シナリオ詳細
第1回フィッシャーズ・レイク杯
オープニング
●海洋王国伝統フィッシング大会はっじまるよ!
「へえ、ここがフィッシャーズ・レイクか……」
キータは会場をぐるりと見渡した。
なかなかに大きい湖だ。
今日は、ここフィッシャーズ・レイクで海洋王国主催の釣り大会が行われる日だ。
第1回フィッシャーズ・レイク杯。
はじめは湖の「外来種の駆除」の目的で始まった小さな大会だったが、今回は正式に海洋王国の協賛ということもあり、人は結構多い。
開催までの時間にはまだ早いが、すでに釣り糸を垂らしているものたちもいる。
(へへっ、これで優勝すれば、俺の経歴にもハクが作ってもんだ)
新米冒険者キータも、はりきっておニューの釣り竿を持ってきていた。
といっても、本格的な釣りなどはやったことはないが……。
(これで優勝したら、お貴族様と縁ができたりして? そしたらお貴族様にスポンサーになってもらって、船を出すってのもいいなー、そしたらそしたら……)
糸を垂らしつつ、幸せな妄想にふけっている……。
「へっ、兄ちゃんよう、その釣り竿で参加するってのか?」
「ああ?」
屈強な男たちが声をかけてきた。
思いの外体格が良かったので、威勢の良い反論の言葉は即座にひっこむ。
4人はおそらくはチームなのだろう。
なぜか、酸素ボンベを背負ってモリを持っている。
「そ、そういうあんたら、釣り竿はもってないみたいだが? どうやって魚を釣るっていうんだよ?」
「おいおい、ここは海洋王国だぜ? 魚を捕る手段は、何だってありなのさ」
「そんなのありか?」
慌てて審査員に聞いてみるが、曰く、「生き物を外から持ち込んだり、極度に周りに迷惑をかけたり、環境破壊したりさえしなければ、湖から魚を取り出す手段は大会当局は<問わない>」ということだ。
なんともおっそろしい大会である。
「マグロ、とったぞおーーー!」
歓声が上がる。
「ええ、マグロ!?」
湖なのに?
アリなのかよ……。
アリなのである。ここ、フィッシャーズ・レイクでは。
●依頼
「それで、依頼の内容だ……」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は依頼書をめくる。
「海洋王国のフィッシャーズ・レイクという湖で、釣り大会が行われる。
第1回フィッシャーズ・レイク杯。
第1回という触れ込みだが、こいつの前身となる大会は行われているのさ。
別名、「異種格闘技釣り大会」だ。……毎年けが人も出るそうだ」
ショウはあっさりとそう言ってのける。
「で、海洋からの依頼の内容は、釣り人の安全を守ることだ。無論、ついでに大会に参加しても構わない」
ショウはエントリー用の用紙を何枚か取り出した。
「でかい魚が釣れるかは、運しだいってところか。ま、過去には死人も出ている。注意することだ」
- 第1回フィッシャーズ・レイク杯完了
- GM名布川
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年09月05日 20時51分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●フィッシャーズレイク杯
「九鬼とクライムも一緒に釣り人の安全を見張るついでに参加してみないか……!」
クライムがヨルムンガンドと九鬼を振り返る。
「勿論目指すなら優勝だよな?」
「勿論……やるからには大物狙いだ……! 大きい魚取って一緒に食べようなぁ……」
クライムはヨルムンガンドが夕食のことを考えていることを察した。
「手段を問わない大会だなんて……なんとも混沌らしいと言うかなんというか」
九鬼はせっせと命綱を結んでいる。
「九鬼とは今回が初の共同線だな、……お前も何だか……ヨルに苦労させられてそうだな」
「魔法漁師セララ参上! 優勝目指して一番でかいのを釣っちゃうよ!」
『魔法騎士』セララはポーズを決める。
「釣りであれなんであれやるからには勝ちに行く」
セララ 、クロバと汰磨羈は【MGR】としてエントリーだ。
「安全の為に、かの巨大大トロを刺身の酢飯で寿司にするべし!」
汰磨羈の号令に二人が続く。
「我々の優勝によって、湖の安全は守られるのだ」
ライバルたちは挨拶を交わす。
「参加するからには優勝狙いです」
フロウは手入れの行き届いた釣り竿を手にしている。
「海の上なら戦場だが、これは大会だからな。楽しくやってほしいもんだな!」
レッドは、カイトの操る紅鷹丸に同乗する。
ヨハンが陸からこちらに手を振っている。
大会参加者が釣り場を求めてひた走る。
「詳しいやつは確かな場所狙ってそうだし…なら、俺は自分の『直感』にクる場所でつろっと!」
多くのものが他人に追従する中、自分の直感を信じるのがなずなだ。なずなは二本の釣竿を担ぎ迷わず歩いていく。
Morguxも、人込みを横目に人気のいないほうへ船を向けていた。
「おさかないっぱい! つりたいかいだー! ヾ(≧▽≦)ノ」
Q.U.U.A.は実体化されたホログラムをぶんぶん動かす。
「つりたいかいは、みんなたのしくなかよく! ケンカしちゃだめだよー! (´▽`) だからきゅーあちゃんは、おおものねらい!
