PandoraPartyProject

ギルドスレッド

月夜二吼エル

【RP】この世で『天国』に一番近い場所

まるで其処は、御伽噺や夢物語で語られる──天界と錯覚してしまう様な場所であった。

小さく可憐な青い花が群生し、まるで見渡す限りの青の絨毯の様に…遥か彼方まで広がっている。
青く澄んだ空の青と、瑠璃唐草の花の青。そして、遥か遠くに覗く水平線の青。三種の青が複雑に絡み合い独特のコントラストを生むだろう。

そんな美しい光景の中、品ある黒髪の女性を「早く、早く」と先導するのは…銀髪に金銀妖瞳の吸血鬼だ。
吸血鬼は日差し避けで目深に外套のフードを被り、ずんずんと先へと歩みを進めていく。いつもの様な気配を圧し殺した歩みでは無く、その靴音は何処か軽やかで楽しげでもある。

「中々、この花が群生してる場所はなくてな。漸く見付かったンだ。」
「…どうしても、姉上にこの光景を見せたかった。」

青い絨毯の真ん中まで辿り着いた女は、くるりと『姉』と慕う女性の方を振り返り。
吹き抜けた風が外套のフードを退けて、現れた銀糸の髪がふわりと風に踊るだろう──


(/蜻蛉様とレイチェルのRPスレです。置きレス形式。期間は話のキリの良い所まで。宜しくお願いしますー!)

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(”姉上”と呼ばれた猫の獣人。呼ばれなれていないせいか、くすぐったそうに照れた顔をして)
(招かれた場所。いつもは冷静で落ち着いている彼女の表情も、道中早足で急かされた理由も、此処へ辿り着いた事で全て理解出来た)

姉上やのうて蜻蛉で、呼び捨てでもええのに。これも慣れやろか、んふふ。
こんな場所あるんやねぇ……見渡せば一面の青、蒼、藍……まるで、お空が咲いとるみたい。
連れて来てくれて、おおきに。

(微笑んだ女の手にはバスケット。顔の高さまで持ち上げたなら、”せっかくのお出掛け、早起きして作って来たお弁当よ”と、少し得意げに説明すれば。気分はもう姉上、なのかもしれない)
『姉上』とか『兄上』とかが憧れだったンだよ。
だから、姉上って呼んでた!
(自身と差程身長の差は無い故に、見上げずとも彼女の金色の眼と視線が交わるだろうか。まるで夜空に浮かぶ満月の様な瞳には、にんまりと子供みたいに笑う吸血鬼の姿が映る。
暫し考えを巡らせた後、問う。)
…んー。別の呼び方のが良い?

綺麗だろ?
天国ってこんな場所なのかなぁって。…行った事ないけど!
(一面のネモフィラ畑を示す様に、両腕をゆっくりと広げ。)
(『お弁当』と聞けば、尖った耳がピクリと動いて。嬉しさが自然と滲み出る故に、トーンが高くなった声も弾んで。)
お弁当!ありがとな、姉上!!
ううん、ええんよ。
姉さまや、姐さんやとか、呼ばれた事がなかったわけやないけど。
見た目も、歳も……歳?んふふ、変わらへんのに。
レイチェルさんが嬉しいなら、それが一番やから。
(横に首を振る、そんな事はないと否定を込めて。混沌へ呼ばれる前に居た場所で、呼ばれていたのだから馴染みがある響きではあった。目の前の彼女がそう呼びたいのであれば、それもまた巡り合わせかもしれないと。)

天国……?
でも、天国は一方通行……帰って来れんのよ、この場所のがありがたいわ。
(真面目に語られるそれに、冗談交じりに返せば)
(出逢った頃の印象とは違う、可愛らしい反応に少し驚いた頭の上の猫耳がピクリ)

今日はレイチェルさんの事、色々と教えて貰おうと思って。
もちろん、うちの事も。
この広い混沌の世界、沢山おる人の中で出逢うたのも、きっと何かあるんよ。
ゆっくり、お話しましょ。
歳はどうだろ?…レディに年齢聞くのはアレだが!
俺は餓鬼も良い所だなァ。吸血鬼としては。
(女性へ年齢を問うのは一種のタブーである──己の問いが失礼に値しないか迷う故に、女は形の良い唇をへの字に曲げ。小さく、むむむと唸るだろう。)
姉上が良いなら、これからも姉上って呼びたい。

ま、喩えだな。喩え。
それ位に綺麗って事さ。
(ゆれる黒い獣の耳が気になったのか、青い花弁の絨毯に注がれていた視線は…彼女の頭上へと向けられる。)

