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オープニング
●かつて『本の家』と呼ばれた場所
昔々、幻想のとある場所に、本を愛するおじい様がおりました。
その人は、大衆小説から専門的な学術書、時にはちょっと怪しいオカルト本さえも集めて、大事にしていました。
しかし、時に苦労して集めた本でさえも、知人、友人、息子、嫁、孫……時には見知らぬ人にさえも、『この本は君のところに行きたがっているようだ』と言ってあっさり渡してしまうことが多かったのです。
『私よりも相応しい人物の下にある方が、本にとっても幸せだろう』というのが、彼の日頃の口癖でした。
しかしある時、彼の治める領地の人々が、次々に流行り病に倒れてしまったのです。
そこで領主のおじい様は、腕利きの医者を呼ぶために、そして薬を手に入れるために、彼は家財を、大切な財産であった本でさえもすべて売り払いました。
その甲斐あってか、病はやがて収まり、多くの人々が一命を取り留めました。
ですが皮肉なことに、本を全て失った失意からか、それとも年齢からか、おじい様は程なくして亡くなってしまいました。
それから長い長い年月が流れ。誰も住まず、何も無くなってしまった館の風はすっかり止まり、あとは埃が降り積もるばかりでした。
それでもある青年は、『管理者募集』と書かれた看板があったその場所の、空っぽになった本棚を見てこう言いました。
『なんだ、何もない場所ならば、これから何でも入れることができるじゃないか』
そう思い立った彼が、現在の管理人にコンタクトを取ったのは、今からほんの数年前のことでした。
『俺は雨風凌げりゃ充分なんだがナ』
皮肉屋の隣人もそうボヤきつつ、けっして反対はしませんでした。
●ようこそ、自由図書館へ
貴方がドアを開けたなら、カラン、と来客を告げるベルが鳴る。その音の方、つまりこの建物の出入り口に青年が顔を向けた。
「ようこそ、『自由図書館』へ」
赤い瞳の青年が、貴方にそう微笑みかけるだ。その胸元についた名札には『自由図書館司書 大地』とも。
イレギュラーズであればその顔と名前に見覚えのある者も居るだろう。どちらかといえば、『赤羽』の方に親しみを覚える人物もいるかもしれない。
当然、今このドアを開けた人物は彼『等』を全く知らないことだってあり得る。
それでも、彼はこう言葉を続けるのだ。
「今日は、何の本を探している?」
ここは自由図書館。種族も身分も関係なく、誰もが『自由』に本を手に取れる場所。
まだまだ空きは多いけれど、数多くの本が並ぶ場所に、そっと貴方を誘った。
- 貴方におすすめの一冊を完了
- NM名ななななな
- 種別 カジュアル
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月17日 15時30分
- 章数1章
- 総採用数45人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
「どうも、赤羽・大地さん」
「しーちゃん、知ってる人?」
「そういうわけじゃないけど、結構活躍は耳にしてるから」
「はは、じゃあ『俺達』の事情も今更説明しなくてもいいかな。とにかくようこそ、自由図書館へ」
「歓迎するゼ、お二人さン」
ここにある肉体は3つ分、されど挨拶を交わしたのは4人。奇妙な状況ではあるが、イレギュラーズであればさして不思議なことでもないだろう。挨拶もそこそこに、まずは史之のリクエストを。
「剣術の指南書とか置いてるかな。他の流派の事も知りたくて」
「なら、こっちのコーナーかな。彼の書は初心者から師範代まで、幅広い層に愛されていると聞くよ」
大地が見せたのは、マスター・ミヤモト著の『武芸百般シリーズ』一式。氏の力強い筆使いで彩られた表紙とは裏腹に、中身は事細かく心得が示されていて、女性や子供にも易しく門戸が開かれているのだが。
「ん、こっちは……かなり手練じゃないと難しい技だね……」
「ああ、ミヤモト氏は『武の道は誰にでも広く開かれている。けれど、その山を登り詰めるなら相応の覚悟が必要だ』と、ある雑誌で答えててね。初級者の教本は読みやすくわかりやすいけど、上級者向けになると急に鬼のような難度を要求してくるんだ」
俺にはとても出来そうにないけど、史之なら行けるんじゃないかな、と司書は世辞でもなく微笑んだ。
「司書さん。僕にも何か、お気に入りの一冊を」
「俺のお気に入りか。色々あるけれど……そうだな、お子さんや学生にも人気があって、最近俺の知り合いが借りたのを。絵図が分かりやすくて綺麗なんだ」
そう言って大地が手にした本のタイトル、装丁、ラベルの全てに、睦月は見覚えがあった。『混沌生物図鑑』。
「あ、それ、以前響さんに見せていただきました」
「えっ、きみも羽切と知り合いだったのか?」
思わぬ共通の知り合いに、彼等は顔を見合わせた。ただ一人『羽切響』を知らぬ史之が、きょとんと首を傾げた。
「カンちゃん、響さんって?」
「えっと、前に、僕がローレットで見かけた人。森に欲しい物があったみたいだから、僕達がそれを取る手伝いをしたんだよ」
「へぇ、何を取りに行ったの?」
「そのうち教えるよ」
人差し指をしーっと立てて、片目を閉じる睦月。答えはきっと、もうすぐ分かる。
「あの女、お前に馴れ馴れしく無かったカ?」
「馴れ馴れしいというより、誰にでも明るく接していたと思います。僕も『むつきん』って言われました」
「やっぱりかあの女ァ!」
キーッと頭を掻き毟る赤羽。その様子がなんだかおかしくて、思わず史之も、フフッと笑いを零した。
「ところでその図鑑、響さんが『みっひーから借りた』と言っていましたが」
「ああ、羽切は昔から俺をそう呼ぶんだよ。俺、本当の苗字は『三船』っていうんだけど……」
「……本当に大変な経歴の持ち主なんだね、大地さん」
本と小さなきっかけで、話はまだまだ広がりそうだ。
成否
成功
第1章 第2節
『医学』のコーナーでホーに開いてみせたのは、エーミール医師著の『赤子から成人に至る過程』。タイトルに偽りなく、胎児が母体で形を得、幼児として育ち、やがて成人になるまで、肉体的に如何なる発達を遂げるかがが事細かく記されている。
「一見とても文章が長くて、初見の人は引いちゃうと思うんですけど、よく読むと無駄な記述が何一つ無くって。治療とかならまた別のが良いですけど、人間の生育過程について知るなら、これが一番かと」
ふむ、と小さく頷きながら内容を凝視するホー。ぺらり、と頁を捲ったその先で、ある挿絵を指さした。
「大地殿、一つ質問よろしいでしょうか」
「お、俺にわかることなら」
ホーが見ているのは、子宮の中で眠る赤子を描いた図。その子に繋がる、細い管の。
「これは何と言う部位ですか」
「あ……へその緒、っすね。赤ちゃん、生まれないことには口からご飯いけないじゃないですか。その間、ここからお母さんから栄養を貰ってるっていうか」
「大地殿には見受けられませんが?」
「そりゃ俺がオギャーって言ったん、二十年以上前ですし……」
「へその緒は退化して失せるのですか」
「失せるっていうか、生まれた時に取っちゃう的な……」
「取ったものは何処に?」
「えっと……大事に保管してるお母さんが多いかなって思います……」
「大地殿にもヘソがあるのですか」
「そりゃ俺も人間ですんで……えっ?」
ホーの瞳の奥底を、大地には見通せない。
成否
成功
第1章 第3節
「蠢物……? 月狂妙……?」
耳馴染みのない言葉に困惑しながらも、夜妖のようなものかと解釈して、それらしいオカルト雑誌を幾つか持ってくる司書。
それ全てに目を通す壱和だったが、緩く首を振る。どうやら今司書が見せたのものは、彼(?)の求めているものと少々違ったらしい。
うーん、と悩む大地の足元に、この自由図書館の更なる住人がにゃーんと擦り寄った。ああウルタール、と呼び掛け抱き抱えられた猫の身体には、爬虫類のよう鱗が点々と。尾も2本ついている。
「そいつは何ダイ?」
「ああ、これはキャトラトニーと言ってね。魔物の幼体だったらしいんだけど、俺達が充分にご飯をあげたから……もう、普通の猫と大差ないよ」
「ふ厶、ある意味オレと同族なのかナ。名前の由来は?」
「俺が昔読んだ本に、猫がたくさん住んでいる街が出て来て。確かその街の名前がウルタール、って……」
壱和に説明しているうちに何かピンと来たらしく、大地は慌ただしくどこかの書架へ駆けていく。戻った時には『夢幻神話』と題された本を手にしていた。
「それは?」
「ある富豪の家にあった原本を訳したものなんだけど、原作者は不明。ある人物が夢の国を旅した時のお話が載ってるんだけど」
そこにも丁度、猫が人を導いたり、守ったりする話が載ってるんだと、司書が開いた頁を壱和が覗き込む。
今日初めての感嘆が彼の口から零れるのは、そこから間もなくの事だった。
成否
成功
第1章 第4節
ベルナルドが案内され辿り着いたのは、自由図書館、720番の棚。幾つも司書が引き抜いた背表紙の中で、一際彼の興味を引いた本のタイトルは、『あなただけの虹を作ろう!』だった。
「ミス・アーデルハイドが気になるのか? 俺もこの人の色遣いが大好きでさ。自分用にこれ、買っちゃったんだ」
そう言って大地が見せた画集には、目に見える色彩だけに囚われない、自由でのびのびとした彼女の世界、ファンが表すに曰く、『ハイジの見た景色』が広がっていた。
それでいて彼女の記した教本には、実直に誠実に、好みの濃淡を付けるにはどう絵の具と向き合うべきか、奇抜さや超絶技巧のみに囚われず、自分の世界を如何に生み出すか。地道な画材との対話や、共同作業の必要性が語られている。
なるほど、彼女の言葉を紙越しに聞くだけでも、絵描きとしてまた、初心に立ち帰れる持ちがする。こうして、一通り教本に目を通したベルナルド。
「なあ、大地も一緒に、この本を参考に描いてみないか?」
思わぬ誘いに、司書は目を見開く。
「俺が? いや、俺、ただの本好きだし……できるかなあ」
「『紙の中に、如何に思いを載せるかが私達の務め。けれど世界は紙の中だけに留まらない』」
ベルナルドが言ったのは、ハイジの言葉の一節。
「折角こんなにいい本を知ってるのに知識だけじゃ勿体無い!」
「……じゃあ、俺にも絵、教えてくれるかな」
司書は控えめに、静かに微笑んだ。
成否
成功
第1章 第5節
あわわと声を震わせて、そっと物語のその先へ。それはソアの手の中で、静かに語られる恋物語。きみが大好きな僕と、キミを大好きなあたしが織り成す、互いを想う暖かな心の交わり。
時に誰かの冷たい言葉が二人を阻むけれど、それでも僕がきみをずっと守るから。伸ばしてくれたその手をあたしが、ずっと握っているから。どうか、離れずにいてほしい。
二人の関係は相思相愛、まさにラブラブ。幼い頃からずっと一緒で、これからもずっと一緒にいようと、手を取り合って誓った二人。
けれど、恋のライバルがあたしから僕を奪おうとするし、僕を想うあたしに、誘惑の言葉をかけてくる王子様。
父親代わりになってくれた兄を奪わせまいと意固地になる妹との、理解、応援を得るまでのドタバタ劇。
そんな苦難を幾つも乗り越え、ときに挫けそうになりながらも立ち上がり、互いの絆を深め合う二人。
けれど、そんな彼と彼女に訪れる最大の危機を迎えて、物語は、いよいよクライマックスへ。
気になる二人の結末は?
