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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2022>この世に愛があった証

完了

参加者 : 33 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●歴史よりも深いもの、この世に愛があった証
 空にかすむまだら雲。町を染めるように流れ出したパイプオルガンの演奏は、魔道具によって拡張された拡声器によって響き渡った。
 聖堂に並ぶ司祭たちは階段状の壇に並び、胸に手を当てゆっくりと息を吸い込んだ。
 始まった歌は聖句を刻み、清らかな空気が流れていく。
 人々はいつかの事件を忘れぬように、あるいはこの世界に愛があったことを忘れぬように、空に抜ける雲を見上げていた。
 その建物の名は、歯車大聖堂(ギアバジリカ)。
 無数の聖堂が組み合わさり巨大な脚を地に下ろす、移動要塞だったもの。
 首都外壁に寄りかかるようにして立ち止まり、今は観光スポットとして人々に愛された場所。
 この国を愛し、隣人を愛し、平和を愛した人間達が『まちがえた』証。そして二度と繰り返さないように、司祭たちは今日も愛を歌うのだ。
 今宵はグラオクローネ。
 愛を証すに、これ以上の日はないだろう。

●ギアバジリカへ出かけよう!
「ようこそ鉄帝へ! スチールグラードへ! この町に来たなら見たいスポットは沢山ありますよね? ラド・バウ、王城、自然公園。けれど皆大注目のニュースポットは、こちら!」
 観光馬車から降りたガイドガールが小さな旗を手に指し示したのは、皆ご存じギアバジリカである。
 いくつもの聖堂が複雑怪奇に組み合わさった異様さと、空へそびえ立つ荘厳さ。そして今にも動き出しそうな多脚は鉄帝市民にとってスペシャルにウケのいい観光スポットとなった。
 特に人気があるのは最上階層に設けられた全天球型展望台だ。
 足元すら透けて見える球形の展望フロアは詠唱障壁なる魔術によって守られ、夜となればまばらに明かりの灯る鉄帝の街並を眺めることもできるだろう。
 更にお勧めなのは中階層グルメフロアとして集められた多種多様なフードショップ。
 ラーメンやハンバーガーといったポピュラーなジャンクフードは勿論、ハンバーグ専門店やイタリアン専門店などが軒を連ね、フードコート形式で好きなものを家族で集まって食べることもできるだろう。
 中でも人気を博しバエにバエているのがスイーツショップの販売する『ギアバジリカパフェ』だ。専用の容器にクッキーやチョコレートを添え完全(?)再現した姿は一度は間近でみてみたい出来映えだろう。
 他にも下階層に広がるアクティビティとしてラド・バウ有名選手たちのグッズを販売するショップやラドバウの選手と握手が出来るイベント。中には多少バトることも許される『ふれあい闘技場』なるスポットも完備。
 今日はグラオ・クローネを記念したイベントとして、ラドバウ有名選手たちが集まっているのだ。ファンなら一度は顔を出したいイベントだろう。
「そうです。今日はグラオ・クローネ記念イベント! チョコレートパフェを楽しんだり展望台で恋人にチョコをプレゼントしたり、ふれあい闘技場で憧れの選手と激しい握手を交わしたり!
 鉄帝ならではのレジャーを、どうぞお楽しみください!」

GMコメント

「――貴方に幸福を。灰色の王冠(グラオ・クローネ)を」
 混沌世界では2/14に御伽噺に基づいて大切な人に贈り物をします。
 灰色の王冠の御伽噺は深緑に遥か昔から伝わる御伽噺です。その御伽噺の灰色の王冠(グラオ・クローネ)を模したものがチョコレイトと言われています。
 大切な人に贈り物をする日。折角のこの1日を思い思いに過ごしましょう!

 そんなグラオ・クローネを記念して鉄帝首都のギアバジリカではイベントが行われています。
 この巨大娯楽施設でレジャーを楽しみましょう!

