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シナリオ詳細

<鳳圏戦忌憚>破滅を避ける二つ以上の冴えたやり方

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●征史郎という男
「オラオラオラオラ――ビビってると、死ぬぜェ!?」
 かけた言葉は、敵に対してだ。
 犬歯をむき出しにした、野獣めいた獰猛な笑顔で飛びかかり、暴風のごとき薙刀のひとなぎで敵兵の胴体をまとめて切断していく。
「おいコラ木偶ゥ、立ち止まってんじゃねえよクソ萎えるだろうが! アァ!?」
 咄嗟に飛び退いた敵兵は、その臆病さゆえに命拾いしたと言える。震える脚で這うように後じさりする敵兵に、薙刀の男は――橘 征史郎鳳圏陸軍中佐は、腰からぶら下げた誰かの頭蓋骨をガツンと殴って音を鳴らした。
「かかってこいよ。お前のだーい好きなお仲間が土に還りかけてんぜ? 憎いだろ? おら、まだ憎めねえか? その剣もって目ぇかっぴらいて好き勝手叫びながら突っ込んでこいよオラ!」
 踏み込み、そして蹴りつける。あまりにも力強いキックに、敵兵は悲鳴を上げながら吹き飛び、それこそサッカーボールのようにバウンドして転がっていく。
 起き上がり、そして逃げ出す敵兵。
「ンだよ……つまんねえなあ……」
 口ぶりを裏切るように、前歯をむいた顎をがぱりと開きゆっくりと息を吐く。熱い蒸気が吹き出し、大きく見開いた両目はゆっくりと正常なまぶたへと落ち着いていく。
「鬼楽軍の野郎、ここへきて牽制しかして来やがらねえ……俺の出番がねえじゃねえかよ……」
 一度敵兵の落とした刀を拾いあげてしげしげと眺めてから、すぐにため息をついて地面に放り捨てた。
 鳳圏きっての狂犬にして野獣。イクサバを呼吸することこそを好み、敵兵から狙われるギリギリのスリルこそをむさぼるバーサーカー。
 それが橘 征史郎。
 彼を、なんでも、今から――。

「口説き落として貰いたい」
 優しく特徴的な低い声で、榛名 慶一大佐は言った。
 鳳圏中央司令局作戦事務室。実質的に榛名大佐の個室として使われるその部屋で、並んだパイプ椅子は三つ。プラスチック製のブラインドシャッター越しに入る陽光を見つめていた榛名大佐はゆっくりと振り返り。次にこう加える。
「君たち三人で」
 ステゴロの軍狼、日車・迅(p3p007500)。
 黒縁眼鏡の女兵士、茅野・華綾(p3p007676)。
 元退役軍人の抜刀術使い、時任 零時(p3p007579)。
 三人は揃って自分の顎を指さして、次に並んだ仲間の顔を見て、最後に大佐の顔を見た。
「「ええええええええええええええええええええええええええ!?」」

●味方を増やせ。来るべき時までに。
 さて事の始まりはどこだったろうか。迅、華綾、零時といった鳳圏軍人が立て続けに召喚をうけ、ローレット・イレギュラーズとなってからだろうか。
 周辺部族との絶え間ない戦争故に国内へ物理的に戻ることがかなわなかった彼らが『ローレットへの依頼』という形で集められ、そして鬼楽との戦争へと投入された。
 だがそれは依頼人である榛名大佐が用意した『表向きの理由』に過ぎなかったのだ。
『我が鳳圏は、魔種に反転した鳳王のもたらす意図的な奇跡によって国内の平和を維持している。何を持ってしても、この風景は守らねばならない』
 人払いの済んだ部屋の中、そう打ち明けた榛名大佐に迅たちはただ息を呑むことしかできなかった。
 鳳王の望みは戦争と併呑。平和な国内の風景もいずれはすべて戦火に呑まれ、笑う子供達もアンデッド兵器となって敵陣に突貫する未来にあるという。
「もう一度言おう――。
 我々は鳳圏をこの姿のまま維持し、そして鳳王を倒さねばならない」
 そのために。
「より多くの味方が、我々には必要なのだ。鳳王と戦うその時に、味方につく軍閥が多ければ多いほど……」

 からの、橘 征史郎である。
「橘中佐は新参者でありながら多くの戦果をあげ、銀翼突撃勲章を獲得したエース中のエースだ。
 実力主義を採用する我が鳳圏でも出世著しく、『橘派閥』という軍閥ができはじめるほどだ。
 だがその一方、橘中佐は鳳圏への忠誠心が薄くプロパガンダへの染まりにくい。彼の影響かにある派閥も同様だろう。
 つまり、現状鳳圏国内では彼とその派閥を取り込むことが最善手となる」
 橘とその部隊は鬼楽への攻撃部隊に割り振られており、今は国内に戻り補給を受けているところだ。
 彼に接触し友好を深め、戦場へ共に出ることで橘中佐の信頼を勝ち取れ。
「君たち全員が揃ってことにあたる必要はない。国内に潜伏する反鳳王派を見つけ出し味方に付けるというタスクも、必要ではあるからね」

●般若の隊列
 鬼楽との戦いが激化する前線。テントや車両を集めて作られた前線キャンプでは、固くなった鬼楽兵力の突破について議論されていた。
 なぜならば、鬼楽の運用する般若面の巨漢、通称『般若兵』たちの対策に手を焼いていたからである。
 リトル・リリー(p3p000955)とハロー・ハロウ(p3p008053)もそのうちの一人だ。
「あやしいところがあったのは、確かだけど……まさか敵にも、なんてね」
 『般若兵』が合成アンデッドによって作られたアンデッド兵器であることは、もはや前線のみなが知っていた。
 はじめは『鳳圏がアンデッド兵器を使う怪しい奴らだ』という噂を聞きつけて集まったリリーたちだが、蓋を開けると敵国であるはずの鬼楽も同様の兵器を扱っているという。
「こんなことってあると思う? 潜入調査のつもりで鳳圏に潜り込んだのに、ちょっと混乱してきたよ」
 にんじん型の剣で肩をとんとんと叩くハロー。
 考えられるのは鳳圏と鬼楽の間で何らかの技術供与(もとい流出)が起きたという線だが、今回の場合はアンデッド兵器というかなり運用がデリケートな兵器だ。
 鬼楽と鳳圏両方にこれに適した使い手がいると考えるのが妥当だろう。
「こういうときって、どうするのがいいんだっけ?」
「たおす」
 ひらがな3文字で答えてきたリリー。
 ハローもたしかにーと言って手を叩いた。
 黒幕があったのだとしても、現状『鬼楽へ入れまい』としているのは確実。ならば般若兵たちを打ち倒し、鬼楽への侵入を確たるものにしてしまえば事態は確実に動くのだ。
「ボクたちの役割はシンプルだね。強い敵を倒して鬼楽への突入ルートを確保する。それだけ!」






●蒼き女王と永眠の呪い
 場所は鬼楽。囲炉裏をかこむ座布団。
 木造の和風家屋といったおもむきのその場所で、『剣』小刀祢 剣士郎という男がローレット・イレギュラーズを集めていた。
「鳳圏と戦ってる最中に呼びつけちゃって悪いね。今回はちょっと、マズイ事態がおきたもんで……力を貸して欲しいんだ」
 頭をかりかりとやる小刀祢。
 現在、鬼楽は隣国鳳圏との戦争中。互いの部隊が互いの喉元に剣を突きつけている状態にあり、どちらが先に本土決戦に持ち込むかという瀬戸際にあった。
 鳳圏の軍神として知られる不動 界善の攻略に心を裂くべきところだが……。
「先日未明、女王様が眠りの呪いにやられちまった。
 俺たちがついていながら情けない話なんだが……いつの時点でどうやって呪いをかけられたのか、全く分からないんだ」
 分かっているのはそれが永遠に対象を眠らせる魔法であるということ。それを解くには魔術媒体にしている物品を破壊するしかないということ。そして……。
「術の方式からしても、タイミングからしても、術をかけた犯人はこの鬼楽国内にいる。それだけは、確実だ」
 小刀祢の目つきが鋭くなった。
「敵がこの国内に、国民のツラして潜伏している可能性がある。こういうのって……こういうのってさあ……」
 今にもひとを殺しそうな目で、小刀祢はつぶやく。
「マジ、許せないよねえ」

 鬼楽国内に潜伏するであろう『犯人』を探す任務は、丁度話し合いの場にいたという理由で伊達 千尋(p3p007569)にふられることになった。
「なにもお前一人でやるこたあねえ。俺んとこの連中は全員前線行きだが、小刀祢や真経津んとこの連中の協力が必要なら連れて行け。ローレットから仲間を連れてきてもいいぜ」
 同じ場所。あとからやってきた『勾玉』玉響 尊が扇子を広げて言った。
 集まった顔ぶれの中には溝隠 瑠璃(p3p009137)、小刀祢・剣斗(p3p007699)、そしてセレマ オード クロウリー(p3p007790)の姿がある。
「おお、そうだ」
 玉響はぽんと手を叩き、瑠璃へと視線をやった。
「おい瑠璃。犯人捜しに協力しろ。うまいこと見つけ出したら嫁入りの話を半分くらいはチャラにしてやってもいいぜ」
「協力しても半分なの……」
 うええ、という顔をする瑠璃。だがこのまま放っておけばいろんな道が塞がれそう。拒否権はなさそうだ。
 続いて剣斗へ視線をやると、玉響は頷いた。
「剣斗。お前の動きはお前に任せる。剣士郎との間柄もあるだろうからな。前線に出て不動対策に動いても、こっちで犯人探しをしてもいいぜ。
 でもって……」
 続いて視線を向けた美少年。もといセレマ。
「お前はもう自由にしていい。どこに居ても『自分を役立てる』方法をわかってそうだからな。ただ俺としちゃあ不動対策に動いて欲しいところだ。お前の不死性単体じゃあ勝ち目は薄いだろうが、それを『勝ち目』に変える方法は分かってるんだろう?」
「まあ、ね……」
 セレマはそれまで黙って話を聞いていたが、はじめてぽつりと声をだした。
 戦神不動。彼が鳳圏へいたる戦線最後の砦にして最強の兵だ。
 戦った者からの報告によれば、不動は既に魔種化しており、その上で鳳王への忠誠で戦っているという。籠絡できるような人間でもないし、倒して突き進む他に手はない。
 魔種という強大な敵をいかに攻略するかが、この戦いの鍵になっていた。
「オッケー、じゃあ俺は鬼楽で友達作って犯人捜しってカンジで」
 ビッと親指を立てて見せる千尋。
 そう言いながら、しかし千尋とセレマの頭の中にはすでに絵図が描かれていた。
 鳳圏と鬼楽で共通のアンデッド兵器が運用されていることは既に分かっている。
 内通者がいること。そして高位の専門家が必要なこと。それらを総合すれば『宝鏡』真経津 鈿女が管理する政務部門が今回の呪術に関わっているだろうと想像がつく。
 問題は『宝鏡』の影響力が鬼楽のどこまで浸透しているかだ。
 『勾玉』玉響はその性格からアンデッド兵の運用など許すとは思えない。身内を信じ切っているためローレット側から通告しても『鬼楽の家族がそんなことをするはずない』と信じてくれないだろう。
 逆に言えば、そう信じさせつつ堂々と運用できるほど軍部に『宝鏡』の力が及んでいるということ。そして『剣』のセキュリティを突破ないしは貫通できるほどに影響が進んでいるということ。
 下手をすれば『宝鏡』によって鬼楽が支配されかねないこの状況。
 回避できるのは――部外者であるセレマや千尋たち。あるいは一度部外者となった剣斗たちだけなのだ。
「今のうちに、トモダチ沢山増やしとかねえと……」
 未来は、彼らの手にかかっている。