…そう言えば、姉上とゆっくり話す機会は無かったからなぁ。
俺にも教えて欲しい。姉上の事!
まぁそこは、お互いに見た目通り言うことにしときましょ。
うちは、呼び捨てするんはあんまり趣味やないよって、レイチェルさん呼びのままで。
”ちゃん”呼び出来るほど、自分が大人やあらへんから。
(女はね秘密は多い方が、魅力的って言うやない?なんて、片目を瞑ったなら。思わぬ所で気にさせてしまっただろうか、悩む表情を覗き見て)

──頼りない姉上やけど、よしなに。んふふ。

こっちの世界でも、死んだ人は天国へ行くのやろうか。
魂の行く先は、同じ場所やろうか、なんて。
(腰を据えられる場所を探して、小さな青を踏まないようにゆっくりと歩を進めながら。)

そうやねぇ……ほんなら、まずは、好きな事、好きなもの、食べ物に、お色から。
ありふれた事やけど、意外と外せんとこよ。
そうか?
姉上は俺より全然大人っぽいイメージがあるが…
(己を覗き込む綺麗な金眼に気付けば、慌ててぱっと顔を上げ、ぶんぶんと頭を振る。
目の前で猫の耳を揺らす彼女と話していると包容力の高さが伺える。それは己にはない物だ。故に、差程外見年齢が変わらぬ彼女を『姉』と慕うのだろう。)
(ほんの一瞬の迷い──言葉が詰まる。本当の自分は『レイチェル』ではない。口元では笑顔を作るも、無意識の内に眉尻が下がる。見落としそうな位の些細な変化だ。)
実は、俺の名は……いや、うん。なんでもない。
(急に名前が違うと言っても、驚かれてしまうかもしれない。紡ごうとした言葉をぐっと飲み込む。)

きっと、魂が向かう先は一緒だ。
…その方が救いがあるだろう?
(死を恐れる故に、人はその先に救いを描くのだ。
彼女に倣って、後に続く女も小さな青い花を避けながら先へ進む。軈て、花畑の中でぽっかりと開けた場所に辿り着くだろうか。)

ふうむ。なら、姉上の好きな色は?
俺は…この、ネモフィラの青が好きな色。
ほら、前にいてた場所が遊郭やの、年下の子の面倒はよお見てたし。
まぁ言うたら妹みたいな子たちは、よおけおったから。
(懐かしそうに昔話を少しだけ。遠くに向けられた視線は、少しだけ寂しさを帯びて見えた)

……ん?大丈夫?話したくない事は、無理に話さなくとも。
ただ、我慢したり無理したりは、なしよ?誰かに話すだけでも、楽になる事やってあるから。
(言葉に詰まる彼女に、それ以上の詮索はしない。まだその時ではないのだろうし、それまで寄り添う事が最適解と知っているから。)

そうやねぇ……皆一緒がええね。
(誰しもが平等に与えられるもの、なら、行きつく先も同じがいい。)

レイチェルさんは、この青が好きやのね。
波立った心を落ち着かせてくれる、空のようで海のような優しい青。
うちは、赤色が好き……あ、ちょうどあの辺が良さそうやね、あそこで休憩しよか?
ユーカク…たぶん、娼館の事か。
(“表向き”は何不自由なく育った故に己とは縁がない場所。耳に馴染みない音であれど、混沌の崩れないバベルによって大まかな意味は理解出来る。
良くも悪くも良家の子女である女は僅かに柳眉を寄せた。随分と大人びた彼女は苦労したのだろう、と。)
…大変だったンだな。姉上。

…ん、大丈夫。
そうだな…。いつか言わなきゃって思ってたが。
俺は、まぁ、レイチェルじゃないンだ。
ヨハンナ=ベルンシュタイン。
名前の事、今まで黙っててゴメン。
(彼女の言葉に覚悟が決まったのだろう、何よりも偽り続ける事への罪悪感が勝ったのだ。
謝罪の言葉と同時に深々と頭を下げる事だろう。頭を下げる勢いで、胸ポケットに仕舞い込んだ懐中時計のチェーンも揺れる。妹の形見の、瑠璃唐草を意匠した時計の──)

ああ、ネモフィラの青は妹が好きだったからな。
だから、俺も好きだ。
赤色。赤色とかだと、姉上は椿の花とか好き?
(鮮やかな赤い椿は彼女の艶やかな黒髪に映えるだろう。椿の花を髪にあしらった彼女の姿を想像しては表情が緩む。)
(彼女の言葉に頷けば、促されるままに腰を下ろし。肝心の物を忘れた吸血鬼はしょぼんと尖り耳を下げるだろう。)
すまん!花見とかのシート持ってくりゃ良かったのに忘れた…。
まぁま、ほどほどに楽しんどりましたし。
(心配げな声色。話題にするのはまずかったかしらと一寸考えて、でも今日は少しでも自分を知って貰うのだから良いのだと、迷いを消して)
ほら、言うところの……人間観察が楽しかったんよ、んふふ。

