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海色の箱庭

【RP】箱庭の夢―03―

冷たい風が海辺を踊る様になってきた冬の季節。
静かに、只静かに、其処はいつもと変わらぬ様に夜に抱かれて波音のハーモニーを響かせる。


『 ―――、― 』


幾重もの星が瞬いた夜空の下、波音のハーモニーに混じって聴こえてきた歌声は静かな夜を邪魔するでもなく、漂うそよ風の様にささやかな子守唄となって浜辺に流れていく。

低い岩に座り、夜空を見上げながら歌うのは海棲の者の尾を携えた少年だった。
少年は歌う。祈りの唄を。



『 星抱き 満ちる夜よ
    隠しておくれ 僕の願いを 』



ぱしゃり。尾が叩く海面が小さな飛沫をあげた。


≫≫≫

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こちらが声をかけた瞬間には少なからずあった強張り。それが氷解したような明るい声音と、無邪気な笑顔を見せる少年。
人魚のひとなら納得だなぁ、なんて、感心したような声を挟んで、

「さっき聞こえた歌、すごく綺麗だったから! さざめく水面みたいな、ガラス細工のカケラみたいな煌めき……あれは、あなたの声だよね」

煌めくなにかを探すのは、形あるなにかを探すばかりではない。そう言わんばかり、緩やかに首を傾げて訊ねれば、流星のように視界を流れる尾ひれ。
瞬きひとつの間に、打たれた水面が作った水の玉。月の光にささやかな輝きを返すそれはとても美しく見えて、手を伸ばし、ぐっと掴むような仕草をしてみせつつ微笑む。
興味に彩られた言葉に口を開こうとすれば、視線に気づいた。

「あはは、珍しい?」

じいと眺められれば、触る? と尖った鉱石が無数に表出した腕を差し出して。視線に対しての慣れもあるのか、てらいのない極々自然な仕草だった。

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