PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<イデア崩壊>さよなら大好きなセカイ

完了

参加者 : 40 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●すべての不義に落着を
 ゲートは開かれた。
 この世界を裏側から改ざんせんと企む存在への反逆を。
 この世界を操作しようとする存在への反撃を。
 そして、交わした約束への決着を。
 複雑に交差し入り乱れていた全ての線が、いまこの瞬間にひとつの点へと収束する。
 今こそ決着の時。
 さあ、すべての不義に落着を。

●エーテリックコード
「ROO内仮想世界ネクスト。この世界にはもうひとつ、目には見えないレイヤーがある」
 宙空に手をかざして見せた清水 湧汰博士。彼はなにもない場所を掴むと、皆へと視線を戻した。
「本来は誰もアクセスしない筈の『魂の記憶領域』。その名もアストラルレイヤー」
 振り向くと、多次元侯爵ZEROやチャネラーといった面々が並んでいる。
 彼らはアストラルレイヤーを知覚する者と、リセット現象を予知する異能を持つ者たちだ。ZEROが杖を石床にカツンとつく。
 そこは砂嵐盗賊団が跋扈するサンドストーム砂漠地帯の一角。混沌でいえば砂の都があった場所だ。
 そこには、誰もいない石の遺跡がたっていた。
 つい最近になっておきたリセット現象で現れた遺跡である。
「アストラルレイヤーに存在し、記憶された情報の改ざんを行える者がいる。
 彼らは己の願望のために世界に手を入れ、メモリクラッシュを起こすことでネクスト世界の風景や人々の記憶を部分的に改ざんしてきた」
「それが、『リセット現象』……」
 崎守ナイト(p3x008218)はちらりと、自らの秘書ティアンを見た。
「仮想世界。ゲームの中。どんな言葉を使ったとしても、彼女たちはここに生きている。俺らがそれを見過ごしちゃあ、人(HUMAN)の名折れじゃねーの」
「確かに……」
 眼鏡を布でぬぐっていたファン・ドルド(p3x005073)がその眼鏡を装着し、この場に集まった人々を見た。
 ティアンだけではない。伝承王国に領土を持つマニエラ・マギサ・メーヴィン。海洋王国の島に住まうヒーロー加羅沢昭利。ZEROもまたそうだ。
 彼らは『リセット現象』を受け命を落としたり故郷を失ったりしてきた人々だ。重要なのは、彼らは他の人々と違って『リセットされたことを覚えている』ということだ。
 事前に説明を受けていたのだろう、マニエラが頷いた。
「私達はリセット現象を受ける際、そのアストラルレイヤーへと一時的に接続された。しかし『入れ替わる』のではなく『融合する』してしまった……いわばバグによって生まれた個体というわけか。幼い頃の記憶も結婚した記憶もあるというのに、そうでない記憶も同時に存在しているのだから……複雑だな」
 その言葉はティアンや加羅沢にも言えることだったようで、彼らはそれぞれの表情をとった。
 金髪の美男子チャネラーが石の椅子に腰掛け足を組む。
「けれど、それも終わりだ。オレはアストラルレイヤーへの編集権限を奪い返し、これ以上世界を滅茶苦茶に乱さないように見守る立場にもどるつもりだ。
 裏からこっちをのぞき見てるランドウェラ・オルタや姉ヶ崎-CCCという連中を追い出して、な」
「エイス……」
 その言葉が、幾人かから漏れた。蛍(p3x003861)もその一人だ。
「アストラルレイヤーへ突入して決着を付けるなら、その役目はボク達が負うわ。約束、したもの」
 隣に立つ珠緒(p3x004426)の手を強く握る。
 姉ヶ崎-CCCというこの世界のバグから、友であるエイスとイデアを救い出す。それがあの日、仮想世界で交わした約束だ。
「それで? 私達は何をすれば良い」
 それまで黙って聞いていたライトニングクイーン(p3x002874)が腕組みをしながら堂々と聞いてきた。
 他の仲間達(割と大半)が『よく言ってくれた!』という目で彼女を見る。
 珠緒が各人に分かるようにウィンドウを複数開き、マップやグラフを表示する。
「説明しましょう。私達がやるべき『大作戦』について」

●大作戦
 マップは三つに分かれていた。
 航海王国の島ガリウム。
 伝承王国メーヴィン領。
 正義国邪摩都。
 それぞれにマーカーが示され、『ポートポイント』と記されている。
「アストラルレイヤーへ突入するには、四人の接続者とリセット現象が起きた土地が必要になります。
 加羅沢さん、マニエラさん、ティアンさん、ZEROさんがそれぞれのスポットについてもらいます。
 清水博士の開発したコードによってアストラルレイヤーへのゲートを開き、選出したメンバーをその中へと突入させましょう。
 ですがその際に、アストラルレイヤー側から膨大なsinエネルギーが放出されます。
 それを察知した各勢力が自分たちもアストラルレイヤーへ入り込もうと部隊を差し向けてくる筈です。得にゲートを開いた正義国の邪摩都には強大な戦力が差し向けられる筈です。
 ですので、各ポートポイントにはそれぞれ防衛部隊を配置する必要があるでしょう」
 リセット現象はそう何度も行えるものではない。アストラルレイヤー側の情報を改ざんしただけでは起こすことができず、ネクスト表層側で基点となる人物をそのエリアから出すか殺すかしなければならない。
 つまりは、接続者を守り続けることができればいいのだ。
「過去の戦いの記録を見る限り、どのポジションも危険が伴うでしょう。
 今回の事件を裏から引き起こしていた黒幕……パラディーゾたちも姿を見せる筈です。
 ですがこの戦いに勝利したなら、私達は『決着』を付けることができるのです」
 すべての不義に落着を。
 世界と約束を賭けた戦いが、始まろうとしている。

●姉ヶ崎-CCC
 情報の海だった。
 折れた東京タワーや、空を飛ぶ戦艦や、水たまりだらけの野原や、学校や、形容不明なあれこれが沢山入り交じって、そして全てが意味をなさない空間だった。
 広くも狭くもなくて、時間はあってないようなもので、そんな場所に、『彼女』はいた。
 流れてくる情報のドーナツを手に取るも、それがすり抜けていく。
 映像のうつるパネルが流れてきて、またそれもすり抜けた。
 自分と一緒にすごす大好きなお兄ちゃんの映像。平和に過ぎる日々の映像。その全てがすり抜けては消えていく。
「単純な願い事、なんだけどな」
 ピクセルモザイクで隠れきった顔で呟く。それだけで、周囲はバリバリと音を立ててピクセルモザイクに侵食された。
「お兄ちゃんと平和に暮らしたい。それだけなのに」
 手を振ると、それだけで周囲の風景がモザイクに侵食され破壊されていく。
 生きているだけで世界を壊す。
 それが、姉ヶ崎-CCCがこの世界に顕現した時から得た特性だった。
 それゆえアストラルレイヤーを見つけ、入り込むことができた。『お友達』から貰った兵隊は良く働いてくれた。
 アストラルレイヤーの管理権限を奪い取ったり、世界中にその力を求めて狂う集団を作ったりして、世界は順調に壊れていった……はずだった。
「あの子たちさえ、いなかったらなあ……」
 世界の中に作り出した自分のコピーである『姉ヶ崎エイス』。彼女を助け出そうと動くイレギュラーズという存在。彼らさえいなければ、思い通りになったはずだ。
 世界に『絶え間なく壊れ続ける』自分の居場所を手に入れ、空っぽになるまで壊したエイスに自分が入り込み、大好きなお兄ちゃんのデータとずっと一緒にいられたはず。
「まだ邪魔、するんだ……」
 イレギュラーズによるアストラルレイヤーへの侵入が始まっていた。
 エイスは手をかざし、そしてパッと花が咲くように笑った。
 それだけで周囲の風景は滅茶苦茶に破壊された。
「みんな、壊れちゃえばいい!」

 一方、ゲートが作られた邪摩都には強大な敵たちが出現していた。
 『天国篇第九天 原動天の徒』セララ。
 『天国篇第六天 木星天の徒』ランドウェラ・オルタ。
 そして彼らが引き連れたのは星剣セラを装備した勇者イデア。更に死神リュグナーオルタや魔神マカライトオルタを筆頭とする魔神軍。
 彼らがゲートの破壊と儀式の阻止に向け、一斉攻撃を仕掛けてきたのだ。
 更には伝承王国のポートの一つを奪おうと迫るアンロットセブン。
 同じく航海王国のポートを奪おうと出撃する暗黒大連合。
 あまりにも巨大な組織たちが次々に、そして各地で同時に動き出している。
 さあ、すべての不義に落着を。

GMコメント

※このシナリオは情報量がとても多いため、特設ページが用意されています。
 TOPの内容と合わせてご覧下さい。(TOPも文章量がとても多くなるので、担当エリアから読むのがお勧めです)
https://rev1.reversion.jp/page/ideaworldendles
https://rev1.reversion.jp/page/roolog

 このシナリオには四つのパートが存在します。
 自分のパートを選択し、参加してください。
(パート間を移動することは原則できません。また、サクラメントは各エリアから遠いためリスポーンによる再出撃は基本的にはできないものとします)

●パートタグ
 【】で示されたタグを一つだけ選択し、プレイング冒頭に記載してください。
 以下は各パートの説明になります

================================
【正義国】
 最も戦力が必要で最も厳しい戦場です。
 『多次元侯爵ZERO』と『チャネラー』をポートの中心としてアストラルレイヤーへのゲートを生成。仲間達がこの中へと突入するので、皆さんはこのゲートを守って戦います。
 敵として現れるのはパラディーゾや魔神軍といった強力な面々。場合によってはさらなる戦力増強もありえる状況です。
 ですがゲートを破壊されればこの作戦は失敗してしまいます。

●登場敵NPC
・『天国篇第九天 原動天の徒』セララ
 ピエロ&ジェーンによって作られた冠位魔種に相応するバグエネミー。
 その中でもデスカウントが特に多いイレギュラーズアバターデータの中から選ばれた、9人しかいない特別なパラディーゾです。
 能力は未知数。自由自在にアバターコスチュームを切り替えあらゆる局面に対応する他、『疑似魔法少女』を召喚して戦わせるといったことも可能な恐ろしい戦力です。
・勇者イデア
 複数存在するイデアのデータの中から最も強力な個体を選別し、更にセララが『星剣セラ』を与えることで強化した存在です。
 彼は姉ヶ崎-CCCを守ることを使命だと考え、まっすぐかつひたむきにこちらに戦いを挑んでくるでしょう。
 ※シナリオ終了時にイデアが生存していた場合、ゲートを含め全てのリセットが発生してしまいます。そのため、このシナリオ中に必ず一度倒さなくてはなりません。
・『天国篇第六天 木星天の徒』ランドウェラオルタ
 『イデアの棺』実験の際に獲得したアバターデータから作られたパラディーゾ。
 戦い方は未知数ですが、強力であることは確実です。実は過去、ロードが遭遇して一瞬で殺されてしまいました。
 ついさっき死出の谷を作り出すのにリセット現象をおこしたばかりなので次のリセットはしばらく行えません。その間暇になるから出てきた、というちょっと気まぐれな性格の持ち主です。
・『死神』リュグナーオルタ
 『イデアの棺』実験の際に獲得したアバターデータから作られたバグエネミー。
 死神の鎌を使った戦いを主とし、戦法も現実側のリュグナーに若干似ています。
・『鎖の魔神』マカライトオルタ
 『イデアの棺』実験の際に獲得したアバターデータから作られたバグエネミー。
 見上げるほどの巨大な魔神。
 鎖を使った戦いを主とし、鎖によって相手を拘束したり編み上げた壁で防御したりとなかなか器用に戦います。
・八田 sin
 しれっと混ざっているエネルギー体です。戦いに関与せず、寝そべって状況を観察しています。
 アストラルレイヤーから流れ出る原罪のエネルギーでできているため、彼女を倒すとそれだけで激しいエネルギー爆発がおきます。
 付近一帯がとても大変なことになってしまうので、彼女は放っておいたほうが無難でしょう。
 セララ側が不利そうだなと判断した場合によっては自分のエネルギーを分割して『八田の系譜』を召喚し戦わせることがあるかもしれません。

●優先参加キャラクター
・アイ(p3x000277)
・プロメッサ(p3x000614)
・ロード(p3x000788)
・雀青(p3x002007)
・セララ(p3x000273)
・勇(p3x000687)

