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シナリオ詳細

覇竜交易を阻む崖

完了

参加者 : 10 人

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オープニング


 『覇竜領域デザストル』。
 ローレットイレギュラーズの訪問から他国との交流が活発になり、亜竜種達もまた少しずつ他種族を受け入れ、イレギュラーズとなっている者が出始めているのが実状だ。
 ただ、他国の民からすれば、覇竜は危険極まりない地域。他所では力ある戦士、術士らですら太刀打ちできぬ様な魔物が闊歩している。
 それでも、移動民族パサジール・ルメスの民や、一部の行商人、ラサの一部の者達など、覇竜の民との交易を希望している者もいた。
 その為に、ローレットの有志でラサから覇竜フリアノンを結ぶ交易路の開拓を進めている状況だ。

 さて、今回の開拓に参加するメンバーは、以前の交易路開拓の際に目的地となった第1中継地点の集落へと集まる。
「なんかすごいっすね」
 『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)が驚くのも無理はない。
 これまで、少数のイレギュラーズが中心となって開拓の為に橋を建造していた。
 だが、今回は世界を股にかけて依頼をこなすイレギュラーズだけで開拓を進めるにはあまりに手数と時間が足りないとのことで、アダマンアントと討伐の際に協力してくれた覇竜轟雷拳の門下生達に助力を要請することとなったのだ。
 また、集落には多量の資材がすでに運び込まれている。これらはイレギュラーズが依頼の合間などに、加えてパサジール・ルメスの民が少しずつ運び入れていた。
 今から、これだけの人数で何をするのかというと……。
「行く手を遮る崖に昇降機を設置します」
 ユーフォニー(p3p010323)はいつものドラネコ達と一緒に胸を張り、意気揚々と今回の状況説明に当たる。
 これまで、イレギュラーズは川沿いの道を進み、木造2つと石造1つの橋を築き、この第1中継地点となる集落へと至った。
 ここから先を進むに当たっては川を上流に進み、滝となっている場所を登る必要がある。
 その周囲……高低差60m程ある崖を登るには岩を繰り抜くか、崖部分を切り崩して道を造るべきといった手段の提案があったのだが、いずれにせよ急激な坂となり、大量の荷物を運ぶ交易には適さないとリヴィエールも難色を示していた。
「まさか、馬車ごとリフトで上げるなんてね」
 水月・鏡禍(p3p008354)は誰からともなく出てきた妙案に唸る。
 旅人から出たと思われるその案は、練達の技術を使えば問題なくできると判断された。
 別世界では船舶すら川に乗せたままで高い場所へと引き上げる技術もある。馬車をリフトアップさせる手段など全く問題ないだろう。
 強度的にも、雨風による浸食を要因とした崖崩れの心配がないことなども確認済み。
 エネルギーは崖上部か下部の機器に魔力等を充填させることで使うことができるよう動力路を設置する。
 ここまで意見が出た地点で、建造しようという話に決まったのだ。
「何やら他国との流通路を造るとのことだな。是非、協力させてもらう」
 覇竜轟雷拳師範、徐・宇航はアダマンアントの一件に協力してくれたローレットの頼みであればと助力を惜しまず、門下生達と駆けつけてくれた。
 彼らに亜竜、魔物の出現に対する警戒、討伐と合わせ、実作業の手伝いもお願いする形だ。
 何せ、翼を持つ彼等は足場なくして崖を行き来でき、崖でのレール設置なども行ってくれる。
「工程は……崖の下部への機器の設置、そこから上部へとレールの設置、上部への機器の設置……後は未使用時に機器を防護できる手段も欲しいですね」
 ユーフォニーが技術者達から預かった設計図を基に、この場の面々へと簡単な作業工程を説明する。
 ともあれ、実用可能な状況まで作業が進めばいいが、何せ全員が今回の開拓に当たることができる猶予はたったの3日間しかない。
 だからこそ、効率的に作業を進めたい。
 とはいえ、覇竜轟雷拳の面々でも対処できない魔物が襲来することもある。そうした敵が出現すれば、作業の手を止めてでも交戦に当たる必要があるだろう。
「基本的に設計図通り組み立てられれば建造できるはずです」
 鏡禍はそう言うものの、この場に効率よく造ることのできる現場監督がいればなお違うだろう。
 また、昇降機を造るにあたって練達の技術などを持ち合わせた者がいれば、より使いやすい昇降機となるだろうが……。
 いずれにせよ、それぞれが効率よく作業できるよう全力を尽くしたい。
「ともあれ、今回はこのまま作るしかないっすかね」
 リヴィエールの言うように、まずは建造が先。その後のバージョンアップなどは使い始めてからといったところか。
「では、パサジール・ルメスの皆さん、並びに覇竜轟雷拳の皆さん」
「今回はよろしくお願いいたします」
 2泊3日での突貫工事となる昇降機建造。
 呼びかけられたパサジール・ルメス、覇竜轟雷拳の面々は一斉に拍手し、ユーフォニー、鏡禍の挨拶に応えてくれたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、ユーフォニー(p3p010323)さん、水月・鏡禍(p3p008354)さんのアフターアクションによるシナリオです。