「弱いなぁ、エータツくん……」
 血塗れで地に伏した加賀・栄龍(p3p007422)の前にかがみ込み、久慈峰 弥彦鳳圏陸軍中将は両手で顎肘をついていた。
「ただ挑むだけで、ボクに勝てると思うたん? 少なくとも善戦はできると? 背負うものをちゃんと見ないうちに。
 あかんでェ、そないな覚悟で挑まれると、つい――」
「中将ゥ」
 身を乗り出そうとした弥彦中将の首筋に小刀がスッと添えられた。無論抜き身の。
 久慈峰 はづみ鳳圏陸軍少佐である。
 はづみ少佐は耳元へ囁くように、しかし冷淡な口調で語り始めた。
「今は伎庸の民が起こしかけている暴動の鎮圧に向かうべきではありませんか? 事務仕事を今井に押しつけたぶん、現場仕事はこなす約束でしたよね?」
「えぇ……だってあれ楽しく成さそうやもん……」
 両手をあげた降参姿勢をとりつつも顔をしかめる弥彦中将。
 が、ふと目の前に伏している(というより気絶しかけている)男に目をとめた。
「そやエータツくん。ボクに負けたんやし、ボクのお願い聞いてくれてもええよね?」
「中将……?」
 二人の間で交わされた約束。それは弥彦を倒すことができたらなんでも、倒せずとも楽しませることができれば一つだけお願いを聞いてくれるというものだった。栄龍が負けた場合の約束はそもそもしていなかったが……。
 顔を上げた栄龍に、弥彦中将はひとなつっこい笑みを浮かべた。
「伎庸のひとたちが鳳圏の避難民を吊し上げようとしてるから、やめさせて。永続的に。これ、命令」
「え……」

 前回の襲撃で鳳圏占領地から兵を撤退させ、伎庸の手に取り戻すことに成功したローレット。
 多くの兵とその家族は撤退したものの、一部の鳳圏民は取り残されていた。それも、兵の家族たちが。
 土地を侵されただけでなく多くが殺され、しかもアンデッド兵器に転用までされたと知れば伎庸の民の怒りは収まらないだろう。そして怒りは必然。すぐ近くにいる力ない鳳圏民へと向けられる筈だ。
 いや、既に向けられ始めている。
「及川サマからとめることはできないんデスカ?」
 前回交渉にあたっていたわんこ(p3p008288)が伎庸の『族長』及川 忠臣に鎮圧をもちかけてはみたが、及川は力なく首を横にふるのみだった。
「前回お話しした通りですな。彼らの怒りやその動きは理解できる。いや、ワシですら同じ気持ちになりかけてすらいるのです。
 やはり、加賀殿と伊佐波殿の力を借りるほかないでしょう。彼らが彼らの言葉で民に語ったならば、きっと伎庸の民は耳を貸すでしょう。
 怒りを収めることは難しいが、その矛先を戦うべき敵に向けることはできる」
「それより」
 微睡 雷華(p3p009303)が族長の家へとやってくる。雪降る中世のイングランドを思わせる煉瓦造りの家屋。暖炉のそばに立ち、刀の柄にそっと手をかけた。
「族長の暗殺計画が実行に移される、という情報を掴んだのだけど」

●黄泉軍計画
 伎庸から東にしばらく行った先。元々伎庸との前線基地となっていた場所に、『黄泉軍計画 技術顧問』無黒木 楓率いる鳳圏軍が撤退し戦力を整えているという情報が入った。
「追撃すべき……なのだろうな」
 ここで打って出れば、鳳圏本国への本格的な攻撃になる。
 『黄泉軍計画』など知らず平和に暮らしているだけの民に戦火が及ぶ危険が、ここからは生じることになる。
 それに……。
「ここまでは伎庸の兵が協力してくれていたが、彼らはただ『自国を取り戻した』だけ……鳳圏へ直接攻撃する意志はない。戦力としては期待できないだろう」
「けど、ボクたちだけじゃ不安デス」
 リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)が腕の武装をがちゃがちゃといじりながらつぶやいた。
「ボクの地元の友達に声をかけてますけど……それでも足りるとは思えないデスネ」
「…………」
 無黒木の部隊が本格的に反撃してきたら、今の戦力だけでは敗北してしまうかもしれない。できるだけ多くの味方を増やし、できるだけ戦意の高い味方をつけなければならない。
 そのためには……きっと……。

GMコメント

※このシナリオは情報量がとても多いため、特設ページを用意しました。この先のシリーズでも役に立つので是非ご活用ください。
 https://rev1.reversion.jp/page/houken

 このシナリオには三つのパートが存在します。
 自分のパートを選択し、参加してください。
(前回のパートと異なるパートを選択しても、不自然が生じていなければOKです。
 場合によってはそうすることで解決する問題があるかもしれません!)

 今回は各パートごとにやることが複数あります。
 全部ひとりでやろうとしたらほぼ確実にプレイングがパンクして行動力が希釈されてしまうので、参加者どうしで手分けしたり部分的に協力するなどして連携をとりましょう。
 知識の差もうめることができるので、相談がとても活きる場面です。

●パートタグ
 【鳳圏】【鬼楽】【伎庸】の三つのうちかタグを一つだけ選択し、プレイング冒頭に記載してください。
 以下は各パートの説明になります
================================
【鳳圏】
 このパートでは2~3つのミッションがあります。
・橘 征史郎中佐とその派閥を味方に付ける
 補給に戻ってきている橘中佐と接触し、仲良くなりましょう。その後戦場で共闘し信頼を獲得してください。
 彼に『つまらないやつ』と思われたら味方にし損ねてしまうので、興味を引くように接する工夫をしてみましょう。
 プレイングは『本国での接触だけ』や『戦場での共闘だけ』のスタイルでもOKです。どちらもある程度は活動したものとして判定します。

・鬼楽防衛ラインの突破
 大量に投入された強力な『般若兵』を倒し突破しなければなりません。
 般若兵は巨大な人型アンデッド兵器です。とてもタフでとてもパワフル。簡単に倒せない上に自己修復能力をもつため、じわじわ戦うだけではラチがあきません。

・鳳圏国内で味方にできそうな相手を見つける
 三つ目の選択肢です。味方は多ければ多いほどいいのでこれが存在していますが、ただ歩き回って『一緒に鳳王倒してくれるひとー!』と呼びかけたら秒で捕まるだけなので、特にコレという手がない場合は選ぶ必要のない選択肢であります。

※注意
 このパートを選択した場合、以降の<鳳圏戦忌憚>シナリオで【鳳圏】サイドからの信頼を得ることが出来ます。
 同時に【鬼楽】パートでの活動がしにくくなります。
================================
【鬼楽】
 このパートでは2~3つのミッションがあります。

・犯人捜し
 女王が永眠の呪いにかけられてしまいました。
 この犯人を見つけ出し、皆の前で突きつけるのがミッション……ですが、実はメタ視点でもう犯人(https://rev1.reversion.jp/illust/illust/45051)が分かっています。最初からだいぶ怪しかったのでローレットはうすうす気付いていたというテイでもOKです。
 ですのでこのパートは犯人を捜し回るのではなく、『宝鏡』こと『魔鏡の魔女』が犯人である証拠を集め、御三家のうち二つ『勾玉』と『剣』の長たちにその事実を受け入れさせるパートになります。
 いっそ『宝鏡』を物理的に追い詰めて正体を露わにさせてしまうという手もなくはないですが、方針をある程度統一させておいたほうが成功率があがるでしょう。
 鬼楽国内は『宝鏡』によって実質的に支配されかけているため、下手に動くと『宝鏡』によって潰される危険もはらんでいます。
 PC一人一人が自由に動いても事態は進展しますが、おそらくは協力し連携して動くことが解決の鍵になるでしょう。
(そのために最短距離で必要なピースは前回中何人かへ配り終えています。が、そのピースの存在や活用法に気付くことができなくても、この事態を解決することは可能です。あくまで最悪の事態への救済措置が付与されていると考えてください)

※補足
 あなたは『証拠を見つけ納得させる』というこのミッションを本シナリオ中に完遂しなければなりません。
 なぜなら、あなたが容易に違和感に気づけるほど明確に事態を動かした以上『魔鏡の魔女』は鬼楽全体が気づいた頃にはもはや何をしても手遅れになる程度にはチェックメイトまで手を進めていることを指すからです。鬼楽最古参の宝鏡が今までその正体を隠し続け一気に事態を動かしたのはそういう意味を持ちます。
 もし今回の間で事態を解決できなかった場合、何かしら取り返しのつかない事態へと転げ落ちることでしょう。
 NPCたちも、あるいは部外のNPCたちも、これを止めるだけの手段と理由を持ちません。
 ショーストッパーになれるのは、あなたしかいません。

・戦神不動の突破
 魔種である『戦神』不動 界善を倒し、鳳圏国内への突入路を開く必要があります。
 相手は魔種化しており、非常に強力な敵であることは確実です。もちろん鳳圏兵も思い切り出てくるでしょう。
 ただ、この戦場にアンデッド兵は出てこないようです。なぜでしょう? もしかしたらそのヒミツが突破口になるかも。

※注意
 このパートを選択した場合、以降の<鳳圏戦忌憚>シナリオで【鬼楽】サイドからの信頼を得ることが出来ます。
 同時に【鳳圏】パートでの活動がしにくくなります。

================================
【伎庸】
 このパートでは2~3つのミッションがあります。

・伎庸国民のヘイトを鳳圏避難民からさける
 怒りの爆発しかけている伎庸民へ演説等を行い、土地に取り残された鳳圏避難民への手出しを避けましょう。

・無黒木部隊への追撃
 鳳圏前線基地へ襲撃をかけ、無黒木部隊へ攻撃します。
 ただし今のままでは戦力が足りません。何らかの方法で戦力を拡張する必要があるでしょう。
 伎庸兵は伎庸を取り返したことで満足し、これ以上の攻撃には消極的です。
 久慈峰 弥彦中将とその部下たちは『楽しめなさそう』という理由で参加に消極的です。彼らだけでも引き入れることができればかなり戦力はアップしそうですが……。

・暗殺計画の阻止(族長の護衛)
 族長及川への暗殺計画が実行に移されます。
 アサシンはすでに伎庸内に入り込んでおり、『これまでの鳳圏シナリオに何らかの役割をもって登場しています』。
 これが誰だか分からなくても、ずっと及川のそばについて攻撃を待っていれば迎え撃つことは不可能ではないので、推理に成功しなくても達成可能です。いわゆるボーナス要素です。

※注意
 このパートを選択した場合、以降の<鳳圏戦忌憚>シナリオで【鬼楽】サイドからの信頼を得ることが出来ます。
 同時に【鳳圏】パートでの活動がしにくくなります。

================================
【その他】
 こっそりはえた第四のパートです。誰も選ばなければこのまま消滅します。
 本当に『その他』の選択肢をどうしても選びたかった場合これを選択してください。
 選んだ結果おこした行動には成功の保証は一切できませんので、自己責任で挑戦してください。

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●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <鳳圏戦忌憚>破滅を避ける二つ以上の冴えたやり方完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別長編
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月02日 22時05分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
河鳲 響子(p3p006543)
天を駆ける狗
加賀・栄龍(p3p007422)
鳳の英雄
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
時任 零時(p3p007579)
老兵は死せず
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
鮫島 寿彰(p3p007662)
八紘一宇
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華
小刀祢・剣斗(p3p007699)
新時代の鬼
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
ハロー・ハロウ(p3p008053)
Hello
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
イスナーン(p3p008498)
不可視の
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
鏡(p3p008705)
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
オライオン(p3p009186)
最果にて、報われたのだ
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ

●心に値段を付けるなら
 土と草と、蝉。その日は風がなく、空の雲もどこかどんよりと重たい色をしている。
 伎庸旧占領地。もとは伎庸軍が駐留していた前線基地にあった広大なヤードに、大勢の人々が集まっている。
 集まっていると言っても、中央にひかれたやや広い通路を挟んできっぱりと左右に分かれ、互いに敵意のこもった目でにらみ合っている。
 鳳圏兵士に肉親を殺された者たち。
 伎庸兵士に肉親を殺された者たち。
 彼らは部族というくくりによって双方を排他し、心の中で相手を人間と思わないように接していた。
 そんな人々が共存するなど、まず不可能だ。
「この状態を、仲良くさせるって……?」
 『人生葉っぱ隊』加賀・栄龍(p3p007422)は両手で顔を覆った。
 鋼鉄製の簡単な演説台がある、そのやや後ろ。幕で覆われたテントの中でのことである。
 彼の後ろには久慈峰弥彦中将、及び及川忠臣族長がそれぞれ立っている。弥彦はニヤニヤとした顔で、忠臣は苦々しい顔だ。
 加賀の案内でこの地へやってきた『元神父』オライオン(p3p009186)は、かぶっていたフードを脱ぎ、コートをハンガーへとかけて弥彦中将たちへと振り返る。
「やはり、あなたたちから演説することはできないか」
「えー、だって僕、口滑っちゃうもん。『死んだのは弱いからだ』『今から殺し合って勝った奴だけ生きたらええ』って、言ってもええの?」
 その言葉に一層苦い顔をした忠臣族長。
「私は、ローレットの皆さんの考えは尊重します。けれど、心から説得することは難しい……私も、同胞を殺された身なのです」
 伎庸を助けたいが鳳圏の市民も助けたい。どちらにも優しくして欲しい。この願い自体は立派だが、それを納得させたいなら自分たちでするしかないのだ。
「まあ、それはそうか……」
 『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)が長い前髪をいじった。
「彼らの怒りは正しい。『無辜の人々へ向けるのは間違っている』とは思うが、その正否善悪の価値観を持っているのは自分(ローレット)たちだけだ」
 『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)が祈りの姿勢をとって頷いた。
「そうだね。価値観のペンキを持ってるのは私達だけ。それをもって塗り替えることができるのも、私達だけだ。成功して喜ぶのも、失敗して悲しむのも、極論私達だけになってしまうんだから……」
 民たちの命は、未来は、自分たちの肩にのしかかってしまった。
 そしてそれを捨てないと決めたのだから、背負って進むしかない。
 いや、そうすると決めたのだ。
「行こう、ステージが待ってる」
 ンクルスはドローンを飛ばすと、演説台の周りに注目を高めるホログラムを展開し始めた。

 鋼鉄の階段を、一歩ずつ上る。
 高さにしてせいぜい1m半といったところだが、それでもひどく高い崖のように、栄龍には見えた。
 彼が台に立つと、ざわめきがあがる。伎庸側からは困惑、鳳圏側からも困惑。『加賀さんだ』という声もちらほらあったが、ざわめきの多くは何故彼が、鳳圏兵士である彼がここに立ったのかという不安によるものだった。
「本日は、お日柄もよく……」
 やや裏返った声で言ってから、慌てて咳払いをする。
「ええと、みんな今争っても、被害が増えるだけだ。
 暴動なんていう真似はやめてだな、今こそ一致団結して、平和の、ために……」
 最初に考えて紙に書いておいた言葉をたどるように口にする。
 変な気分だ。ふわふわとして、頭がぼうっとする。自分の口を使って他人が喋っているみたいだ。
 一致団結? 平和? 祖国のために銃剣構えて突撃するのが正義で、敵国賊兵を討ち滅ぼすことが平和で、そのための団結では? そう教えられ、そう信じたから戦ったのでは?
 いや、分かってる。召喚されローレットで暮らす中で、わかり合うことの素晴らしさや、愛や、本当の意味での平和を栄龍は知った。
 栄龍はうつむき、小声で吐き捨てるように言った。
「ダメな奴だ、俺は」
 用意された言葉。命令された演説。そんなのは、昔の自分のやることだ。
 今の自分は誰だ。どうしてここに来た。どうしてこんな願いをした。
 祖国を裏切るようなことをしてまで。
 なぜ。
「――ッ!」

 ガンッ、という激しい音に伎庸側も鳳圏側も、どちらの民も動揺した。
 いや……音にではなく、その場に崩れ落ちるように膝を突き、手をつき、額を鋼鉄の演説台に叩きつけた栄龍の姿に動揺したのだ。
「俺は! 初めて! 命令に背いた!
 俺の国の平和を掴みたい……掴まなきゃいけないって思ったんだ。
 戦わなきゃダメだ、意味が無いって。
 皆もそうだろう?」
 あげた栄龍の額には血がにじみ、そして鼻筋を通って流れおちる。
「だから怒ってるんだ。当然だよな……」
 しん……と場が静まりかえった。動揺のざわめきも、困惑のざわめきも、まして怒りの声もない。
 不器用に血を流す栄龍の、等身大の姿に、自分を重ねてしまったからだ。
 そんな栄龍の横に、オライオンが立った。
 まるで宣教師のように堂々と、背筋を伸ばして。
「憎しみと怨みはそう簡単に消えない。
 幾度の無念、怒り、憎悪を見てきた事か。それは貴方達も同じだろう。
 奪われ、蹂躙され、理不尽に踏み潰された。互いを言葉一つで赦せとも言える筈が無い」
 掲げるように突き出した手を、自らの胸に当てるオライオン。
「だが、だがそれでも俺達はここに……間に立たねばならん。どうしてか、これ以上諍いが続けば更に悲しみを背負う者も増えるからだ。
 殴れば気持ちも幾許か晴れよう。罵倒すれば喪った事の悔しさも薄くなろう。
 だが今だけなのだ。それが続けば大きくなる憎悪の波は戻らなくなる。だから俺達はここに立ち防波堤となるのだ」
 スッと手をかざし、栄龍を挟んで反対側に立つグリムをさししめす。
 バトンを受け取ったように、グリムは深く息を吸った。
「まずは祈りを、冥福を、死した彼らに安らかな眠りと救いが有らんことを。
 その上で墓守として自分は貴方達に語る。
 俺はグリムだ。墓守をしている。
 きっと自分は貴方達の怒りを本当の意味で理解出来ていないだろう」
 そう述べてから、グリムは皆の顔を見た。
 不安そうに、しかしじっとこちらを見つめている。
「だが、その怒りを向けるべきは無辜の民ではない筈だ。
 そんなことをして死者は喜ばない……などと言うつもりはない。
 死者の為にも怒りを収めるべきだ……などとも言わない。
 死者と生者は切り離された者であり、死者の為に生者が心を動かすことは正しきことであると、自分は思う」
 グリムの言葉に、人々がまばらに、しかし深く頷くのが見えた。
 そこでグリムはぐっと拳を握り、自らの胸を叩いた。
「死者を穢した不正義は彼らではなく、これを行った者は他にある。
 墓守として告げる、怒りを向けるはその者であると!
 そして自分達はその者を止める為に動く!
 確証は出来ない、確約は出来ない、だがこれだけは伝えよう
 汝らの死を冒涜したモノは自分達がきっと討ち取るだろう!」
 そこで、ンクルスが大音量で音楽を流し始めた。
 伎庸のものでも、鳳圏のものでもないどこか遠い国の軍歌だ。
 そして台に立てた旗に栄龍の顔を大きく写すと、未だ手を突いている彼の襟首をひっぱって起こした。
「立ちなよ。私達の大将がいつまでも土下座なんかしてたら締まらない」
 小柄な体からは想像もつかないような怪力で引っ張り上げられた栄龍は、慌てて立ち上がった。
「いや、俺はそんなんじゃ……」
「いいから。今だよ」
 前を向いてと囁くンクルス。
 栄龍がそれに応えて前を向けば、誰もが栄龍の顔を見つめていた。
 彼に、いや彼とその仲間達に希望を見いだした目だった。
「許して欲しいなんて言わねえ。
 後から俺がいくらでも代わりにサンドバッグになる、どんな話も聞く!
 まだ影も形も掴めてねえが、戦い抜いて、こんな戦にした野郎を倒してみせるから!
 だから頼――」
 と言ったところで、後方からのドロップキックが栄龍に直撃した。
 ゴハァと血を吐いて台から転げ落ちる栄龍。
 蹴り落とした弥彦中将は片手で器用に着地しくるんと身を回して屈む姿勢になると、台から栄龍を見下ろす。
「ええやん、エータツくん。サービスしたる」
 弥彦中将は立ち上がり、頭の上でぱんぱんと手を叩く。さっぱりとした笑顔で。
「注目ぅー。ここで重大発表や。実はな、伎庸の子も鳳圏の子も、みぃんなアンデッドにして兵器化されとるで。その首謀者は無黒木ちゅう技術将校や。でもってその後ろにいるのが……」
 ンクルスは言われたとおりにホログラム装置を動かし、無黒木 楓技術将校と――『鳳王』こと普天斑鳩鳳王の顔を大きく映し出した。
「鳳王や」
 ちらりと見下ろし、弥彦中将は世にも楽しそうに笑った。
「さ、倒してくれるんやろ? 鳳王『野郎』を」