■■■プレイング書式■■■
 迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容

 書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。

■■■パートタグ■■■
 シナリオ内には様々なお楽しみがあります。
 ですが描写されるシーンはそのなかの一つに限られますので、どのシーンを描写してほしいかをこのパートタグを使って示してください。
(なので、パートタグから外れた部分のプレイングは描写されないことがあります。ご注意ください)

【展望台】
ギアバジリカ最上階にある全天球展望台で素敵な夜景を楽しみましょう。
機械にコインを入れれば詠唱結界による気の利いた作用によって幻術魔法が展開し夜景の空で二人っきりになることもできます。
チョコレートをプレゼントするには最高のシチュエーションかもしれませんね。
勿論、お友達とキャッキャ楽しむにも、夜景を独り占めするにも最高です。

【グルメフロア】
様々な食べ物が集まる巨大フードコートエリアです。
美味しいものが食べたくなったらここへくるのもいいでしょう。
鉄帝民のタフな精神ゆえか、分厚いチャーシューがジューシーなギアバジリカラーメンや、醤油ベースのダブルハンバーグを閉じサクサクフライドポテトもつけたギアバジリカバーガーなど、がっつりした商品も多数取りそろえています。
OPでも触れたようにバエにバエるギアバジリカパフェも人気のようです。

【ふれあい闘技場】
ラド・バウで戦う有名選手達が集まるふれあいイベントが開催中。
コングと短いバトルを楽しむ『ファイティング握手会』やパルスによる『グラオ・クローネ記念ライブ』など楽しいイベントが目白押し。

世界観ページの鉄帝項目に掲載されているキャラクターならS級以外みんな揃っています。(ラッキーな人はワンチャンS級にも出会えるかも?)
https://rev1.reversion.jp/page/sestelleisenreich

【その他】
上記によらない楽しみ方をお望みの方はこちらのタグをご利用下さい。
司祭たちに混じって聖歌を歌ったり、記念碑を訪れてしんみりしてみるのもいいかもしれませんね。

■■■グループタグ■■■
 一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【仲良しコンビ】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。
 この際他のタグと被らないように、相談掲示板で「【○○】というグループで行動します」とコールしておくとよいでしょう。
 うっかり被った場合は……恐らく判定時に気づくとは思うのですが、できるだけ被らないようにしてください。
 また、グループタグを複数またぐ行動はできません。どこか一つだけにしましょう。
 膨大なプレイングを【】タグで一旦自動整理していますので、今回同行者の名前とIDだけを指定していた場合、かえってはぐれやすくなってしまうかもしれませんのでご注意ください。

  • <グラオ・クローネ2022>この世に愛があった証完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2022年02月23日 22時05分
  • 参加人数33/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 33 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(33人)

アルエット(p3n000009)
籠の中の雲雀
ギルオス・ホリス(p3n000016)
ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)
麗帝
アンドリュー・アームストロング(p3n000213)
黒顎拳士
澄原 龍成(p3n000215)
刃魔
フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ロク(p3p005176)
クソ犬
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)
不屈の太陽
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者
暁明(p3p010408)
我、深川飯を所望する
玖・瑞希(p3p010409)
深き森の冒険者
スフィア(p3p010417)
ファイヤーブレス
グルック・ストラーハ(p3p010439)
復興青空教室
煉・朱華(p3p010458)
未来を背負う者
琥珀(p3p010478)
蛍(p3p010479)

リプレイ

●KP!
 広いフロアの中に、どこか落ち着いた音楽が流れている。
 よく探さなくてはわからないような天井縁のスピーカーからのものだが、わからないのは部屋の独特な内装のせいだろう。
 大きな歯車が回ったり大きな窓から外の風景が見えたり、そこから明るい日差しが差し込んでいたり、透明な扉を使って外に出れば野外用のテーブルも備えられている。
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がついたテーブルはフロア中央にある大きなもので、周りには軽く十人ほどの人数が集まっていた。
「それじゃあ、ゆるゆるパーティーしましょー!」
 乾杯! と言って掲げたのは赤のグラスワイン。幻想産ヴォードリエワインは安くて美味しいことからここでも人気の逸品である。
 テーブルにはそれにあわせたようにピザが数枚並び、その鮮やかな具材で白いテーブルを彩っている。
「改めまして、アーリアよぉ。これは挨拶代わりのマルゲリータピザ」
 『あーん』と微笑みを浮かべて差し出した一切れのピザを、スフィア(p3p010417)はおもわずぱくりとやった。
「スフィア…です、よろしくお願いしま――」
 ぱくりと食べてから、目をぱっと明るく見開いた。
 小麦粉とチーズによる料理であることはなんとなく分かるが、肉をなんだか複雑に加工したような円形の食べ物や赤い野菜のようなもの。薄い色のキノコを刻んだものなどが混ざり合い、口の中でオーケストラと化したのだ。
 食感といい味といい、この複雑に押し寄せるワイルドさと僅かな繊細さには驚くばかりだ。
 『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)はそんな様子を横から珍しげに眺めていたが、くるりと振り返ったアーリアから同じように『あーん』と言われ思わずくちを開いてしまった。
 優しく甘い声色に性別問わずやられてしまうのは道理だが、ピザのはなつ食欲に直接訴えるような香りもまたそうさせたのである。
「美味しい……!」
 シンプルに感想を叫び、そして自分の手元へと運ばれてきたパフェを二度見する。
 一緒に運んできてくれたのは『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)だ。トレーを置き、横に座る。
「改めて、俺はエーレン・キリエ。キャリアは亜竜種の皆とそこまで変わらない、どうか気楽に仲良くしてほしい」
 彼の選んできたのは粗挽き肉によるハンバーグだ。おそらくは牛なのだろう肉が鉄板の上でまだジュウといい音をたてている。ピザのお返しにこいつを奢ろうと画策したメニューでもあった。
「ありがとっ。ほら、お裾分け」
 瑞希がちょっとだけわけてくれたパフェの上部分(なんか大砲みたいな形のチョコクッキー)をくわえ、エーレンはほころぶように笑った。

