PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

鉄と海の縁

 不凍港ベデクト。鉄帝国においては貴重な、文字通り『凍らぬ港』である。
 が。一時は大寒波の影響もあり大量の流氷が押し寄せた事もあった……
 凍らぬ港が凍る――
 それにどれだけの者が絶望を抱いたか。
 しかし。ポラリス・ユニオン(北辰連合)が多くの軍事力の投下を決め、更に独立島アーカーシュが屈指の技術力を用いて流氷の破壊を行った事により――最悪の事態は脱する事が叶った。海の航路は確保され、だからこそ……
「見えたな――不凍港ベデクトだ。定刻通り到着良し」
「各員、接舷準備。周囲の警戒は一応怠るなよ――安全ではある筈だが、な」
 海洋方面から船が至るものである。
 ソレは海洋からの貿易船。かつての会談において盟を結んだ鉄帝と海洋の間には貿易の為のラインが存在していた――鉄帝の動乱や、海洋方面で生じていたシレンツィオの問題により一時途絶えていたものの、遂にその航路が復活しつつあるのである。
 その一隻に乗り込んでいるのはカイト・シャルラハ(p3p000684)か。
 地図と磁針を手に彼方を見据える彼には、不凍港ベデクトが見えていた――
 寒さはある。しかし凍ってはいない。
 これならば港に接舷する事も十分に叶おう、と……さすれば彼の父であるファクル・シャルラハは指示を飛ばす。ベデクトへ船を寄せよ、と。
「やれやれやっとか――流石にシレンツィオからの出張は遠いよなぁ」
「ハッ。船旅ってのはこれぐらいの時間がかかるのも、日常茶飯事だぜ。
 ゴブリンにはやっぱ分かんねぇか――?」
「うるせぇや。それより港に着いたからって終わりじゃねぇ、また仕事だぜ。気を抜くなよ?」
「……鉄帝か。懐かしいような気もするもんだよ。やっぱりどこか闘争の臭いがする――」
 派遣会社ルンペルシュティルツの社長キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)だ。傍には彼の会社に――非正規雇用としての枠だが――属するベネディクトスフェーン・メナカイトの姿もあるか。
 彼らは用心棒だ。道中になんぞや不穏な敵襲があらば撃滅せんと、此処にいた。まぁ幸いというべきか、それとも完全に新皇帝派がこの辺りからは排されていたからか……彼らの力が必要になる程の荒事は無かったが。鉄帝出身であるスフェーンの方は、近付く故郷の香りに嗅覚から感じえているか。
 ともあれ海洋より出発した一団はベデクトに辿り着く。
 多くの物資を携え。多くの兵力も携え。
「独立島アーカーシュや北辰連合がベデクトを制圧しているはず。特にアーカーシュを経由すれば……鉄帝各地に物資を行き渡らせる事も可能なんじゃないかな」
「歯車卿に連絡してやんねーとな――お待ちかねのモノが届いたってよ」
 言うはイリス・アトラクトス(p3p000883)だ。彼もカイトと共に船団に乗り込んでいた者。エルネストの総督を務める父、エルネスト・アトラクトスからの任も受けてやってきたのである……これだけの人員や船団を投入するとは。それだけ海洋も、それなり以上に鉄帝の動乱には注視しているという事か……
 ベデクトは新皇帝派から解放され、やがてここに至った物資はアーカーシュを経由して各地に巡るだろう。アルマスク地方も奪還していた今であればこそ、なし得る補給路も構築されている――
 反撃の時が、近付いていたのだ。


