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シナリオ詳細

<Autumn Festa>染まり行く海も紅葉~海の秋

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●今秋の流行り
 暑さも和らいで、秋。
 幻想国内を蠍が騒がせているが、それでも季節は移ろいゆくもの。
 特に流行りに敏感な一部の貴族などは蠍ばかりにかまけていられない。
 誰が聞いたか最早定かでないが、旅人から聞いた『ある事』が国さえも越えて広まりつつあるのだ。

 曰く──『○○の秋』と称して催し物をする、というもの。

 人から人へと伝わっていくうちに内容は変わっているかもしれないが、まあ概ねそのような内容だった。
 催しを行う貴族によって規模も内容も様々。当然、集客力も様々である。
 沢山集まってるけどイレギュラーズも呼んでもっと賑やかにしようとか。
 全然集まらないから客として来てくださいとか。
 むしろイレギュラーズだけお呼びしてますとか。
 結果──貴族の思惑は色々あるだろうが、催し物は依頼としてローレットへ持ち込まれたのだった。

●海洋流の秋
「何だか、貴族の間でイレギュラーズの風習とやらが、流行っているみたいだねぇ」
 【海賊淑女】オリヴィア・ミラン(p3n000011)は、オレンジ色に染まった海の様な瞳で談笑する貴族達を横目で見る。
「あら、オリヴィアが流行を気にするなんて珍しいわね」
 通りかかったプルー・ビビットカラー(p3n000004)が、各地で行われるイベントが書かれた用紙を見つめるオリヴィアに声を掛けた。
「こんなお祭り騒ぎに乗らないわけないねぇ。でも、何をすれば良いのかアタシにはさっぱりだ」
 と、言うとオリヴィアは嘆息すると、~の秋が書かれた用紙をテーブルに放り投げた。
「なら、海洋らしく船に乗って夜の海から眺めるのってどうかしら? ロマンチックじゃない?」
 プルーが提案した。
「なるほど、海洋の秋を皆で感じながら酒を交わすのも良いねぇ。よし、今からイレギュラーズが沢山乗れる船と酒を準備してくる。プルー、ありがとうな!」
 と、言うとオリヴィアは、ギルドから飛び出して海洋へと向かった。

「突然の呼び出しをしてすまない。今、貴族の間で流行っている『~の秋』というモノを、アタシの故郷である海洋でもする事にしたんだ。クルージング? とやらみたいなモノだから、遠慮無く楽しんでくれよな」
 秋の夕暮れをバックにオリヴィアは、集まったイレギュラーズ達に説明をする。
「光源は丁度良く満月だから不要だ。様々な飲み物と、海洋の伝統的な料理を用意したから楽しんでくれると嬉しいねぇ。さ、紅葉狩りとやらで秋を満喫しようじゃないか!」
 オリヴィアが声を上げると、船と桟橋を繋ぐ階段が設置されるとアナタ達は船に乗船した。

GMコメント

春振りです。ルビーの和名の紅玉です。
今回はしんみりと、海の上で紅葉狩りです。
日々の戦いに疲れた方、ご友人とのんびり過ごしたい方、恋人と静かに愛を語りたい等!
皆さんの参加を気長にお待ちしております。

【目標】
海洋の海の上からのんびりと、紅葉狩りをする。

【船】
個室、食堂、デッキの3ヶ所の何処でも使っても構いません。
飲み物は、様々なお酒やノンアルコールのカクテルに変わった飲み物やジュースがあります。
※ゴーヤジュース、納豆ジュース、誰かが適当にMIXしたジュース等
食べ物も魚介類を中心に何でもあります。
デザートは、月見団子やら色々とあります。

【注意】
2名以上のご参加は、必ず【相手の名前とID】もしくは【グループ名】の記載をお願いします。

【NPC】
オリヴィア:お声を掛けたり、誘っていただければ喜んで同行します!