「わぁ、みんな楽しそうだnチャーシューうまい!」
 叫ぶ『クソ犬』ロク(p3p005176)。
 台詞を言い終わる前に分厚くサイコロ状に切ったチャーシューを麦ご飯に乗っけて葱としらすをまぶしウズラの卵黄だけを中央に落とし最後にタレをかけたチャーシュー丼なる芸術品に食らいついていた。
「目移りしてしまいますな。やはりここは名物から……」
 『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が自分の手前に置いたのはギアバジリカパフェ。なんか言葉がギザギザしてるせいかヴェルミリオは一回もギアバジリカを発音できてないし注文するとき三回噛んでから指さしたくらいなのだが、味はやはり――。
「おお」
 骨の口を開き、長いスプーンを入れぱくんと閉じる。
 どういう仕組みになってるのかサッパリ謎だが、スプーンを出すとそこにはクリームやイチゴは残っていなかった。
「こちらに喚ばれるまで、食物を摂取するという行為をしたことがございませんでした。ゆえに分け合いっこは憧れだったのですぞ」
「あ、その仕組み自分でも謎なんだ?」
 チャーシューどうぞってされたヴェルミリオがガパァって顎を開き眼下の光を強くする。多分笑顔である。
「かく云うわたくしもギアバジリカとは初めてですが……。
 音の反響などでその威容の一端も、皆様の感嘆の声からパフェの映えっぷりも、
 見えずとも分かる事も多いのですが、耳を澄ませてもわからない事もあります」
 目を閉じたまま不思議な器用さで紅茶に口をつける『音撃の射手』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)。
 ちらりと目……というか意識をヴェルミリオへ向けて『食べたものはどこへいくのでしょう』と骨の喉あたりに意識を集中させている。
 そして意識を下にずらすと、ロクが足首にかじりつく寸前の所でハーハーしていた。
 ……そっとしておこう。
 ゆうてもモールのテーブルなので10人がけテーブルはなく、軽く2~3グループに分かれて座っていた。
「グラオ・クローネって……そういえばどういうイベントなのかしら。みんなでパーティーとかしていい日なの?」
 『炎の剣』朱華(p3p010458)はそんな事をいいながら、バエにバエてるパフェを写メっていた。デザストル出身のわりにこうした機械や文化にすぐ慣れるのは若さだろうか、性格だろうか。
「ピザは知ってるけどこんなにいろいろ乗ってるのは食べたことない!」
 その横では『宝石ぱくぱく』ユウェル・ベルク(p3p010361)が恐ろしく具の乗ったピザをつまんであーむとしていた。
 照り焼きにしたチキンやらエビやらソーセージやらサラミやらブロッコリーやらが大量につまったギアバジリカピザなるメニューである。コンセプトは『美味そうなやつ全部載せろ』。
「んまい!」
 ほっぺを膨らませてほっこり笑うユウェル。
「ギアバジリカっておいしいんだ……勉強になるなー」
「その認識でいいの?」
「お、朱華ちゃんユウェルちゃんお疲れー」
 そこへ一足遅れた具合に『期待の新人』グルック・ストラーハ(p3p010439)がやってきてドラゴニア用の背あきジャケットを脱いだ。
 それぞれおつかれーと返す中、彼がトレーに載せてきたのはハンバーガーだった。
「パフェもいいけどグルックくんはガッツリいきたい気分。
 はわ……やだ……おっきい……こんなのが入っちゃうんだ……でも潰せばカロリーゼロだって姉さん達が言ってた!」
 テンション高めに席に座ると早速かじりつき……。
「あ〜、これはうちの女衆が好きそうな味……今度帰ったら……は!? 帰らんが!?!?!」
「地元にコンプレックスでもあるの?」
 横でもぐもぐしていた『今は未だ秘めた想い』ハリエット(p3p009025)がリラックスした様子で問いかける。
(日々空腹を何で満たすかだけを考えてた頃とは違いすぎて、たまにこれは夢なんじゃないかって思うんだよ……)
 心の中で呟いてから、グルックへポテトフライを差し出した。
「よかったら、これもたべて。美味しそうだったから」
「あ、先輩どうも! えっと――」
「え? 名前。ハリエット」
 よろしく、と小さく続けるハリエット。
 そんな様子を『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)はにこやかに眺めていた。
「そういや……今日ってグラオ・クローネだったか。俺自身はチョコ貰ってねーんだよな」
 『小鳥』にケーキを8ホール食わせた記憶がよぎる。
 が、それはそれ。
「見知った奴もそうじゃないやつもよろしくな。秋月誠吾っていうんだ。好きに呼んでくれな。普段は黒狼隊ってところに所属してて、そこの屋敷で家令見習いをやってるぜ」
 そう挨拶をすると、『俺のも食えよ』とジャンクフード一杯のトレーをスッとハリエットやグルックへと押した。
(腹を満たして雑な話をして……てのは楽しいよなぁ。あっという間に過ぎていく)

 トレーを手に、フロアを歩く『我、深川飯を所望する』暁明(p3p010408)。
 さっき来たばかりみたいなテンションだが、実はもう五食目であった。
「爬虫類っぽいからには食い溜めするのが自然な在り方デース」
 などといいわけみたいなことをしながら、トレーに載ったラーメンを見下ろす。
「イパイ食べる子は大きくなれるデス? オー、シァオミンもう立派な紳士デース……」
 ふとみると、なんだか仲の良さそうな四人組がいた。
 それは――。

