シナリオ詳細
<冥刻のエクリプス>地獄の釜を閉じよ
オープニング
●地獄顕現
嘆きの谷は死者の群れが発生している。
それは月光人形ではないただの死骸。ただの死体共。
意思は無く下された命に従い生者を喰らう。それが今、聖都に向かって行進しようとしていて。
「――陣を構えィ! 総員抜刀! 奴らを聖都に通してはならぬ!!」
「正義の果たし所は今ぞここに!! 総員、死力を尽くせッ――!!」
だが天義の騎士団がそれを見過ごす筈がない。
聖都の内部、城壁外部において数多くの魔種の勢力が確認されている故、戦力的に余裕を持った軍勢――とは行かなかったが、それが逆に彼らを背水の構えにさせた。聖都の民を守るのだと士気高き彼らの熱は尋常でなく。
「おやおや遂に激突が始まったみたいだねぇ」
されどそんな様子を、少しばかり離れた小高い場所から見下ろす者達が居た。
一人は胡坐をかき。顎に手を当て、生と死を争うそのぶつかりを――まるで只の催しの様に。
「どうかなMr.クリーク。君の目から見てアレはゲーム的に――」
「ハハ、論ずるに値しないでしょう。宜しいか? ゲームと言うのはある程度互いの『頭』が良くないと成立しないのですよ。ただ突っ込むだけの死骸達が相手では戦術も何も比べようがない。まぁ――」
そんな男の隣にいるはMr.クリークという男。崖下を一瞥。戦況を見て。
「天義側はよくやっている方、ではありませんか?
えぇ実に堅実な戦い方だ。教本かなにかのお手本の様に」
周囲と連携し、死骸を叩く。弓を飛ばし魔法を飛ばし、弱った相手を前衛が仕留める。
しかしその順調な戦いもいつまで続く事か――最大数の知れない圧倒的物量差はやがて疲弊を呼び、隙を呼ぶ。このままずっとあの戦いを続けるのならば時間稼ぎが精々だろうと。
「故に機を見て天義側は動くでしょうね。結局この戦いは『道しるべ』たるアーティファクトを破壊しない限り、終わらないのだから。そうでしょう――唆啓真人さん?」
そう言いながらクリークは最後の一人、唆啓真人という男に言葉を紡ぐ。
死者を現世に導くアーティファクト、それらの情報は彼から齎された物だ。嘆きの谷の不審な動きを一早く察知し、ローレットを巻き込んで調査を行った結果、魔種達のアーティファクトを直に見て。
「ええそうです。当然、魔種はあの効果の停止などしないでしょうし、天義にとってみれば絶対に破壊しなければ対象ですよ。『天義』にとっては、ね」
にこやかな顔で唆啓真人は事態を見据える。
そう。繰り返すが『天義』にとっては事態の収拾としても当然だが、それ以前に死者を動かすアーティファクトなど言語道断。不正義に違いなく、残す意味は無くなんとしても壊さなければならない。されどそれは『真っ当な心』を持つ者達にとってはの話で。
例えば世の騒乱や混乱を望む者にとっては破壊などとんでもない絶好の道具なのだ。
Mr.クリークは欲しい。彼は他者を『己が駒として洗脳』する事が出来る能力を持つが、それはそれとしてあれ程簡単にポーン生み出す道具など便利極まる。幾らでも使い捨てが可能な駒・駒・駒。盤面が潤うという物だ。
唆啓真人は欲しい。生と死。善と悪の衝突を加速させる事の出来るあの道具が。例えば平穏な村を襲わせれば住民は必死となろう。善の魂の輝きはより強くなり、悪の跋扈する隙を作る事が出来。それが次なる衝突を呼び――より世界は、人の価値は。秀抜極まるモノとなるのだ。
「じゃあ確認だ。こっからはまぁ流れで。目標物は『手に入れた奴』のモノって事で」
「ええ、異論ありません」
「私も同じく」
その時、天義の側に動きが見えた。陣形の変更か。
援軍でも間に合ったのだろう。ならば『彼ら』もそろそろ動きべきだと腰を上げる。
「しかし、不思議ですね。正直貴方は別段……興味が無いと思っていたのですが」
「ん? ああ、俺かい?」
唆啓はロストレイへ、疑問の言葉を。
唆啓とMr.クリークには先述した理由があった。しかしロストレイは――ローレットでいう所の情報屋の様な事をしている人物で。便利な駒を操れる道具、にそこまでの興味がある様には見えなかったのだ。
「ま、確かに? 死者の群れを操る道具ってモノにそこまで興味はないんだけどさぁ……」
ただ、と彼は言葉を続ける。
死者を操れる道具。と、なれば出力を抑えれば特定個人の『肉』をこの手に出来るという事で。
「つまり――さ。あの『ロストレインの不正義』とやらを成したジャンヌを死んだ後も好きに出来るって事だろう? 魂まで。死した肉まで俺の物に出来るなんて最高じゃないか――アッ、ハ、ハッ! ハハ、ハハハハ――ッ!」
高笑う。ただ精神を舐めずり回したいという畜生の如き想い一つで彼はここにいる。
いや。彼だけでなく三者ともに誰も彼も自分勝手な想いばかりだ。誰も他者の事など考えていない。全ては己が良ければそれで良し。自己愛、あるいはエゴイズムの権化共。この騒乱に乗じて更なる混沌を求めんとする者達。
彼らは『アンラックセブン』
いずれもが己が快楽しか考えぬ――危険人物達の集まりである。
●希望を求めて
「おお、ローレットのイレギュラーズの方々ですね! お待ちしておりました!」
嘆きの谷、聖都防衛線の司令部にて聖騎士は訪れたイレギュラーズへと敬礼する。
これは依頼だ。聖都へと向かう死者の群れを押し止め――魔種を撃破してほしいとの。平時であれば騎士団の総力を持って叩き潰すのだが今現在聖都には大量の『災厄』が舞い降りている。こちらへ捻出出来た兵力には限りがあり、イレギュラーズの力が必要なのだ。
「現在、複数の防衛線にて死者の大部分を食い止めていますが、物量差著しく……この状況の打開にはやはり、ローレットより提出された情報である魔種の『道しるべ』を破壊しなければならないという結論に至りました」
「そのアーティファクトは――たしか、地下墓地とやらにいる魔種が守護しているのだとか?」
その通りです、と述べた聖騎士が地図を広げる。
前回。とある事情により嘆きの谷に調査へと向かったイレギュラーズ達がいる。彼らから交戦した情報によると魔種が反魂儀式を行い、アーティファクトを起動したのだとか。それから瞬く間に死者の群れが形成され、とても少人数では打ち倒せなかったらしい。
嘆きの谷共同地下墓地。その場所は分かっている。
内部の――最深部にまで至る道筋もニーニア・リーカー(p3p002058)のギフトによる正確なマッピングによりほとんどが解明されている。道に迷う、と言う事は絶対にないだろう。後はどう撃破するか、だが。
「ぶっちゃけた話、地下墓地を爆破して丸ごと埋め尽くす――というのは」
「検討はされたのですが……万一魔種を取り逃すと侵入ルートが潰えた上で、死者の増加は止められない事態となります。確実性を考えるとやはり、直接魔種を討つ必要があるかと」
作戦はこうだ。まず【外周部】にて徹底した攻勢を行う。
これには聖都へ向かう死者を食い止めると共に、全体の手助けともなる見込みがある。
その上で共同地下墓地への【侵入班】の形成だ。地下墓地は第一~第三層まであるが、第一・第二層に関しては死者による徹底的な妨害が考えられる。第三層【最深部】の到達を援護すべく、死力を尽くす必要がある場所だ。
「騎士団の主力は【外周部】に。それから精鋭を少数集めて【侵入班】までは援護いたします! しかしどうしても現状の戦力では【最深部】の援護を捻出できず……どうか、どうかローレットの力をお貸し願いたい!!」
頭を下げる聖騎士――聖都を守るために必死なのだろう。
勿論、ローレットとしては承諾する。魔種は見逃せない敵だし、なにより依頼だ。
聖騎士達と共に――この戦場を駆け抜けよう。
「ほ、報告します! 南部より武器を手にした民衆が……!」
「何、馬鹿な下げさせろ! 正義を重んずる気持ちはありがたいが、彼らに負担させる訳には……」
「いえッそれが――彼らは死者とこちら、両方を攻撃して来ています!!」
司令部に衝撃が突き走る。馬鹿な、民が錯乱を起こした――?
呼び声がばら撒かれれば、狂気の果てならあり得ないとまでは言わないが……死者も攻撃しているという事は純粋に魔種の味方をしているという訳でもない訳だ。これは一体? これではまるで――第三勢力が出現したかのような――
「くっ……この件に関しては情報収集を! 分かり次第イレギュラーズの方々にも素早く伝達せよ! 想定外の事態ではあるが――死者の増加数から考えて時間に余裕はない! 予定通り作戦を決行する!!」
「は、承知いたしました!」
慌ただしく動く司令部。いや天義側の陣形全体。
攻勢に出るまでもう間もなくなのだろう――イレギュラーズ側も作戦を整えねば。
「おお、ゲツガ殿! 貴方もこちらにいらしていただけるとは!!」
と、その時だ。聖騎士の援軍が更に現れたらしい。
一隊を率いて現れたのは――ゲツガ・ロウライト。『月光の騎士』と呼ばれる男性だ。
「『備えよ』と指示されていたものでして。これより、私も前線へ向かいます」
「おお、陛下よりのお手紙の内容がそうでしたか……頼もしい限りです。
内乱の種に察される訳にはいかず、孫娘殿に届けていた筈ですが――」
ご一緒では? と聖騎士が辺りを見回す。されどゲツガは首を振って。
「私の孫娘は、己が為すべき所へ行くでしょう。こちらに来るかもしれませんが、あるいは」
聖都の方へ向かったかもしれないとゲツガは思考する。
向こうにも不正義は現れたのだから。今や内も外も、断罪すべき輩ばかり。
民を脅かすな魔種共よ。皆清く生きているのだ、生きていたいのだ。だから。
「行きましょう。今こそこの国を守る、死力を尽くす時――!」
お前たちの様な狂気の輩に、この国は渡せない!
