PandoraPartyProject

ギルドスレッド

造花の館

魔性の証明

●あらすじ
ボクにとって何者でもないお前は、愚かにも感情に流されここに至る。
気に入らないところは上げればキリがない。
ボクにとって価値もなにもないお前に知識を恵んでやると思い込むこと。
自分の手持ちの貨幣がその対価として必要十分だと思い込むこと。
礼儀も作法も示さずに一方的にまくしたてること。
ボクの好むこと好まざることを調べもしないこと。
お前そのものの存在がボクにとって貧乏くじに等しいこと。
お前自身が考えもしなかったこと全てに腹を立てる理由がある。

……一方で、お前のその行動に見る価値のあるところもある。
砂の一粒程度ではあるがな。
その砂金一粒に免じて、お前にはチャンスを1度だけやる。


●今回のカードの特徴
それは高価そうに見える。
それは色付き硝子のように薄く透通っているが、裏の模様を見透かせない。
それは『語り手』の敗北を検知すると曇ってしまう。
それは『聞き手』の敗北を検知すると淡く輝く。
それは誰かが勝利すると、全てのカードが勝者の手元で束になる。

●ルールへのリンク
https://rev1.reversion.jp/guild/818/thread/14878

●特別ルール:カード指定
自PCが引くカードを、乱数に頼らずPL自ら指定してよい。
これは各PLごとにゲーム中1回まで使用できる。

→詳細検索
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(領主館、エントランスホール。
 にらみ合うように置かれた黒い革張りのソファ、その一方に貴方は座っている。
 間には事務的ながら見た目はいいテーブルがひとつ。脇には人目を避けるためのついたて。
 重要でない来客に対応するためのスペースである。

 そしてあなたの向かいには、少年が一人。
 美しいかんばせを不機嫌そうな仏頂面に固定したその人は、手慣れた動作でカードを切り終ると、テーブル中央にそれを置く。)
【順番決定(高い順)】
―――以上が、このゲームのルールだ。
もう一度は説明しない。そんな時間はないからな。

もしもお前がこのゲームで結果を出せたなら……お前の先の取引を検討してやってもいい。
99
……わかった。
(緊張の浮かんだ顔で、対面に立つ)

(無知な自分から脱却しなくてはと、がむしゃらにここまで来た“彼”は、思えば断れる事を考慮に入れていなかった)
(かと言って受け入れられる前提で来たのかといえば、そうでも無い)

(そもそも“後の事を何も考えていなかった”。それに尽きる)
(無知から脱却すると決めたのに、もうその手の下手を打っている。そんな自分に嫌気がさす。相手も不機嫌になる訳だ)

(だが、だからと言って引き下がるつもりは無い。そんな事では何もなし得はしない)
(せめて最低限、礼節の言葉を述べて“勝負”に挑む)
…よろしくお願いします
5
【1枚目】

(執政官が「お茶もって来ました~」と間の抜けた声で……マグカップ入りの紅茶を持ってきた。
 何度言いつけても絶妙に茶を淹れるのが下手だし風情も介さない。不愉快といえば不愉快だ。
 しかしこの対面においては極めて『適切』な対応である。
 今目の前にいる相手とのやりとりなぞ、所詮この程度でいいのだ。)


先手はボクがもらうぞ。

(やはり不愉快そうにマグを口元に運び
 山札の1枚目を覗き見るように捲る。)
100
(そのままゆっくりと開示したカードは黒枠。
 点対象に描かれた2人の人型、反転する色彩が対立を意識させる。)


【カード指定使用 → 24.仇敵】


仇敵か。
(そこそこの札だ。話のタネもある。)

(興味深そうに後ろから覗き込む執政官を仕事に戻らせると、早速口を開いた)
お前はボクの技術、ボクのやり方について、一切を知らないし考えたこともないだろう。
だから大雑把に説明してやる。

ボクが扱う技というのは、取引の末に相手から借り受ける『他人の技』だ。
膨大量の魔力、そこから引き出される魔術、そして単純な身体能力に至るまでのほぼすべて。
ほぼすべてが、借り物の力を緻密に編み上げ組み合わせたパズルだ。

しかし当然この世界に、タダで借りられるものなどない。あるわけがない。
水を運ぶには労力を要し、水を買うには労力と水そのものに見合う金銭が要るように。
この世全ての物事は、時間や金銭といった事物の交換で成り立つ。
その重さは『価値』と呼ばれ、価値のあるものを手にしたいと欲するなら多くの事物との交換を要求する。
(流暢な語り口。説明慣れしている。)

つまりボクは、この価値ある力を得るために、相当の事物を支払ったということだが。
ボクがなにを支払ったか、どれほど支払ったか、お前は考えることができるか?

