PandoraPartyProject

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『神異』に触れる

 ――神異に触れちゃだめなんだ。こう言う時はね。

「ヒイズルに君臨してる國産みの女神、豊底比売には真名が、存在している。それを知らねば、傷つけられない、か」
 そう呟いたエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は綾敷 なじみの尾を掴んだことによる精神的ショックを隠しきれない越智内 定(p3p009033)を一瞥する。
 この場に集まったイレギュラーズは誰もが再現性帝都1926街へと踏み入れた者達だ。
 希望ヶ浜に顕現していた異世界に『豊小路』と呼ばれた神のお通い道があった。
 其れを辿り、其れ等の本拠であった再現性帝都1926街――本来は存在しない架空の大正15年――へと辿り着いたのである。
「再現性帝都1926街。ヒイズルも諦星(たいしょう)15年。どちらも『同じ時間を指定』してたんだよね。
 ……侵食でできた架空の街が認識されてるなんて、恐ろしいことだけれど。『封じの鈴』を奉じたから少しは侵食を食い止められたかな?」
 同じ時間を指定し、『ヒイズル』を外へと生み出そうとする神を食い止める為の冒険をこなしてきたサクラ(p3p005004)は疲労を滲ませた。
 豊小路は神のお通い道であっただけあって神霊達の幻影がお目見えした。
 鞠をついた瑞神の傍らで射干玉の髪を揺らして遊び相手を探す朱雀はイレギュラーズなど食らうて仕舞う勢いだ。
 危ういと逃げ出せば縺れる足を掴まんと貌を持たぬ妖異が襲い来る。
 一年分くらいは叫んできたジルーシャ・グレイ(p3p002246)もげっそりとした表情を浮かべていた。
「全く、もう、ね……。あんなに怖いオバケと鬼ごっこばっかり堪ったものじゃあないわ!
 それで、これで現状を打開できるのよね? オバケを倒せるようになったって事でいいのよね?」
 確かめるように問うたジルーシャに『Re'drum'er』眞田(p3p008414)は小さく頷いた。
「尻尾を掴んでたけど、頑張ってくれたみたいだ」
「……眞田さん、言わないで」
 異世界より帰還するために現実のことを強く思い描くことを求められた定がなじみの尾を思い描き、尾を握りしめて帰還した。
 彼にとっては『不幸な事故』であったのかもしれないが、定はその事故をも無かったことにする程の一つ大きな貢献を成し遂げた。
「真名を知れたのは現状を一歩押し進めると言うことでOK?」
「そうだね。本来の名は、閉じ込めるための鎖だ。神の真名を知らねばその魂を傷つけられない。
 ファイル名が違えば、参照できないって事だね。
 神様らしい名前を与えられた豊底比売は『常世(黄泉津)の姫様』である先入観で真名を隠してた。
 ……本来は『神異』なんて在り来たりな言葉だったのにね」
 真名は『神異』と言うらしい。
 それが事象を表しているかのように日常会話に使われた。バスティス・ナイア(p3p008666)はそう論じる。
 ひよのも、澄原 晴陽等でさえも『神異』という事象が起こっているのだと考えてイレギュラーズに仕事を斡旋していたのだ。
 言霊としてそれを認識させ、その存在を現実に固定化させる。名を呼べば、それは知ったも同然だ。その存在を許したようにもなる。
「……つまりは、真名を呼び続けられて現実に引き寄せてたみたいなもんなのか。神様ってのは小細工が上手いな」
 そう毒吐いた紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は陽田 遥が作業を行うディスプレイモニターを一瞥した。
 鳶島 津々流(p3p000141)は彼女の不安がよく分かる。
 つい最近のことであった。シュペルとの謁見を終えたイレギュラーズは『ヒイズル』からの侵食を食い止める手法を話し合う為にカフェローレットに集まった。
 だが、その場に茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)笹木 花丸(p3p008689)の姿はない。
 ヒイズル側に『今回得た情報』を伝えに行った二人はそのままログアウトが不可能になっていたのだ。
 月ヶ瀬 庚は「現状維持ですが、『こちらが真名を知ったことはあちらにも直に伝わるは筈』です」と告げた。
 現に、霞帝と天香 長胤は『侵食』が高まったのか天香 遮那を処刑すべく居場所を探し続けているらしい。

「さっさと、動かなくちゃならないって事か」
 紫電に滲んだ焦りに、津々流はこくりと頷いた。
「花丸ちゃんと秋奈さんは大丈夫かな」
 呟いた定は遥を一瞥した。モニターにはエラーメッセージが並び続けている。
 複数のイレギュラーズがログアウト不能になると同時に、マザーは『コンピュータ・ウィルス(クリミナル・オファー)』の影響を受け、練達の都市機能維持に影響を及ぼしたらしい。
 帝都から帰還した後、再現性東京は停電が多発してネットワーク障害が起こっていた。
「……分からない、けど、希望ヶ浜に訪れた『非日常』が不安を誘発して侵食度を高める原因になってるのも確かですし」
「ええ。真性怪異『神異』の討伐を行いましょう。皆さんの活躍で真名を得られた、そして封じの鈴は『月閃』での侵食を食い止めるでしょう。
 ヒイズルに花丸さんと秋奈さんが――私の素晴らしき友人と可愛い後輩が――囚われたと言うのですから黙っては居られません」
 それでも、彼女は非力だ。自身で戦いに行くことはできない。希望ヶ浜で『食い止める』役に回るのは確かだろう。

「準備を整えて下さい。相手は神擬きです。どうせ、こちらの動きを察知するでしょう。
 ……そういえば、ちょうど一年も前の話でしたか? カムイグラで『神逐(かんやらい)』を行ったのは。もう一度ってどうです?」

 揶揄うように微笑んだひよのはばちん、と音を立てて途切れたモニターを眺めていた。

――豊底比売が『神異』という真名を隠していたことが判明しました!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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