  • <Autumn Festa>染まり行く海も紅葉~海の秋完了
  • GM名紅玉
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年10月30日 21時45分
  • 参加人数30/30人
  • 相談5日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
ヴェッラ・シルネスタ・ルネライト(p3p000171)
狐目のお姉さん
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
伊吹 樹理(p3p000715)
飴色
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
コルヌ・イーラ(p3p001330)
宿主
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)
石柱の魔女
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
ヨランダ・ゴールドバーグ(p3p004918)
不良聖女
剣崎・結依(p3p005061)
探し求める
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
ニミッツ・フォレスタル・ミッドウェー(p3p006564)
ウミウシメンタル

リプレイ

●食堂にて
 船内の食堂から美味しそうな匂いに釣られたイレギュラーズは、秋風で揺れる船を気にせずに自然と足を向けた。
「酒の許される歳でなくても、これだけありゃ楽しめないわけがない!」
 と、食堂のテーブルに並んだ海洋の料理を見て、リオネル=シュトロゼックが嬉々とした声を上げた。
「美味を肴にしてこそ紅葉も満月も味わい深くなるよ、きっと!」
 なーんて言ってるヒィロ=エヒトの瞳には、食堂の窓から見える景色ではなく海洋の料理を写していた。
 そんな二人は急いで料理を皿に乗せてから、飲み物をグラスに注いで乾杯すると一気に飲み干した。
「ぷはっ、コレ美味しい! 団長さんもどう? きっとレアものだよ!」
 と、ヒィロが先程飲んだジュースをリオネルに差し出す。
「……ん、なんだくれるのか?」
 よく見ずに、差し出されたジュースを受け取ったリオネルは、ニオイも気にせずにソレを口にした。
「……ぐぉ。こいつ、混沌にもあんのか……クるわぁ」
 それは納豆ジュースであった、独特なニオイと喉に絡み付く粘りが何処となく懐かしい味だ。
 顔をしかめながらリオネルは低く唸ると、ニコニコ笑顔でおかわりするヒィロを見て思い出す。
 『そういやこいつ幸せな味覚してんだったな』と。

「ふふ、こんなところで食事するの初めてだから楽しみだなあ!」
 船に乗って海の上で食事なんて初めてのアレクシア・アトリー・アバークロンビーは、笑顔で隣に居るマルベート・トゥールーズに言った。
「船上でのディナーなんて、実に洒落ているね?」
 と、言ってマルベートは微笑んだ。
 海洋の料理は流石に魚介類が豊富で、その日に取れた魚で作ったカルパッチョやら長期保存に適した等の料理が並ぶ。
 マルベートは、ヒラメや牡蠣があって嬉しそうに自分の皿に乗せる。
 ただ、サーモンも欲しかったのだが今の時期は川へと移動しているので、海では取れない事を船員から聞いた。
 それぞれが料理を取り終えると、アレクシアは果物の果汁にお酒を加えたカクテルが入ったグラスを手にする。
「はい! 乾杯!」
「うん、乾杯」
 チン、とグラスが美しく繊細な音を奏でると、マルベートは炭酸のワインを口にした。
 潮の香りがし、発酵されたワインは葡萄の甘い風味と炭酸が舌を刺激する。
(マルベート君は大人っぽいお酒だなあ)
 アレクシアは、ジュースと変わらぬ味のカクテルを口にしながらマルベートに視線を向けた。
「この焼いた牡蠣とか、このムニエルはこの国オリジナルのソースみあいだね」
「そうなんだあ! あ、私は梨のチーズケーキとかりんごたっぷりのタルトタタン!」
 マルベートが取ってきた魚の料理を渡すと、アレクシアは食後用に選んだデザートを両手を広げながら楽しそうに話す。
 そう、友達になったばかりの二人は他愛もない話に花を咲かせた。

