PandoraPartyProject

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西嵐

 槍の間合いに無数の銀光が迸る。
 連続して響き渡る硬質の音は彼我が嚙み合わせ、ぶつかり合わせる得物の奏でる音色達だった。
(一体、何処の何方が弱ったとか口にしたんでしょうねえ!?)
 察するまでも無く、そのリズムは美し過ぎる。
 一撃一撃が武骨で乾いた十分な殺意を帯びながらも、攻防は相反して演武の如く流麗である。
 同流、同派の――それもごく親しく幾度と無く打ち合ってきたからこそ成り立つスコアは汗を零し、銀色の髪を振り乱すゼファー(p3p007625)風月(フウゲツ)なる老人が特別な関係である事を傍らのアーリア・スピリッツ(p3p004400)にも教えていた。
「……ま、それ以前の話だけどね」
「…………?」
 零したアーリアに護衛対象のパトリス・フィッツバルディが首を傾げる。
「知らないと思うけど、あの子はあんなに感情的になる方じゃないのよね。
 顔を見てれば分かるって言うか、あんなに二人の世界を作られたら嫌でも察するってものでしょう?」
 風月はターゲットのパトリスにも最優先の興味を示していない。
 お陰でアーリアはその他の凶手への対応に集中出来ている状態だ。
 彼等の相手も決して楽なものではないが、相手がもっと勤勉だったらそれは実にぞっとする話であった。
「……っ、……く……!」
 歯を剥いたゼファーが打ち負けて槍を弾き上げられた。
 取り回しの悪い長尺を立て直さんという隙に何を繰り出すかと思えば風月は更に一歩。
 強烈な踏み込みからゼファーのボディにその長い足を突き刺していた。
「相変わらず、足癖が悪いじゃない……?」
 思わず腹を抑え、姿勢をくの字にしたゼファーは嘯くが、
(あばらいったわね。これだけ『実戦』重ねてまだこの大差ってワケ……?)
「そろそろ終わるか」
「一体何処の誰がッ、弱ったなんて話なんでしょうね!?」
『今度は』口に出したゼファーが皮肉に吠えれば風月は予想外に大きく後ろに跳び退がっていた。
「……あら、ロマンスグレーのおじい様。見逃して貰えるの?」
「『終わり』と言ったであろう」
 よくよく見れば風月は呼吸を乱してすらいない。
 涼し気な調子はそのままに、今のはゼファーに圧を与えた心算であろう。
「此方としてはその心算は無かったが、クライアントが仕事の撤回を合図したのでな。
 で、あらば此方の仕事の完遂は、却って事態の毒になろう。故にこれまで、という訳だ」
「ラッキー。助かっちゃった?」
「幸運の女神が居たからね」
「『違いない』」
 アーリアの軽口にパトリスが乗った。
 一方、風月の視線はゼファーの方に向いている。
「決着は先に預けよう。
 それ程までに腕を上げたのだ。ならば却ってこの結果も良かったと言えよう。
 此方、改めてお前に機会を設ける故。精々――」
 風月はこの期に及んで初めてその名を口にする。
「――今日のような、躊躇いの槍は捨てておく事だ。
 その無限の可能性をへし折られたくないのであらば。分かっておるな、『ゼファー』」

 ――それは余りにも鮮やかな宣戦布告そのものだった。

 双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
 クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!
 ※テュリム大神殿の先の階層に進むことが出来そうです……。


 ※プーレルジールで合流したマナセとアイオンの前に魔王イルドゼギアが現れました――!
 双竜宝冠事件が劇的に進展しています!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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