 覇竜交易シナリオ続編です。
 フリアノンを目指して交易路を拡張させたいところですが、立ちはだかる崖に対処法が難航していました。
 パサジール・ルメスの民の意見も取り入れた結果、昇降機を建造することに。
 亜竜や魔物に破壊されぬような対策も講じつつ、この建造を願います。

●目的
 昇降機の完成

●概要
 第1中継地点となる集落を拠点とし、2泊3日で昇降機の完成を目指します。
 大まかに作業工程としては、下部への機器の設置、間を挟むリフトのレール設置、上部への機器の設置、未使用時の魔物対策といったところです。、
 資材はすでに集落に十分運び込んでおり、覇竜轟雷拳の門下生達が作業に参加してくれます。彼らは敵出現の警戒、弱い相手なら討伐までこなします。
 夜は現場近くにテントを立てて休んでもいいですし、集落で休むこともできます。パサジール・ルメスの民が食材も持ち寄ってますので、自らの手料理を振舞うのもいいでしょう。覇竜の地の食材を使うこともできます。
 また、この3日間の間に下記の強敵グループが2組出現しますので、こちらはローレット勢(+師範)で対処願います。

●敵
 シナリオ中2度、下記拳法の門下生達の対処できない強敵がグループで出現しますので、撃退もしくは討伐を願います。
 十分な広さはありますが、建造中の昇降機や崖へと攻撃されぬよう立ち回る必要があります。

○カトブレパス×3体
 全長4~5mほど。水牛を思わせる容姿に豚の頭を持つ怪物。
 食らいつき、のしかかり、地響き、石化睨みを使ってきます。
 持ち前のパワーで特攻を仕掛けてくることも。

○ホッピンプレス×5体
 全長3mほど。グループで出現。
 見た目は巨大な野ウサギを思わせる魔物。
 高く飛び上がり、ヒップアタックを繰り出してきたり、サマーソルト、地ならしを行います。
 頭上からだけでなく、転がって体当たりを繰り出すこともあるので注意が必要です。

●NPC
〇リヴィエール・ルメス(&パサジール・ルメスの民)
 パサジール・ルメス所属。情報屋。
 今回は資材運搬の為に一隊(10名ほど)を率いて参加します。
 第1中継地点までは他国の工芸品、食料などを運び、そこからは資材を積み込んで現場を目指します。
 戦闘は一切参加しませんが、薬などを使った手当は行ってくれます。

○覇竜轟雷拳師範、門下生
 ペイトにて徐・宇航が開いた武術の一派。30人ほどが参加します。
 翼や尻尾までも技に活かし、極めるには亜竜種であることが必須です。全身を凶器として利用することで、思いもしない攻撃が可能であり、覇竜の亜竜、魔物とも互角以上に渡り合うことができると言われています。
 今回はアダマンアントの1件での礼も兼ね、門下生を率いて助力してくれます。
 また、建造中の警戒と合わせて亜竜、魔物に対する警戒、多少の相手ならば撃退してくれる力量を持ちます。

○徐・宇航(じょ・ゆーはん)
 長く伸びた髭が特徴的な45歳男性。師範。
 門下生を束ねて指揮を執ってくれます。
 強敵であれば、彼のみ共闘してくれます。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 覇竜交易を阻む崖完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月31日 22時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
メイ・ノファーマ(p3p009486)
大艦巨砲なピーターパン
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)
焔王祈
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