……ヨハンナさん、てお呼びすればええの?
ほんまの事、秘めとるままでも良かったんよ。
それでも、レイチェルさん……ううん、ヨハンナさんのほんまのお名前知れて嬉しいです。
謝る事なんてあらへんよ。
今までが嘘になるわけでも、知ったから本当になるわけでもないし。
なぁんにも、変わりません。
(頭を下げようとする彼女の肩に、手を伸ばそうとして。それから、首を小さく左右に振る)
(ふと、金糸の瞳に映ったのは……揺れる金属の糸。心臓に近い場所にそれを持っているという事は、何よりも大切なものなのだろうと察しがついた。懐に向けられたのは、赤色の爪先)
……そこには、何が入っとるんか聞いてもええかしら?

妹さんの好きな色。
姉妹がおるって、素敵ね。
はい、ご名答よ。椿に牡丹、どの色にも”負けない色”やと思とります。
(待ってましたと言わんばかりに、着物の袖の中に手を入れて。取り出だしたるは、大きめの風呂敷)
……んふふ、こんなんでも何もないよりは、ええでしょ?
ものを包んで結んで、持ち運んだりも出来るから重宝するんよ。
おお、風呂敷!流石、姉上だなァ。準備が良い!
人間観察、か。姉上がユーカクで見てきた中で、興味深い奴っていたのか?
(よっこいしょと其の場にしゃがみ込んでは風呂敷を広げて。ふと、彼女を見上げる──浮かんだ問いは純粋な興味から向けられたものだ。)

ん。ヨハンナで良い。
いいや、ヨハンナの方が良い。俺は、レイチェルじゃない。妹にはなれないから…な。
(妹の名を名乗りながらも、心の深層では『自分』を見て欲しかった。女は相当な天の邪鬼なのだろう。肩に触れる彼女の真白い手は暖かい。まるで、彼女の優しい心根の様に。)
これは、妹の形見。
(艶やかな赤い指先が真っ直ぐに指すのは自身の胸元。まるで核心を突くかの様な問いに、僅かに、困った様に眉尻を下げる。そう、懐中時計が時を刻む音で、己は平常心を保っていたのだ。もう側にいない妹の心臓の音を間近で感じている気がしたから。ゆっくりと懐中時計を取り出せば彼女にも見える様に差し出す。文字盤に描かれたのは、一面の蒼い絨毯と同じ可憐な花だ。)

……ああ。そうだな。
何があっても、大切な妹だ。
(実は妹は生きていて、己と対峙する運命にある──返答に詰まった僅かな間は、そんな未来を否定したい故にか。まだやり直せると信じ込みたい故にか。“例え敵だとしても”と言う言葉は、形を成す前に静かに呑み込んだ。)
姉上が好きなら、今度は椿や牡丹も見に行きたいな。一緒に。
何があるかわからんよって、こう……お着物の袖の中にしのばせとくの。
興味、深いひと……そやねぇ。(小首をかしげて、しばらく考えたのち)
せっかく来はったのに、何も召し上がらんと膝枕だけ所望されて寝てしまう人に、お城のお殿さま……それから……ん、ふふっ。(何かを思い出したらしく、くすくすと笑う)
まぁ、おなごの多い場所やったし、修羅場もそれなりに。

ほな遠慮なく……これからは、ヨハンナちゃん。
(打ち解けた証に呼び方に変化を付けて。普段、中性的に振る舞う彼女にとっては気恥ずかしいかもしれないけれど、感じたまま可愛らしくその名を呼んだ)
まぁ……形見、言う事は。──…そう。
(下手な詮索はしない、踏み込まない。でも、目の前の一人の女性の心の中にも、大切な人は存在している。それを知れただけで今日は幸い。打ち明けてくれた事、それが今の全て。それでいい)

……はいっ、お腹減ったでしょ?こっちは卵、こっちはハム入り。どっちがええやろか?
(わざと。声は強めに)
(バスケットの蓋を開ければ、いい匂いとともに三角形のパンがお目見え。交互に並べられたサンドイッチ、表面にある猫の形の焼き目が何とも可愛らしい。ちょっとした拘りらしい)
そしたら、今度は赤いお花で決まりね。ヨハンナちゃんやったら、赤い薔薇も似合うかも。
そや!またお出掛けするんやったら、作って行けるように好きな食べ物も聞いておこかしら。
着物って便利だよな。
袖に物を忍ばせるのもそうだし、帯に煙管を差したり出来るし。
皆、求める物は違うからなぁ。膝枕だけの人の気持ち、ちょっと分かるかも。
(人は時に温もりや安心感が恋しくなる──左右で色彩の異なるヘテロクロミアの瞳をつぅと穏やかに細めて。)
女の修羅場は、うん。怖い。

