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ギルドスレッド

海色の箱庭

【RP】箱庭の夢―03―

冷たい風が海辺を踊る様になってきた冬の季節。
静かに、只静かに、其処はいつもと変わらぬ様に夜に抱かれて波音のハーモニーを響かせる。


『 ―――、― 』


幾重もの星が瞬いた夜空の下、波音のハーモニーに混じって聴こえてきた歌声は静かな夜を邪魔するでもなく、漂うそよ風の様にささやかな子守唄となって浜辺に流れていく。

低い岩に座り、夜空を見上げながら歌うのは海棲の者の尾を携えた少年だった。
少年は歌う。祈りの唄を。



『 星抱き 満ちる夜よ
    隠しておくれ 僕の願いを 』



ぱしゃり。尾が叩く海面が小さな飛沫をあげた。


≫≫≫

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「隠しておくれ…僕の、願いを」

小さく繰り返された詩。見上げていた視線は不意に降ろされ、その先で自身の尾を捉える。
手の平でそっと撫でた腰から下のその皮膚は地に降り立ったことのない海に生きる者の象徴。
雫を帯びて月明りを照らす。
伏せられた瞼が、その白藍の瞳を覆い隠してしまう。
さくさくさくさく。
鼻歌交じり、軽快に砂を踏む音。
星明かりにぼんやり煌めく腕を伸ばして、縮めて、上機嫌に微笑んで。
さくさく……
――脚を止める。
ひとの声が聞こえたような気がした。或いは、歌のような。
滑らかな波の声によく似た、どこかあわい寂寥を覚える音。
頼りにぐるりと視線を巡らせれば、その主と思われるものは案外すぐに見つかった。
夜のしじま、岩上に浮かんだシルエット。あまり夜目のきかない眼を眇め、

「……こんばんはー?」

なんとはなし、声をかけて。
無警戒な足取りで、真っ直ぐに人影へ近づかんと進行方向を定めた。
伏せた瞼で遮られた視界。それ故に敏感になった音への感覚。
砂の擦れ合う音に次いで聞こえてきたのは誰かの声だった。
目を開け振り返るも、夜の闇の中で頼りは月明りのみとなればその姿はぼんやりとしたシルエットしか捉えることが出来ずに、未だその姿をはっきりとは確認できない。

黙ってるのもどうかと思い、ひとまずは声に返答を返す事にした。

「こん、ばんは…?」

誰だろう、とじーっと眺めながらの返答だった為かその言葉は疑問符を浮かべて。
どうやら警戒心はこちらにもないようだ。
「あ、返事してくれた!」

無警戒を通り越して、寧ろ馴れ馴れしい程に明るい女の声。
おーい、なんて一言もオマケに付けて。白々とした月の光の中、ぼんやりしたシルエットが大きく手を振れば、きらり、と。薄い光の中にいくつかの淡い色が浮かんでは消える。

軽い音と共に砂を踏み、振り返った影の形へと足音は一直線に。
物理的に距離を縮めたからか、薄闇に目が慣れたからなのか。真っ先に捉えたのは、こちらをじっと眺める瞳の煌めき。

「こんばんは。いい夜だね」

微笑むように目を細め、更に声を重ねて。
まだはっきりと容姿の確認できない誰かが明るい声をあげてこちらへと近づいてくる。
その様子に怪しんだりする素振りはなく、ともすればこれが初めてでは無いかの様に揚々とした声音。
ひらりと動く影に、辛うじて手を振ったのだと認識できた。その行動にこちらの緊張も解れる。
腰を下ろしていた岩から降り、海へと肩までを浸からせながらゆっくりと浅瀬の方へ。
時折瞬く光がなんの光なのか、気になり視線は逸らさぬままで。

ようやく相手の浮かべる表情が認識できる距離まで近づいた時、再び声が届く。

「うん、今日は月の光が柔らかくて星もたくさん見えるいい夜だ。でも、こんな夜中にここに来る人がいるとは思わなかった。」

だから少し驚いた、と続けながらその姿を再度しっかりと映して。
女性の身体や額からは所々石の様なものが見て取れた事に目を瞬かせる。
岩の上からするりと人の気配が消えた。
声を掛けた相手が水に沈んだと解り、些かぎょっとする。なにせ冬の夜更けだ。海水の冷たさは自らが爪先を浸さずとも推し量れる。
慌てて声を上げようとするが、影の身のこなしはそれを躊躇うほどに優雅だった。
開きかけた口を閉じて、浅瀬に近付く人影へ合わせて汀に屈む。

ずっと視線だけはぶつかっていた人影――少年の輪郭をはっきりと捉えると、安堵したように息をひとつ。
目の前の人物の、瞬かれた瞳は美しい色をしていた。

「夜中だからこそ、だよ。昼間の太陽から隠れちゃう煌めきを探すのに、今日ほど適した月夜は無いってね!」

返ってきた言葉に、私もびっくりした、なんて子供のように答えて。声音は先ほどと変わらず弾んでいる。
機嫌よさげににこにこと笑む女の表皮から飛び出した色とりどりの鉱石は、月明かりを受けて薄く発光しているようにも見えた。
少し驚いた顔を見せた彼女。
海に入ったことに対してだろうか、確かにこの冷たい海の中普通の人が入れば堪ったものでは無い。
けれどこの身は半身が海棲のもの。海は我が家であり我が友。
生まれた頃から傍らにある冷たい水達はその肌に触れたとて抵抗はなかった。