「無事に物資は届いたようですね。氷海での航海など中々得難い経験をさせて頂きました」
 海洋王国――その王宮にてソルベ・ジェラート・コンテュール(p3n000075)は何処か安堵したように息を吐いた。
 比較的温暖な気候に恵まれているネオ・フロンティア海洋王国はシレンツィオの一件の後、直ぐにでもイレギュラーズの要請を受け物資の輸送を行なうべく準備を整えた。
 しかし、其れを阻んだのはフローズヴィトニルと呼ばれた異常気象である。『凍らずの港』として知られる不凍港ベデクトが凍り付き、その周辺海域にも影響を及ぼした。
 海域航行にも支障が出た為に海洋軍は商船の護衛だけではなく航行の為の準備に大いに手間を取らされたと言うわけである。
「これでシレンツィオの借りは返せたかのう?」
「ええ、女王陛下。ですが、『我々の借り』はもう一種ある事をお忘れではないでしょうね?」
 海洋王国女王イザベラ・パニ・アイス(p3n000046)は「煩い鳥じゃの」とソルベを睨め付けた。
 言われなくとも分かって居る。もう一種類の借りとは『滅海竜リヴァイアサン』を越えた海洋王国大号令に助太刀した陣営にゼシュテル鉄帝国が名を連ねていた事である。
「グレイス・ヌレでは勝手に絡んできた奴らでは在るがの」
「そちらは会談にて色々と取引を済ませておりますから、リヴァイアサンこそ彼等の善意でしょう」
 穏やかに微笑んだソルベにイザベラは「分かって居るわ」と扇で口元を隠した。
「それも返す用意をせよ。序でじゃ、此方も万全を期した方が良い」
「其方についてはご心配なく。主上は神使の為であれば何時でも兵を送るおつもりですから」
 ソルベは控えていた月ヶ瀬 庚(p3n000221)の申し出に予測は出来ていたと頷く。
 彼の傍には胃痛を隠しきれぬ建葉・晴明 (p3n000180)が立っていた。
「主上――我らがカムイグラの君主なる霞帝より御言葉を預ってきている。
『神使(イレギュラーズ)が望むのであれば、豊穣郷はどの様なときでも協力を惜しまない。
 四神と共に、加護を降ろし神使の望むべし世に整えてしんぜよう』」
「つまりは主上も――」
 庚の口を勢い良く塞いだ晴明がぎこちない笑みを浮かべた。ソルベやイザベラも其処に続く言葉は想像が付いている。
「……一先ず、カムイグラに我々としても協力を要請します。連合軍を組み、海を越え参りましょう」
「はい。指揮は其方にお任せします。
 ……と、申し訳ありませんが其方のご婦人は?」
 庚は壁際に立っていた一人の淑女に視線を遣った。何処か所在なさげな彼女は目線を落してから小さく一礼をする。
コンスタンツ・アネル夫人です。鉄帝国に所縁ある方ですが、シレンツィオに滞在されておりました」
「……アネルと申します。主人は鉄帝国軍では大佐――いえ、将軍を拝命しております」
『特進』、その意味合いが分からぬほどに豊穣郷の陰陽頭と中務卿は馬鹿ではない。それ以上は問うことはなく唇を引き結ぶ。
「軍へは夫、パトリックの名を出せば顔も利きましょう」
 そう告げる女は笑みを見せた。痛々しくはあるが、どこか清々した様子である。
 これが『軍人』の妻なのだろう。高級リゾートのチケット2枚、何を意味しているのかが分からぬほど、彼女は疎くはない。
 其れを理解した上で彼女は気丈に胸を張った。
 特進した『パトリック・アネル』がイレギュラーズにとっても鉄帝国にとっても『得難い存在であった』と言うならば利用しない手はない。
「それでは、アネル夫人。御夫君の名を借ります。我ら海洋・豊穣連合軍はパトリック将軍の声掛けにより鉄帝国に馳せ参じる、と――」
 そんな筋書きはどうだろうかとソルベは悪戯を思いついた子供の様に笑って見せた。


 ※鉄帝国各地で反抗の機運が高まっています。不凍港ベデクトに海洋方面から物資が到着しました!
 ※天義の都市テセラ・ニバスが消滅し、異言都市(リンバス・シティ)が顕現しました。また、遂行者勢力による天義での活動が観測されています!
 ※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編アドラステイア

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM