PandoraPartyProject

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凶き福音

 ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が空中神殿に日参するのはこの数年の定例だった。
 仕事で余程遠くに離れただとか、特別な事情があるだとか――そんな話が無い限りは彼は可能な限り良くその場所に足を運んでいた。
 レオンの行方が知れなくなってからは特にその頻度を増やしている。
 レオンの代理と言うなかれ。彼はそうでなくてももうずっとこの場所を避けている。
 レオンの代わりの連絡員という事にはなっている。
 だが、ローレットとコミュニケーションを繋ぐ為ではない。そんな事は語るに落ちる。
 ……色々な事があったとしても、相も変わらず硬質の美貌は強い感情のようなものを映してはいない。
 それでも彼女が見た目程の不感症でない事は他ならぬルカだからこそ知っていた。
「――――」
 そんなざんげから零れ落ちた言葉にルカは大きく息を呑んだ。
 微睡みのような慰めの時間さえ終わりの時を迎えたのだと無慈悲な結論は告げていた。
「……今、何て言った?」
「遂に、その時が来るでごぜーます」
 ルカの問いを受け、繰り返したざんげの眉が下がっている。
 読み取り難い瞳の色が揺れていた。
 それは恐らく――自分や他の誰かを案じてのものだろうとルカは思った。
「『神託』……だな」
 それはかつてレオンが望み、今ルカが或る意味で望んでいる『終結点』である。
 遥かな昔に『必ず当たる預言』を受けた時からざんげの永遠は始まった筈だった。
 空中神殿に気の遠くなるような時間縛りつけられて、一人。
 カミサマとやらが恐ろしく気の長い神託を無責任に押し付けて一体何年経ったと言うのだろうか?
「はい。私の感知にも掛かったでごぜーます。
『神託』はもう間もなく形になる。
 最悪な事に、顕現先は『影の領域』と確定しているです。
 ……溜めてきた空繰パンドラで顕現までの時間は稼げているようでごぜーますが。
 向こうさんの『滅びのアーク』が顕現先を引き寄せたのかもしれねーですね」
 結論から言えば、Case-Dの顕現先は魔種の勢力圏のど真ん中という事になろう。『顕現』をどうすれば世界が救われるのかはイレギュラーズにも誰にも答えは無かったが、敵陣の真ん中では何をするにしても多大な妨害がある事は確実だ。また、そこに辿り着く事も容易ではあるまい。
「ですが、『ワーム・ホール』が複数生きているのは僥倖でごぜーました」
「まさか」
「アレは影の領域(ラスト・ラスト)に通じているでごぜーます。
 アレを通れば届かない場所に手を伸ばす事が出来るです。
 影の領域のど真ん中、影の城に恐らく顕現は起きる筈。
 そこにイノリとマリアベルも居る筈でごぜーますから……」
「……まともに通れる道なのか?」
「私が――パンドラが何とかするです。全ては『神託』を回避する為の時間だったでごぜーますから」
「最後の最後までやってくれたが、墓穴じゃねえか。魔種連中め」
 ルカはつい先日やりあった『黒聖女』の事も思い出し思わず獰猛な笑みを浮かべていた。
 あのワーム・ホールは飛び込んだ華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)ドラマ・ゲツク(p3p000172))の為に残す形となったが、却ってそれは大当たりだ。
 魔種共が侵攻の為に用意した道を遡り、逆ねじで痛撃を加えてやる――
 回り回って『乙女の事情』が奏功したと言うのなら、マリアベルという女に向けてはこれ以上ない意趣返しにもなろうというものだった。
「出たとこ勝負は否めねーですが、もうやるべき事はシンプルでごぜーます」
 即ちそれは乾坤一擲の大勝負、そして決戦である。
「……影の領域、影の城のイノリ達を倒し、Case-Dの顕現を回避して下せーでごぜーます」
 イレギュラーズを慮るざんげの顔を見ればどれだけ無理な事を言っているのかは知れていた。
 しかし、イレギュラーズは座して死を待つような真似はすまい。
「『上等だ』」
 特にニヤリと笑みを浮かべたルカにとってこれは――福音以外の何者でも有り得ない!

 ※Bad end 8首魁と見られるマリアベルとの戦いの報告が上がっています……!
 ※世界各国にて発生した戦いの、結果報告があがっています……!


 ※ファルカウ西の森メーデイアにてアトロポスが出現したようです。


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(??編)

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