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帰らずの森へ

 地図をとん、と指差した珱・琉珂は「ここが『フリアノン』」と言った。
 ラサから地下通路を経由して到達した覇竜領域内。亜竜(ワイバーン)などの襲来もあるが、ラサ寄りの地はある程度の探索を行なう事も出来ただろう。
 フリアノンの里長会議でもイレギュラーズ達に各地の管理を任せてはどうかという話も出ている。
 今までの亜竜種達は外での探索を控えていたが、活動範囲が広がったならば人の住まえる場所が増えたという事でもある。危険を承知でも開拓し、管理を行ってくれる者が居るならば任せたいというのが里長代行と琉珂の考えだ。
「此の辺りは結構調査が進んだのよね」
 フリアノンからラサ寄りに調査は進んでいた。例えば、ドラネコ達との出会い玉髄の路とは別の開拓ルートの構築、拠点設営など多岐に亘る活動が行なわれてきた。
 それでも『踏み入ってはならない場所』は未だ存在していた。
 それが――
「ここ、『ピュニシオンの森』」
 帰らずの森とも呼ばれる場所である。
 フリアノンでは代々、『志遠の一族』と呼ばれた家系にその管理を任せていた。関所を用意し、不用意に立ち入る者を阻むのだ。
 志遠の一族については琉珂は良く知らない。亡き父、珱・珠珀は「悪しき風習だが、必要なのだ」と言って居た。
 ピュニシオンの森には竜種が潜む。亜竜も山ほど存在し、森は危険そのものだ。生きたまま返る保証もない。
 そんな場所にある関所だ。当然のことながら守人とて無残な姿で発見されることも多かった。故に、孤児や孤独な者が志遠一族に寄せ集められ、関所の管理にあたっていたのだという。名を捨て宝石や植物の名を与える事で『仮初めの名で死を遠ざける』という願掛けを為された彼等は本来の名を呼ぶ者さえ居なくなり、忘れられていくのだ。
「『ピュニシオンの森』の関所には志遠(しおん)の一族と呼ばれる関所守がいるの。
 直系の志(ゆき)家の娘さんが管理者として居る筈だったのだけれど……最近定期連絡が無くて……」
 琉珂は心配なのだと眉を寄せた。ピュニシオンの森に変化が訪れれば志遠の一族の直系、志・礼良から連絡が届くはずだった。
 まだ年若い琉珂は礼良と関わることはなかったが、幼少期に父・珠珀がその連絡を受けていたことは目にしている。
「……心配で、見に行きたいの。里長代行達には止められてしまったのだけれど……
 条件付きで見に行く許可を貰ったわ。それがアナタ達と一緒になら良いって。何だかアナタ達が認められたみたいで誇らしい」
 琉珂は嬉しそうに微笑んでから地図をくるくると指差した。
「あと、もう一つ個人的な事情があるの」
 ピュニシオンの森は帰らずの森。
 イレギュラーズ達が活動する上でも決して踏み入れないように、と再三注意が促されてきた場所だ。
 勿論の事ながら、琉珂自身もピュニシオンの森には必要以上は立ち入らないようにしている。
 この先にどの様な光景が広がっているのかは『覇竜観測所』側からの風景はR.O.Oでも観測した者も居るだろう。
 だが、其方ではなく、ラスト・ラストの方向へと広がってゆく広大な場所。
 リーベル・タースから見遣ってもそれは伺い知ることが出来なかった。
「……そちらに、オジサマが居るかもしれないと思って」
 彼が姿を隠すならば其方だろう。『オジサマ』――ベルゼー・グラトニオスは何時もそちら側からやって来ていた。
 まるで人目を忍ぶように。隠れるようにして彼は時折其方に帰っていくのだ。
「何か、あの人の足取りを掴めたら、って思ったの。
 も、勿論、オジサマが冠位魔種? で、倒さなくっちゃいけなくって、敵だって分かって居るわ。
 けれどね……『私達』に優しくしてくれた理由が聞きたい。あの人が、私達にくれた愛情は本物だと思いたかったから」
 そこまで告げてから琉珂は「なーんちゃって」と笑った。
「とりあえず、森を見に行きましょうよ。ごめんなさい、私って森には詳しくないから。
 危険でも大丈夫だよって人だけ、一緒に行きましょう。……森の様子を知れば、今後の予定も立てやすくなるはずだから」

 ※覇竜領域にて危険地帯『ピュニシオンの森』の調査が行なわれているようです……。
 ※天義の都市テセラ・ニバスが消滅し、異言都市(リンバス・シティ)が顕現しました。また、遂行者勢力による天義での活動が観測されています!
 ※帝政派のバイル宰相と、南部戦線のザーバ将軍の間で会合が行われ、帝政派が『決戦兵器』を手に入れんとしています……!?
 ※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……

鉄帝動乱編派閥ギルド

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