(そしてこの問いかけ。相手に思考を促し、話に引き込むためのもの。)
何を支払った、か……
(考える。今の話の意味を)
(正直にいえば、今の話を十分に飲み込めているかといえば十分とは言い難い)

(だが最後の要約からすれば、『今の力を得る為』『セレマは何を支払ったのか』、という問いかけである事)
(そしてそれを考える事をこちらに指示している、という風に感じられた)

……対価、対価。
(思えば、自分達が今こうしている理由。自分は対価を示して取引を申し出たが、機嫌を損ねる事になった)
(自分が示した対価は、不十分。或いは不適切だったのだろう)
(対してセレマは、望む力を取引にて適切に獲得した。相手の望む対価をちゃんと示せたという事だ)
(それが、自分とセレマの差なのだろう)

(遅れて、改めて。先の自分の不適切さ。その一片を理解する)
(……同時に、一つの疑問が湧く)
(なぜ、機嫌を損ねて。“それで終わり”にならなかったのだろう?)

(このゲーム次第で、取引に応じてくれるチャンスをくれた。なぜ?)
(そんな簡単に慈悲をくれる様な人柄ではないという事は、何となくわかる。何か理由はある筈だ、そういう相手だ)

……
(この話の続きで、それがわかるのだろうか?)
(期待と、不安。相反する2つの感情を抱きながら、じっとセレマの目を見つめる)

(続きを望む様に)
魂だ。
(淀みなく言い切った)

お前にももっとわかりやすい言葉を使ってやろうか?
それは自身の肉体の7割以上であり、命運尽きた先の終着点を委ねることであり、死後に遺されるはずのあらゆる財産であり、また生きている間も債権者の要望に応じて手慰みの玩具へとなり果てる可能性を呑むことだ。

だが、力というのは往々にして価値が重いものだ。
それだけを支払っても、力そのものの価値には足りず。
ボクは日々を、価値の積み重ねと、それを切り崩し債務に充てるよう努めている。
それほどまでにして何故力を求めるかといえば、だ。
それは覚悟に他ならない。

ボクに対し正当な暴利を要求する魔性共を打倒し、支払った対価を取り返し、借り受けたもの私物とする。してみせるという覚悟だ。ボクが相対するあらゆる取引の相手というのは、ボクが出し抜くべき、将来打倒すべき存在であり、実際に取引をなした全てがボクにとっての仇敵と呼べる相手だ。
そして仇敵であるからには、そいつを組み敷くか排除するかが、ボクのなすべき指針だ。
そういう覚悟だ。

以上が、ボクにとっての『仇敵』の話だ。
質問があれば受け付けてやってもいいぞ。

(『仇敵』のカードは異常を示さない。この話は紛れもなく真実である。)
……質問はある。
(質問する事は、相手を勝利に近づける行為だ)
(“このゲームに勝利しなければならない”。そう考えていた彼にとって、迂闊に質問するのは避けたい行為の筈だった)
(だが今は、もっと大事な事がある)

(魂を差し出した、と聞いた時。少なからず同様した)
(魂と関わる術霊術師を持つ彼にとって、それは他人事じゃない。魂は実在し、関わる術も存在し、それをセレマは対価に使ったと言った)
(魂は、命と並んで……或いはそれ以上に大事なものだろう。そんなものを、今の為に手放した)
(なぜそこまで。何でそうまでして。)
(動揺と困惑で、頭の中が埋め尽くされそうになり)

(セレマが覚悟誓いを口にした時に……1人のライバルが脳裏をよぎった)


魔性を倒すと言ったけど……
(自身が、今よりも強くと。誓いを立てたきっかけ)
(『大好きな彼女咲花・百合子の愛する人の魂が』『何処の誰とも知らぬ相手に縛られている』)
(それは我慢ならない事であり。そこから生じる熱を抑えるには、)