================================
【航海国】
 航海の島ガリウム。リセット現象がおきたこの土地にてポート化の儀式を行います。
 ここは寂れた漁村ですが、その中央にある開けた場所をフィールドとしてシナリオ終了まで『加羅沢昭利』を守ってください。

 序盤は暗黒大連合の戦闘員(たくさん)や復活怪人(たくさん)を蹴散らしまくり、満を持して現れたボス格のGGGローダーたちと個別に戦います。
 フィールドがとても広く、こちらは防衛目的なので多方向から一斉に迫るボスたちへバラバラにぶつかって対応する必要があるためです。よりメタいことをいうと、因縁の対決だからです。
 ボスたちを倒すことで、GGGローダーは奥の手であるナンイドナイトメアを放ってきます。
 それも、残る五体を融合させ巨大化させたレイドバージョンです。
 全員の力を合わせ、これと戦いましょう。(洗脳されている敵キャラクターを事前に洗脳から解いておくと仲間として一緒に戦ってくれるかもしれません)

●洗脳解除ルール
 ダークネスクイーン、暗黒騎士、処恋は熱い思いを込めて倒すことで洗脳を解くことが出来ます。
 「おまえはそんなヤツじゃないだろ!」と言いながら殴るのが近道かもしれません。

●登場敵NPC
・GGGローダー
 スピード型のファイター。レッドジャスティスとアルプスローダーのデータを解析して作り出されたジェニ博士の最高傑作。ジェニ博士の脳が入っている。
 XXXやネオフォボスの幹部を洗脳した今回の黒幕。
 アストラルレイヤーを手に入れて自分の帝国を作り上げようとしている。
・ダークネスクイーン
 皆大好き大総統。世界征服砲は威力抜群!
 洗脳されアストラルレイヤーを手に入れれば世界征服ができると信じているけど、けど実はあんまり細かいことは考えていないぞ!
・暗黒騎士H
 悪役怪人の演技を完璧にマスターした暗黒騎士。円月の構えから繰り出す斬撃は凶悪な必殺技だ。
 洗脳され、アストラルレイヤーを手に入れば自分の穢れきった過去を無かったことにできると信じている。
・処恋(MORNING WIDOW)
 闇に落ちた未亡人。血の爪や剣を作り出すフィジカルに優れたファイター。
 洗脳され、アストラルレイヤーを手に入れば旦那様が絶対に死なない世界線が手に入ると信じている。
・ナンイドナイトメア(レイドバージョン)
 でかい! つよい! とにかく全部なぎ払う!
 最後に出てくるジェニ博士の最終兵器だ!

●登場味方NPC
・加羅沢昭利(レッドジャスティス)
 ジャスティスキーを専用デバイスに差し込むことで、加羅沢は熱き心で戦うヒーローレッドジャスティスに変身する。
 皆と共に戦っている時が最も強いので、彼を守るなら『あえて一緒に前に出て戦う』のが一番安全となる。

●優先参加キャラクター
・一(p3x000034)
・ライトニングクイーン(p3x002874)
・崎守ナイト(p3x008218)
・純恋(p3x009412)
・澄恋(p3x009752)

================================
【伝承国】
 伝承のメーヴィン領へと襲撃を仕掛けてくるアンロットセブンを撃退します。
 彼らの狙いは領主マニエラ、そしてナイトの秘書ティアンです。二人を屋敷に立てこもらせ、こちらは外の牧場で戦いましょう。
 ザムエルたちは『世界人口の最適化』を目的にアストラルレイヤーを手に入れようとしています。もし彼らがこの計画に成功してしまえば、虐殺とすら言えないほど恐ろしい事態がおきるでしょう。
 襲撃してくるのは五人の『戦神』だけですが、彼女たちの強さは謎のエネルギーによってかなり増幅されています。
 しっかり対策して戦いましょう。

●登場敵NPC
・『戦神壱番』天王寺 昴
 無数の大口径ビームライフルを接続し一斉発射する汎用女子高生型決戦兵器。
 ビームの射程は万能で弱点らしい弱点はなく、当人もソツがない。
 大火力かつ高機動なのも強み。だがエネルギー(AP)問題を抱えることだけが弱点のようだ。
・『戦神参番』心斎橋 芹那
 銀河の力を肉体に宿した汎用女子高生型決戦兵器。
 格闘戦に優れ圧倒的なパワーをもつが、暴走のリスクを常に抱えている。
・『戦神伍番』桜ノ宮 雅
 無数の刀を意のままに操り飛行させる『千年雅楽(ソードビット)』を装備した汎用女子高生型決戦兵器。
 刀は極めて頑丈で防御を容易く貫く攻撃性をもつ。一方で防御にもソードビットが必要なため攻撃と防御を同時に行いづらいのが弱点。
・『戦神陸番』香里園 櫻
 無数のビーム発射装置を意のままに操り飛行させる『千本櫻芽(ガンファング)』を装備した汎用女子高生型決戦兵器。
 相手の動きを制限させて確実に仕留める戦闘スタイルをもつ。ガンファングの性質上遠くから広い範囲を動き回りながら撃ち合いに持ち込むのが対抗策だとされている。
・『戦神七番』千里丘 小時
 実弾兵器を満載にした汎用女子高生型決戦兵器。
 性格はストイックかつドライ。足を止めてとにかく打ち続け残弾が尽きればコンバットナイフによる格闘戦に移行する。どちらかというと格闘戦のほうが強いらしい。
 序盤の滑り出しでどこまで火力を押しつけられるかが勝負の分かれ目になりそうだ。
・たかくらさん
 放っておけば戦わずに遊んでてくれるひと。ただし戦いを挑むと酷いことになる。
・ザムエル・リッチモンド
 アンロットセブンのボス。戦闘能力は皆無でソフトクリーム食べながら状況を見守るつもり。彼は放っておいていい筈。(手を出すとそれだけ味方のキャパで損をするかも)

●優先参加キャラクター
・ファン・ドルド(p3x005073)
・玲(p3x006862)
・崎守ナイト(p3x008218)
・壱轟(p3x000188)
・リアナル(p3x002906)

================================
【アストラルレイヤー】
 ゲートを通し、アストラルレイヤーへと突入します。
 この領域は別の常識で動いているためROOのシステムがそのままでは通用しません。
 普通なら入り込むことはおろか活動することも不可能なのですが、清水博士のコードのおかげである程度はこちらの常識を通用させることができます。
 そしてその原動力となるのは、皆さんのこの戦いにかける『想いの強さ』です。
 要約してしまうと、想いが強いほどあなたは強くなります。

●登場敵NPC
・並行世界存在群
 『もしかしたらありえたかもしれない誰か』がこの領域には無限に存在しており、それらがあなたに襲いかかるかもしれません。
 それはもしかしたら、あなたのマルチバース的存在であるかも……。
・姉ヶ崎エイス
 この領域には無数の『姉ヶ崎エイス』の並行存在が捕らえられており、彼女たちは逆らえない命令によってこちらに襲いかかってきます。
 強い想いで彼女を倒すことで権限を奪うことが可能で、多くの権限を奪うことでエイスをこの領域から助け出すことができるかもしれません。
 つまり、これまで正しくふれあうことのできなかった彼女とふれ合い、噴水前や画工の屋上で出会うことが叶うのです。
・姉ヶ崎-CCC
 『イデアの棺』から続く一連の黒幕であり、自分とお兄ちゃんの平和な日常のためなら世界全部を破壊してもよいと考えている『世界の敵』です。
 存在し、行動するだけで世界を破壊する力をもっています。当然それは戦闘にも用いられ、今まさに邪魔になっているこちらの存在を破壊しにかかるでしょう。

●優先参加キャラクター
・蛍(p3x003861)
・珠緒(p3x004426)
・コータ(p3x000845)
・ジェック(p3x004755)

================================

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O3.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

●『パラディーゾ』イベント
(パラディーゾメンバーが登場しているため、特殊要素が追加されています)
 当シナリオでは『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

  • <イデア崩壊>さよなら大好きなセカイ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別長編
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月17日 20時00分
  • 参加人数40/40人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 40 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(40人)

一(p3x000034)
黒縁眼鏡の
壱轟(p3x000188)
サイバーウィザード
Siki(p3x000229)
また、いつか
セララ(p3x000273)
妖精勇者
アイ(p3x000277)
屋上の約束
ニアサー(p3x000323)
Dirty Angel
プロメッサ(p3x000614)
屋上の約束
花糸撫子(p3x000645)
霞草
勇(p3x000687)
あなただけの世界
ロード(p3x000788)
ホシガリ
夜乃幻(p3x000824)
夢現の奇術師
コータ(p3x000845)
屋上の約束
トリス・ラクトアイス(p3x000883)
オン・ステージ
ルォーグォーシャ=ダラヴァリヲン(p3x001789)
終焉ヲ断ツ戮神
雀青(p3x002007)
屋上の約束
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
リアナル(p3x002906)
音速の配膳係
蛍(p3x003861)
屋上の約束
珠緒(p3x004426)
屋上の約束
ジェック(p3x004755)
花冠の約束
アレクシエル(p3x004938)
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
ロク(p3x005176)
サイバークソ犬
グレイガーデン(p3x005196)
灰色模様
Steife(p3x005453)
月禍の閃
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
玲(p3x006862)
雪風
アカネ(p3x007217)
エンバーミング・ドール
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長
ジリオライト・メーベルナッハ(p3x008256)
D.S.G.P.
フー・タオ(p3x008299)
秘すれば花なり
デイジー・ベル(p3x008384)
Error Lady
Λ(p3x008609)
希望の穿光
純恋(p3x009412)
もう一人のわたし
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと
H(p3x009524)
ダークナイツ
キサラギ(p3x009715)
呉越同舟
澄恋(p3x009752)
もう一人の私
天狐(p3x009798)
うどんの神
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン

リプレイ

●誰もがみなヒーローになれる
 静かな島の漁村に、無数の船が乗り付けた。海をすべる船ではない。空を飛び、鋼の翼を広げる暗黒の艦隊である。
 それらは地面に光線を浴びせると、大量の戦闘員や合成怪人たちを転送、出現させた。
 人工1000人にも満たないこの島を占領するには多すぎる戦力だが……ここに集まっているイレギュラーズたちを思えば無理からぬことだろう。
 天空に映し出されたジェニ博士もといGGGローダーの巨大立体映像が腕を広げる。
「イレギュラーズどもよ、いますぐ投降せよ。我は暗黒大連合。この世界を支配する者である」
「きたか、暗黒大連合」
 一台のバイクがとまり、暗黒の軍勢を前にしてドライバーが地に降りる。
 『黒麒』Λ(p3x008609)。彼女は完全武装し突撃してくる大量の戦闘員へと歩き出し、掲げた右手でフィンガースナップを鳴らした。
「来い黒麒、ShowTimeだ」
 バガッと一瞬で分解したバイクがパーツ事に再集合し、ラムダの全身を覆うアーマー機動魔導甲冑『黒麒』へと変化する。
「――魔導戦機Λ推して参る!」
 両腕にブレードを展開し突っ込んだラムダは大勢の戦闘員を次々になぎ倒し、現れたバズーカライオン大佐によるニュークリア砲に自らの右腕を変化させた魔導砲をぶつけた。
 両者中央で衝突したエネルギーの光、しかしラムダの光がそれを飲み込み、バズーカライオン大佐もろとも戦闘員を爆発四散させていく。
「ば、ばかな! ジェニ博士に改造された最新兵器が破れるだと……!?」
「ハッ、数だけは立派なモンじゃねぇか。オレらの前じゃ幾ら群れようがゴミ同然だがな」
 拳を鳴らして現れる『D.S.G.P.』ジリオライト・メーベルナッハ(p3x008256)。
 幹部化改造を施された太陽マッスル会長とカメコトドリーダー、更に花火ドッグ特攻隊長やトレードシャーク支配人といった強力な怪人達が集結。
「ぬかせ、武器ももたぬ女に何ができる!」
 一斉に必殺技を放ちエネルギーを集合させた彼らに対して、ジリオライトはそれらをパンチ一発で撃ち払った。
「てめぇらが一丁前に人様の世界を壊そう、だ? ふざけてんじゃねぇぞコラ!」
 繰り出したパンチは轟雷のパワーを解き放ち、強化怪人たちへと伝達。彼らは次々に爆発四散していった。
「道を開けやがれゴミ虫共! 負け犬の分際で邪魔すんじゃねぇ!」
「ヤツを止めろ!」
「ジェニ博士のもとへ行かせるな!」
 両手の指で数えられないほど大量の怪人たちが大集合し、一斉に襲いかかる。陰陽孔雀皇帝やポイズンフグ料理長たちが一撃必殺の技を繰り出すも、作られて間もないためかジリオライトを倒すことはできない。
 どころか必殺の迅雷スラッシュによって全員を殴り飛ばしながら突っ走り、彼女の後ろでまとめて爆発四散する始末であった。
「数だけ揃えたって相手にゃならねえんだよ」
 彼女たちはポート化の儀式を実行中の仲間達を守るべく、島の集会場にあたる建物を守っていた。
 暗黒大連合はその建物に近づくことすら、まだできていない。
「おのれ……ならば質で勝負するまで。いでよ大怪獣ベリィハァド!」
 立体映像のGGGローダーが手を上げると、巨大な光線によって怪獣が出現。あの飛空艦隊の中にどうやって格納していたのか不思議なくらい巨大なそれが、大地を踏みならし空を揺らすように吼えた。
「なんつーか、あれだな。所謂一つの、劇場版みてぇなノリってやつを感じるぜ。なぁ?」
 『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は建物から出ると、大型ハンドガン型スキル発動器『Castor』とエーテリック・ブレード『Pollux』をそれぞれ手にとり、そしてCastorを肩に担ぐような構えで頷いた。
「ここはいっちょ、ド派手に行くぜ!」
 建物を踏み潰さんと接近してくるベリィハァドへ走りながら銃を向け、入力したコマンドをトリガーによって実行。無数の反撃ドローンが出現、合体し円盤状の乗り物に変わると、Tethはその上に飛び乗って相手の周囲を螺旋状にまわるように飛行し始めた。打ち落とそうと腕をふるい破壊ブレスをはくベリィハァドだが、それを巧みにかわしながら次々とコマンドを実行していく。
 指向性体撃魔術と高等放射性呪詛魔術をそれぞれ展開して相手の弱みを探ると、端末を操作して数術結界を構築。
 ベリィハァドを一度結界内に閉じ込めた後、無理矢理組織を崩壊。爆発させた。
「さぁ、お約束のスーパー無双タイムだ!」
 爆発したベリィハァドを背に地面へとおりたつTeth。
 更に大量の戦闘員や一般怪人たちが送り込まれるが、Tethたちはそれらを凄まじい勢いで倒していく。
「やはり新造した怪人のレベルでは歯が立たぬか……ならば、XXX四天王あらため暗黒大連合四天王よ、行くがよい!」
 次の瞬間、大地に現れた喪服の女が深紅の回転斬りを繰り出し、Tethたちを一度打ち払った。
 処恋(MORNING WIDOW)だ。
「皆さん、下がって」
「彼女は私達に任せて下さい!」
 『もう一人の私』澄恋(p3x009752)と『もう一人のわたし』純恋(p3x009412)がそれぞれ建物から飛び出し、純恋は薙刀を、澄恋はブーケショットガンを握りしめて跳躍。同時にMORNING WIDOWへと砲撃&斬撃を繰り出した。
 対してMORNING WIDOWは両手を巨大な血の爪にかえ、斬撃と砲撃をそれぞれ受け止める。
「旦那様が亡くなっても想い続けることだけはわたしらしい。
 処恋、あなたの笑顔を取り戻しにきました」
「オーダーメイド性を捨てアストラルレイヤーにすがるなどわたしらしくない。
 処恋、あなたの涙を止めにきました」
 こちらを拒絶するように爪をふるうMORNING WIDOWから距離をとり、扇状に展開、マークする。
「きっと旦那様のいた日々は幸せに満ち溢れていたのでしょう。
 よってプロ花嫁としてその仮面を叩き割ります。
 それつけてたら旦那様との再会時にキスしてもらえないですからね」
「きっと旦那様のいない世界など鈍色で無価値でしょう。
 だからこそプロ花嫁としてその仮面を剥ぎとります
 仮面越しでなく直接その目で大好きな人といた世界を見てほしいのです」
 対照的でありながら、しかし同じ魂で語る二人。
 その中心にあったMORNING WIDOWも、その魂のありようを理解できた。できたが、だからこそ……。
「いいえ、この仮面は旦那様不滅の世界を手に入れる時まで外しません。あの日の涙を忘れぬために」
「泣いた仮面など外してとびきりの笑顔で。
 お空から見守ってくれている旦那様を再び惚れさせてやるのです。
 この世界と天界の遠距離恋愛。
 プロ未亡人ならそのくらいできるでしょう!」
「泣く暇があるなら化粧の練習でもしなさいな。
 今は天の彼と再び会うまでの準備期間。
 お空のデートまでにうんと可愛くなってやりましょう。
 プロ未亡人ならそのくらいできるでしょう?」
「それまで待てないと言っているのです!」
 解き放った血のエネルギーを飛ぶ斬撃として放射するMORNING WIDOWに対して、純恋は偽りなき自分に姿を変えた。
「旦那様とのかけがえのない思い出を、あなたの後悔で上書きするんじゃありません。
 目を覚ましなさい、処恋。あなたに宿る恋まで失くさないために!」
 一方で澄恋は忘れ得ぬ自分に姿を変えた。
「姿は見えねど心はずっと繋がっているもの。
 虚構の対価に愛する人と出会えた奇跡を失うなど勿体ないですよ
 目を覚ましなさい、処恋。あなたに宿る愛を護り抜くために」
「――ッ!」
 MORNING WIDOWの斬撃を打ち破り、二人の『すみれ』はブライダルダブルフライングキックを繰り出した。
 激しい心のエネルギーが物理的爆発となってMORNING WIDOWを包み込む。
 そして砕け散った仮面の下で、MORNING WIDOW……もとい処恋はがくりと膝をついた。
「この……気持ちは……」
 両手を頬にあて、流れた涙に触れる。
「「それは、私達が恋を失くさず生きるためのもの」」
 同時に着地し、振り返った純恋と澄恋。
 結ばれる夢を、結ばれた思い出を、『かけがえのない恋』を思いだし、処恋はただ熱い涙をこぼした。
 ベールをめくられた、あの日のように。

 斬撃が、紅蓮の光の線が、戦場を走り暴れた。
 大地に転送された暗黒騎士とダークネスクイーンによるものだ。
 光はポート化儀式に用いていた集会場の建物を破壊し、修復不能な瓦礫に変えて吹き飛ばす。
 中に居た者たちも同様だろうか。広がる爆発の煙の中にそれは見えない。
 その様子を見下ろし、立体映像のGGGローダーは頷いた。
「フ、他愛もない。暗黒騎士、ダークネスクイーンよ」
「「はっ、ジェニ博士!」」
「GGGローダーと呼べ」
「ジェニ博士!」
「…………」
 キリッて顔で振り返るダークネスクイーンに数秒沈黙してから、GGGローダーはスッと瓦礫の山を指し示した。
「あの中から加羅沢の死体を取り出し船へと持ち帰るのだ。これでアストラルレイヤーへの鍵は我が手に……」
 ドッ、という音がした。
 拳が瓦礫を穿ち天へ伸びた音だった。
 次の瞬間、周囲の瓦礫が吹き飛んでいく。
「何ッ!?」
 振り返った暗黒騎士たち。キラキラと乱反射しながら舞い散るガラス片の中に現れたのは、『耀 英司のアバター』H(p3x009524)、『ROO刑事ゼスティアン(自称)』ゼスト(p3x010126)、そして加羅沢昭利であった。
「勝手に殺すな。俺はまだ、ニノマエちゃんとの約束を果たしてないんだよ」
 ジャスティスキーと専用デバイスを取り出し、相手にキーを突きつけるように構える。
 その隣では、Hが腰に漆黒のベルトを装着。
「よォ、俺。
 お前も俺なら、きっと、クソッたれな日々を送ってきたんだろう。
 善人気取りの癖に誰も救えねぇ。全部裏目っちまう。それでいて、逆のことをする分には何もかもが上手くいくんだ。
 笑えねえよな、塗り替えてえだろ?
 わかるぜ。だから……やらせねえ」
 一方反対側では、ゼストが腕に装着したデバイスを操作し、天空もしくは宇宙へむけて拳を突き上げた。
「さぁ、行くぞ…電装!暗黒大連合!自分…いや。『自分たち』正義の味方が全力で倒す! ……であります! ゼスティアン、任務了解!」
 そして同時に。
「電装!」
「変身!」
「ジャスティスチェンジ!」
 昭利はデバイスにキーを差し込みレッドジャスティスに、Hは漆黒の稲妻に包まれダークナイトフォームに、ゼストは0.5秒の瞬間装着によってゼスティアンに変身した。
 剣を構え、突進してくる暗黒騎士。
 ジャスティスブレードと漆黒の剣を抜いたHが対抗してぶつかり、交差した二人の剣でそれを受け止めた。
「先輩が言ってた三つ目の言葉の先、知ってるか?」
「……っ」
 Hの言葉に反応し、暗黒騎士の仮面がピクリと動いた。
「『アクションスターを夢見たやつはみんなスーツの中に隠れてしまう』。
 確かにそうさ。けど、続きがあるんだよ。なあ先輩!」
「ああ――けれどそれが」
「「『本当の希望になるんだ』!」」
 二人の振り抜いた剣が、暗黒騎士を振り払い、吹き飛ばした。
「俺達は怪人を選んだ。悪を演じる為じゃない。何にも囚われず、己を貫く為の仮面を。
 正義が耀英司(おれ)達の罪なんだ。
 起きた事はなくなりはしない。
 自分の過去を拒んだところで、誰かが代わりに背負っちまう。そんな事は許せない」
 悪に手を染めたからこそ助けた人々。生まれた本物のヒーロー。くそったれな人生を、それでも続けたかった理由たち。
「本当は分かってるはずだ。お前は俺。俺はお前。
 命を懸けて涙を拭う…その為のH(おれ)達だ!
 さぁ、目ぇ覚ましやがれ!」
 ゆっくりと円月の軌道を描く剣。
「円月暗黒斬!」
「ジャスティススラッシュ!」
 円月と一文字、そして交差する一閃の赤い光が交わり、暗黒騎士へと直撃する。
 激しい火花を全身からあげながら、暗黒騎士は膝をついた。
「本当の……希望」

 連射される拡散世界征服砲の雨。
 そのなかを走り抜け、宙返りによって回避するゼスト。
 集中、高エネルギー反応。素早く振り返り、両腕に集めたエネルギーを集中させる。
「ゼタシウムゥゥゥゥ……光線!」
 正面から激突し、そして拮抗するエネルギー。
「ダークネスクイーン! あなたに『あるクイーン』から伝言があるでありますよ……『今の貴様と交える剣無し。貴様が貴様自身として我が前に立つ事を望む』と……今のあなたは彼女の前に立ちはだかる資格なし!」
「クイーン……まさか!?」
 ハッとしたダークネスクイーンに対し、ゼストは跳躍。
「目を覚ますであります! 電磁シュートォ!」
 流星の如く走ったゼストのキックが、ダークネスクイーンへと直撃する。
 吹き飛ぶ彼女は、しかし……。
「戻るのだ、ダークネスクイーンよ。貴様にはまだやるべきことがある」
「ジェニ博士……」
 顔をあげたダークネスクイーンを転送光線がつつみ、そして暗黒大連合の船の中へと逃がしていく。
「待つであります!」
 駆け出そうとしたゼストの前に、突如として転送されてくるナンイドナイトメアシリーズ。
 各分野の達人を洗脳し『全員が影武者』となったネオフォボスの首領たち。一人しかいないと判断した者が対策をとれば、その裏をつくことで未来人すらも欺き撃退してきた強者たち。彼らが『ネタばらし』をしたということは、既にバレても問題無いということだ。
「融合せよ。暗黒大連合最強の兵器――ナンイドナイトメアレイドよ!」

 巨大なナンイドナイトメアが現れ、街そのものを腕でなぎ払っていく。
 『学生』一(p3x000034)はその風景を眼鏡越しに見つめながら、しかしやや目を細めた。
「……待って下さい、暗黒大連合の四天王といって転送されてきたのはMORNING WIDOW、暗黒騎士、ダークネスクイーン……あと一人は!?」
「ククククク――クリティカルクルセイド!」
 背後で突如声がした。そして必殺の光が一閃した。
「ニノマエちゃん!」
 素早く割り込み、ジャスティスソードでそれを防御するレッドジャスティス。
 ニノマエは……。
「あなたは……油圧ワニファラオ!」
「そう、四天王がひとり、この私こそ油圧ワ――」
「ワニだーーーーーーーーーーーー!」
 きりもみ回転しながらミサイルみたいに飛んできた『サイバークソ犬』ロク(p3x005176)がワニの首をガブゥッとやった。
「グワーーーーー!?」
 急にねじ切られて爆発四散するワニ。
 しかし散らばったのは人体部位などではない。機械でつくられた身体の断面や細かいパーツ群であった。
「これが、復活怪人の正体……今まで数百回レベルで倒したにも関わらず出現し続けるのは、この量産型油圧ワニファラオボディのせいだったのですね」
「よくわかんないけど子ロリババア牧場と同じ理屈ってことでいい?」
「いいですよ」
「やったー!」
 お弁当の箱をあけて漫画肉をムシャムシャ食い始めるロク。
 えっ何この子っていう目でレッドジャスティスが見ていたが、そこへ――。
「GGGノヴァ!」
 超高速で黄金の影が駆け抜けた。
 一斉に吹き飛ばされる三人とワニの残骸。
「あのバイク……GGGローダー! エッジどころかノヴァってきた!
 知ってるよ! よく轢き殺されたもんあれに似たバイクに! 見世物みたいに! 見世物みたいに!」
 地面をころころしながら叫ぶロク。
「ジェニ博士……」
「えっあれしってるひと!?」
 振り返るロクに、ニノマエは起き上がりながら眼鏡の位置をなおした。
「ジェニ博士は……僕の生みの親です」
「パパなの!? 子ジェニローダーなの!?」
「最高傑作である僕とレッドジャスティスのデータ、合わせれば確かに強いでしょう」
「お肉を焼きたてのパンで挟むみたいな!?」
「だが博士は計算違いをしている!」
「なに!?」
「最後に代入される正しい数式は――」
 ニノマエは眼鏡を外した。美少女の瞳には、決意と、勇気と、そして――。
「正義です!」

 臆病なアクセスファンタズムは私を守る為の物だった。
 出会いの後も喪いたくないという思いが二の足を躊躇わせていた。
 けれどいつだって、どこでだって貴方は前を向いていた。
 何度目かの今は1度きりなのだと。気付くのに時間がかかってしまいました。
「お待たせしました、僕は戦えます」
「ニノマエちゃん……。なんか、変な感じだな。前は俺を守って戦って、今は一緒に隣にいる。けど、それだけじゃない気がするんだよ。ニノマエちゃんは、もしかしたら俺の……」
 その先を、ニノマエは微笑みで、そして小さく首を振ることで止めた。
「いけー! みんなー!」
 ピッーとロクが笛を吹くと、どこからともなく子ロリババアの大群が押し寄せた。中には邪ロリババアやメカ子ロリババアやなんかもう見たことない種類のやつが混ざり、全員がなんかぬめぬめしたものを背負っていた。
 一斉にぶつかり、GGGローダーをぬめぬめにしていく。
「な、なんだこれは……! ぬめぬめしているだけだというのに動きが……!」
「今だ!」
 どこからともなく現れた剣を握りしめ、背負ったブースターバックパックによって走り出すニノマエ。
 その風にのるようにして走るレッドジャスティス。二人の剣は交差し、そしてGGGローダーを爆発四散させた。
「お、おのれ……だがこのボディを倒しても私は……!」
 爆発に紛れ何かが転送されていったように見えたが、今はそれどころではない。
 振り向くと、ナンイドナイトメアレイドが破壊光線で街をなぎ払いにかかっている。
「これ以上街を破壊させるわけにはいかない。行こう、ニノマエちゃん!」
「はい! ジャンルがバラバラだって、作風が違ったって、それでも。僕達がここに居ると示す光があります……!」

 ナンイドナイトメアレイドが放つ暗黒破壊光線に、ラムダは真正面から対抗した。
 彼女だけではない。Tethとジリオライトも力を合わせ、光線めがけて轟雷の力を叩きつけた。
「すんげー久しぶりだなテメェーッ!! んでもって、その大味なデタラメさ。いかにもって感じで笑えてくるわ……!」
「何かは知らねぇがとにかく気に入らねぇ! てめぇをデータの痕跡一つ残さず消し飛ばさなきゃ気が済まねぇ!」
「魔力極限まで収斂……すべて塗りつぶし一切合切を薙ぎ払え魔導砲!」
 力はナンイドナイトメアレイドのそれを打ち払い、そして僅かによろめかせる。
 純恋が、澄恋が、そして処恋が同時に跳躍、三人の力を合わせて三重螺旋を描いて突撃する。
「ハッピーエンドは我々のものです!」
「ぐうう……!」
 取り出した剣でそれを防御しようとするも、そこへHとゼスト、そしてロクが突撃。
 現れたマッシブな子ロリババアたちに騎乗した彼らは、天空に生まれた光の道を駆け上がった。
「一気に決めるぞ!」
「これで最後であります……!」
「いっけー!」
 子ロリババアの大群がその物量でもってナンイドナイトメアレイドの防御を崩し、そこへ
「ゼタシウムゥゥゥゥゥゥゥ――光線ッッッ!!」
 全力ゼタシウム光線が直撃する。
 反対側へと回り込んでいたH、レッドジャスティス、そしてニノマエは同時にキックの構えを取った。
 突き刺さる流星群。
 ナンイドナイトメアレイドは大爆発を起こし、天までその煙があがった。
 その風景を背に……。
「ここは決めポーズだろ、皆!」
 レッドジャスティスを中心に、九人は揃ってポーズをとった。

●世界を天秤にかけたとき
 舞うように飛び交う無数の刀。
 『Dirty Angel』ニアサー(p3x000323)はその中で、踊るようにして回避した。
 否、回避できたとはとても言えない。足や腕を浅く斬りながら、しかし確実にニアサーの体力を奪っていく。
「マニエラちゃ――じゃなくて、領主を守るためにっ」
 抜いた剣で打ち払うが、後方に回り込んだ別の剣が彼女の背を切りつける。
 防御はそれなりにできているつもりだが、相手の『連携』が圧倒的だった。
「『千年雅楽(ソードビット)』!」
 『戦神伍番』桜ノ宮 雅。ワールドクラスのチェスプレイヤー。彼女がニアサーを一撃で仕留めようなどという『愚かな焦り』を見せないのは、
 彼女と共に戦う『正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)の存在のためだ。
「ザムエルの選民思想はノーサンキューだ。現実の兄上みてぇで胸糞悪いぜ。
 これ以上、ティアンにリセットの苦しみを背負わせたかねーんだよ!
 今この拳は、この魂は! 一心不乱に彼女のために!」
 ナイトもまた華麗なプレジデントダンスによって駆け回ると、要所要所で指鉄砲ジェスチャーから『社長☆gun』を撃ち込んでくる。
 それを雅は空中で刀を払うようにして防御した。
 千年雅楽は攻防一体の武装だが、それゆえに絶え間ない攻撃に対して防御の手を緩めるということができない。
「悪いが、アポのない奴を秘書(secretary)に会わせる訳にはいかねーな。社長直々の接待、してやろうじゃねーの!」
 チェンジだニアサー! とナイトが叫ぶと、今度はニアサーが攻撃に転じた。
「さあ行こうナイト君。あなたが未来を切り開くのです」
 構えた刀に力を集め、豪快に切り下ろしを仕掛ける。
 『ヴィルベルヴィント』というニアサーのもつ必殺コマンドのひとつだ。
 直撃すれば相手を吹き飛ばすことも可能な、突き抜ける斬撃。
 雅は刀をかさねるようにして防御し、そして反撃の刀を放つ。
 二刀流剣士が受けと攻撃をほぼ同時に行うように、無数の刀でそれを実現するのが雅のスタイルだ。
 が、飛来した剣をナイトは己の両手でがしりと掴んだ。
「人の仕事(business)を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に堕ちるぜぇ!」
 と同時に雅の側面へと回り込むニアサー
(皆の願いを叶える為だ、甘い見積もりはしない)
 至近距離から放つ必殺コマンド『オストヴィント』。
 『あゆ』と『こち』の二撃からなる連係攻撃を、雅は手元に呼び寄せた刀で受け――そこなった。
 なぜなら、素早く割り込んだナイトがその身に刀を突き刺す形で『止めて』いたからである。
「シャチョサン!」
 呼びかける声がする。だが、ナイトは血を吐きながら笑った。
「身体を張るのが、社長(president)の本懐(quest)じゃねーの」
 いつもそばにありながら、幾度も死を経験してきた秘書。
 彼女を助け出しその腕に抱き留めたときから、彼は決めていた。
「もう、君を死なせやしない」
 稼いだ時間は一瞬一秒。しかしニアサーの第二撃が撃ち込まれるには充分すぎる隙であった。
「今日は、ニアサーたちの勝ちだよ」

「シャチョサン……」
 光の粒子になって消えていくナイトを、『灰色模様』グレイガーデン(p3x005196)がメーヴィン領主の館へと運び込んでいく。
 風に草のそよぐ平和な牧場は、いまアンロットセブンの襲撃によって戦場と化していた。
 100の軍勢や爆弾や爆撃機はないが、幾度もおきる衝撃と破壊の音がそれに匹敵する脅威であると教えてくれる。
「ティアンちゃん、社長をよろしく」
「グレイサン……マスコットナノニ……」
「えっ僕マスコットって認識だったの!?」
 社員だったのでは!? と頭を抑えるグレイガーデン。脳裏によぎるペンギンルック。
 が、今はそれを考えている場合ではない。
 凄まじい破壊の音が、外から聞こえていた。
「僕は行ってくる。ここで待っていて」
 グレイガーデンが外へ飛び出すと、今まさに『夢現の奇術師』夜乃幻(p3x000824)と『戦神参番』心斎橋 芹那がぶつかり合っている所だった。
(裏から世界を操ろうなんて悪趣味な人だ。
 そして、女子高生の姿の武器なんて、悪趣味極まりないな。ここまで悪趣味だと気持ち悪いを通り越すもので御座います。
 僕は敵がレディの姿をしていることに胸は痛めますけれど、容赦していられないようなので、本気で戦わせて頂きますよ)
「心斎橋 芹那様と申しましたか。貴女が壊れてしまうのは、とても悲しいですけれど、もう戻れなくなるほどに奇術に魅せられてくださいませ。それが僕が貴女に唯一できるレディーファーストですから」
 夜乃幻は『蝶の舞』の力によって作り出したガラスの翅で優雅に飛ぶと、奇術『流星スピカ』を解き放った。
 対象者はあの青く強い輝きのスピカが堕ちるさまを夢見るという彼の奇術は、近接戦闘に優れかつ搦め手に弱いという芹那の性質にうまくハマっているようにみえた。
「心斎橋 芹那様。武に長けるものとして、お手合わせ願いたい! 臆病者でなければ、僕の挑戦ぐらい受けてくれますね?」
 そんなふうに挑発しながら、引き撃ちを続け一方的に【呪縛】や【恍惚】といった状態異常で相手を苦しめていく
「心斎橋 芹那様、その程度なのですか。全くがっかりです。他の方にしておけばよかったです。
 僕が逃げていると思ったら間違いですよ。只、僕が蝶なだけです。蝶は飛ぶものでしょう?」
 そんな様子に、しかしグレイガーデンは油断しなかった。
 特殊に強化されたアンロットセブンの一機が、『この程度』なわけがないのだ。
 それだけ簡単な戦力なら、この場に五人そこそこ居れば足りただろう。三人くらいでもしのげたかもしれない。第一、『前回』は八人がかりで敗北したではないか。
「……何か来る」
 グレイガーデンが芹那の変化を察したのと、夜乃幻が敏感にそれを察知し飛び退いたのは同時だった。
 いや、同時にもうひとつおきたことがある。芹那が星の光に包まれ凄まじい早さで夜乃幻に接近し、彼女を殴りつけたのだ。
 その一発で激しいダメージを受ける夜乃幻。そのまま、光に包まれた芹那はギラリとメーヴィンの館へと目を向ける。
 動き出す彼女を阻むように、グレイガーデンは反射的に動いていた。
(人を直接傷つけたくなかった)
 だから、攻撃手段を封じていた。
(けど、やるべきことなのはわかったんだ)
 だから、身体が動いていた。
(ここでは、出来なかったことをやろうと思えた)
 だから、この技を会得した。
「……やり通すよ」
 グレイガーデンは強く大地を踏みならすと、天空に指を突きつけた。
「ミュージック!」
 鳴り響く90年代ダンスミュージックとミラーボール。
 彼の身体にみなぎるパッションが、迫る芹那へ立ち向かう勇気となった。
 繰り出される拳に、自らの拳を合わせる。
 激突が、光と爆発に変わる。

「『千本櫻芽(ガンファング)』!」
 複雑に折り重なる光線の中を、『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)はマギラニアRに跨がり駆け抜ける。
 合体させた『星詠の翼』を分散・展開し、それぞれのガンファングへ対抗するように撃ちまくる。
「……思えば長い間割を食っていた気がする」
 直撃コースの射撃を車体ごと傾けて回避すると、『戦神陸番』香里園 櫻めがけて車体をぶつけにかかった。
「――ッ!」
 素早く回避する櫻。リアナルはそのまま突っ切り櫻と距離をとると、マギラニアRをフライトモードに変化させ彼女を中心とした円を描くように飛び回る。
 多角的に攻める回避不能なビット攻撃はマニエラも得意とするところだ。
 単騎VS単騎であるにも関わらず無数のビットが空中戦(ドッグファイト)を繰り広げ、彼女たちの間にはちいさな戦場ができあがっていた。
「ドラゴンにやられたり貴族になった自分がイチャイチャしてるの見せられたりさぁ!」
 だれやのその夫! と叫びながらターンをかけるリアナル。
 あの美少年なのか美少女なのかわからない謎の夫。誰なの。本当に。
「世界平和の為人間を減らす。で、人間が減って本当に世界が平和になると思ってるのなら頭焼け野原なんだろうね。性善説が過ぎる。ヒトは頭が良いただの獣だよ」
 相性という意味では、リアナルは櫻に強いというわけではない。が、弱いというわけでもまたない。ビット勝負において二人の実力は拮抗していると言って良かった。
 それゆえに、『サイバーウィザード』壱轟(p3x000188)は決定打となりえる。
(アンロットセブン、R財団……。
 やつらの企みの全てを伺い知ることはできないが、思い通りにさせれば最悪なことしか待っていないだろうな。
 なんとしてもこの場所を、マニエラ、ティアン……2人を守らねば!)
 リアナルとは反対側に回り込んだ壱轟は、魔法の杖に力を込めた。
 普段『チャロロ』が剣に込めるそれと似ているが、どこか違う。
「『拘束弾』装填――発射!」
 突き出したロッドに炎の魔術が凝縮され、弾丸のごとく放たれる。
 櫻が撃墜しようとビットを飛ばすが、それをマニエラのビットが阻むかたちでボディをぶつけた。
「おまえたちに奪わせてたまるものか! ……魔力の縄よ、縛りつけろっ!」
 着弾、と同時に炎が蛇のように暴れ、櫻の上半身を縛り付ける。
 これで無力化した……などとは思わない。
 力ずくで打ち破った櫻がビームピストルをぬいた所で、『灼熱波』をロッドに装填。
「こっちの『オイラ』も、ROOのことを中途半端に聞きかじったイペタムもここにはいないだろうが……。
 何度もR財団と敵対した俺(オイラ)はお前たちを許してはおけない!
 お前たちが世界の人間を管理するなど、考えるだけで反吐が出る!
 ここで退くわけにはいかない以上、限界まで戦い抜くまでだ!」
 リアナルのマギラニアRが射撃を受けて墜落。草の上を転がるリアナル。だが同時に、壱轟の『灼熱波』が直撃した。炎と衝撃が、櫻を派手に吹き飛ばす。

 ガトリングガンによる激しい弾幕を、『閃雷士見習い』Steife(p3x005453)は素早い剣さばきによって打ち払っていた。
 相手とて鉛玉の数ごときでこちらを圧倒できると思っていないようで、ミサイルポットを展開し一斉射撃。
「どうして……」
 Steifeは咄嗟に飛び退き、爆発を逃れた。
 が、それを追尾したさらなるミサイル群が次々に着弾。Steifeは爆発に包まれ、空を舞う。
(どうして、どうして……なんで「秋奈」と同じ、「戦神」と戦わなくちゃいけないんだ)
 苦しげに歪めた表情には、悲しみと迷いがあった。
(死者の、データの再現だったとしても、彼女達が「兵器」であったとしても!
 例えそれが仮初だったとしても! あいつらが持っているのは「命」だろう!? それを、「私」、は……「オレ」は……ッ!)
 転がるSteife。
 そこへさらなる射撃が襲うが、割り込んだ『鉄骨』デイジー・ベル(p3x008384)がクロスアームで防御を固めることでこれを阻んだ。
 腕を、腹を、頬を鉛がはねる。
(相手は決戦兵器、私は殺人兵器。
 相手は死者の再現データ、私は死者の寄生体。
 在り方にそう差は無い。正しいか、おかしいか。それぐらいです。
 嗚呼、ならば)
「全霊の撃滅を、同族の貴女に」
 閉じていた目をひらき、どこか冷たいまなざしをデイジーは小時へと向けた。
 対して、両目を隠すように切りそろえた前髪の間から鋭く氷のようにつめたい視線を返す小時。
「生誕は結果だ。生まれたか、死んだか、それが事実であるか。そんな下らない原因論に興味は無い」
 小時は弾切れになったガトリングガンをパージすると、ロケットランチャーをあろうことか両手に構えてぶっ放した。
「壊すために動く。殺すために動く。過去も未来も、『今』の前では所詮は夢幻」
「ええ、そうでしょう」
 爆発の中、腕を振り煙を振り払うデイジー。
「彼女はきっと正しい。兵器としての”役割”から外れぬ正しき物だ。だから――」
 真っ向から立ち向かい、突き進むデイジー。幾度もぶつけられた爆発に片腕が吹き飛んだが、痛みなど知らないとばかりに急接近をかけた。
 ランチャーをパージ、更にミサイルポットもパージし、身軽なフレームだけとなった小時はコンバットナイフを手に取った。
 デイジーの拳とナイフのグリップによる殴りつけが正面から衝突。
「受け止めてみろ決戦兵器、私(殺人兵器)のこのエラー。
 世界を壊す力なんて、必要ない」
 拮抗。小時が前髪の内側で目を細める。
 その時、彼女の後ろでSteifeがゆらりとたちあがった。
 『あき……玲。……無茶は、しないでください』
 戦う前に、そう彼女に声をかけた。彼女のありようは、姿や口調をかえたところで何も変化していない。弾丸のようにまっすぐ進み、それが壁にあがって落ちようと非道な殺人に用いられようと、知ったことではないと言わんばかりに一瞬一秒を突き進むことに費やしていた。
 弾丸は、当たることを目的にしない。殺すことも目的にしない。己を推進することのみを目的にする、きわめて美しい『道具』だ。
 きっと、死ぬその時までブレなどしないだろう。
 どんな最後でも、笑って死ぬだろう。
「敵であろうと、データの再現であろうと、戦神は戦神。……秋奈の同類を、私は……」
 同じだというなら。
 迷いは無礼だ。
「――ッ」
 デイジーと拮抗していた小時の側面に、急速に接近したSteifeの刃があった。
 回避や防御という判断は、もはやない。
 小時はその鋭い目で、『ああそうだろうな』と語った。
 敗北もまた、当然のありようなのだと受け入れて。

 『戦神壱番』天王寺 昴。大口径ビームライフルを無数に接続し撃ちまくる、その圧倒的かつ隙の無い戦い方に、『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)と『雪風』玲(p3x006862)が苦戦しなかったといえば嘘になる。
 侮って勝てる相手だとは、もはや思っていないのだ。
「にゃーっはっはっはっは!
 かつて守護れなかったリアナ……いやマニエラ? うーん、どっちじゃ?
 メーヴィン領が戦場とはのう!
 して、何の因果か敵部隊の5機が相手とは!
 この戦い、どちらが「本物」なのか、決着をつけようではないか、戦神!」
「おっ、いーねー! 決めちゃう!? ホンモノ! ……まって偽物とかあるの!?」
 ビームサブマシンガンで牽制する昴に、至近距離に迫って二丁拳銃を撃ちまくる『アナザーツインハンドガンアーツモードバレットリベリオン壱式』による玲の戦術で渡り合う。
「にしても妾にはわからぬ。
 何故混沌の世界に居ない筈のお主達が、居なくなったはずのお主達が、異世界のこの写し世に存在するのか!
 どうせ黒幕がおるのじゃろう? 妾らを知る誰かが!
 にゃっはっは、滾るではないか!」
「……」
 ファンは側面から回り込み、抜刀。必殺必中の型『幻朧虎徹』の一撃を滑り込ませる。
 ちらりと見れば、ザムエルはハンバーガーをかじりながらこちらの様子を眺めていた。持ち込んだであろうキャンプ用折りたたみチェアに座って。
 たかくらさんに至っては元から無かったはずのマッサージチェアに座ってアイマスクをしてアロマ加湿器を顔にあてながらうごうごしていた。本当に意味の分からない存在だが、『意味』を探るにはまだめくっていないカードがいくつかあるようにも思えた。
「なあ、もうやめにしないか。どうせ『ゲームの中の他人事』だろう? こっちの世界がどうなろうと、本来お前には関係ないはずだ」
「概ねその通りですね。なので私の回答はこうです」
 戦いながら、ファンはザムエルを横目でにらみ付ける。
「貴様のその顔が気に入らない、ザムエル・リッチモンド」
「――フン」
 不敵な笑みでこたえるザムエル。たかくらさんはいつの間にかマッサージチェアごと消え、玲の背後に立ち肩にポンと手を置いていた。
「すごいこと、おしえてあげよっか」
「な――」
 唇を耳に寄せ、囁く。
「ガンがルーのポケットって、めっちゃくさいよ」
「知るかァ!」
 足払い、したときには消えている。
 もとよりちゃんと相手にするつもりなどない。
「刮目せよ!我は戦神!叛逆のイレギュラーズなり! そしてさらば、愛しき戦友ちゃん!」
 突きつける拳銃。突きつけられるビームライフル群。
 大量のビームが玲を貫きその身体を消滅させるが、同時にファンは昴を派手に切り裂いた。
「次は貴様だ、ザムエル」
 振り返ると、ザムエルがバニラシェイクをずごごと飲み干してからそのカップを投げ捨てた。
「ま、いいだろう」
 ザムエルは背もたれによりかかり、両手を小さくあげてみせた。無論命乞いに応じる気など無いが……。
「ところで、もう分かったか?」
「は?」
「なぜ『あのとき』『時系列が入れ替わった』のか」
 ファンの表情に、ザムエルは不敵な笑みを浮かべた。
「そのうち分か……ったら、いいな?」
 ファンは答えず、その首を切り落とした。

●勇者の尊厳
 正義国邪摩都は揺れていた。
 訪れていた観光客はおろか住民達は我先にと逃げだし、街は混乱の渦にあったために精神的にも揺れていたが、それいぜんに物理的な揺れによって破壊されかけていた。
「スクラップビルドは世の習い。街が壊されても、作り直せばいい。けど……」
 『青の罪火』Siki(p3x000229)は迫り来る『巨大な邪神』に対して剣を抜いた。
「人の想いは、作り直せないんだ」
 Sikiはこれまで、この仮想世界の中で様々な想いに触れた。
 混沌を摸して作られた偽物の世界だとはじめは聞いていたけれど、そうとは思えないくらい人々には感情が、熱が、そして思い出があった。
「守るよ、全部。一連の出来事に関わった人全員が、余すことなく想いを届けられるように」
 邪神が大量の鎖を放つその一方、Sikiはカフェの屋根へとびのると走り出す。無数の鎖が屋根の瓦を貫き突き刺さっていくのを背に、Sikiは跳躍。自らを大きな青き龍の姿へと変え空に舞い上がった。
「私の友達の大切な想いの、邪魔を、すんな……っ!」
 放つブレスが炎の刃となり、鎖を断ち切る。
 砕けた鎖が雨のように降る中で、『ガジェッティア』雀青(p3x002007)はSikiの背より立ち上がった。
(ようやく会えたかと思ったら悪い蟲と一緒に居る様だな……。
 おまけに「俺」のコピー品、鉄鎧の邪神混ざってねえか? いや、若しくはリュグナーの世界の時のデータか?)
 ランドウェラオルタが『八界巡り』の中で抽出されたデータから作られているという話から察するに、あの『マカライトオルタ』もそうしたデータから作られたものなのだろう。混ざっているのもさもあらんといった所だが……。
「……イデアの方は頼むぞ。私は、こいつと決着を付けておく」
 迫る無数の鎖をSikiの回避に任せ途中から背を蹴り自分も空へと飛び上がる。
「おそらくあの時の記録から生み出された「俺」よ。
 その名前は共に邪神を殺し続けた友人達が呼ぶ【邪神憑き】の名前で、【邪神】が呼ばれるには高尚過ぎる代物だ……!」
 こちらを見上げる巨大な鎧。鎖を束ね放ったそれを、雀青は剣に紫の毒煙を纏わせて叩きつけることで防御した。
 切り裂いた鎖の一部に足を付け、そして走る。
 全方向へ放つ邪神の鎖にSikiがつかまるが、Sikiはそれでも構わないとばかりにドラゴンブレスを解き放った。
 破壊のためのブレスではない。同じく鎖につかまった雀青を解き放つための、再生のブレスである。
「誰一人倒れないで、君の想いを届けるまで。
 それが此度の戦場で私の在る意味。私の譲れない願いだ!」
 解き放たれた雀青は青い音の塊を武器から放ち、巨大な破壊にかえて邪神の鎧を貫いた。

 膝をつき、それでも尚戦い続ける巨大な邪神。
 その様子を、死神の鎌をたずさえた男が見上げていた。
「初めまして、リュグナーさん」
 声に振り返れば、『霞草』花糸撫子(p3x000645)が立っている。
 死神リュグナーオルタは彼女の佇まいに首をかしげた。
「ほう、これは奇妙な感覚だ。貴様はもしや、『我が根底』と縁深い者か?」
 そんな問いかけに、花糸撫子は不思議な笑みを浮かべた。
 一言で感情を表せないような、無数の絵の具を混ぜてゆっくりとまわし混ぜたような、なんともいえない表情である。
「私は花糸撫子。好きなように呼んで頂戴ね?」
「……」
 リュグナーオルタは鎌を担いでいた肩からはなし、両手に握るように持ち直す。
「時間を稼ごうとしている。いや、同時に我というものを知ろうとしている、か」
 目元を覆っているのに、こちらを見透かしたような態度。
 『本物』とは色々な部分が異なるのに、何故だか彼らしいように思えた。
「付き合うのも一興、だが……ランドウェラオルタの頼みだ。悪いが、死んで貰う。案ずるな、死は平等な安らぎだ。それ以上に苦しめはしない」
「おやさしいこと」
 一秒。
 沈黙。
 次の花糸撫子の囁きは、魔力によって突き刺すそれとなった。
 魔力の塊を鎌で切り裂き、悪魔を呼び出すリュグナーオルタ。
「リュグナーさん、どんな歌がお好き? リクエストがあれば是非とも仰ってね!」
 花糸撫子はどこか儚い笑顔を浮かべながら、襲いかかる悪魔たちを振り払うようにして歌い始めた。
(私、結構しつこいの。この状況だからというのもあるかもしれないけれど、あの人の体がいいようにされるのが…そう、これはきっと、とても『ムカついてる』のよ!)
 求められたタスクは時間稼ぎ。だが、自分一人でもこの『死神』を打ち破らんばかりの気概をもって、花糸撫子は刃のなかで歌い続けた。
「あの人と同じ姿をしたその体で、好き勝手暴れないで頂戴!!」

 『御柱』の塔では、今まさにZEROとチャネラーの二人がゲートを生成し、仲間達がアストラルレイヤーへと突入する助けとなっている。
 それゆえ無防備となった彼らを狙い、ランドウェラオルタたちは塔へと進行していた。
「はじめは塔を守るために戦い、次は堕とすために戦い、次は観光で訪れて……今度はまた守るために、か。全部に関わったわけじゃあないけど、浅からぬ縁もあったもんだな」
 チャネラーから聞いていた権限の奪われかたは単純だ。『殺される』ことである。
 といっても、アストラルレイヤーは人間の脳で知覚しきれないほど複雑で異次元的な領域だ。何百何千という並行存在を殺し続けるという作業があったはずである。今まさに、それを仲間達が行っているのだ。
 殺し合うことでの再会だ。
(あの時はその瞬間が幸せならと考えていた、だめだこれは。
 誰も幸せじゃない。
 また会えるがこんな再会は嫌だ。
 最後は嫌だ。
 助けるぞイデア、エイス)
 ランドウェラオルタは手にしていたスプーンをひょいっと投げると、塔の前で待ち構えるロードに手を翳した。
「残念ながら、手遅れだ。イデアもエイスも姉ヶ崎-CCCの願望のために作られた器にすぎないんだよ。この世界だって、所詮は誰かの願望が生み出した『まやかし』さ。守ることにどんな意味がある?」
「違うよ。まやかしなんかじゃない」
 同じく立ち塞がったトリス・ラクトアイス(p3x000883)が、ランドウェラオルタの放った見えない斬撃をギターサウンドによって打ち消した。
 すると彼女を中心にステージが出現。ライトアップされたトリスはマイクに向かって叫んだ。
「『たったそれだけ』が叶わなくて、でも諦められなくて、同じように歪んでしまった願いを、何度も見てきたような気がする。
 アストラルレイヤーなんてものまで持ち出しても叶わない願いを、ただくだらないと切り捨てる事はしたくない……。
 でも、イデア達を救いたいと、願っている人はまだいたんだ。
 私は、『たったそれだけ』の力になりたい!」
 かき鳴らすギターと歌声が力ある光となり、無数の魚めいた形の剣をかたどりランドウェラオルタへと襲いかかる。
「私はトリス・ラクトアイス!!
 全世界に羽ばたきし至高のアイドルにして、諦めずに夢を追う者の味方!!
 ただし時と場合によります!!
 いつか、彼方を夢見たように、その気持ちを歌に込めて――!」
 ランドウェラオルタは踊るように『コード』を描くと飛来する無数の剣を打ち払い始める。
「お前はそれで良いのか。
 CCCの言う事が全て? 言われた通りにしかできないのか?
 昔の僕のままじゃないか。そろそろ変わる時間だぞランドウェラ!」
 襲いかかるロード――の胸を、見えない剣が貫いた。
「所詮は僕も『つくりもの』さ。どうして変わる必要がある?」
「それを言うなら……」
 突き刺さった身体を無理矢理前進させ、ロードはランドウェラオルタの襟首を掴んだ。
 トリスの歌声に治癒の輝きが宿り、ロードへと集中。突き刺さった無数の光が彼の力へと変わった。
「『僕』だってそうだ。けれど、『変わりたい』と思った。『変わる』と決めたんだ!」
 ロードの振り抜いた拳が、ランドウェラオルタの顔面へと直撃した。

 邪摩都に常駐する兵たちがいながらここまでの事件になったことには理由がある。
 兵力も、防御網も、物理的なバリケードでさえ意味を成さず、強大な力がそれを蹂躙したからである。
「セララスラッシュッ!」
 虹色の軌跡を描いて放たれたパラディーゾセララによる斬撃が、兵たちを全員まとめてなぎ払っていった。
 射程だ距離だといった事情をかなり無視した破壊に、兵達はたちまち瓦解し、御柱を守護せんと立ち向かう彼らは次々に倒れていった。
「ゲーム的に考えて強大な力を持つボスと皆で力を合わせて戦う展開というのは熱いと思いませんか? 私は結構好きですよ♪」
 そんな強敵に立ち向かうことに決めた『傘の天使』アカネ(p3x007217)。同じクエストに居合わせたイレギュラーズたちと共に、御柱の最終防衛ラインである御柱前公園に陣取っていた。
「それにしても悪夢と絶望を人々に届ける魔法少女? どうしてその結論に至ったのです? その思考原理を紐解けばパラディーゾの傾向が分かったり」
「こちら側は果たして一睡の夢に過ぎないのか、あるいは……」
 『秘すれば花なり』フー・タオ(p3x008299)は途中まで答え、そして『来るぞ』と言って話を中断した。
 虹の光を剣に宿し、悠々と地を歩いてやってくるパラディーゾセララ。
 片目からは同じく虹色の光を漏らし、年頃の少女のようにニッコリとこちらに笑いかけた。
 まるで無邪気な、悪意など全く持っていない善良な少女のように、それは見えた。
「世界の書き換え、とは、色々と差し引いても大きく出たものよな。
 多くの者が狙いに行くのも分かろうというもの」
「んー」
 殆ど独り言のつもりでかけたフーの言葉に、パラディーゾセララは小首をかしげ、そして顎に指を当てた。可愛らしい仕草だが、漏れ出る虹色の光がまがまがしさですべて塗りつぶしている。
「実はね? ボクはアストラルレイヤーとか姉ヶ崎ちゃんとか、結構どーでもいいんだよね。そもそもボクって、この世界を消しちゃうために生まれたんだし」
「なんじゃと?」
 今までの話とだいぶ違うではないか、とうどん屋台を公園のなかにとめた『うどんの神』天狐(p3x009798)が身構えると、パラディーゾセララが笑った。
「ROOデータ内に生まれちゃった原罪のせいでクラリス(マザー)ちゃんがダメになっちゃうから、ROOごと消しちゃう。それがクリスト(Hades)くんのお願いでしょ?
 ボクは元々そのために生まれたんだし、原罪そのものでできてるアストラルレイヤーも消しちゃうつもりなんだよね。姉ヶ崎ちゃんとは……リガイの一致? てところかな」
「なるほど。フクザツな事情がこれでだいぶスッキリしたのう」
 天狐は割り箸とどんぶりを構え、そして謎のフォームでセララにどんぶりを突きつけた。
「イデアやエイス、それにこの『物語』に関わる人々の想い。その全てを阻み破壊するのがおぬしということ。つまり、おぬしを倒すことがわしらの使命ということじゃな!」
「なるほど分かりやすい」
「じゃあ、ちゃっちゃとやっつけちゃいましょう♪」
 傘を開き空へと舞い上がり、戦闘の姿勢をとるアカネ。
 フーは術札を袖の下から滑り出し、両手で扇状に開くとその全てを解き放った。
「ここで原動天の数を減らすのは意味がある上、妾も"少々"腹に据えかねておる。
 ここは本気でいかせてもらうとしよう」
「でっきるかな~?」
 パラディーゾセララは笑い、そしてフーの放った三種の魔術全てに対して剣で斬りかかった。
 蒼火、雷撃、黒影の全てが一体のコンボ技となり、青き龍のコントラストを描きパラディーゾセララに食らいつきそして飲み込んだ。
 が、直後にパラディーゾセララは龍を内側から切り裂いて出現。
 シルエットだけの魔法少女が複数出現するも、それを天狐は屋台から展開したうどん大砲によって砲撃。爆発するうどんの光にむけて跳躍し、魔法少女たちを盾にしていたセララめがけて割り箸とどんぶりによる連続攻撃コンボを繰り出す。
「ワシの役目はだたひとつ。
 対話という名の交渉テーブルへ物理的に引きずり落とす事じゃ!!
 互いの意地と正義のぶつかり合い、掴み取るのは1つのみ。
 どちらにも譲れないモノがあるのであれば、言葉は不要! 拳で語る方が手っ取り早い!」
 攻撃を召喚した盾によって受けたパラディーゾセララは、剣を巨大な魔法の剣に変えて振りかざした。
 十二の輝く石が剣に集まり、一つ一つの光が優れた職能へと変化。全てを混じり合わせたパラディーゾセララは天狐を真っ二つに――。
「いやぁ♪ こう言う時、死んでも大丈夫な体は便利ですよね♪ 私毎やれって言えるので♪」
 傘を広げたアカネが突如として割り込んだ。
 ずばんと切断される傘。そしてアカネ。
 かなり高度な防御性能と体力を備えた彼女でありながら、それを一刀両断にするだけの力がパラディーゾセララにはあったということだろう。
 『やられた』にも関わらず、しかしアカネはほがらかに笑う。
「こっちは死んでも終わりじゃあないんですよ。むしろ、そちらのカードをめくらせただけの価値がある。ですよねセララさん?」
 呼びかけた後方より、『妖精勇者』セララ(p3x000273)が猛烈な速度でパラディーゾセララへと突っ込んだ。
「ボクはこの世界で生きる皆が大好き。皆の笑顔を守りたいんだ」
 フーのコンボ攻撃も、うどんの大砲も、アカネの犠牲も全てに大きな意味があった。
 一瞬の一刺しを実現するための、これは入念な『詰め』であったのだ。
「イデアの伝説、綺麗で悲しいエンディングの物語。
 その続きが今この瞬間なんだ。今度こそ皆でハッピーエンドを!
 この気持ちはボクだけじゃなく、イデア達に関わった複数の人が同じ想いを持ってる。
 皆の想いを集めれば不可能なんて無い!」
 彼女たちの思いを剣に乗せ、セララの突きがパラディーゾセララの胸へと直撃する。
 盾をすり抜けた攻撃に思わず吹き飛ばされたパラディーゾセララは靴から魔法の翼を広げてブレーキ。
「いたたっ。やるね、けどボクは絶対負けないよ!」
 いかなる窮地にあっても一切メンタルにブレが生じない、無敵の精神性。ある意味、セララ最強の武器をパラディーゾセララは獲得しているようだった。
 が、あくまでそれはこの世界に捕らわれたセララアバターのコピー。
 魔法少女フォームが解け、妖精の姿へと戻ってしまった。
「魔法が解けちゃった。どうしよっかな? 帰ろっかな? けどイデアに星剣預けたまんまだし……」
 うーんとうなるパラディーゾセララに、セララたちは再び襲いかかる。
 そう、この戦いはただパラディーゾを倒すことが目的なのではない。
 『彼ら』の決着にパラディーゾセララを介入させないこともまた、重要な意味をもつのだ。

「これ以上、姉ヶ崎さんに悲しい想いはさせない……俺が、この戦いを終わらせてみせる! 応えてくれ、星剣セラ!」
 握りしめた剣が輝きを放ち、勇者イデアは斬りかかった。
 その斬撃を鎌で受ける、『全ては、あの日から辿る縁絲』ルォーグォーシャ=ダラヴァリヲン(p3x001789)。
 ふああとあくびのモーションをすると、それに応えた飛行ドローンが出現。
 ドラゴンスキンを被りブレスのモーションと共に放ったのは催眠効果をもつ特殊弾頭であった。
 連射されたそれを、しかしイデアは球形をした光の障壁で防御する。
「そんなものは効かない! お前達の野望は、俺が打ち砕く!」
「そうだろうとも」
 ルォーグォーシャは繋がる連撃を鎌で払いながら飛び退き、フウと息をついた。
「想い。能力。それが資格だと考えてこの状況を諦観し続けてきた。だが……」
 ルォーグォーシャは親指を自らの胸におしあてた。
「『ここ』が叫ぶのだ。「それでも」と。たとえ画面越しの出来事であっても、許せないものはある。変わって欲しい未来や、叶って欲しい願いがある。
 そしてこの世界は、画面越しだけのものではない。伸ばせば届く場所にありながら、俺は……」
「何の話だ!」
 剣から光線を放つイデア。ルォーグォーシャは攻撃をうけて右腕が吹き飛ぶが、『たかがその程度』だ。
「思い出を奪われて、『勇者』なんていう操り人形にされて、それでいいのかよ。
 自分一人で全部背負った気になって、大切なモノを見失うなよ!
 『何の話だ』と言ったな。これは――」
 吼えたルォーグォーシャの姿が光に包まれる。
 飛び込んだドローンのスキンが被さったためか、それとも崩壊しつつあるエリアのバグか、ルォーグォーシャの姿は巨大な炎の竜のそれに変わった。
「『ハッピーエンドが好き』だなんて臆面も無く言い張るヤツがいるなら それだけで心が奮い立つんだ!」
 吹き付ける爆炎を剣で切り払いギリギリでしのぐイデア。
「さあ、来るぞ。『ヒーロー』が。ハッピーエンドを取り返しに!」
 叫ぶルォーグォーシャに応えるように、二人の影が同時にイデアへと襲いかかった。
 流星の如くキックを繰り出す『UNKNOWN』プロメッサ(p3x000614)。
「イデア、覚えているか?
 終末世界で生き抜こうと足掻いた事。
 戦争世界で対峙した事。
 学校の屋上で話した事。
 関係は変われど、私達は共に居た。
 最初に会った世界で、貴様は言っていたではないか。
 『皆の居場所を、守れたかな』と」
 抜刀し豪速で迫る『此の叫びは、幸福を掴み取る為に』アイ(p3x000277)。
「俺たちは、あの子の願いに応えに来たんだ。助けに来たぜ、『お兄ちゃん』!」
 二人の攻撃を光の障壁で防いだイデアは大きく飛び退き、しかし、直角にカーブしたプロメサとアイはそれを追尾するように殴りかかる。
「貴様はいま、私達の居場所を脅かさんとしている! そんなことが、貴様が本当に望むものか! 貴様が守りたかったものとは、なんだ!」
「最強の勇者になったつもりが、その『学生服(ありさま)』はなんだ! 悪魔の軍勢と戦って死んだときよりも、荒廃世界で戦って死んだ日よりも、俺たちと一緒に学校から帰って屋上で弁当食ってた時を『いちばん』だと思ってた証拠だろうが!」
 ルォーグォーシャの砲撃に助けられる形で、プロメッサとアイの攻撃はイデアへと迫った。剣の光も障壁もすりぬけ、そして。
「やめて――!」
 剣が突如として女性の姿をとり、イデアを庇った。
「――!?」
 光の粒子になって砕け、倒れる女性。
 苦しげに閉じた瞳が、慌てて駆け寄るイデアを見た。
「あなたがもっと、悪い人ならよかったのに」
 咄嗟に抱え起こし抱きしめようとしたイデアの手がすりぬけた。
 否、女性の姿が消えてしまったのだ。
「イデア!」
 プロメッサは震えるイデアを地面に押し倒して首を押さえつけ、その隣で両手で剣を握りしめたアイが刃を振り上げる。
 殺さなければならない。
 この世界を守るために、彼を。
 イデアは顔を歪め、そして何かを呟いた。
 ――剣が、イデアの胸へと突き刺さる。

「僕らにも、sinエネルギーを使わせて!」
「嫌です!」
 ここは、どこなのだろう。
 正義国、御柱の中であるような気がするし、そうでない気もする。壁や家具といったオブジェクトがおかしな速度で流れ、身体をすり抜けてはチカチカと明滅する。時折みえる白い光のような壁は、近づけば消え青く無限に続く何もない世界へ落ちていくことさえあった。
 sinいわく、ここは『破壊されたオブジェクト』の中であるという。
 そんな場所までわざわざやってきて、『真なる筈の世界』勇(p3x000687)が何を求めたのか。そして八田sinがどう答えたのかは……もう冒頭の二行で示した通りだ。
「……」
 にべもない回答に言葉の詰まる勇。
 かわりにsinが回答を続けた。
「だって、メリットが私に一つも無いですよね。アストラルレイヤーが奪われロックされたら私の存在も危ういですし、立場的にはパラディーゾたちを支援してるのに負けたら困るし、第一助けたところで私がえる得が何一つなくないですか?」
 空々しい口調でいうsinに勇は腕組みをして、毎秒形の変わる椅子やテーブルに腰掛けた。
「君は傍観者だ。ならばこそ、演目は『面白い方がいい』」
「おっと?」
 sinが続けて何かを言おうとして、ジェスチャーの手を止めた。
「私、アレかと思ってました。『超パワーを都合良く使って都合良く活躍して都合良くハッピーエンド! 都合良く私は主人公!』のやつ」
「なに……それ……」
 皮肉100%の言葉にまた言葉を詰まらせそうになった勇だが、あえて続ける。
 Hadesが語ったという『ゲームマスターだから』というスタンスに、sinはかなり近いように見えたからだ。
 sinはこの世界のNPCでありながら、この世界に流れる力そのものである。石油資源や水資源自身が特に何も考えないように、彼女にとってこの世界に損もなければ得もない。
 それでも自我を有するのは、『面白いかそうでないか』という基準で意図ある行動を示すためだ。ある日航海国の島国にエネルギー革命を起こしたように。
「正義を胸に、もう一人の自分に挑む者。
 約束を胸に、勇者へ挑むもの。
 脚本としてはありきたりかもしれないが、演者が良い。故に至高となるだろう。けれど、あと一枚足りない。
 彼らの物語がバッドエンドになるにしろ、ハッピーエンドになるにしろ。このままでは、『ただの物語』だ」
「うーん……」
 sinは考えるようなそぶりをみせ、その場でゆっくりと上下反転した。
 ピンク髪の裸体の女性、のように見える何か。
 彼女は瞬きを二度すると、『じゃあこうしましょう』と手を叩いた。
「上手に演じて見せてくださいよ。『あなたの世界』?」

 ――剣が、イデアの胸へと突き刺さる。
 『セララ』の握る『聖剣』が。
 ハッとして振り向くアイとプロメッサ。
「星の勇者、荒野の仲間、平和な学生、そして姉ヶ崎の守護者。
 どれも確かにイデアの物語。彼を殺すか世界を壊すかという結末をもつ物語。
 でもね、教えてあげる。『イデアの物語』はもうひとつだけあるんだよ」

●アストラルレイヤー
 専用パッチであるエーテルコードを適用することでのみ干渉および活動が可能になるという領域、アストラルレイヤー。
 そこは『領域』と呼ぶにはあまりにも荒唐無稽で、場所や時間といった概念がそもそも存在していなかった。
 文字通り次元の違うなにかであり、そこへアバター体として存在しているように錯覚しているにすぎない。人の脳は、そもそもアストラルレイヤーを認識できるようにできていないのだ。
 自分の身体の感覚が激しく歪みを繰り返した後、やっとまともに認識できるようになった『しろねこぎふと』ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)は、いつのまにか五階建て団地の前に立っていた。
 目の前の建物は完全に倒壊し、後ろの建物はかろうじて残っている。右側には半壊した建物がたっているが、どうも人が今も暮らしている形跡があった。
 ふと顔をあげると、へし折れた東京タワーが見える。
「ここが、アストラルレイヤー……」
 周囲には、憎しみに顔を歪めた人々が現れ、その中心には虹色髪の少女の姿があった。
 周囲からの圧力に気圧されそうになりつつも、ねこはぎゅっと拳を握りしめた。
(『想いの強さ』……皆に負けない位、強い想いを。
 皆とエイスさんやイデアさんに再会できるように、仲良く過ごせるように……!)
「マジで訳の分からねえとこに出ちまったが……要は全員ぶった切って進めばいいんだろ? 並行世界存在群だかなんだか知らねぇが……!」
 夜に溶け込むような美しい刀を抜き、飛び出す。
 集団の意識という圧力が彼女の肉体をビキビキと蝕むが、それをねこが癒やしの光を当てることで支えた。
「平行世界の僕も、エイスさん達も…皆にくきゅうぱんちでぷにぷにする!
 皆がエイスさんと正しく出会えるように、ふれ合えるように……
 僕だってエイスさん達と仲良くなりたいし猫さんとのんびりしてほしい! だから勝つんだ!」
 ねこの支援もあって、キサラギの剣は周囲の人々もろともエイスを切り裂き、風景をも切り裂いた。
 破壊された風景はすぐに別のものに切り替わり、巨大な映画セットの中にキサラギは建っていた。
 花束をもったエイスが力なく笑っている。
 彼女の向けてくる諦観の意識がキサラギの手から刀を落とさせようとするが……。
「夜明けに散るは徒桜、果ては夢か幻か──いくぞ姉ヶ崎!」
 ギラリとキサラギが笑うと、セットの背景を切り裂いて『ほんとうのキサラギ』が姿を見せた。
 どうやら長くはいられないようで、既に肉体はビキビキと崩壊を始めているが、キサラギはコレで充分とばかりに吼える。
「我が奥義、貴様を捉えたぞ!狐月三刀流奥義……湖月!」
 『ふたり』同時に放たれた斬撃が風景もろとも吹き飛ばしていく。
 が、それと同時にカメラレンズ越しに手を伸ばした姉ヶ崎-CCCがキサラギとねこの首を掴んだ。
 一瞬だ。たった一瞬で彼女たちを中心とした風景がピクセルモザイクに呑まれ、そして崩壊した。
「――『約束』も忘れねぇようにな!」
 後を託すように言ったキサラギ
「姉ヶ崎-CCC……お兄さんと一緒にいたいのに世界を壊すなんて、矛盾してるよ。だから一緒にいられないんだ」
 ねこも拒絶と優しさの意識を姉ヶ崎-CCCへと流し込みながらも消滅。
 腕にデータ破壊の痕跡を残しつつも、姉ヶ崎-CCCは振り返った。
 風景は既に広大な宇宙に変わり、彼女は星よりも大きい。
 アレクシエル(p3x004938)はそれより遥かに巨大な存在となって姉ヶ崎へと体当たりをしかけた。
 星へぶつかり、砕け、いくつもの重力崩壊が起きていく。
「『母としての想い』なら誰にも負けないわ。お母さんが遊んであげる」
 月より巨大な拳で殴りつけ、姉ヶ崎を太陽系の彼方まで吹き飛ばす。
「自分と相手以外の全てを見ていないわ、厄介ね。ああいうのなんていうんだったかしら。
 全く手に負えないわ。自分の中の理想のお兄ちゃんばかりを見て現実のお兄ちゃんに強制的に適用して。お兄ちゃんが大好きな自分が大好きなだけ。
 そんなものは『愛』ではないわ。『恋』とも違う。言うなれば『呪い』よ」
 砕けた風景の中、悪魔の軍勢と飛空戦艦がぶつかるその上空でアレクシエルはさらなる拳を姉ヶ崎にたたき込む。
「貴方には届かないかも知れないけれど、愛は勝ち取るものではなく与え合うものよ。
 貴方の愛が本物ならば、世界は貴方達を祝福する筈。
 いい加減に目を覚ましなさい!」
 さらなる拳が顔面に撃ち込まれようとした途端、姉ヶ崎は笑った。
 彼女をカラフルなノイズが包み込み、そして周囲をまとめて崩壊させていく。
「あなたに、私のことなんてわからない!」
 拒絶の意志がバキンと風景ごとアレクシエルと姉ヶ崎の間を断絶し、そして世界ごとアレクシエルを崩壊させた。
 風景はそのまま切り替わり、監視カメラだらけの街になった。
 血塗れのバットをぶら下げた、どこか『年齢相応』なコータ(p3x000845)が立っている。
「キミ達が世界に認められなかった気持ち、オレにも少しだけ、分かる気がするんだ」
 顔をあげる。遠く……ずっと遠くで爆発がおきて、きのこ型の雲があがる。
「オレも『お前はこの世界には必要ない』って棄てられた『半端者』だからさ」
 風景が流れ、街のそとの荒野を少年少女が歩いている。
 パイプライフルをさげた青年と出会い、手を繋ぐ二人の姿があった。
「でも、オレが偶々、混沌に呼ばれたみたいに。
 偶然でも、八界巡りがエイスの心を拾い上げたように。
 兄妹が何でもない日常を送る世界が生まれる奇跡も、きっと掴める筈なんだ」
 拒絶の意志をぶつけた姉ヶ崎のノイズを、コータはバットを叩きつけて破壊した。
「あと少しだけ、ほんの少しだけ、待っててくれ、エイス!」
 周囲から一斉に向けられた並行時限のエイスたちの敵意と銃口。それを一度に受けながらも、コータは踏ん張って立った。
「ユータの作ったエーテルコードが、オレ達をここまで導いてくれた。
 お前の謎を解き、正体を掴もうと、あいつも必死に戦ってくれたんだ。
 もう誰にも『無能』だなんて言わせねー。
 誰がなんと言おうと、ユータは、オレの自慢の弟だ!
 でもって、自慢の弟がいる兄(オレ)は超強いんだからな!」
 作られた偽りのホームから連れ出される、眼鏡をかけた少年がいた。
 コータのバットが公安員たちを殴り倒し、少年の手を引く。
「お前の兄ちゃんはハチャメチャに強くって、今頃あっちも大変なんだろうけど。
 それでも、諦める奴は一人も居ない。
 噴水前での約束を果たす事。
 皆と屋上で弁当を食う事。
 それが叶うまで、オレは絶対壊されねーかんなー!」
 振り払ったバットが、風景ごと世界を破壊していく。

 荒廃した世界。みんなで作った居住地で、スクラップを組み立てるイデアがいる。
 収穫した作物をバケットにいれて運ぶエイスが声をかける風景が、空にはしるヒビによって壊れかけていた。
「ダメだよ」
 空をみて固まる世界の中に、風景を割って現れる『友達』ジェック(p3x004755)。
 『思い出の欠片』を継ぎ合わせて作った翼を羽ばたかせ、ジェックは八つの色のついた光の球を翳した。
「アタシ達の約束も友達も、絶対失わせたりしない」
 同じく風景を破壊して現れた姉ヶ崎が、拒絶の意図をもって叫んだ。
「そんなの知らない。ずっとずっとこのためだけにやってきたの。私の邪魔をしないで!」
 無数の可能性をもった荒野のエイスたちがハンマーやナイフ、ピストルをもってジェックに襲いかかる。
 が、色の級を集めて作った巨大なハンマーでジェックはそれを打ち払った。
「ごめんね、痛いよね」
 目を閉じたジェック。その胸を、虹色のノイズが槍になって貫いた。
 更にいくつもの槍があちこちから現れ、ジェックを次々に貫いていく……という風景が、水晶の中で流れて、そして水晶ごと『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)の手のひらのうえで砕けて消えた。
 槍もなにもない、ゲームセンターの自動ドアの前に立っていたジェックと、タントがそこにいる。
 道路の真ん中に立っていたエイスが、カッターナイフの刃をチキチキと露出させた。
「護る、救ける、手を伸ばす。
 その歩みを、わたくしは絶対に止めさせはしない」
 タントの展開した無数の手鏡の中に、無数のジェックとタントが写りこんだ。
 そのひとつは伝承王国にできた領地で幸せにくらす貴族の二人。夜のテラスで星空を見上げ、『ここにはいないもうひとつの私達』に向けて幸せの祈りを捧げていた。
 それだけではない。無数の手鏡の中には、仲間達やこれまで出会ってきたこの世界の友達。時には敵ですらあった者たちすらも、この世界のいつかのどこかでささげたジェックたちの幸せへの祈りが光になって浮きあがっていく。
 光り輝くそれらを、タントはジェックへ向けて放った。
「想いの強さが力になるなら、ジェックちゃんのアクセスファンタズム、『心映すは空』は……最強よぉ!!」
 光がエイスを貫き、そして風景が夕暮れの学校教室へと変わる。
 『R.O.O tester?』蛍(p3x003861)が、黒板の前に立っていた。
 教室の窓際、開いた窓に足をかけるエイスがこちらを振り返る。
 拒絶の意志が蛍を振り払い、彼女の歩む足を重くした。
「私達の出会いは偽物。本当は、トモダチでもナカマでもなかったはずだよ」
「たとえバーチャルの世界での思い出であっても。
 たとえ他所から挿入された付き合いであっても。
 たとえ目指すところが異なる者同士であっても」
 蛍は強く踏み出し、そして手を伸ばした。
「今この胸にある思いは
 エイスさんへの友情は
 エイスさんとの日々は
 絶対作り物のニセモノなんかじゃない。
 ボク達が覚えている限り
 エイスさんが存在し続けてくれている限り
 誰にも壊せない真実(リアル)なのよ!」
 遥か数百メートルにも思えた距離が一瞬で縮まり、エイスの腕を掴んだ。
 瞬間、蛍とエイスは高い塔の側面に現れていた。
 伸ばされた『R.O.O tester?』珠緒(p3x004426)の腕が彼女たちを掴み、そして塔の中へとまとめて転がり込む。
 瞬間、塔がその風景ごと巨大な波にさらわれた。
 気付けば砂の塔が海のさざなみによって崩れ、珠緒たちが砂浜を転がる。
 見上げれば、長い足跡を刻んだ姉ヶ崎が二本指をピッと払っていた。
 虹色のノイズが剣のように伸び、風景そのものを破壊していく。
「珠緒さんっ」
「ご安心を。『御柱』とは、倒れぬものなれば」
 突きつけた珠緒の剣に、並行世界にある歴代桜咲たちの想いが重なった。
 その中には、リセット現象によって作られた偽りの桜咲の想いもあった。
 この平和が偽物だったとしても、人々の笑顔と思い出は本物だと。だから――。
「さぁ「「お迎えの」「「奪還の」「「反撃の」時間です」」」」
 珠緒と姉ヶ崎の剣が真正面からぶつかり、そしてつばぜり合いを起こした。
 バキバキと珠緒の世界観を破壊する一方で、珠緒もまた姉ヶ崎の世界観を破壊していく。
 蛍はそれに合わせて走り出した。
「エイスさん、もう一度一緒にあの屋上に帰りましょ。
 エイスさんがいてイデアくんがいて皆がいて、笑い合ってお弁当を食べた、あの高校の屋上に――。
 全てをホンモノにするために!」
「珠緒と、蛍さんと、友らの世界のために。ワールドオーダー、執行いたします」

 いくつもの世界が壊れ、そしていくつもの世界が歪んだ。
 悲しみに伏したエイスや、世界の滅亡に取り残されたエイス。兄を失ったエイスや、悪魔の軍勢に攫われたエイス。その全てを破壊し、取り返し、そして塗り替えていく。
 最後に、姉ヶ崎-CCCは学校の屋上に立っていた。
「姉ヶ崎――!」
 八つの鏡から、いつかあの世界で作ったアバターの蛍が、珠緒が、ジェックが、洸汰が、そしてリュグナーやマカライトや零やランドウェラが一斉に現れ、そして全ての想いをたった一つの銃弾に変えた。
 銃弾に胸を打ち抜かれ、よろめく姉ヶ崎。
 ぱきぱきと風景が崩れ、なんでもないなにかになっていく。
「お兄ちゃん、私、いつまで……」
 姉ヶ崎はつぶやき、そして世界から消えた。

●きっといつかの後日談
 航海王国ガリウム島にて暗黒大連合の艦隊は撤退。
 更に伝承王国メーヴィン領を襲撃していたアンロットセブンは壊滅し、ザムエルも死亡したという。
 正義国邪摩都でもまた勝敗が決し、パラディーゾセララおよびランドウェラオルタたちによる『魔の軍勢』は撤退した。
 そして――塔の最上階で、イデアとエイスが目を覚ました。
「……俺は、どうして……?」
 頭を抑えて、しかし記憶が混濁していることに苦しむイデア。
 その隣で目を開けたエイスの手を、ジェックたちがそっと掴んだ。
「おはよう。ねぇ、アタシ達と──友達になってくれる?」
 彼女たちの顔に、もうモザイクなんてなかった。

成否

成功

MVP

花糸撫子(p3x000645)
霞草

状態異常

Siki(p3x000229)[死亡]
また、いつか
アイ(p3x000277)[死亡]
屋上の約束
ニアサー(p3x000323)[死亡]
Dirty Angel
花糸撫子(p3x000645)[死亡]
霞草
勇(p3x000687)[死亡×10]
あなただけの世界
コータ(p3x000845)[死亡]
屋上の約束
トリス・ラクトアイス(p3x000883)[死亡]
オン・ステージ
Teth=Steiner(p3x002831)[死亡]
Lightning-Magus
ロク(p3x005176)[死亡]
サイバークソ犬
グレイガーデン(p3x005196)[死亡]
灰色模様
タント(p3x006204)[死亡]
きらめくおねえさん
アカネ(p3x007217)[死亡]
エンバーミング・ドール
ジリオライト・メーベルナッハ(p3x008256)[死亡]
D.S.G.P.
フー・タオ(p3x008299)[死亡]
秘すれば花なり
Λ(p3x008609)[死亡]
希望の穿光
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)[死亡]
しろねこぎふと
キサラギ(p3x009715)[死亡]
呉越同舟
天狐(p3x009798)[死亡]
うどんの神

あとがき

 ――アストラルレイヤー奪還作戦は成功しました。
 アストラルレイヤーは管理者の手に戻り、もう改ざんが起きないよう固くロックされました。
 ポートやゲートは閉じられ、再び開かれる予定はありません。

 ――NPC『イデア』とNPC『エイス』がこの世界に新規生成されました。
 彼女たちは八界巡りの記憶をおぼろげに有していますが、特別な力は持っていません。

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