『ちゃん』って呼ばれると…うむ、恥ずかしいけど。
…姉上なら、いいよ。
(気恥ずかしくそわそわするのだろう、落ち着かなさを示す様に尖った耳が上下に揺れて。
困った様に視線を反らしつつも、表情は満更ではなさそうだ。)
……ま。俺の知ってる『レイチェル』はあの時に死んだンだ。きっと。

卵入りのが好き。
(姉と慕う彼女の声が耳朶を撫でると同時に腹の虫の音が鳴る。余りにも丁度良いタイミングに耳まで真っ赤に染めつつも、可愛らしい猫のサンドイッチに視線を向けるだろう。)
ん、赤い花も見に行こう。薔薇も嫌いじゃないかな。

好きな食べ物…林檎とか、果物。
シチューとか、後は野菜多めのスープ類も好き。
楽に食べられるのが好きなのかも。
ヨハンナちゃんも、お着物着てみる?良かったら、うち着付けしてあげる。
それにほら、これから先……夏になったら浴衣もあるし、ええもんよ。
何色のがええやろか……綺麗な銀髪に似合う、黒に紺色なんかも似合いそう。
(髪の毛、顔、それから足元へ視線を下げて、もう一度顔へと。瞳の色が左右違う事に気が付いて)
おめめの色、右と左で違うんね。透き通った綺麗な色。

お姉ちゃんなら、ほら……「ちゃん」付けしてもええでしょ?
普段は格好ええ人の、隠れとる可愛らしさって、それはそれはええものよ。
(ほら、そういう表情も出来るのに、勿体ない。言わないけれど、人を照れさせて満足気に笑う)
……あの時?
(零された呟きに瞬きする。流すつもりが、思わず言葉を拾ってしまった)

ほんなら、卵入りね?お腹減っとったみたい、お返事が鳴っとります、んふふ。
(肩を揺らしながら、くすくす笑えば。作って来た甲斐がありましたと、ご所望の卵サンドを差し出して)
薔薇の香りも好きよ。お花は見た目もええけど、香りでも楽しめるのがええね。

教えてくれて、おおきに。
今度は林檎を持って来て、その場で剥いで食べましょ。兎さんの形にするわ。
うちは、基本お魚が好きです。……ほら、いちおう猫やし?ふふ。
(頭の上にある三角の耳を触りながら、嬉しそうに自分の好みを語る)
あとは和菓子……お団子にお抹茶、甘いもの。
…!!
良いのか?なら、着物、着てみたい。
姉上の着付けは上手そうだから、安心して任せられるし!
(ワクワクと心が弾むのだろう──心なしか音を紡ぐ声のトーンも高く。キラキラと少女の様に輝く瞳を姉と慕う彼女の方へと向けて。
そんな中、彼女の月色の双眸…眼差しが己の色が抜けた銀髪や変色した虹彩へと向かえば、なんとなく物憂な笑みを浮かべる。複雑な感情を示す様に。)
俺の銀髪、他の人にはそう見えるンだなァ。これは…炎が燃え尽きた後の燃え滓の色で。
右の眼球は元々は蒼色だ。あの男に潰されて、再生したらこんな色になっちまってた。
(そう、銀の髪も右の金眼も…【仇の男】の色だ。奴と確かな血の繋がりを示す色だ。然れど。)
…銀髪も金眼も嫌いだったけど。姉上に綺麗と言って貰えるのは、悪くねぇな。有り難う。

ぐぬぬぬ。確かに、そうだが。
姉上、俺で遊んでないか…?シグもよく俺をからかって遊んでたが。姉上が楽しいなら、良いけど。
(少し拗ねた様に薄い唇を尖らせて。本来の子供じみた表情を見せるのは…気を許している証しでもあるだろうか。)
……『あの日』の話は、長くなるぞ?
(黒猫の姉、彼女の聴力は優れているのだろう。呟きが拾われた事に目を丸くした女は…ざわめく心を鎮める様に、双眸を伏せて。)

ちょっとはずかしい…。
(『いただきます』と告げてから、受け取った卵サンドにかぶり付き。良家の子女らしからぬ勢いでがっつくだろう。)
ちょー、うまい!!
薔薇はあれだ。薔薇の花弁を湯船に散らして、更にオイルをちょっと垂らすと良い感じだぞ。薔薇風呂。