「海の上、満月の下で紅葉狩りか、雅だねぇ」
 と、料理に舌鼓しながらゴリョウ・クートンは、藍色に染まる空に丸い月が優しく世界を照らす紅葉と海を眺める。
 海洋で取れた新鮮な魚介類で作られた海洋の料理を明日へとの英気を養う為に、そして料理人としての興味もあり一皿、一皿、丁寧に味を確かめる。
「地雷な飲み物が多い中で、コンポート入りの紅茶は絶品だねぇ」
 船内とはいえ、夜は冷える中で飲む紅茶はゴリョウの体を温める。
「……そ、そう……だよね……」
 隅で食べていたニミッツ・フォレスタル・ミッドウェーは、同じく一人だったゴリョウが海洋の料理について教えて貰う為に声を掛けられたので一緒にいる。
 本当ならば海の中で泳ぎたかったが、オリヴィアが強引に楽しく食堂に連れられて食事をしていたが、途中呼ばれて席を外した。
「美味いメシ、静かな海、美しい夜と紅葉、いやぁ良いねぇ粋だねぇ! 誘ってくれたオリヴィアには感謝しねぇとな!」
 豪快に笑いながらゴリョウは声を上げた。
「……うん。海の中なら、もっと良かった……」
 窓から見える風景に、ニミッツは自身が海で泳ぐ姿を想像しながら見つめた。
「俺は、裏を選ぼう。裏だ!」
 剣崎・結依が声を上げた。
「おーと、良い勝負魂じゃないの。ならばアタシは表だ」
 船員の手に視線を向けると、不敵な笑みを浮かべたオリヴィアは楽しそうに言った。
 手の甲に乗ったコインはーー……『表』。
 スッと、謎の液体が入ったグラスをオリヴィアは結依の方に動かす。
 臭いは酷い、しかし息を止めて一気にワイングラスをあおり、液体を飲み干す。
 一瞬、顔を歪ませるが直ぐに表情を戻すと結依はオリヴィアの方に視線を向けた。
「オススメのノンアルコールのカクテルを教えてくれ」
「そう、だな。やはり……シャーリー・テンプル」
 オリヴィアはシャーリー・テンプルが入ったグラスを差し出した。
「こういうのも、悪くない、な」
 グラスに一口付けると結依は、揺らすとジンジャーエールにグレナデンシロップとスライスされたレモンがグラスの中で揺れた。
「船の上で海を見ながらいろんな飲み物飲み比べとか楽しそうだね♪アルコールは飲めないからおいといてー……おお? 変わった飲み物もいっぱいあるね!」
 と、大きな瞳を輝かせながらミルキィ・クレム・シフォンは、沢山ある飲み物をどれにしようか? と、悩みながらグラスに注いだ。
「よーし、美味しいかどうか冒険飲み比べだー☆」
 意気揚々と、片っ端から集めたジュースをミルキィは楽しそうに飲み始めた。
「にぃ、苦い~……口直しに!」
 ゴーヤジュースを飲んだミルキィは、慌てて取って置いたデザートを口に放り込んだ。

「ふふふ! フッ! フフフフフゥ! ロク君も随分と酔っているじゃぁないか! 大丈夫かい?」
 飲み放題だからと聞いて、飲みまくって既に酔ってるクリスティアン=リクセト=エードルンドはロク(コヨーテ、)の頭を、力加減が出来ないので激しく撫で回してた。
「ふふふ! なんか……ふふ、ジュース飲……もう! 日頃のォ……お礼に!! わたしが! フフッ! ミックスジュース! 作るよーブフッ! 材料! そこらへんの海水とォ! そこらへんの魚! そこらへんのワカメぇ! グラスにドボーーン!! できた! ヒィック……」
 ロクは食堂の窓からくわえている柄杓で海水を掬い上げ、グラスへダイレクトにドーン!
「見て……? 素敵なミックスジュースじゃない?海の底を切り取ったような芸術的なジュー……フフッ!」
 うーん、新鮮な磯の香りが最高だね!
 オマケに泳いでた魚もナイスな飾り?
 いいえ、メインです! と、言わんばかりにグラスの中で直立不動!
 溢れたワカメがグラスにピッタリと張り付いて、『ただの海水じゃ?』なんてヤボな言葉は言わないでおこう!
「王子! できたよ!! ロク特製ミックスジュース……! グラスから魚がはみ出てる? ……気にしない。いつもありがとう、王子! さあ、このミックスジュースを召し上がれ!」
 ジュースなのか? と、誰もが目を疑う中でクリスティアンは瞳を輝かせた。
「こ、これは……! グラスを自由に舞うワカメと、新鮮な(所か生きた)魚……海そのものと言っても過言ではない……! なんという斬新なミックスジュース! そもそもミックスされていない、ミックスジュースの概念を覆す革命児……!! ありがとう! さっそく頂くね!」
 いや! ただの海水だろう! と突っ込みたいのをぐっと堪える。
「……しょっぱァー!! こりゃ海水じゃないかーい!!」
 と、口から海水(という名のジュース)を盛大に吹き出すと、クリスティアンはパーンッとロクに突っ込みをいれた。
 前足をを頭に乗せ、舌を出しながらロクは可愛くウィンクをした。

