PandoraPartyProject

ギルドスレッド

足女の居る宿

深夜三時の窓のない部屋

賑わう時間は既に過ぎ去り、そこかしこの暗がりに汚らわしい気配だけが蟠る。
集る虫共はいまだ眠りの中に。時を忘れた狂人の声だけが時折木霊する。

かの宿もまた、他の宿と同じように静まり返っていた。
しかし入り口にはランプの小さな明かりが灯り、目的の客人が来れば扉は開くだろう。

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(宿の中に入ればオーナーである老婆に案内されて奥まった場所にある部屋に通されるだろう。
窓のない部屋だ。
甘ったるい香の匂いが染みついているが、しかしそれ以上に染みついたすえた匂いもする。
あとは燭台のぼんやりとした明かりに照らされたテーブルとイス。そればかりがある)

来ていただけましたのね。光栄ですわ。

(部屋の奥側に座る少女は極めて機械的な様子でそういった)
(部屋に近づくにつれて、ぎしぎしと木床が鳴る音が大きくなる。重々しい足音が扉の前で止まると、間もなく乱暴に扉が開かれた。
 現れたのは如何にも山賊。片手に酒瓶を携えた、小汚い身なりの大男)

オウ──邪魔ァするぜえ。

(たった一言、口を開く。酒臭い息が香の匂いと入り混じっていくような気がした)

まさかご指名頂けるとはねェ。こりゃ、モテ期ってやつか?
嬢ちゃんならともかく、あのバアさんにモテても嬉しかあねえがな。ゲハハハッ。

(無遠慮にどっか、と椅子に座り、酒瓶を口につけてぐいと傾けた)
(乱暴な動作、酒臭い息。およそ暴力的と言い換えられる行動を前にして、少女は艶然と微笑んだ。
 茫洋としていた気配がぴたりと定まる。
 色と暴力と男。欠けていた要素が目の前で収まって、沁入:礼拝が起動する)

私のお客様になってくださってもよいのですよ?
マダムの所でどんな方を贔屓にしてらっしゃるかは存じ上げませんけれど……きっと愉しませてさしあげられますもの。
……ああ、事後承諾になりますけれど、この件は内密に。
グドルフ様はこの宿に遊びにいらっしゃった。その様にしてくださいませ。

(さて、と言葉を区切ると改めてグドルフの方を見た。黒い癖に艶めいて鏡の様な趣のある瞳だ)

お願いしたい件とは、端的に言えば護衛でございます。
うちの従業員に付きまとう虫から守っていただくのが、マダムの願いです。
ハッ……遊ぶなら、もうちっと歳重ねたオンナの方がイイんだがね。
ま、考えておいてやるよ。

(上から下まで視線を投げる。品定めするような目つき──凡庸な人間なら、おそらくただそう見える)

無論だ。傭兵ってえのは、コンプライアンスからアフターサービスまでキッチリやるもんだぜ? 無論、カネ次第だがね。

(傲慢に足を組み、背もたれにぐいと身体を預ける。体重を乗せられた簡素な椅子がぎしりと鳴った)

なんでえ、もうちっと危ねェ橋を渡されると思ったが、そんなもんでいいのかい?
それにしても、ボディガードが必要なオンナとは、よほど人気のあるやつか……もしくはタチの悪ィ連中に目ェ付けられたか。
まァ、花には小汚ェ蠅や羽虫が集るモンだしな。
(秤にかけられることは慣れている。相手の欲しがるのもを推察して擽る事も。
だから、いつも通り自らのセールストークを繰り出そうとして)

左様でございますか。

(やめた。理由は分からない。)

頼もしい事。
ええ、ええ、でも、お代に関しては後にいたしましょう。手付に触れてしまえば責任が生まれますもの?

……ご明察にございます。
虫の名前はマルチェロ・ディ・デッラ=スカラ。
名に相応しからざる軟弱者で三男とはいえ本物の幻想貴族です。
我々の手よりも、外部に、と判断した理由がこれにございます。

守っていただきたい娘は、ファビア。
まぁ……普通の娘でございます。
田舎の出ですので、素朴と言いますか……まぁ、貴族にとっては物珍しかったのでしょう。
戯れに望まれて……のめり込んで……「悪の女郎屋から助け出してやる」と。
ふふふ、困ってしまいます。身代を買い上げる金も無ければ、そもそもファビアは年季明けに結婚が決まっておりますのに。
(口元を抑えて困ったように微笑んで見せるが、形ばかりで目の奥は冷え切っている)
そうかい、そんじゃ聞くだけ聞いてやるとするかね。

(顎髭をしごきながら、ふうと息をつく。鼻息で揺らされた燭台の火がちらちらとゆらめいた)

そりゃ、このまま結婚して店を離れても、ストーカー化しそうな勢いって事かい。
ふん……ま、よく聞きそうなこった。
遊びを遊びと割り切れねえバカは何処にでもいるもんさ。
自分(てめえ)一人じゃあ何も出来ねえくせに、変に権力を持っちまったバカは、特にね。
……ま、現実ってのをキッチリ見せてやるのも面白ェか。