それはセレマが、1人でやらないといけない事か?
(このゲームの勝敗“程度”。抑えるには足りなかった)
(他人が関わると不都合はあるのか、と。そんな意味合いで。セレマに問いかけた)

(その目に、揺らぎはない)
実に……
   くだらないことを聞くな。お前は。

(コレに対しては死を想起させるような話運びが適当かと思ったが、外したらしい。
 安直な勝ち筋を狙った己の浅慮を恥じ入るべきだろう。
 ただ感情に流されるだけではないバカかと思ったが……やはりバカの可能性がある。)


便所に入ったら尻を拭くだろうが。
誰が好き好んで自分の尻を他人に預けたいと思う?
よしんば他人を使うとしても、それは利害の一致か、他者利用が間違いなく有効である盤面に限る。
つまりどれだけ他者を利用しようとも、負債を押し付けようとも、本質としてはボクの戦いだ。

おめでたいお前が思い描くような、協力者など必要と思ったこともない。
そんなものはただの一人としていない。
さあ、質問はもらったぞ。
あと1回、お前が質問を投げかけてしまえば、お前の負けだ。

(ここからはゲームの主導権が相手に移る。
 一通り喋り終えた舌を、不味い紅茶で潤す。)
うん……ありがとう。
(つまり、他者の介入による不都合は、少なくとも実害としてはない。要するに“気持ちの問題”だけ)
(自分はトイレを利用する機会などないが、その類いの言葉は言わんとする事はわかるし聞いた事もある)

自分の事は自分でする、って事だな。
(『お前の助けなど必要無いし、欲しくも無い』。そう言われたのはわかっている)
(だからといってはいそうですか、とはならないのが彼だ)
(盲信を止めても、それでもこいつはマッチョ☆プリンだ)

よっぽどの相手なんだろうな、その魔性、ってヤツ
(一度決めたら止まらない。既に、魔性と言うものに狙いを定め始めている)
(そんなに凄い相手ならローレットでも誰かかち合っているかもしれない。資料はあるだろうか)
(先程『借り物の技』など言っていた。ならセレマっぽい技/存在のヤツを片っ端から殴ればその内当たりを倒しているか)

……
(いや。ここでまた先走っては、今のさっきでまた同じ下手打ちをする事になるかもしれない。それはダメだ)
(これはセレマの問題で、セレマが自分で解決できるならそれが良いのだ)

よし。
(だから、もしそうはならない時に)
(全部、ぜんぶ。ぶん殴って解決する)
(その時の為に、今は。魔性をどうぶん殴ればいいか……調べてはおく事にしよう。そうしよう)
(今は、ゲームの続きだ)
それじゃあ、オレの番だな!

(カードの束に向き直る)
(あと一回の質問で負け。そう突きつけられても……不思議と緊張はなかった)
91
……オレも黒枠だ。
(カードの中心に描かれるは心臓。だがより目立つのは、それに脚も牙も突き立てる百足ムカデ)

苦痛。
(そんなもの、幾度も感じた事はある。特に“直近の出来事”など最たるものだ)
(だが、それはここで話す様な事じゃない。自分も淫らに話したい事じゃない)
(話すのなら、他の事が良いだろう)

これは……挑戦している事。
それか目標に、なるかな。
(静かに、目を瞑って考えを巡らせていく)
セレマも知ってると思うけど、オレはプリンが大好きだ。
大好きで大好きで大好きで。一日中、ずっと食べてたって飽きない。
これが一番だー、って。ずっとそう考えて。そう信じて。プリンばっかり食べてきた。
(目は瞑ったまま。自分にも語り聞かせる様に、或いは確かめる様に。語り続ける)
でも、今は食べてない。
プリンは決して一番じゃない、って。わかってから。食べるのはやめた。
別に、嫌いになったとか、興味が無くなったとか。そういう訳じゃないんだ。

確かに、信じる事はやめた。
立ち直ってから体の調子も確かめて、今までとおんなじ様に動けた。
オレの”性能”は、確かにプリンには左右されなかったって事だ。
プリンを食べなくたって、何も変わらない。必要は無かったんだ。