●その頃、個室では?
(海洋での紅葉……今までは一人お部屋で見るだけのものでしたが、今回は隣で一緒に見る方がいるのは……とても、嬉しいですね……)
 と、マナ・ニールは部屋の窓から景色を見ているヨハン=レームに、ちらりと視線を向けた。
「そ、そうです! マナさん船酔いとか大丈夫でしょうか……な、何かすっきりするようなジュース持っていってあげましょうっ!」
 好きな子と、個室で二人っきりは健全で純粋な少年には少し早く、どうしたら良いのか分からずにヨハンは勢いよく立ち上がった。
「レーム様、大丈夫です。私の手作りで良ければ……お菓子と飲み物を用意してきました」
 今にも駆け出しそうなヨハンに向かって、マナは優しい笑みを浮かべるとテーブルに手作りのお菓子と、持参したティーポットにカップと茶葉を置いた。
 お湯は個室に行く前に、部屋に用意するように船員にお願いをしていた。
「それなら、お部屋で二人でゆったりできる機会なんて滅多にないですねー」
 マナは相槌を打ちながらヨハンとのとりとめのない話を楽しそうにする。
「レ、レーム様が……良ければ……なのですが……膝枕を……」
 こくり、こくり、とヨハンの頭が上下に動くのを見たマナは、ベッドに座ると恥ずかしそうにか細い声で言いながら自分の膝を指す。
「船で揺れながら眠るのってなんか気持ちよくないですかー?」
 大きく欠伸を1つすると、ヨハンは遠慮無くマナの膝に頭を置き、波打つ海の音を子守唄に、揺れる船は揺りかごの様に、静かに夢の中へと引き込まれた。
「いつも依頼で頑張られていますからね……今日くらいは、ごゆっくりとお休みください……」
 眠るヨハンを起こさぬように、マナはそっと頭を撫でながら優しい声色で呟いた。

「海洋の秋。聞けば異世界にはがらりと色合いを変えるもみじなる植物があるとか。海もそんな気まぐれがあるのでしょうか」
 個室の窓から見える景色を眺めているミディーセラ・ドナム・ゾーンブルクが、ぽつりと疑問を口にした。
「お酒に酔うのは気持ちよくて大好きなのに、船に酔うのは何でこんなに気持ち悪いのかしらぁ……ううう」
 ベッドでぐったりしているのはアーリア・スピリッツだ。
「まあ、まあ……ふなよい、とてもつらそうですこと。わたしは大丈夫なのですけれど、やっぱり地面の上の方が安心できる気がいたしますわ」
 あまり動かさないように触れずにミディーセラは、アーリアの青ざめた顔を見て心配そうに言う。
「ごめんねぇミディーくん、楽しく飲んでいたはずなのに。私はここで飲んでいるから、食堂に戻っていいわよぉ~……」
 申し訳なさそうに言うと、アーリアはミディーセラに視線を向けた。
「大丈夫ですわ、わたしはアーリアさんの側にいますわ」
「存分に甘えさせてもらおうかしら、なぁんて」
 ミディーセラの言葉を聞いたアーリアは、口元を吊り上げると冗談っぽく言った。
 すると、ミディーセラはアーリアを膝に頭を乗せた。
「ふふ……いいでしょう。わたしはここにいますとも。いつかのいつか、遠い日にも。そして今はあなただけの隣に」
 窓に視線を向けると、ミディーセラは優しく言葉を紡ぎ、慈しむ様にアーリアの手を握り締めた。
「さっきまで気持ち悪かった揺れも、なんだか心地良く思えるような。
なんでかしらねぇ?」
 頬から伝わる体温と、流れる血の音を聞きながらアーリアは、手を握りしめ返した。