ぷるぷる震える指で、そっと開いた最後の1ページには。
──『下巻に続く』。
もどかしさと興奮と、主役二人の愛らしさといじらしさ、そんな二人を苛む怒涛の展開に、キャーと叫びだしそうな声を、ぐっとこらえたソアは。
『僕はきみと居たいだけ、あたしは隣に在りたいだけ』。その下巻を、そっと己の下へ引き寄せるのだった。
成否
成功
第1章 第6節
大地に案内され館内を歩くエクスマリアは、とある本棚の一角に収められた、年季の入った、古ぼけた日記を見つけた。
「これは?」
「ああ、以前、骨董品店を畳むという人から本を引き取ってね。寄贈された本の中に一緒にあったんだ」
ふむ、と興味にかられて、彼女はそれを手にしてみる。触ればわかる、薄汚れていても手にさらりと馴染む心地の良い感触は、けしてこれが安物ではないことを物語っている。よく見ると、同様のノートが何冊も。
「名前は……汚れで読めないな」
「ああ、こうなると筆跡を辿るのも難しいか?」
司書と少女の形を持つ者が、二人でそれを開く。まずは最も古そうなノートから。
──●がつ▲にち
きょう、おとうとがうまれた。
きょうからぼくは、おにいちゃんになるんだ!
「これは、子供の頃の話か?」
「仲睦まじい兄弟だったようだな」
続く日記には成長し、両親に将来を望まれた少年の日々邁進する姿と、ちょっとした弱音。大人になってからのノートには、ちょっとした惚気や子煩悩な姿が。
何冊目かのノート。紙と紙がくっついていて、無理に開くのを断念する。しかし、それでも最後の言葉だけは読み取ることができた。
──さよなら。
日付も何もない、ただ一つの終わりの言葉。赤く乾いた染みがこびりついて。
それは誰に向けたものなのだろう。如何なる状況で終わりを迎えたのだろう。
「わからない、けど」
「マリア達の元にこれが流れ着いたのは、運命かもしれないな」
成否
成功
第1章 第7節
「Howdy〜、今日も世話になるぜお二人さん」
「ファニー。今日も来てくれたのか」
「やったな大地クン。司書の仕事ができるゾ」
相方の言い草に溜息をつく司書に、その様を笑う友人の姿がそこにあった。さて、さっそく本題に移るとしよう。
「星にまつわる本か。あれから色々仕入れてみたんだけど……そうだなあ……」
んーと大地が唸るのは、どれも捨て難い名作だから。その中で、本日彼等がチョイスしたのは。
「ほう、『ミルキー・ハイ・ウェイ』ねぇ」
それは、地の民と星の民、2つの種族がいる世界。毎年天の川に乗って宇宙を渡る遊牧民族たる星の子が、ひょんなことから地上へと落ちてしまい。
偶然その子を見つけた地の子供達が、周りの大人達とともに、どうにかその子を親元に届けようと奮闘するファンタジーだ。
地の人が仰ぎ見る北極星。星の民が見下ろす営みの灯り。
遥か遠く、けして交わることの無い存在だと思われていたお互いが、実はずっとお互いの道筋を照らしていたのだと気づく場面は、特に非常に趣がある。
更に登場人物の一人、『アニキ』こと『昴』の、男気に溢れる言動は、読んでいて胸が熱くなる……と力強く語ったのは赤羽だった。
「大地はともかく、バネが褒めるのは意外だな?」
「うん、俺も最初幻聴かと思った」
「失敬ナ」
「ま、お前らが言うなら間違いないな。借りていいか?」
「勿論」
談笑と共に、彼等の足は貸出カウンターへと向かうのだった。
成否
成功
第1章 第8節
「かわいい……つまり読んでいてホッコリするような、登場人物を応援してあげたくなるようなお話がいいかな?」
「は、はいっ!」
メイメイのリクエストを聞いた司書が持ってきたのは、著者ベルフラウ・ローレンス、タイトルは『好きの花束』。
「花屋で働くヒロイン、フローラがとにかく可憐で健気なんだ」
ある月を境に、決まった曜日に花束を買いにくるようになった青年に恋をしたフローラ。
常に憂いを帯びた瞳をした彼の哀しみをどうしたら癒せるか、彼女はあれこれ思考を巡らせるようになる。
「フローラは気立てのいい娘さんで、周囲のことをいつも考えていて、常にベストを尽くしてて、尽くしすぎて疲れてしまうのがこっちも心配になるんだけど」
そんなフローラだからこそ、親友、店長、常連さん。彼女を愛する誰もが、その恋を応援するのだ。
そんなある日、突然来店したのは、唯一、彼の事情を知るという青年の親友。その口から青年の花を買う理由を聞いた時、フローラは……?
「わあ、表紙にも、お花の絵がたくさん描かれています……!」
「そう。俺の好きな画家さんが手掛けたらしいんだけど、花弁の一枚一枚までも丁寧に筆を乗せたような感じがしていいな、って」
装丁自体も、温もりが感じられるカラーリング、可憐に花を揺らす風が感じられるようだ。
「えっと、じゃあ、これに、します……!」
「了解。えっと、利用方法はわかるかな」
貸出カウンターは、すぐそこだ。
成否
成功
第1章 第9節
司書と来館者、双方の視線がぶつかる。互いの存在を認識し、その顔を確かめる。その時、愛奈も司書もこう思ったことだろう。
──あ、この人。『同志』だ、絶対。
そして同志が勧めた本に間違いはなかった。
シモン・フラジールによる『隣人』。
海洋種と飛行種、鉄騎種と幻想種といった、混沌における純種と呼ばれる者達が紡ぐ、互いの文化、生活を理解しようと苦心し、時にその違いに驚き、それでも愛故に受け入れたりやっぱり無理!となったりする、ドタバタコメディー要素を含む恋愛小説シリーズだ。
そもそも彼は混沌にいる色んな種族の人間、その形や種族毎の風習、文化にも非常に興味を持っており、著書には『相手の為なら、どこまで自分を変えられるのか?』という裏テーマがあるんだとか。
……因みにシモン自身は人間種の男性なのだが、これまでの恋愛遍歴も凄まじく、これまでに結んでは別れた妻の中には、一人とて同じ種族の者がいない、というのはファンの間では有名な話である。
それを借りようと決意した矢先、再び魅力的な背表紙を見つけてしまった。あれよこれよと手に取る間に、本の山はどんどん高くなっていく。
「はあ……幸せ……ここに住みたいぐらいです……」
「ははは……もう部屋、空いてないからなあ。でも読みに来てくれるのは大歓迎だ」
ああ、いつかこの宝の山を全て読破できる日が訪れるのだろうか。嬉しいような、終わらないで欲しいような。
成否
成功
第1章 第10節
司書とジョシュア、二人の元に広げられているのはステラ・セイヴ・エトワールが監修した星座図鑑、その名も『星空の散歩道』。
「因みに俺が好きなのは、えっと……俺の世界では蠍座、って言われるやつ。ほら、この赤い星、アンタレスが特徴的なんだ」
大地が示す絵図を見ながら、ジョシュアもへえと息を吐いた。
「そういヤ、その蠍と『死ぬ程』相性が悪い英雄が居るんだヨ。オリオンっていうんだがナ」
日本なる国で蠍座が見られるのは主に夏だが、オリオン座を見上げることができるのは真逆の冬。この2つの星座が並び立つことは決してないのだと、赤羽も笑い混じりに話した。
「そうだ、蠍座でもう一つ思い出したよ。神話とは少し違うんだけど、星にまつわる歌を残している作家がいるんだ」
「どのような歌なのですか、大地様?」
ジョシュアの質問に答えようと、赤い目玉……で始まる歌を口遊む。
赤い光を灯す蠍に始まり、次々と空を巡る星のことを歌い。最後には子熊座の額に光る、空を巡る目印となる北極星に至る。そんな歌だった。
彼の歌を真似て、ジョシュアも声に出してみる。
「そう、そんな感じ」
「他に星座にまつわる神話もあったりするのでしょうか?」
「そうだな、エピソードもセットに覚えておくと、星座を見るのが楽しくなると思うよ。ええっと……」
星の旅に導くガイドを探しに、星と星の物語を知るために。
二人は遊星のごとく、館内をぐるぐると歩き回るのだった。
成否
成功
第1章 第11節
──事情はわかった。この館内をどこでも見てくれて構わない。
司書の言葉を受けたドラマは、自由図書館のありとあらゆる蔵書を見て回っている。全ては、自分の故郷のため。そこにある母なる大樹ファルカウが力を取り戻すにはどうしたら良いのか。少しでも手がかりが欲しかったのだ。
植物学……なるほど、ここに記された植物自体は興味深いが、マナ巡る大樹を救う手立てはここにないと見える。
園芸教本……以ての外。人の手で作り出す花園など、故国の緑の雄大さに比べるべくもない。
巨大な本棚と本棚、その間に作られた隙間。人間がひとり通れるぐらいの、『わざとらしい』空間。
──『どこでも見てくれて構わない』
その言葉を思い出し、手を伸ばしたならば、見えない扉が押される感覚。
辿り着いたのは、魔術書ばかりが集められた、明かりもない薄暗い部屋。
この部屋の名は『禁書庫』。どうやらここは、『一般の』来館者には通常開かれていない空間らしい。
簡易魔術でランタン程度の灯りを確保したドラマは、未知の空間へと足を踏み入れた。
何でもいい、その力を少しでも取り戻すヒントが得られるならば!
彼女がやがて足を止めたのは、治癒術が多く並んだ棚。
その分野だけに絞っても、天井から足元まで書がぎっしり詰まっているが、ふと、最上段に淡く緑に輝く一冊が見えた。
導かれるように伸ばした、その背に刻まれたタイトルは。
──『まず一枚の葉でも、緑に還すことができたなら』。
成否
成功
第1章 第12節
「うーん……」
小さく唸って、ぱたん、と分厚い本を閉じる。ちょっと背伸びをしてみたけれど、まだまだ自分には難しすぎた。本をそっと元の場所に返してから、本を凝視し固まっていて身体を解そうと、レインはゆっくり立ち上がった。
「あ……これ……」
絵本が並ぶコーナーの、見覚えのある表紙の前で、レインの足が止まる。
『いっしょにいこう、マーケット』。彼が所有するタイトルと同じものが、そこに納まっていた。
しかもそこには、同一の作者名が並ぶ絵本が何種類も。
「ひょっとして、僕が持ってる本の続き……?」
興味にかられて、レインはピコ・アリアーノ作『いっしょにいこう』シリーズの一つを、そっと手に取った。パステルカラーの遊具が愛らしく描かれている『いっしょにいこう、ゆうえんち』。
絵本は好きだ。急かされることなく、波間を揺蕩うように、じっくりたっぷり、その世界と向き合えるから。
『もう、なんでどんどんさきにいっちゃうの、ユニ!』
とあるページで、主人公ユニのお友達、マリがぷんすか怒っていた。
どうして彼女は怒ったのだろう?その答えは何ページか後。
『おいてかないでよ、ユニ。きみがさきにいっちゃったら、のろまなわたしはついてけないわ』
『ごめんねマリ。ここからは、てをつないでいっしょにいこう』
自分も、相手のことを考えられているだろうか。失敗しがちだから、心配になる。
自分もユニのように、人の心を知ることができるだろうか?
成否
成功
第1章 第13節
「ゾッとする感じのミステリーか。色々あるけれど……鏡禍的にダメなものは無いか? 犬猫が酷い目に遭うとか」
「ええっと、ですね……」
鏡禍の希望に質問を重ね、候補を絞っていく。その中で、今回司書が勧めたものは。
「泪河殺人事件、ですか」
「ああ。ネタバレになるといけないから、どうか自分の目で確かめてほしい」
司書に促されて、鏡禍は本の世界へと飛び込んだ。
舞台は豊穣にある隠れ里。
主人公は、都で名の知れている、花形スターの舞台俳優、椿。
自分の演技にさらなる磨きをかけるため、新たなインスピレーションを得るために、休養がてら里にやってきた。
そんな彼が、まず第一に驚いた事。それは里を流れる血色の河!
──驚きましたか、外の方。
昔から住まう老婆曰く、ここの河は夕日に照らされ、血の流れるように赤に染まるのだと。
その様がかつて戦に破れ、身を投げた武将の滂沱を思わせることから、いつしかこの河は『泪河』と呼ばれるようになったとか。
──その大将ってぇのはなんて名前なんだい?
椿の興味から始まる、武将の足跡を辿る行脚。けれど、敗残した武士の亡霊を思わせる奇妙な現象や不気味な事件が、次々に彼らを襲う。
一体、伝承の真相とは……?
「……か。鏡禍!」
「……えっ、あ、わっ」
「ったク、写して魅せる怪異のお前ガ、すっかり本に見られてたゼ?」
「……う、目がちょっと、シパシパと……」
人の形にはまだ慣れぬこの身。続きは、少し休んだら。
成否
成功
第1章 第14節
『僕はきみと居たいだけ、あたしは隣に在りたいだけ』。
その下巻を読むソアの手が震えていた。
『ねえ、まーくん。あたしはね、ずっとまーくんの隣を歩ければ、それだけで幸せだったの』
『それだけ、なんて言わないでよ。だった、じゃない。まだこれからじゃないか』
だって、ずっと応援してきた二人の恋が。愛が。純な気持ちが。
『きみには幸せになる権利がある。きみの幸せの為なら、僕はきみと永遠に離れたって構わない』
『まーくんこそ、そんなこと言わないで。あなた無しの幸せなんて考えられない』
背中合わせの僕とあたしが、そこでようやく向き合って。
『……ずっと言えなくって、ごめん。どうか、あたしをまーくんのお嫁さんにしてください』
『先に言うなんてずるいよ。……僕こそ、ちゃんと言わなくっちゃ。ね、僕、これからはきみの夫として隣に居て良いかな?』
二人の気持ちは、「「もちろん」」と綺麗に揃って。ここに、結ばれたのだ。
「ううう……良かったね……」
潤む瞳に鳴る鼻。しかし今なら誰も彼女を見てはいない。存分に心動かす自由がここにはあった。
決意を新たに、手を取り合った二人のエピローグは、祝福のチャペルにて。
挿絵のない小説ながらも、主人公達の華やかで清らかなブライダル姿がありありと目に浮かぶ。
「ボクもいつか着るのかなあ、ウェディングドレス……」
少女なら、誰もが憧れる晴れ姿。もし自分がそれを纏うならばいいその時隣に誰が居るだろう……?
成否
成功
第1章 第15節
次の来客は、幽霊屋敷の主。
そこに恭しく頭を下げて、青年があるものをそっと、彼の前に差し出して。
「エー、こちラ、『オンディーヌの詩』でース」
「ほお、こいつは上物だなァ」
木目美しいテーブルに載る、自分のためだけに出された一品に、思わず舌舐めずりをする。思わず触れて愛でたくなるような、しっとりとした肌。黒い爪を這わせた、その時。
「呪本をコース料理風に言わないでいただきたい」
クウハと赤羽のちょっとした悪ふざけを諌めたのは大地だった。
「ノリが悪いな〜大地クン」
「いや、クウハがドロッドロの怨念と接したい、っていうのは良いんだよ。でもなんだよ赤羽のそのノリ。初めて見たわ」
「んで、コイツはどういう曰く付きなんだ?」
「ああ、これはね……」
元の持ち主、若き俳優はこの本を原作とした舞台の主演に抜擢され、日々レッスンに励んでいたのだが、その間にオンディーヌ役の女優に恋をしてしまい。
千秋楽を迎えるその日、自らの想いを打ち明け……叶わなかった。
失意の青年は、最後のカーテンコールの途中、この本を胸に突如自刃。観客の歓声を悲鳴へと塗り替えてしまった。
以降、その劇場でその演目を行うと事故が絶えないという。
「ハッ、『演じる』つもりが『マジ』になって、後は真っ逆さまってわけか。怖い怖い」
「デ、怨念のお味はどうよ」
「ン、軽ーい前菜って感じ。もっとキッツイのあるか?」
「ええっと……」
フルコースは、まだまだ続きそうだ。
成否
成功
第1章 第16節
「ドーモ、大地殿、冬越=弾正デス」
「え、えっと……ドーモ、弾正=サン。大地、デス……?」
「乗るな乗るナ」
アイサツは実際大事なので仕方ない。古事記にもそう書いてあるって婆ちゃんが言ってた。知らんけど。
「侍……忍者……えらくジャポニスムなワードが出てきたな……」
弾正の要望を聞いて探し回ること数分。
「そういえば……再現性東京で買ったちょっとトリッキーなやつがあってさ……」
そう言う大地が弾正に見せたのは『TONOSAMA BREAKER』。
私腹を肥やし、民を虐げるAKUDAIKANをSAMURAIが仏陀KILLスタイリッシュバトルアクションが見所だ。
その一方で、OYAKAKATAの命を受けたNINJAが、AKUDAIKANに悪行を強いるUESAMAの変貌の理由と、その黒幕を探るミステリ要素も含まれている。
この物語の主人公、SAMURAIのキリマルとNINJAのウキグモは最初こそ誤解もあって激しく争うものの、後に自分達が最後に倒すべき相手が共通の敵であると知ると、バディを組んで日ノ本の闇に立ち向かうようになる。
「特に俺は、VSモモタロ、キジ、イヌ、オサル戦が好きだな。最初こそ喧嘩ばかりでバラバラだったキリマルとウキグモに、初めて絆が芽生えるんだ」
「なるほど……文体も実に小気味よく書かれて、声に出したくなるようだ」
一見すると癖強め。しかし一度味わえば、どっぷりハマること間違いなしだ。
成否
成功
第1章 第17節
「なるほど、植物図鑑を」
「ええ、おすすめがあれば是非!」
フラウルと対話をしながら、彼に見合う本を見繕っていく。なるほど、森の民たる幻想種、かつ植物学者だという彼は、司書も思わず舌を巻く程の知識量。だとすれば。
「うーんと、これ、とか……?」
迷いながら大地が開いてみせたのは、『綺麗な花には毒がある』。他の植物図鑑と違い、植物に含まれる成分や、その用途に至るまでもが解説されている一冊だ。
「これ読んでると、毒草って言われるものが薬になるか毒になるかって、結局量と扱う人次第なんだなあ、って思うよ」
「なるほど……僕達も何かと草花の恩恵に預かって生きていますからね」
司書の言葉に植物学者は然りと頷いた。
「因みに大地さん、お好きな植物はありますか?」
「そうだなあ。確か、丁度これにも載ってるはず……」
パラパラと頁を送って、大地はこれという花を指差す。そこにあるのは、赤々とした彼岸花だ。
「ほう、その心は?」
「単純に色合いも好きなんだけど……お寺とか、そういうところに静かに植わってる感じがこう、眠ってる人を静かに守ってるというか、死者に寄り添ってるというか……そういう感じ、かな」
「なるほど、その観点は盲点でしたね……!」
自分とは異なる視点からの答えに、フラウルも大きく感心した。
「因みに、フラウルはどんなのが好きなんだ?」
「えっ聞いてくださるんですか! 僕はですね……!」
今度は司書が、学者から教わる番だ。
成否
成功
第1章 第18節
「ピリアね、かわいいえほん、よみたいの!」
「そうだな。かわいい友達がいっぱい出てくるのがいいよな」
うんうんと頷きながら、二人は絵本の並ぶコーナーを行く。子供にも手に取りやすいよう、どれも低い位置に入っていた。
「じゃあ、『アイリス』が言ってたことの受け売り、なんだけど」
「うけうり……?」
「あ、えっと、俺の、娘……?の、アイリスも、好き、って言ってたんだ。君と歳が近いぐらいの子でさ」
大地が取ったのは、表紙に大きく描かれた、蝶ネクタイをつけた猫のイラスト。
「わあ、にゃんこさんなのね!」
「そう、『きょうのおめかしにゃんこさん』。ほら、見てご覧」
それは彩りポップなしかけ絵本。頁を開けば、ストール纏った鳥が飛び出し、こちらを引けば、ぞうさんがシルクハットを外してご挨拶してくれる。
「でも、どうしてみんなおしゃれしてるの?」
「どうしてだろうね」
この答えを知りたくて、ピリアはどんどん、仕掛けに触る。いつもより一味違う装いの動物達のその足取りを追いかける。
みんな、どこに行くのだろう?
ドキドキ、ワクワク、たどり着いたそのわけは。
「あ、おたんじょうびのケーキなの!」
「今日の主役は……いぬ君だな」
大好きな友達を祝うため、みんなはるばる、色んなとこからやってきて。
豪華に素敵に、おめかししたのだ!
「どうだった、ピリア?」
「ええ、とっても素敵だったの!」
あ、これはどんなお話かしら?
ピリアの興味は止まらない。
成否
成功
第1章 第19節
武術の本を抱えて、席に就こうとしていた竜胆。その足があるコーナーの前で止まった。
グラオ・クローネシーズンに合わせてチョイスした『甘い幸せ、チョコレートが出てくる絵本特集』である。特に竜胆の心を射止めた表紙は、『パクパク、美味しい!』。ボウルのチョコを湯煎する、ふわふわの子熊のタッチがなんとも愛らしい。
それに誘われるかのように、竜胆の手が、ゆっくりそれを取った。
グラオ・クローネ、大好きな皆にチョコを作ろうと奮起する子熊のルー。
失敗してもいいように、たくさん材料買
ってきて。いざ、調理開始!
ちゃんとチョコは溶けてるかな。パクパク、美味しい!
チョコを流し込むタルトが割れちゃった、勿体ない。パクパク、美味しい!
チョコをデコレーションするその前に、パクパク、美味しい!
ちょっと食べすぎちゃったけど、美味しいって知ってるから。胸を張って、召し上がれ!
「どうかしましたか」
ハッと振り返り後ろを見れば、そこにはハタキヲ持った司書の姿。思ったよりも長い事ここで足を止めていたらしい。彼は竜胆の顔と手元を交互に見た。
「……こういったものが、好きでな」
観念の告白。それを受けた司書があるものを持ってくる。それは真っ黒い体に赤いお目々の兎さん。
「そ、その子は」
「リコリス。うちのマスコットだよ」
触らせてもらったそれは、綿がギュッと詰まった丸みのあるフォルムで。
どことなくバニラの香りがする、かわいらしいやつだった。
成否
成功
第1章 第20節
「……て事で、俺も勉強しとこうって思ったわけだ」
「入墨……うーん、美術の分野かなあ、それは」
来館者からの予想外の問い合わせにも対応するのが司書の仕事だ。しかし自分はそういうもの仕入れたっけ。いやひょっとしたら寄贈書の中にあるかも、と思った矢先。
「こっちダ」
導かれるように伸びる右手。それが触れた本のタイトルは、『画竜点睛』。
「お、ソイツが例のブツか?」
キドーが開いてみれば、そこには精緻にして巨大な絵の威圧感のみならず、よくよく教養のあるものなら思わずほうと息を漏らすような、小粋な書き込み。彫師の竜による原画が何点も並んでいた。実は芸術一家の出身である彼だからこそ為せる均整の取れたデザインだ。
「こいつは現役バリバリの『先生』だゼ。今は海洋に拠点を置いてるってかラ、興味あんなら実物を見に行くのはどうダ?」
「へェ、こいつァ驚いた。まだ若いのにこんな腕利きが居るなんてなあ」
社長として、今度菓子折りの一つでも持って挨拶しようかと笑う小鬼に、ああそれが良イと応じる死霊術師。クククとヒヒヒの笑い声が館内に響いた。大地はプチ引いた。
「俺も刺青入れてるけどよ、皮ごと引っ剥がして手元に置きたいってタイプの好きはちょっと……お前わかる?」
「あア〜分かるゼ。俺も綺麗な骨があるなら手に入れてぇガ、わざわざ墓を暴くような手間はしたくねぇからなァ」
「お前ら本当に通じ合えてる?」
成否
成功
第1章 第21節
えーとと悩み、好みの背中を探して指を右往左往させているのは文だ。どうやら、どれを選ぶか決め打てないで居るようだが。司書は挨拶を兼ねて、様子を窺う事にした。
「本日は来館ありがとうございます。何かお手伝いできることは?」
「やあ、こんにちは。今日は軽い読み物を探しに来たんだけど……」
なかなか決められなくて困ってるんだよね、と眉尻を下げる文。
「なにかおすすめがあれば教えてくれるかな?」
喜んでと、大地もまた美しい背中を見渡した。彼が今立っているのは、丁度ミステリー小説が集まる棚。どれも好ましい故に悩ましいけれど、敢えて選ぶなら。
「俺が個人的にファン、っていうのもあるんですけど……」
イエモトシャロク……と呟きながら大地が見せたのは、家元射鹿作、『浪漫城、花屋敷の怪』。
「面白い名前だね、彼」
「彼自身もミステリーが大好きらしくって、ある探偵の名前をもじって作家名にしたらしいですよ」
読み勧めてみればなるほど、鹿の足取りのような軽やかで爽やかな文体。
しかし、出題編で訪れるは、それを突如射抜いて散らす、ズドンと読者を驚かせる衝撃の展開と静寂。
けれど最後には、鮮やかに点と点が線で繋がって、我々が抱いた謎を明らかにしてくれる、快刀乱麻の解決編が待っている。
……と聞けば、手にとってしまうのがミステリ好きの性。
「じゃあ、これにしようかな。ありがとう司書さん」
「また何かあれば遠慮なく」
図書館はまだまだ開館中だ。
成否
成功
第1章 第22節
「なるほど」
ルブラットが頷きながら読み進めているのは、ゲオルグ・ハイマン著の『毒』。
その名の通り毒殺された身元不明の遺体から物語が始まる。
見るものを飽きさせない本格派サスペンスではあるのだが、犯人の使った手口があまりにもリアルかつ具体的に記されていて、真似する人が出かねないとして、とある地区では『これを公的な場に置いてはならない』と有害図書に指定されてしまったらしい。私人が開いているこの自由図書館にはあまり関係ない話である。
さて、本は今静かに閉じられた。
「どうでした?」
「ふむ、筆者の知識量が窺える素晴らしい一冊だったよ。だが」
仮面の奥の声が、一瞬重く、低くなる。
「私が犯人だとしたら、こんなヘマは犯さないのだがね」
ルブラットが言っているのは、現場に残った僅かな痕跡が致命的な証拠として押さえられてしまった場面の事だろう。
「へェ、言うねぇ先生。じャ、例えば俺のことはどうやって殺すんダ?」
赤い瞳が、ペストマスクの奥を射抜くように見つめる。
「そうだね、……君が手にする本、あるいは筆記具に何かを仕込むのが最も手っ取り早いかな」
「おヤ、けど今それを言っちまっラ、もう俺等にはその手使えねぇゾ?」
「使う心算の手を軽々に明かすと思うかい」
「そりゃそうダ」
その後は不穏なやり取りが嘘のように、日常の他愛のない話へと変わった。今日の彼らは図書館司書と医者。何も死霊術師と暗殺者の顔になる必要は無いのだから。
成否
成功
第1章 第23節
フーガの様子が何かおかしい。しきりに周囲をちろちろと見て、隠すように何かを抱きかかえている。まるで誰かを。今館内にいる人間を警戒しているかのようだった。勿論、彼は図書館の蔵書を盗むような人物では決してあり得ない。
やがて意を決してテーブルにつくと、フーガはそっとその本を開いた。
『新体操術教本』……の裏に隠して読むのは、マリオ・ラタンティーノが著した恋愛小説『君の肌に触れるまで』。
物語はいよいよ、主人公とヒロインが初夜を迎えるシーンを迎えようとしていた。
彼の感情が乗り移ったかのように、読んでいるフーガ自身まで、胸が高まって、頬に熱が宿って、手がじっとり汗ばむような心地がしていた。
──私は、愛しいその人の手を握り問うた。
『本当に、私でいいのかい?』
君は答えた。
『貴方だからいいの』
私の前に全てを晒した、一糸の偽りもないその姿。これをみただけで、ああ、私の人生は今この瞬間のためにあったのだと錯覚するほどに──
「フーガ。カード落としたぞ」
自分を呼ぶ司書の声。コツコツと近づく足音。慌てるあまり、ぱたん、とダミーにしていた武術の教本が倒れる。その後に現れるものは勿論。
「あっ」
「……あはは……」
気まずい沈黙。そして愛想笑い。更に意地悪い誰かの忍び笑い。
「えっと……ゆっくり、していってくれ」
落とし物を届けた大地はそれだけを言い残し、フーガの元を去っていった。
俺達はなにも見ていない。そういうことで。
成否
成功
第1章 第24節
「もし、一つお尋ねしてよろしいでしょうか?」
「何でしょう」
小さく片手を上げて司書を呼ぶのはセス・サーム。彼もまた、再現性東京において司書業を務める者だ。
「普段こちらを利用されるのは、どのような方々でしょう」
「あー……そうっすね、普段そんな出入りないんでなんとも言えないですけど……」
親子連れ。院に通う学生。外遊びよりインドアを好む少年少女たち……強いて言うなら、若い顔ぶれが多いかもしれない、と大地は答えた。
「若い方々、ですか。そのような来客で、何か困ったことはありませんでしたか」
「いや、俺の高校時代の……ウェイ系の人等よりは全然大人しかったんで……あ、でも」
セスと対話をするうちに何かピンとくるものがあったのだろう。大地はある本を彼に向けて開いてみせた。
「これと同じようなこと、俺の先生がやってました。そしたら、性格は別に変わらないっすけど、やることはやるようになったですね」
彼が見せたのは、『させる、ではなく したくなる、を目指そう』。
心理学において最近にわかに名前を聞くようになったユキ教諭が書いたものである。
言語によってではなく、おのずと『そう』したくなる仕掛けを作ることを易しく説いている。
「なるほど勉強になりました。貴方様がたと違い、所詮偽りの司書ですからこうした向上心は不要かもしれません」
「いや、こういう場を静かに保ちたいと思うのは当然ですよ」
司書は、穏やかに言葉をかわした。
成否
成功
第1章 第25節
「回復術の専門書。それならこういうものがありますよ」
司書はそのジャンルから幾つかの書物を並べて見せる。その中からルネが誘われるように選びとったものは、『苦痛を拭う手』。
「しかし、こんなに数が並ぶなんてね。ちょっと驚いたよ」
「丁度、友達が治癒術を勉強してたので。少しでも助けになればと、俺なりに探してたんです」
ルネが選んだものは、特に単体に向けた治癒魔法の記述が多く見られた。
そこには詠唱、術者の魔力量、術の触媒といった、術の完成度に直接左右されるものののみでなく、このようなことにも言及されている。
曰く、『この書を手にする諸君らに最も心掛けてほしいものは、この術を必要とするまでに傷ついた者に寄り添い、その痛みを想像する共感力である。
術式により血肉を無事に補えたとて、心無い扱いによって傷を増やすのは愚行に他ならない』……と。
「今日はいい本をありがとう。時間がある時でいいから僕のオススメも読んで欲しいな」
「へぇ、どんなのです?」
司書の疑問に答えるかわりに、ルネは空へと手を伸ばした。そして本棚から目当ての書を取り出すような、自然な動きで手を引くと、そこに握られていたのは箔押しのタイトルが刻まれた一冊。
「えっ……今の、どうやって?」
「僕のギフト、『移動図書館』だよ」
未知の本、そして羨ましいギフトについ目を輝かせてしまう司書。
その後も互いの一押し、それの情報交換でしばし盛り上がるのだった。
成否
成功
第1章 第26節
「現代文学、かあ。色々あるけれど……」
うーんと大地が唸って、やがて選び取ったもの。その扉をカイトが開いた。
著者の名は有元樹。本の名は『どうか、この雨が止みませんように』。再現性東京2020で刷られたばかりの、当図書館でもかなり真新しい部類の書である。
主人公、貴斗は小さなカフェで働く大学生。雨の日だけ来店する女性、美弦と対話を重ねる内、次第に心惹かれていく。
しかし、彼女の抱える底知れない闇を知り、貴斗は酷く動揺することになる。
コーヒーの湯気の中で、二人が出した答えととは?
「主人公が美弦を思って、悩んで、揺れ動く場面は、読んでいるこっちまで闇に引きずり込まれそうで、ゾクゾクするんだ。でも美弦の方は、どこまで本気で、どこから本音なのか全く読めない……ちょっと魔女みたいな人で」
「なるほど」
司書の注釈を受け、カイトは頭の中で登場人物を動かしてみた。
貴斗は両親に厳しく躾けられてきた青年。彼の振る舞いも同年代の人物より丁寧なものだろう。
例えば、たっぷり注がれたコーヒーを一滴たりとも溢さぬような、静かで、波のない足取り。
けれど、美弦に秘密を打ち明けられた日の彼はそうはいくまい。
きっとカップを下げる手も小さく震えるだろうと夢想して。
「しかしアンタ、役者って聞いたけド。舞台関係の本じゃなくていいのカ?」
「今更そういうのを読み漁る気もねーんで」
──だって、どう演出するかは『原作を把握してから』だろ?
成否
成功
第1章 第27節
「わぁ、広い本棚!」
自由図書館に足を踏み入れたチャロロがまず驚いたのは、そこに並ぶ本棚の大きさだ。自分の背より遥か大きい、天井にまで迫る高さ。幅だって、腕を広げた自分何人分ぐらいあるだろう?
「お待たせ。これ、君ぐらいの年代に人気があるんだけどさ」
司書が選んだのはティーンに人気のある、アリサ・クラインの著書、『魔法都市の子供達』シリーズ。
舞台は世界有数の魔法使い達が築き上げた魔法都市、『マギアルーン』。
以降も代々、著名な魔法使い達が守ってきたそこに住むの子供達も当然、将来有望の魔法使いの卵たち!
けれど、主人公のリオとその家族だけは、一切魔法が使えない、この都市ではちょっと浮いた存在だ。
結構便利でかなり不思議な魔法都市での生活の中で、少しずつ明らかになる、リオの出生の秘密。リオの親友、名門魔術師の家計に生まれた少女、グローリアが、魔術師として成長する姿。魔法都市が故に起こる大騒動など、見所は盛りだくさん!
司書が勧めてくれた一冊は、うん、実に面白い。
「だけど……」
改めて広い本棚を見渡す。本が一冊も入っていない棚も目立つ。埃が積もらぬよう、掃除はきちんとされているようだが。彼の視線が差す意味に気づいたのか、大地は苦笑を浮かべた。
「今度はオイラが、ここに本を持ってくるよ!」
「気を遣わせてしまったな。でも寄贈も大いに歓迎するよ」
チャロロのお陰で、この図書館も少し賑やかになるかもしれない。
成否
成功
第1章 第28節
急に司書の足が、彼の意思に反して止まる。居人があるものを感じたからだ。
「死の匂いダ」
「は?」
司書の意思と違う方に足が進む。その身体がたどり着いたのは、イーハトーヴの元だった。
「え……あ、司書さん?」
「あ……ど、ども」
一瞬走る気まずい沈黙。それを解消しようと口を開く。
「あ、その本。俺、初めて読んだ時、ちょっと衝撃的だったんだ」
大地が差すのはイーハトーヴが開いた絵本、『きょうのわたしはプリンセス!』
お姫様に憧れる少女と、彼女の召使いの、夢のような華やかな暮らし。
しかし現実の彼女は貧乏で、召使いどころか、自身が奉公先で厳しく叱られる日々。
けれど、ばあばが作ってくれた友達が居るから、日々を賢明に生きるのだ。
その子達に個々の名前と、人格まで与えて。
「彼女の『好き』が彼女を支えているのは確かだけれど、事の解決には至ってなくて。色々、考えさせられるなあ、って」
そうだ、解決策を。
自分は、兄弟を助ける道筋を探しに来たのだ。
『大丈夫よ、きっと道はあるから』
『ンなビクビクすんなって』
『ぼ、僕も忘れないで』
「皆」
イーハトーヴは己を守るように、腕の中の兄弟をぎゅっと抱き締めた。
司書はその光景に瞬く。だって、兄弟の会話は彼の耳には聞こえない。
「あ、ありがとう司書さん。俺、行かなきゃ」
「あ、ちょっと!?」
──さテ、あいつに関してハ……どうしたら救えるものかネ?
何時になく真剣な顔で、死霊術師は考え込んでいた。
成否
成功
第1章 第29節
大地は息を切らして館内を行く。勿論、いくら急いでいるといったってここはあくまで図書館なので、早歩きに留めて。目指すゴールは、京司の居る席だった。
「お、俺のおすすめ三銃士、持ってきたよ」
「おすすめ三銃士?」
その言葉通り、京司の目の前には三冊の書が並べられた。
「作家の性格は最悪だけど作品はどれも最高と専らの評判。間海峰虎次郎の『断罪塔』」
「この作者、僕に似て死にたがりの気配がするな???」
「この中の唯一の良心。サバンナで見つけたオアシスのように瑞々しい感性が心を洗うライラの詩集、『ほとりにて』!」
「ふむ、一口目がヘビーだっただけに爽やかな口当たりだな」
「赤羽チョイス! 獣の骨や皮で綴じられてる呪本! 著者名を言うのも危険!『生けるものと逝けるものへの賛美』!」
「うーんこの禍々しい感じ。いい匂ひを感じる」
「ど、どうかな?」
全てに一通り目を通した京司。その裁定は。
「うん、どれも悪くない。どころか面白い」
「よ、良かったあ」
大地は全力で安息を吐き出した。
「しかし京司、来ていきなり『何でもいいから僕の好きそうなのをざっと三冊』とか言ってくれるなヨ。大地クン青息吐息だゼ?」
「けれどここなら、その願いも容易く叶うだろう?」
「まあ何とかなりましたけど……」
足はまだぷるぷる震えている。如何せんフィジカル低めなので。
「では、仕上げに更にもう二つ。これも何でもいいよ」
「またあ!?」
司書の試練は続く。
成否
成功
第1章 第30節
「へェ、夫の『好き』をもっと知りたいなんテ。なかなかどうしてお熱い嫁さんじゃねぇノ」
「茶化すな赤羽。……えっと、この煮込みなんかも、赤い色が食欲をそそって、トマトの旨味成分をまるっと味わえていいと思うよ」
「わわ、見ているだけでお腹が空いちゃいそうですね……これもお借りして大丈夫ですか?」
「喜んで」
望乃の希望を受け、司書の腕には既に何冊もの本が抱えられていた。それは管楽器に関するもの、誰もが愛する名曲の楽譜彼の故郷に近い文化圏の食文化……と、少しでも彼を知りたいと思う新妻たっての希望のものだ。
「他にも見ていって大丈夫ですか?」
「ああ、時間ならいくらでもあるから。でも先にこれ、置いてくるよ」
案内の妨げにならぬよう、望乃が借りる本達を、先に貸出カウンターへと運んでいく。
その間にも周囲をキョロキョロと見渡す彼女だったが、そこである小説が目に留まった。
「マリオ・ラタンティーノ……?」
自分の知らない名前なのに何故か心惹かれて、それを手元に引き寄せる。タイトルは『愛しい君と、同じ月を楽しむ方法』。
ぱらぱら、と覗き込んだその中には。
愛撫。囁き。接吻。ああ、ちょっぴりオトナの世界が……。
「望乃?」
「ひゃっ!?」
バサッと取り落としたその本を拾う司書は、しばしその場で固まった。
「あ……よ、よし。次行こう、次!」
うん、俺達は何も見ていない。
「……おイ、大地。ついこの前も似たようなこと無かっタ?」
成否
成功
第1章 第31節
司書がヨゾラを伴ないやってきたのは、なんとももふ味を感じる空間。具体的に言えば『貴方はどっち派? わんにゃん特集!』と書かれた特設コーナーだ。
「右2つの本棚が『にゃん』の方だよ。それじゃあ、ごゆっくり」
客人と猫との尊い時間は何人にも侵されるべきではない。司書は『わからない事があったらベルを鳴らして』と言うと、元のカウンターへと戻っていった。
「あれもこれも、どんな本かな」
初めて訪れた自由図書館で胸弾ませて、ヨゾラは猫の背中を追いかける。やがて彼の手にすんなり収まったのは、『忠猫、ミツの365日×16回』。
海洋の商人一家に待望の娘、マリナが生まれてから、彼女が花も恥らう乙女に育つまで。その16年間を共に過ごした白猫ミツを描いた小説である。
海洋のぽかぽかな気候と、猫とのほわほわな日々が綴られ、猫飼いなら誰もが『ああ、あるある』と頷くような、思わず笑み溢れる描写があちらこちらにも。
それもそのはず、筆者たるミッシェル・サニー氏の邸宅は、通称『猫の城』と呼ばれるほどに猫が多いのだ。
しかし命あるものは終わりを迎える。すっかり綿のへたったお気に入りのクッションで、小さく胸の上下を繰り返すミツと、ずっと彼女に寄り添うマリナ。
看取るシーンで思わずグズ、と何かがこみ上げるが、脇に静かにティッシュの箱が置かれた。
司書はまた、元の作業に戻った。
ヨゾラを不思議そうに見上げる、黒猫のウルタールだけを残して。
成否
成功
第1章 第32節
「今日はどんな本を探してる?」
司書の問いかけに対するニルの答えはこうだ。
「ニルは『おいしい』お話を読んでみたいです」
美味しい。それを感じるに占める要素は、確かに舌が感じる味わいが大いに関係するが、何もそれは味覚のみに拠らない。
例えば、サラダであれば瑞々しいレタスと赤や黄のパプリカの鮮やかな色彩であるとか、スープであればゴロッと具材がスープボウルにたっぷり入ってくれる喜びであったりもするのだ。
「でも、俺が読んでて特にお腹が空いてくるのは、やっぱこいつだなって思ってる」
それはとある学生寮で毎日少年少女たちの食事を作る寮母クリス……クリスティーナ・タタンによる実録を素にした青春小説である。試験に臨む学生には、脳にぎゅっとエネルギー届ける一皿を。何かを頑張った少年には、大好物のトンカツを。失恋の悲しみに俯く少女には、流した涙の数だけ温かなコーンポタージュを。
それは日々何かと戦う少年少女たちと、そんな彼らの日々を生きる力、血となり肉となる食事を考えるクリスの日常の記録でもあった。
「クリスもたまにハンバーグを焼きすぎちゃったり、失敗することはある」
しかし、そんな彼女を学生たちは笑って許す。学生達の食卓は、いつでも温かな笑顔と賑やかな談笑に、そして時にちょっとした涙に包まれていたのだ。
「ありがとうございます、司書様」
本との出会にぺっこりお辞儀。
ニルはまた、『おいしい』を知ることができただろうか?
成否
成功
第1章 第33節
「ファッション……は残念ながら俺もあまり詳しいことは。でも雑誌なら、俺の知り合いがよく持ってきてくれるよ。良かったそれ、見てみるか?」
そういう司書が並べてくれたのは、再現性東京で発行されているファッション雑誌、『Chaos walkers』。
イルミナはそれら一冊一冊を隅々まで読み明かした。
その流行の流れは目まぐるしく、ある号では純朴・ピュアな森ガール風、その次の号ではキラキラが眩しいディスコスタイル。その後もレトロなオーバーオール、●●年代アイドル風と続いたかと思いきや、和洋折衷・ドレスに羽織スタイルだとか、ゆるふわゆめかわコーデだとか。毎号毎号、まるっと違ったテーマをお送りしてくるのだからもうてんてこ舞いだ。
「ムムム……おしゃれさんへの道は長く険しいものと見えたッス……結局正解はどれなんスかね……」
「うん……俺も見てて目がチカチカしてきた……」
巡り巡るストリームに、司書もイルミナもショート寸前。とりあえず窓から見える緑で小休止することにした。
「……どれを買えばいいのかわからないなら、逆に作ってみるのはどうだろう?」
「逆に、作ってみる?」
司書からの柔らかい提案に、イルミナもオウム返しに留まる。大地が次に持ってきたのは服飾の教本だ。
「なるほど、自分から、作ってみる……」
その発想はなかったと、その目で技術の記述をしっかり焼き付ける。今度は不思議と、思考回路に負荷がかからなかった。
成否
成功
第1章 第34節
アレンが読んでいるのは、吸血鬼の男、レミリオと深窓の令嬢、リーシャの織りなす、不思議な恋愛譚。
アルテミシア著、『君と夜を』。
血に飢え、糧を求め彷徨っていた彼を、そうと知らず彼女が招き入れる所から物語は始まる。
その日の晩、彼女の屋敷の使用人から無事に栄養を得た吸血鬼だが、広大な屋敷にしてはあまりに調度品や使用人の数が少ないことに疑問を抱いたレミリオは翌朝、リーシャにその訳を尋ねた。
実は彼女は、さる貴族の落胤。
生まれつき体が弱く、幼い頃から療養の体で本家から隔離されたこの屋敷に住まわされ、半ば幽閉される形で、必要最低限の家具と使用人のみを残されたのだった。
そのような境遇でも歪まぬ心を持つリーシャにレミリオは少しずつ惹かれていくが、ある月の晩にリーシャは喀血。彼女の命はもう長くないと知らされるのだ。
更に屋敷のある寒村では、猟奇的な殺人事件が立て続けに起こり、貴族を疎む村人達は彼女こそが残酷な吸血鬼であると断定、使用人達を次々に手をかけ、最後に彼女を火炙りに処そうとする。
リーシャもまた夜をゆく者となれば、逃げ果せる事ができるかもしれない。しかし虚弱な身体は変化に耐えられるのか。
一時命を繋ぐためだけに、彼女を血濡れた運命に導くことは許されるのか。
二人の答えを、薔薇は黙って聞いていた。
「こういうの好きかな、姉さん」
愛しき姉の感想も聞きたいと、アレンは貸出カウンターまで足を運んだ。
成否
成功
第1章 第35節
「なるほど、食材について調べに。というと、これが面白いかもしれないな」
司書がモカに見せたのは、マルコ・エリオット・ステファン著の『森のご馳走』だ。
「この人、不定期に何処かでキャンプを張っては、一日一組限定の野外ビストロをやったりしているみたいだよ」
「つまりこの書には、彼の味わった全てが詰まっているということか」
開いてみれば、マルコの知識と経験の結晶とも言うべき一冊だということがよくわかる。
野に生える草はサラダに。果実は極上のデザートに。
キノコについては素人は手を出すな、とスパッと切り捨てているが。
森行く獣の肉についても罠の仕掛け方、狙うべき時間帯、解体時の注意点まで事細かい記述があるが、たまに『この肉はスパイス無しだと臭くて食えたもんじゃない』等と愚痴が書かれているのも、著者の人間味が感じられて、なんとも読者の笑いを誘う。
「大地さんは、好きな料理はあるのか?」
「俺は……やっぱりジビエというか、熊の肉は一度は食べてみたいかな」
でも、下拵えから焼き上がりだけでかなりの時間を要するから、自分一人では難しいだろうなあ、と困ったように笑ってみせた。
「モカは?」
「ああ、私はこの、スノーベリーが気になったよ。素材のままだと酸味が非常に強いというが、栄養は豊富だと言うし……どうにか加工できないだろうか」
「砂糖を大量に入れてジャムにするとか……?」
二人の料理談義が、ここに始まろうとしていた。
成否
成功
第1章 第36節
助力を求める者あらば、司書はすぐに現れる。ほら今まさに、彼を呼ぶ声。
「なあ、ちょっといいか?」
「あっ、はーい」
脚立と共に声が聞こえたその方へ。しかし声はすれども姿は見えず?
「こっちだよ、こっち」
聞こえた声は自分の視線より低い。紅玉の瞳を、下に向けると。
「な、あ、えっ!?」
思わぬ姿に目を白黒させる大地。
「落ち着ケ、こいつは人間だゾ。少なくとも魂ハ、ナ」
そんな彼を赤羽が鎮めた。
「え、えっと、驚いてすまない。で、恐らくは……この本が要望に合うんじゃないかなあ」
ライの声を受け選んだものは、『仔犬の道を覗いたら』。両親喧嘩した少年が、路地を行く野良犬に『いいな、お前は自由で』とつい言ってしまって、気まぐれな神様がそれを叶えてしまう。
最初は道行くお姉さんにかわいがられたり、あちこち駆けてみたりと自由を謳歌する彼だったが、凶暴なボス犬に追いかけ回されたり、犬嫌いのおばさんにゴミを投げつけられたりと散々な目に。
『人間に戻りたい』と願った彼は、神様が提示した試練をクリアしていくのだった。
「そうか、こいつはちゃんと元に戻れるんだな」
どこかホッとした風にライが呟く。空想の世界とはいえ、元の暮らしを取り戻した例を見て安心したようだ。
「しかし神様も勝手だよナ。勝手に変えといてああしろだノ、こうしろだノ」
「けど、俺がこの姿なのも、何かやるべき
事があるからかもな。……と思うと、クヨクヨしちゃいられないか」
成否
成功
第1章 第37節
「こ、こういうところは初めてで……き、緊張します」
ニエの緊張を少しでも解そうと、司書は努めて柔らかい声で希望を聞いた。
「読み書きの練習……そうか、文字がいっぱいだとまだ疲れてしまうかな」
その言葉とともに司書が選んだのは『言葉と暮らそう』。本と共に彼は筆記具を渡した。
「これ使っていいよ。本を見ながら勉強してく人もたくさんいるから」
その後司書は、誰かに呼ばれてそちらの方に行ってしまった。
自習席のニエの前にあるのは、おすすめされた読み書きの本と、真っ白いノートと、幾つかのペン。
震える指で、学びの扉へ手をかけた。
温かみのあるイラストで描かれるのは、ニエも見たことがある身の回りの品々。
始まりはわたしのおうちから。おばあちゃんが座るロッキングチェア。その手で編まれるマフラー。
あれ、キッチンでママが困っているよ?
「あ、大変、夕ご飯の材料がないわ」
「ママ、わたしがかってくるよ!」
さて、次の舞台は新鮮な食材が並ぶマーケットへ。お父様が好きな物もそこに描かれていて、それを覚えようととにかく声に出して、書く。
忘れちゃいけない、大事な言葉。これ、おいくらですか?
帰ってきたら、一緒に『ご飯を作りましょう。』
包丁、鍋、コンロ。他にも暮らしの中で必要な言葉が、イラストとともに並ぶ。
一区切りついた司書がやがて戻ってくる。
「あ、あの、他にはどんなものが?」
ニエの頑張る姿に、司書は新しいオススメを探してくれるだろう。
成否
成功
第1章 第38節
「というわけで、妙見子は神威神楽の歴史を知りたく思うのです」
「良いところだよな。俺もあそこの気風とかが好きなんだ」
実は豊穣に領地を持ってるから、今度はそっちの図書館の蔵書も案内するよ、と笑いながら、今日司書が見せたのはこれだ。
『神威今昔天変絵巻』。豊穣で起こった出来事を代々の住職が書き継いでいった、実に趣きある巻物仕立になっている手書きの歴史書である。
小さな祭から都を揺るがす大事件まで、記述は多岐に渡っていた。
「この手描きの絵が、実に味がありますね……」
「これは時の帝を描いたものらしい。一瞬クスッと笑ってしまう絵柄だよな」
テーブルの上で、二人で徐々に巻物を左へと読み明かしていく。勿論、手袋をした上で丁重に、だ。
「司書様、こちら、とても貴重なものと見えますけど一体こちら、おいくらゴールド程なんです?」
「んー、俺が納める区の人がくれたやつだから、お金を払ってはないが……一点ものだし……百連闇市ウン回分……とかかもしれないな」
「ひゃくれ……ン回分!!!???」
大地は冗談のつもりだったが、妙見子には少々ショックが強かったようだ。
「ももももしものことがあればべべべ弁償いたします司書様……!」
「だ、大丈夫だって」
「急に大地クンばりの陰キャになったなコイツ」
「俺までディスるな赤羽。それにしても、今日はなぜ歴史の勉強を?」
「想い人のためですわ」
そう答える彼女の顔は、どこか輝いて見えたかもしれない。
成否
成功
第1章 第39節
「大地さん、久しぶり……!」
「ああ、フラーゴラ。このところ厳しい寒さだったけど、元気だったか?」
久々に見る顔に、司書も笑顔になる。彼女には以前、豊穣の漬物だったり、武術の教本だったりを薦めたのだ。そういえば。
「そうだ、あれっから俺なりにも調べて、新しい本を幾つか仕入れたんだよ。見ていくか?」
「うん……!」
大地が見せたのはサバイバル教本。『命の取引〜食うか食われるか!?〜』と題された、黒と黄の危険色が目を引く一冊だ。
「これは……何の本なの?」
「前に君の好きな人は、ダンジョンで食材を現地調達してると言ってたよな? これにズバリ、モンスターの解体法や調理法が書かれてるんだ。ほら、ヒュドラ肉の毒抜きとかも」
なるほどここに書かれていることは、肉を捌く上でも理に適っているし、下拵えの手法は他の食材にも応用できそうだ。
この本の内容をしっかり学べば、あの人の役に立てるかも。
そうしたら、『やるじゃん』ってワタシを褒めてくれるかも!?
同じものを狩って、同じ鍋を囲んで、あの人の胃がワタシが作ったご飯でいっぱいになる様を夢想して、思わずほわ〜んと……。
「……ゴラ。フラーゴラ?」
「はっ……! な、何かな、大地さん」
「他にも、新しいレシピ本もいっぱい入ったんだ。そっちも借りてくか?」
「えっと……じゃあ、みせてもらってもいい、かな」
「喜んで」
目標を持つ若者たちに、新しい知識は確かに血肉となってくれることだろう。
成否
成功
第1章 第40節
「へえ、音楽をやってるのか、イズマは。得意楽器は?」
「ティンパニだったり、ドラムだったり、打楽器全般だよ。大地さんは?」
「俺は中学の時のリコーダーが最後かなあ」
そんなやりとりをするうちに、イズマと大地は、目的の書架に辿り着いた。そこには音楽、楽器にまつわる書が多く揃えられている。その中で彼が選んだものは『〜Session!〜響き合う音と出会う』。
「じゃあ、イズマはこの楽器知ってるかな」
大地が見せたページに大きく載っているのは、木の箱に鉄状の棒のようなものが、縦と横に取り付けられたモノの写真。何やらそれに、女性が手を翳しているように見えるが……?