おおものをきゅーあちゃんがとれば、もうケンカにならないよね!☆(ゝω・)v」
●レッツ・フィッシング!
フロウは桟橋に陣取り、小エビを撒いた。
本命の疑似餌の仕掛けの上に撒き餌用の小エビを入れた袋を、予備の釣り糸で結んだ仕掛けを構築している。
狙いの深さまで落とすと、長さを調整して釣り糸を垂らす。
即座に竿が反応し、釣り人がざわつく。
フロウのギフト、『三度の食事』は、日に三度まで確実に魚を釣り上げるギフトだ。
1度目の手ごたえをスルーする。大物ではない。フロウの狙いは、海洋マグロ一点のみ。
2度目に、ようやく本命と思しき手ごたえがある。
(結構な大きさですね)
一本釣りを狙いたい。
非力な分は経験と技量と体力でカバーする。時間が掛かっても釣り上げれば良し。
相手が疲れ果てるのを待つ。
……長い戦いになりそうだった。
「誰も死なずに済めば良いけど、やっぱ釣りは絶対に楽しまなきゃ損だよな!」
トリフェーンは、黄色の鱗を鮮やかにきらめかせ、水中へと静かに飛び込んだ。
トリフェーンが鼻歌を歌い始めると、周囲の魚は動きを止めて集まってくる。
ノービスサイズをひらめかせ、サケを捕獲。
波間に顔を出すと、太陽が反射してきらめいた。
●トラブル、こもごも
「なるほど、今日の仕事はライフセイバー? ってやつなー? ……はーい、どうかしましたかー!?」
洸汰はぴょんぴょんたろーとともに、湖上を見て回る。
釣竿が折れたと聞けば修理してやり、溺れたものがいるとみれば勇敢に水面に飛び込んでいく。
「ぷはー!」
一人救助し終えて水面に顔を出すと、ぴょんぴょんたろーはくいと洸汰の服の裾を引いた。
「ん? なんかあったー?」
「ああ? 火薬は禁止されてねぇだろ?」
ヴァージニアは強情な釣り客に絡まれていた。
「それだけの知恵があるなら、大物を捕るための策も閃くと思うんだけど……」
相手の出方を見て、ヴァージニアは説得の方法を変える。毒気を抜かれた男たちは、まじまじとヴァージニアの顔を見た。
「っていうかあんた、美人だな」
「こんな大会どうでもいいからあっちで網焼きでもどうですか」
なんと、ナンパに発展した。
「あ、貴方達っ、大会を何だと思って……」
思わず頬に血が上りそうになるのを必死に押しとどめる。
ヴァージニアは、相手の感情を敏感に察してしまう。
と、そこへ、ぴょんぴょんたろーをつれた洸汰がやってきた。
「だいじょぶ? 医務室いく?」
「あ、いえ……」
ふいに洸汰に顔を覗き込まれる。
なんとかかわして警備に戻っていくが、湖の上を吹く柔らかな風が冷たい。
わざと足をばたつかせる釣り客は、不意にポンと肩を叩かれた。
「そのバシャバシャ行為は釣りと関係あるのか? ん?」
恐ろしく頑丈そうな戦棍を持ったゴリョウが、強面をにっこり笑顔で歪ませている。
急速に迷惑客の背が伸びる。さながら警察やヤの付く人に睨まれる不審者の気分だったに違いない。
「こら、他の人にメーワクかかけちゃだめなんだぜー!」
洸汰にびしり、と指をさされる。
「いーけないんだいけないんだー! 運営にいってやろー!」
はたから見てどちらに正当性があるかは言うまでもない。
「釣りとは、悪くない。優雅な時間の浪費というやつだね」
マルベートは、ゆっくりと釣り堀を見て回る。
「此度の釣り場はマグロだのサケだのと色々魅力的な子達がいるようだけど……おや」
「フグはちょっと扱いが難しくて……」
ちょうど美咲が、不用意にフグを食べようとしていた客に注意を促していたところだった。
「フグもいる? それは素晴らしい! 有毒部位も私のギフトがあれば問題ないし、あれは本当に美味しいんだ」