息をついた相手へとその姿を見せようと、海面から覗かせた尾ひれがゆらりとその視界の前を揺れる。

「ごめん、驚かせたかな?俺ディープシーなんだ。」

相変わらず楽しそうに話す彼女を見ながら自然と笑みが零れる。
多分自分よりも年上ではあるのだろうけど、近しくさえ感じられてしまうその無邪気さ。
語られた言葉にひとつ頷いて、

「ああ、なるほど。確かに昼間は太陽が一番眩しいからな。…その石?達も月明りで柔く輝いていてすごくキレイだ。アンタは、旅人なのか?」

見た事の無い存在。
この世界には多種多様な生き物がいるけれど、彼女の様な存在は初めてだった。
故に、旅人なのかと問う。
水中を惑いなく滑る姿、なんて事ない素振りで顔を覗かせた事から、目の前の少年はこの世界に永く暮らす種族のひとつである海の民なのだろうと思っていた。
月明かりを弾いてひらひらと揺らめく尾ひれ。想像していなかった姿に目を奪われる。

「――ああ、あなたは人魚だったんだね」

それなら安心だとばかりに今度は大袈裟な仕草で胸を撫で下ろしてみせ。先程も今も、少々驚いたのは事実だ。
少年の見せた笑顔に安堵する。

「輝く太陽は大好きだけど、密やかに光るものも美しいからさ!」

それを探しに来たのだと、まだ収穫のない空っぽの両手を見せて笑う。
キレイだと言われた事に礼を述べ、額に煌めく鉱石を撫で。好ましく思っている特徴を褒められる事は嬉しかった。
少年の問う声に、

「そう。私は心に石持つ、鉱石肌の種族だよ」

言葉と、好奇心に満ちた瞳を返す。
この世界に存在しない種族……旅人だからこそ、元いた世界では見た事の無い純種の彼に興味があった。
二言三言話した所で欠片ほどしか残っていなかった緊張も強張りも解れたのだろうか
そもそもあったのかさえ定かではない躊躇いも既に失せ、己の存在を確認するように人魚と言葉を発する彼女に向けられたのは、肯定の意を示す少年の破顔した表情だった。

「うん、俺は人魚だよ。イルカのね!」

その尾ひれがまた一度視界を横切り海面をぱしゃりと打つ。
光るものが好きな彼女は昼には見ることのできない夜の光を探しに来たと言う。
夜の光と言えばまず挙げられるのは月や星。しかしそれは誰の目にも留まる。
密やかに光るもの、と言っていたのだからもっと違うものを探しているのだろうか?
彼女の話を聞きながらも考えていた所で耳に届いたのは聞き慣れない言葉。
"鉱石肌の種族"

「へぇ…違う世界にはそんな種族もいるんだな」

心底興味深いと言いたげに、その鉱石の肌をじっと眺める。
相手は女性だという事を失念する程に。
こちらが声をかけた瞬間には少なからずあった強張り。それが氷解したような明るい声音と、無邪気な笑顔を見せる少年。
人魚のひとなら納得だなぁ、なんて、感心したような声を挟んで、

「さっき聞こえた歌、すごく綺麗だったから! さざめく水面みたいな、ガラス細工のカケラみたいな煌めき……あれは、あなたの声だよね」

煌めくなにかを探すのは、形あるなにかを探すばかりではない。そう言わんばかり、緩やかに首を傾げて訊ねれば、流星のように視界を流れる尾ひれ。
瞬きひとつの間に、打たれた水面が作った水の玉。月の光にささやかな輝きを返すそれはとても美しく見えて、手を伸ばし、ぐっと掴むような仕草をしてみせつつ微笑む。
興味に彩られた言葉に口を開こうとすれば、視線に気づいた。

「あはは、珍しい?」

じいと眺められれば、触る? と尖った鉱石が無数に表出した腕を差し出して。視線に対しての慣れもあるのか、てらいのない極々自然な仕草だった。
「歌…、あ、さっきの!」

そこまで声を大にして歌っているわけでは無かった。
むしろ波音に掻き消されてもおかしくない程の細やかな声。
けれどどうやら彼女には聞こえていたらしい。
この浅瀬を囲む岩肌のせいだろうか、思っていたよりも声は響くのかな…。
と考えながら少しばかり困った様にその眉尻は下を向いた。

「恥ずかしいな、聞かれてたんだ…」

故郷でよく聴いてた歌なんだ。
そう言いながら海中を揺らぐ尾を蹴ってさらに浅瀬へと近づく。
こちらに向けられ、そして握られた手、彼女の視線は何かを摑み取ろうとするかのように強く光を宿していて。自分の声がガラス細工と例えられるならば、彼女の瞳はその身に宿す鉱石の様。強い輝きが見ていて心地よい。

手のひらが砂につくほど浅瀬へと近づけばその確かな存在は先よりもすぐ目の前に。
今一度確認をするかのようにその瞳へ視線を投げ掛けながら、差し出された腕に自身の手をゆっくりと伸ばしてゆく。

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