兎さんの林檎、楽しみ!
お魚、折角だし。今度釣りに行くか。
和菓子だったら豊穣かな、美味い店が多いのは。
ええ、もちろん。海洋でもええし、豊穣でもええし……お着物のお店に一緒に見に行くのも楽しそうやわ。
銀の髪の毛やし……青も黒も似合いそう。もちろん、落ち着いた渋い赤色もきっと似合う。
そや、ほんなら来年の初詣は一緒にお参りしましょ。着付けして、そのまま二人でお参りに。

(目の前で華やぐ彼女の表情が一変して、曇ったのが分かって)
……ああ、そうやのね。
(意図せぬところで痛みに触れてしまい、語らせてしまった後悔。されど──)

うちは、昔の貴女を知らへんけど、姿や形が変わろうとも魂の色は、変わらへんよ。
うちは黒髪やから、お陽さんに透かせると煌めく銀色に憧れますし。
(黒と銀、対照的なそれを見比べて。自分にない色。それはまるで天国からの蜘蛛の糸のようで)
──それから、金色はルナールさん、ルーキスさんと同色じよ。
家族の共通の色、やと思たら、なんかこう……嬉しく思えてこやん?んふふ。
そう思って貰えたらええな、て。思います。

……ん?遊んどるつもりはあらへんけど、反応が可愛らしいから、つい。堪忍して?

大丈夫やよ、長話。お話聞くんは好きやし。
ましてや、ヨハンナちゃんのお話やったら、喜んで。

ええ食べっぷりです、美味しそうに食べてくれる人、好きよ。
作りがいがあるってもんです、嬉しいわ。
(腕をあげて、嬉しそうに軽く力こぶを作る仕草)
お風呂にお花入れたことないけど、今度やってみよかしら。お蜜柑入れたりするのとは気分も変わりそうです。

魚釣り……!お魚も好き。
猫やからって言うんもあるんかもしれんけど。
そやね、和菓子は豊穣のお店がええかも。
こやってお話しとると、行きたい場所、やりたい事、よおけ出て来てそれだけでも楽しいわ。
じゃあ、豊穣の呉服屋に着物を仕立てて貰いに行こうか。
姉上も落ち着いた赤色の着物、似合いそうだよな?艶のある黒髪に似合う気がする!
…初詣な、了解。楽しみだ。
(約束な、と指切りをするべく小指を出して。こうして、生きる理由が一つずつ積み重なって行くのだ──そう、燃え滓に過ぎなかった女は一人想う事だろう。)

……ごめん、姉上。暗い話はするつもりはなかったンだ。
綺麗って思って貰えるのは嬉しいよ。
(だから、気にしないで欲しい…そう、言葉にする代わりに、眉尻を下げながらも口元には笑みを形作る。)
金色は、父上と母上の色であり。姉上とも一緒の色彩だな。確かに俺と憎くて堪らない『あの男』を繋ぐ、色なんだけど。
今の『家族』と同じ色でもあるって思うと…救われる気がする。有難う。
(女は自分を構成する銀と金を憎んでいた。故に癖の強い銀糸の髪と。ゆっくりと伏せた右の瞼と、順に触れて。)

ん、食べるの嫌いじゃないんだ。
吸血鬼だからさ、栄養にならないんだけど…人間だった時みたいに、味を楽しむ事は出来るからなァ。
(はむはむと夢中でサンドイッチを咀嚼して、口元をごしごしと服の袖で拭う。)
花弁とオイルの香りでリラックス出来るぞ。俺はお風呂でうとうとしちゃう。
蜜柑とか柚子入れる文化があるンだろ?俺はそっちも気になる!

そうだなー。魚釣りは海洋と豊穣、どっちが良い?
さて、昔の話をしようか──
ある所に双子の姉妹が暮らしておりました。双子の名前はヨハンナとレイチェル。
お金持ちの家に生まれた双子の娘は、何不自由なく成長しました。そう幸福を絵に描いた様な月日。それが、全て、『箱庭』として創られた物だとも知らずに。
無知で愚かな姉は、決められた道筋を歩み続けた。妹を愛し、病弱な彼女の為に医者を目指し。非業の死を迎えた妹の為に全てを捨てるのも厭わなかった。
何故なら、妹の為に存在していたからだ、彼女は。

そもそも、姉は、妹のスペアだった。
妹が壊れた時に、生きた換えのパーツにする為の存在。
幸せな記憶を植え付けられ、偽の幸せを本当だと信じたままだった愚かな箱庭の人形。

(淡々と語る声が止み、深い溜息が一つ。)

自分の記憶を疑った末に、俺は魔道具で自分の過去を見た。
妹の幻影が導いた先にあったのは、暗い研究室と培養槽──その中に居たのが、俺だった。

妹は、ヨハネと言う吸血鬼に殺された筈だった。
だけど、生きてる。
ヨハネもレイチェルも生きてるンだ。
初詣のお出掛けの依頼が出たら、先約をヨハンナちゃんにしておきますよって。
先の楽しみが出来ると、その時まで頑張って元気におらんとって、思えます。
(差し出された彼女の小指に、自分の小指を絡ませて。誰だって一人は寂しい。約束を重ねて、その先の未来の姿に想いを馳せて──そうやって生きているのだから)