「ギアバジリカパフェってデカくねぇ? 一人で食べられねぇだろコレ」
 『刃魔』澄原 龍成(p3n000215)はそう呟いてから、上に乗ってるチョコクッキーの一つをつまみ上げた。
 横で軽く口をあけている『紫香に包まれて』ボディ・ダクレ(p3p008384)。ご飯食べに来るということで雛菊モードなのだが……。
(そういえば、人に食べさせるときなぜか自分で口開けるよなこいつ……)
 えい、とばかりにクッキーを差し込むと表情を変えぬままサクサクしはじめた。
「あわわ、わわわわっ。
 ギアバジリカパフェ、とってもとっても大きいって、エルは思いました。
 一人でもぐもぐ、とっても大変そうなので、エルは皆さんと一緒に、もぐもぐ、します」
 『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)たち四人が囲んでいるのはギアバジリカパフェ(スペシャル)である。
 絶対一人で食べる用にできてない巨大なパフェなので折角だからということなのだが……。
「龍成さん、砲台と、お脚は、どちらがいいですか?」
「どっちでもいいけど……」
 ふと見ると、『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)が無言でスマホを取り出していた。
 顔の前に翳し、撮影ボタンをタップしている。
「……一緒に撮る? あとで送るよ」
「いやいやお前も入るんだよ昼顔」
 横から肩を寄せ、自撮りアイコンをタップして翳すように持たせる。ボディを横から引き寄せ、エルにも寄るように顎を動かすジェスチャーをした。
「わぁ僕、陽キャの動きしてる……」
 ぱしゃりとやってから、僅かに肩をはなしたボディに龍成がホットココアのはいったカップを滑らせる。
「お前すげぇ冷てぇじゃん。あったかいもん飲め、ほら」
「これぐらいでしたら…………ありがとうございます」
 そっとカップを両手でつつむように持つボディ。
 そんな風景を横目に、昼顔とエルはパフェに挑みかかっていた。
「昼顔さん。お砂糖菓子の、おじさんのお人形も、付けちゃいます」
「これ、不思議な味がするよね」
 適当に更に取り分けて、スプーンをさしこむ。
 四人はテーブルを囲み、クリームいっぱいのフルーツをぱくりとやった。

「わああ! リュカシスのパフェ、バエバエだねぇ!」
「イーさんのハンバーガーも!」
 丸いテーブルを挟んで、二人の男子が目をキラキラさせていた。
 『諦めぬ心』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)はスッをスマホを取り出し(電波は思いっきり圏外だが)レンズを『絆爆発』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)へと向ける。
「て、照れるなあ」
 えへへと笑うリュカシスを早速激写するイーハトーヴ。
 リュカシスが楽しそうにスプーンを立てると、イーハトーヴもハンバーガーを掴んでかじりついた。
 既に半分に分けてあるが、それにしたってでっかいハンバーガーだ。
「ねえ、この後どうする?」
「ふれあい闘技場おみやげコーナーいこうよ! ボク、コングのでかでかクッション欲しいんだ」
「うん、いいね。俺はゼラーさんのグッズがほしいな。カッコイイやつ!」
 二人はニッコリ笑いあいながら、おなかいっぱい楽しんだ。

 アクリルだろうか。澄んだ透明な扉をくぐると野外席へと出ることができた。
 驚くほど高いギアバジリカの上は、本来なら突き刺すように吹くはずの風もその冷たさもない。魔法の結界に守られ、そよかぜだけが『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)の髪をわずかに揺らしている。
「鉄帝ってあんまり来ないけど……今日は特別なの」
 振り返ると、『不屈の』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)がこくりと頷いた。大切な友人である彼とならばという意味だろう。
 ジェラルドの手にはトレーが大型のひとつ。乗っているのはなんとも大きなギアバジリカパフェだった。
「わぁ! とっても大きいのね」
「女……てか女子は甘いものの方が好きって聞いたからよ。好きそうならよかったぜ」
 手探り感覚で注文してみたが、反応は上々だ。ジェラルドは満足げに歩き、ガーデンテーブルへとトレーを置いた。
「ジェラルドさんも一緒に食べましょ? 二人で一緒に食べた方が美味しいが二倍なのよ。ふふ!」
 向かいに座って笑顔のアルエット。これを食い切れるかねと苦笑するジェラルド。
「アルエットは、こういう平和な日々が大好きよ。皆が笑顔で楽しんでるの」
「よくやってると思う。アンタは偉いな」
 テーブルごしに頭を撫でると、アルエットもくすぐったそうに笑ってから――。
「偉いのかなアルエット。じゃあジェラルドさんもおんなじね! えらいえらい!」
 ジェラルドへ手を伸ばした。