「大丈夫ならいいのだけれど……もし体調を崩した人がいたら、薬も用意してるからって伝えてあげてね」
「もちろん! どうもありがとう」
マルベートはフグの釣り場を聞き、鋭い槍の先端に釣り糸を括って竿代わりにすると、湖の上を飛び周る。
糸を垂らしてしばらく待てば、狙いの通り魚が引っかかる。陸に戻ると魚をクーラーボックスに入れる。
今日は愛しの我が家で可愛らしい魚達を食卓に上げ、祝勝会となることだろう。
●甘美な毒
(リリースしないのだし、できるだけ全部、皆で美味しくいただいて終わりたいよね)
美咲は飛び去るマルベートを見送りながら思う。どうせなら、なるべく命は無駄にしたくないものだ。
「こんにちは! 今日はお互い楽しんで、お魚釣りしようね!」
ニーニアはBBQをする人でにぎわうところにテントを設営していた。
治療にあたる傍ら、釣りの仕方を教わる。
「戦闘で毒を良く扱ってるからね! 気づいたら、対処法とか覚えちゃったよ。思わぬ経験が役に立つこともあるものだねぇ」
「何故だ、何故みんなふぐを食べたがるんだ……!」
史之は、次々と運ばれてくるけが人をテントに運んでいた。
「ふぐは毒があるから、さばくのは免許を持った人だけにしてください……。あるのか? 免許。あるよね? 免許。ちゃんと海洋のふぐ調理免許とってる人いるよね?」
「微妙なところよねえ……」
美咲が首をかしげる。
「あっ、寄生虫が危険だから火を通すことを推奨します」
踊り食いがおいしいじゃないか、という客に史之は一言。
「うかつに食べて、虫に脳みそかじられたら怖いじゃん? あるんだよそういう事故」
態度は一転、良く焼くようになった。
「俺口うるさいおばちゃんみたいだなあ……」
「ケガをするよりはいいんじゃない」
「だね!」
美咲と二―ニアが頷く。
「焼くなら、バター焼きとかどうかな。あ、そういえばさっき、持っている人がいたよね……」
暇を見つけてBBQの相伴にあずかる。
●迷子センター
泣き叫んでいる子どもを見つけたヨハンは声をかける。
(迷子って、可愛らしいトラブルですけど当人はすごく怖いし必死なんですよね)
しゃくりあげる子どもをあやすため、ヨハンは猫耳のライトをピカピカさせる。
さらにコンセント状の尻尾をうねうねとさせると、子どもは目を丸くしてそれを見ている。
(まけてられないよね! (`・ω・´))
キューアはそそくさと木に登る。
ヨハンと子供はきょとんとして、その様子を見守っている。
高い木にロープを括り付けると、何やらパンのようなものをばらまいた。
「あれは……クリームパン!?」
「きゅーあちゃんはダイビング漁法!(`・ω・´)」
スナイパーアイを研ぎ澄まさせると、一点、木の枝を踏みしめる。くるりと身をひるがえし、ノービススピアをきらめかせる。
「とーう!(・∀・)」
スピアはきらりと輝いて、一匹の大きなサケに突き刺さった。そのままの反動で、木の上に戻る。すたっと着地。手の中にはきちんとサケがある。
「まるでカワセミみたいでしょ! どうだ!(>ヮ<)」
思わず拍手。
ヨハンは大会本部につめていた竜胆に迷子を引き渡す。竜胆はしばらく頷いて名前を聞いた後、誰と一緒に来たのか確認する。
「良い子ね」
頭をなでてやると、子どもは笑って胸を張った。
「こっちか……」
精霊に迷子の場所を教えてもらったポテトは、地図を片手に会場を歩いていた。
泣いている女の子に目線を合わせ、手を差し出す。
「きっとお前の両親も探して本部に行っているからすぐに会える」
ゆっくりと歩き、ポテトは本部に子どもを引き渡す。
「お疲れ様。水分補給はしっかりね」
ポテトと離れて不安そうな表情をする女の子。
「そうそう……こんなことがあったのだけれど……」
竜胆が今迄の冒険を面白可笑しく語って聞かせると、真剣な顔をして続きをねだる。
(子供は泣いてるより笑っているのが一番だもの)
●海洋事故にご用心
「む、あれは」
ジェットパックで上空を見回っていた百合子が、颯爽と降下し、釣り客をかかえた。
ハリセンボンが網に混じって、手を刺されたらしい。
ハリセンボンは男の手を逃れ、男の連れへと向かっていく。
間一髪、といったところで、岩陰から現れたシクリッドが鋭い銛で突いた。
「そっちは任せていいっすか?」
「ああ。吾が連れていく。幸い傷は浅い。軽症のようだ」
「了解っす、よろしくっす」
シクリッドは再び湖に潜る。
(ハリセンボンは鈍い種が多かったはずッスけど)
混沌に例外はつきもの。
シクリッドは数えて20匹ほどのハリセンボンを捕まえていた。シクリッドやほかのイレギュラーズの努力の成果か、本日、ハリセンボンに刺された客は驚くほど少ない。
(勝利を目指さないのに参加するのはよくないかもッスけど)
過去の大会で、犠牲者も出てるって聞いたのが気掛かりだった。死人は出てほしくない。
(それこそ自分なりの漁業の腕試しって事で)
「おい、あれ……」
釣り客はざわついていた。熟練の漁師ですら、ハリセンボンを銛で10とも捕まえるものは多くはない。
「おう、どーした? 暴れるなら魚と戦えよ!」
カイトは三叉蒼槍を抱え、釣り客の喧嘩を止めて回っている。しかし、言っても聞かない奴もいる。
「漁師が荒っぽくなるのはどの世界でも変わらんのかねぇ」
ジェットパックで身軽に湖上を見回っていたリオネルは客を一喝した。
「魚以外に手ぇ出そうってバカは、お帰り願おうか?」
まいった、と降参するばかりだ。
マグロがかかったはいいが、かなりの大物。一人の客が海に引きずり込まれる。
「この世界の釣りは、想像以上に激しいんだね!」
周りの客の制止をスルーし、ルチアーノは、SADボマーでマグロを攻撃する。
次々に向かってくるハリセンボンを、ハニーコムガトリングでしとめた。
ルチアーノを一般人と誤認していた釣り客は開いた口がふさがらない。
「頼む、俺の代わりにあのマグロを……」
「これほど危険な大会なのに、命を張って参加するのは何故なんです?」
「海の男ってのはそんなもんさ」
通りすがったカイトが言う。
「いくぞ、レッド。あの魚影を追おう」
レッドはマグロに並走し、レールガンで狙いを定める。何発か打ち込み、弱ったところを手鉤で引き上げる。
あと少し……。縄を空き樽に括り付けた銛を投げた。
「やった! やったー! マグロっす!」
●釣りの形は千差万別
「キータじゃないか! 君も釣りに参加していたのか」
リゲルに声をかけられたキータは、ほとんど空っぽのクーラーボックスを隠すように立った。
「湖上には出ないのか?」
「い、いやー、結構おっかなそうだしな」
湖上では荒くれ者たちが熾烈な争いを繰り広げている。
「君も大会参加者なんだろう? ならば君を守る義務が、俺にはあるんだ。今だけはライバル協定は置いておいて、騎士として君を守らせてくれないか?」
「うん……!?」
気が付けば乗っていた船は波を跳ねるようにしてジャンプする。
ざわつく人込み。ポテトが目をやってみると、ちょうどものすごいスピードで湖面を駆けていくリゲルを見つけた。
「ここまでこれば邪魔はされないだろう」
(何をやっているんだと思っていたら。いや、本当に何をやっているんだ……?)
釣り竿は重力に揺られて斜めに湖面を走る。
「船の運転は俺に任せて、君は釣りへと集中してくれ! これだけ勢いよく走らせていれば、活きの良い魚が取れるだろう」
「えっ? 静かに走らないと駄目なのか?」
一匹のサケが勢い良く舞い上がり、船体の上に乗る。慌ててキャッチする。
「いいぞ! この調子だ!」
(取りあえず今日の夕飯のメインは期待して良いのかな)
ポテトはふっと笑みを見せた。
●黄金色の鮭
モルグスは、喧騒から離れたところ、一人釣り糸を垂らす。
大きな引きがかかったが、あえて引かない。
モルグスは優勝には興味がなかった。狙いはシャケ、中でも黄金のものだ。
「おう、どうしたんだ兄ちゃん。やりかたがわからねぇのか?」
厄介な釣り客が声をかけてきた。休日に争うのは面倒だ。
黙って立ち上がり、場所を変える。
「おいおい、教えてやろうって言ってんだよ」
しつこく絡んでくる、その時だった。
まるで彗星のごとく、百合子が空から降ってきた。
アクセルビートで華麗に着水し、ガンガンと巨大な魚影を追い詰めていく。ついにはマグロを釣り上げ……いや、陸まで追い立てていた。
そこでようやく二人に気が付いたようだ。
「む。邪魔をしたらすまないのである」
「いや、ある意味助かった」
男は大会参加者のレベルを悟り、慌ててどこかへ去って行ってしまった。
事故が起こらなくてよかった、とモルグスは思う。もし、あまりにも嫌がらせがひどいようなら……釘を刺すことも考えていた。
改めて黄金団子を撒き、シャケを狙う。
ちょうど、なずなの陣取った場所もモルグスの場所と近い。
隠れた穴場というやつだろうか。
人が少ないわりに魚が多い、良い場所だ。
(軽く撒き得して……釣竿セットして……準備おっけー!)
なずなは二つの釣竿をセットする。一つはマグロ用、もう一つはエサに使うための、普通の魚用だ。
しばらくすると、小さいほうの釣竿が反応する。イカと、小さめの鮭を釣り上げた。
(順調、順調)
鮭をもぐもぐしつつ、クーラーボックスへと保管する。
そして大物用のエサに、イカをセットする。
しばらくすると……。
大物用の釣竿が反応する。ぐいぐいと引いてみると、黄金の鮭が釣れた。
ちょうど岸の反対側では、同じように釣りをしているモルグスもいた。にこりと笑って、手を振った。モルグスも軽く会釈する。
しばらくすると、モルグスの方にも太陽を反射するかの如く黄金の鮭が飛び出した。
(こいつは観賞用に飼うのもアリだな)
釣果を満足そうに見上げる。なずながまた手を振っていた。
●伝説の魚
「せっかくの大会だし、楽しまずにお仕事だけするのも損かなー」
イリスは、気持ちよさそうな水面を眺めながら、 あたりをパトロールしていた。イリスのいるエリアはそこそこ平和のようだ。
(うーん、あわよくば優勝!ってしたいけど、他人の狙ってるのを横取りしたように見えたらお仕事上問題よねー)
大きな魚影を見かけて、まずは、あたりに人がいないことを確認する。それからイリスは、本来の魚の姿へと戻った。
美しい姿勢で水に飛び込み、ぐんぐんと水深を下げていく。釣り具は必要ない。アトラクトス伝統の素潜り、からの噛り付きだ。
見事、一匹の大きな鮭を仕留めた。
「うーん、これだと一定以上の大物を狙いづらいのがネックね。まあ物はチャレンジでやってみましょう」
その後、フィッシャーズレイクには「ヌシ様」がいる、という噂が広まったとかなんとか。
●食らい尽くせ、大マグロ!
