PandoraPartyProject

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ステラの決意

「私を、混沌へ乗り込むための『入れ物』にできるってこと」
 星の少女ステラの言葉は、名も無き遺跡の中、転がる塵のように響いた。
 打ち棄てられたような石造りの遺跡群は静かで、孤独で、けれど誰かを待っていたようにも思えた。

 ここは神様に見捨てられた世界、プーレルジール。
 勇者はおらず、魔王に支配されつつある滅びに満ちた世界。
 そんな世界で、魔王城サハイェルへと至る旅が始まっていた。
 この世界を救うための旅路であると同時に、これは混沌世界を救うための旅でもある。
 なぜならこの世界の四天王をはじめとする存在は終焉獣に寄生された存在であり、彼ら魔王軍の目的はイレギュラーズを利用して混沌世界へと渡ることなのだ。
 終焉獣である彼らが混沌世界へと渡ると言うことは即ち、混沌世界へ大量の滅びのアークが流入することを意味している。そんな事態は、どうあっても避けなければならない。
 そんな中で新たに発覚したのが、星の少女ステラもまた、魔王軍もとい終焉獣が混沌世界へ渡るための入れ物にできるという事実であった。
 混沌側からの何らかのアプローチがあったのと同様、これもまたそういった者からの差し金だろう。

 彼女は星の少女ステラ。
 彼女は観測者の『端末』である。いや、あった。
 滅ぶが為に生者のエネルギーを身の内に蓄え、終わりへと備える存在。『星界獣』を操る端末機構。
 だがプーレルジールには存在しえない可能性のかたち(パンドラ)に触れてしまったがために、端末であるステラのありかたは大きく変わってしまった。
 彼女はこの世界の救い方を見いだし、イレギュラーズたちに本来なら難しいはずの奇跡をたぐり寄せるための『死せる星のエイドス』や『願う星のアレーティア』を渡したのだった。
 そんな彼女は端末であるがゆえ、世界を渡ることが可能なのだ。

「それを魔王軍が把握しているということは……やはり、ステラさんをも確保しようと狙ってくるということですね」
 ハイペリオンはその眉根を寄せ、すこしだけ険しい表情になった。
「もし混沌世界へ渡ることができるのなら、ここから混沌世界へ逃げるのはどうでしょうか」
「ううん、それは……難しいと思う」
 ステラは不安げに首を横に振った。
「私はこの世界を見守る端末。その使命があるから、自分の意志で世界を離れられないの。それに、もし混沌世界へ渡ることが出来たとしても、『おおいなるもの』との再接続が行われるから、わたしが今のわたしじゃなくなっちゃうかもしれない」
「それは…………」
 試すわけにはいきませんね、とハイペリオンもまた首を振った。
「ヴィーグリーズの丘での戦いを経て、魔王軍はこちらの戦力を把握しています。
 かなりの軍勢を仕掛けてくるでしょう。それを耐えきるのは……」
「ううん、できる」
 弱気になりかけたハイペリオンの一方で、ステラは星空を見上げながら断言してみせた。
「わたしのことを守るって、言ってくれた人たちがいた。
 その人たちは出会ったばかりのわたしに優しくて、強くて、そして……とってもキラキラしてた。
 キラキラって、わかる? 世界を救う可能性の力のこと。それがね、眩しいくらいに、いっぱいあったの。
 私はそんな人たちと一緒に旅をして、そんな人たちと一緒にいたいって思うようになった。
 あのね、わたしはね……」
 幼い子供が言葉を選ぶようにして、しかし選びきれずに、ステラはハイペリオンに向けてこう言った。
「あの人たちが……イレギュラーズが好きなの」
 これもまた、宣言のようなものだった。
「だから、私は逃げたくない。隠れたくない。あの人たちが戦うなら、私も私の戦いをしたいの」
「あなたの……戦い?」
 ハイペリオンが問い返すと、ステラは微笑みすら浮かべて言った。
「この場所を拠点にして、迎え撃つの。魔王軍が私を狙ってくるなら、私が囮になればいい。そうでしょ?」
 戦場に立つのは、怖い。
 攫われてしまうかもしれない。終焉獣に寄生され自分を壊されてしまうかもしれない。
 けれど、それでも。
 それでもだ。
「私はみんなの、旅の仲間でいたいの」
 
 プーレルジールで拠点建設が始まりました!
 双竜宝冠事件が劇的に進展しています!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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