●デッキから眺める紅葉はーー……
「オリヴィアさん、お招き有難うございます!」
 と、元気よくリゲル=アークライトは、オリヴィアを見付けるとお礼の言葉を言った。
「あ、オリヴィアはお誘い有難う。良かったらオリヴィアも一緒にどうだ?」
 隣に居るポテト チップも礼を言うと、笑顔でオリヴィアに手を差し出した。
「よーし、楽しい事は好きだからねぇ。勿論!」
 断る理由は無い、楽しければその輪に入る位のオリヴィアは、笑顔で答えた。
「ポテトと共に3人で、今宵に乾杯しようか。俺達は酒は飲めませんが、すみません!」
 食堂から貰ってきた飲み物が入ったグラスを手に、リゲルは申し訳なさそうに謝った。
 3人はグラスをチーンと軽く当てて乾杯した。
「月見団子は、秋の実りに感謝し収穫物を月に捧げるという由来があるのだとか。このお団子も、収穫されたお米でできているのでしょう。そう考えると一層美味しく感じられますね。お酒のつまみにも合いますか?」
 と、リゲルは語り終えると、酒を飲んでいるオリヴィアに視線を向けた。
「月見団子はそんな由来があるのか……月が綺麗だから、月に見立てたお団子を食べるのかと思っていた。リゲルは物知りだな! 新米は炊いただけでも美味しいが、同じお米から作った酒に合うのか?」
 感嘆の声を上げるとポテトは、興味津々にオリヴィアをじーっと見つめた。
「米の酒は甘い、果実酒は甘酸っぱい……それぞれ相性があるとも言える」
 静かに、進む船は穏やかな波音を響かせ、少し肌寒い潮風が紅葉を揺らす。
 ゆっくりと時が進む中で、楽しく談笑しながら過ごすのであった。

「拙者の故郷にも紅葉狩りの文化はあったが、なるほど。潮の流れにたゆたう紅葉というのも乙なものでござるな」
 忍者の姿のカエルである河津 下呂左衛門は、米の酒が入った瓶から杯に移す。
 ふわり、と空から落ちてきた紅葉が杯の中を満たしている酒の上に浮かんだ。
 炙ったイカ、イカの塩漬け、日干しした魚の開きを肴にグイッと、杯に口を付けて飲み干す。
「月に叢雲、花に風。良い夜でござるが、我等が海洋にも影が迫っている様子。一息ついたら戦いに戻らねばな」
 束の間の休息を下呂左衛門は、静かに一人でゆっくりと楽しむのであった。
「オリヴィアさんにとって、イザベラ女王陛下ってどんな人?」
 と、秋宮・史之がオリヴィアに問う。
「こんばんはオリヴィアさん、ご招待ありがとう。俺は秋宮史之っていうんだ。自称イザベラ様親衛隊だよ。常々女王陛下の力になりたいと思って修行してる俺なんだけど、まだご本人とはあいさつを交わした程度なんだよね」
 史之が自己紹介を終えると、オリヴィアは納得した様子で頷いた。
「しかし、何故アタシに聞くんだい?」
「オリヴィアさんは俺より女王陛下と付き合い長そうだし、いろいろ知ってそうだなと思ってさ」
 オリヴィアの問いに、史之は真剣な眼差しで答えた。
「ちょっと、長くなるけど良いかな?」
「ええ、構いません」
 少し照れくさそうにオリヴィアが答えると、史之は嬉しそうに頷いた。
 オリヴィアがゆっくりと語り出すと、史之は少年の様に瞳を輝かせながら聞いた。

