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シナリオ詳細

<Phantom Night2022>ふぁんとむにゃいと

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ねこのめ商店街のファントムナイト
 10月の終わりの日。その日から、混沌世界には不思議な魔法がかかる。
 古い、古い御伽噺(フェアリーテイル)に謳われる、不思議な不思議な魔法。
 その夜から凡そ4日間、人々は『なりたい』姿になれるのだ。
 ――だから、その4日間は『おかしなもの』から目を背ける練達にとっても特別なのだ。
 その期間だけは『現実』を受け入れられない人々だって、『仮装や大道芸』と受け入れる。ひっそりと翼を隠して生きている人も、尻尾を隠して生きている人も、練達の人たちからも受け入れられるのだ。

「悪魔の紫芋フラペチーノ、くださいな」
 頭に悪魔の角カチューシャを装着した女子高校生に「待っててにゃ」と応えた店主の『ねこ』が、暫く経過してから完成したフラペチーノを手渡す。紫芋ソースの紫に、生クリームの白。仕上げに真っ黒なチョコレートソースを掛け、コウモリリングのついたストローをさし『バエる』フラペチーノだ。
「ありがとー、かわいー」
「いいじゃん。写真撮ろ」
「店員さんもめっちゃ可愛かったよねー」
「ねー、めっちゃやばい。仮装本格的。小さい子がやってるのかなー」
 美味しかったら他の子にも勧めようか、なんて話ながら集団が去っていく。
「うーん、やっぱりお客さんいっぱいは嬉しいにゃね」
「いつもも悪くにゃいけどにゃ」
 フラペチーノを提供したアッシュグレーのねこがにっこり笑えば、向かいで和菓子を提供している三毛猫がにんまりと笑った。
「おじちゃん、とりっくおあとりーとー」
「ああ、はいはい」
 金魚の兵児帯を揺らす子供に手を差し出され、和菓子屋の店主は猫柄の金太郎飴の包みを差し出した。この飴に描かれている猫は、店ごとに違う。勿論、和菓子屋の店主お手製だ。
「でもま、他所の子供に沢山会えるのは嬉しいかにゃ」
 ありがとうと走り去っていく子供の背中を見送る店主の顔はえびすのようにまん丸だった。

●白猫のいざない
 にゃあ、と足元で猫が鳴いた。
 猫は目を細めて笑ったような顔をすると、身軽にぴょんっとローレットのカウンターの上へと飛び乗り、口を開く。
「にゃあ、好い夜を過ごしているかにゃ」
 ちょっと喋りにくいにゃ……と口をもごもごとさせている猫は、ただの白猫でも獣種でもない。ファントムナイトの不思議な魔法――『なりたいもの』に変貌する魔法に掛かった劉・雨泽(p3n000218)だ。
「喋りにくいし、歩くの沢山足を動かさにゃいといけにゃいし、スプーンもフォークも上手く持てにゃいし、思ったよりも不便が多かったにゃ……っと、そうにゃにゃくて。
 ほら、せっかくの不思議な三日間でしょ? 僕とねこのお祭りに行ってみるのはどうかにゃって、誘いに来たのにゃ」
 雨泽が誘うのは練達に在る『ねこのめ商店街』という場所だ。
 普段は練達の人たちを寄せ付けないまじないをしている場所だが、ファントムナイトの日だけはまじないが解かれている。「『菓子問屋街』と一緒でね」と雨泽が付け足した。
「よかったら、一緒にどうかにゃ?」
 白猫はふにゃっと笑って、手招いた。招き猫さながらに。

GMコメント

 ハッピーハロウィン! 壱花です。

●目的
 ファントムナイトを楽しむ

●ロケーション
 ファントムナイトの日。時間帯はお昼から夜です。(活動時間に好みがあればお知らせください)
 場所は練達の『ねこのめ商店街』。
 いつもは商店街なのですが、折角のファントムナイトなので外の人を呼び、各々の店の前に出店を出して楽しんでいます。
 商店街の通りには出店がずらりと並び、通り抜けるとある広場にはやぐらが建っています。やぐらを囲み、猫たちが踊っています。
 あなたたちは『なりたいもの』に変貌する魔法に掛かっています。掛からない人も居るようですが――折角の特別なお祭りの日。魔法に掛かりにいってみませんか?