でも、それでプリンが大好きだって気持ちまでは無くなったわけじゃない。今だって好き……いや。
むしろ、今の方が好きかもしれない。
多分……ちゃんと、味を意識する様になったから。
今までの自分と、今の自分。
今の方が……味を思い出す時に、ちゃんと意思して思い出してる。
今の方が、きっとプリンが美味しい。
もう一度、プリンが食べたい。

でも、もう食べないって決めたんだ。
(目を開く。決意に満ちた瞳が、まっすぐ前を向いた)
最初にプリンを食べないって決めた時は、こんなに焦がれるとは思ってなかった。
毎日、毎日。その味を思い出して、食べたくなってくる。
オレは食事何て必要ないはずなのに、お腹が鳴るような。空いて壊れる様な。
喉が、口が、乾いておかしくなる様な、そんな気分になる。

それでも、食べない。
だって、もう決めたから。
盲信はやめる。縋らない。1から鍛え直す。
これは、その為に必要な事だって。
自分に誓った……契約。そっか、契約なんだ、これ。
オレが前に進む為に、これを切り捨てる。
そう自分に契約したんだ。


だから、どんなに苦しくたって、これは辞めない。代わりものだって口に入れない。
ただがプリンくらい、だって思われるかもしれないけど……だからこそ、だ。

ただが食べ物の一種類で、同時にかつてのオレの半身だ。
どうでもいいもので、それでいて何よりも重要なもの。
新しい自分になるには……何よりも打ってつけの対価だったんだ。

だから、この苦痛をこの先ずっと抱き続ける事になっても。
オレはこの誓いを辞めない。

……少なくとも、何かに納得するまではな!
(その納得が、いかなる意味で何を指し示すのか)
(それは本人もわかっていなかったが……笑う様に語ったその一方で、硬い決意に満ちていた)
……あ。
(そこまで語り……その瞬間、差し出されたお茶の存在を思い出した)

……。
…………。
(どうしよう。頭を占めたのはその一言だ。顔にまで現れている)
(確かにプリン、引いては食を断ると言った)
(だがその誓いの為に……こういう、既に差し出されたものまで手をつけないというのは。礼儀として如何なものなのか)

え、えーと……
このお茶、飲んだ方g……あ。
今聞いちゃダメだ……!?
(ギリギリでゲームのルールを思い出し、頭を抱える)
(もっと、具体的に組み上げておくんだった)
(彼は、誓いの為にまたもや思いもよらぬ後悔をする羽目になった)

(ちなみにカードには、何の変化もない)
(先の話は真実である)
(わかってはいるのだが。
 このゲームは怪物相手にやると、その怪物性が浮き彫りになるゲームである。)

(………え、なんだ。何を聞かされたんだ。)

(プリンくんプリン食べないって?へー?
 プリン以外も食べないの。うん?
 それが……うん…………………………?)

(まあ……そういう怪物もいるだろう。)
(しかし概ね理解した。
 こいつの中身はガキだ。

 自分以外の視点から物を考えることが不得手だから説明が下手。
 他者の情に訴えるようなやり方は得意であるようだった。
 それはこいつにとって情、衝動こそが他者と共有しうるものであるからだろう。
 『共感』ではなく、もっと感覚的なそれに近い『交歓』の怪物。
 恐らくそれがこいつの正体。

 するとこいつの切札も、こいつに通る切札も見えてくる。)
好きにしろ。
ボクが準備したものではないからな。

(金色のふたつ眼が、弓を作るように細く、狭まる。
 テーブルひとつ隔てた遠くから、獲物を品定めしている。)

質問は特にない。
ゲームを続けていいな?
む。
……いいぞ。
(視線を受けて、何となく『仕留めにかかってきている』と悟る)
(闘技場で散々見てきた、トドメを刺さんとする好敵手達の目に似たモノを感じる)

(己の知る中で、“特に賢い相手”と“賢さを競う勝負”をする)
(あまりにも不利な状況に、最初は飲まれて居たもの。今は平気だった)
(なぜなら既に得るモノがあったからだ。実を言えば、最早負けても別にいいくらい)

(だからと言って、勝負事でそう簡単に負けるなんて嫌だ)
(不利だから何だ。むしろ隙あらば勝ってやる)

