PandoraPartyProject

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久遠の果て

 久遠なる森――それは豊穣の一角に存在する森の事だ。
 近頃、その森の周辺で行方不明者が出るという事件が急増していた……
 故に四神玄武や行方不明者の身内から捜索の依頼が出される事になったのが少し前。
 そしてイレギュラーズ達が森を探索し。
 やがてその果てに到達した――其処に在ったのは。
「街……か? 高天京によく似ているが、しかしこれは……」
 違う、と。感じているのは黒影 鬼灯(p3p007949)だ。
 なんとなく街の雰囲気が豊穣の首都と言える高天京に似ている――のだが、どこか違う。
 ……上手く言葉では説明し辛いのだが『違う』のだ。
 なんだこの違和感は? 周囲を窺うように観察していれば、奥より一人の女性が現れて。

「初めまして! 私は偲雪! 何代も何代も前に帝をしてたんだよ――よろしくね!」

 ――その人物は、己を『偲雪』と名乗った。
 そして自分は『かつての帝』でもある、と。
「……かつての帝、ってマジかよ。あの話は本当なのかね」
「久遠なる森は、歴代の『帝』の遺骨が納められている地――か」
 だからといってその歴代が目の前にいる事の説明にはならないけれど、と。新道 風牙(p3p005012)の呟きに応えたのはЯ・E・D(p3p009532)である。森で目撃されていた緑髪の老人――
 二人が接触した彼が言うには、この地はそもそも歴代の帝の『遺骨』が収められる『皇陵』と呼ばれし、ごく一部の者達だけが所在を知る場所……であるらしい。久遠なる森の文献が圧倒的に少ないのは、墓荒らしを恐れた者達が情報を永い事秘匿していたから――が真相であったのか。
 或いは、それでも多くの情報を知り得るような、豊穣の有力者であれば知っている者もいたかもしれない。。
 例えば……天香家のかつての当主、天香・長胤などであれば……
 しかし彼は死んだ。巫女姫の動乱の折に――
 あの時代に亡くなった者も多いが故に、更に情報を知る者は少なくなってしまったのだろう。現在の天香家を継いだ天香・遮那もまた、久遠なる森の事については知らないであろうと推察される――継いだと言っても、あれだけのゴタゴタがあった上での出来事なのだから。しかし、そういった情報の事はともあれ……
「ご招待ありがとう――と、言いたい所だけれども。聞きたい事があるのよねぇ」
「そうだな……今、森で起こっている行方不明者の事件は、貴方が元凶か?」
 久遠なる森自体の事はともかく。
 現れた偲雪にどういう意図があったのか――警戒するのはゼファー(p3p007625)天目 錬(p3p008364)などだ……注意深く彼女を観察し、そもそも『本人なのか?』という疑いも思考している。
 仮に、本人であったとしても。
 何代も前の帝が――生きているものであろうか?
 いや、そもそも遺骨を納める地で出てくるかつての帝など……
「うーん、うーん、そうだね……うん。きっとそれは私なんだよ」
「――――」
「あっ! でもね、でもね。皆、生きてるよ! 死んじゃったりとかしてる訳じゃないから!」
 ほら、と指差す先にいるのは――複数の人影だ。
 そこには多くの人々が並んでいた。距離がある故に本当に行方不明になった者達かは此処からでは確認できないが……しかし笑顔を向けて、此方を見据えているのだけは分かる。
 ――そうだ。『心の底』から笑顔を浮かべているかのようで……
「それでね! 皆は、神使なんだよね? 私ね、ずっとお話ししたかったんだ!」
「……話?」
「うん! もう今日は遅くなるから、とりあえず泊っていったらどうかな!
 それで明日ね! 『お話』したいんだ!!」
 偲雪は。
 笑顔をこちらに向けてきている。
 屈託のない笑顔だ。こちらを穏やかな気持ちにしてくれるような、温かい笑顔。
 ――だけれどもまずい。
 己の心が警報を鳴らしている。此処に留まるべきではないと――鳴り響かせている。
「行方不明者事件の事で――と言う話でいいのかの?」
「うん、勿論そうだよ!」
「成程な……だが遠慮しておこう。今日の所はな」
 さすれば一条 夢心地(p3p008344)節樹 トウカ(p3p008730)が言を重ねるものだ。
 此処がなんなのか、まだ分からぬ。
 今回の所はそも久遠なる森で何が起きているかの調査であったのだから。
 ……一度戻るべきだ。玄武などに情報を齎し――その後に判断する。
 幸いにしてラダ・ジグリ(p3p000271)達が作成した地図があらばもう一度ここに来ることもかなり簡単にできるであろう。
 偲雪の事も、此処が遺骨を納める場であるという事も、何もかも判断するには早計。
 さすれば。
「帰っちゃうの? 分かった! じゃあまた待ってるね!」
 ――偲雪もまた、止めはせぬ。
 彼女はただ笑顔のままに神使達を見送らんとしている程だ。
 ……彼女の言う『話』がなんなのか。

 その内容は――また後日に明らかになる事であろう。


 <仏魔殿領域・常世穢国>久遠なる森の報告書が届いています!
 ※久遠なる森の果てには『かつての帝』を名乗る人物がいる模様です。
 ※また久遠なる森は歴代の帝の遺骨が納められる『皇陵』という地である事も判明しました。

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