リプレイ


 ラサから覇竜へ開拓中の交易路をたどり、第1中継地点の集落まで訪れていたイレギュラーズ。
「かっいたく開拓楽しいな。みんなで開拓楽しいな」
 カササギの飛行種女性、『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)は長身ながらも、子供のようにぴょんぴょんと飛びはねる。
「気づけば道の整備もずいぶんと進んでいる」
 ラサ出身の馬の獣種、『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)はこの集落まで歩いてきて思ったことをしみじみと語る。
「他所に比べれば危険なのは変わらないが、こういうのは積み重ねだからな」
 今回の一件もまたラダが言う積み重ねの一つなのだが。
「一大事業……って感じね」
 やや大人びた旅人の魔女、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は今回ばかりは骨が折れそうな作業になると確信する。
 今回の1件の為、亜竜種ばかりの小規模集落はイレギュラーズの他、リヴィエール・ルメスを始めとした移動民族パサジール・ルメスの民、加えて、フリアノン在住の徐・宇航師範を筆頭とした覇竜轟雷拳門下生らとかなりの人数が押しかけている状況だ。
 これだけの人数で行うのは、この先、フリアノンへの道程でそそり立つ崖を馬車で昇る為の昇降機建造である。
「昇降機を作れるなんてすごいですね」
 その話に、前髪で右目を隠したオッドアイの妖怪、『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)が露出する左目を輝かせる。
「昇降機……あったらとってもとっても便利なのですね」
 中性的な子供を思わせる姿をした秘宝種、『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)は好奇心旺盛で、見知らぬ機器について興味津々の様子だ。
「一体どんな技術なんでしょう? 人の……練達の技術には感心しますね」
 齢を重ねた鏡禍は以前いた世界で昇降機の存在こそ知っていたものの、重量あるかなりの貨物を高い所へと引き上げるその技術には感嘆していたようだ。
 建造できれば、覇竜交易路の開拓に大きく前進するのは間違いないが、問題は建造に当たっての日程だ。
「2泊3日で終わらせようとはこれまた過密スケジュールだな」
 『隠者』回言 世界(p3p007315)がそう言うのも無理はない。
 別世界の技術でも、小規模なものなら数日で設置できるというが、問題は大きさ。
 今回の場合は、高低差60mかつ馬車を詰める規模の昇降機である。
「イレギュラーズは基本何でもやるが、ついにブラック労働にまで手を出し始めたのか? ……なんてな」
 これだけの人数がスケジュール調整するのは難しい。
 皆忙しい身の上だから仕方ないとはいえ、これを2泊3日で完成させようとするのは、世界でなくとも呆れてしまうのは当然だ。
 ただ、この世界は様々な技術が流入しており、練達でそれを束ね、昇華している。
「練達技術が必要みたいならば! 練達の技術を色々と活用させて頂いてる自分が力になるでありますとも!」
 別世界にて、宇宙と呼ばれる空間で異星人と交流し、保安官として活動していたという『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は短い期間ではあると承知しつつも。
「……全力全開で進めて、良いものをキッチリ作り上げねば!」
 力強く、ムサシは今回の建造に意気込みを見せた。
「点検の時間を確保するためにも、工事自体は2日程度を目標に頑張りたいっス」
 ただでさえ短い工期だが、緑青色の鱗を持つ3mもの巨躯を持つ『胃腸(重傷)』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)はさらなる短縮を目指すと豪語する。
「実際には2日半……最終日の昼に完成できればと思っています」
 そのスケジュール管理は、多数のドラネコを連れた『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)が行う。
「覇竜に領地ほしいからやるよー」
 ユーフォニーの挨拶に、メイが応える。
「あたし達もお手伝いするっすよ!」
「無論、我らも助力させてもらう」
 リヴィエール・ルメスとパサジール・ルメスの民、それに徐・宇航と覇竜轟雷拳門下生も声を揃えて返事した。
「食事は私に任せてもらおう」
 2泊3日の間、これだけの人数の食事を、亜竜種の女剣士『焔王祈』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)が買って出ていた。
 食事が仕事などの効率に与える影響は大きいとムエンは主張する。実際、皆が全力のパフォーマンスを行うのに彼女の役割は重要だと言えるだろう。
「わたしでどこまで力になれるかは分からないけど、なんでもやるわ! 三日間、頑張りましょ!」
 セレナもまた、完成させる為に最善を尽くす所存だ。
「今回は久しぶりに手伝いに来れたし、はりきっていこう!」
「ニルもお手伝い、いっぱいいっぱいがんばります」
「みなさん、よろしくお願いします……!」
 ラダ、ニルの言葉を受け、ユーフォニーは改めてこの場のメンバー達へと助力を願うのだった。


 時間は限られていることもあり、一行は早速着工する。
 全体の工期を管理するユーフォニーの予定は以下の通り。
 初日は、崖下の機器と崖部分のレール設置。
 2日目は、崖上の機器設置と全体の魔物対策。
 そして、最終日午前までで上記を終わらせ、午後はトラブルや動作確認などを行う予備期間とする。
 
 初日は、皆慣れぬ手つきで始めるが、そこはユーフォニーが指示を与える。
「では、ここは……」
 段取りを入念に確認するユーフォニーは挨拶と礼儀、そして感謝と笑顔を忘れずにリトルワイバーンのワイくんに騎乗して作業場となる崖を飛び回る。
「無理無い範囲で進めましょ」
 セレナは箒に跨り、連絡役としてサポートを行う。周囲の警戒もするが、そちらは他のメンバーもしていたことで連絡役として忙しなく動く。
(あ、そちらは……そうそう。そんな感じで)
 鳥のファミリアー2羽も合わせて視認も行い、セレナは適宜ハイテレパスも合わせて情報交換するなど現場間、指揮するユーフォニーとの間を繋ぐ。
 さて、最初は荷物運びがメインとなる。
 鏡禍は飛行して荷物を運ぶ。門下生らも翼を使って運搬には協力しており、彼もまたその1人として手数を埋める。もちろん、高所からの視点を活かした警戒も怠らない。
 また、鏡禍は作業がスムーズに運べるように、翌日……2日目の天気を気に掛ける。
「明日も晴れそうですね」
 もし、雨が降るなら、作業を急いだり、優先順位を変える必要があるが、その必要はなさそうだ。
 ライオリットもまた自前の翼で羽ばたき、資材運搬を行うが、彼は資材強化を中心に動く。
 とりわけ、金属を使うことになる昇降機だが、強度に不安のある資材もある。ライオリットは鍛冶によって資材を加工する。
 その合間を縫うように、彼は覇竜轟雷拳門下生との哨戒も行っていた。
 実際、こうしている間にも、亜竜や魔物は出現する。
 これだけの人数で作業していれば、興味本位に近づく魔物はいる。
「はああっ!」
「でやああああ!!」
 門下生らが飛来する小型の亜竜と対する中、世界も加わって幻影武器を振るって撃退、討伐に当たっていた。
 その頻度はちらほらあり、現場近くでの交戦となることもしばしば。
 予め、余波が現場に及ばぬようにと、ニルが保護結界を張ってトラブルを防ぐ。
 飛んできた衝撃波を食い止められたときは、ニルも胸をなでおろしていた。
 程なく亜竜を撃退したことで、再び門下生らが警戒態勢に戻る中で、世界は現場周囲をぶらぶらと散歩する素振りを見せる。
 世界自身は作業を行ってはいなかったが、簡易式召喚術で最大限の数の精霊を呼び出し、哨戒や作業の手伝いに当たらせる。
 また、世界が気にかけていたのは、崖下の機器近くへと建てられていた駐在所。
 ここから罠を起動させるためのスイッチ、メンテナンスの為の機器などを設置する予定だ。
 元々建設予定がなかったこともあり、世界が……というよりは呼び出した精霊が駐在所の建設には主となって力になっていたようだ。
 メインの工程となる崖下用の機器はメイが主となり、パサジール・ルメスの民が建造を進める。
 多少は練達の技術で作成を進めていたようで、メイはそれらもチェックしつつそれらを組み立てる形。
 崖のレール敷設はラダが中心となっていた。
 ケンタウロス型をした馬の獣種である彼女だが、完全な人型でもギフトによってその馬力は健在。
「がんも、イケるよな?」
 また、呼びかけるワイバーンのがんもも任せてと言わんばかりに鳴き、高所への荷物を運び、あるいは支えると言った力仕事も難なくこなしてくれた。
 ムサシは機器の設置に当たり、土着の亜竜や魔物が地ならし、地面の揺さぶりなど行うことで、昇降機が止まったり、リフトが外れたりといった事故の発生を危惧する。
「エレベーターの要領で、昇降時に使うワイヤー等の物品は少しでも頑丈なものを用意せねば」
 部品の強化は必須と考えたムサシは、ライオリットにそれらを依頼していた。
 ムサシの傍らで、ムエンは集落民と共に食事を作る。
 彼女はラサ産のスパイスセットを用意しており、大量のカレーを作成していたいくつかに分けて。
「滞在は3日。少なくとも2日はカレーで食事を賄えるような量が必要だな」
 料理の火種はタイニー・フェニックスに任せ、ムエンは大量の食材を集落民と切り分け、それらを鍋へと入れていく。
 作業に当たるメンバーだけでも50人ほど。
 鍋は大きな寸動鍋3つにだが、それでも3日分には足りそうにない。鍋をさらに追加し、ムエンはそれらにも具材や調合したスパイスを入れていた。
「はい、……それでお願いします」
 その近くでは、忙しなく動き回るユーフォニーの声が響いていた。


 きっかけは覇竜轟雷拳門下生の一声だった。
「ローレットすまない。救援を要請したい」
「はい、宇航さん共闘願います」
 徐・宇航の呼びかけを受け、ユーフォニーを始めイレギュラーズは作業の手を止めて敵の方へと急ぐ。
 場所は現場と集落の丁度中間。
 数名の門下生が手傷を負い、数体の魔物相手に苦しい戦いを強いられていた。
「「ウー、ウウー!!」」
 高く飛び上がって襲ってくるのは、野ウサギを思わせる魔物、ホッピンプレス。
 5体で襲い来るそれらは地面を揺らし、飛び上がった相手にサマーソルトやヒップアタックを繰り出してくる。
 亜竜種に適した覇竜轟雷拳で果敢に攻めていた門下生達だったが、何分相性が悪く、空中へと飛び上がったところを撃ち落とされてしまう。
「「ウウウー!!」」
 なおも我が物顔で暴れるホッピンプレス。
 それらの狙いは集落にも向きかけたが、やはり作りかけの昇降機が気になる様子。
 ライオリットはそれらの動きを止めるべく突撃戦術を仕掛け、激しい剣撃で巨躯の魔物に切りかかる。
「自分達が何とかしましょう!」
 ムサシもほぼ形になった駐在所や昇降機の下部へと近寄らせぬように全力で対処に当たる。
 エネルギーを充填したリボルバーを握るムサシは、ガトリングの如く発砲していく。
「それは、世界。私だけの世界」
 ユーフォニーもまた音を発して苛烈に魔物を攻める。
 とにかく、昇降機側へと敵を近づけさせぬよう、色を持つ音を次々に浴びせかける。
 仲間の攻撃を浴びて棒立ちになる魔物がいる一方、今だフリーの敵が高く飛び跳ねて自由に暴れる。
「ほら、こっちだよ」
「飯に手を出そうとした、お前たちが悪い。狩らせてもらうぞ!」
「折角作り上げたものを破壊なんてさせないわ!」
 それらの注意を惹きつけようと、ラダ、ムエン、セレナと次々に名乗りを上げる。
「「ウウー!!」」
 いきり立つホッピンプレスは3人それぞれへと向かい、頭上から襲う。
 ヒップアタックに体当たり。覇竜の地で強敵と渡り合う野ウサギだ。その威力は並の生物なら一撃で砕けかねない威力。
 敵を抑える3人を、世界が調和の力を癒しに転じて支える中で、他2体も鏡禍が妖気の誘いで引きつけ、昇降機から遠ざける。