立てよ皆! 愛しき者達の顔を浮かべよ! 家族、友人、そして神の教えを守りたまえ!
神が正義を望まれる!
- <冥刻のエクリプス>地獄の釜を閉じよ完了
- GM名茶零四
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2019年07月09日 23時20分
- 参加人数106/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 106 人
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参加者一覧(106人)
リプレイ
●
外周部――その戦いは熾烈を極める事となる。
この地には事態の親玉たる魔種が居る訳ではない。ない、が。その反面、圧倒的多数の死者が湧いて出てくるのだ。多くの聖騎士が共に戦う地ではあるが……奴らの数はそれすら遥かに凌駕して。例えばエネミーサーチしようものなら全方位が膨大な反応に埋め尽くされよう。
「地獄の釜――ってのは言いえて妙だな。こりゃ確かに『開いた』訳だ」
シルヴィアは見る。前に10右に20左に18……その数字は己が周囲にいる敵の数ではない。今いる数を除いて『たった今増えた数』である。これは下手をしなくても倒す速度よりも増える速度の方が早い。
とはいえそれに愚痴る事は無い。例え地獄の釜が開いたとて。
「この国を丸ごと地獄にする訳にもいかないしな」
穿つ射撃。HMKLB-PMの背に乗りて、戦域を駆け巡り射撃戦を展開する。
足を止める訳には行かないのだ。死者に捕まればそのまま波に引きずり込まれる故に。
釜を閉めようと思って呑まれてはならないから。
「……ここ、気持ち悪い場所だね……ぼく、嫌い」
そんな場の空気を敏感にルルゥは感じ取る。ここは死が溢れすぎていて気持ちが悪い。
海の外は皆こうなのか――? いやそんな筈はない、と思うが今は。
「がんばるよ。こんな気持ちの悪い場所は……なくなるべきだと、思うから」
支援を場に満たす。ゲツガを、聖騎士達をなるべく多く巻き込む範囲に位置取りながら。
戦いに高鳴る熱狂の鼓動で皆を鼓舞して。
「本当、嫌になる戦場だね……でも皆と一緒なら駆け抜けられる戦場もある」
樹理は死者の一体へと己が盾を振るう。それは攻防一体なる大盾、名をゲートキーパー。
振るい、対不浄の才知も混ざれば死者など単なる泥の如く打ち破る。彼女にしてみれば理性が飛んでいる人間も、死を恐れない人間もさしたる違いは無い。慣れれば全て等しく見えるモノだから。
「ま、それは嫌な話だけれども……! 伊達じゃないんだよね、強襲外科なんて名乗るチームに居たのは……!」
冥府の眼前で亡者を叩き返すが如くの盾は――決して輝きを失わない。
「――」
天に位置しはナハトラーベだ。放つは浄化の炎。天より注がれしその輝きが、死者を焼く。
それは火葬の如し。黒翼の少女から齎されるは、死と言う慈愛かそれとも。
さぁ――憐れな死者よ眠れ、今こそ安らかに。再なる眠りに誘われよ――
「やれやれ……この国に思い入れがあるって訳じゃないのだけれどもね」
「ん~奇遇だねぇ。なんで俺もこんな国守ってんだろぉなぁ~」
わざわざ助けに来るつもりは無かったのだと言うはケイトだ。同調せしはペッカート。
「もしかして今なら神をディスってもどさくさでお咎めなしか? 誰も聞いちゃいねぇだろ? はぁ~まじ、普段偉そうな癖にこういう時は助けてくれねぇカミサマなんて役立たずだなぁ!」
「けれども、ね」
ケイトは思考する。この天義と言う国には縁無く義理無く、本来関わる道理がないと。
己は神の国の騎士ではない――しかし。
この国の騎士やイレギュラーズの皆が奮闘している。
その姿を知って、ならば――己も騎士の一人として何もしない訳にはいかない。それらの行動を『知らぬ』とばかりに見過ごすような生を過ごしては来なかった。死霊・死骸。幾ら掛かってこようとも、氷の魔術を振るって。
「ハハハ、ヤサシイねぇ。ま、俺も神と違って直に助けようとしてる分ヤサシイけどなぁ!」
そしてペッカートも魔術を振るう。それは天より注ぎし不可避の雹。
多くの死者を捉えて貫く。遠距離術式も起動しながら――戦場で奮闘し。
「まいかーね、がんばぁる、よ!」
直後。射撃を降り注がせるは舞香だ。後衛たる位置から迅速なる抜き討ちを敵に振るっていき。
「じゃ、まに。ならななーい、よーに、がんばぁる! い、くよー!」
次々に死者を穿っていく。
されど死者の波はすさまじい。支援に徹していた天裂、ウルマ、クレア、メリエッタの四人を飲み込んで、滅さんとする程で天義の騎士も近くにおり、彼らと共同して何とかなったが――これは、一時の油断があれば死人が出そうだ。
「うーん、また大騒ぎだね……幻想の時から次々と」
賑やかなのはいいけれど、もう少し楽しい賑やかさであってほしいとシャルシェレットは言う。
幻想、サーカスから蠍の集団の騒ぎからずっとてんてこ舞いだ。騒々しく、とても心休まる様な日々ではない。これはいけない。おじいちゃんは平和が大好きなのさ、と思考して。
「ふふ。若い子に負けない仕事ぷりを見せなきゃだね」
癒しの術を振るっていく。傷を負う者の身を癒し、治癒の技を満ち渡らせて。
「何が起きるか分かりません……皆さん、どうかご用心を!」
そして聖騎士達の支援を担っていた兼続は声を張る。
味方の抵抗の力を上げし術を紡ぎながら、己が足元に湧き出てきた死者の腕を払う。地獄の底へ引きずり込まんとする力だ。幾度と掴まれようと、傷を負いながらも逃れながら――兼続は支援を行い続けて。
「全く。地下から這い出てきた汚い死者の相手なんて本当はしたくないんだが……
ま、それでも仲間に美女、美少女が多いのが救いなのだわ」
おっと口調が安定しないなぁと言うは機械の身のアインである。
己が反応速度を高め、魔力を収束。距離を保って死者へと放ち――その数を削っていく。
「――やばい、ぞんびとかそういうのやばくない? うぉーきんぐしてたら、ざ・ぞんびがでてくるとか、めっちゃんこやばくない? いっとくけどわたし、くさいのとかむりだから」
だからぜったい斬りまくる。たぶん、とセティアは決意、決意? して。
「きたないから、こないで! これは、やばい。おじいちゃんのくつしたすごいやばいけど、それよりやばい。たぶん。ひによってはおじいちゃんの、めっさやばかったりするけど、さすがにここまでない」
防御の構えから弾き出されるは斬撃だ。無数の斬撃が次々と死者達を刻んでいく。
立ち上がろうものなら戦乙女の加護から一撃を。汚物は消毒だ――!
「使ってる武器が武器だからね〜長期戦は私にはできないけど頑張れるところまで頑張るよ〜」
同時。アイリスは二刀を携えて死者へと向かっていく。
短期戦しようながらも――出来る事をやっていこうと。
「人倫無き闇を地に還す愛の天光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
瞬間。独特な名乗りと共に死者が吹き飛んだ。
前方一直線――魔砲である。つまり愛だ。
彼女は宣言する。この地に満ちるは愛と正義であると。
「さぁ皆さんご一緒に」
高らかに叫びましょう。この地を埋め尽くすは死者の、死の波では決してない。なぜなら奴らには物理的なハートが抜け落ちているのだから! ハート無き奴らには、崇高なる愛と正義のこの世界に居場所など無い。
「冥府までお戻りなさい! なんでしたら送って差し上げましょう!」
あらゆる距離を撃ち抜いて、彼女は今日も己が道理を貫いていく。
戦場を縦横無尽に欠けるは妖樹だ。死者の群れへ殺傷の霧を放ち、あるいは呪術を紡いでその数を削っていく。撃っては離れ、常に動いて。ヒット&ウェイの様な戦法を取り続けて。
「ふふ――さて、味方との位置には気を付けないといけないけどね」
しかして単独行動になりがちにならない様、位置取りには注意する。
なるべく味方の援護が出来るように。味方と共に――往けるように。
「ふっふっふ~あいつらぶっとばせばいいんすよね?
山ほどいるあいつら、山ほどぶっとばせばいいんすよね?」
フェアリだ。片腕を振り回して気合を入れつつ放つは――魔法!!
