう!(>ヮ<)」
ステージ下から飛び出してきたQ.U.U.A.がホログラムの花火を沢山打ち上げていく。
はじめは静かに見ていた観客たちも、誘うような歌や踊りによって手拍子を会わせ始める。
「いままでみたことない、たのしいおまつりにしよう!☆(ゝω・)v」
「……厳しい戦いだったけど、何とか勝てて良かった」
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズは周りの観客と一緒に手拍子をあわせながら、彼らの表情を見てどこか安堵していた。
「復興作業は大変だろうけど、この様子なら大丈夫だろう。やっぱり笑顔が一番だよね」
「確かに…。重い一件があった後だけど…悪くない雰囲気だね、好い感じだ」
鞍馬 征斗は箒に乗って空を飛び、ステージに着地すると弥恵にあわせるようにして舞いを疲労し始める。
「アタシこの国が少し怖かった。
ケドこれからもっと怖くなくなって好きな国になるといいなってこの戦いで亡くなった人達への想いと願いを込めて精一杯盛り上げるよ!
だから元気出していこーね!
貴方達は生き残ったんじゃなくてこれからも生きていくんだから!」
最も盛り上がるパートに入ると、ミルヴィ=カーソンが加わって楽器演奏と踊りを同時に披露し始める。
「明日も明後日も貴方達が笑顔でありますようにってネ!」
大盛り上がりのステージを眺めながら、ワモン・C・デルモンテは出店で買ったアイスキャンディをもぐもぐしていた。
「オイラ天義ってーとなんかみんな神様拝んでるってイメージしかなくてどんな見どころや食いもんあるかわかってねーから説明よろしくな!」
「ポテト、ウィル、ワモンさん…皆!
天義の為に戦ってくれて、本当に有難う
今日は俺が、この国の素晴らしさを紹介するよ!」
リゲル=アークライトが出店から買ってきた串焼きやらまんじゅうやらを大量に抱えて出迎えていた。
「正直…ここまで天義が華やかな祝祭に彩られるとは思っても見なかった。
この国は、未来へと生き続け…生まれ変わろうとしている。
その瞬間を皆と過ごすことが出来て、本当に嬉しい」
「俺は……お前の呼びかけに応えただけだよ。
天義が救えたのは皆と、何よりお前の奮闘の結果さ。
ま、なんにしても今日はたっぷり楽しもうか」
ウィリアム・M・アステリズムは苦笑したように振り返り、ポテト チップにジェスチャーをした。
「凄く華やかで、みんな笑顔で嬉しそう。
天義を守れて本当に良かった
あぁ、今日は思いっきり――ってリゲル、買い込みすぎだろう!」
リゲルとポテトは荷物をわけあいながら寄り添った。
しみじみと笑みを浮かべるリゲル。
「父上もきっと、空から見ていてくれるだろう。
『私に代わって再生させて欲しいと思っている』って。
俺はこの国を再生する。そして皆にまた、遊びに来てほしい」
「天義も私の帰る場所だからな。この件が落ち着いてもまた来るぞ。それに……」
ポテトが指し示すと、ウィリアムやワモンが頷いていた。
「きっと皆応援してくれる筈さ。だから、頑張って行こうぜ、リゲル」
「だな!」
四人は笑いあい、そして祭りの中へと溶けていく。
天義はこうして、明日に向かって歩いて行くのだろう。
皆の力と、国の力と、そして、イレギュラーズたちの力によって。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おつかれさまでした。祝勝祭はいかがだったでしょうか。
沢山の出店や歌や踊りやお芝居があって、沢山の人がそれを楽しんで笑って、とても賑やかでしたね。
けれどそんな賑やかさを作っているのは他でもない皆さんで、こうした今を切り開いたのもまた、皆さんなのです。
皆さんはいま、歴史のページにしっかりと足跡を残しているのでしょう。
GMコメント
■■■祝勝祭■■■
今日はネメシス聖教国をあげての祝勝祭が開かれています。
法王シェアキムは日々誠実に備蓄していた食料や金貨を開放し国の復興に当てるつもりのようです。
この祭りは復興の主力であるところのネメシス国民のムードを上げ、明日への活力をつけるために開かれたものなのです。
なので、あえて明るく。あえて笑顔で。あえてこの祭りを楽しみましょう。
■■■プレイング書式■■■
プレイングには以下の書式を守ってください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
【出店】【芸能】【観光】【その他】のうちいずれかのパートタグを【】ごとコピペし、一行目に記載してください。
・【出店】
祭りを盛り上げるべく沢山の出店が開かれています。
物資はラサや幻想の商人から高値で大量に買い付けていますので、今ばかりはお菓子や食料品があふれ、国民にはお祭り専用のチケットが沢山配られています。
むしろお店を出す人が足りないほどなので、一緒になってお店を出してみましょう。
好きなものを売ってみるのもいいですし、得意な商売があればその分野で貢献してみるのも楽しいでしょう。
・【芸能】
マーチングバンドや花火師たちに混じって歌ったり踊ったり演奏したりというパフォーマンスを行なうパートです。
首都のあちこちでこうしたムードができあがっており、その一つに混じってハッピーなムードを作り上げてみましょう。
今回ちゃんと申請してコンサートやショーを行なうとギャラが出たりするそうです。
・【観光】
国民に混じって観光してみましょう。
皆さんも申請すれば祭り専用のチケットが配られますので、花火や出店を楽しむことができます。
一緒に戦った仲間たちや、死線をくぐり抜けたアイツやコイツと祝勝ムードいっぱいのなかで乾杯するのは格別です!
・【その他】
上記三つに当てはまらない特別な行動をしたい方はこちらのパートタグをご利用ください。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【仲良しコンビ】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。
この際他のタグと被らないように、相談掲示板で「【○○】というグループで行動します」とコールしておくとよいでしょう。
うっかり被った場合は……恐らく判定時に気づくとは思うのですが、できるだけ被らないようにしてください。
また、グループタグを複数またぐ行動はできません。どこか一つだけにしましょう。
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