なんでもこい、だ!
(一方で……こいつの欲望はまだ見えない。
 利用するにしても、迂回するにしても、その欲望の形を見る必要がある。
 相手の引きを待つのが得策だが、コイツ相手に長いゲームをする気はない。
 自分の引いた札から引き出すこともできるだろうが……引き運を当てにする時点でダメだ。

 どんなゲームであれ、挑戦するからには勝たねばならない。
 そして勝つのであれば完璧に勝たねばならない。)
9
(カードを捲り…眉根を寄せた)

     【03.魔術】

(得意な分野の話ではあるが、順序がよくない。
 先に同じような話をしたからその分印象が薄まる。
 やはり引きなど当てにはならない。)
 
(指先がテーブルを叩く、2拍分の間。)

ボクの扱う技術、その傍系の技を使う人物の話だ。


何時の事だったろうかはどうでもいい。
どうでもいいが、あえて『むかしむかし』とでも形容しよう。


昔々、あるところに、一人の魔女がいた。
魔女は博学にして多才、雄弁にして流麗、その美しさは曙光の如く。
ひとつ所にとどまらず、常に土地から土地へと渡りあるき、自身の才覚を思うままに揮い続ける。
はっきりと言ってしまえば、それはこの世の誰よりも怪物のような魔女だった。

この話はその魔女がある森を根城にしていた頃の話になる。
魔女は森の小さな小屋で、静かに自分の研究を進めていた。
だがな、森の中で生活必要な全ての物を、常に手に入れることは不可能だ。
だから時折、生活に必要な物資を求めて人里に降りていた。
先も述べた通り、魔女は多才で言葉巧みで見目麗しく、そして金も持っている。
そんな女が、森の奥から小さな村へとやってきたら……否が応でも目を引くよな?

魔女は自分が作った薬を、街で買うよりずっと安い値段で村におろした。
当初は魔女を怪しんだ村人たちも、その薬の効き目のよさと、魔女のあらゆる魅力に絆されて、魔女を疑うことを忘れていった………まあ、どこにでもいるよな。疑うことが疲れるという奴は。
それに魔女は、欲がなさそうに見えたのもあるんだろう。
そんなある日のことだ。
村のある男…魔女に恋心なぞ抱いてしまったそいつは、魔女それそのものを求めて森の深くへ入った。
潜るほどに薄暗く、歩みも声も阻むような茂みを、かろうじて辿れるほどの獣道を追って。
数刻ほどかけて男はようやく小屋に辿り着く。

片手には葡萄酒。片手には花束を。唇にはまだ届いていない愛の言葉を載せて。
男は、扉を叩く。1度、2度、そして3度。
間をおいて扉が開き、魔女が現れる。
魔女は驚いたような顔ひとつせずに、男が何者で、何の用でここに来たかを問うた。

男は一瞬怯みこそしたが、自分の素性を明かして、魔女への愛を告白した。


そして魔女は…笑みをひとつ浮かべると、懐からひとつの指輪をとりだす。
金の輪に輝くダイヤを一粒載せた、田舎村では見ないような立派な指輪だ。

魔女は言う
「これは私にとって、人生に等しい価値と意味をもつ。
 あなたが同様に人生を捧げてくれるのであれば、この指輪をあなたに捧げます。」

男は言う、またとない好機、そしてその感動を胸に抱えて。
「もちろんです。
 あなたに俺の人生の全てを捧げます。あなたと共に生きます。」

魔女は男の手をとり、その右手薬指に指輪を通した。
喜びに震える男を抱きしめ、その額に口づけを落とす。
 

………これで終われば、めでたしめでたしと。
どうせお前もそう思うんだろう?