突きだした拳からは魔弾が射出され、密度の高い所には直線を穿つ魔砲の拳でブン殴って。
「微力ながら――参戦するよ! 援護は任せて!」
ネムの支援が味方に飛ぶ。癒しの力が、病を払う力が味方を包むのだ。
それでも多数の死者は味方のブロックを抜ける事もある。届く殺傷の手。引きずり込まれる訳にはいかないと遠距離術式を起動し、迎撃の構えを取る事もあれば。
「ひぃぃうじゃうじゃいる……どれだけ……!」
怖い。恐怖で身が震えそうだと、ノワは身じろぎする。
それでも頑張るのだと奥歯を噛み締める。大切な戦い、足手まといにはなるまいと。戦場を駆け巡り、治癒術を行使する。敵が見えれば鮮やかな火花を見舞って。
「迷惑は、かけない様に……!」
彼女は紡ぐ。駆け抜けながら、自身に出来る事を。
「――多いな。しかし関係は無い、俺はただ只管に刃を振るうのみ」
分かりやすくて良いと、刀は言葉を紡ぐ。
己にはこれしかないのだ。だからそれでいい。振るうのだ死者へ、一刀両断せんとばかりに。
呼吸を整え剣閃瞬かせ――彼はどこまでも敵を斬る。己が力の続く限り。
「やれやれ、タフな動乱が続くが……ここを超えれば一区切りか?」
そうあって欲しいと願うのは舞妃蓮である。彼女はかよわいアリスながら体力だけはあり余った……ん? 何か今矛盾したような気がするが気のせいかな? ともあれ死者の散らしに彼女は専念する。
「進退窮まったのであれば力になろう。何、非力ながらもやれることはあるものだ」
動き回り、オーラの縄を放ちながら。味方と共に彼女は戦場を支える。
「騎士様、お側に立つことをお許し頂けますか」
ガヴィはゲツガの近くにいた。死者の群れの最前線に立つ彼、その背から治癒術を紡いで。
「これは――ご支援を有難く。しかしここは敵の攻撃の激しい場所、無理はなさいませんように」
「いえ、この程度何のことは……共に、生きて勝利しましょう」
彼女は立つ。月光の騎士と共に。この事態の解決の為に。
「全く……死者は死者らしく黄泉路にて穏やかに眠っておればいいものを……
このようにわらわらと出てきては地獄に送るのも手間取るというものじゃ」
ふぅ、とタマモはため息一つ。無限かの如く湧き出る死者群。
叩き返してやらねばならぬなと柏手一つ。
「――さあて、これにて咲き誇るは地獄に咲きし彼岸花」
其れは仇花。地獄への道。彼岸の花はこの世ならざる美しさを秘めて。
「咲き狂え、結界『彼岸花』」
自らの周囲にいる――敵対者たちの身を包む。
「死者操りはおめら専売特許じゃねえぺ! こいつは駒取り合戦んだ!」
ネクロマンサーたる珪化樹が呼びかけるは霊魂へだ。疎通の力を持って彼らに意思を。
「打ち倒せ! 死して使役した逆賊を許すな、押し返せ!
剣を取れ! 穢れた手を自ら雪げ!」
彼らは完全に魔物と化している者達だ。意志疎通は難しいが、珪化樹はそれでもと。
死者の自我へと呼びかけ、離反が出来ぬかと試みる。射撃を行いながら声を張り上げて。
「はぁ……動く死体に暴徒と化した市民ですか……まったくもって酷い戦場ですねえ」
しかもそれぞれが別の意志で動いているとは、とオーガストはため息を一つ。
されど愚痴まで吐いている暇はない。強烈な攻撃は前衛に任せるとして。
「私は支援に動くとしましょう――さぁ疲弊している場合ではありませんよ。
ここが抜かれれば聖都まで一直線。貴方達は民を守れない腑抜けですか?」
癒しの術と鼓舞する技能を振るいながら、オ-ガストは戦場を駆ける。己が役目を果たす為に。
「ヒャッハー! 事情とかサッパリ分かりませんが、俺ことベンジャミン! この国に、推参! ですぞー!」
死者が湧き出ている? なぁに、全部ロケットランチャーで消し炭にしてやれば良いのですぞ! とベンジャミンはハイテンションだ。魔力から形成されしロケット弾は推力を得て、死者の群れへと突き進み。
「ふむ――大変な時にこそ問題ごとを起こしてくれるものであるな……とはいえ言っても止む無し。ふむ、デコイのみの吾輩でも露払いなら助力は出来るであろう」
同時。マスターデコイは死者が向かってくる間の範囲で出来る限りのバリケードを築こうと陣地構築の技能を活かす。可能な限りの所為騎士達にも手伝ってもらって、即席の陣を作り上げるのだ。
同様にPも聖騎士達の支援を行っていた。抵抗の力を上げ、更に癒しの術を放っていく。
が、それも無限ではない。幾度も駆け抜け行っていれば気力も尽きる。ならばそこからは――危険な状態に陥っている者の搬送を行うのだ。死者の群れに取り付かれている者の手を掴み、庇いながら死者少なき安全圏へと。己が傷も厭わずに、彼は往く。
このような戦況下であれば負傷者など幾らでも出る。故に医者という存在はいるものだが。
「とは言えこの戦の只中では完璧な施術は無理というもの。ポーションを出しておきますので、ちゃんと飲んで後日病院に来て下さいね。でなければ怪我は悪化する一方ですよ」
と、ステラは治癒した聖騎士へと水薬を手渡す。今はこのぐらいが限界なのだ。死者のあふれ出るこの地で万全な治癒施術など行っている余裕がない。傷が浅い者ならまだしも――医療措置が必要な程に深いのなら尚更に。
「やぁお医者さん終わったかな? ならちょっとばかり移動しよう――敵が大分増えてきた」
血の臭いでも嗅ぎ付けたかな、とステラの護衛を行っていたセルウスは言葉を紡ぐ。
セルウスもまた治癒の支援能力がある召喚物で癒しを行い、敵が近付いてきた時には攻撃の意思を持って接近を遮断していたのだが。どうにも囲みを抜けて来る敵が多そうだ。これ以上は治癒しながらその御守り、もとい護衛は厳しい。
「ほら騎士さんやめときなよ、ほーらお医者さんもドクターストップだってさ」
「戦おうとするだけの意思と元気があるのは結構ですが、それはまた別の機会に発揮してもらいましょう。一旦このまま下がります」
やれやれ、これは天義とローレットに報酬をはずんでもらわねばいけなさそうだ――と。ステラは思考し、セルウスと共に死者へ対応する。襲い掛かる魔の手を振り払い、魔力を流し込んで。
協力してほしい、という言葉を『動員指示』だとアンジェラは受け取った。
「今回は所属コロニーが敵性コロニーの襲撃を受けた時のパターンで行動すればいい筈。ならば働き人の私が先陣を切ります。死者を敵性コロニーの尖兵と判断」
それ以外を所属コロニー構成員と判断します、と機械的に言葉を紡いで彼女は往く。
幻惑のステップから繰り出される動きは回避の力を高めて、危険な状態に陥っているコロニー構成員――自身を除いての話ではあるが――とにかく彼らから遠ざける事が優先と判断して。
駆け抜ける。注意を引き、時として構成員を庇って。
自らの傷も厭わずに彼女は『働き人』としての本能を――成していく。
「うわぁ、アンデッドがいっぱい……! えっと、こういう時を想定した組手は……えっと」
……どうだったっけ、とスピネルは記憶があやふやに。い、いや大丈夫だ平気だ。頑張るから!
「えっとたしか――『常に一体のみを相手取れ』」
先手ならば攻撃の意思を、後手ならば防御の意思を。
硬い相手にはコンビネーションよく攻撃を叩き込み、常に足を止めるな。余裕が出来れば呼吸を整え――そして一番大事な事。天義の国は信用するな。
「って、おじいちゃんが言ってた、よね! うん、その通り行くよ!」
だってあたしは天義の国の人が好きだから! と最後の教えだけは守らずに。
スピネルは全力を尽くすのだ。この国の危機の為に。全てが終わったら――仲良く戦えると信じて。
「さて……真に、幾らでも出てくるようですね。随分と大勢です」
樹里の視線の先には無数の死者、死者、死者――ああなんたる数か。現世に赦されぬ魂がそこにある。
彼女は己が機動力で死者の手から逃れながら祈りを持って彼らへと天運を紡ぐ。神の受理を授かれば誰しも思考に一瞬の空白が生まれる様に。祈りの花を転用した御業をここに。
「さぁ聖騎士のお歴々方。共に参りましょう」
遍く死者に、この祈りを届けましょう。
遍く騎士に、この声を届けましょう。
「灰は灰に」
光は光に。
主よ、我らを導き給え――
死者が操られる。意志によらず、あるいは捻じ曲げられて。
「もう、死んだ人がこんなふうにもてあそばれるなんてひどいことは終わりにしたい……きっと神さまだってカンカンに怒ってると思うぞ……」
怒りよりも悲しみがモモカは勝っていた。生者も死者も入り乱れて争う戦場、なんたる混沌か。
「ごめんな、せめてもう一度安らかに眠っててほしいぞ……」
しかし自分に出来る事は一刻も早く、彼らを眠りに付けてやることだけだ。
暴風の如く振るう一撃が自身の周囲を薙ぎ払う。死者の身を砕き、もはや立ち上がれぬ程に粉砕して――もう一度眠らせてやるのだ。今度はもう、起きないように。
さて、無数に湧く死者へ対応する――だけならば随分気は楽だったのだが。
「一般人との三つ巴かよ。厄介すぎんぞ畜生!」
戦場の南部側。そちらでは『彼』に操られし一般人が死者と生者両方に襲い掛かっていた。
対応せしマグナは極力殺したくはない思いと共に無力化すべく攻撃に加減の意思を込めて。
「やれやれ――そろそろ目を覚ましてはどうかな?」
同時、往くのはパンだ。名乗り口上にて一般人の注意を引き、可能な限り嘆きの谷から引き離そうと試みる。さすれば続いては殺さぬ程度の威力の蹴りを。不殺の意志を持って彼らに当たり。
「おっと……すまんすまん、目を覚ませと言っておきながら気絶させてしまったか」
鳩尾に直撃した者を昏倒させてしまった。しかしあまり構っている余裕はない。
なぜなら一般人とは言えど数は多く――死者と違って武器を明確に持っているが故に。
「あらあら、ふふ――さ、私の目を見てください。さぁこちらを」
そして無力化した一般人を瑠璃篭は調査する。読み取るはリーディングの力。
今何を考えているのか。果たして『彼』が与えしは、一度与えた命令をこなす事を至上とする埋め込まれ型か、それとも臨機応変にリアルテイムで対応するリンク型か……どうも前者の様な感覚がある、が。
「まだもう少し確実にいきましょうか。ええと魔眼にそれから……ええ薬も使って」
待て、それは何の薬だ。医療行為に見せかけて何の薬を使おうと……ああ! 一般人に痙攣が!
