PandoraPartyProject

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要塞要撃

 鉄帝。南部戦線が本拠地バーデンドルフ・ライン。
 幻想王国方面に対する拠点でもあるこの地は、多くの軍人が常に在る――
 その施設内、将軍の執務室にて。

「新皇帝派共がバーデンドルフ・ラインに襲撃計画を立てている事は知っているな?
 ――だがこれこそ好機だ。この辺りで連中に一度、痛打を与えてやろう」

 言葉を紡いだのはザーバ・ザンザ(p3n000073)である。
 新皇帝派による勢力圏の襲撃――
 それ自体は規模の大小はあれど以前からあった事だが、しかし本拠地を狙わんとする動きがあるとは。
 独自の情報網を持ち一早く事態に勘付いた独立島アーカーシュや、ポラリス・ユニオンは迅速に警戒を強める事を選択した。ラド・バウ独立区、革命派と言った勢力も怪しげな気配に勘付いて調査を行い、民を護る為に戦力の配備を行っている――帝政派は圧倒的な求心力が故に在る、協力的な民と連動して警戒網を強化しているか。
 しかし南部戦線を母体とするザーバ派は、あえて敵を引き込んで討つ事を計画した。
 それが出来たのも南部戦線ならではかもしれない。なぜなら。
「民間人の避難が出来るなら、気に留める事もないしね」
「ああ。保護民が大丈夫なら全力でバカどもをぶっ飛ばせる機会ってもんだ!」
 サクラ(p3p005004)新道 風牙(p3p005012)が懸念していた民への被害を解消する事が可能と見られたからだ。南部戦線の本拠地バーデンドルフ・ラインは軍事施設だ。元々多数の民間人を収容しうる事を想定された地ではない――
 故に、民間人の移動を行ったとてそう不自然はないのだ。
 これが例えば都市サングロウブルクを本拠地とする帝政派などであれば民の完全避難などは難しい事であろう。都市から多くの民が避難する、などという事があれば敵に何かあるのではと勘繰らせたかもしれない。或いは南部戦線とて、勢力発足当時であれば此処以外に主だたる拠点がない故に話は別だったかもしれないが、しかし。
「ゲヴィド・ウェスタンを制圧する事が出来た以上、民を移動させる先もあるしな」
「そうね。あそこは住宅街もあるし、少なくとも此処よりずっと保護民を受け入れる事が出来るでしょ」
 先日の鉄道都市ゲヴィド・ウェスタン攻略にて、かの地を勢力圏内とする事が出来た為にその問題も解消されていると紡ぐのはエッダ・フロールリジ(p3p006270)イーリン・ジョーンズ(p3p000854)だ。無制限に、とまではいかないが、あの地であればある程度の民を受け入れる事も可能だろう。
 先んじて行っていた『トリグラフ作戦』の成果もある。
 ゲヴィド・ウェスタンとバーデンドルフ・ライン間の路線も回復しているのだ。鉄道を使えば移動もスムーズである――かくして『民の移動先』と『移動方法』を手に入れてたが故にこそ、このような策を巡らせる事が可能であったのだ。
 敵が至れば無論危険はあるが、しかし覚悟の上で待ち構えるのであれば話は別。
 成功すれば敵の戦力を削り取り南部戦線の士気は上がるだろう――

「まぁ引き込むとは言っても完全に無防備なまま待ち構える訳ではない。特に先日折角にも手に入れた列車砲――ノイエ・エーラ(新時代)を傷つけられては本末転倒だからな。警備を固める所は固めておこう」
「それは確かに。最低限、守護するべき所はしておかないとね。根回しは必要だ――表面上は油断している様に見せないといけないから、気を遣う必要はある、か――それとどうだろう。『おとっつぁん』は来ると思うかい?」
「ん。んー……どうかなぁ? おとっつぁん、あんまり細かい事は考えない人だからなぁ。隠れながら来るとか、そういう難しい事出来るかなぁ」

