PandoraPartyProject
老竜は未だ眠らず
その痩せぎすの体は数か月以上にも及ぶ病床生活で一層衰えて見えた。
元より健康不安を抱える老齢の彼を都合良く全快させる魔法等有りはしない。
それでも、その眼光が戻り。
厳めしい口元から命じる言葉が発せられたなら。
それは黄金双竜の咆哮の如しであった。威光の雷撃は余人を打ち続けるのだろう――
唯の一声を発するだけで酷く消耗したレイガルテ・フォン・フィッツバルディ(p3n000091)は再びベッドにその身体を預けていた。
「まだ無理しちゃ駄目だよ!」
侍医達が、スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が少しだけ慌てて介抱せんとするが、レイガルテは手でその動きを制する。
「良い。ここで立てずして何が黄金双竜というものか」
それだけの事で著しく消耗する彼が、往時と変わりを感じさせぬ強さを見せたのは偏に彼が彼であるが故。
(……流石、と言うべきなのでしょうか。まぁ、そうでなければ甲斐も無かったというものなのですが)
ドラマ・ゲツク(p3p000172)は内心だけで嘆息した。
『そうだ。恐らくはこの事件はこれで終わりを迎えるのだ』。
不可逆なものもある。失われて戻らないものもある。それでも終わるのだ。
彼がこうして言葉を発するのなら、何かを睨みつける事が出来るのなら。
己が運命をすり減らし、命を燃やすような博打をして得るものが無かったでは浮かばれぬ。
当然ながら状況を説明している暇等何もなかったにも関わらず、である。
彼は自分が倒れたという事実を認識するや否や殆ど100%の状況理解を済ませてしまったのだから、これはもう恐ろしいと言う他はない。
(必要悪、というコトでしょうか)
幻想種とは異なり、人間の世の移り変わりは早い。
古豪を気取るレガド・イルシオンだったとて、アルティオ=エルムに比すれば泡沫の夢だ。
恋以外は平穏と静寂を好むドラマに野蛮で争いばかりする人間種の在り様の全てを肯定する事は難しかったが、間違いばかりの貴族社会にはまだ彼のような人間が必要な事だけは確かに思われた。
「……兎に角、良かった」
安堵の声を上げたスティアの言葉は心底からの本音だっただろう。
薄氷を踏み、綱渡りを続け、各地で無数の思惑が蠢いた。
これ程までに奇々怪々、複雑に絡んだ事情の糸を解きほぐせたのも彼女等が特異運命座標であるからと言う他は無いだろう。
(……うーん、私も少し仲裁を頑張ってあげないとかな……?)
人知れず付近に潜んでいた魔種を殴り倒しておいてくれたらしい親友の兄の事を考えかけスティアは思い直して首を振った。
「――今度にしよう!」
まぁ、少し位意地悪されても仕方ない事をしちゃった訳であるのだし。
「……?」
怪訝そうなレイガルテに彼女は笑う。
「兎に角、まだ絶対安静だからね! これからが大変なんだから――」
※双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
※クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!
※テュリム大神殿の先の階層に進むことが出来そうです……。
※プーレルジールで合流したマナセとアイオンの前に魔王イルドゼギアが現れました――!
※双竜宝冠事件が劇的に進展しています!
※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!
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