「ふむ。さて……少しばかりドワーフとして技を活かすとするかの」
ゲンリーだ。侵入班が下層に進む為の道を切り開く為として基本は死者を攻撃していた、が。やがて民衆の姿が見え始めれば工作材料と鍛冶師たる技量を活かして――即席の煙幕を作り上げる。
放り込めば巻き上がる白き煙。視界を阻害し、その上で対処していく。さすれば。
「むっ」
目の前に死者が現れた――だが只の死者ではなさそうだ。古き剣を携えている。
成程これが『騎士とも渡り合える死者』なのだろう。成程成程、ならば。
「久々の戦じゃ……腕が鳴るわい」
ドワーフの技量の次は、戦場の技量を振るおうと戦己を肩に、強き死者と激突する。
「やれやれ……また死者との大規模戦闘か。混沌で彼らの安らげる地と時は無いのか?」
ヴァトーだ。幾度騒乱に巻き込まれるのだろうか、この世界は。
ヒトの飼育・管理をする為に邪魔なものは排除するのが己が役目ではあるが……こうも続くとは。
まぁいい。ともかく共にある者達と共に『彼』の対処を優先するとしよう、そう。
「医者辞めた奴に怒る資格は無いかもしれないけどさ。死者を弄ぶ奴らも。その道具を手に入れて玩具にしようとしている奴らも……膓煮え繰り返る通り越して虫酸が走るんだよね」
その一人が十三だ。表情は冷静ながら、その内にあるは憤怒に似た感情。
命を掌で転がし、まるで我が物であるかの如く振舞うその姿は許しがたい。ヴァトー。すっかり腐れ縁となった彼を――些か複雑な気持ちではあるが、今はただ純粋に守るとしよう。争っている場合ではないのだから。
雷撃の魔術を放ちながら彼は戦況を見据えて。
「ああ、たく……気分は最悪だぜ。なんでこいつらあえて危険そうな相手を探ろうとしてんだ……? とにかく死者と生者を相手してりゃいいじゃねぇか」
そんな二人を見ながらリフトも戦場に立っていた。ヴァトーに十三。
『奴』を探ろうとしている様を見ながら。
「あーもう、畜生……くそ! ほっといたら寝覚めが悪りぃだろうが! この国見捨てんのも気がひけるしよぅ。まったく、ノミの心臓持ちには生き辛い世の中だぜ。神様なんとかしてくれよ!」
リヒトは天に向かって叫びながら、異能の炎で死者を穿って。
「死者だけならともかく生きている人まで……うぅ、出来る限り殺さないようにしなくては……エレンちゃんの方は、無事でしょうか……」
と、フォルテシアは突出した知り合いを心配しながらも、今は自分に出来る事をと集中する。
往くは低空飛行。生者と死者が居れば死者の方を優先して呪詛を紡ぐ。不殺を持たぬ身、あまり積極的に生きている者に攻撃は出来ぬと判断して。生者しかおらねば――殺さないように注意を払いながら。
「全く、アンラックセブンが何者かは分からないけれど……奥にあるアーティファクトを渡したらヤバイ人達というのは分かったよ。うん、絶対に渡せないね」
「知ってますよ、私! こういうの『かじばドロボー』ってやつですよね!」
こんな一般人達を操る様な所業をする人達には、と文は言葉を紡ぐ。同調せしはライムだ。
民衆も、アンラックセブンの火事場泥棒達も放っては置けないと、文が放つは衝術。威力は無いが、それ故に命を奪わぬその技法で民衆を押し留めるのだ。ライムはヒールの術によって周囲の者達の援護をしながら、ファミリアーで情報を探る。『泥棒』達がどこにいるかと。
「ったく! ホントなんで一般人を使ってくる奴がいるのかしらね! 魔種も狂気で一般人を操って来るし……ああもう! せめてまだポーンじゃなくてナイトでも揃えればいいのに!!」
ミラーカが言うのはつまりポーン(一般人)ではなくナイト(魔物)と言う意味だ。
そちらの方がまだ手加減なしに吹っ飛ばせて楽なのだが、それでも一般人が目の前にいるというのなら――いいだろう。見せてやる。
「ふん、こんな姑息な手。真正面から潰してやるわ! 救える限り、死なせないわよ!」
威嚇術を用いて不殺の心得を。死者に飲み込まれそうな一般人には治癒術を。
何一つとして思惑通りにさせてなるものか――練達上位式によるメイドを召喚し、負傷者を運ばせて。零れる者など出させないようにと彼女は務めれば。
「やれ――己が為にと。我欲に溺れますか」
哀れな、とСофияは危険なアーティファクトを求める罪深き者に吐息を一つ。
彼女が放つのは聖なる光だ。神威たるその意思はアンデッドを焼き、一般人は不殺に留める。行うは無力化であり、救いたる浄化の光ともいえる。戦場に瞬く光を見せれば。
「我らが神の威光は、罪無き者を焼かぬ慈愛の光と知りなさい。
さぁ、正しき意味の正義をここに。誰が為の、他が為の正義を成しに行きましょう」
彼女は周囲の聖騎士達をも鼓舞して先導する。
天義の正義は、己を律し、誰が為にと剣を振るう事。情を殺してでも不和を排し調和を重んじるは、全ての民の為。善き事の為。それが、それこそが正義。我欲に溺れし者に後れを取ってはならぬと。
その時。
「来ました――ね。」
戦場を馬車で駆けるねねこが『その姿』を目に捉えて。即座に上げるは信号弾。
その意味はたった一つ。『彼ら』の発見、という意味だ。この騒動に乗じているあの者達――
「おや? 何やら目立つモノが上がりましたねぇ……狼煙。成程戦場では効果的だ」
アンラックセブン達を見つけたのだと。
一般人たちの中に紛れる、しかして操られていない。確かなる意志を持ちし者――Mr.クリーク。
信号弾の様子を見上げてふむ、と顎に手を当てれば。
「指名手配犯だぁ? 面倒な時に仕掛けてきやがって! ぶっ殺すぞ!」
マグナが往く。魔力で造り出した深紅の弾丸を奴に。
魔種が引き起こしたこの蘇りだけでも厄介だというのに、やるべき事を増やしてくれるなど怒りの感情を抱く以外に他は無い。一般人への対応時とは全く違う、明らかなる攻撃の意思を放てば。
「おやおや随分とお怒りのご様子。なぜでしょう、もしかしてお知り合いの方でもいた?
これでも私、一応は死者の方を優先するように指示を出しているのですが――」
「そういんじゃねぇんだよぉ……テメェ……」
クリークの発言――の直後。続いたのは夏子だ。
手段の為の目的だか、目的の為の手段だか知らないが……いずれにせよ。
「……くっそダセぇんだよぉ。非戦闘員を巻き込んで、あんたたち!
この世の! 誰にも恥じないように! やってんだろうなぁ!?」
「はは――なんでしょうそれ、美味なモノですか? 今度是非ともお目にかかりたいモノです」
クリークの陽気な発言――夏子は怒りに身が滾りそうだ。
しかし今は、今はとにかく一般人を優先するのが先だ。己が膂力で彼らを弾く。味方の範囲攻撃の内に巻き込めるように。極力早く。一刻も早い――無力化が出来るように。
「胸糞悪……すぎる!」
「便利な能力があるから一般人操って指揮して戦争屋気取り?