 しばらくの間、魔物は鼻息荒く巨体をぶつけてくる。
 太刀打ちできぬ門下生はもちろん、手当に当たるパサジール・ルメスの民や亜竜種の集落民もその戦いを注視する。
 少しだが昇降機から離れるように誘導できたことで、イレギュラーズの攻撃も激しさを増す。
 しばし、天上のエンテレケイアを行使して前線の仲間に暖かな光と心地の良い風を吹かせていたニル。
 ある程度、ホッピンプレスが纏まるタイミングを見計らい、ニルは混沌に漂う力を泥溶かして一気に浴びせかける。
「せーの……ドカーン!」
 メンタルを高めていたメイもまた直線状にホッピンプレスのみが並んだ瞬間、構築した連続魔を立て続けに浴びせかけて魔物を圧倒する。
「ハアアアッ!」
 ここで、覇竜轟雷拳師範徐・宇航の技が冴える。
 剛腕に蹴撃、真上から尻尾を叩きつけ、ホッピンプレスを自由にはさせない。
「あまり時間を取られるのも手間でありますから……レーザー・ブレードッ!」
 仲間達の攻撃で勢いが削がれたホッピンプレエス目掛け、ムサシは警棒を閃光で包んで。
「輝勇閃光……ブライト・エグゼクションッ!」
 レーザー光を纏わせた一閃で、ムサシは見事にホッピンプレスを捌いてみせた。
 その後も、イレギュラーズの快進撃は続く。
 ホッピンプレスが着地したのを見て、ライオリットが再び飛び上がらせぬよう相手を上回る速力で切り裂く。
 トドメに軍刀を大きく薙ぎ払い、ライオリットは2体目を二度と飛び上がらぬよう仕留めてみせた。
 傍では、ムエンが格闘術式で1体の態勢を崩して。
 間髪入れず、ムエンは裁きの一撃でそいつの体を貫き、完全に動きを止める。
 激しい攻撃にさらされていたセレナもまた1体を追い込み、漆黒を宿す指先でそっと魔物の体に触れる。
 瞬く間に漆黒の力に蝕まれたホッピンプレスは泡を吹いて気を失ってしまう。
「一気に決めるぞ!」
 最後の1体はラダが至近にまで攻め入り、猪・鹿・蝶の三連撃を浴びせかける。
「ウ、ゥ~……」
 跳躍する力すらなくなったホッピンプレスは目を回して倒れ、転がるように近場の川へと落ちていく。
「手当をおねがいできますか?」
 全ての魔物を撃退したことを確認し、ユーフォニーはパサジール・ルメスの民に傷つく仲間の回復を依頼する。
「この辺に巣でもあるんだろうか」
 倒れる魔物達を見回し、ラダは今後も襲来するようなら追々駆除を視野に入れねばと考えるのだった。


 1日目は慣れぬ作業と魔物や亜竜の襲来も続き、予定よりは作業が進まぬ状況であった。
 それでも作業や戦いに全力を尽くしたこの場の面々の為、ムエンは精魂込めて作ったカレーを皆に振舞う。
「キャンプと言えばカレー! 楽しみだったのよね」
 現場近くでテントを張ることにした面々。さながらキャンプの状況とあって、セレナは嬉しそうに晩御飯を前にする。
「みんなで食べるカレーは『おいしい』のですよ」
 キャンプにはカレーと覚えていたニルもまた、カレーを食べたいと主張した1人だ。
「おいしくなぁれ」
 おまじないの言葉を最後のスパイスとして注ぎ込み、ニルは早速、ムエンの作ったカレーを一口……。
「やっぱりおいしいのです」
 忙しく動き回った後のカレーは実に格別で。
 仲間に囲まれたニルは笑顔でカレーを口へと運ぶ。
 なお、鍋を小分けにし、今日倒した魔物や亜竜の肉を入れて煮込む。とりわけ、汗水流して戦った覇竜轟雷拳には好評だったようだ。
 ラダもそれに興味を持ち、肉の仕込みに協力し、自らもその肉の入ったカレーを口にする。
 肉によってコクが変わり、少しずつ味わいが変わるのが面白い。ラダはそれらを少しずつ食べくらべて味わっていた。
 ユーフォニーもまたカレーを食べて元気を補給してはいたが、その間も皆が休めているかとあれこれ気を回す。
 そんなユーフォニーをセレナが気にかけて。
「……ユーフォニー、あなたちょっと無理してない?」
「そう……ですかね」
 朝からずっと神経を張り詰めて作業工程をチェックしていたユーフォニー。加えて、戦闘もあり、彼女は疲労困憊といった様子。
 それもあり、セレナは自らのギフト「夜守の祝福」によって、祈りを捧げて。
「夜を守る魔女より友へ。休むべき時はしっかり休むこと。ね?」
「あ、はい……」
 そのまま眠りへと落ちるユーフォニー。
 彼女がゆっくりと眠れるように、他のメンバーで夜間の警戒、作業を行う。
 発光するセレナが広域の照明となる中、夜目の聞く面々が周辺を警戒する。
 ライオリットは音や臭いでも何者かの襲撃が感じ取れるよう五感を研ぎ澄ます。
 しばらく門下生と共に地上を歩いていたライオリットだが、敢えて上空から俯瞰しての索敵も行っていた。
 ラダもまた、上空から索敵を行う。
 感覚を研ぎ澄ませ、ラダはサイバーゴーグルで周囲を見回し、闇に身を隠して迫る魔物を素早く発見する。
 ただ、夜に忍び寄る敵は警戒心が強い。こちらが発見したと知れば、すぐさま逃げ去ってしまう。
 それでも襲い来る相手は、交替で警戒に当たる門下生が対処に当たり、撃退していた。
 鏡禍も夜の警戒に加わり、門下生らと現場周辺を周回する。
 何か発見すればすぐさま仲間へと伝えられる手段を用意しつつも鏡禍の担当時間は過ぎていく。
 そして、ライオリットと分担して別方向の見張りをしていたニル。
 2羽のファミリアーと一緒に周りを確認する最中、ニルはできる範囲で資材の準備や片付けも行う。
「あんまり大きな音を立てないように……」
 秘宝種であるニルは眠る必要がない。だからこそ、休む仲間達がしっかり眠れるようにとニルは祈る。
「いっぱいいっぱいがんばれますように」
 鏡禍が明日も天気だと伝えてくれた。ニルはにこやかに微笑み、少しでも進められればと陸鮫で移動しつつ夜通し作業に当たるのだった。


 2日目。
 日の出と共に、目覚めたユーフォニーの指揮の元、初日の遅れを取り戻すべく皆動き回る。
 とはいえ、夜の間も作業していたニル達もおかげもあって、程なく1日目予定の昇降機下部の機器と上部を繋ぐレールの設置を完了することができた。
「次は上部機器の設置と、魔物対策ですね」
 機器を組み立てる為の資材もある程度崖上に引き上げており、初日よりも作業はスムーズに進む。
 ここでも、機器の組立はメイが主となって当たる。
 メイ自身も飛行して資材を運ぶ傍ら、ライオリットはここでも金属加工して自然厳しい覇竜の地で野ざらしとなる昇降機の補強に努める。
 他メンバーは機器の作業と並行し、昇降機が魔物や亜竜に破壊されぬような対策も進めていて。
「根本的に魔物が侵入しにくい柵や門もあった方が良い気はするっス」
 仮に、交易商人が魔物らに追われる状況でも、この昇降機までたどり着ければ安心といった状況になればと、ライオリットはこの場に防衛機構の作成を皆に打診する。
「周囲に植物を植え替えるのもアリか。徐殿、この辺の生き物が嫌う植物などに心当たりは?」 
「そうだな……ハーブやトウガラシは効果的だと聞く」
 丁度、カレーを作っていたこともあり、ラサのスパイスが使えそうだ。またシソやオイルなども効果的なものがあるとのこと。
「そのあたりの植物ならあると思うっす」
 現状用意できている植物をリヴィエールは同胞らと準備し、ラダ手動で機器や駐在所周辺へと植えていく。
 とはいえ、この近辺は岩場。積もっている土も痩せており、根気強く植物を育てる必要がありそうだ。
「崖にも蔦や植物をもう少し増やして、レールをカモフラージュしたいですね」
 鏡禍も岩場となる崖に露出する土にも色々と植えたり、岩場には似たような模様を書き込んだりすることで遠目からはわかりづらいよう迷彩を施していく。
 ニルもその手伝いをと周りから植物を集め、崖を資材と同じ色に塗っていた。
 機器自体には鏡禍の妖力を使い、鏡の反射を使うことで周囲の岩場を移して隠すことができる様設置していた。
「駐在所から罠やエネルギーの必要な設備が捜査できるよう、配線を敷きましょう」
 ムサシはそれらをすぐ起動できるよう、スイッチを設置する。
 交易商人が使うことのできる様シンプルベストを心掛けた仕組みになるようにとムサシは心がけて制作を進めていく。
「駐在所はうまく機能しそうね」
 誰もが交易の為に立ち寄り、メンテナンスをできる様に。
 セレナはここで動力用の魔力が補填できるようにと作業する。