 皆もしかしてもう気付いているだろうか。グルメフロアのテナントに『踊るモスカ亭』が思いっきり入っていることに。
「今日はグラオ・クローネ……当店の需要は高まる傾向にあるはずです」
「えぇ……」
 なに店舗を増やしとるんじゃという顔でスタッフ側のスペースに入っていた『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)だが、モヒカンの支店長が凄いやる気だしモスカ印のエプロンつけてる姿がヤバイのでそれ以上言えなかった。
「よいか! やるからには一番を目指すぞ!!
 えい えい おー!」
 こうなりゃ辞めるという選択肢はない。クレマァダは拳を突き上げ、男達もそれに続いた。
 うんうんと満足げに眺める『海淵の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)。
「というわけで……我もこの期にチョコレート作りが練習したのじゃ」
 どやぁという顔とやりとげたという顔で額の汗をぬぐって見せるクレマァダ。
 そこには大量のチョコ菓子が並び、フェルディンはそこへ座らされた。
「……え、これ、全部、食べるの? ボクが?」
 振り返り、笑顔のクレマァダ。
 フェルディンは覚悟を決めた。

「イイ! 実にイイぞ! 俺はこういった屋台や祭りが大好きだ! カイト、誘ってくれてありがとう!」
 肩をがしっと掴んで笑う『黒顎拳士』アンドリュー・アームストロング(p3n000213)。
 『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はそれに答えて背に手を回すと肩を組んだ。
「……なんかこう、毎度こう、なぁ?」
「ん? ああ、嬉しいぞ!」
「そうかそうか!」
 カイトは深く考えるのをやめた。
「さあ行くぞカイト。まずはギアバジリカバーガーだ。次はギアバジリカラーメンと行こうじゃないか」
「男子学生の夢かよ」
 大人何人前という巨大メニューを順に指さすアンドリューに、カイトは苦笑しながら頷いた。
「じゃ、最後は冷えたエールだな! で、つまみはブルストだ」
「これが無ければやはり鉄帝人とは言えないからな!」
 ムキッと大胸筋を膨らませて笑うアンドリュー。カイトは脳裏に『チートデイ』という単語を浮かべながら笑みに応えた。

(ぁぁ……なんでアタシこっちに来ちゃうかなぁ……)
 『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)はでっかいパフェがのったトレーを一度見てから、クールに立つギルオス・ホリス(p3n000016)の横顔を見た。
(……いやでも……ふ、2人っきりでとか早くない……ねぇ……???)
 頭の中で唱えたがちょっと口に出たのかも知れない。ギルオスが小首をかしげてこちらを見た。
 ここで沈黙はまずい。
「ギルオスさん、食べるの好き? アタシは大好き!」
 言ってから『なに言ってんだアタシ』と脳内の自分が自分を蹴りつけていた。鋭いローで。
「うん? 食べる事? 勿論好きさ! 美味しい物を食べると至福に包まれるよね……そのパフェも美味しそうだ。一緒に食べるんだよね?」
 優しい笑顔に脳内の自分(コンビ)が同時にガッツポーズ。
「そうそう!」
 京はザッと席につくと、さっそくスプーンで生クリームと苺を一緒にすくった。
「んー、甘くて美味しいよ〜!! ギルオスさんも、ほら!」
「えっ!?」
「……あ、あーんしてあげる、あーん!! ほら!?」
 どこまでもテンションをあげていく京だった。