(へらへらと笑った。少女の底冷えするような視線を目にしても尚)

んで? 殺せば良いのか? ボコボコにシメて二度と近づくなと警告すりゃ良いのか。
どっちだ? おれぁ、どっちでもいいぜ。
まぁ、殺すだなんて、恐ろしい事。

(大げさに口に手を当てて、さも怯えたようなポーズを取る。形だけだ。声色にも仕草にもそれ以外の怯えは乗っていない)

マルチェロを殺すことは「先方」は望んでおりません。
こちらとしてもそれなりのお客様でございますから、まぁ生きていた方が得であろうと結論を出しました。

(「先方」と暈した言い方は、この依頼には貴族の家元の意向もあるという含みだ。
こてんと、人形のように首を傾げ)

所で全く関係ないお話なのですけれど、ファビアは今度一度実家に帰るのです。
我々がファビアを庇護してあげられるのは街の中だけですわ。
その時を狙ってファビアを連れ去りに来られてはなすすべもございません。
ああ、ああ、それに、今街道には山賊が出るのだとか。
三つ巴になればファビアは死んでしまうかも。そうでなくとも山賊の方に連れ去られてしまえば……もうそれは死んだも同じことでございましょう?

(蝋燭の火が爆ぜる音がした)
……ま、腐っても貴族サマってこったな。

(少女人形の上辺だけの『演技』に、ふんと鼻を鳴らした)

OK。近寄ってきたら締め上げるだけで良いんだな。
それだけならラクな仕事だが……

(ピクリと眉が動き、眉間に深く刻まれた皺が寄せられる。)

ハッ……山賊か。
どうせ無名の雑魚どもだろうが、このおれさまの縄張りでコソコソしてやがるたあ、いい度胸だぜ。
で? おれさまの仕事は護衛対象を守りつつ、貴族野郎の排斥と、そのついでに山賊退治って事か?
こりゃ、ちょいと値が張るぜえ、オイ。

(揺れる炎が、照らされた顔に影にさした)
ふふふふ、少し婉曲な物言いが過ぎましたね。

グドルフ様。
貴方には山賊役になっていただきたいのです。
女を無理やり手籠めにして得意満面になっている貴族を横合いから思い切り殴りつけてほしいのです。
ファビアは山賊――グドルフ様に連れ去られて行方不明という事になれば、諦めもつくでしょう。

(護衛をつけずにファビアを里帰りさせ、わざとマルチェロの襲撃を受けた上で第三勢力のグドルフに目の前で攫わせる、そういう計画だと少女は告げる。
恐らくマルチェロの頭の中では、ようやく自分を受け入れた恋人を目の前で失うという物語になるであろう、という事も)

可能であれば、思い切り無力感を刻み付けてやってくださいまし。
ファビアはもう同じ名前では生きられません。
それなのに後々自分の頭の中で美しい悲劇にされては「ズルい」ではありませんか。
なんでえ、そういうことか。
そんなら、話が早い──。

(べろりと舌なめずりをした。『山賊』として己の名を広めるには持って来いである──そう判断した)

ゲハハッ、いいねえ。
オンナも、カネも、尊厳も、プライドも、全部奪ってやるよ。
無論、オンナ以外に奪(と)ったモンはおれさまのモンにしていいんだよな?
そう考えりゃあ、随分とオイシイ仕事じゃねえか。
ええ、ええ、かまいません。好きなだけ奪ってくださいまし。
我々が望むのは、ファビアの生存とマルチェロの鼻っ柱を叩き折る事、それ以外であればご自由に振舞っていただいて構いません。
また、事後処理に関しては既に先方と話がついておりますので追手がかかる事はございません。
必要であれば、逃走用の足を用意する事も可能ですが……。

……なにかご要望はありますか?
交渉成立だな。

(すこしだけ、考える素振りを見せて。しかしすぐにかぶりを振った)

……いいや。バックアップも完璧と来りゃ、何も言うこたあ無ェ。
まァ任せておけよ。おめえは何食わぬ顔でいつも通り過ごしてりゃあいいさ。
ゲハハハハッ。
ではその様に手配いたしましょう。
必要なものがあれば私に指示してくださいまし。できる範囲で用意いたします……。

(小さく息を吐いた。逡巡するように視線が動き)

……ファビアは此処に向いた女ではありませんでした。
此処の女の身の上なんて大抵はそうなのですけれど……。
でも、あの子は幸運を得て元居た場所に戻ろうとしていたのです。

(そこまで言うと立ち上がり、深く頭を下げた)

どうかご武運を。吉報をお待ちしております。
要らねえよ。
おれさまは天下無敵の山賊サマよお。

(同じく椅子から乱暴に立ち上がる。椅子ががりがりと木床を削った)

……望まねえ仕事をしてる奴なんざたんまり居るぜ。この世界じゃあ、いくらでも聞く話だな。
──ま、知ったこっちゃないがねえ。
おれぁ、受けた仕事をキチッとこなすだけさ。

(男は扉に手をかけると、彼女に一瞥もくれぬまま去っていった。後に残るのは、きっとひとつまみの静寂。)

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