へー、ふーん――気に入らないわね」
そして夏子の一撃で纏まった彼らをリーゼロッテの魔法陣が捉え穿つ。
それは女神エウメニデスの術式。白き羽を降り注がせる彼女の魔技で。
「誰も彼も思惑通りになると思ったら大間違いよ! 一般人を盾に使えば――安全だとでも思った!?」
隔絶した攻撃能力。しかして同時に齎すは不殺の意志。それはまるで天からの意志の様で。
『Cock-a-doodle-doo!!』
瞬間。大きな『声』が響き渡った。それは醒鳴の一喝。民衆に向けた気付けの様なモノだ。引く注意。直接の効果は残念ながらなかったようだが、それならそれでもいい。
「愉悦――あるいは快楽。そういう反応を持っているのはごく少数。貴方を叩けばよさそうですね」
「ああ、一般人を扇動してる腹が立つ外道をな……叩き潰すぜ!」
醒鳴に続いてモルセラとゲオルクだ。モルセラは感情探知でクリークの反応を探知し、ゲオルクは背後より奇襲攻撃を仕掛け始める。防御の構えから放たれる一撃は、戦線を長く持たせる事を前提としてもので。
「お前かよ、あんな面白そうなアーティファクトを欲しがりに来たのは」
と、そこへフレイだ。一般人を一撃で吹き飛ばし、こんな事態を起こした者の顔を見に来て。
「なんだ思ったより整った顔してるじゃねぇか――ブ男かと思ってたぜ」
「それはそれはご期待に沿えず。駒のお代わりは如何か?」
「ハッ。いらねぇよ」
クリークの指示でフレイを取り囲む民衆達。しかし彼は頓着しない。邪魔をするなら容赦は無く。
暴風が如く暴れ狂う。逃すものか。お前をぶっ飛ばしてみるも――面白そうなのだから。
「外道め……罪なき者を操るのがそんなに楽しいか」
そして更にマスターデコイが横合いからクリークへと襲い掛かる。
外道め畜生め。何を笑っているのだ何が可笑しい。このような輩は許せないものだ。
何よりも優先して殴りに行く。割り込まれたクリークの杖に一撃が弾かれるも、それで終わりではない。その顔に――必ず拳を叩き込む。逃がしはしない。
「ははは――成程、皆さん遊んでいただけるのですか。宜しい、ならば」
Mr.クリークは指を鳴らす。と、すれば民衆達が一部クリークの元へと集おうとしていて。
「ゲーム。ゲームと行きましょう! ええ私のギフトは彼らを打ちのめすか、あるいは私一人を殺せば全て解除されます。しかし私は彼らに命を『懸けさせる』事が出来る。死すら覚悟する駒達を凌いで――私にチェック・メイトを掛けれますか?」
「テ、メェ……! ク……! ソ……! 過ぎるぞぁぁ――ッ!!」
夏子は叫ぶ。一般人を操る奴にも、そして一般人の無力化に手間取る自分にも苛立ちながら。
それでも戦場は濁流の如く荒れ続ける。嘆いても、嘆かずとも。
この地の死者の『湧き』が、止まらぬ限り。
●地獄への入り口
「地下墓地入り口を確保しました! ここはお任せを!」
地下墓地へと続く入り口。そこを幾名かの聖騎士が確保して中に侵入班を招き入れる。
中に進むごとに外の喧騒が遠くなって。外とは違う冷気が洞窟内を支配していた。
「前回は逃げるしかなかったけれど……今度こそ、終わらせてやるわ」
ここに来るのは二度目だと、ルチアは決意を新たに。
彼女は前回の調査班の一人だ。あの時はあまりに多数の敵が起動し、やむなく逃走せざるを得ない事態だったが……今回は多くの仲間と共に中へ進む。此度の戦いに退く選択肢はないのだと。
「本当なら死者に祈る時間でもあればいいのでしょうけれど、そんな場合でもなさそう、ね!」
そして前に得た情報を元に動きやすいルートを提示していたが――案の定と言うべきか死者の群れが待ち構えていた。数自体は外の戦場の方が多そうだが、ここは限られた広さしかない閉鎖空間。彼女らはこの道を強引に突破する必要があり。
「なんとしても最深部に向かい道を開かなきゃ、ね! 行こう!!」
そこへチャロロが聖騎士達と共に割り込んだ。
彼は暗き視界をサイバーゴーグルで確保し、複数の死者をマーク。そして敵の力を一度受け止め――そして、その膂力を利用して強烈な一撃を死者へと弾き返せば。
「ごめんよ、これ以上弄ばれないようにまた眠らせてやるから……今度こそ、おやすみ」
己が武器に怪力を乗せ、一閃する。
さすればそれでも湧いて出てくる死者達死者達。真正面や裏から迫って来るだけならマシだが、突然横の地中から出て来れば戦線も乱れそうになり。
「やっぱりそっちからも出てくるよね――予測はしていたよ」
それでも警戒していたひつぎの癒しの術が襲われた聖騎士の身を癒す。
全方位、全方位だ警戒すべきは。ここは敵のフィールドなのだから、と。
「骸は上下左右から湧き出るっす……止まったら埒が開かないっすよ。
とにかく強引にでも進みましょうっす!!」
腰に南瓜ランタンを備えたレッドが勢いと共に全体重の体当たりを死者へと叩き込む。
さすれば飛ばされる骸。開ける一寸の距離。そこへ別の誰かが割り込んで死者へ相対し、倒して突き飛ばして押しとどめ――少しずつでもとにかく前へ、前へと進んでいけば。
「屈さぬ正義は我等にあり――っすよ! 行きましょうっす!」
「おおその通り! 共に行きましょうイレギュラーズ殿! 正義は我らにありますぞ!!」
レッドは共に進む聖騎士達を鼓舞し、統率し士気を保って奥へと往く。
聖騎士達は嘆きの谷に集った中では選りすぐった精鋭達だ。複数の死者を相手取っても尚に不利になる事は無い。とはいえその数は決して多い訳ではなく、イレギュラーズ達の援護がなければこうまで進めなかっただろう。
「ひー! 侵入っていいながらこれ防衛線の最前線じゃないですか! 詐欺だ!!
でも責任重大!! 超燃えますね!!」
ヨハナが位置するのは入り口付近。バリケードの材料を乗せた馬車でそこまで侵入し、主要経路を確保。そしてそこからわき道を潰さんとバリケードを構築していくのだ。陣地構築の技能から、騎士の手を統率で借りて迅速に。戦うだけでなくこういう手段もあるのだと。
「うえむけ したむけ こっちむけ。
くらがり こわがり よいっぱり。
とっても くわぬは とろりとあまい。
ちしおの いろした ざくろのみ♪」
そしてヨハナのバリケードに参加するのはカタラァナもいる。
歌を歌い、同時にエコロケーションの効果も齎せば周囲の状況が掴めるという物だ。敵の数。敵の配置。近い敵がいるのならば警告の声を出して援護していく。特に視線の通りに喰い場所などは、と。
しかし分かるが故にこそ、バリケードを破砕せんと死者達が大量に向こうから攻撃してくるのも分かるものだ。凄まじい衝撃。重なる攻撃。聖騎士の一人が些かその音に不安を過らせる、が。
「なぁに大丈夫ですよっ! 終わった時、生きて帰って語り草になるような経験になりますっ!」
将来の御伽噺の一端になるのだとヨハナは言葉を紡いで、鼓舞し戦線を維持せんと。
「御伽噺、か。地獄からはとてつもない焔が溢れてるとも聞く……念入りに凍らせて蓋をしないとな」
と、いつか聞いた話を思い出すのはアルクだ。業火で溢れる、それが地獄。
己らは『そう』形容されし場所に行くのだと――異能の炎を死者へと向かって振るえば。
「……重い蓋を開け続けるというのも疲れる仕事だな」
無限の如き死者が湧いて出てくる方向をランタンで照らして、彼は吐息を一つ漏らした。
「ま。なんとしても最深部まで進んで見せないとッスね」
そんなアルクを励ます様にシクリッドが声を掛ける。例え歩みが少しずつであろうと。
「それが――ここにいる自分達の役目ッスから!」
至近距離から放つ一撃が衝撃波を帯びて、死者を穿って道を開く。
「さテ、まぁこの様な状況ですガ。どんなに相手の数が多かろうと、私がこの盾と剣に誓って耐え抜いてみせましょう。ええ、メイドとしてお約束しまス」
アルムだ。他の侵入班と足並みを揃えて、壁役として前線で奮闘している。
茨の鎧が彼女の身を包み、衝撃を持って死者を押しのけ、役割を全うせんと立ち回り。
「室内、とは些か異なるけれど……こういう場で守る戦いなら得意分野だよ」
仕えるべき主人を護るために練り上げた技、今こそ魅せようと同じくメイドのメートヒェンも往く。視界はサイバーゴーグルにて、押し寄せる死者に対し放つは――貫通せし気の射出。地を踏み砕く勢いで片足を地に。もう片方の足を前方へ、さすれば死者の骨などガラスの如く。
と、その時。洞窟内に笑い声が響き渡った。
「オーホッホッホ! ここで出会ったのも何かの運命! 敵は脅威の魔種に脅威の数の死者ですが、我々ローレットの総力を集結すれば決して勝てない相手ではありませんですわ! 為ればこそ、この道中は仲間達を送り出す為に我々で死守するのです! いきますわよ、野郎共! 特攻B(BAKA)チーム! 再集結ですわ!」
そ、そんなチームがあったのかガーベラ!!? 響き渡る笑い声は敵の注意を引いて、更に。
「アハハ!正義の味方はいつ如何なる時にも全力投球しなくちゃですよね! と言う訳で偶然集まったこのパーティーで皆さんを護衛しちゃいましょ――あ、ちなみに共通点として『脳筋』っていうワードがあるのは内緒だよ!」
やっぱり偶然か!! 集った一人目は沙愛那だ。跳躍、死者の一体の懐に潜り込んで。
「沙愛那ちゃん★キック――!」
凄まじい衝撃の蹴りを叩き込んでやった。吹っ飛ばされて更に爆発。
「HAHAHA! 怪人居る所に正ィィィ義の味方アリ!
皆の笑顔を守る為! 魔法少女プリティ☆マッスル……見参!」
そこへポージングを取りながら更に武が集った。うわああ濃いぞ。ここ濃いぞ。
「さあ、麗奈君、それに皆さん! 協力して悪に立ち向かいましょう! ぶるわぁ!」
声も低いぞぉ。雄叫びだぞぉ。武は魔法少女特有の筋肉から光を発行し、光源とならんとして、そのまま魔法少女特有の格闘攻撃に移行する。魔法少女らしい雄叫び吠え上げ死者を纏めて薙ぎ払えば、筋肉の有用性をこれでもかと示して。
「流石武おじさん……! 私も行くよ、変身……!」
天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!
悪を倒せと私を呼ぶ!
この真っ赤な拳にかけて!
全ての悪を駆逐しよう!
「――魔法少女『ジャスティス・レイナ』! 推参!!」
更に魔法少女出てきた。うん、麗奈である。彼女もまた武と共に正義を執行する為に前進し、無数の魔力弾を最前線で死者達へと叩き込んでいく。ガーベラが引き寄せた上で他の者達で一気に潰していく……この魔法少女達、殲滅力高い。
「愛と勇気と正義の心があれば! 魔法少女は絶対に負けないの!」
あと攻撃力もね!!
「うむむむ……狭いのう。押し寿司になっていまいそうじゃ……」
しかしとにかく狭い、と困った様子を見せるのは潮だ。洞窟と言うか、実質ほとんどただの通路であるこの地はこれだけ大人数が入ればどうしても敷き詰められてしまう。押し寿司。寿司になってしまうと思考するが。
「まぁやれるだけの事をやっていくしかないのぉ……!」
彼は祝福の囁きを周囲に齎し、時にサメの手刀を敵へと放って。
「……全く。天義の連中は本当バカだぜ。危険な目に遭ってんのは手前らだってのに……」
グレンは受け取った、天義の民があなたの無事を願うひとひらのねがいに想いを馳せる。
これは救ってほしいから渡した訳ではないのだ。願ったのは、彼らの無事。他者の帰還。
「……余計に守りたくなっちまうだろうが。ああ、くそ!」
負ける訳にはいかない。こんな思いを託されて、無様な姿など晒せるものか!