●ギアバジリカ展望台
 京が内心行きたがっていた展望台。『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はそこに立っていた。
 身体のあちこちが痛むが、その様子は少しも外には見せない。
 ぴんと背筋をのばし、鉄帝の夜景を眺めている。
(ほんとうに尊敬もしているし、同じだけ思うところもある。
 私は、この国が好きであるし、嫌いでもあるのだ)
 ちらりと見ると、『麗帝』ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)が同じように景色を見下ろしている。
「大凡俺に一番に合わないイベントに駆り出したもんだな」
「ご不満でしたか? 前のように――」
「いや、不満はねぇよ。極上の甘味の礼をしてやる位は吝かじゃない。第一お前って『面白い女』だからな」
 エッダの言葉を遮って、景色からエッダに視線を移すヴェルス。
「だから、私は貴方の思うような人間ではないのですよ。陛下」
 『陛下』という呼び方に、ヴェルスは片眉をすこしだけ動かした。
 そして。
「……どうした、お前。そんな顔して」
 気持ちが表情に出たのだろうか。エッダは自分のほほにぺちりと手を当て、無表情から動いていないことを確認する。
(このギア・バシリカを見てどんな顔をするのか見たかった……言ったら、貴方はどんな顔をするでしょうね)

 蛍(p3p010479)と琥珀(p3p010478)は展望台から広い景色を眺めていた。
「すごいすごいっ! 夜景だよー!
 下までしっかり見える!キラキラしててきれーいっ!
 ほら琥珀ももっとこっちきて見てごらんよ、こなきゃ損だよ!」
 透明な障壁に手を付け、身を乗り出さんばかりにはしゃぐ蛍。琥珀は一歩下がった場所から苦笑していたが、意見は一緒だ。
「確かに、フリアノンじゃあ呑気に見られない光景だな。ああ、そうだ……」
 琥珀は機械にコインを入れてみた。よく分からないけど使ってみようと話していたのだ。
 すると――。
「わぁーっ、すごい! もしかして周りの人が見えなくなってびびってるの? へー」
 夜空と町と、蛍しかなかった。琥珀は動揺したように視線を動かして……。
「そういうのじゃあない。違うって言ってるだろう」
「ここでは私しか見えてないしね」
「それよりもほら、夜空をしっかり記憶に焼き付けていこうよ!」
「ああ、でもそうだな。夜空をのんびり眺めるってのも悪くない」

●そして僕らは昨日を愛したんだ
「もうすぐ2年。意外と、慣れてしまうものですわね」
 大きな石碑の前に、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は立っている。これは墓だ。ギアバジリカによって亡くした命たちの。
「司教様、春の開拓計画が纏まりましたわ。北方の土地を切り開いて、麦畑にするんですの。
 今は全然食料が足りないけれど、それが成功したら、きっと皆、毎日お腹いっぱい食べられるようになりますわ」
 もう時間だ。ヴァレーリヤはきびすを返し、歩き出す。そなえた花を残して。
「次はカーシャを持って参りますわ。どうか、見守っていて下さいまし」

 奉神礼が始まった頃だろう。聖歌がスピーカー越しに流れてくる。
 ギアバジリカを見上げた『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は、その歌に胸を少しだけ寒くした。
(なぜ私はその時居なかったんだろう……なぜあの子の力になることが出来なかったんだろう……)
 時間は戻らない。いや、戻したくはない。今という瞬間を否定することにだってなるだろうから。
 マリアはコートのポケットに手を入れ、歩き出す。
 町をゆく聖歌隊と一緒に、クラースナヤ・ズヴェズダーの司祭たちが祈りの列に加わっている。
 その様子を、マリアはあえて遠巻きに見守っていた。
 捧げる祈りは、きっと同じものだろう。
「どうか……私の愛する人が、これ以上奪われませんように。
 悲しい想いをしませんように……。
 どうか、どうか……」
 それはこの世に愛があった証。
 そして、未来がある証だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 よき夜を

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