 また、メンバー達は罠の設置も少しずつ進めていく。
「罠は昇降機の周りに固めて仕掛けておきたいな」
 機器の組み立てを門下生達に頼む傍ら、メイは昇降機の周り8方向に大型のトラバサミなどを作成、設置する。
「ちょっとハイテクなものを用意してみた」
 世界が準備を進めるのは、電磁網の様なもの。
 魔力の注入が必要になるが、それでも効果は覿面。ある程度の力量までなら牽制、最悪動きを止めることができる。
「それか、迎撃砲でも作ってみるか」
 あれば魔物に襲われた際に使えそうだが、生憎と資材が足りそうにない。
「遅れは取り戻せたようですね。本当にありがとうございます」
 ユーフォニーがこの場の面々に礼を告げていると、ニルはせっせと水を配って。
「忙しくっても、休憩とかお水を飲むのとか、忘れちゃいけないのですよ」
「そういえば、今日のおやつは何だろうね」
 ラダも休憩とあって、何が出てくるのかと楽しみにしていたようだ。
 初日はリヴィエールの計らいで他国産のフルーツを振舞ってくれたが、今日は……。
「折角だし、こんなものはどうだ」
 世界が取り出したのは、綺麗な装飾を施した菓子折り。
 イレギュラーズがその香りと甘味にほっこりとしたのはもちろんだが、馴染みのない亜竜種達はとても絶賛していた。
「美味い物は得てして士気を上げる効果があるからな」
「そうですね、ありがとうございます」
 元気を補給し、ユーフォニーは改めて現場監督としての任を全うしようと奮起する。
 とりわけ、罠の設置に動くメンバーが多くなったこともあり、ユーフォニーは崖上の機器の建造に加わる。
 もちろん、仲間と交代で外敵の襲来への開会は怠らない。
 感覚を共有した使い魔のリーちゃんと共に、自身と合わせた2つの認識点から警備も行うユーフォニー。
「南西から魔物の群れが近づいています」
「了解した。手の空いた者は続け」
 徐・宇航師範は門下生を伴い、それらの迎撃へと向かっていく。
「罠で対処できない魔物は少なからずいるはず」
 明日、どの程度罠が機能するのか、セレナは確認しようと考えながら、ムエンからの夕飯の呼びかけを耳にするのだった。
 

 今日もムエンの作ったカレーを食する面々。
 あちらこちらでカレーの匂いが漂い、食欲をそそる。
 大量に作ったカレーはそれでも残るようで、集落民がその味を覚えて名物にしたいと言った話も持ち掛けていた。
 その匂いはあちらこちらへと漂い、魔物を呼び寄せてしまって。
「何か来るっス!」
 真っ先に叫んだのはライオリットだったが、感覚を研ぎ澄ますメンバーは皆その襲撃を感知する。
 ブオオオオォォォ……。
 足音は複数。嘶く声がここからでも聞こえてくる。
「あれだけ暴れていれば、さすがに気づくね」
 メイの人助けセンサーが働いていないことから、幸い、魔物と思しき相手に襲われている者がいないようだ。
「夜おそくなくてよかったです」
「此方も必要なさそうですね」
 ニルはアシカールパンツァーを、鏡禍はゲーミング林檎を使って敵の出現を知らせることも想定していたが、その必要なさそうだ。
 ともあれ、こちらへと近づく魔物対処の為、メンバーは食事の手を止めて戦闘態勢をとるのだった。


 ブオオオオオオオォォォ!!
 ドシンドシンと地面を揺らして走ってくるのは、水牛を思わせる容姿に豚の頭を持つ魔獣。
「カトブレパスか」
 徐・宇航師範は門下生では荷の重い相手だと判断し、この場は自らが出向くことに。
 ただ、その数は3体もいる。カレーの匂いに誘われたのだろうか。
「魔物がつまみ喰いしようとしてくるのは想定済みだ」
 調理したカレーを狙う魔物に苛立つムエンの前に、鏡禍が立つ。
 突進してくる敵がキャンプや昇降機の方へと向かわぬよう、彼は魔獣らが直進せぬよう妖気の誘いを使って引きつけようとする。
「飯に手を出そうとした、お前たちが悪い。狩らせてもらうぞ!」
 まさか3体も同時に現れるとは想定していなかったムエンだが、仲間とともに引付できるとあって、名乗りを上げて1体の気を引く。
 引き付け役としてはここでもラダが動いており、カトブレパスの進路を妨害する。
「これ以上進ませないっス!」
 ここでも突撃戦術をとるライオリットは空間ごと魔獣を全て斬砕せんとする。
 とはいえ、相手は覇竜に生息する魔物。それだけで崩れるほどやわな相手ではない。
 仲間達がそれぞれカトブレパスを抑え始めたところで、ニルがケイオスタイドによって発生した泥を纏めて浴びせかける。
 続けて世界も幻術によって多数の槍を創造し、呪念を籠めて投擲する。
 それらに貫かれても、カトブレパスはほとんど怯みもしない。
 長期戦になりそうだと察した世界はすぐに回復役に徹することに決めた。