決死の盾としての思考と共に皆の守りを受ける。正義を持って剣を振るうなんて大層なものは心からして持っておらず――だからこそ、グレンにとっては。
目の前の『誰か』を助けられりゃ、上出来なのだと。死者の群れを捌いて捌いて――奥へ進む。
しかし物量戦の中々辛いのが残存の体力である。向こうは次々と使い捨ての死者を送り込んでくる。増えた数だけ体力の総量も増えている様なものだ。一方でイレギュラーズ達の体力は増える事は無い。減る一方である、だから。
「お化けを使うなんて、恐ろしい事を考える人達だわ……
うう、こういう墓地とか苦手なんだけど、精一杯頑張るわよ!!」
「例え戦い辛い場所であろうと、協力して動けば……より強い力になります。
私は一人でも二人でも多くの人を救ってみせます!」
トリーネやレリアの治癒が非常に重要になってくるのだ。
攻めるだけでは追いつかない。彼女らの治癒が無ければ結局どこかで限界が来てしまうが故に。
「ダメじゃない、死んだ人を起こしちゃ。ちゃんと寝かし付けないと」
更にはセフィラもだ。トリーネ同様に簡易なる充填の力を持つ彼女の癒しは比較的長く続いて。戦線の維持に一役買っている。あと一手で更なる道が拓けそうな時は攻撃に転じているが、そうでもない限りは癒しの力を放ち続けて。
瞬間、声が聞こえる様だった。それは、蠢く者。ショゴスの思考。
愚生を斃せ、愚生を屠れ。なれば貴様等と同様の骸にでも、または上等な餌となろう。
故に。故に、だ。貴様等も斃される覚悟、屠られる恐怖、喰われる最期は理解すべき。
「――食事の時間だ」
貪り喰らうは万物を。死者であろうと関係なし。
前に立ったのならば、地獄に戻れるとおもうなかれ。
「一点攻勢、捻じ込むよぉ!!
姓は燕黒、名は姫喬! 折角娑婆で聞いた名を、阿鼻の底まで持ってきな!」
そして姫喬もまた奮戦する。次から次へと現れる敵へ牽制を仕掛けつつ、前衛を担うのだ。
同時に名乗り口上も用いながら自身に狙いを絞らせる。さすれば全体として、自軍が攻撃しやすい態勢が取れるだろうという判断だ。死者の攻撃の手が彼女に集中するも、そうやすやすとは倒れぬ意気込みで。
「やれ、状況は至難なれどやる事は単純明快でござるな」
言うは下呂左衛門。太刀を構え、大上段から刀を一閃。死者を粉砕すれば。
「とにかく戦友を奥へと送り届けろと、委細承知。任せるでござるよ……!」
そのまま剣撃を震わせ、遠くの敵を打ちのめす。本来太刀にそこまでの射程は無いが、シュペル・シリーズの鎧が遥か遠くにすら攻撃を届ける効力を彼に及ぼしている。波の様に湧いてくる敵に討ち崩れそうにもなるが、闘気を身に纏って。
「最深部まであと少し……後は頼むでござるよ……ッ!」
死力を尽くし、立ち続ける。
――自分の欲望の為に死者を利用する。成程『そういう事』はひと昔前ならば。
「ワッチは納得をしたでしょう――ですが茶の心を知った今は、その罪の重さを知りました」
ニャアと語尾を付けるは平助だ。それは『やってはならない事』なのだと自覚したその時から彼は変わった。特に相手が現世の者ならざる存在ならば尚更に。いるべき場所に、いるべきなのだと。
だからこそ進む。死者の出現を警戒し――同時にこの組は『奴』の襲来を警戒して。
「今回はいつも戦ってるメンバーとはばらけたが……そんでもって俺達だけ帰って来れませんでしたは格好悪すぎる。無事に帰って、いつもの酒場で馬鹿騒ぎするぜ――姉ヶ崎先生、平助」
「ああ勿論だぜ!! でもくっそ、困るんだよな天義が潰れちまったら。なにせ――まだ描きたいシチュエーションで同人誌ぜんっぜん描ききれてねーのよ! ネタ! ネタがまだまだあるんだよぉおお!」
晴明の決意に続いて春樹は叫ぶ。晴明は南瓜ランタンで周囲を照らしているが、春樹は暗い場所があれば自身の身体を発光させて、支援と成すのだ。
「ここは……死臭に満ちているね。怖い……場所だよ。でも」
ごめんね、宇宙人さんと謝るのは平助の少し後ろにいるぱるすである。人が大勢死ぬかもしれないと己は知った。知ったのならば『何もしないまま』は絶対に嫌なのだ。だから。
「君達に送るために培ったこの電波。今だけは自分のために使うよ」
決意と共に前へ進む。身体を発光させながら暗闇を照らせば。
ふ、と。何かの気配を感じた。死者ではなくイレギュラーズ達ではなく――しかし具体的にどこか分からず。
「そこ なんか いるーよ♪」
『奴』を警戒していた以外でその存在に真っ先に気付いたのはカタラァナだった。
エコロケーションで地形を把握していた彼女は『不審な存在』を察知したのだ。音の反響が些かおかしい。死者にしては動かず、生者であればそこに留まる理由はなく――
「――そこか!」
放つは毒ガス。晴明の一撃だ。
それは『何の変哲もない』様に見える壁の隅へと放たれて――
「おっと。成程音を出されてからの反響までは想定していなかったね」
直撃寸前。瞬時に動く影があった。晴明の攻撃を回避したその人物は。
「おやロストレイ・クルードルサンじゃありませんか。そんな所に隠れていたんで?」
「いやハハハ何、これが傑作でさ! ほら、死者達の掘った穴を通ってみたはいいんだが……第三層じゃなくて第二層のここに降りちゃってさ!! 死者が多すぎて戻るに戻れず。めんどくさくて隠れてたんだよね!」
平助の問いにアハハハハ! と笑いながら答える――ロストレイ。
『穴』を通ってきたというのか。確かにそれを使えばショートカットは出来るだろうが、単独孤立する危険性が高く本来使うべき場所では無い。例えば暗躍や隠密に優れる者ならばいけるかもしれないが、下手に死者に察知されれば袋叩きもあった筈だ。
「――まぁいいさ。とりあえず間抜けを晒したのならここで終わってもらおうか!」
「まぁ間抜けを晒したのは認ッめるけどねぇ! ああくそ。君達が気付かなきゃ後ろからついてって、第三層に降りて潜んで混戦の中で掻っ攫う予定だったのに――」
春樹と闘争の姿勢。さすればロストレイは瞬時に。
「ちょっと遠回りになりそうだ、ネ!」
刀を抜く。が、狙った先はイレギュラーズ達ではなく『周囲の壁』だ。
「ッ――まさか、これは」
ブロックに入ろうとしたメートヒェン。
しかして周囲の壁を薙いだその一撃は周囲、未だ地中に残っていた死者を呼び起こして。
「ハハハいやごめんね! だって君達全員相手にしたら流石に死んじゃうし、さッ!」
「謝る必要はない」
と、自身も危険になり得る混乱を巻き起こしたロストレイへ急速に接近したは。
「だが人も、物事も、そうそう都合良く動くものではないと知れ。逃がしはしないぞ――私は異端審問官。悪しきを暴き裁く者! 世が違えどそれに相違なし!」
ジョセフだ。悪の道を往く者の生存を彼は許しはしない。
繰り出すは異端審拳。悪を苦しめ続けた拷問具の如き威圧を伴う彼の一撃を。
「おっとぉ。喉を狙うのは――中々『善』の戦い方とは言えないんじゃないかい?」
寸前。刀の腹で受け止めた。
衝突は凄まじく衝撃が周囲を薙ぐ。続くジョセフの二撃を捌き、ロストレイの横薙ぎは潜って躱す。
僅か数秒の出来事。遅れて到達せし死者の乱入。混迷せし第二層、だが。
先頭は辿り着いていた。階層を降り続け、イレギュラーズ達はついに。
嘆きの谷地下墓地・第三層・最深部へとその足を再び踏み入れに来たのだ。
さぁ。地獄の釜を、閉じに来た。
●
外は死者が多かった。この世の地獄の様であった。
中は死者が淀んでいた。地獄の入り口の様であった。
だが、だが。
『此処』と比べれば『圧』が無かった。
広い空間。中央に巨大な棺がある。ただし蓋は開いており……
そこからは未だに死者が湧いて出て来ているのだが。
正に湯水の如く。地獄の底の濁った沼から這い出てくるかのように。
ここは、死の臭いが些か濃すぎる。
「こんな……まさか、一体どれだけの者が此処に捨てられてきたんだ!?」
ソアはあまりの死の数に驚愕を隠せない。
外の様子を見てきた。死者が多かった事は感じていた。しかし真の意味で感じていなかったのだ。『嘆きの谷』とまで名付けられたその地の意味を。歴史が積み重なると同時に積み上げられた死体の数を。
「貴様ら――生きている者がここまで辿り着けるとは……」
だが臆すつもりはない。なぜならば、そうついに辿り着いたのだから。
「ドーモ、俺ぁキドーってんだ。よろしく。挨拶大事、だろ? ……で、アンタはなんてえの?」
「……愚者に語る口は持ち合わせてはおらんわ。薄汚い輩めが……」
へ、そうかよ。とキドーは言葉を紡いで奴を見据える。
黒衣の魔種。ついにその姿を彼らは捉えたのだ。奴を倒せねばこの地の勝利は無い。より厳密には奴の持つアーティファクトの破壊をせねば、だが。胸元にあるそれを破壊するはもはや奴の撃破と意味は同義で。
「数を揃えた程度で……この地を攻略出来るつもりか、愚者共め!」
「ええ。死者は在るべき場所へ、魔種は滅ぼし糧とすべし……ってね。諦めなさい」
お前を狩りに来たのだから、とフィーゼは言葉を紡ぐと同時魔槍を放つ。
それは一種の投擲だ。魔力で形成された黒き槍は魔種へと向かい、その身を穿つ。
魔種は滅ぼす。未来の種とする為に。お喋りは――するつもりはない!