【大魚食い】が狙うはマグロ。
ヨルムンガンドはせっせと撒き餌をして、おびき寄せた魚に大きな魚の目撃情報を聞いていた。その隣で、九鬼がエコロケーションで大物の位置を探る。
「ヌシ様? 巨大な魚かぁ……」
ヨルムンガンドが首をかしげる。190㎝程の巨大な魚。いや、マグロではなさそうだが……。
「私はこれだ」
クライムがダウジングロッドを取り出す。
「え? それは水脈かお宝さがしだって? 私の直感力と合わされば最強よ ……多分な?」
「あ、ちょうどダウジングの方向だな」
「ほら見ろ」
しばらくすると、大きなサケが水面を跳ねた。
「まだです」
撒き餌をする手を止め、九鬼はハイセンスを研ぎ澄ませていた。
サケが、一息に大きな魚影に飲み込まれた。
マグロである。
「とうっ!」
ヨルムンガンドが、魚影に向かってロープ付きの銛を投げる。動きを一瞬止めたマグロに相対し、クライムは恐ろしい速さで獲物を手にしていた。
瞬火収刀によって振りぬかれた爆縮式弾倉鞘-KAGURA-から放たれる、すさまじい勢いの飛翔斬。水が割れ、マグロは宙に浮く。
戦乙女の加護をその身に纏い、マグロに向かって解き放とうとしたヨルムンガンドは……。
「ヴァルキリーレイヴ! ……ああ、じれったい!!! ちょっと獲ってくるな!!!」
そのまま船体から身を躍らせる。
「……って、飛び込むんですか!? わっ!!」
ついでに九鬼も船から落ちる。
「も、もうこうなったら一番大きい魚を狙いますよ……!」
開き直り、九鬼も霊刀【因業断】を降りぬく。
突きが水面から繰り出され、マグロは再び宙を舞う。
「もらった!」
ヨルムンガンドが水面を蹴り、マグロに齧りつく。それがトドメとなった。
「と、とったどー!」
九鬼が、刀を差したマグロを掲げる。
「先に少し食べちゃったけど……大丈夫だよな?」
「お腹空いてるからって齧ったらだめだろう……一応サイズを見るんだから」
●勝利のフィッシュ
【MGR】の船がやってきた。
汰磨羈が旗をはためかせる。
『環境破壊行為は即罰金』。……よく見ると罰金額も書いてある。結構な額だ。
「邪魔をするなら、それ相応の覚悟はしてもらう」
クロバがオーラキャノンを近くの水面に放つと、男たちは慌てて引き返していく。
「漁師のおじさんの言っていた場所はここだね」
「ああ」
セララは複数束ねた頑丈そうな釣竿を振るった。狙うは大物、300kg級のマグロだ。しばらく釣りをしているうちに、大きなサケが釣れてはいたが……。
「これは勝利への投資だ」
汰磨羈は惜しみなく餌とする。
じたばたともがく小さな魚が、マグロが迫ってきていることを告げた。3人は気合を入れて、それぞれの釣り竿を見つめる。
「……来た!」
セララの釣り竿がぐいとしなる。一本では折れてしまう釣り竿も、3本あれば。
「ふぁいとー! いっぱーつ!」
「逃がさんぞ、私のカマトロ茶漬けェ!」
釣り竿を押さえるセララの横で、汰磨羈は美しく跳躍し、そのまま重心を反転させると破禳・鴻翼楔を叩き込む。
「トドメは、任せた!」
サムズアップしつつ沈んでゆく。
「狙え、勝利へのフィーーーーーーッシュ!!!!」
クロバは体内の気を集中させると、デストロイ・リッパーを放った。左腕が異形化し、マグロはとどめを刺された。
「キミの敗因はたった一匹でボクら3人に挑んだ事だ!」
きめるセララ。沈んだ汰磨羈もすぐに戻ってきた。
「――私の大トロ角切り炙りは!?」
●結果発表
終了の笛が鳴り響く。幸い死者はない。
マグロを釣ったのは、【MGR】、【大魚食い】、そして【紅鷹丸】。
個人では、フロウはマグロ1匹と、さらにもう1匹。大きさは少し小さいが、百合子も一匹。
ドラムロールの音。
「優勝は……262.74kg! 【大魚食い】!」
そして、惜しみない拍手が降り注ぐ。
「……ん? 小数点?」
「齧ったからじゃないか」