 
その瞬間の事だった。
所有権が入れ替わった。

『男の人生の全て』が魔女の物となり、『ダイヤの指輪』が男の物になった。
まあ……正当な交換だろう。それぞれ『人生に等しい価値』を持つモノ同士だからな。
本人たちがそう値段をつけたのだから間違いないだろう。

自分の人生を失った男は、その人生の行き着くところ全てを魔女にゆだねることとなる。
生ける屍の空虚な瞳で、ただ魔女の言葉にのみ従う、そういう存在となった。

魔女は、無関心さからくる特有の微笑を浮かべると、その日の夕飯を何にするかについて思いをはせるのだった。
これで、めでたしめでたしだ。

(果たしてこれは『成し遂げたこと』なのか。
 それとも『挑戦していること』なのか、『目標』であるのか。
 そこを伏せたまま、話は終わる。

 後味の悪いしめくくりだが、それでもカードはこれが『真実』であると告げている。)
えーー、と……
その魔女は、何か……悪いヤツ…だ、な
(困惑が現れた声で、しかし慎重に。疑問形にならない様に感想を言う)

…………んんん?
(だって、何だか今の話)
(端から端までずっと他人の話じゃないか?)
(これは自分の話をするってルールじゃなかったか?)

……
(でも、カードは何も反応しない)
(自分の話だって判定されてるって事だ)
(……何でだ?)
……何か意味はあるよ、な
(何で、今の話が自分の話と判定されたのか)
(カードに何か仕掛けがしてある? ……だとして、今それを晒す意味は……ないよな?)
(セレマなら仕掛けくらいできそうだし、使えるって思ったら『やる』と思う)
(でもそうだとして、もっと効果的なタイミングでそれを切る筈だ)
(こんな意味のわからないタイミングでやる意味がわからない。だから違う)

じゃあ結局、今の話はちゃんと自分の話、になるけど……
(……いや、やっぱり何で?)
(何処が自分の話だ? 男がセレマだった?……違う)
(そんな簡単に騙されるヤツじゃないし、そんな話したがらない筈)

逆に魔女なら……
(騙して、ぜんぶ奪い取る。……こっち側なら好きそう?)
(さっきだって、最後は魔性からぜんぶ貰うって事言ってたもんな)
(つまり……

今の魔女みたいになりたい、のか?)

……目標の話か!
(察しはよくないらしい。
 このような洞察を要求する場面に、一人で臨んだ場面がない可能性がある。
 詐欺にかけやすい手合いであるから対処法としてはそれが適切だろう。)


さあな。
だったらどうだっていうんだ。だとすれば、目標とはなんだろうな?
ボクが同じやり方をしていたところで、答える義理はないな。ボクが同じ方法を使ったかは、問われなければ答えないぞ。

問いがなければ、次の語り手はお前だ。
質問はない!
(この話が何だったのかを当てれば良いのかと思ったが、どうもまだ何かあるらしい)
(が、そこにあまり興味はない。どうしても質問したい様な事はない)

これくらいじゃあ、まだ負けてやれないな!
(しかし答える義理はないとか良いながら、質問がなければ、とか……ほんとに謎なヤツだな)

じゃあ、またオレの番だ!
むむむ……
(一番上のカードに手を置きながら、考える)
(勝つには、驚かせるか質問させるか)

……
(目を瞑る。意識も沈める様に、瞑想をする様に)
(自分はさっき、何も質問されなかった)
(逆にオレはアイツに質問した)

(その違いは、何処だ。これがわからなきゃこの勝負には勝てない)
(オレは何で質問した……?)
(……知りたかったからだ。 勝ち負けより知りたい事が、あの時あった)
(つまり、オレの話の中に、『セレマが知りたい事は何も無かった』)
(……これか?)

(セレマが勝負の勝ち負けよりも知りたい事を、話の中に入れる)
(入れて、でも何も言わない。さっきのセレマみたいに)
(そうやって、質問をさせる・・・)

ぐぐぅ……!
(歯を食いしばって唸る)
(苦手だー! そーゆーの! ぜんぶ殴って解決すれば分かりやすいし早いのに!!)
(……でも、無知な自分を止める、って決めたんだ)
(これだって、できる様にならなきゃダメな事。これも鍛錬だ!)

…でい!
(思い切り、カードを引く)
97
………さて、お前がそれと向き合って、もうしばらく程経っているわけだが。

(指先は退屈そうに机を叩き、眉間にはさも苛立っているかのように、小さく皺を寄せ。
 あからさま過ぎるほどの『急かす』ポーズ。)

ボクの記憶に間違いがなければ――もっともボクが間違えることはあり得ないが。
この束には、話すだけならそれほど難しい題材はないはずだが。

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