「あれを壊せば地獄の蓋は閉じるんだな! いっぱい攻撃して壊しちゃおう!!」
「ここで押し通れなければ……皆さんの努力が水の泡になってしまいます。
どのような思惑があるにせよ、私達は天義を守り抜きます……!」
おばあちゃんに会いたいんだ! とノーラは天義地獄へと至る道を否定し皆に癒しの術を施して。続いてシフォリィは目にも留まらぬ連続突きで道を斬り開かんとする。まずは魔種に肉薄せねば話にならぬが、ここにも多くの死者が湧いている。まずは彼らの排除からだ。
同時、コゼットが周囲を飛び回る。跳びまわり、跳ねまわり、その音で魔種の注意を引かんとして。
「ん……当たらないよ。早々には、ね」
煩わしいと感じた魔種が魔力弾を放つが、寸ででコゼットは回避する。
しかし掠めただけでも相当な威力を保持していそうな勢いだった。直撃した時の威力は計り知れない。それでも味方の盾となるべく、死者を兎の蹴りの如くの勢いで打ち倒して戦場を駆けるのだ。
「何やら大変そうな様子……とあらば! かわいいボクが!! 助太刀致しましょう!!」
「さて――今のあたしが魔種を相手にどれだけやれるかね」
更にエナとエレンシアも最深部へと続く。目指すは魔種。更に死者の掃討。
エナは旋回させた得物を振り回して死者を薙ぐ。殲滅を優先し、死者の戦線に『穴』を開けるのだ。エレンシアもまずは死者へと巨大なる剣で一刀両断。周囲の味方から離れすぎず連携を取れる範囲にて死者の排除を行って。
しかし、外と違ってここではその排除が中々に進んでいるとは言い難かった。能力云々の問題ではない。なぜならここはアーティファクトに最も近い、つまり死者蘇生の効力が最も強い場所であるのだ。外よりも遥かに早く、多いスピードで死者は部屋を埋め尽くそうとしていて。
「あああもうアンデッドに加えてヤバい奴らの警戒まではしてられないよこれ……!?」
攻撃を重ねていたティスルが思わず叫ぶ。
全てなんとかして、そして生きて帰るつもりはあるのだが――『なんとか』の部分が困難だと感じ始めて。
「おおお甦れ死者達よ……現世に舞い戻るのだ。地を埋め尽くせ。汝らは正しい死者なれば!」
魔種の叫び――アーティファクトの操作に取り掛かったのだろうか? 死者蘇生のスピードが更に速まったように感じる。その瞬間には魔力弾による攻撃が無いので両立は出来ていなさそうだが。
「全く、厄介なモノを持ってるよね――でも今回はハデに行くよ!」
「貴様この前の……!」
故にその瞬間の隙をイグナートが狙う。飛燕の如くの動き。瞬き、長距離から攻撃を届かせれば。
「ぬぅぅぅぅう!!」
己が周囲に死者を纏わせる。まだそこまで深いダメージは受けていない筈だが安全策、のつもりだろうか? 自らの守りを優先し、生存を優先するなど。
「死者を崇めつつ、生に執着している……矛盾カナ? キ・キ!」
ミミは周囲。『不審な人物』が居ないか探知を試みながら魔種へと攻撃を紡ぐ。そうだ。仮に魔種との戦いが上手く行ったとて『それで終わり』ではない。どこかにいるかもしれない『奴』の注意を怠る訳にはいかず――
「ふ、は。ははは……死者など所詮、あの御方に捧ぐ有象無象よ。これだけの数がいるのだ……別に大事にする必要はあるまい。所詮この世からの退場者共。有効活用するだけの話よ!」
「なんだと……私の前で、死者を冒涜したな? 貴様……」
魔種の言にアレックスは奥歯に些かなる力を。
奴は、そう死者など道具としてしか思っていないのだ。正しい死者云々と述べていたがそんなモノはただ単純に方便か起動キーか何かだったか。いずれにせよ死者に敬意などなく、簡単に使い潰せる駒としか思っていない。
思わず放つは雷撃。死者を穿ち、貫通するその一撃は数が居ようと関係ない。
届きさえすれば奴の身を捉えて。
「フ、ハ、ハッ! 無駄だ無駄だ! 無尽蔵の死者という物量を侮るな!!」
それでも、明らかに増える速度が速い。
『道しるべ』の操作を主とし、魔種自体が攻撃はしてこなくなったが――代わりにもはや近接範囲に寄る事すら難しくなり始めている。時折混じる聖騎士と同レベルの死者も混じればすぐさまに撃滅ともいかず。
「は、はた迷惑なお宝だにゃあ……死者は死者のまま眠らせてやれって話だにゃ!
こんなに起こしてどうするつもりなんだにゃ! 全部ちゃんと面倒みれるのかにゃ――!!」
死者の波に飲み込まれんとしているシュリエが声を張り上げるが、まずい。対処能力を徐々に上回り始めている。あともう少し範囲攻撃か域攻撃に優れる者が多ければ効果的にダメージを与える事が出来ようが、今現状では分が悪い。
魔種は勝つ戦法ではなく、負けない戦法を取り始めたのだ。
己さえ生き残っていれば――後はどうとでも挽回できると。
「さぁ――貴様らも死者となるがいい!!」
道しるべの効力が最高点に達する。禍々しき魔力が収束し、凝縮し、この地に包んで。
今、嘆きの谷に放り込まれた全ての死者が起き上がる――
瞬間。
外で戦っていた者達は見た。聖都より何か『光』が来たと。
騎士団の陣の中で荒れ狂っていた死者に着弾したそれは――例えるならば。
『白い薔薇』
最深部の一歩手前。侵入を支え、今なお死者が最深部へと行かぬ様に抑えている者達は見た。
『白い薔薇』を。
「こ、これは――?」
死者が塩になっていく。純白の塩に。振り上げた筈の拳が力なく崩れ落ちて。
そしてその光は――通路を超えて最深部へと雪崩れ込み――
●エンピレオの薔薇
「ぬ――こ、れは!?」
それは聖都から届いた光。アストリア枢機卿が保持していたレーテー石。
通称『エンピレオの薔薇』の効果だ。対アンデッド用に造り出されたその効力は凄まじく、直撃した死者は全て『塩』に変えられる。そして同時に、あのアストリア枢機卿が守護していた筈のこれが起動したという事は。
「こんな……こんな馬鹿な! 枢機卿は何をしている……!? これでは――!!」
死者を蘇らせても何の意味もない。
道しるべはあくまでも死者を起動する『だけ』の道具だ。対抗する能力などは無く、その死者が片っ端から塩に変えられるのではほぼ無力化したも同然の出来事である。
ここは闇の深い地。全ての死者が無力化されている訳ではない――が!
「如何なさいましたか――随分と顔色が悪くなったように感じますが」
状況は今、明らかに変わったのだ。
処刑人を自負し、咎人の処刑に赴いたパティは弱体化した死者を斬り捨てて。
「死者の尊厳を辱める様な事をしたことは……また罪です。御覚悟を」
「――小賢しいわぁああ! 少し場が動いただけで勝ったつもりかぁ!」
魔種は激怒する。道しるべの効果を最大限発揮し、弱体化しながらも死者達を蘇らせる。
しかしやはり圧倒的に数が少ない。動きも鈍くなっている、これならば。
「ククク……ハハハ!! 先程までの勢いはどうしたのだ!