●暗雲はいずこへ
 忠臣族長はテントを出ると、基地へと歩き始めた。
「どちらへ?」
 『甘姿不屈』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が早足でついてきて横を歩く。
 テントの外で警戒していた『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)と『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)も忠臣族長を囲むようにして陣形を組み、防御を固めた。
 彼らを見ながら、忠臣族長は歩みを緩めず口を開く。
「民は決起しました。大量の武器が居るでしょう。兵だけでなく、多くの者が武器をとるはず。基地にて鹵獲していた武器を使うなら、今を置いてほかにない」
 おそらくその指示を出しに行くのだろう。伎庸は鳳圏に抵抗出来る程度には軍事力を持っているが、政治力はいまいちだ。族長である忠臣が伎庸という部族を足こぎペダル式発電機のごとく稼働させているにすぎない。
 そしてだからこそ、彼の死は大きな損失となるのだ。
「それでも、今動くのは危険じゃあないかな」
 こんぺいとうを取り出し、口に放り込むランドウェラ。
「暗殺計画があったはずだよね。今も狙ってる筈だよ」
 周囲を見回してみるが、あやしい人影はない。
 というより、それほどあやしいなら誰かが既に捕まえて然るべきだ。
 ランドウェラの発言をうけて、忠臣族長は頷いた。
「その通りです。ですがそれでも動かねばなりません。暗殺の計画の発覚すら意図的なものであるなら、私をどこか分厚い金庫の中に押し込めておく意図があるはず。そもそもの目的が『私の不在』なのですから、殺しても引きこもらせても同じことなのです」
「うーん……」
 ランドウェラはちらりとわんこを見た。
「アサシンに心当たりは?」
「はい、いいえ……うーんと……ないデス」
 歯切れの悪い返答に首をかしげるベーク。
 わんこは手振りを交えて説明を始めた。
「味方を無闇に疑いたくはありマセンガ、やはり久慈峰一派が気になりマス。
 及川サマの死で戦乱を拡大し、より強い相手との……あわよくば、イレギュラーズとの戦いを目論むのではないかと。もしくは、そもそも伎庸への肩入れが鳳圏の指示かも……と」
「けどその考えはさっきの演説で否定されたんじゃ?」
 ベークの言葉に、わんこはより深く二度頷いた。
「はずみサマや今井サマ、それに志村サマも暗殺には優れた適性がありマス。能力で言えばこのあたりが順当だったのデスガ……確かにそれが狙いならわざわざ鳳王にヘイトを煽る意味がないデス。部族間の紛争を焚き付けていたほうが得が多いデスカラ」
 そちらは? という視線とジェスチャーにベークは首を振ることでこたえた。
 ランドウェラのほうは『僕にもさっぱり』と肩をすくめるのみだ。
「まあ、分からないなりに警戒はしてる」
 ランドウェラはこめかみを指でトントンと叩いて見せた。
 彼の発しているレーダースキルでは複数の非戦スキルの使用が感知できていた。
 ンクルスたちの発した扇動能力や説得能力。今は演説の場から離れて消えつつあるが代わりに警備能力が感知できた。
 おそらく基地の周りで警備している兵達のものだろう。基地が近づいてきたということだ。
 と同時に、おそらくわんこのものであろうジャミング能力がアクティブになる。
 忠臣周辺にアサシンが潜み、それが集団で動くならテレパスなどの無線通信は役立つ筈だ。逆にそれを止めておくのは有効な手だった。
 そして、ぴたりとランドウェラが足を止める。同時に忠臣族長にも歩みを止めるよう求めた。
「アノニマス使いがいる。インスタントキャリアの効果も感知できた。まずいなあ、どのくらいいるんだろ……」
「及川サマ、背から離れないように」
「この姿なら油断してくれ……ませんよねえ」
 ベークは『僕ってなにげに有名らしいし』と自分の頬をなでながら及川を庇う姿勢をとった。
 そこへ駆け寄ってくる伎庸兵たち。
「族長! 暗殺者を捕らえました!」
「本当か!」
 ぱっと顔を明るくする忠臣族長。
「残りの暗殺者の顔と居場所も判明しています。こちらへ、安全な場所へお入りください!」
 兵士たちが基地の扉を指さす。忠臣族長が頷いて歩き出そうとしたのを、ランドウェラがとめた。
「あー、えっと……こういうときなんて言えばいいんだろ。チェックメイト?」
 ランドウェラはボウガンをスッと取り出すと今まさに案内しようとした兵士めがけて矢を放った。
 直撃を受け、倒れる兵士。
 いや、兵士ではない。
 帽子のはずれ、顔にかぶっていた肉マスクが剥がれたそれは老婆だった。
「あれは……」
「見覚えが?」
 ベークが身構え、そしてアサルトライフルによる銃撃をその身で防いだ。
 まわりの兵士たちが一斉に攻撃を仕掛けてきたのだ。それをベークひとりで忠臣族長を庇ってダメージを引き受ける。彼の類い希なる再生能力を持ってしてもカバーしきれないだけのダメージが蓄積していくが、忠臣のそばから離れるわけにはいかない。身を固め、我慢をした。
 忠臣族長は口元に手を当て、信じられないという顔でつぶやいた。
「伎庸へ亡命を求めていた鳳圏民だ。女子供までもが徴兵されるようになったと言って、孫を庇ってこの地に逃げ込んできた……」
「孫――」
 わんこが素早く振り返り、そしてガード姿勢を取る。
 高速で迫り、コンバットナイフを抜いた少女が斬りかかったのだ。
 グローブでナイフを受け止め、至近距離で指鉄砲を放つ。
 空圧の弾が少女へ命中するも、退かない。
 兵達……否、兵に変装したアサシンたちはハンドサインを出すと徐々に包囲を固め、わんこを入念に狙う姿勢をとりはじめた。ベークを最小限の釘刺しに留めて無視したほうが有利だと早くも気付いたのだろう。
 このままではマズイ――と思ったその時、どこからともなく『不可視の』イスナーン(p3p008498)が現れた。
 手にしたナイフでアサシンの首筋を切りつけ、そして素早く無力化する。
 ノーマークの方向から現れたイスナーンへ咄嗟に銃を向ける兵士だが、イスナーンはその銃口を弾くことで銃撃そのものを回避。更に鋭い蹴りによって相手の姿勢を崩し流れるようなナイフさばきで喉を切り裂いた。吹き上がる二人分の血。
「隠れていた甲斐がありましたね。『罠』にかかった」
 兵では通常通らないであろう動線をねらって切れやすいワイヤーをはっておき、切れた際イスナーンにだけわかるような仕掛けを施していた。
 兵の不自然な動きを察知し、それが忠臣族長を包囲するためのものだと悟ったイスナーンは逆に彼らを奇襲できる位置まで気配をころしながら徐々に近づいていたのだ。
 イスナーンはナイフを構え、兵士たちへと視線を配る。
「暗殺計画はここで終わりです。彼らの見いだした希望、みすみす潰えさせはしませんよ」

●アイテールへ至る
 装甲車のルーフに立つ少年。どこからか吹いてきた風を受けるように、前を全開にしたコートの裾がなびく。
 腕組みし足を開いて立つ『無敵鉄砲暴象』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)と、横向きに腰掛けて大砲を担いでいるホランド。反対側を向いて額に手をかざし太陽を見つめるジェイビー。鉄帝で『番長』を目指す学生たちにとって無視できない『三人だけの巨大軍閥』ことリュカシス派閥三人組である。
「よくわからんが、要するに敵をぶっ飛ばせばいいんだよな」
「アーマーと武装のメンテナンスは終わってるよ。テストはする?」
 それぞれ振り向いて問いかける二人に、リュカシスは腕組みしたまま、そして前を見たまま答えた。
「無論! ぶっつけ本番、強行突破!」
「おまえ好きだよなあそれ」
 ドルンと音をたてて止まる装甲車。後ろを振り返ると無数の馬車やジープが土煙をあげて迫っていた。車両には栄龍やベークたち。それに、自国の防衛に専念していたはずの伎庸兵たちが大勢つまっていた。乗り切れないせいでダンプカーの荷台に大量に立ち乗りする集団もいるほどである。
「どうやら、上手くいったみたいデスネ」
 併走しだす車の上で、体の向きを変える。
「伎庸を取り戻す為の戦いはひと段落致しました。
 ケレド敵軍は着々と再戦を準備整えている。
 今ならあちらの戦力が整う前に黄泉軍計画技術顧問の軍隊を叩けます!
 これは伎庸を守る為の確かな一手となりましょう。
 どうか共に戦ってください!」
 リュカシスの呼びかけに、伎庸兵たちは『応!』と叫んでいた。
 よく見ると、鳳圏の市民もちらほら混じっている。
 一体どういうことかと振り返ると、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が体育座りする兵器輸送用トラックが目に入った。
 トラックを運転するのは今井。志村や弥彦中将もそこには乗っている。
『前回 特別製ノ屍兵 用意サレテタ。
 使イ捨テニシタ位 本命 手元 アル。
 ソレニ 逃ゲル 相手程 必死。
 窮鼠 猫 噛ム。
 手段選バナイ相手ガ 追イ詰メラレヨウモノナラ ドウナルカ。
 確カメズ機会逃ス モッタイナイノデハ?』
 そう語ったフリークライの言葉が刺さったのか、それとも同じく説得したコウたちの言葉が累積したのか、どうやら久慈峰部隊もこの戦いに加わってくれるようだ。
 車両の上でゆっくりと立ち上がるフリークライ。
「ン。ミンナハ 国 土地 取リ返シタ。
 デモ 民ヤ自身 安寧 死後 取リ返セテイナイ。
 アンデッド兵器工場 霊魂 悲鳴 助ケヲ呼ブ声 イッパイダッタ。
 無黒木 逃ガス 悲劇 繰リ返ス。
 皆ヤ国民 死後ニ怯エル日々 続ク。
 皆ハ 兵士。死ヲモ覚悟シテ ソレデモト 民 国 自身ノ信念ノ為 戦ウ者。
 死線ニ赴ク皆ダカラコソ 死ト隣リ合ワセノ皆ダカラコソ 誰ヨリモ 弔ラワル 願ウ 思ウ。
 フリック達 死後 取リ返シニ行ク。
 民ノ ソシテ 自ラノ 死後ヲ 取リ返サント 願ウ者アラバ 共ニ戦オウ」
 集まった兵達に向けられた言葉。『護国の盾』伊佐波 コウ(p3p007521)はそれをうけ、頷いて続けた。
「鳳圏本国はまだ侵攻を諦めてはいないぞ。
 貴君らは此処で腑抜けているようなタマか!? 否、誇り高き戦士だろう?
 戦士であるならば故国を救う為、今一度自分達と共に戦ってはくれまいか?
 1人でも戦う者が居るならば自分は誰よりも前線に立ち、貴君らに勝利を約束しよう!」
 掲げたライフルが鈍く光り、兵たちもそれに応えて銃や剣を掲げて見せた。
 できあがった大軍勢が突き進む。目指すは無黒木の待ち構える旧前線拠点。
 まだ殲滅されていないアンデッド兵を無数に残しているかもしれない。特別製の屍兵を何隊も備えているかもしれない。だが、それがどうしたというのだろう。
 今できあがった軍勢を止められるほどの力を、もはや無黒木はもっていない。
 コウは、誰にも見えないように強く拳を握りしめた。

 ――戦いは圧倒的だった。
 戦意に溢れた伎庸兵、そして同胞をアンデッド兵器化されたと知った鳳圏民兵。そしてそれに乗じた久慈峰部隊。更にはローレットの精鋭部隊が津波のように拠点へ押し寄せ、かろうじて作られていたバリケードを粉砕。防衛に立っていた伊邪那岐型アンデッド兵たちを次々に撃滅していく。
「まずは俺が敵の注意を引く、その間にホランドがトリモチ弾で足止めし――リュカシーーーース!?」
 作戦をたてるジェイビーを無視し、ジェット噴射の急加速で敵陣に正面から突っ込むリュカシス。ホランドが『そうなるよねえ』と笑いながらスイッチを押し込むとジェイビーのアーマーからもジェット噴射がおき、リュカシスと一緒に敵陣に突っ込んでいく。
 ボーリングのピンのごとく吹き飛ばしたところへ、フリークライによる治癒結界に守られた兵の集団が互いにカバーしながら全方位発砲。動く銃座となって敵を殲滅していく。
 ローレット・イレギュラーズ10人程度なら退けられたかもしれない拠点は、いとも容易く攻略された。
「出てこい楓!! 自分は此処に居るぞ!!」
 そう言って突撃したコウは、前回見た特別製の屍兵へと連続発砲。腰からぬいたコンバットナイフで素早く相手の足首を切断すると、バランスを崩した所に足払い。転倒した相手の片腕に銃口を当ててうちまくり、素早く無力化してしまった。
 大の字に寝転んだままろくに動けない屍兵。フルフェイスヘルメットの内側から、くぐもった声が聞こえてくる。
「ねえ……さん……」
 その声に聞き覚えがあった。
 ヘルメットを外すと、その下から出てきたのは……。
「無黒木 楓……」
 あまりにも。
 あまりにもではないか。
 自分もまた武装し戦いに出るほかないほど、彼は追い詰められていたということだ。
 血を吐き、笑う楓。
「ねえ、さん……おかえり……待って、いたんだ……ずっと」
 伸ばされた手は、手首から先がなかった。
 コウは戸惑いながらも、その腕をとる。
「いっぱい、勉強をしたんだ……。姉さんに、会いたくて……いっぱい、いっぱい……」
 楓の目から光が消えていくのが分かる。
 このまま眠らせるべきだろうか。
 いや。
 コウは楓の襟首をつかむと、無理矢理引き起こして頬をはたいた。
「目を覚ませ無黒木 楓。お前にはまだやるべきことがある!
 言うんだ、お前にこんな技術を売ったのは誰だ。いかにあの『技術部』であっても、国内で生まれたものではないはずだ!」
 目から光が消えゆくなかで、楓の顔が歪んだ。
「……おまえ、か。伊邪那美型……」
 再び血を吐き、むせる楓。
「『鏡の魔女』だ。奴から、術式を……」
「……」
 諦めたようにだらりと腕をなげだし、楓は自嘲気味に笑った。
「こんなやり方、姉さんが怒るかな……」
「おそらく、な」
「だったら」
 血が流れ続けている。もはや見えていないであろう目が、コウへと向けられた。
「嘘でいいんだ。頭を、撫でてくれないか。あの世でも怒られるなら、せめて今くらい……」
 殴ってやろうか。
 コウはそう思ったが、しかし、自分の手は彼の頭へとそえられていた。
 無意識に、いつのまにか。
「……おやすみ、楓」
 口を突いて出た言葉に、自分でも驚いた。
 楓は力なくわらい。そして目を閉じた。
「ありがとう、姉さん……いま、いくよ」