『あの男』……そこまでヨハンナちゃんの顔を曇らせてしまう人、なんやね。
ええそうよ、金糸の眸も銀髪も……今では家族の色。うちだけ、黒髪やけど。
ルナールさんも、ルーキスさんと同じ色、少しだけ羨ましい気持ち。
……ただ、ご自身にいい思い出がないのやったら、無理に思う事もないのよ。
(長く長く患ってきた心の傷ならば、他人が何を言った所で気休めにしかならないのもよく知っていた。けれど、それは本心であり、純粋に綺麗だと思ったから)

……栄養にならへんの?
(目をぱちくりさせてから、しばし思案。それから、おもむろに着物の袖を捲ると)
ほんなら……うちので良かったら、飲む?お腹空いてへん?

うちのおった世界やと、季節ごとに、何やかんやてお風呂に浮かべるんが好きね。
何でなんやろ、ほんに不思議。長い事浸かる時に、お供が欲しいのやろか……ふふ。

お魚釣りやったら、そやねぇ……海洋、やろか。
ヨハンナちゃんの妹さんが……「レイチェル」ちゃん。
そう、お医者を目指したんは妹さんの為やったのね。
……妹想いの、ええお姉ちゃんやないの。

って、待って。それは、仮初で……代用にされたって事?それで、”レイチェル”の名前を……。

(目の前で打ち明けられた話を、ひとつひとつ整理するように。ぽつりぽつりと呟きながら)

生きてるんやったら……今、その二人はどこに。
妹さんが、こっちの世界に来てる……言うこと?
初詣!
ジンシャに行って、手ぇ合わせてお祈りする奴だよなぁ。楽しみ!
(絡めていた小指を少し名残惜しそうに離して。小指には確かに暖かな温もりが残っている──死人の様に冷たい己の体温と違って、姉と慕う彼女の指は暖かった。まるで陽だまりの様な彼女の人となりを示す様に。)

俺だけじゃないと思うぞ。練達で、テアドールの心を弄んで壊したのもアイツだ。
依頼でとある村に行ったンだが…其処で言われた。事件の元凶になった銀髪金眼の男は、アンタの顔によく似てたって。
……たぶん、血縁なんだよ。アイツと俺は。
(自分とよく似た顔の『悪魔』。あの時、絞り出した言葉が、想いと共に脳内でリフレインする。己の表情も自然と柳眉が寄せられ、苦虫を噛み潰したような渋いものへと変化して。双眸には憎悪の焔が仄暗く灯る。)
──と、すまねぇ。ついつい感情的になっちまった。
確かに、姉上だけ黒髪だけど。家族の絆ってそんなの関係ないだろ?
俺は逆に、姉上の綺麗な黒髪が羨ましいかな。艶々だし!

うむ、人とは身体の作りが変わっちゃってるからなァ。所謂、煙草とかの嗜好品と同じ感じだ。
(着物の袖を捲れば当然露になるのは真白い腕。日に焼けていない美しい肌──連想されるのは、柔肌に牙を埋めた後に血液が零れる瞬間だ。芳醇な血液の味は至高であると同時に、誰かの命を糧にしていると言う拭えぬ嫌悪感。そう、己は空腹で餓えている。種としての本能からゴクリと喉を鳴らすも、ぶんぶんと激しく首を横に振って欲望を振り払う。)
駄目駄目だめっ!!吸血鬼は悪い生き物だぞ?簡単に自分を差し出しちゃ駄目だ。
…それに、姉上の肌を傷付けちゃう。そんなの、駄目だ。

お風呂に食いモン浮かべる文化は…俺の暮らしていた所には無かったからなぁ。興味深い。
柚子ってさ。お肌ツルツルになったりする?

ん。じゃあ、魚釣りは海洋で!
焼いても美味いし、生食も美味いよなァ。
そう。双子の妹の方が『レイチェル』だ。
今となれば滑稽な話だが。まぁ…何も知らなかった俺は、レイチェルが死ぬ運命を許容した世界を逆恨みした訳で。
妹の名が忘れ去られない様に、『レイチェル』を名乗り出した。
……姉上は、「人は2回死ぬ」って知ってる?