これにて、フィッシャーズレイク杯は終了だ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
フィッシャーズレイク杯、いかがでしたでしょうか。
みなさまの今晩の食卓に思いをはせながら、今大会はここで終了となります。
ご参加、まことにありがとうございました。
GMコメント
●目標
釣り大会参加者の安全を守る。
●場所
海洋王国フィッシャーズ・レイク。
普段は船舶が行き来するくらい、そこそこ大きな湖。
具体的には、30キロ平方メートルくらい。
●釣り大会
いちばんの重量の大きい大物を釣り上げたものが優勝する、シンプルなルール。
最大の獲物の重さで勝負。
個人でもチームでもエントリー可能。
チームで大会にエントリーする場合は、チーム名をあわせてプレイングに記入のこと。
大会には参加せず、大会スタッフとして参加しても構わない。
●釣り大会ルール細則
・外から生物を持ち込んだり、環境破壊したりさえしなければ、湖から魚を取り出す手段は大会当局は<問わない>。
あまりひどいものだと当局から止められますが、人に迷惑をかけない限りは結構ゆるいです。
・釣り人同士の物理的な争いは厳禁とされていますが、それでも、嫌がらせみたいに周りにバシャバシャやる問題チームがいるようです。
・獲物が被った場合、最後にとどめを刺したチームのもの。
・重量が同じであった場合は、同時優勝もありうる。
・釣った魚は持ち帰るか、大会当局に引き渡すことになります。
外来種の駆除が目的のため、基本的にリリースしません。
●ライバルたち
「海の荒くれ者」チーム
海賊かと見まごうほど体格の良い男たちのチーム。
パワーによる生け捕りが得意な、優勝候補の一つだ。
「アマオトメ」チーム
女性を主にした海種たちのチーム。
素潜りとコツコツした漁が得意な、準優勝候補。
「テッポウウォーリアー」チーム
こすっからく、ルールに違反しないぎりぎりの範囲で水をバシャバシャやる、獲物を横取りする、買収しようとするなど、問題チーム。
こんなのでも準優勝候補のチーム。
「テバサキ大漁旗」チーム
主に鳥種で構成されている。
なぜか、美味しくBBQをすることが目的となっている。
毎年フグを食べようとして、食中毒になりかけて運ばれている。
本人たちは楽しそうだ。
キータは単独参加の一般人。
優勝候補ではありません。
並の魚しか釣りません。
●その他の仕事
釣りの他、
・迷惑な釣り客の取り締まり
・迷子対応
・食中毒対応 などなど。
いろいろやるよりも、やることを絞ることをお勧めします。
●出現する魚
・海洋シャケ
そこそこ大きなものも。黄金色に輝くものもある。ただし大きさを競い合う大会において価値はいまいち。
なぜ湖に……。
一足早く里帰り?
大きさの目安は1d100(百面ダイス1個分)kgほど。
・海洋マグロ
結構な大物。
珍しいが、釣れたらラッキー。
ただし並の釣り具では壊れてしまうだろう。
優勝を狙うならマグロだ、といわれている。
3d100kg(百面ダイス3個分)ほどの大きさだ。
※釣るには工夫が必要そうです。
・海洋フグ
かなり危険な毒を持つが、食べなければ無害な生き物。<猛毒>、美味。
大きさは……頑張っても1kgぐらい。
・外来ハリセンボン
かなり危険な毒を持つ。
刺されると<猛毒>になる可能性がある。過去に1度だけ、死人を出したことがあるのはこれのせいだ。痛ましい事故だった……。
大きさは、やっぱり1kgぐらい。
その他、小魚や、貝やらの海辺の生き物もいる。
※魚のkgは狙いや釣りプレイングの良さにより補正がかかります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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