PandoraPartyProject
始原の先達
――そろそろかなぁ。
言の葉を零したのは一人の男。
その者は――ゼロ・クール達の墓場『ゼロ・グレイグヤード』の『管理人』を名乗る者であった。
……まぁ。管理人と言っても実態は何一つ管理などしていなかった訳だが。かの地を目撃した者は凄惨に捨て置かれているゼロ・クール達を見て、むしろゴミ捨て場というに近しい場所なる感情を抱いただろうか。
しかしそれもそのはずだ。
男は別に本気で管理しようと思っていた訳ではない。
管理人を名乗る男の真の目的は、終焉獣達の餌場を作る事にあったのだ。
――なぜならば。彼は滅びのアークの使徒の一人だから。
プーレルジールの者ではない。彼もまたイレギュラーズと同様に外より至った者……
しかし滅びを齎す為に行動する者として。
「やれやれ。イレギュラーズ達、頑張りすぎだ……♪
果ての迷宮を攻略してここまで来たのはまだいいとしても。
まさか奇跡を用いて次々寄生型を剥がしてくれるとは……♪
――まぁそれはゴミみたいな計算外が生じえたからだが」
彼から零れる言動は苛ついているような……一方で嬉しそうな奇怪な感情が見え隠れしようか。
邪魔をされた事は鬱陶しい。
だが自らにとっての『後輩』達の活躍は目出度い事この上ない。
――彼の名はナイトハルト・セフィロト。
『始原の旅人』を名乗るウォーカーにしてイレギュラーズの一人であったから。
「もう少し。あともう少し放っておいてくれれば……」
「――世界のシステムを攻撃出来たのに、ですか?」
「そうだよル=アディン。だが、まぁ、仕方ないねぇ……
人生はままならないものさ♪ それより魔王君はなにしてるんだい?」
「イレギュラーズと戯れていらっしゃるかと」
ふぅん。と軽い反応をナイトハルトが示した先にいたのは。
魔王直下『四天王』が一角。『獣王』ル=アディンであった。肉体は女性型ゼロ・クールを原型としているが、その内は獣王の人格が宿っている。魔王に忠実にして彼を守護せし者である……が。プーレルジールにおけるゼロ・クールを創造できる者たる『魔法使い』をも名乗っていたナイトハルトは彼女に事前に干渉していた。
影ながら、魔王に己が意見を進言させる為の駒として。
――別に。己自身が直接に動いても良かったのだが。
何にでも使える便利な『玩具』はあって損じゃあないし。
『玩具』は使ってこそ面白いんだから。
「――まぁいいや。とにかく、イレギュラーズはそろそろサハイェル城に来るだろう」
「はい」
「魔王君の望み。『混沌世界への渡航』を防ぐために。
でも困るよね、流石に。コレを見つけられたらさぁ――♪」
ナイトハルトは歩く。歩く。歩く――
サハイェル城を。その『地下』へと続く道を。
その果てにあるのは、一つの扉であった。それはどこか、果ての迷宮からこのプーレルジールへと渡って来た道や扉と雰囲気が似ている気もしたが……しかし明確に違う点が存在していた。
――滅びの気配が零れ出でているのだ。
あぁ、この扉の先は『果ての迷宮』ではないのだろう。
もっと違うどこか別の場所に通じている。
……そうだ。そもそもナイトハルトや、イレギュラーズを外から来たと認識出来ている終焉獣たちは『どこから』来たのか。イレギュラーズ達は果ての迷宮を攻略してプーレルジールまでの道を切り開いた。彼もまた同様にそこからこっそりとやってきたのか?
――否。
迷宮を進んだ事により開かれた道を仮に『表口』とするならば。
もう一つあったのだ――『裏口』が。
「『終焉』への道筋。混沌世界の深部――君達にはここを防衛してもらうよ」
「はい」
「…………うぅ、は、い」
その扉は、混沌世界の西に存在する『終焉』へ至る道が一つ。
此処からやってきていたのだ終焉獣たちは。
特にナイトハルトが連れてきていた寄生終焉獣達の多くは……
ただ、なんとなし。そう大きな入口ではない気配を感じる。
果ての迷宮より開かれた『表口』と比べれば随分小さいとでも言おうか――
終焉獣が無数にして大量に通れるようなモノではなさそうだ。
……だが。欠片屑でも滅びの中枢『終焉』と接続しているのは良き事ではない。
ここを閉じねば終焉獣はこれよりも至ろう。
それがプーレルジールの滅びを加速させるのだ――
だからこそナイトハルトは守らせんとする。
終焉獣や、獣王……そして獣王の様に操りしゼロ・クールを集結させて。
(う、うぅ、頭が、いたい。体が、動かない)
その一体がリプリルというゼロ・クールであった。
他にも寄生終焉獣によって体を乗っ取られた廃棄ゼロ・クール達の姿も見えようか。
本来ならもっと数が多い予定だったのだ、が。
「ゼロ・グレイグヤードで奇跡を行使した連中がいるみたいだねぇ……
あんな玩具を救うために命を削るだなんて、ご苦労な事だ……♪」
ジェック・アーロン(p3p004755)やメイメイ・ルー(p3p004460)が、エイドスを用いてゼロ・クールを救わんとする願いを紡いだことによる影響か――寄生の動きが鈍くなってしまった。
壊れ果てた玩具、或いは木偶を救う事に意義を見出すだなんて。
――やっぱりとっても可愛らしいねぇ、僕の後輩達は……♪
「君達がどこまで頑張れるか、もう少し見てみたいなぁ……♪
――終焉からクルエラ達を呼ぶか。
アレ魂がデカいからあんまり通したくないんだけどな」
思わずナイトハルトは、口端に笑みの色を灯そうか。
イレギュラーズ達が頑張る度に愛おしい感情が心の底から溢れてくる。
抱きしめたいぐらいだよ。あぁ――
どこまで頑張れるんだろう。どこまでやってくれるんだろう。
どこまでやっても『壊れずに』踏みとどまってくれるんだろう。
僕には目的がある。『神の作った混沌世界のシステムを破壊』するという目的が。
プーレルジールに終焉獣を蔓延らせ、プーレルジールの住民やモノに滅びを寄生させるのはその一環。
正直ソレに力を注ぐべき――なんだ・け・ど♪
「だけど――少しぐらい君達と遊んでみたいものだねぇ……♪」
ナイトハルトは微笑む。
口端を釣り上げ、実に楽しそうに。
命賭け、魂を煌めかせ輝く己が『後輩』達が――心底、好ましいかのように。
※プーレルジールで滅びの気配が増しています……!
※天義において、遂行者陣営との戦いが続いています――。
※双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
※クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!
※プーレルジールで合流したマナセとアイオンの前に魔王イルドゼギアが現れました――!
※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!
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