俺の記憶の殆どが仮初だ。たぶん、妹と過ごした一部だけが本物。
…あんまりにも糞だから言いたくはないが。血統主義による度重なる近親婚が原因で、妹は病弱だった。
だから、妹が致命的な欠陥を生じた場合…健康で生まれた俺から臓器を取り出して移植するつもりだったらしい。『生きたスペア』ってそう言う意味だよ。

ヨハネと妹が何処に居るかは分からない。だから、奴の痕跡を追っているンだ。
妹が生きてるのは、過去を覗き見たから確実だ。召喚については、ヨハネから聞いたが…奴はこの手の事で嘘はつかないから真実だろう。
行っても何を願うでもなく……去年は、何事もなくこうしてお参りに来させて貰いました。今年も無事に過ごせますようにて、お決まりやけど。
それでも、誰かと一緒にお参り出来る言うんは、それだけで幸せな事やね。
(離れた指。ひんやりしていて、それがとても心地よかった。どうか、この約束が最後まで守られますように。危ないお仕事に行く事が多いから、と……口には出さないけれど)

……テアドールさんの事をそんなふうにしてしもたのも、その人。
似ているからって、そうね……たとえ血縁であっても、その人はその人。決して、自分に重ねてしもたらあかんよ?
やっぱり、嫌な事……思い出させてしもたね。ごめんなさい。
(そんな事ない、首を横に振る。誰でも嫌な記憶を無理やり引き出す時は、そうなるものよ、と)

人だけ黒でも、そう言うて貰えるなら嬉しいわ、おおきに。
このおぐしは切ったことないの、大事に大事に。そやね……これは、うちの宝物。

……嗜好品?不味く感じる事はあらへんのかしら。
ヨハンナちゃん?(一瞬、止まったように見えた彼女。本当に何も知らない無垢な姉は、それならと自分を差し出す事も厭わず。別にそれが苦痛を伴うものだとしても良かったのだ)
悪い生き物、ヨハンナちゃんが?……ふふっ。どこからどう見たら、悪い子なんやろ。
ほんまに必要な時は、言うんよ。いつでも、その覚悟は出来とるから。

柚子の皮は、汚れを落としてくれるものが含まれとって、少しピリピリするけど、綺麗になれるんよ。
香りもええし、ええお仕事してくれるし、疲れも取れるしでおすすめよ。

はい、そうしましょ。
どっちが大きいお魚釣りあげるんか勝負しましょ、んふふっ。
心臓(ここ)が止まって、魂が離れてしまう事が一度目。
(自分の胸に手をあててから、ぽつり)
二度目は、その人の存在を……その人が居た事を、皆が忘れてしまう事が二度目。
やから、貴女はレイチェルって名乗っとったのね。

そう……妹さんの命を繋ぐために。
でも、そうやってこの世に生を受けたのだとしても、運命がそうならずに……貴女が此処に居て下さった事に感謝する事を許してね。
妹さんが生きているのなら、まだ……そうならない道だってあるかもしれへんから。

(全部を理解出来ないなりにも、気遣う言葉を探り探りながら。相手を傷つけないように、今まで辿って来た道のりを絶対否定しない様に)
そうだな。平穏で無事な事、それが一番だ。
姉上も、依頼に行く時は気を付けてな?死と隣合わせだからね。
(姉と慕う彼女が何を思っていたのか──己には知る由もない。だから、これは只の偶然に過ぎない。
じぃっと金色の双眸を見据えながら告げる。)

姉上が謝る必要はないさ。違う、これは俺の問題だ。
(違う、姉上は悪くない、と彼女の肩に触れようと伸ばした片手は途中で勢いを無くして。中途半端な所で宙を彷徨ってはゆっくりと降ろされる。)
間違いなく、俺とアイツは似ている。同じ血なんだ。
(テアドールの記録を思い出す。悪戯でボヤ騒ぎを起こしても、研究には真摯。美しい景色を愛し、ひねた物言いをする男。否定出来ぬ程に“同じ”なのだ。)
…重ねない様に、気を付けるが。

ずっと伸ばしてるのか。願掛けとか?
俺も昔は髪を伸ばしてたンだ、妹とお揃いで。
今度さ、櫛で梳かして良いかい?妹がやってくれてたンだよ。だから、ちょっと憧れてた。
(妹がやってくれていたみたいに、と告げる表情は柔らかく。)

んー。苦手なのは不味く感じるぞ?
血液も一緒。不摂生な奴とか性根が腐ってる奴のは不味い。それでも、必要だから飲むが。
(依頼で殺した悪人…生きる為に啜った、その不味い血液の味を思い出したのだろう。寄せられた柳眉、眉間の皺は深まって。)
…悪い事、一杯してるぞ?

肌に刺激があるのかー。
でも、綺麗になれるなら気になるぜ。柚子以外にも何入れたりするのか?

