PandoraPartyProject
クリスタルが割れて
昏き瘴気が風に流され頬を撫でた。どろりと纏わり付いていた気配が消え失せる。
『咎の黒眼』オーグロブの身体は闇に溶けて跡形も無くなっていた。
Bad End 8の一柱、オーグロブは打ち倒されたのだ――!
戦士達が勝利の雄叫びを上げる中、部屋の奥に置かれた巨大なクリスタルへ『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)は手をついた。
クリスタルの中にはジュリエット・フォーサイス(p3p008823)が閉じ込められている。
「……ジュリエット」
その言葉に呼応するようにクリスタルが光を帯びてパリンと割れる。
雷神ルーの力でカタチを保っていたジュリエットの意識が身体に吸収された。
長い睫毛がゆっくりと持ち上げられ、その下に銀白の瞳が輝く。
「ギルバートさん」
愛おしそうにジュリエットは夫の名を呼んだ。安堵の表情と共に深々と抱きすくめられる。
よかったと耳元で囁いたギルバートはジュリエットの唇にキスを落した。
溢れる愛情は唇一つ分では伝えきれないけれど、再会の喜びが押し寄せたのだ。
「君を失うかもしれない恐怖は、二度と味わいたくないな」
「ええ、私もですよ」
お互いを強く抱きしめた二人の姿に仲間たちも胸を撫で下ろす。
「姫様! ご無事ですか!」
「マリアンヌ……来てくれたのですね」
本来であればジュリエットの従者であるマリアンヌは真っ先にこの戦場に駆けつけねばならなかった。
されど、それが出来なかったのは理由がある。
「はい! 増援を連れてきました。此処までの退路の確保はしてあります」
マリアンヌの後ろを見れば天義の貴族や鉄帝の軍人などの姿もあった。
心強い仲間が次々と集まってきている。
辺りを見回しているマリアンヌにジュリエットは探し人の居場所を指し示した。
入口の壁に寄りかかっているディムナの元へマリアンヌが駆け寄る。
「ディムナさん! 私、とても心配して……!」
「マリアンヌ、帰ったら聞いて欲しいことがあるんだ。いいかな?」
男の眼差しにマリアンヌは頬を染めて頷いた。
「龍成、大丈夫ですか!」
「おー……」
地面に座り込んでいた『刃魔』澄原 龍成(p3n000215)に駆け寄るのはボディ・ダクレ(p3p008384)だ。
勢い良く龍成の胸へ飛び込んだボディは、彼の身体を強く強く抱きしめる。
「すごい抱きつくじゃん」
「だって……!」
戦いの余韻はボディの『感情』を大きく揺らした。
普段の冷静な親友からは考えられないぐらい声が震えている。
今にも泣きそうな顔で見上げてくるボディを龍成は優しく撫でた。
「龍成……」
ボディは龍成の首に手を回し、唇を押しつける。
どうして自分でもキスしてしまったのか分からないけれど、龍成の無事を確認できたら我慢が出来なかったのだ。そんなボディの変化を龍成は優しく包み込む。
「帰ったら、引っ越しの準備だな」
龍成たちの声を聞いた『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)は傍らの鹿ノ子(p3p007279)を翼で覆う。
「私達も準備をしていかねばならぬのう」
鹿ノ子は不思議そうな顔で首をこてりと傾げた。
「準備ですか? 僕もお手伝いしますよ」
元気よく身を乗り出した鹿ノ子に遮那は笑みを浮かべる。
「そうだのう、まずは其方に似合いの花嫁衣装を仕立てる所からかの」
清らかなる衣を着た鹿ノ子はきっと美しいと遮那は思い馳せた。
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)は『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)を見つめる。
アルエットがカナリーに戻りたいと思う日は来るのだろうか。
「そんな日が来たら、俺は……ずっと呼びたかったんだ。アンタの名前を。
――カナリー・ベルノスドティール」
名を呼ばれ振り向いたアルエットが「なあに?」と応える。
「ジェラルドさんが呼びたい名前で構わないわ」
アルエットにとって、カナリーもアルエットも何方も自分の名前なのだ。
「ええ、そうですとも」
傍に居た鶫 四音(p3p000375)がアルエットに抱きつく。
「あなたはあなた……なのですから。それに何処へ行こうと傍にいますし」
四音の指先がアルエットの頬を撫でた。
「シジュウ様、雨水様は大丈夫でしょうか?」
ニル(p3p009185)は『祓い屋』燈堂 暁月(p3n000175)へ向き直る。
「大丈夫だよ。何たって煌浄殿の呪物達が居るんだから。ね、明煌さん」
「そうやな。俺がおらんでも何とかするやろ」
暁月の問いに『煌浄殿の主』深道 明煌(p3n000277)は事もなげに言ってみせた。
それだけ呪物達を信頼しているのだろう。
「廻さま大丈夫、ですか?」
メイメイ・ルー(p3p004460)は残穢の壺の毒を飲み干した『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)の様子を伺う。
「はい、なんとか大丈夫です」
「戻ったばかりの廻様には無理しないでほしいのです」
ニルも加わり廻へ癒やしの光がこれでもかと降り注いだ。
――――
――
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)は奇妙な音に気付く。
地面の底から何かが這い出てくる音だ。
「どうやら、静かに終わらせてくれる気は無いようですね」
弓を構えたマグタレーナの前に終焉獣が次々と現れる。
「まあ、ここは闇の領域。敵陣だからな」
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が抜こうとした刀をマグタレーナが制した。
「ん? どうした?」
「汰磨羈さん達は先へ……ここはわたくし達にお任せください」
「どうして? 俺達も戦うよ!」
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の拳へマグタレーナは優しく手を添える。