 鳳圏の前線基地は破壊され、伎庸兵によって占領された。
 『黄泉軍計画』を管理していた無黒木 楓は意識不明となり、伎庸の特別病院へと収容された。
 こうして伎庸に改めて平和が訪れたのであった。
 普天斑鳩鳳王という、最後にして最大の脅威だけを残して。

●鳳圏という国。そして都市。
 重箱を包んだ大風呂敷をさげ、舗装された道を歩く『天狗』河鳲 響子(p3p006543)。
 幻想王都では当たり前になったコンクリート舗装の道路と、その間を複雑に走るレール。魔力を源として走る路面電車用のためのもので、これは一日十二回にも及ぶ往復をこなす便利な都市交通機関だ。
 響子が調べた限りでは、鳳圏という『部族』はヴィーザル地方の痩せた土地に入植した約二千人あまりの集団だ。
 メタな視点で語れば、日本に存在する村規模の推計人口が177~4万であることを考えるとかなり少ない人数であり、田舎も田舎である。
 であるにも関わらず、いざ入ってみると中央はこのように舗装され交通機関は充実し、魔力式による街灯が夜間常に灯り水道をはじめとする生活インフラは極めて高水準に整っていた。民は綺麗な服を着て平和そうに歩き、道ばたにテーブルを出して昼から酒を飲む姿すら見える。食事や料理文化はやや質素に見えるが、それでも人が生きていくのに充分すぎる量が確保されていた。
 それに詳しく調べてみれば人口はここ最近で倍ほどに増えたらしく、出生率は右肩上がりであるという。
 得に力を入れているのは軍事で、武器製造はもちろん兵に対する保証は手厚く街の至る所にプロパガンダ色(ここでいうのは危険な意識操作のみを指す)の強いポスターが大量に貼られ、軍歌や誇張されたニュースが毎日のように放送されている。
「ありえない発展……これもみな、魔種を王としたために得た豊かさなんですね」
 無尽蔵ともいうべき魔力をエネルギー資源とし、成長し過ぎた村……いや『国』。ミクロネーションと侮るには、少々危険な勢力だ。
「それでも……死者を操る人道に反する行いで築く平和は真の平和と言えるのか」
 響子が立ち入ったのは、そんな都市内でも最も洗練されたエリア。つまりは軍事エリアの兵舎区画であった。

 響子が元々鳳圏国民から信頼を得ていた彼女が立ち入ることは難しくなく、戦場で彼女と共に戦ったという兵士たちの口利きもあって兵舎の食堂までなら自然に入ることができていた。
「お疲れ様です。腹が減っては戦が出来ない、なので皆さんの分のお弁当を作ってきました。よければ食べてください。えっと、口に合えば良いのですが……」
 そういって広げた重箱の中身に、兵士達は思わず身を乗り出す。普段の食生活からは考えられないほど豪華な料理が詰め込まれていたためだ。
 こんなことを、響子はこのところ定期的に、そして頻繁に行っていた。
 響子の顔を覚える兵士は増え、それ以上に好意的な兵士が増えていく。
 中には身の上話を聞かせたり、激しいなかには露骨な恋愛感情を向けてくる者もいたくらいだが、響子が目を付けたのは……。
 この都市の中に一定数、密かに存在するという反鳳王派の人間達だった。
「大丈夫です、貴方は立派に鳳圏の平和の為に頑張っています。ですがこの国に蔓延る闇も見えた、気がします」
 響子がそう語ってやると、兵士達は周りに聞かれないようにしながらも自分たちの考えを話してくれた。
 そこからは、響子の紹介で通うようになった『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)の出番だ。
「部族、種族、或いは生活圏。違う者が隣に居れば争いが起こるのは当然の成り行きだし、仕方ねえよ。
 けど、求められるのは勝利という結果だけ。手段は正当化され、善悪すら勝者の掌の上。
割を食うのは、泣きを見るのは、常に弱い連中。
 そんなのナンセンスだろ。原始時代じゃねーんだぜ?
 正直に言うが、こんなクソ戦忌を始めたヤツをブン殴ってやりてぇ。
 ……ま、ちょいと紳士的じゃあ無くなっちまったが、俺のモチベーションはこんなとこ。
いかにも尻の青い考えだから、誰かに言うつもりは無いけどよ」
 ブライアンの主張をまとめると、こんな感じだ。
 鳳圏は周辺部族のすべてに戦争を仕掛け、それに勝利したなら更に先の部族にまで戦争をしかけようと目論んでいるように見える。
 兵のなかにもそういった空気を感じ取った者が一定数おり、そして彼らは終わりなき戦いと苦難に対し厭世的になっている者が少なからずいた。
 そんな彼らに榛名大佐殿より命をうけ人を集めているという話を内密に流し込み、少しずつ……しかし着実に、味方を増やしていた。
 食堂で一緒にメシを喰い、ピンとコインを親指で跳ね上げてみせるブライアン。回るコインをキャッチして、スモークの入った眼鏡の奥でキラリと目を光らせた。その目の奥に光るのは、魂の輝きかそれとも意志の鬼火か。

●究極の対極
 窓に流れる滴を布で拭き取る『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。
 続いて拭こうとして、ガラスの向こう側だと気付いて目を瞬かせた。
「エッダちゃん、こんな部屋掃除したってしょうがねえよ。明日にはまた滅茶苦茶になるんだから」
 ビール瓶を片手に立ち止まった通りすがりの兵士が肩をすくめてそう呼びかける。
「それよりこっちで呑まない? 戦闘任務のないときって暇なんだよね」
「いえ……」
 エッダは『お気遣い無く』と頭を下げ、手を振って去って行く兵士の後ろ姿を目で追った。
 鳳圏兵舎エリア。等間隔に並ぶ窓と、板張りの廊下。
 田舎部族の武装集団という鉄帝本国の認識とかけ離れた風景に、エッダは……というよりエーデルガルト大佐は激しい違和感に顔をしかめた。
(集団規模に対して文明が発展し過ぎている。そのうえ軍部がここまで力を持っているなら……)
 放置すれば確実に鉄帝本国に害なす存在となる。庭の隅にできたアリの巣かと思えばクマンバチの巣だったような気分だ。力を持ちすぎた集団が周辺部族を併呑していく将来などぞっとしない。
 早いところ、この『軍事力』だけでも喪失してもらわなくては困る。
 そのためには……。
「橘中佐殿、これからメシなんだが一緒にどう?」
 廊下を軽い足取りで進む『特異運命座標』時任 零時(p3p007579)。彼は前を歩く橘 征史郎陸軍中佐に手を振り、そして気軽な様子で肩を叩いた。
 階級から考えれば下手すれば銃殺刑の軽挙だが、橘中佐相手には正解だ。零時は長年軍内部で培ってきた直感からそれを導き出していた。
「あー? ンだよ面倒くせえ。どうせ今日も豆汁だろ?」
 けだるそうに応える橘中佐。まるで学生どうしのようなテンションだ。
「それがねえ、実は中華料理なんだよ」
「あ?」
 足を止める。
 零時はスッと顔を覗き込むようにして耳打ちした。
「満・漢・全・席」
 橘中佐が踵をキュッとならして反転すると、シャオラァといって走り出した。廊下を全力疾走するのみならず、それによっておきた暴風で窓がビリビリとなり廊下に放置されたあらゆるものが吹き飛びたちまちホコリまみれになっていく。
 エッダは『なるほどそういうことか』と納得しながら服を押さえ、おいかける零時を見送った。

 よき食は人の心を豊かにする。それが野獣同然の男であっても。
「クソウメェ! ヤベェ! これクソヤベェなオイ、ヤバイもんでも入ってんじゃねえのかクソがよ!」
 語彙が三個しかない脳で感想を語りながら肉と油ものをひたすらかっこんでいく橘中佐。
 料理を担当したのは何を隠そう零時である。
「今日はなんかの記念日か? 知らねえけど」
「さあ? 知らないけど、たまにはいいんじゃない?」
「ちょっと、何かと思えば皆さんここに居たんですか!?」
 慌てた様子で食堂へ駆け込んでくる『折れぬ華』茅野・華綾(p3p007676)。
 腕には衛生兵の腕章をつけ、手には薬瓶を握っていた。
「入院中の方がごっそりいなくなったと思ったら……」
「別にいいじゃねえか、ウメェメシ喰えば治るだろこんなもん」
 橘中佐は腕の骨が折れてるらしい兵士の肩をドンと叩いた。小動物なら死んじゃうんじゃないかっていう勢いで叩かれた兵士はウグッとうめいたがすぐに苦笑して頷く。
「中佐殿ぉ……」
 眼鏡をずちおちさせ、肩をがっくりとおとす華綾。
 橘隊の主な方針はエンジョイアンドエキサイティング。弱い奴は死ぬし強いヤツもいずれ死ぬので毎日戦場を楽しもうぜという修羅めいた部隊である。
 なので医療スタッフはいないし食堂のスタッフもいない。喧嘩の腕だけ自慢だったような連中をかきあつめた男達がなんとなく持ち回りでそれっぽいことをしているだけである。
 おかげで零時や華綾といったその道のエキスパートが重宝されたのだが。
 そこへ、開きっぱなしの扉の前にたち敬礼する兵士が現れた。
「橘中佐殿! 出陣の命令であります!」
 軍の口頭命令手順をカンペキに無視した叫びに、橘中佐は鳥の丸焼きを握りしめたまま立ち上がった。
 肉を食いちぎり、ギラリと笑う。
「ヨッシャア! ヤるぞ野郎共!」
「「応!」」
 食事中のすべての兵士が、腕の折れた兵士ですら立ち上がって叫ぶ。
「ちょ、ちょっと……けが人は入院していなくては! 無理に戦えば死んでしまいます!」
 引き留めようとする華綾に、橘中佐は獰猛に笑って振り返った。
「どうせ早いか遅いかだろ」