勝負事!!なら、負ける訳にはいかんなァ。魚釣りでも!!
…当たり。
世界から妹の名前が忘れ去られる──二度目の死は絶対に許せなかった。
後は、単に。俺があの子の代わりに死ねば良かった。あの子の代わりになりたかった…ってのもあってなァ。
(昔日に想いを馳せる様に軽く双眸を伏せ)

そう、俺の命は妹を。否、“成功作”を生かす為の物だった。
ま、腹割かれた傷痕ねぇし。俺の臓器を移植する事態にはならなかったんだろうな。
本来のお役目を果たしていたなら…父上にも母上にも。姉上にも会えなかったかもしれねぇ。
うちは、死地に行くような事は滅多とありません。
大丈夫。まったりのんびり、縁側で猫撫でて過ごしとる時間の方が多いから。
(瞬きひとつ。紛れもなく本心であり、大切な人のこと以外にはあまり執着がないのだと自覚もしているから)

……でも、人言うんは、そう簡単に考え方を変えられるもんでもあらへんし。
誰かに何かを言われた所で、その人の気持ちはその人にしか分からないもんです。
ただ、少しでもこの言葉で、ヨハンナちゃんの心が軽くなればええなとは。
(考えを押し付けるのはしたくない。けれど、いつか晴れる日が来ればと言葉を紡ぐ)

願掛け……しとるわけやないんやけど、せやねぇ。
(やや間を空けてから)
──今一番のお願い事は、まだ叶っとりません。
分かっても、内緒やよ?内緒!!
(かぁっと朱く染まった頬を隠すように、パタパタと手で隠して)

……ほんなら、今度梳かして貰おうかしら。よろしゅうお願いします。
うちがしてもらった後は、交代よ?髪飾りもつけて、それから……んふふ。
(指を折りながら、あれもこれもと。さながら悪戯っ子のようである)

少なくとも、うちの中では悪い子やないもの。
(頭を撫でようとして、彼女の前髪のあたりに手を出す)

やから、此処から帰ったら……一緒に釣りに行くお仕事に行かへん?
たまには、ほのぼのしたのもええと思うの。釣った後の魚は、その場で美味しく頂く。
どやろか?
それだけ思われてる妹さんは、幸せ……言うたら怒られるかもしれへんけど。
優しいお姉さんがおるんは、羨ましいわ。
(伏せられた瞳、髪色と同じ銀の睫毛に光が当たって優しく輝いて見えた)

……そうやよ、此処へも連れて来て貰えんかったもの。
こんな素敵な景色を見られないまま死ぬかもしれんかったと思ったら、そんなん寂しいわ。

(くるりくるりとその場で回る。舞えばさらりさらりと広がる黒髪)

さて、と。

お腹も膨れて、ええ頃合いです。
そろそろお暇しましょか。
それが良い。
争いを好まん奴が死地に行く必要は無いンだよ。
(青い絨毯を一陣の風が駆け抜ける──靡く銀糸の髪を片手で抑え。)
(凛とした立ち姿の『姉』。平和な日常を愛する彼女が、血腥い“最前線”に立つ日が訪れぬ様に。誰かの血で涙せぬ様に。密やかな、されど切実な願いは…この直後に打ち砕かる事を、女は、知る由も無く。)
(『天国に一番近い場所単なるネモフィラ畑』、其処に願いを叶える神はいない。)

ありがとな。姉上。
ケリ着くまで、この想いが晴れる事は無いだろうが…少しな、軽くなった気がする。
(彼女の言葉通り、この積年の怨嗟が消える事はない。ただ、姉の優しさに応えたいが故に、僅かに唇の端を吊り上げて。果たして、上手に笑えただろうか──そんな問いは胸の奥に仕舞い込む。)

……ほほう。
結婚式の日取りが決まったら、教えてくれよ?お祝いするから!超頑張って!
(まるで熟れた果実の様に頬を染めた彼女に対して、意地の悪い表情を浮かべ。意地の悪い表情は直ぐに満面の笑みへと変わる事だろう。)

ん、任せとけ!
レイチェルにやって貰ったの覚えてるからさ、バッチリだぞ!
……んん?なんか俺の髪の毛が弄られる事になってない?
(当初は楽しげに頷いていた女の動きがピタリと止まり。)
(己へと触れようとする白い手を拒む事はせず、静かに受け入れるだろう。)
俺は悪い子で。優しくないぞ?
姉上の様に本当に優しいなら、別の手段を考えていた筈だ。もっと穏便で、もっと平和的な手段を。
──俺は悪人だ。犯罪者なんだよ。
(まるでそう在らんとする様に、呟いた。)

姉上が喜んでくれたなら良かった。
じゃあ、行こうか。
今度の魚釣りも…楽しみにしてる!
(/〆となります!)
(/長期間に渡るお相手、有難う御座いました!楽しかったです!)

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