PandoraPartyProject
バーデンドルフ・ライン会談
ラサのネフェルストで『赤犬』の行方が知れぬ――
同時に巻き起こるネフェルストの騒動は、砂漠の国に混乱を与えていた。
熱砂に包まれるかの国には、如何なる月が光を照らしているか……
しかし。ラサとは正逆、冷気に包まれし鉄帝の動乱もまた――止まぬ。
――ジーフリト計画。
その過程において南部戦線は本拠地バーデンドルフ・ラインに敵を引き込み、突入して来た新皇帝派に甚大な被害を与えた。一方で要塞への被害はかなり軽微……一部で破損はあるものの、そんなものはすぐにでも修復が可能な程度だ。
要塞の強化政策も実行した事による万全の迎撃が功を奏したのである。
南部戦線の士気はかつてない程にも高まっていると言えよう。
帝都を自らの本拠地とする新皇帝派の威は堕ちているのだから――そして更に。
「――久しいのザーバ将軍」
「まさか宰相殿が、こんな地にまで至るとはな。正直驚きだ」
「あぁ。全てはイレギュラーズのおかげよ。彼らなくば今こうしては居れん。
南部戦線にとっても『そう』ではないか?」
バーデンドルフ・ラインへと訪れる存在がいた。
それは――帝政派の長たるバイル・バイオン(p3n000237)だ。傍には護衛としてだろうか、レオンハルト・フォン・ヴァイセンブルグやグラナーテ・シュバルツヴァルトの姿に加え鉄帝にて名高きオリーブ・ローレル(p3p004352)と言ったイレギュラーズもおり……そんな彼らを迎え入れるは南部戦線の守護神ザーバ・ザンザ(p3n000073)である。
――いやザーバだけではない。南部戦線側には大佐の地位を持つエッダ・フロールリジ(p3p006270)や、アルケイデス・スティランス、新道 風牙(p3p005012)の姿もあったか。
宰相も将軍も、両名共にヴェルス帝の治世から鉄帝に仕える重鎮だ。
双方ともに新皇帝バルナバスを認めてなど――いない。故にこそ。
「話は既に分かっておろう? ――南部戦線と協調したい」
「ふむ。ま、そうだろうな」
「帝政派は現在、ボーデクトン周辺も勢力圏内に治めている。
もう暫くすれば帝都までの経路も確保できよう――」
「然らば。帝政派は西より、ザーバ将軍らは南より帝都へと向かう事が叶う、と言う訳です将軍」
バイルが語るのは、共に新皇帝を倒そうという誘いだ。
グラナーテに加えレオンハルトも現在の帝都を巡る情勢を語ろうか――
帝政派は拡大した。多くの民衆から指示を得て、大規模な勢力となっている。
しかしそれでも先帝を倒したバルナバスには十分ではないやもしれぬ……故に。
「……帝都包囲網か」
「左様。まさか、儂が生きておる内にこのような事態があるとは思ってなかったがの」
「しかし……起きてしまった以上は最善を紡いでいかなければならないかと」
「うむ。まっこと、オリーブの言う通りよな」
連合を組んでの包囲網を形成せん、と言う訳だ。
新皇帝バルナバスは帝都に在る。新皇帝自体はあまり外には出でず、不気味なほどに動きが鈍いが……新皇帝を倒さぬ限り、帝都を取り戻さぬ限り、この国が再び秩序を取り戻す事はないのだ。であれば遅かれ早かれ帝都へと軍を差し向けねばならぬ――
その為に南部戦線と協調したいのである。
「ふむ。共に祖国を取り戻さんとする同志からの誘いとは……! これほど嬉しい事はない……!」
「良かったなアルケイデス。これでまた帝都に帰れる道が近付いたじゃねーか」
然らば武闘派として知られるスティランス家の長子、アルケイデスは歓迎する様な声色を紡ぐものだ。
その本音が、速くこの動乱が終わる事を期待(そして家に帰れる事の期待)だと知るのは風牙くらいか――?