●鳳圏海軍
 鳳圏が海に面しているという事実を知るものは、実は少ない。
 なぜなら鳳圏が海に面しているエリアはごく僅かであり、それも弱小部族を滅ぼして手に入れた土地であるからだ。港と呼ぶにはあまりに小さく、その土地の者もその日食べる魚を釣るためだけに使っていた場所だ。
 そこへ立派な軍艦を無理に建造して浮かべ、海側からの攻撃を可能にしようと画策した部隊……それが鳳圏海軍である。
 とはいえ鉄帝国に面した海に『凍っていない海』は珍しく、海軍が機能するタイミングは実のところ少なかった。
 それでも機能を喪失していないのは、それだけ鳳圏という集団が軍事を重視しているがためである。
「よもや、海に出ていた間にこんなことになっていようとは……」
 鳳圏のもつ『海洋進出能力』はその立地のせいで微々たるものだ。そのため周辺海域を長い期間にわたって航海し調査し、有用な資源があれば獲得ないし記録するという任務についていた。
 場合によっては食料問題の解消など様々なメリットがあるため、鳳圏海軍に賊する兵士のひとり『八紘一宇』鮫島 寿彰(p3p007662)もその役目に誇りを持っていた。
 そんな彼が知った、鳳圏に関する闇。
 榛名大佐より極秘のルートによって伝えられたそれを、寿彰はいちもにもなく海軍の将軍のもとへと報告した。
(自分もこれ以上戦争が続くのは嫌であります。その原因が我らが偉大なる鳳王であるのなら、それは、それは。倒さなければいけない存在であります。
 全ては鳳圏の未来の為に!)
 皆が知らぬうちに、きたるべき戦いに鳳圏海軍という影の戦力が加わりつつあった。

●血よりも硝煙よりも爆風よりも
 酔ったウナギのような軌道を描いて飛来するロケット弾が有刺鉄線へ着弾。地面の土ごと吹き飛んでいくそれを槍で振り払うと、橘中佐は笑いながら突進していった。
 目指すは正面。武者鎧にも似たフルフェイスヘルメットと鱗鎧に身を包んだ兵士が魚型のランチャーを放り捨て、中華刀を抜いて突進してくる。それも数は三つ。
「オラ新入りィ、突っ込め! 突っ込んで殺せ! もしくは死ねぇ!」
「はい! 中佐殿!」
 『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)は歯を食いしばって走ると、1mくらいはあろうかというコイル状の有刺鉄線をジャンプで飛び越えた。
 その隙を狙うように打ち込まれた弾幕は回避しない。防御もしない。気合いで受けて気合いで耐えるのだ。
 突進してきた鎧武者へと拳を握り込み、着地と同時に殴りつける。
 ヘルメットを大胆にへこませた彼の一撃によってぶっ倒れた兵士。しかしそこで止まることなく迅はカラテめいた構えをとった。
 前方めがけてラッシュ。空気を殴ったかのような彼の拳は空圧による壁を作り、打ち込まれた弾幕の半数ほどを弾き飛ばしていく。残りはもちろん気合いで受けるのだ。
「中佐!」
 そのまま駆け出す迅。
 激しい跳躍で敵武者鎧兵による横一文字斬りを回避し肩を足場にして飛ぶと、その後方の敵を殴り倒し即座にターン。裏拳が先ほどの兵士に入ってなぎ倒す。
「いいぞコラァ、楽しくなってきたじゃねえか! アァ!?」
 目をかっぴらいて笑う橘中佐。つい最近『ある仮想世界』で殺し合った経験からちょっと背筋がビリッとするが……そんな彼の肩を橘中佐はドンと叩いた。
 そうしながら敵の顔面に敵の刀を突っ込んでトドメをさす。
「気に入った。テメェいま鳳圏に所属ねえんだろ? 俺んとこ来いよ、楽しめるぜ」
「中佐殿、そのことなんですが……」
 ふと見ると、同じ部隊に入って戦っていたエッダと零時、そして華綾たちがこちらを見ていた。
 よーく見ると、全員声に出さず口パクだけで『ガンバレー』て言っていた。
 橘中佐説得の先陣を切れということらしい。
「アァ? どうした迅。なんかつまんねーこといったら殺すぞ」
 本当に殺しそうな声で言う。
 荷が重いです皆さん! と心の中で叫ぶ迅……に、突如として救世主が現れた。
 そう、『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)である!
 ……『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)である!?
「中佐殿、死んでも死なない強敵がいるんですけど、殺しませんか?」
「アァン……?」
 勇者パーティーの癒やし担当みたいな顔(実際そうだった)ですごいエグいことを言うヴェルーリアの顔を、橘中佐は至近距離で凝視した。
 常人視点で例えると、飢えた虎がグルルって言いながら鼻先まで牙を近づけた状態である。
 が、ヴェルーリアは目をそらさなかった。
 彼女のもつ才能のひとつ。世界の絶望に立ち向かうというその、極端にいえば唯一にして最強の才能が、目の奥で希望の光となって輝いた。そのあまりのまっすぐさに、橘中佐が一瞬引き下がりそうにすらなった。
 だが耐え、至近距離でにらみつけたままにやりと笑う。
「どういう敵だって?」
「鬼楽の最終防衛ラインを守っている、般若兵っていう敵なんです」
「そうなんです。一歩間違えれば死んじゃうくらいめちゃくちゃ強い相手に挑みに行くんですけど、橘中佐殿も如何ですか?」
 今がせめどきだと悟った迅が追撃。
 エッダはどう絡めようか考えていたが、パッと閃いて先ほど倒したばかりの兵士を掴み、そのヘルメットをひっぺがした。
「ご覧ください」
 その様子にぎょっとする零時。
「こりゃあ……」
 華綾が近づいて確認してみると、その兵士は確かに死んでいた。今さっき橘中佐に顔面を剣で刺されて死んだわけではない。それよりもずっとずっと前に、およそ何年もまえに死亡した『白骨死体』であった。
「アンデッド兵……鬼楽がアンデッドを兵器化していたというのは本当だったのですね!?」
「はい。不死をかさに来た、工夫のない突撃。
 生も死もない。否、戦場にただ一つあるはずの、死というルールを弄ぶ戦」
 これが楽しいでありますか? とエッダは顎をあげてみせた。
 対する橘中佐は、ひどく顔をしかめていた。
「ムカつくぜ……これじゃあぶっ殺せねえじゃねえか!」
 本気で叫ぶ彼の様子に、エッダは『そうですね』と言ってヴェルーリアに続きをパスした。
 頷いて、そしてヴェルーリアはビッと親指で後ろをさした。敵軍のいるさきを。
「けど、ぶっ壊すことはできますよ? この『仕組み』ごと」
「……おもしれえじゃねえか」

 ここから先は快進撃であった。
 兵站とかいう重要そうな要素を気合いだけではねのけた橘部隊withローレットチームは立ち塞がる屍兵たちを物理的にはねのけ、ついに最終防衛ラインまで一気に到達してしまったのである。
 そこでは、今まさに『アイドル系運び屋さん』ハロー・ハロウ(p3p008053)と『マスターファミリアー』リトル・リリー(p3p000955)が般若兵と戦っていた。
(……まさかお互いに目的が同じで、しかも鳳圏も鬼楽も互いに怪しい所いっぱい、これは……調べがいが有るかもれしないねっ)
 馬のカヤの上にちょこんとのって、ちらりとハローの顔を見るリリー。
「ふふん、僕も可愛いけど、リリーも可愛いね!
 しかも、なんと、目的も同じだから僕らは運命の糸で結ばれた相棒って……コト!?」
「コト?」
 同じように首をかくんとかしげる二人。
「うんうん、相棒に隠し事はナシだね!
 相棒には僕がシルヴァンスのみ……密偵!
 そう、密偵って事も教えちゃう! 大サービス!」
「じゃあリリーも、後でlittleの事しっかり話してあげるねっ」
 二人はサイズ感の異なる握手をぎゅっと交わした。頭上に浮かぶ『同』『盟』という文字。
 そんな彼女たちに襲いかかるのは前回も立ち塞がった般若兵たちである。
 それも、以前より武装の強力さがましたバージョンだ。
 般若兵――般若の面をかぶり棍棒を握った巨大なアンデッド兵はまずハローめがけて棍棒を叩きつけるが、ハローのほうは素早く飛び退き攻撃を回避。その間にリリーが馬で回り込みながら『DFCA47Wolfstal改』という特製の魔道銃で狙いを定めた。
 般若兵の背に複数の特殊弾を発砲。
 リリーの得意とするバッドステータスコンボである。
 小さいにもかかわらず巨人の膝をいとも容易く折るリリー。
 思わず膝を突いてしまった般若兵に対して、ハローがここぞとばかりに追撃をしかけた。
「ふふーん、楽しくなってきたねっ、リリー!
 一緒に鳳圏や鬼楽の怪しい所を調べちゃおー!!」
「おー!!」
 倒した般若兵を早速ひらいて調べ始めるリリーとハロー。
 そんな二人の横を駆け抜けていくのが、橘中佐とそれに引っ張られる形になったヴェルーリアたちである。
「頼りになる味方と共に強敵と戦う。ワクワクするね!」
 そう言いながら杖を握りしめ、希望の光を全方位へとホーミング発射するヴェルーリア。
 橘中佐はその辺で拾ってきた巨大棍棒を振り上げ、笑いながら敵へ――。

 それからどのくらい戦いが続いただろうか。
 敵兵がすべて倒れ、味方の兵士もそこそこに倒れ、少なくない程度の死者がでた戦場のど真ん中。
 橘 征史郎鳳圏憲兵隊陸軍中佐は、敵のしゃれこうべを掴みあげて笑った。
「この戦場には悲鳴がねえよ」
 笑った。
「この戦場には悲しみがねえよ」
 笑った。
「この戦場には恐怖がねえんだよ」
 笑って、しゃれこうべを握りつぶした。
 にらみつける先は。
「で、このクソを作った奴は――」
「そいつは、もう逃げたよ」
 堂々とした立ち振る舞いで、鬼楽側から現れたのは『愛と勇気が世界を救う』小刀祢・剣斗(p3p007699)だった。
 そして武器を目の前で捨てて戦闘停止の意思を見せる。
「どうやら、戦うべき敵がハッキリしたようだ橘陸軍中佐殿。我々の敵は、どうやらひとつであったらしい」
 手をかざし、キュパッと指を鳴らす。
「今こそ聞かせよう。我が鬼楽で起きた物語を」

 ――こうして剣斗によって語られたのは、つい先日までにおきた鬼楽での事件の全貌であった。

●友情
 ――鬼楽にはUQという伝説のチームがいた。
 黒く無骨なバイクに跨がった『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)はゴブリン人形を後部にのせたままアクセルをふかし、加速を始める。
 彼と併走するのは鬼のように屈強な男達だ。
 彼らは煙草をくわえ、千尋へ笑いかける。
 千尋もまた笑い返し、鬼楽の荒野を彼らのバイクが駆け抜けていく。

 バイクをとめて下りる千尋。同じように下りた男達と拳をコツンとぶつけ合うと、千尋は仲間達と共にバーへと入っていった。
 さっき伝説のチームとか言ったがこの地にUQ魂が広まったのはつい最近のことである。
 鬼楽では王が覚めぬ眠りの呪いにかかり、その犯人捜しが行われていた。
 最有力容疑者となっているのは『巫女王』蒼華の側仕えであった鈍落(ドンラク)というノルダイン系の男である。
 いつも卑屈な笑いを浮かべる瓶底めいた眼鏡をかけた痩せぎすの男で、かつて鬼楽によって土地を奪われた一族の生き残りであるとも噂されていた。彼は『眠りの呪い』事件を境に行方が分からなくなっており、それが容疑を強めている状態だ。
 といっても証拠らしい証拠はない。
「俺にゃあ、ドンラクに呪術は無理だとおもうね。あいつはどんくさいが王のことは好いていた。出自はともかく、嘘がつけるやつじゃあないぜ」
「フーン……」
 俺そういう細かいとこわかんないという(中央にパーツが寄った)顔で答える千尋。
「ま、誰がやったんだか知らねえが……俺らの腕が必要になったら助けてやるぜ」
「サンキュー、かんぱーい!」
「「ウェーイ!!」」
 ビール瓶をぶつけあってがぶ飲みする千尋たち。
 千尋の狙いは厳密には犯人捜しではない。その犯人が鬼楽にとって貴重な人物であっても混乱を最小限にとどめるための下準備である。
 どんな事件も、『やった人間を見つける』だけで解決されないということを千尋は肌感覚で知っていたのだ。
 オトシマエはつけるべきだし、周りが動揺してムチャしないか見張る必要もある。
「それに……もう証拠の一つくらいは見つけてそうだしな」