●ねこのめ商店街
 練達にて、猫の夜妖や獣種が営む商店街です。『おきつね菓子問屋街』同様、普段は人が入ってこれないようにまじないが掛けてあります。
 街の人たちは、みんなねこです。二足歩行の美猫だったり、大きな化け猫だったり等、色々なねこたちがいます。

※『おきつね菓子問屋街』は、狐の夜妖や獣種が菓子問屋を営んでいる街です。
 (冒険にあります)

●プレイングについて
 一行目:行き先【1】~【4】番号をひとつ選択
 二行目:同行者(居る場合。居なければ本文でOKです)

 一緒に行動したい同行者が居る場合は二行目に、魔法の言葉【団体名+人数の数字】or【名前(ID)】の記載をお願いします。その際、特別な呼び方や関係等がありましたら三行目以降に記載がありますととても嬉しいです。

 例)一行目:【1】
   二行目:【僕と知らない人2】(※2人行動)
   三行目:よく遭遇する警察関係者が気付いたら居ました

 ☆イベシナなので特に行動は絞ったほうが良いです。
 ☆何の魔法(or仮装)なのか記されていると、その旨の描写があるかもしれません。

【1】出店を楽しむ
 商店街の通りの店々の前に出店が出ています。
 アッシュグレーの美しい毛並み『八百屋さらさ』の新鮮紫芋から作られる悪魔的紫芋フラペチーノ。
 カールしたおヒゲが魅力的な『BAR猫のヒゲ』ママの特製にゃんぷきんスープ。
 ふっくら大柄三毛猫『和菓子屋金次郎』の猫まんじゅうに猫もなか。
 などなど。洋食屋では具沢山のクラムチャウダー、ケーキ屋ではパンプキンパイにスイートポテトパイ、パン屋ではにゃんこあんぱんに南瓜ねこパン、おもちゃ屋では猫のお面や肉球タトゥー……と、様々なお店があります。

【2】やぐらの下で踊る
 商店街を抜けた先の広場にあるやぐらを囲んで、ねこたちが踊っています。由緒正しい猫又文化に習い、手ぬぐいを被って踊っているねこが多いです。が、マネしなくても大丈夫です。(希望者は、やぐら近くの運営テントで猫の絵柄の手ぬぐいを貰えます)
 両手を上げて、よいよいと左右に招くようなポーズで踊ります。え、盆踊り? 違います、ねこ踊りです! 猫は踊るものなのです。
 音楽は『かつお節』『にゃんこフィーバー』『おさかな節』『またたいてビーニャス』等の(ねこのめ商店街では)有名ソングが流れており、みんなノリノリで踊っています。

【3】Trick or Treat?
 商店街のねこや一般のお客たち(モブNPC)、もしくはお連れ様にTrick or Treat!
 お菓子が無くても大丈夫。出張販売中の『狐の駄菓子屋』でお菓子の取り扱いもあります。商店街のねこたちは基本的にはお菓子をくれます。たまに悪戯もしますが、可愛いものです。
 色んな人からお菓子を貰って歩きたい人や、仲良しさんたちと悪戯したい方はこちらへ。誰かに悪戯をする場合、下記『ご注意』をお読みの上でお願いします。

【4】その他
 広場等の隅にあるベンチで休んでのんびりと過ごしたり等、『できそう』な事ができます。
 趣旨にあわない等、お応えできない場合もあります。

●EXプレイング
 開放してあります。
 文字数が欲しい、関係者さんと過ごしたい、等ありましたらどうぞ。
 可能な範囲でお応えいたします。

●NPC
 劉・雨泽(p3n000218)が同行しております。
 今年のファントムナイトは白猫(成猫サイズ)です。
 どの行き先にも顔を出せるので、話し相手が欲しい、誰かとぶらっとしたい等、御用があればお声掛けください。

●ご注意
 公序良俗に反する事、他の人への迷惑&妨害行為、未成年の飲酒は厳禁です。
 年齢不明の方は自己申告でお願いします。

  • <Phantom Night2022>ふぁんとむにゃいと完了
  • GM名壱花
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2022年11月18日 22時10分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
シラス(p3p004421)
超える者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
メリッサ エンフィールド(p3p010291)
純真無垢
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)
焔王祈
リスェン・マチダ(p3p010493)
救済の視座
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

サポートNPC一覧(1人)