「その力はこの先で使ってください。まだ、イグナートさん達には役目があります」
マグタレーナはイグナート達を闇の領域の奥へ進ませる。
「ジェックちゃん大丈夫? 無理してない?」
明煌の心配そうな顔にジェック・アーロン(p3p004755)は目を細めた。
「大丈夫……アタシ行ってくるね」
「うん、待ってる。鈴鳴らしてくれたら迎えにいくから」
ジェックはこの先へ進んでいく。その背を守るのは自分達の役目だと明煌は血刀を抜いた。
恋屍・愛無(p3p007296)は廻の元へやってきて頭を撫でる。
愛無は化け物じみた見た目ではあるが、家族同然の廻が心配ではあるのだ。
「大丈夫ですよ、行ってください」
「そうだとも、こっちは任せたまえよ」
パンダフードを被った葛城春泥が神をも喰らった『我が子』の背を押す。
「ヨハンナも行きなさい」
「……!」
ヨハネ=ベルンハルトが『娘』であるヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)へ促した。
ぐっと拳を握ったヨハンナは「わかった」と踵を返す。
「絶対に、死ぬンじゃねえぞ……それからレイチェルとグレイスもまもりやがれ」
「貴女は本当に心配性ですね。大丈夫ですよ、私達は一人じゃありませんから」
自分達は孤独では無い。仲間達が居てくれるのだから。
「――敵が出て来やがったぜ! 野郎共準備はいいか!?」
『獰猛なる獣』ベルノ・シグバルソン(p3n000305)が戦士達に雄叫びを上げた。
度重なる戦いに疲弊している、などと弱音を吐く者など何処にもいない。
此より先に進むイレギュラーズ達はもっと過酷な戦いを迫られるのだ。
その道を切り開くのは自分達の使命だと戦士達は声を張り上げる。
「ベルノさん大丈夫なの?」
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は大怪我を負っていたベルノを見つめた。
「ああ、大丈夫だ。お前さんに治してもらったからな。さあ、行ってこい!」
ベルノは祝音に向けて斧を掲げる。それは送り出す為の激励だ。
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)は敵を避けて奥へと進む。
其れを阻む終焉獣を押しとどめるのはアルエット達であった。
「リースリットさん、ここは私達に任せて!」
「足止めぐらいはしてあげるよ」
『白翼竜』フェザークレス(p3n000328)はリースリットの行く手に回り込んだ終焉獣にブレスを吐く。
それに追従するのはアーマデル・アル・アマル(p3p008599)と『星の弾丸』ロニ・スタークラフト(p3n000317)だ。終焉獣が現れた端からロニが弾丸を放つ。
「頼んだぞ、俺らの分まで……アーマデル!」
託された想いを紡がなければとアーマデルは走った。
目の前に見えて来たのは深い渓谷。このままでは渡る事が出来ないもの。
その眼前には無数の終焉獣の姿が見えた。
水天宮 妙見子(p3p010644)は傍らの『青の尖晶』ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)の手を取る。
また震えているのではないかと心配したからだ。
「神聖砲撃を撃つにはもう聖遺物が……」
終焉獣を一撃で屠る程の威力を出せるのは聖遺物の力があってこそ。
如何すればいいかと考えあぐねるティナリスの後ろに、カシャンと剣が置かれる音がした。
それは天義貴族が家宝として持って来ていた聖遺物だ。
一人、また一人と代々受け継がれてきたであろう家宝を置いていく貴族騎士たち。
「此処を突破できなければ、私達の未来も無いのです。ならば、使ってほしい」
「……ありがとうございます!」
ティナリスは妙見子達を送り出す為その剣を取る。
「神聖、砲撃――グランヴィルグレイス!!!!」
光の筋が闇の空から現れ、一瞬遅れて終焉獣が爆散した。
それは何度も終焉獣の群れに降り注ぎ、その度に傍らの聖遺物が塩と化す。
渓谷の上を光の階段が走った。
「行って、アルヤン。この光の階段を昇っていって!!」
『レビカナンの精霊』マイヤ・セニア(p3n000285)は必至に叫ぶ。
大好きなアルヤン 不連続面(p3p009220)が前だけを見て進めるように。
「アルヤン! アルヤン! 大好き! だから、必ず帰って来て!」
涙を零しながらマイヤはアルヤンを送り出す。
「ニル」
『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)はニルの手を取って額をくっつけた。
「僕は君の無事を祈り続けます。僕はニルが居ないと寂しくて壊れてしまいます。
だから、どうか無事に帰ってきてください。愛しいニル……さあ、行って」
テアドールはニルの額に口付けをして手を離した。
「……っ、はい! 行ってきます!」
本当の別れにしないために。ニルは一生懸命駆け出す。
月の女神と雷神の祝福を受けたルカ・ガンビーノ(p3p007268)とベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はマントを翻す。その背に数々の思いを背負い前へ進むのだ。
雷神ルーは最大の激励を持って彼らを送り出す。
「行けぇ――!! 振り向かずに、前へ、前へ――!!!!」
※『咎の黒眼』オーグロブとの戦いが終結しました――!
※<終焉のクロニクル>始まりのレクイエムが最終局面に移行しています!
※魔女ファルカウとベヒーモスとの戦いが終結しました――!
※アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)さんのギフトに変化が生じました。
※最終決戦が進行中です!
※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。
これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|Bad End 8(終焉編)
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