 千尋が読んだとおりというべきだろうか。『ラド・バウD級闘士』溝隠 瑠璃(p3p009137)は既に犯人の目星をつけていた。
 最有力容疑者のドンラク……ではなく、その不在を最初に報告した『鏡』の真経津 鈿女である。
 彼女は類い希なる呪術の使い手であり、そのわざをもって鬼楽を勝利に導いたり天候をおおまかに予測したりと様々な面で鬼楽の生活になくてはならない要素をもっていた。
 王を眠らせるほどの強大な呪術が使われたのであれば、真っ先に疑われそうな人間ですらある。そうされないのは、彼女が鬼楽がただの入植地であった頃から王と共に国を育て守り続けてきた国の立役者であるからだ。
 歴史の長さという意味では、『剣』『勾玉』両当主よりも上である。そして両当主もまた、そんな彼女に敬意をもって接しているのだ。
「『まさかそんな人がやるはずない』……っていうのは、内部のひとの考え方だゾ!」
 幸い(?)瑠璃は外の人間。歴史や人間関係を一旦無視してものを見られるのだ。
 瑠璃は剣と勾玉の一族に対しても協力を求め、防衛ラインに配置されているという般若兵についての情報やこの地で行われた呪術の情報を集めさせた。
 その中で見つけたのが……。
「コレ、ってわけか……」
 全身をぴっちりとした黒いライダースーツに包んだ隠密モードの瑠璃。
 忍び込んだるは鏡の当主真経津 鈿女の家の中。
 無数にある呪術道具の中で、剣と勾玉から提供『されていない』呪術の痕跡を発見したのである。
「全く……女王様に呪い掛けた奴の犯人探しなんて無茶ぶりなのに半分しかチャラにならないとか不服だゾ」
 ぶつぶつといいながらも、首元のファスナーをツゥーっとおろしそのむき出しの胸元へ手書きの呪術書をすべりこませる。どういうわけか体のぴっちりとしたラインを完璧に保ったまま、ファスナーは再び首まであげられた。
 仮に真経津 鈿女が犯人であったなら、他の当主に正体を見せたりはしないはず。信頼を盾にして不都合な出来事を隠すはず。側近のドンラクが行方不明になったのも、都合の悪いものを見られたために『消した』と考えるのが妥当だろう。
「あとは、この証拠を鑑定できる人物だけど……」
 瑠璃には、既にアテがあった。

「フジャッケンナ! なんでアタシがバリバリの敵国なんかに来て協力までしなきゃいけねーんだ!」
 文句を言いながらも馬車からおり、御者にチップをわたす少女。ヴィーザル地方に暮らす『フリームファクシの魔女』、トバリである。
 魔女だけで構成されたその村は、血ではなく魔術で繋がる血統である。常に外の魔術を取り入れ、組み込み、成長と変化を続ける彼女たちは皆別々の故郷をもつ。トバリの故郷は、鳳圏であった。
「まあそう言わずに。ある意味故郷を捨てた身ではありませんか」
 ほがらかに笑う『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
 『文句は言うけど素直に降りはするんですわね』とは言わなかった。
 トバリが文句ばっかり言うのはデフォルトっぽいからである。
「で? アタシに呪術の鑑定をしてほしいって? そういうのならセラーナ姉さんの方がよかったんじゃねえか? アタシはまだ半人前だぞ」
「いいえ……」
 馬車の到着を待っていた瑠璃たちがやってきて、ヴァレーリヤに呪術書を手渡してきた。
 それを受け取り、そのままトバリへと見せるヴァレーリヤ。
「この本に、見覚えがありますわよね?」
 トバリの反応は劇的だった。
 飛びつき、目を見開き、本を開いてページを素早くめくっていく。
「これは……間違いない、アタシが鳳圏から持ち出した、『屍兵術』の原本だ……」
「やはり……」
 ヴァレーリヤは息をつき、そして……千尋たち鬼楽ガイズたちへと振り返った。
「鬼楽の人達を集めてください。『解明編』が始まりますわ、と!」

 『愛と勇気が世界を救う』小刀祢・剣斗(p3p007699)から親父殿(小刀祢 剣士郎)へ、そして剣士郎から勾玉、鏡の一族へそれぞれ話が伝わり、彼らは鬼楽の広場へと集められた。
 石を積み上げて作った台へと登り、ゆっくりと両腕を開く剣斗。
「さあ、集まったな鬼楽の同胞達よ。この度、王に眠りの呪いをかけた犯人が判明した」
「そりゃあ、ドンラクが捕まったってことか?」
 鏡の一族にあるノルダイン系鉄騎種が声をあげる。
 が、剣斗はゆっくりと首を振った。
 そして、手をかざす。自分でも信じたくないとでもいうように、その手は震えていた。
「犯人は――」
 振り下ろした手。指し示したゆび。それは、『宝鏡の真経津』当主である真経津 鈿女へ向いていた。
「あなただ、鈿女殿」
 言い逃れや証拠の提示。といったものはもはやお決まりのパターンをなぞったとしか言いようがない。
 千尋の集めた些細だが大量の目撃証言と、ドンラクが無実である状況証拠。
 それに加え、状況的に鈿女以外にこれをこなせる人間はいないという話からトドメのように提示された呪術書の存在。
 これについて詳しいトバリがその『写本』が鳳圏に渡っていることと、その効果や危険性について説明した。
「仲間が……鬼楽の「家族」が犯人だとは思いたくない気持ちは俺も一緒だ。
 だが、巫女王様を助ける為には今はその想いを断つ「勇気」を持つべきだ!
 鬼楽への「愛」があるというのならば! 内憂の膿は取り除かねばいけないのだ!」
 皆の心の中にも少なからず浮かんでいた答えなのだろう。
 反論するものはなかった。
 そう、鈿女当人でさえも。
「あらあらあらあら、バトルばっかりでおつむの弱い子ばっかりだと思ってたけど、ローレットにいって変わったのかしらねえ剣斗さん?」
 胸に手を当て、その少女のような顔を歪ませる。内面にある狡猾な、そして想像も出来ないほど年老いた老婆の表情がそこにはあった。
「あちしが犯人? 証拠が揃った所で本当に吊し上げられるかしら? 私(わたくし)がいなくなって、この国はやっていけるかしら?」
 周りを見回す鈿女に、鬼楽の男達は視線を下に向けた。
 だが、全員がそうだったわけではない。
「そんなことはない」
 手をかざし、よく張る声で述べる剣斗。
「我々はもうあなたに抱えられなくても歩けるだけ大人になった。
 我等の『正義』は、決して揺るがない。
 「剣」の小刀祢に「勾玉」の玉響!」
 呼びかけると、剣士郎は腕組みのまま深く頷いた。
「『鏡』に政務を頼り切り、それゆえに目を背けていた……ってところかな。おじさん、ちょっとオトナとして恥ずかしいね」
「ぬうう……」
 一方の尊は扇子を握りしめ、歯がみして震えていた。
「認めたくはねえ……が、認めなくちゃあならねえ……悔しいが、小僧の言うとおりだぜ。俺らは、真実から目を背けていたみてぇだ」
 もはやこれ以上説得する必要はなさそうだ。
 剣斗は鈿女へと向き直る。
「鈿女殿、一体どうしてこのような事を」
「ふふ」
 笑みが、歪んでいた。
 邪悪がうちからこみ上げるような、見るだけで鳥肌がたつような笑みだった。
 と同時に、彼女の衣服がちぎれ飛び、肉体から飛び出すように無数の鏡が出現した。
 その中には歴代の『剣』『勾玉』当主たちや、若くして命を落としたという英雄たちの顔がうつっている。そんな中に、『巫女王』蒼華とドンラクのものがあった。
「『ばれてしまっては仕方が無い』――なんて陳腐なことは言わないわ。
 今までたっぷり役に立ってくれたから教えてあげる」
「役に立った……? それは……」
 何かに気付いた剣斗たちに、鈿女は――否、それまで正体を隠していた『魔鏡の魔女』Tezcatlipoca(テスカトリポカ)は笑った。
「私に何百年と『若さ』を喰わせてくれたことよ!」
 空中に浮かぶ何枚かの大鏡から屍兵が現れる。
 素早く斬りかかる小刀祢 剣士郎だが、彼の剣は屍兵によって止められていた。
「親父殿……!?」
 至近距離で剣をぶつけあって、彼は確信したようだ。
 屍兵の『素材』はかつて鬼楽で英雄と呼ばれた歴代の戦士達。または『剣』『勾玉』の当主たちの死体によって作られた特製の屍兵たちであることに。
 鈿女あらためTezcatlipocaは英雄屍兵を何体か残し、巨大な鏡のなかにずぶずぶと沈んでいく。
 鏡の向こうに広がっているのは、どうやら鳳圏の街並みのようだった。
「鳳ちゃんにお土産をあげなくっちゃ。『あっち』で会いましょ。バァイ」
 片手の指をなみうつように動かしてチャーミングに挨拶すると、Tezcatlipocaは完全に鏡に沈み込み、そして鏡ごと消えてしまった。