「もうすっかり一年経って……あー、秋かクソが」
 吐き捨てる様に言うと、アラン・アークライトはエールを呷る。
「んうっ、シュバルツ、そろそろキスくらい、してくださぃ……」
 酔って少しぼやける視界にアマリリスは、アランに抱き付いた。
「恋人の背中って安心しま……す……ん?」
 なんか、香りが、違うとアマリリスは首を傾げた。
「……は?」
 突然の出来事に振り向くと、そこにはアマリリスが抱き付いていた。
 アランは固まり、驚きと、自分のした事を思い出して茹でたタコよりも赤くなったアマリリス。
「き……きっ……きゃあああああ!? アランアークライト!? 異界の勇者殿がこんな所で酒とは……! って、違う! お、おねがい今のは、内緒で」
 アマリリスは悲鳴に近い叫び声を上げた。
「うぉぉおお!? うるせぇ!? 何がちげぇんだクソが!? 間違ったとしてもイキナリ抱き着く奴があるか!? 馬鹿野郎が……! 誰にも言える訳ねぇだろうが!」
 アランはアマリリスを引き剥がすと、彼女の頭を酔いが覚めるくらいのやや強めに叩いた。
「……痛ッ! 叩かないでよばか!!」
 頭を擦りながらアマリリスが声を上げた。
「ってかまだキスもしてねぇのかよ……お前らどんだけピュアなんだ殺すぞ」
「私の進展は兎も角、殺すなんて不正義よ! 曲りなりにも勇者であらせられる御方でしょうに! めっ! 次そんな事を仰ったら、チョップですからね」
 アランの言葉にムッとした表情で言い返し、チョップする動作をこれでもか! と言うくらいに見せた。

「たしかに船上で紅葉を鑑賞とはよく考えたものですね。絶景を眺めて「オダンゴ」を食べるのもオツなものです……ところでオツってなんでしょう?」
 と、団子を頬張りながらオーガスト・ステラ・シャーリーは疑問を口にする。
 喉に詰まった団子を押し流す為に、納豆ゴーヤジュースを飲み干すと顔をしかめた。
「見事なモンだねぇ紅葉ってーのは。それを見ながら飲む美味い酒と肴は格別さね。ってシャーリー……アンタなに飲んでんだい?」
 訝しげな表情でヨランダ・ゴールドバーグは、オーガストが飲んだグラスに視線を向けた。
「どうぞヨランダさんも飲んでみてください……って全部飲んじゃったのですか。もう一杯如何です? 納豆ゴーヤジュース」
 と、言ってオーガストはグラスを差し出す。
「随分とまぁゲテモノだね美味いのかいそりゃ? どれアタシも一口」
 差し出されたグラスを受け取り、ヨランダは一気に飲み干した。
「不味い! もう一杯!」
 ダンッと、グラスを置くとヨランダは声を上げた。
「って全部飲んじゃったのですか。もう一杯如何です?」
 一口と聞いていたので、いつのまにか飲み干されてしまったのでオーガストは、同じジュースが入っていたグラスを持って傾けた。
「……はいらないねぇ? ん? 何意外だったかい? ははは! まーたまにゃこんなノリも良いだろ?」
 と、ヨランダが楽しそうに笑い声を上げると、オーガストは沢山用意した飲み物を並べた。

「ったく、集団行動ができないわよね」
 コルヌ・イーラが不服げに言う。
『おそらく他の同胞も同じことを思っているだろうな?』
 山羊の角を模した異世界の儀式呪具であるコルヌは淡々と答える。
「なかなか悪くない品ぞろえね?」
『気に入ったものがあったようで何よりだな』
 食堂を見回り満足したイーラに、コルヌは嬉しそうに言った。
「さて、次は何をもらっておこうかしらね」
 行き場を失ったイーラは、廊下をうろうろと歩き回る。
『ゆっくりと景色を楽しむという手もあるが?』
 と、コルヌが提案する。
「そういう高尚なのは別の同胞に任せておけばいいでしょうよ」
 イーラは首を横に振った。
『ふむ、ならばせめて月見団子は食べておくべきだろう』
「そうね。せめて、紅葉狩りらしい事はしておきましょう」
 イーラはデッキに置いてある団子を口に放り込んだ。