劉・雨泽(p3n000218)
浮草

リプレイ

●ねこたちの魔法の夜
 ――ふあ。
 黒猫がベンチで欠伸をした。
 にぎやかな広場へ耳を傾けて、それからすぐにぺたんと耳を伏せ、目を閉じる。
 すやすやと眠る猫もいれば、駆ける猫も居る。
 するりと人々の足の間をすり抜けて、塀へとぴょん。太陽で温められた屋根へとぴょんと飛び乗った三毛猫と茶色の猫は、ころんと転がって気持ち良さげに目を細めた。
 魔法に掛かって猫になった『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)と彼女の相棒は、屋根の上から広場から聞こえてくる軽快な音楽に三角耳をピクピク動かして。
(ふあ、おひるねしちゃってもいいですよね)
 尻尾をぱたりと動かして、すやすや気ままに夢の中。
 少し離れた場所から響く音楽は小さいけれど、下の商店街から聞こえるのは賑やかな音。人々の楽しげな気配に、話し声。それから――
「とりっくおあ、とりーと!」
 小さな可愛いクリーム色の子猫が、『星に想いを』ネーヴェ(p3p007199)と『花に願いを』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)に両手を差し出した。悪戯なんてされる気のない『お菓子をちょうだい!』の姿勢にネーヴェはくすりと微笑んで、その手に甘い砂糖菓子を載せてあげる。
 今日は互いの色を交換し、そして『ないはずのもの』があるネーヴェの足取りは弾んで、いつもよりも溢れている笑顔にシャルティエは瞳を細める。お菓子をあげる彼女も、いたずらに驚く彼女も、お菓子を頬張り微笑む彼女も――どのネーヴェからも視線が外せない。
「ねえ、クラリウス様? トリックオアトリート!」
「……え? あ、あー……」
 慌てて菓子を探るけれど、最後の菓子を先程あげてしまったことを思い出す。
「菓子がないなら、悪戯です、ね?」
「お、お手柔らかにお願いします……」
 くすくすと楽しげに笑ったネーヴェはさて悪戯は何にしようかと、参考にしようと悪戯をしてもらった子猫のことを思い出す。
 子猫はネーヴェをしゃがませて、えいっと背伸びをして、それから鼻を――
 ぽんっと普段の瞳の色のようになったネーヴェを、シャルティエが覗き込む。
「……っ! えい!」
「わっ、……あはは!」
 顔を見せじと慌ててくすぐれば、ネーヴェ色のシャルティエが身を捩って笑うのだった。
「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞー! にゃー!」
 艷やかな銀色の毛並みの子猫――『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がにゃーっと腕を上げてピンクの肉球を見せれば、くすくす笑った大人の猫が飴をくれた。
「とりっくおあとりーとにゃー」
「にゃー、交換しようか」
 魔女帽子の子猫と狐の駄菓子屋で購入した菓子を交換したあとで、ヨゾラは「あっ」と気がついた。
 悪戯されればよかったかな。
 次に声を掛けられたら、そうしよう。
「あ、劉さん」
 チリンとなった鈴の音に気がついた『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は、白猫――雨泽へと「祝音だよ」と声を掛けた。
「にゃ、祝音。お揃いだ」
 同時に一緒に回ろうかと口にして、同時だったことに笑い、ふたりは足取りは軽くお菓子をもらいに繰り出した。
「悪戯されてしまおうか」
「えっ、いいのかな」
「お礼にお菓子をあげれば大丈夫だよ」
 子猫たちの悪戯でもみくちゃにされながらも、ふたりは楽しげに笑い転がった。
「見て見て、エスト。お菓子がいっぱい」
「ソアが怖かったからかな?」
「エストも迫力あったからじゃない?」
 たくさんのお菓子を抱えた『猛獣』ソア(p3p007025)と『賦活』エストレーリャ=セルバ(p3p007114)のふたりは通行の邪魔にならないように端に寄って、戦利品たるお菓子たちにふくふくと笑っていた。
「ね。ソアはお菓子が良い? それとも、悪戯かな?」
 猫耳を生やした吸血猫が悪戯っぽく笑えば、「ふっふー」と魔女も口元をにんまりさせる。
「どっちも」
 それならお菓子と、悪戯を。
 棒菓子を咥えたエストレーリャがソアの頬へと手を添えれば、ソアは反対側のエストレーリャの頬へと手を添え、カリッと菓子をかじっていく。
 甘くて美味しくて、可愛くて楽しくて、ドキドキする。
 溢れる吐息は甘く、癖になってしまいそう。
「ね、おうちに帰ったらまたやろ」
「うん」
 ふたりは手を繋ぎ直し、そうと決まったらお家で食べる用のお菓子も貰わなくちゃと人混みの中へ。
「にゃー、おさかにゃにゃー!」
「おさかにゃー!」
 ちいちゃな子猫たちが、にゃあにゃあと騒いでいる。
「うっ、見つかったー」
 カタクチイワシの稚魚の人魚になる魔法に掛かった『ちいさなダークエルフ』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は隠れていた箱から飛び出し、とてとて走る小さな猫たちから逃げ出した。
「おいしそー」
「美味しそう、じゃないんだよー?」
 小さいけれど、完全に捕食者のそれ。
 普段の料理ならいいけれど、自分自身はごめんである!
「とりっく・おあ・とりーと! って、待ってくれ、俺は古代からよくいる通りすがりのカジキマグロだ」
「おさかにゃにゃーー!」
 子猫たちに襲われているのはゴリョウだけではない。別の場所でも後光を放ちながらぴょんと子猫たちの前に飛び出た『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)もまた、被害にあっていた。
 アーマデルも、全力で逃げる。逃げるしか無い。
 つい先程までつぶらな目をしていた子猫たちが、獲物を狩る目をしているのだ。
 こんなはずではなかったのに――!