 カトブレパスはかなりタフな相手だが、数ではイレギュラーズと徐・宇航師範が勝る。
 1度では倒れずとも、人数で回数を重ねることで、カトブレパスの巨体にキズを増やす。
 できる限り手早く片づけようと、ムサシは全力でレーザーブレードを刻み込むと、ニルがそいつへと接近する。
 前線で敵を抑える仲間の回復を世界へと託し、ニルは短杖に膨大な魔力を籠めて……敵を叩く。
 ブオオオオオォォォォ……。
 激しく暴れていたカトブレパスは大きく口を開いた体制のまま仰け反る様に倒れていく。
 残る敵もと討伐が加速する。
 いかなる相手も石化させる瞳が非常に厄介な相手だが、引付役へとそれらが集中する間にセレナが掌を広げ、黒紫の光を放つ。
 それは照らしたものに狂気と終末を齎す凶兆。
 狂ったようにじたばたともがき始める1体に、超集中状態となっていたメイが仲間を巻き込まぬよう高火力の連続魔でカトブレパスの頭と胸部から臀部まで穿てば、さすがの魔獣も泣くことすらできずに重たい身体を投げ出すように地面へと横たえる。
 残りが1体となれば、イレギュラーズの攻撃が集中し、瞬く間にカトブレパスは瀕死へと追いやられて。
「絶対、近づけさせない」
 静かな決意と共に、ユーフォニーが魔力を無数の書類と化して敵の頭へと叩きつける。
 ブオオオオオォォォ……。
 白目を剥いた魔獣は潰れるように地へと伏す。
 魔獣を掃討できたものの、覇竜にはこうした脅威が数え切れないほど跋扈する。
 それでも、ユーフォニーにとって覇竜は特別な地。
「それに……叶えたい夢もあるから」
 事前に、メイが覇竜に領地が欲しいと叫んでいたが、ユーフォニーもまた領地を求めていて。
 それだけでなく、彼女はドラネコ配達を本格的に始めたいと夢見るのである。


 3日目。
 この日の作業を始める前に、ムエンはここぞと得意の一品を作成していて。
「ボリュームたっぷりのナシのパイだ」
 今日は最終日とあって、全力で追い込み作業に当たるメンバー達へと振舞う。
「とっても甘くておいしいっす」
 リヴィエールは嬉しそうに頬張る。
 ここでも、亜竜種達がそのパイを絶賛し、集落の名物にできないかと考えていたようだ。

 先日は罠設置に注力するメンバーが多かったこともあり、機器や駐在所の建造への追い込みがメインとなり、皆動く。
 機器にトラブルがないか、しっかりと動作するか。罠もチェックしたかったが、全ての確認は難しいとの判断に至り、この場は目下の目的である昇降機が起動するかチェックする。
 午後を過ぎ、解散せねばならぬ時間が近づく中、メンバーは最後まで作業に追われる。ここまで、警戒を主に動いていた世界も昇降機のチェックを手伝う。
 一応、完成となったところで、ラダがユーフォニーの手を引く。
「いや実に壮観。ユーフォニー、一番に使ってみないか?」
「是非、乗ってみたいですね」
 ここはラダ、ユーフォニー、鏡禍でリフトへと乗り込む。
 馬車が乗り入れ可能なリフトだが、万が一のことも考えてここは3人だけ(同行するワイバーン、ドラネコも含む)で乗り込む。
 ガタッ、ウイイイイイイィィン。
 ここまで作業に当たっていたイレギュラーズ、パサジール・ルメスの民、覇竜轟雷拳の面々、中継地点となる集落民が固唾をのんでゆっくり昇っていくリフトを見上げて。
 ウィィィィィィ……ン。
 レールの上をリフトが滑る。
 ガタガタとリフトは揺れてはいたが、大きく揺さぶられることはなく、安定していると言ってよい。
 やがて、リフトは崖上の機器へと到着。3人は崖上から大きく手を振り、問題がないことをアピールする。
 うおおおおおおおおおお!!
 昇降機の完成に、この場の面々が沸き立つ。
 実用に耐えるかといった問題こそ抱えてはいたものの、イレギュラーズはまた一つ、偉業を達成したのだった。

成否

成功

MVP

ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは現場監督として指揮を執った貴女へ。
 今回はご参加ありがとうございました。
 覇竜交易シナリオの続編をお待ちくださいませ。

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