シナリオ詳細
<Autumn Festa>もみじ狩り~彩りの秋
オープニング
●
深いオレンジ色。まあるい丸い顔。おデコには紅葉のあか。
ころころと転がって。山を駆けていく。
空は水を含んだ薄い青から、高く透き通ったアトランティコ・ブルーへと変じていた。
バルツァーレク領南部。豊かな海と山に挟まれた半島の根本。豊かとは言えないまでも牧歌的な風が吹く地域がある。その中の一つを森と湖畔の村レリア、そしてルーシェンの森と呼ぶ。
妖精たちが住まう森は、月が美しい輝きを放つ頃に秋の装いへと変わる。
それは、年に一度小さな山の頂に舞い降りる、まあるい妖精がマジョリカ・オレンジを引き連れてやってくるから。
「きたよ」
「また、きた」
「おれんじ、ぷるぷる!」
ふわふわと綿毛の様に空から降ってくる丸い妖精を、ルーシェンの森の妖精たちが祝福する。
彼らは森に実りを齎す秋の妖精「プルプル」だ。
プルプルが地上に生えた木々の葉に触れた瞬間、先からじんわりと広がっていく紅の波。
次々に触れては染めて。地面に落ちた後はころころと斜面を転がっていく。
紅葉に染まった木々は、葡萄に似た果物を実らせる。
一粒取れば芳醇な香りが満ちて。舌に広がる甘酸っぱい果肉に頬が綻ぶだろう。
皮ごと食べられる果実は動物たちを引き寄せ、幸せに満ちたメルヒェンな空間が広がっていくのだ。
そして、転がっているまあるい妖精を手に取る事ができれば、小さな幸せが訪れると云われ、レリアの人々はこの時期になるとルーシェンの森にお邪魔してもみじ狩りを楽しんでいるのだった。
●
「アルエットも行きたいの!」
ふわふわと金の髪を揺らし笑顔で振り返った『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)に『Vanity』ラビ(p3n000027)はこくりと頷いた。
「楽しそう、です」
わしわしと手をにぎにぎするラビは捕獲のポーズをする。
秋の妖精「プルプル」を捕まえる事ができれば、どんな情報が手に入るのだろうかと、ラビの瞳に喜が浮かんだ。
「お昼ご飯は何を持っていこうかな? サンドイッチにクッキーでしょ、チョコは溶けちゃうかな?」
「大丈夫、かと」
夏の気配は既に無く、爽やかな秋の風が頬を攫って行くだろう。
寒がりならば一枚羽織ものを持っていった方がいいかもしれない。
――――
――
エバー・グリーンの森が、少しずつ橙色や黄色に染まっていく。
妖精たちが織りなすメルヒェンな彩りの森へ。軽やかな足取りで駆けていく――
- <Autumn Festa>もみじ狩り~彩りの秋完了
- GM名もみじ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年10月16日 21時35分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
靴が落ち葉を踏み、髪を攫う風は爽やかな秋の温度。
アトランティコ・ブルーの空は高く晴れやかで――
手を伸ばし、風に舞う紅葉を追う珠緒は隣に歩く蛍の声に耳を傾けた。
それは郷愁の思い。
「今のボクにとって、幸せって何だろう。日本に帰ること?」
それとも無辜なる混沌で居場所を得ることだろうか。
ほんやりと思い耽る蛍に珠緒は言葉を紡ぐ。
「幸せは、心持ちひとつ。空たる世において、己が想いこそが光明を見出させます」
その瞳に宿した強い意思はこの世界に来た時からまばゆいばかりに輝いている。
それでも迷う事があるのならと珠緒は子供の頃からのおまじないを蛍に囁いた。
「心は消え、魂は静まり、全ては此処にあり、全てを越えたものなり」
珠緒にとってそれは生きていく為に縋った一握りの願いだったのだろう。
蛍には全てを理解することは出来なかったけれど、きっと大切な言葉なのだと、そっと心に留めた。
この一時。穏やかな時間は確かに幸せなのだから。
色づく紅葉を翡翠の瞳で見上げた十夜。風光明媚な場所に旨い酒と来れば――思惟しながら前を行くマナやリヴィエラの姿を追う。
「妖精探しなんて初めて! ふふ、わくわくするわね!」
「張り切ってるなぁ。下ばっかり見て、木にぶつからねぇようにするんだぜ?」
あまり遠くに行かないように皆を見守る十夜は、ゆったりと煙管を吹かせて煙を追った。
翡翠の瞳が捉えた先――秋告げの妖精がひらりひらりと舞い降りる。
「――お。マナ、こっち来てみろ」
中々見つからずに肩を落としていたマナは十夜の声に振り返った。
駆けてくる少女の身体を軽々と抱き上げて。
舞い降りる妖精がマナの胸にゆっくりと吸い込まれていく。
「わぁ、貴方の角は枝なのね! とっても素敵。素敵だわ!」
リヴィエラの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「へえ、リヴィエラさんの角は水晶で出来ているんだねえ!」
津々流も彼女の角をじっくりみつめていた。角を持つ者同士、惹かれ合う部分があるのだろう。
マナの翼、十夜の海の香り。沢山の人が居るのに、皆、それぞれが違う形を持つ。
リヴィエラは目を輝かせ、津々流に笑いかけた。
「そう、僕の角は枝……樹で出来てるのさ」
召喚されてから上手く反応できなくなったけれど――
朗らかな空気が二人を包み。
「ほら、見て! 見つけたわ!」
真っ赤な紅葉の下に転がる妖精を拾い上げ、優しく頬をくっつけるリヴィエラ。
楽しいという気持ちに反応して黄色に染まる彼女の角と笑顔を見つめていると、津々流の角にも花が咲く。
「おや、花が……これは、そうか」
嬉しさの、楽しさの、笑顔の連鎖――
「わぁ……可愛いですね……」
掬い上げた妖精をマナは十夜へと差し出した。
小さな幸運をお裾分け――
一瞬目を瞠った翡翠の瞳は、いつもの笑みで少女の頭を撫でる。
遠くに聞こえる二人の声を聞きながら。
「……幸せなんて、こんなおっさんには勿体ねぇからよ」
その分を次に――恩送りは巡りゆく。
秋告げの妖精はひらひらと空を舞い。
一瞬、緑葉の影に見えた気がしてリゲルは青い瞳を上げた。
「どうした? 見つけたか?」
「いや、もう少し斜面の方へ行ってみようか」
転がっているならば傾斜のある場所の近くに居るかもしれない。
リゲルはポテトの手を取り、緩やかな坂道を登っていく。
「踏まないように気を付けないとな」
森の中では小さい妖精などすぐ見落としてしまうだろうから。
返事をする様に握られたポテトの指に力が入った。
緑葉が少し染まった木の下に橙色を見つけてリゲルはポテトを呼ぶ。
「あ、リゲルぷるぷる見つけたのか」
拾ってごらんと微笑むリゲルに首を振るポテト。
「駄目だぞ。リゲルが見つけたんだから、ぷるぷるはリゲルが拾わないと」
小さな幸せは、どうか相手に訪れてほしいと。お互いが想い合う。
ぷくっと膨らんだポテトの頬が可愛くて。リゲルは微笑み彼女の手を引いた。
「じゃあ、ポテトが右手。俺が左手だ」
二人で一緒に幸せになれる方法。
掬い上げたプルプルに栗入りクッキーを差し出しせば、満面の笑みを二人に向けるのだった
「幸せ……幸運……!」
桃色の瞳を輝かせ手を広げた九鬼は秋色に染まる森を軽やかに歩く。
「あんまり張り切り過ぎてドジるなよー」
危なっかしい少女の背を見つめて、やれやれと苦笑するクロバ。
「――さて、オレも仕事の時間だ」
幸運を以てオレの借金問題を解消する――!
狩人の如き眼光。赤黒の瞳が秋染まる山の中に光る。冷静とは。
「果報は寝て待てとは言いますが、幸運は狩れという事ですね!」
待つだけでは手に入らないものがある。そう、積極的に狩っていく勇気。
「私の幸せさん……どこですか……!」
虫網を振り回す九鬼は赤く染まる紅葉をつついて落ちてこないかと首を傾げる。
クロバは光翼を広げ木々の間をすり抜けて空へ。
籠を手にした九鬼は山を転がる微細な音を聞いた。
「居る……!」
二人は視線を交わし頷く。
「これぞ!!! 紅葉狩りだァアアアアアア!!!」
影刃が如く――死神の飛翔。クロバの突撃に舞い上がった落ち葉。
衝撃でひっくり返る九鬼。
土埃が晴れた森に二人の笑い声が響く。
握りしめられた二つの橙色には、きっと、幸せが訪れる色彩が乗って――
「まあるいオレンジ、おでこに紅葉~♪」
「プルプルは今日も~幸せ運ぶよ♪」
即興の歌にくすくすと笑い合って、ルークとポーは森の中を散策していた。
繋いだ手を撫でる風は少しだけ冷たくて。代りに相手の熱が心地よい。
小さな幸せならば紅葉の山を共に征くこの瞬間こそ、そうなのだろうとルークは目を細める。
「あっ! あれかな!?」
転がっていく妖精を指さして競争だと笑う彼女を追いかけて。
先を行くポーの視線は妖精しか見えていないのだろう。
その手前の木の根が曲がっている事に気づいていない。このままでは斜面で転けて大惨事だ。
ルークは思いっきり踏み込み加速する。
「ポー、危ないッ!!」
「きゃあっ!」
転倒の傾度に目を瞑ったポーは次の衝撃が来ない事に顔を上げた。
「だっ大丈夫? 怪我はないかな……?」
「ありがとう、ルーク……!」
大丈夫だと頷く二人の間にはプルプル。
「ポーの勝ちだね」
少女は一枚の紅葉を拾い上げ少年のおでこに乗せる。
「そうだね。特大のプルプル(幸せ)を捕まえた、私の勝ちだね♪」
大好きが溢れる森の中。秋色はゆっくりと広がって行く。
「そろそろ休憩にしましょうか」
「はい」
エリーナはラビに問うて。
いつのかにかお茶会好きな妖精がお菓子と紅茶を用意してくれている。
ほっこりしている所にネリーがエリーナの服を引っ張った。
促される様に上を見上げれば、ひらひらと落ちてくるプルプルの姿。
「ああ……可愛い……」
噂通りのオレンジ色のまんまる妖精に頬を染めて笑うエリーナ。
「ほらほらラビさん可愛いですよ! 」
「はい。可愛いです」
ふんわりと優しい時間。小さな幸せは、きっとこの一時なのだろう。
「捕まえれば正にもみじ狩り……って所か?」
よぉしと腕を振り上げたヨルムンガンドは隣のラビに笑いかける。
「えへへ、ラビも見てみたい様だし……捕まえられるかやってみようか!」
「はい。楽しみ、です」
どんな幸せが訪れるだろうかと思索して、美味しい果物や食べ物が脳裏によぎる。
同時によだれも滴るようで。
動物達に聞いて、転がる妖精を捕まえればラビと共に眺めてみる。
「プルプルだな……! 他はどんな事ができるのか……!」
「程よい弾力。美味しそう、です」
「た、食べるのか?」
ぶんぶんと首を振るヨルムンガンドは「お腹壊すぞ?」と心配そうに見つめる。
「冗談、です」
照れた様に視線を逸すラビにラピスラズリの竜は微笑んで――
「プルプルという妖精を捕まえると、小さな幸せが訪れるらしいのじゃ!」
笑顔の口元は小さく八重歯を覗かせる。華鈴は紅葉の色を写した赤い瞳で結乃を見つめた。
ひんやりと心地よい空気を胸に吸い込んで結乃は微笑む。
「じゃあ探してみようか。近くにいたらいいな」
秋の妖精を探して二人は空を見上げながら森に入っていく。
青い空に橙色の妖精とくれば、すぐに見つかりそうなものだが。
キョロキョロと上空に視線を遣る華鈴は「うーむ」と唸った。
結乃は空ばかりを見つめる華鈴のすぐ足元に落ちている妖精に気づき、彼女を呼び止める。
「うん? どうしたのじゃ?」
足元にしゃがみ込んだ結乃を視線で追えば、コロンと転がるプルプルの姿。
「このこ、そう?」
「……おぉ、気付かなかったのじゃ!」
空ばかり見つめる自分だけでは気づかなかった妖精も結乃が居れば見つけることが出来た。
「おねーちゃん、これで幸せになる?」
「そうじゃな……」
この場所。二人で共有できる時間。
楽しさの詰まったかけがえの無い思い出は、きっと幸せに違いないのだ。
「探すといっても、あんまり必死になってると逃げられちゃうから」
「散策ついでに探せばいいさ、見つけられたらラッキー位の感覚でな」
紅葉染まる秋の森の中、ルーキスとルナールは妖精を探す。
静かな森の中であれば二人だけの時間に邪魔も入るまい。
秋の空気は好きかと彼女が問えば、冷たくなる風が気持ちいいと答える金赤の瞳。
歩き疲れ、調度良い木の根に腰を下ろしたルーキスは青年を見つめ。
「横座る?」
「うむ、隣がいい」
差し出された水筒に口を付けて喉を潤せば、悪戯な笑みで「間接キス」と囁くルーキスに、照れた笑いを見せる青年。
「あ、おにーさん、なんか乗ってる」
ルナールの頭に乗る、幸運の印を指さして。
「あー、まさか頭上とは……」
「いやあ偶然って凄いね」
くすくすと笑い合って、ルナールとルーキスは幸せな一時を共に過ごす。
小さな幸運はきっと、いつでも二人に降り注いでいるのだ。
銀の髪を紐で束ね、普段より幾分ラフな格好で目を輝かせるのはレイチェルだ。
小さな幸せを届けたい人が居る。
青き楔に穿たれ冷え切ったレイチェルの心を溶かし、手を差し伸べてくれた大切な人に。
彼を想うだけで胸に暖かさが生まれるから。
そう、頑張れる。
「……っだぁ! つ、疲れた」
肩で息をするレイチェルは悲しいかなインドア派。
野山を駆け巡る体力は一刻と持ちはしない。
体力を使い果たした彼女は大の字で落ち葉に寝転がる。
紅葉の隙間から見える空に手を伸ばせば。
その手のひらに、ひらひらと舞い降りるは、秋告げの妖精――
「えっと、見た目は……」
レイチェルが鷲掴みにしたプルプルを見て、焔は噂通りの特徴だと頷いた。
振り向けば焔の足元にも妖精が転がっている。
逃げる様子は無い。拾い上げて一緒に遊ぼうと紡げば、応えるようにひらひらと舞う。
「お礼にプルプルちゃん達にも楽しんで貰いたいもん!」
言葉は通じないのかもしれない。
けれど、きっと。思いは伝わるはずだから。
妖精を追いかけて、焔は森の中を駆けていく。
着いて行った先には、視界いっぱいの空と。少しずつ染まっていく紅葉の色合い。
「もしかして、これを見せに?」
答える声は無いけれど。小さな幸せはきっと訪れたのだろう。
「……じゃなかった。ぷるぷるかわいい」
そう言って可愛いを連呼しているヴェノムの瞳は野性味に溢れていた。
赤と黒。双色の瞳は獰猛なハンター。
みかんみたいな見た目ということは、匂いは柑橘系だろうか。
遠くの方でくしゅんとくしゃみの音がする。カッってヴェノムの目が開く。
この音。間違いない。妖精のくしゃみ。
続いて落ち葉を踏みしめて転がってくる音。ヴェノムの耳はその小さな音を逃さない。
「み・い・つ・け・た♪」
斜め45度に傾いた顔。三日月の唇が紡ぐ。秋の妖精はプルプルを通り越してガタガタしていた。
それでも、優しく撫で回されれば妖精はほわほわと嬉しそうである。
ひとしきり妖精を愛でた後、ヴェノムは別れを告げる。
季節の妖精を留めるのは憚られるから。
「また来年あいましょーね」
次の約束をして、空へ返したのだ。
「よ、良くわからないけど、そんな妖精がいるんだね」
ニミッツは恐る恐る、山に足を踏み入れる。
カサカサと風が葉を揺らす音。自身が落ち葉を踏む音に少し驚いて。
「プルプル……変な名前だなぁ」
しかして、少しでも幸せになれるのなら探してみるのも一興。
不安があるとすれば。
「怒られるか心配だなぁ……」
とぼとぼと歩くニミッツの頭にひらりと秋の妖精が舞い降りた。
秋染まる紅葉ひとひら。
アマリリスが広げたお弁当に落ちてくる葉を捕まえて、シュバルツは目を細めた。
「よく頑張ったな。中々に美味いぞ」
彼女の指には何本もの切り傷が見える。それだけこの時間の為に頑張ってくれた証拠。
寝る間も惜しんで作り上げたであろう料理はどれも美味しくて。
食事と共に飲んでいた酒にアマリリスの頬が朱を帯びていく。
「しゅば……えひひ」
もっとと撓垂れ掛かる彼女の頭を撫でながら、か細く紡がれる言葉に耳を傾ける青年。
「旅人の……貴方が、貴方の世界に私を攫ってくれたら」
その背に負った運命の柵は泣きたくなる程の重圧で彼女を苦しめて居るのだろう。
たとえそれが己が決めた事なのだとしても。
誰も殺したくないと云う唇。震える指先はシュバルツに優しく包まれた。
「……絶対なんて言えねぇけど。お前の手がこれ以上汚れないよう、俺も頑張るさ」
彼女を縛る鎖は強固なれど、いつか必ず断ち切ってみせると青年は誓いを立てる。
アマリリスは青年を見上げ夢を見る。
己が欲望を。諦めていた願望を。
世界が分とうとも。
貴方のそばにいたい――
●
籠いっぱいにプルベリーを摘んだマルクは拓けた場所で火を起こしていた。
持ってきた鍋にプルベリーをバラバラと入れて加熱する。
水分がじんわりと染み出して来た所で砂糖とレモン汁。
煮詰めてとろみが出てきた所で、冷めないうちに瓶へと詰め込むのだ。
「出来た……! これで、皆へのお土産にできるかな」
喜ぶ顔が見られるなら重たい瓶も羽のよう。
プルベリー酒は飲んだことがあるけれど、とアーリアは微笑んだ。
「実はこんな感じなのねぇ?」
一房もいで、皮ごと口の中へ。
「……こ、これは!」
皮を歯で押し破れば甘酸っぱい果汁が口の中に広がり、ぷるんとした果肉は程よい弾力と瑞々しさを誇っているのだ。
もう一粒口に食んだ所で、ピンク頭がフラフラと歩いてくるのが見える。
「こんにちは」
「ラビちゃんねぇ、アーリアよぉ」
プルベリーを差し出して微笑む彼女に、ぺこりとお辞儀をして一粒頂くラビ。
「ありがとうです」
「ふふ、良いのよぉ。上の方のプルベリーが気になるなら言ってちょうだいねぇ?」
皆で囲む食事は、きっともっと美味しいのだから。
「おや、……良かったら、一緒に食べる?」
鍋を抱えたマルクがやってきて。ジャムを差し出す。
「まぁ! このジャム美味しいわぁ!」
溢れる笑顔。幸せのかけら。
アレクシアはラビを探して声を掛けた。
「お久しぶり!」
「あ、アレクシアさん」
かつて共に戦った戦友に感謝を伝えたくて。怖さを押して頑張った事。
「それは、貴女も同じ、です」
仲間を信じ勇気と共に勝利したのだから。お互いに感謝を――
「どれが美味しいものとかって外見からわかるのかな? ラビ君は何か知ってる?」
「葡萄だと白いブルームが着いたものが新鮮で甘い、です」
一粒取って確かめてみる。甘酸っぱい果肉が口に広がってアレクシアは笑みを零した。
「あ、この辺りのは美味しいよ! ラビ君にもわけてあげよう!」
「本当です。おいしい……」
頬を染めて微笑むラビは、少しずつ表情が豊かになってきている様だ。
その変化はアレクシア達が齎したものなのだろう。
ゲオルグはふわふわ羊のジークを呼び出して秋の森を散策する。
赤く染まる木々の葉に隠れるように実るプルベリーを見つけて一粒取った。
それをジークの口に持っていけば、ぱくりと喰んで。
ぴょんぴょんと飛び回って、せがむように口を開けるジークに、微笑んだゲオルグは次々とプルベリーを投げ入れてやる。
自分も一粒頬張れば。秋の恵みが口に蕩けるようで。
冒険者にとって穏やかな時間は短いからこそ。
この一時は大切にしたいと想うのだ。
エンヴィとクラリーチェは森の中に実るプルベリーを見上げた。
「初めて食べるけど、美味しそうね……ええと」
手を伸ばし白いブルームが掛かった実を一粒もぐ。
葡萄や李等はこの白い果粉が実を守り、新鮮で甘い証拠になる。
「これが美味しそう…かしら?」
クラリーチェも彼女に習い違う房から一粒取って、口に食んだ。
溢れる果汁は程よい甘酸っぱさでいくつでもお腹に収納されていきそうだ。
エンヴィは隣の少女が食べる房を見遣り。
「……クラリーチェさんのプルベリー、一粒貰って良いかしら?」
一粒、交換にと差し出してみれば、小首を傾げる彼女が居て。
「あの……」
直接食べさせてくれるのかという問いに、今更手を下げるのも憚られるだろうか。
「えっと……」
エンヴィは、少し照れながらクラリーチェの唇にプルベリーを押し当てる。
染まる頬にクラリーチェは、もしかして勘違いをしたのかと思索するも。
お返しにと、エンヴィの口へプルベリーを運んだ。
お互いの頬が少しだけ色づいて、少しだけ甘酸っぱい時間が過ぎる――
紅葉染まる、彩りの秋は爽やかな風と小さな幸せを運んで行くのだ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
秋の色彩を少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
称号獲得
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145):『影刃赫灼』
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394):『蒼の楔』
GMコメント
もみじです。さあ、狩りの時間です。
●目的
秋色に染まる森を楽しむ
●ロケーション
紅葉に染まっていくルーシェンの森。
妖精たちが住まう森の中。ピクニックには最適です。
秋の妖精「プルプル」が舞い降りて来たり、転がったりしています。
メルヒェン、メルヒェン!
●出来る事
適当に英字を振っておきました。字数節約にご活用下さい。
【A】秋の妖精「プルプル」を探す
もみじ狩り。
オレンジ色の丸い顔。おでこに赤い紅葉が乗っています。
捕まえることが出来たら小さな幸せが訪れると云われています。
【B】ピクニック
お弁当を持ってのんびり。
高い空には雲ひとつ無く、紅葉と青空を眺めることが出来ます。
【C】プルベリー狩り
プルプルが齎す秋の果実。葡萄にそっくりです。
甘酸っぱくて皮ごと食べることが出来ます。種はありません。
【D】
その他
紅葉に染まる山や森で出来そうな事ができます。
●プレイング書式例
強制ではありませんが、リプレイ執筆がスムーズになって助かりますのでご協力お願いします。
一行目:出来る事から【A】~【D】を記載。
二行目:同行PCやNPCの指定(フルネームとIDを記載)。グループタグも使用頂けます。
三行目から:自由
例:
【A】
【ハンター】
プルプルを追いかけて掴まえます
●NPC
絡まれた分程度しか描写されません。
呼ばれれば何処にでも居ます。
・『Vanity』ラビ(p3n000027)
ぼーっと歩いていたり、プルベリーをもいだりしています。
・『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
元気です。ピクニックではしゃいでいたり、プルプルを探していたりします。
●諸注意
描写量は控えます。
行動は絞ったほうが扱いはよくなるかと思います。
未成年の飲酒喫煙は出来ません。
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