●鳳圏へ至る道
 フルフェイスヘルメットを被り、七色の腕章をつけた兵士達が並んでいる。
 鳳圏陸軍の軍服だが、彼らの体格や体躯は常人とは思えないほど筋肉質かつ巨躯だ。
 そんな彼らが通常の歩兵ではまず携行しないような重火器を担ぎ、強引な弾幕を張る。
 鬼楽兵たちは勇猛果敢に突撃するも、あまりの弾幕に押し返され次々に倒されていった。
 基本的に前のめりな鬼楽兵に衛生兵は少ない。少ないリソースは重要な兵に割り当てられ、倒れた兵たちはその屍を積み上げていくのみ。
 土嚢を積み上げたバリケードももはやその意味を成さず、崩れた麻袋から土がこぼれ落ちているのを観察できるのみだ。
「さて、ここらの勢力争いについては詳しくないが、色々と情勢が忙しいようだね……」
 横転しスクラップとなった鬼楽製の丸っこい戦車『マスラオ』を盾にしつつ、鉄臭い履帯に背をつける『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
「ここで何が出来るか……いや、今や明白かな」
 できれば魔種であり最重要目標である不動を落としたいが、そのためにはあの『フルフェイスの重火器兵たち』が邪魔だ。それに、彼らの打ち出す弾幕が纏う七色の微光が気になる。
「屍兵を出してこないかわりに、異なる精鋭、ね……」
 ゼフィラはぽんと魔術のこもった手榴弾を戦車越しに放り出すと、その爆発に気を取られた敵兵の隙を突いて横から飛び出し魔術を行使した。
「流石にキツイね、これは……回復が必要なものは言ってくれ! 一旦立て直しに回る!」
 が、それすらも囮であった。
 ゆらり――と物陰から現れた鏡(p3p008705)が抜刀。
「斬らせてください。
 殺されてください。
 私を、感じさせてください」
 囁き声がわかった頃には、七色兵たちは彼女の居合い斬りによって胴体や首、肩や足首を切断され地面に転がっていた。
 常人と異なりそれでも動くことができたが、反撃が一切できないくらいに追い打ちをかけて切り刻んでいく。
 腕や足をぶつ切りにした程度では肉がもごもごと動いて再接合を始めようとする。なのでいっそのこと各部位を数センチ角までざくざく切り刻んでみた。流石にそこまでバラされると再生ができないようで、彼らは肉と黒い血の山となりはてる。
 アンデッド兵ではないはずだが、異常な再生能力だ。
「戦争はいいですよねぇ、表では血が流れ裏では謀が溢れる。
 生き汚さと純粋な願いが共に輝く。
 私、そういうのも大好きですぅ」
 わざと考えを口に出してぺろりと下唇をなめる鏡。
 七色兵たちが追加され、軍刀を抜く。
 それも三人一度に、常人ではありえない速度とパワーで斬りかか――ろうとした瞬間、三体がほぼ同時に反転、同じ方向をむいて剣を放った。
 キキン、という音をたてておちたのは切断された銃弾である。
「わ~、つよ~」
 『魔種の回し者』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)が二丁拳銃を構え、ローブの下でニヤァっと笑う。
 甘ったるいハニースナックのような声で。
「新鮮な魔種と精鋭部隊~? ボクこういうのと遊んでみたかったんだよね~」
 細かいことはどうでもいいし~、とつぶやいて両手に握った拳銃を撃ち尽くし、マガジンを乱暴に滑り落とす。自然にスライドしておちる動きに合わせて振り落とし、腰から突き出すようにしてセットしておいたマガジンを直接銃を持っていくようにして装填する。
 と同時に、彼女の背負っていたバックパックから射撃ドローンが複数体出現。一斉射撃を開始した。
 ケタケタと笑うリコリスと七色兵による真正面からの激しい打ち合いが始まり、不動への道が開かれる。
 リコリスのドローンと鏡の剣、そして回り込んだゼフィラの魔術が不動へ食い込む――が、不動はそれを剛剣一閃でなぎ払ってしまった。
 破壊され墜ちるドローン。
 と、美少年の首。
「やはりここは、真打ち登場といったところかな」
 首を拾いあげた美少年――『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は自分の胴体にそれを再び据え付けた。
「それにそこの兵隊たち……悪魔と契約でもしたかな? ボクほどのものには見えないけれど」
 セレマの堂々とした立ち姿に、不動はぴたりと動きを止める。
「我こそは不動 界善。鳳王様の剣である。名を、そして目的を聞こうか」
「……」
 おしえてあげない、という選択はセレマにあった。だがそれだけ侮れる敵だろうか。まるで絶対者のごとき力をもっていたはずのセレマは、今はそうではない。
 仮に力こそ正義であり、力を持つ者は何をしてもいいのだとしたら、自分と同等かそれ以上の力をもつものには相応の警戒と、あるいは敬意をもつべきだろうか。
 セレマは美しく胸に手を当て、舞台役者のように頭を下げた。
「ボクの名はセレマ オード クロウリー。目的は……そうだね、伝説を作りに来た、ってところかな」
 役者を紹介するよ。そう言って指を鳴らすと、砂煙の向こうから世にも美しい『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が現れた。
 美少女&美少年。
 あまりにも芸術的な造形をした二人の立ち姿に、不動は思わず見入ってしまう。
 立てた人差し指に煌めきが宿り、軌跡に虹がかかる。
 百合子は虹で『天魔覆滅』という文字を器用にも描き出すと、最後にビッと斜め上に指をはねあげる。
「吾が根城、ヴィーザルにおこる動乱を見過ごすことはできぬ。
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子――義によって助太刀する」
「結構」
 セレマは人差し指を唇に立てると、『行くよ』といって走り出した。
 剣に必殺の光を宿して斬りかかろうとする不動。その判断は正しい――が、それに備えないセレマではない。素早く放った美少年の輝きが不動から必殺の光を祓い去った。
 と同時に美少女の煌めきを纏い側面へ回り込んだ百合子の拳が不動の顔側面をとらえる。
 吹き飛びそうになる不動だが、しかし無理矢理それをこらえた。
 剣による回転斬り。なんの技も乗っていないにもかかわらず強引に繰り出されたそれに、セレマと百合子は逆に吹き飛ばされた。
 ガード姿勢で地面を後ろ向きに滑る百合子。
「美少年力で技を封じたはず」
「ということは、素であのスペックということかな。あと封じたのは美少年力じゃなくて――」
「もう一度撃てるか、あの美少年力を!」
「…………無駄だろうね。同じ手を何度もループさせるほど馬鹿には見えない。ボクが相手なら秒で対策する」
 怒りの付与や回復支援による百合子の特攻も、通じるとは思えない。
 が、『それに備えないセレマではない』。
「ボクが先にぶっ倒れても――」
「――無論、この拳潰れるまで……否、潰れても尚撃ち込もう」
 百合子は美少女構えをとった。
 逆さにした手を自らの頬へ回すように、同時にもう一方の手を普通に頬をあて陰陽のような柔軟なる『ねじれ』を生み出し、足のくねりと合わせてあまりにも芸術的なうねりの立ち姿を作り出した。美少女構え陰陽血煙の型である。
 対するセレマもまた自らの上着を胸元から引きちぎるように剥ぎ取り、大きく開いた手を突きだし空いた手を自らの胸元へそっと触れるように当てる。
 美少女と美少年。剛と柔を並べる、しかし性質は全く逆の構えだ。
 そのあまりの美しさと隙のなさに、不動は油断なく……しかしまっすぐに突っ込んだ。
 対して突撃で返す二人。
 セレマは自らを前に出し、不動の頭を抱こうとするかのように両手を伸ばした。
 寸前で気を張り巡らしセレマの美少年封印術を破壊、解除する不動。突き出した必殺の剣がセレマを貫く――が、それを『備えていた』セレマはにっこりと笑って不動の顔を両手で挟んだ。
「チェックメイトだ」
 その瞬間。鏡やゼフィラやリコリスの攻撃が一点集中。更に残存していた鬼楽兵たちの砲撃が集中する。セレマごと巻き込んだ爆発――のど真ん中を拳を突き出した姿勢の百合子が突き抜けていく。
 どういう物理法則か、彼女の後ろには胴体にぽっかりと大穴をあけたセレマと不動の姿があった。
「ぐ、ふ――見事なり」
 不動は血を吐き、そしてトドメの一撃――として百合子が手刀を首に撃ち込もうとした瞬間に、スンッと彼の体が地面に沈んだ。
 否。足下に現れた巨大な鏡に吸い込まれるように消えたのだ。
 取り逃がした?
 否、強引に持ち去られたのだ。
 だが戦況はこれによって決定した。
 鬼楽は鳳圏の最終防衛ラインを突破し、ついに本国への突入が可能になったのだ。

 しかし。
「待った、俺だ!」
 鳳圏側からバイクにのって現れたのは『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)だった。
 他にも大勢の兵士を引き連れてはいるが、彼らはこちらに攻撃するような意志をみせなかった。
 それでも思わず身構えてしまう鬼楽兵たちに、『天狗』河鳲 響子(p3p006543)がバイクから降りて両手をあげながら歩み寄る。
 『あの子は……』とつぶやく鬼楽兵たちの声には好意的な色があった。
「今の鳳圏は危険です。いまあの国は、魔鏡の魔女と鳳王によって封鎖され魔都と化しています」
「だろう、ね」
 セレマはまるでそのことがはじめから予見できていたかのように頷いて、崩れ落ちた。
 サッとその体を抱きとめる百合子。
「どういうことだ?」
 振り返って問いかける百合子に、響子は頷いて続けた。
「鳳王、そして魔鏡の魔女は繋がっていたのです。鳳王は終わりなき戦争のため、魔女は永遠の美しさのため、互いの利益を永続させるために『戦争を作り出していた』のです。
 そのことが分かった時には、街は屍兵と虹色の兵たちに占領されてしまいました。この兵たちを逃がせたのは……榛名大佐殿が時間を稼いでくださったためです」
 心配そうに振り返る響子。
 それまで殺し合っていたはずの鳳圏兵と鬼楽兵は互いに顔を見合わせ、そしてお互いのヘルメットを脱いだ。





 ――戦いは、ひとつの終わりを迎えた。
 ――そして、最後の戦いが幕を開ける。

 鬼楽にて眠りの呪いによって意識を失い、その魂までも囚われてしまった『巫女王』蒼華。
 戦争を終わらせるために暗躍し、そして多くの兵を国の外へ逃がすべく囚われの身となった榛名 慶一大佐。
 そして真なる平和を手にするために戦うことを決めた伎庸の兵達。

 鳳圏という国を舞台に、最後の戦いが始まろうとしている。

成否

成功

MVP

セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

状態異常

なし

あとがき

 任務完了。
 各陣営の状況を報告します。

・伎庸
 伎庸市民の多くが民兵化し、ローレットへの協力を約束しました。
 一部鳳圏市民もそれに加わり、伎庸連合軍が結成されました。
 無黒木は意識不明のまま伎庸の施設に入院&収監されています。
 今回の悲劇を生んだ張本人である鳳王へ挑むべく、伎庸軍は侵攻を開始。と同時に鬼楽&鳳圏側に派遣していたローレット・イレギュラーズと合流。情報の共有が行われつつあります。

・鬼楽
 『鏡』の正体が魔鏡の魔女であり、その性質が魔種であることが判明しました。
 魔女によって召喚された英雄屍兵たちの対処に国内の精鋭たちはリソースをさかれており、鳳圏へ侵攻できる人員は対不動戦で生き残った(あるいは軽傷で済んだ)兵士とフットワークの軽いローレット・イレギュラーズのみとなっています。
 また、女王を救うためには魔女のもつ鏡を奪う、あるいは魔女を倒す必要があると判明しています。

・鳳圏
 反鳳王派の勢力として、橘派閥をはじめ複数の集団を味方につけることに成功しました。
 しかしそれを察知した鳳王による『逆蜂起』が起こり反鳳王派の兵たちの一部は拘束、あるいは処刑されてしまいました。
 ただし殆どの反鳳王派兵力は榛名大佐が稼いだ隙によって国外へと離脱。現在榛名大佐が国内に取り残され、おそらくは囚われたものと思われます。

※追加情報
・長らく陸を離れ資源調査に出ていた鳳圏海軍のうち2つの隊及び2隻の軍艦が鳳王へのクーデターに参加を表明しました
・『フリームファクシの魔女』たちが鳳王へのクーデターに協力を表明しました

今回の参加者全員に以下の効果が与えれます

・共有プライズ【停戦の契約】
 鳳圏、鬼楽、加えて伎庸の残存勢力が共通の敵を持ったことで停戦を行いました。
 これによって、過去獲得したプライズにて『敵対組織の信用が得られなくなる』という効果が一時的に消滅します。
 代わりに、鳳王及び魔鏡の魔女を倒すために協力した相手は所属がどの国であっても十全な協力関係を結ぶことが可能になります。
 この効果は鳳王及び魔鏡の魔女を倒してから改めて講和交渉が行われるまで継続します。

●次回予告
 囚われた女王、そして榛名大佐。更には多くの仲間達。
 鉄壁によって閉ざされ無数の特殊屍兵たちによる魔都と化してしまった鳳圏。
 すべての元凶にして災厄である鳳王と魔女を倒すべく、三つの勢力は力を合わせた。
 集う輝きは闇を払うか。
 それとも闇に飲み込まれ、彼らの守ろうとした故郷は侵されてしまうのか。
 合流したローレット・イレギュラーズたちによる『さいごの戦い』が幕を開ける。
 次回鳳圏戦忌憚――戦火を見届けよ。

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