 あちらこちらで、Trick or Treatと声が上がっている。
 その言葉は覇竜から出てきてそう経っていない『ONIGIRI』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)には不思議な響きに思えた。
「妙見子様、とりっくおあとりーと……とは何でしょうか」
「陽キャの……ではなく、ええっと」
 明るい気配に思わず頭を抱えたくなりながらも『宙より堕つる娘』水天宮 妙見子(p3p010644)は「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」という意味だと教えた。
「なるほど! では私も行って参ります!」
「あ、ヴィルメイズ様! あまりウロチョロしないでくださいまし!」
 彼の姿はあっという間に人混みに消え、妙見子の声は最後まで届かない。
 けれどもすぐに戻ってきたヴィルメイズの腕には……何故だか白い三角が。
「もう。はぐれないでくださいね」
「ふふ。酔狂で、楽しいイベントですね」
 逆に声も掛けられたから菓子は無くなったけれど、おにぎりでお腹は膨れますねと満足気に微笑うのだった。
「これが……ハロウィン」
「混沌のハロウィン……ファントムナイトは、違った楽しみがあるわね」
 珍しげに目をしばたたかせる『(・∞・)』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)に『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が微笑んだ。
「……そういえば本当にユーフォニーさんは?」
 何故だか今日は『魔女の思考』が沸いてこないと穏やかに過ごしていた『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がふと気付く。もしかして、逸れてしまったのだろうか。
「Trick or Treat!」
「わ……!」
 キョロキョロと視線を動かすマリエッタが背後からやっつの毛玉に突然襲われた。ふかふかな柔らかなドラネコたちは、『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)の悪戯。抗えないふわふわに、マリエッタはもふもふの乙女にされてしまう。
「マリエッタ!? えっ、ユーフォニー!?」
 一瞬でもふもふの乙女になってしまったマリエッタに驚いたセレナが声を上げると、やっつのふわもこたちが標的を変えた。
「……わぷっ!」
 顔面が、幸せなふかふかで包まれる。
 それから何とも言えない香ばしいような香り。
 スゥーッと呼吸をすれば幸せ成分が胸に満ちていく。
「……し、しあわせ……これがドラネコの魔力なのね……」
「ふふふ、蕩けた可愛い顔は頂きましたっ」
「えっ、ユーフォニー!? わあぁ!?」
 ユーフォニーがにんまりと微笑う頃には、やっつの毛玉たちは標的を変えている。一斉にシュバッとムエンの尻尾に飛びついて、にゃんにゃんとじゃれついた。
「ふふっ、悪戯成功ですね♪」
 あ、マリエッタさんのお菓子美味しそうですね。キャンディと交換してください。
 なんて満足気なユーフォニーだが、三人もやられっぱなしではいられない。
「マリエッタもセレナも仕返しタイムだ!」
 ユーフォニーへTrick and Treat!!
 ファントムナイトの夜に上がる悲鳴は、血に染まらぬ楽しげなもの。
 もふもふな悪戯で、乙女たちの間に笑顔の花が咲いていた。
「かわい子ちゃん達、こっちへおいで」
 今日の『お師匠が良い』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は強くてカッコ良くて紳士なお師匠スタイル。
「いい子にはこの小魚クッキーを……こらこら。尻尾に勝手に触ってはいけないよ」
 だから言葉遣いだっていつもより気を付けて――
「ちょっと! 帽子とマスクは!」
 気を付けて――
「( ‘ᾥ’ )うわぁ~ん! お師匠! 可愛い皮を被った猛獣がいじめるよ~!」
 姿が変わってもカッコ良くはなれませんでした。
「よおバカ犬」
 知った声の主は、『組織』に属する凄腕エージェントのビンセント。
「予約してた予防注射が今日だって事、まさか忘れたとは言わねえよなぁ? あぁん?」
「あっ」
 てへっと笑っても、わざわざ迎えに来たビンセントは誤魔化されてはくれない。
「やだぁ~っ! ご勘弁を~!」
 むんずと首根っこを捕まえられ連行されていくリコリスを見た子猫たちの間で、『お菓子を食べすぎると「人食い兎」に浚われちゃうんだって!』との噂が囁かれるようになったそうな。怖いねぇ。