 とは言え、と。ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)解・憂炎(p3p010784)はどのように敵を待ち構えるか思案を巡らせるものだ。近くにはアウレオナ・アリーアル(p3n000298)の姿もあるか――警戒し過ぎて敵が突入前に勘付けば撤退されるかもしれない……それでは意味がないのだ。
 かといって尽力して入手した軍事兵器、列車砲ノイエ・エーラが再び破損の危機に陥るのは看過できない。適度な塩梅が必要になりそうだ。
 特に目撃されたアスィスラ・アリーアルやシグフェズル・フロールリジと言った存在は脅威。
(未だ醜悪なる身を晒すのであれば……討つ。フロールリジの名をもって)
 であれば。父たる者が再び、この国に――この国の民に――その拳を向けるつもりならば、と。
 エッダはふと知れず、自らの五指に力を入れてしまうものだ。
 ……勿論彼らが来るとは限らぬモノだが。しかし想定はしておくべきだろうと思考して。
「ふむ、守護ならば是非私にお任せを! 如何なる敵が至ろうとも薙ぎ払ってみせましょう!」
「はは。スティランス家は、いつの世代も逞しいわね――流石だわ。当主はお元気?」
「む? 父であれば……いや父とお知り合いで?」
「ああ、まぁ、昔ちょっとね」
「昔……? え、お幾つなので」
「――まぁアルケイデスも、ソフィーリヤにも期待しているぞ。その時には、な」
 然らばアルケイデス・スティランスや先日より鉄帝の地へと舞い戻ったソフィーリヤ・ロウライトも、必要と在らば馳せ参じようとする言を紡ぐものだ。互いに鉄帝を故郷とする者であればこそ、新皇帝派の暴を看過出来ぬと……まぁアルケイデスは内心、激戦の気配には心臓がはちきれそうな感じなのだが。ともあれ知ってか知らずかザーバは二人にも協力を要請して。

「とにかく、だ。どうせ、ゲヴィド・ウェスタン方面に敷いている防衛線と警戒網を突破して大軍が此処に襲来する事はない――警戒網を超えてくるのならば少数精鋭だろう。ならばこちらが気付いていない様に見せる事も兼ねて、もう一つ軍事作戦を遂行する」
「……もしや、地下道ですか?」
「そうだ。情報によると帝政派やラド・バウも幾らか調査の手を伸ばしているらしいな」
 と、その時だ。ザーバが語り出したのは――鉄帝で発見されている『地下道』の話。
 どこまでも続いているかの如く感じられる地下道は、新皇帝派の跋扈する地上を使わずに新たな道を開拓できるのではないかと言う期待もあった。更には……今ぞ鉄帝を襲っている大寒波にも関わっているとされる『フローズヴィニトル』にも関連があるという情報もあったが故に。
「事実であるならば放置は出来ん。こちらにも新皇帝派の姿が見えた、という話だしな」
「アクララン、ですか」
「連中がどこまで『地下』の情報を掴んでいるかは分からん。
 だがいずれにせよ好きにさせておく訳にもいくまい――
 地下にも部隊を送り込み連中を一掃し、帝都へのルートを確保する。
 その過程でフローズヴィニトルとやらの『何か』が地下にあるのなら、それも確保する」
 どうにもザーバは既に、いずれ来たる帝都奪還に向けた戦略を練っているのかもしれない。その為に削れるべき敵の戦力は削り、確保できる軍事路を確保し優位性を握らんと考えているのか。
 まぁいずれにせよ、フローズヴィニトルと関係があるともされる地下を放置する手はない。
 帝政派やラド・バウ独立区も恐らく似たような動きを見せるのではないだろうか。革命派や、西進の動きを見せる北辰連合、アルマスク地域を奪取した独立島アーカーシュも地下の存在と大寒波との関連は――大なり小なりあれど情報としては認識している筈だ。
 人々の命を奪わんとする程の極寒。
 その解決策が地下にあるのならば――
「……やれやれ。雪はまだ止みそうにないな」
 刹那。ザーバは窓の外を見据える。
 外は吹雪いていた。純白なる雫がどこまでも、どこまでも地平を埋め尽くしている。
 ――新たなる戦いの気配を、覆い隠すかのように。

 ※各勢力でアイアン・ドクトリンが使用されています!
 ※南部戦線では、敵の襲撃を引き込み迎え撃つ準備も進めている様です!

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