さあ今こそ我が姉弟の力を見せつけてくれようぞ! なあ弟よ!!」
「正直、異教である俺にとって天義がどうなろうと関係はないが……死者を操る行為は神への涜神、許すまじき行為。流石に見逃すわけにはいかない……そしてこの好機もな。行くぞ魔種よ!」
あっちょっとラクリマ無視はやめて……! とクリロは悲痛な声を上げてラクリマにしがみつく。そんな姉をラクリマは半分無視しながら弱った死者に、魔種に攻撃を重ねるのだ。
「――我が魔力よ忌まわしき心、打ち取る裁きの力と為れ!」
姉からの半分強引な支援も受け取りつつ、彼は往く。
そしてそれはこの場にいるイレギュラーズ全て同じ想いだった。このタイミングを逃す手は無い。今こそ魔種を討つべく総攻撃を仕掛けるのだ。
「自分の国が滅びる。それはとても悲しいことニャ……どうしても自分の時と重ねてしまうニャ」
だからこそ今度こそ、守り切ってみせるニャと紡ぐのはニャンジェリカだ。
死者を薙ぎ、魔種へと届く道を切り開いて。同時に小雷の雷撃も続く。
「やっぱり生き残っている死者も明らかに弱っている……火力を集中させよう!」
「ああ、キリがない所だったけど――これならいけそうだ!」
ソアも続けば徐々に。徐々に魔種への包囲網が狭まっていく。凄まじい威力の魔力弾が放たれ続けるが、思わぬ事態に焦りを生じたか――魔種自体の精度も落ちているように感じる。
これならば接触出来るだろう。さすれば魔種へ、そして道具へ攻撃が届く――
「――だからこそお前がここで出てくるのだろうな、唆啓ィィ――ッ!!」
「見つけたよ――動けば気は誤魔化せないみたいだねぇ!!」
その時。汰磨羈とヨランダが攻撃を加えたのは『死者』だ。
太極律道・刋界剳。見えぬ、不可視の力は魔種付近に位置していた死者を容易く穿、って。
「くっ……おのれッ、まさかここまで来て見破られるとは……!」
ない。死者出会った筈のその存在の姿が揺らいでいく、それは。
アンラックセブンが一人――唆啓真人。死者の姿を模して機会を伺っていたロクデナシ。
「ぬ、ぉ――!? 貴様ァ!!」
気付いた魔種が唆啓へと強烈な魔力弾を叩き込む。近場にまで居たが故にこそ躱せず。
手持ちの暗器でなんとか捌くが――結局飛び退く事になった。
「成程、死者の姿にも化ける事が出来るなんて結構万能ッスね。
……でもそうか。『気配』や『性質』まではアンタは偽装出来ないって事ッスか」
言うは葵だ。死者達を相手取りながら、彼もまた唆啓の乱入を警戒していた彼は即座に彼をマーク。
唆啓のギフトは姿をかなり自由に変える事が出来る様だ。しかし姿以外は独自の力でなんとかする必要があり、特に気配だけはどうしようもない。恐らく停止して気配を消失させる非戦の技能でなんとかしていたのかもしれないが――
「これ以上は逃がさないッスよ――ていうかいくら後退した所で逃げられると思ってんスか!」
「……こうなった以上は流石にどうしようもありませんね。ええ、退けると思っております」
そもそも彼が『いつ』辿り着いたかはともかく――『どう』辿り着いたのか。
それは死者達の通ってきた『穴』だ。ロストレイは第二層に降りてしまったが、唆啓は第三層へと降りる事が出来た。そこからは慎重に状況の推移を見守っていたのだろう。恐らく辿り着いたのは……イレギュラーズ達との戦いが始まった後か? 戦闘が起きる前ならば魔種が流石に気付いた筈だ。
「そうは、させるかッ!」
追撃する葵と汰磨羈。しかし撤退の意思を決めた唆啓が一瞬早い。
その首筋に攻撃を掠めながらも寸での所で穴を駆け上がる。角度が緩い故か、おのれ。
しかし最低限アンラックセブンを撤退させる事には成功した。となれば、あれを奪取される恐れはもう無いという事であり。
「決着を着けようか――今こそね!!」
ティスルが声を張り上げ、皆と共に魔種へと進撃する。
死者が邪魔をしてくる。しかし彼らは数を減らしており、その手は先と比べて弱弱しい。
魔力弾が穿たれる。幾名もの体を抉り、しかし運命を燃やしてでも立ち上がる意志がその歩を進める。
幾千もの死を操った。幾万もの死を顕現させた。
「な、なぜだ」
またか。また負けるのか!? ベアトリーチェ様に死者を捧げ、この国を転覆させる筈が!
「よぉ、これが最期だぜアンタ」
放った極大の魔力弾。それを、視線の動きから察知したキドーが回避して。
踏み込んだ、その瞬間に。
「名前は何って言うんだ――それとも、ああ。黄泉路まで持ってくか?」
「アアアアア、がぁああああ――!!」
胸元に炸裂するは――小鬼の手投弾。
衝撃。同時、アーティファクトにヒビが入る。そのヒビはもはや止まらず。広がり続けて――
砕け散って、破裂した。
●終幕
「――おっとぉ? これは大変状況が変わりましたね」
外周部。死者が塩に代わる様を見たMr.クリークが潮時かと感じる。
些か目前の盤面に集中しすぎて第三層に降りる事を忘れてしまっていた……が。
『まぁいいか』とも思いはする。結局、楽しければそれだけで良いのだから――
「待て。逃げるのか」
「ええ今回はこれまでと言う事で……なぁにまたお会いする機会もありましょう。ではこれで」
ヴァトーの言。追撃の一手を凌いでクリークは撤退する。『駒』達に足止めを命じながら。さすれば。
「おっとお帰りかい? Mr.クリーク」
ロストレイが居た……が、何やら負傷気味だ。どうもアーティファクトは持っていなさそうだが。
「いやーイレギュラーズ達怖いねー。マジで追撃激しくて殺されるかと思ったよ。
あの拷問官怖い。死者が塩に変えられた時点で撤退して正解だった」
「……成程。一手の差がこの負傷に繋がりましたか」
と、更に唆啓も合流した。ものの彼が一番負傷が激しい。
あと数手追手が多ければ、或いは穴を塞がれたら死んでいたかもしれない。
「これがローレットですか。全く……いやはや見事なものです」
Mr.クリークは言う。正直自分たちは『楽しみ』に為に此処に来た。しかし別にそれだけに興じに来た訳ではない。抗争の最中を利用すれば、一瞬でも勝利しうるタイミングがあるのではないかと――思っていたのだが。
「ほぼ完封だったね。ハハハいや――残念だ」
終わってみれば付け入る隙なく、潰された。
天義の勝利の雄叫びが遠くに聞こえる。地獄の釜は――閉じたのだ。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでした。開いた釜は閉じられました――
道しるべが消え失せた以上、もう一度開く事は無いでしょう。
皆さんの勝利を祈って。ありがとうございました。
GMコメント
茶零四です。
ついに大規模攻勢が始まりました。地獄の釜は開かれたのです。
『開け方』を欲する者達が居ますが、彼らも排除しつつ釜を閉じましょう。
決戦です!!
■Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
■プレイング書式:例
【グループor同行者ID】
【外周部】
パンドラ使用有・無
本文
上記の形式でご記入下さい。
■勝利条件
嘆きの谷地下墓地最深部にいる魔種の撃破。
アーティファクト『道しるべ』を破壊。
■嘆きの谷【外周部】
聖騎士300名と共に大量の死者を相手取ります。
戦場としては非常に広い場所での戦いとなります。視界に問題はありません。
また南部からは、詳細は後述しますがMr.クリークに操られた一般人が大量に(と言っても死者程ではない)数が出現します。聖騎士は「なるべくの範囲で打ちのめすだけにして欲しい」と言っています。
一般人達は武器を所持しているとはいえ、そう性能が高い訳ではありませんがMr.クリークの指揮下にある場合戦闘能力が向上します。また、命を恐れていないのでそういう意味では容易い相手ではありません。
味方NPCとしてゲツガ・ロウライトがここで、基本死者を相手に戦っています。
多くの騎士と共に奮戦してください!
三つの戦域の中で、最も敵の数が多い戦場となります。
■嘆きの谷・地下墓地【侵入班】
聖騎士精鋭20名と共に地下墓地へ突撃します。
地下墓地は外周部と比べて狭い空間となります。
また不思議な光る石で照らされており、視界には問題ない場所【も】あります。
大量の棺や内部には複数のルートがある地ですが、前回の調査班の活動により最深部までの最短ルートは把握しているものとして取り扱います。味方の聖騎士達は外周部で戦っている聖騎士より全体的に性能が高いメンバーになります。
三つの戦域の中で、最も狭い範囲で、かつ耐える必要がある戦場となります。
■嘆きの谷・地下墓地【最深部】
大きな空間が広がっており、中央に一つだけ棺があります。
その棺は開けると深い穴が広がっており、大量の死体が這いずり出て来ています。
魔種が存在します。必ず撃破してください!
三つの戦域の中で、最も激戦地となる戦場です。
・魔種
非常に高性能な魔力弾を射出し続ける魔種。
遠距離・近距離共に攻撃力でゴリ押す様なスタイルで戦っていました。
前回の交戦や情報収集の結果、全体的に性能は高いのですが、HPだけがそこまで突出していないようです。死者を押しのけ、攻撃をぶつけ続ければ有利になれるかもしれません。
胸元にアーティファクトを所持している様です。
・アーティファクト『道しるべ』
道しるべ、と呼称されるアーティファクトです。
周囲の死者を呼び起こし、操作可能な危険な道具だと判明しています。
破壊した時点で死者を呼び覚ます効果は失われます。
ただし呼び起こされた個体はまだそのまま残るので撃破は必要です。
■死者×無数
嘆きの谷全域に登場するアンデッドです。
凄まじい勢いで戦場に増えます。数の上では明らかに上です。ほとんどの個体はステータスが高くはありませんが、稀に聖騎士とも真正面から殴り合えるアンデッドが出現します。生前の素養に影響されているのではないかとされています。
出現地域はほとんどが地中から地上へと穴を掘って出現します。
その穴は【侵入班】や【最深部】へと続いている穴も……?
■アンラックセブン
全員が何らかの危険な素養を持った指名手配犯達です。
アーティファクト奪取を狙っています。生死まで掛けてるかは不明です。
魔種側ではありませんが明確な敵です。撃破・撃退してください!
最初は全員【外周部】に出現します。
■『<<特級災厄>>』唆啓真人(さけいしんじん)
旅人。【外周部→最深部】に出現します。
仙術による広範囲攻撃や暗器による攻撃など集団の中での戦いを得意としています。
『外見・声を自在に変える』ギフトを所持しています。
■『Bad13』ロストレイ・クルードル
旅人。【外周部→侵入班】に出現します。
アンラックセブンの中において情報屋の様な立ち位置の人物です。
戦闘能力の程は不明ですが、戦闘よりも暗躍に特化している人物と言われています。
■『戦争屋』Mr.クリーク
旅人。【外周部→???】に出現します。
回復から攻撃まで神秘メインでこなす万能型とされています。
後述のギフトで一般人を操っている首魁です。戦争という盤面に非常に興味を抱く危険人物であり、喜々として一般人を指揮しています。最初は指揮ゲームを楽しみますが、優勢なら更なる奥へと向かうでしょう。
ギフト『盤上の支配者(ゲームマスター)』なる特定条件下において対象を洗脳する事の出来る能力を所持しています。条件の詳細は不明ですが、いきなり相手を洗脳することが出来るようなモノではないので少なくとも戦闘中においては心配する必要はありません。
洗脳された相手は『駒』と呼ばれます。
『駒』は戦闘不能になると自動的に洗脳が解除されます。
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