PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

Celeste et

Celeste et

 我々は、我々全ての団結と共に、母なる大地と大空に抱かれた愛する帝国へ、新たなる歴史を刻んだ。それは伝説の浮遊島アーカーシュの発見であり、かつての帝国国民、栄えある第一次調査隊の子孫達との邂逅であり、未知なる遺跡の発見であり、新しい大地の獲得である。我々鉄帝国は、全ての民は、この新たな発見を共に喜び、分かち合うことを誓う。そして我々はこの大地を探求し踏破し、地図に描き加えようではないか。鉄帝国に栄光あれ!

                 ――スチールタイムズ 04/19 当局発表の記事より抜粋

 鉄帝国は湧き上がっていた。
 新聞は増冊を重ね、記者達や商人達がノイスハウゼンの町に押し寄せている。
 伝説の浮遊島アーカーシュの発見と、先発調査の成功は一大ニュースとなり国土を駆け巡っているのだ。

 イレギュラーズが翼亜竜を駆り、アーカーシュを調査し始めてから僅かばかり時が流れている。
 崖の近くには馬宿ならぬ翼亜竜宿が作られ、誰が言い出したのか翼止場(はとば)などと呼ばれ――そのあたりを整備してくれているのは、一連の案件の依頼主である鉄帝国軍と村の協力者達だ。

 唯一の村であるレリッカ近くには、鉄帝国軍によって木造の基地建設が開始された。鉄帝なのになぜ木造かといえば、大量の金属類の移送が出来なかったからに他ならない。アーカーシュは正に『空飛ぶ高原』であり、地上との移動は難しかった。特に大規模な輸送は困難を極める。この課題にノイスハウゼン造兵廠はひどく頭を悩ませ、会議では『鋼鉄の鎖で地上とアーカーシュを繋ぐ』『エレベーターをぶら下げる』などの荒唐無稽な案すら飛び交ったという。何をするにもまず兵站――宮仕えというのは大変そうだが、彼等も彼等で上手くやるのだろう。

 そんな軍部だが、どうもきな臭い噂がある。
 帝国軍は『歯車卿』エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフを中心に、各部隊毎の作戦行動によって調査を行っている。歯車卿はどちらかといえば、インフラや兵站を重視する事務方気質(鉄帝国では非常に珍しい)であり、また過程より結果を重んじる人物でもある。おまけに多忙だ。だから個々の部隊には強い統率がなく、ある意味では縦割り構造を生じている。とはいえ実際のところ、これが問題であるかといえば、決してそうではない。調査報告は順調に上がってきており、計画は順調そのものであるからだ。
 だが、こうした状況に目を付けたのが特務大佐パトリック・アネルであった。彼は階級と機密特権を盾に、勝手な派閥を形成し始めたのである。帝国は気質的に、国益となる限り独断行動には大らかだ。けれど現場の軍人達はパトリックの強引な態度に反発を抱く者も多い。
 こうして、アーカーシュに関わる帝国軍はにわかに『特務派』と『軍務派』とに分裂し始めたのである。

 新たな大地に期待するのは、なにも軍だけではない。
 学者達はイレギュラーズが持ち帰る新発見に胸を躍らせ、自然科学者や文化人類学者、考古学者や工学者達は、アーカーシュアーカイブスなる学会を立ち上げたらしい。アーカーシュで新しい何かを発見した者には、学会から『命名権』が贈られるようだ。既に何名ものイレギュラーズに手紙が届いているという。
 論文や学術誌に刻まれた名を起点に、新たな研究が始まるのだろう。

 商魂たくましい商人達も、すぐさまに行動を開始した。
 これはイレギュラーズの提案でもあったが、あるいは特産品となり得るものを値踏み始めたのだ。
 新たな大地に育まれる動植物や、あるいは遺跡から発見される遺物もまた商品に成り得る。

 そもそも歯車卿の狙いは鉄帝国インフラへの寄与である。
 即ちアーカーシュの大地は、鉄帝国が慢性的に抱える『食糧問題』にも貢献するかもしれない。
 人口を減らしながらも、百年を生き抜いた村という存在は、希望だ。
 例えば田畑の作物を、自然種から、品種改良された現代のものに置き換えたなら、どうだろうか。
 収穫量の大幅な改善が見込めるのではないか。
 そうした期待は大きい。

 いずれにせよ、誰にとっても舞台は整った。
 お国(クライアント)の事情はどうであれ、冒険屋(イレギュラーズ)にとっては些細なこと。
 鉄帝国からは、いよいよ依頼の発行が始まったことのほうが、よほどのニュースである。
 大空に浮かぶ新しい大地で、未知へ挑むのだ。

 ――イレギュラーズはいま、その最先鋒に立っている。


 ――学術組織アーカーシュアーカイブスが発足しました。
 ――鉄帝国から浮遊島アーカーシュの調査依頼が発行されています。


これまでの覇竜編深緑編

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM