PandoraPartyProject

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帝都を見据えて

「ぉぉぉおお新皇帝派の屑が――!」
「帰れ帰れッ!! 俺達は負けやしねぇぞ――!!」
 ――鉄帝国各地で反抗の機運が強まっていた。
 それは六つの勢力が今まで幾度も新皇帝派を退けてきたが故だろう。
 各地の鉄道網、並びに不凍港バラミタ奪還作戦を始めとして。新皇帝バルナバスの勅命を我が世の春が来たとばかりに喜んでいた者達を叩きのめして来た――当初こそ警察機構が解体され、怯え竦んでいた民達の中にも立ち上がり始める者達が出るものである。
 特に、最も求心力がある帝政派には続々と味方する民も集まっていた。
 如何に『強き』を尊ぶ鉄帝国とは言え、あまりに横暴であるバルナバス帝の治世は受け入れられるものでなかった反動もあるのだろう。先帝ヴェルスの治世を取り戻してほしいという願望は多かった――
「新皇帝派の軍勢は、帝都方面に撤退を行っているようです。
 このままであれば帝都へ進むのに左程の障害はないかと……」
「――しかし些か血気盛んな民も見えますね。
 暴走しないように注意してはおきましょう。我々が無法側になるのは避けねば」
 帝政派本拠サングロウブルク。その地にて言を交わすのはヤドヴィガ・ホルショフスカナターリヤ・ソフィストだ。ヤドヴィガは先日の南部戦線のバーデンドルフ・ライン戦では、彼方に所属する側の要請に伴い南部戦線方面にも協力していたか――
 しかし元々勢力設立時は帝政派側にいた者。
 帝政派と南部戦線の連合が組まれようとしている今も、一応はサングロウブルクへと帰還していた。と、同時に伺えたのは帝政派に協力せんと集っている多くの民の姿。
 求心力が高かったが故もあるのだろうが――しかし。
 ナターリヤには些か気掛かりな所もある
 それは民の間に『激しい感情』が、時折見え隠れする事があるのだ。

 ――暴虐を振るう新皇帝を許すな。
 ――友の仇を取れ、家族の仇を取れ。
 ――連中を打ち倒せ。磔にしてでも足りぬ。

 ……そう。『憤怒』の感情が見え隠れするのだ。
 全員が全員染まっているとは言わない。しかし確かに見え得る影があった。
 あらゆる暴力の肯定。
 保たれていた秩序の崩壊。
 折角に蓄えた食料に直撃する大寒波。
 それら全てがこの国に到来したが為か――
 多くの民は絶望の淵に追いやられ、そして憤怒の感情を抱かんとするは自然な流れと言えよう。それが新皇帝派打倒の機運になるのであれば悪い事ばかりとは言えない、が……
「――少しばかり胸騒ぎがするものだ」
「……ヴディト殿もそう考えられますか?」
「現在の我が国の情勢を想えばこそ不自然とまでは思わない。
 新皇帝派の圧に晒された者の感情としては当然であると言える。ただ……」
 されどヴディト・サリーシュガーもまた民の様子を注意深く見据えていた。
 何が、とは具体的に言えないが。やはり新皇帝を一刻も早く打倒しなければいけない予感がしている……この状態が長く続くのは良くないと。そう言えば、イレギュラーズ達は『空に浮かぶ二つ目の太陽』の調査の為に銀の森に出向いているのだったか――?
 もしかすればこの胸騒ぎの原因も、彼らの調査が終われば分かるだろうか。
 ……同時。彼女らの傍からはラジオの音声も流れていた。
 独立島アーカーシュがアルマスク地方を奪還して以降、復活しつつあるラジオ放送だ。
 このラジオ放送も各地で反抗の機運を高めているのに一役買っている。
 誰もが望んでいるのだ。穏やかな明日が来ることを。
 誰もが欲しているのだ。暖かなる春が訪れることを。
 あぁ――
「……明日は晴れるでしょうか」
「――ええ。きっと」
 ナターリヤは帽子の鍔を整えながら――天を眺めるものだ。
 其処には太陽が二つあった。太陽は雪を解かすだろうか。
 その果てにあるのは枯れ果てた地平か。それとも春の穏やかさだろうか。
 ……信じたいものだ。小川の流れに、熱奪う冷たさが宿っていても。

 緑が茂り、暖かくなる日が確かにあったと――この大地が覚えている事を。


 ※鉄帝国各地で反抗の機運が高まっています。求心力の高い帝政派の下には志願兵が多く集っているようです! 軍事力が上昇しています!
 ※天義の都市テセラ・ニバスが消滅し、異言都市(リンバス・シティ)が顕現しました。また、遂行者勢力による天義での活動が観測されています!
 ※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……

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