「いや、初めて見たと思う。それは?」
「テルミン。俺の居た世界では最も古い電子楽器だそうだよ。このアンテナ部分で電波をキャッチして、手で音量や音程を調節するんだ」
電気や電波を使う関係上、練達以外では中々聞けないかもな、とも付け加える。
「直接触らずに音を鳴らせる楽器があるのか。不思議で面白いな」
「うん、俺もいつか聞いてみたいよ」
その後もイズマが経験した楽器、共演したことのある演奏家について、二人で大いに盛り上がった。
「そういや、俺の友達がいいトランペットを持ってるんだ。いつか彼ともセッションしてほしいな」
「大地さんも何か、楽器をやってみたらどうだろう? そうしたら3人でできるし」
「まずは指導を、お願いしていい?」
司書は照れ臭そうに笑った。
成否
成功
第1章 第41節
「こうしてゆっくりお話するのは初めて、でしたよね。リンディスと言います。まずは改めて、ご挨拶させていただきたく」
「えっと、『いんべえだあ』の一件以来だったっけ。自由図書館司書の大地だ。こちらこそ、よろしく」
双方共に深々と礼。礼儀正しく挨拶を交わす本好きと司書の姿がそこにはあった。さて、ここからは本を愛する者同士の名刺交換と行こうではないか。
「一押しの書。シンプルながら難しいお題だなあ」
等と言いながら本を取りに行く司書の姿は、どこか楽しそうですらあった。
ちょっと待ってての十分後、大地の手によく馴染む柔らかい表紙を持って、彼は再びリンディスの前に戻ってくる。
「俺が敬愛する作家は児童文学で有名な人で、俺個人がよく買うのはミステリー小説だけど、今回見せるのはそのどちらでもない」
そう言って彼が開いたのは、詩集『それぞれの空の下』。それも多くの有志が寄せた詩や句が一つの本にまとめられた──謂わば、本来の意味での『同人誌』である。
最後の頁に寄稿者一同の名前こそ残されているが、それぞれの詩歌には誰の作かの名前がない。それが故に、どのような人物がこれを作ったのか、更に想像が掻き立てられるのだ。
「言葉を愛する。その共通項だけで集まった人達の思いが、紙を捲る毎に伝わってくるのがすごく良いんだ。誰もが言葉の魔術師になれるんだな、と」
さて、司書の自己紹介はここまで。今度は、リンディスのターンだ。
成否
成功
第1章 第42節
「ドラネコ……ドラネコ? ぴざねことかじゃなく?」
「ぴざねこ……とは?」
双方知らぬ猫の名に、ぱちぱち瞬きを繰り返す。ドラネコとは覇竜固有のにゃんである、という説明がリスェンからされたなら、大地はああと頷いて。
「覇竜関係の書はまだそんなに数が無いんだけど、その分その記述がある本は早く特定できるかも。少しだけ時間をくれないか」
いずれそちらの本ももっと充実させなくては、という司書の反省はあとに回すとしよう。程なくして、彼の宣言は現実のものとなった。現地に住まう生物学者が記したという『亜竜の地、そこにある息吹』。
これまで自由図書館にあった書籍ではカバーしきれなかった、未開の地における不思議な生き物達の姿がそこには多く残される。勿論そこには、当初の目的であるドラネコの姿も。
「えっ……こういう生き物がいるんだ。でもこんな険しい環境でやっていけるのか、この子達は?」
「その愛くるしい容姿で、人間や他のモンスターの庇護下に入ったり。でもうまくやれなかったり、色々……らしいです。あっ、ドラネコテイルも載ってる」
「どれどれ」
わあ、本当にこの子達の尻尾にそっくりだと、猫好きの司書も目を丸くした。
「ん、嬉しい時は……ゴロゴロと音を鳴らしてすりすりしてくるのか。想像するだに可愛らしいな」
「そっか、あれは喜んでくれたんだ……よかたあ」
共に暮らす家族の事をまた一つ知ることができて、ほっこり微笑むリスェンだった。
成否
成功
第1章 第43節
トキノエは自由図書館に立ち入って、まず少しだけ驚いた。彼の姿に見覚えがあったからだ。
「おい、お前」
「は、はい」
しかしその、なんとも温和で、少し緊張した声音には覚えがない。人違いかと首を傾げた刹那。
「よォ、何時ぞやの兄さン。『鍋』が旨い季節になったナ」
同じ口から聞こえる低い声。あの闇の中で聞いたのと同じ音だ。カレーの匂いを記憶の端で感じた。
「あァ、今度は普通の鍋が食いてェもんだな」
「確かニ」
さて、当の司書がキョトンとしてるので、話を目的に移すとしよう。
「えっと、ミステリーなんかも、謎が分かればスッキリするけど……多分求めてるのはそっちじゃないよな」
「ああ。気持ちよく終われるっつーか、スカッとするっつーか」
「読後感が爽やかな一冊か。少し待っててくれ」
トキノエの希望と齟齬が無いよう、更に確認を重ねて。司書が選んだのはこの一冊だ。
水仙寺清彦作、『常緑人情伝』。
無口で無表情な剣客、橘と、お調子者の相棒、常磐に出会う人々の話が一話完結型で幾つも書かれている。
話の流れもスッキリきっかり勧善懲悪、良き人が確かに救われる話だ。
「橘が無口な分、常磐が周囲の人とよく喋るんだけど、彼の流れるような台詞がとてもリズミカルで、声に出して読みたくなるんだ」
「ほう、しかもどの話から読んでも分かりやすそうだな。悪くねぇ」
これなら知り合いにも薦められるだろうか。司書の案内を受け、カウンターへと足を運んだ。
成否
成功
第1章 第44節
図書館の門を元気よく開け、男が入ってくる。そして一言。
「ウルタールが帰ってきたぞ、いっぱい可愛がってくれよ!」
「君のようなウルタールがいるものか」
目の前の青い彼は、大地の愛猫と特徴が──強いて言うなら鱗と尻尾がある所しか──全く合致していない。思わず辛辣にツッコんでしまう。
「……あれ?ウルタールって誰だ? アンタと会ったのも初めてじゃない気がするぜ。もしかしてアンタがウルタール?」
「俺は大地。ここの司書。列記とした人間。君は?」
あの夢からは一旦覚めよう。ジュートの名と、彼が求める本を聞くと、司書はすぐさまそれを見つけ出した。
「『月と黒猫と幸運の女神』。ひょんなことからとある女性を匿う事になった男マチスが、色んなトラブルに見舞われたりするドタバタコメディだ」
金髪の激マブに助けを求められる。幸運。
その直後、車に水をビシャアってかけられる。不運。
それを見た人がタオルを貸してくれた。幸運。
帰ってシャワーしたらお湯が全然出てこない。不運。
目まぐるしく彼を襲う幸運と不幸。徐々にそれが加速し、段々めちゃくちゃヤバい事態に。
果たしてマチスはこの先生き残れるのか。そして(タイトルでオチてはいるが)謎の女性の正体は!?
「へぇ、飽きさせない展開で面白いな。この本に会えてラッキーだ」
「そう言ってくれると幸いだ」
すると、足元でにゃあんと鳴く声が。それがジュートにとって吉兆となるのか、まだ誰にもわからない。
成否
成功
NMコメント
どうも、なななななです。
皆様は最近、どういった本を買い求めたでしょうか。
ななは科学の本を買おうか検討しているところです。
以下、詳細になります。
●場所
『自由図書館』
赤羽・大地が管理人を務める私設の図書館になります。
かつて幻想のとある貴族が住んでいた場所を現在、彼らが住居兼図書館として保守管理しながら利用しています。
●目的
『貴方にピッタリの一冊を見つけること』。
今回のラリーは、要するにほんわか日常回のようなイメージです。
どうかこの自由図書館で、貴方好みの一冊を見つけてください。
選択肢やプレイングを利用して、ななななな、もとい赤羽・大地に読みたい本の要望を伝えてみてください。
(実在のあれこれに踏み込まない範囲で)きっと、おすすめの一冊を提供させていただきます。
●NPC
『自由図書館司書』赤羽・大地
この建物の管理人を務める青年です。基本的に温厚な本の虫といった性格ですが、煽られると『赤羽』がキレます。
彼等抜きで静かに本に集中したいといった場合も、選択肢でお知らせください。
それでは、図書館で良きひとときをお過ごし下さい。
読みたい本のジャンル
どういった本をお探しか、大まかな傾向を知らせてください。
【1】小説・絵本
ミステリー、ホラー、恋愛物、ファンタジー。
細かなジャンルはプレイングでご指定ください。
【2】図鑑・辞典類
植物図鑑、動物図鑑、百科事典等。
国語辞典等もここに含みます。
細かなジャンルはプレイングでご指定ください。
【3】学術書
医学書、歴史書、読み書きの本、武術の教本等。
細かなジャンルはプレイングでご指定ください。
【4】その他
雑誌、新聞のバックナンバー。
または漫画など、上記に当てはまらないものであればここをご指定ください。
NPCとの絡み具合
当シナリオに登場する赤羽・大地がどの程度絡んでよいか、指標をお伝え下さい。
【1】◎
ガッツリ本について語ります。
彼自身もその本のどこが好きか熱意を持って言ってきます。
【2】○
さらっと本の紹介だけして、元の業務に戻っていきます。
上記より絡みがライトです。
【3】✕
このシナリオに参加くださったPCさんと、本だけを描写します。
一人で静かに本の世界に浸りたい場合はこちらをお選びください。
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