PandoraPartyProject
Bonus mendax narrat dimidium verum
冠位魔種バルナバスが新皇帝に即位し、頼みのシレンツィオも巨大な動乱に飲まれ混乱と困窮のなかにあるゼシュテル鉄帝国。
きたる冬にむけ物資の蓄えを必要とする今。革命派たちにある動きがあった。
「イレギュラーズの皆……すごいなあ……」
バインダーにとじられた書類をめくりながら、クラースナヤ・ズヴェズダー革命派の司祭アミナは頬を赤らめため息をついた。
綴られているのは彼らによる活躍の数々。医療支援団体『オリーブのしずく』との協力を取り付けたり、ブリギットというドルイドからは、相手が魔種であるにも関わらず心を開かせることに成功した。
それだけに留まらず、イレギュラーズは様々な活動を等して革命派に不足していた軍事力を大幅に引き上げ、難民キャンプは周囲の暴徒やモンスターがそう簡単に手を出せないだけの防備を固めるに至っている。ブラックハンズ隊との協力交渉も彼らのおかげでうまくまとまりそうであるらしく、警察機関の取り込みに成功すれば軍事力は勿論治安の改善や技術の発展も見込めるだろう。
アミナはぽうっとした頬を自分でぺちぺち叩くと、目をぎゅっと瞑った。
「いけないいけない。私も頑張らなくちゃですよね! 革命派の皆さんの期待を背負ってるんですから!」
ムンッとガッツポーズをとるアミナ。そんな執務室へ、司教ニコライ・グリゴリエヴィチ・ロマノフスキーが入ってきた。
執務室といってもアミナを初め多くの司祭が事務仕事をする部屋だ。誰に用があるのだろうとみていると、ニコライはまっすぐアミナの元へと歩いてくる。
「アミナ、最初の候補先が決まりましたよ」
「さいしょの? こうほさき?」
首を二段階にかしげるアミナに、ニコライがそっと手紙を差し出してくる。
蝋印のマークを見て、アミナはパッと顔をほころばせた。
「オースヴィーヴル領! オースヴィーヴル様がお返事を下さったんですね!?」
「ええ。それも、良いお返事でしたよ」
オースヴィーヴル領は鉄帝国領内に存在する土地であり、いわゆる旧ヴィーザル領である。
かつては鉄帝国軍による猛攻を受け壊滅寸前となったオースヴィーヴル領は、領主による降伏という形で鉄帝国へ併合。領民の命は助かったが、そのために多くの資源を引き渡す事となってしまった。
その際に救いの手を差し伸べたのがクラースナヤ・ズヴェズダーである。
『弱者救済』の理念のもとに、飢えて倒れる寸前であったオースヴィーヴル領内の人々に食料を配り、その他様々な支援を行ったことで無事彼らは復興を成し遂げたのである。
当時幼かったアミナは知らなかったことだが、先人達の行いに胸があつくなる思いだった。
革命派は今でも弱者救済の理念を掲げ、新皇帝即位の混乱によって産まれた多くの難民を受け入れるべく、より多くの物資を、そして多くの協力者を求めていた。
特に必要となるのは冬を見越した食料備蓄であり、その確保方法について頭を悩ませることが多い。
「今年のオースヴィーヴル領は収穫が多く、冬の備蓄にもかなりの余裕があるとのことです。出迎える準備をしてくれるとのことですので、話次第では……」
「助け合うことができますね!」
アミナは胸に手を当て、目を瞑った。
「あったかいご飯。みんなの笑顔。あたりまえの明日……それを守っていくことが、私達革命派の使命です。
オースヴィーヴル卿にはお礼を。それと、収奪を受けないように守ってあげませんと」
笑みを浮かべるアミナに、ニコライもまた笑みを返した。
「ええ、勿論。勿論ですとも――」
革命派がオースヴィーヴル卿へと会談を行いに向かいました、が……
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