「こうやって、船上で紅葉狩りと月見する、っていうのも、いいものだね」
 と、楽しそうに伊吹 樹理は、紅葉している山を見据えた。
「おっほほー! やっぱ船って豪華なもんねー! 見て見て樹理ちゃん。月に雲がかかって、綺麗だねぇー」
 燕黒 姫喬が驚きの声を上げ、周囲を見回していると夜闇を照す月を指した。
「聞いたよ。姫喬ちゃん、誕生日だったんだね。おめでとう」
「ありがとう!」
 二人は乾杯すると、それぞれの飲み物を口にした。
「年齢聞くと、思ったより歳下だったんだね。ちょっとびっくり、大人っぽかったから、つい。ね」
「いっひひ、大人っぽいなんて嬉しいなぁ。樹理ちゃんなんてすっごい可愛いから羨ましいけど」
 樹理の言葉に姫喬は嬉しそうに答えると、じっと彼女の顔を見つめた。
「姫喬ちゃんがお酒を飲めるのは、まだまだだけど、大人になったら、一緒にお酒楽しもうね」
「嬉しいなぁ。その時はいろいろ教えてね。お酒のこと。今は樹里ちゃんのこと教えて。ねね、元の世界って、どーだったの?」
 樹理が嬉しそうに言うと、姫喬は興味津々に答えると別の話をし始めた。
「もとの世界は騒がしくて、今日みたいに月が綺麗に見えるのが珍しい世界だったかな? 私も、海の中の話とか、聞いてみたいな」
 静かな海の上で、樹理と姫喬の楽しげな話声が響いた。

「そういやこの中で海洋出身は俺だけか……なら、とっておきの紅葉の楽しみ方を教えてやろうかね。――ほら、見てみな」
 十夜 縁が顎で山と海を示す、と。
「海の波間に映る紅葉……こういう紅葉狩りもまた、いいねえ。水面の紅葉がゆらゆら揺れて……とても素敵だ」
 鳶島 津々流がその光景を見て、感嘆の声を上げた。
「風流な催しを思いつくもんじゃ……月はよく見るが、紅葉もとは……」
 ヴェッラ・シルネスタ・ルネライトは、グラスの中のお酒に映る月を思い出しながら呟いた。
「成程、水面の紅葉か……確かに、貴様(十夜)にしてはまともな情報ではないか。この水面に映る虚像の紅葉を肴に、酒を嗜むのも悪くは――む、なんだこの妙な臭いのする飲物は? なに、我に飲めと? ……よかろう、未知の味もまた、たな情報である事に変わりは――ゴホッ!?」
 縁に渡された納豆ジュースを飲んだリュグナーは、独特な臭いと粘りけに驚いて咳き込んでしまった。
「これも立派な情報収集だろ?」
 と、縁は自信満々に言う。
「ええと、ヴェッラさんに、リュグナーさん。初めてお会いするねえ」
 縁に誘われて参加した津々流は、ヴェッラとリュグナーに挨拶をしようと声をかける前に、縁とヴェッラの企みに気付いた。
「ふふ……わらわの酌は呑めんと申すかの?」
 と、言って紫蘇エキスを手ににじりよるヴェッラ。
「……成程、成程……これは、リュグナーさんに納豆ジュースを飲ませた人が勝ちと、そういう遊びなんだねえ?」
 別の意味で察した津々流は、リュグナーの口に納豆ジュースをーー振り向いた時に突っ込む!
「これを飲めば、お前さんもちっとは健康的な顔色になるだろうさ」
「……待て、貴様ら……何をするつもりだ?」
 リュグナーの悲鳴が響いた。
 静な海は、月に照されてまるで二つの世界があるかのように、山を映す。
 冬はもうすぐやってくる。
 脅威もまた、この世界の何処かで潜んでいるだろう。
 それを忘れ、イレギュラーズ達は一時の安息を楽しんだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

先ずは、遅刻してしまい申し訳ありませんでした。
そして、PCの皆様は参加していただき、ありがとうございました。
FLでも励みのお言葉や、心配なされている声もあり、本当に申し訳なくて顔向けが出来ません。
ですが、なるべくは私の手で書き上げたいので、やり通しましたので少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

本当にありがとうございます!

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