彼の背を叩いて良かったな、と言ってやるものだ。元より争う理由はない。帝政派と南部戦線は『ある一つの点』を除いて、国を想う方向性は同じなのだ。それぞれに属したイレギュラーズからも前々より互いの勢力と協調路線を取りたい、という意見も出ていた。
特に帝政派からすれば、本来であればもう少し早くこういった会談を行いたくはあった。
しかし勢力発足当時は周辺が新皇帝派による暴徒だらけである。
やむなく勢力の強化を着実に行い、そして鉄道都市ボーデクトンの制圧を始めとした鉄道網の回復などによってようやく実現出来たのだ――
ともあれ。歩調を合わせる事にはザーバ将軍も異はない、が。
「しかし、一ついいかな宰相殿。――ヴェルスの行方は知れたのか?」
「……残念ながら陛下の行方は未だ分からん。捜索は続けているがな」
「だろうな。正直、ヴェルスの奴は見つかってくれるのが俺としても都合がいいのだが」
「……陛下。まだ御身の影すら掴めないとは……」
大事な事がある。仮に無事に帝都を奪還出来たなら、一体どちらが主導権を握るのか。
帝政派は先代ヴェルス帝の治世を目指す者達であり、バイル宰相はヴェルスが生きていると信じて止まぬ。が、その当のヴェルスは未だ行方はおろか生死すら把握できていない状況だ。捜索隊を出したこともあるのだが……それでも有力な手掛かりはない状況。思わずエッダも、奥歯を噛みしめながら言を絞りだすものだ。
バルナバスを無事に倒せたとしても、誰が新たなる皇帝になるかで揉めるのだけは避けたい思惑がザーバにはあった。
が、前提として『ザーバは帝位に興味はない』のだ。
これは彼自身、繰り返し口にしている事である。適任がいるのならばその人物に任す。ヴェルスならばヴェルスで良いと……しかし彼を心酔する者達はザーバ将軍をこそこの機会に帝位に、とする動きも根強い。玉座を巡り混乱するぐらいならば将軍を! となる事だろう。
困ったものだ。ヴェルスは果たしてどこにいるのか――
あの男の事だ。もしも生きているのであれば必ず出てくるとは思うが。
「――まぁ連合の件は断る理由もない。
細かい政治的な要素は追々詰めるとして、な」
「うむ……感謝する将軍」
「それよりも。宰相殿が自らお越しいただいたのは……まさか」
刹那。ザーバの言に――バイルの視線が鋭くなった。
「その『まさか』よ。将軍、今こそアレを起動すべきだとは思わぬか」
「……本気か? いや、今更出し惜しむべきではないだろうが」
「其方こそ列車砲を手に入れたのは覚悟の上じゃろう?」
「宰相殿? その話は一体……」
「――黙っていて済まなんだのイレギュラーズよ。
お主らを信用していなかった訳ではない。
しかし、事は国軍の重大機密事項に関わる事であったので、の」
バイルは疑問の色を顔に浮かべるオリーブへと告げる。
そもそもなぜ新皇帝が帝都を掌握した時、バイルは西のサングロウブルクへと勢力を移したのか。
その真は、何故サングロウブルクを全力で『確保』したのか、と言うのが正しいか。
東の不凍港ベデクトやバラミタ鉱山方面ではなかった理由。
それは。その地に『ある一つの兵器』を保管していたからである。
「サングロウブルクにはの、秘匿されし格納庫があるのじゃ。そしてその格納庫を開くには司令官であるザーバ将軍の知る暗号と、宰相である儂の暗号、二つを合わせる必要があったのじゃ」
「――それは」
あぁ。とバイルはイレギュラーズを見据え、言を紡ぐ。
「鉄帝国軍の――『決戦兵器』よ」
※帝政派のバイル宰相と、南部戦線のザーバ将軍の間で会合が行われているようです。
※帝政派が『決戦兵器』を手に入れんとしています……!?
※ザーバ派が、先のバーデンドルフ・ライン戦での大きな勝利により、士気が上がっています! 軍事力が増加しています!
※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……
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