 Trick or Treatの声が響く商店街では、食べ歩きも人気だ。
 人々は香りやのぼりで興味が惹かれた出店へと立ち寄って軽食を楽しんでいる。
「雨泽、ご機嫌……だね?」
 特徴的な片仮面をつけた『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)が首を傾げれば、うんと素直な声が返ってくる。
 とてとてと並んで歩くミィと雨泽が楽しそうで、商店街のひとたちもみんな楽しそうで、チックは淡く微笑みながら和菓子屋へと立ち寄った。
「……はい」
 雨泽の前に差し出された猫まんじゅう。
 チックとそれを交互に見た雨泽は肉球を見せる。
「チック、今日の僕は可愛いけれど少し不便にゃんだ」
 歩くと物は食べられない。だから。
 ――抱えてくれる?
 白猫が甘えるように目を細め、微笑った。
 にゃんぷきんスープはほっこり南瓜味。
 クラムチャウダーはしっかりアサリ味。
 ほこほこ湯気立つ美味しさに頬を上気させ、猫の花嫁姿の『おはようの祝福』Meer=See=Februar(p3p007819)は商店街の出店を見て回る。
「あのね、お土産にしたいんだけど、オススメを教えて?」
 その人は甘いものが好きなのだと伝えれば、灰猫がフラペチーノを手渡しながらそれならねと告げた。
「金次郎さんのところの猫まんじゅうがオススメにゃ。いっぱいパクパク食べれちゃうし……実はね、いちごクリームとか変わり種もあるのにゃ」
 Meerは礼を言い、和菓子屋へと向かう。
 ――が、ことんと頭の上から星が落ちてきたみたいに、「あれ?」という気持ちが落ちてきた。
 けれど、それが何なのか。
 Meerには解らない。
 忘れてしまったから。
(まあ、いっか! たくさん買って帰って一緒に食べよっと!)
 一緒に美味しいものを口にする至上の時間。それを想像して笑みを浮かべたMeerは和菓子屋へと駆けていく。
 忘れてしまった感情に気付かずに。
「ルチアさんお待たせしました!」
「おかえりなさい、鏡禍」
 ここで待っていてとベンチに王子様を置いてどこかへ行っていたわんこが尻尾を振りながら帰ってきた。『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)の手にはホカホカと湯気立つお椀がふたつ。まずはそれを『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)のいるベンチに置いて、それから……と腕から下げたビニール袋からパンを取り出した。
「気に入ってくれるのがあるといいんですけど」
 にゃんぷきんスープ、猫まんじゅう、猫もなか、南瓜ねこパン……と、猫づくし。
「猫が好きなの?」
「いえ。ただ……ルチアさんに喜んでほしくて」
 ルチアは食べるのが好きで、鏡禍はそんなルチアが美味しそうに食べているのを見るのが大好きなのだ。
(わんこの姿で来たことよりも、ずっと……)
 いつだって彼は、想像もつかないところから驚かせてくれる。
 赤くなる頬を隠し、ルチアはぱくりとあんぱんに齧りついた。
「ほら、狼さん。そのお口に付けてる口輪を外してあげる」
 そのお口ではなぁんも食べられへんよ?
 そっと赤ずきんが狼の口輪へと手を伸ばす。
 その手を一度『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は掴むけれど、すぐに離されて。『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は望むままにベルトの金具へと手を掛けた。
 その口輪は『万が一にも嬢ちゃんを傷つけないように』と願った表れだったのに。
 それなのに赤ずきん自らが外してしまうのだから、仕方がない。
「うちはね、狼さんに食べられたい赤ずきんやの」
「……おいおい、自分から狼を構いにくる赤ずきんがどこにい――、っ!?」
 自由になった途端に飛び出す軽口は、にゃんこあんぱんで封じられる。
「今日はうちの代わりにこのお猫さんで我慢してくれる?」
(……あぁくそ、味なんてわかりやしねぇ)
「いい子やね。おいし?」
 その悪戯な笑みは、ずる賢い狼よりも性質が悪い。

「わー!? ヴァリューシャ! ねこだよ! ねこが踊ってるよ!」
 商店街を通り抜ければ、広場のやぐらの下ではねこたちが踊っている。
 商店街を通り抜ける間もニコニコだった『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の表情は幸せ一色で、傍らで本当ですわねと顎を引いた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)にもその笑顔が移るよう。
「マリィ、手ぬぐいをつけてあげますわね」
「ありがとう、ヴァリューシャ!」
 受付で配られている手ぬぐいを頭に装着すれば、他の猫たちとお揃いだ。
「ヴァリューシャ上手! とっても可愛いよ!」
「ありがとう!マリィもとっても可愛くてよ!」
 招く幸運はきっと、互いに相手への。
 笑顔を溢れさせたマリアがヴァリューシャと愛称を口にして、幸せだと直接伝えてくれるのが愛おしい。
 来年も再来年も、その先も。ずっと一緒を誓い合う。
「こう……えっと、こう、でしょうか」
 勇者姿の『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)も手ぬぐいを頭に巻いて、周りの猫たちを真似て踊りにくわわった。
 傍から見れば簡単そうなのに、真似てみるとちょっと難しいような気もするから不思議だ。
「ふふ。これはなかなか楽しいですね♪」
 やぐらをぐるぐると回る猫たちとひとつになれたように感じて、メリッサは笑みを浮かべながらねこ踊り。
「おぉ、あれが噂のねこ踊りですね」
 笛の音に誘われてやってきた桜餅――『赤薔薇の歌竜』佐倉・望乃(p3p010720)は、猫たちが踊るやぐらを見て口をまぁるく開いた。
 早速その輪に飛び込んで、右に左に、にゃん、にゃん、にゃん♪
「ふふ、望乃、うまくリズムに乗れてるじゃねえか」
「はい、フーガさんもご一緒に」
 見るに留めるだけだった『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)の手を引いて輪に加わらせれば、慣れぬ動きでフーガもにゃんにゃんと踊りだす。
 右に左に、にゃん、にゃん、にゃん。最後はくるりと回って可愛く、にゃぁん♪
「……どうよ!」
 旅の恥は掻き捨てだ。楽しんだ者がちだと思っていても、捨てきれなかった周知が顔を赤くして。その顔に望乃がコロコロと微笑った。
 後から悪魔的紫芋フラペチーノを食べに行こうと約束して、はい、もうひと踊り!

「ん、美味い」
 あちらこちらの出店を覗いて回った白兎の着ぐるみ姿の『ねこのうつわ』玄野 壱和(p3p010806)が一番気に入ったのは洋食店のクラムチャウダーだった。
 夕方から一気に気温が落ちたから、温かさが心地よい。
(そういやこいつらって猫舌なんだろうカ)
 けれどやはり、異世界の『猫の王のうつわ』としては少し気になる。
(まあ、猫それぞれか)
 猫たちが楽しそうに過ごしている。
 その姿に壱和は嬉しさを覚えるのだった。
 夜妖と獣種の商店街のねこたちは楽しげで、その姿をのんびりと見て回る『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)の瞳も柔らかい。
 練達で、獣種や夜妖が『着ぐるみ』等と偽らずに伸び伸びと過ごしている姿に、いいなと思ったのだ。
 普段の練達にもこんな場所があればいいけれど、練達という国の生い立ちを思えば難しい。だからこそ、ここの住人たちにとってはかけがえのない場所なのだろう。
「……また……ここに来れたらいいのに……来れるかな……?」
 きっとそう、また、いつか。
「んんん」
 ベンチで寝ていた黒猫――『竜剣』シラス(p3p004421)は伸びをする。
 自由にのびのび、お腹を出して寝ていたって、ここでは気にかける人はいない。出店で買ったお菓子で腹を満たし、惰眠という幸せな時間を堪能したシラスはぴょんっとベンチを飛び降りた。
 魔法に掛かる時間はそろそろ終わり。
 尾を揺らし、足跡残し、ファントムナイトにさよならを。
 来年もまた、のんびりと楽しむために。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

素敵なファントムナイトになりましたでしょうか。
魔法が解けたら、足跡残して日常へ。

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