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シナリオ詳細

再現性東京2010:誓花のホワイトリリー

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 富めるときも貧しきも、病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かつまで――

 雨の気配も遠ざかる。高台から遠く見下ろす街並みは常と変わることはない。それでも、一度チャペルの鐘が響けば心が躍る。
 見下ろす街を覆うような深緑に、海を眺めることの出来るその場所は自然と共にあるようで。
 バルーンや花を飾った屋外には白き花々が笑みを浮かべ続ける。花の絨毯の上を歩むガーデンウェディング。
 白きチャペルの中には純白のバージンロードが存在して居た。開けた大窓の向こうには美しき海を望むことが出来る。
 こちらは蒼き花々を飾り、澄んだ海を思わせる穏やかな空間が広がっていた。天蓋で微笑んだステンドグラスから差し込んだ光が水面のように揺らぎ続ける。

 ――六月の花嫁は幸せになれるんだよ。

 遠い神話の頃を思い返すような。そんな迷信と笑うことなかれ。屹度、夢のような世界が広がっているのだから。
 美しき緑に鮮やかな海色。その何方もが祝福の鐘を響かせる。
 どうか、どうか。
 お幸せに――


 希望ヶ浜のとあるチャペルでイベントが行われるのだと『探偵助手』退紅・万葉 (p3n000171)は告げた。
「ジューンブライドに肖って、式場を上げて体験会をするそうなの。
 それで、希望ヶ浜の特待生さんや講師の皆にモデルをして欲しいみたいでね。ポスターや写真集にするみたいなのよ」
 ドレスの着用や模擬結婚式を行うことが出来る上に披露宴の食事を楽しむことも出来るらしい。
 友達同士で食事を楽しんだり、恋人同士で模擬結婚式を行ったり。勿論、ドレスの着用だけでも大歓迎だそうだ。
「料理だけでも良いんだ?」
「うん。料理も新しいメニューを作ってるみたいで、試食係ってかんじかな? ケーキも色々準備されるみたいなのよ」
 それなら参加しやすそうだと『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)は頷いた。
 模擬結婚式は本格的に参列者を募って行う事もできるらしい。
 広々とした花々を眺めることの出来るガーデンウェディングと海に面したチャペルで行う結婚式。その何方かを選べるというのだから至れり尽くせりだ。
「ドレスも沢山の種類があるの。あ、犬用もあったから先輩にも着せてみたわ! ね? 面白山高原先輩!」
「……わん」
 タキシードを着せられた面白山高原先輩とカラードレスを着せられて不機嫌そうな蛸地蔵くん。この際、可愛ければ良いの精神で万葉は選んだのだろう。
「にゃあ」
「ふふ、食事だけでも良いし、ドレスの試着だけでも良い。模擬結婚式で愛を誓うのだって素敵だわ!
 本格的な式をするなら私も見にいきたいし、ううん、けどケーキだって捨てがたいの! 犬猫用も準備してくれるそうだから」
「わん!」
「にゃあ!」
 面白山高原先輩と蛸地蔵くんも喜ばしそうだ。
 万葉は「最近はとっても大変だったでしょう? だから、少し気分転換をしてみてはどうかしら」と微笑んだ。
 天気予報は晴れ。当日は汗ばむ陽気になるでしょう。
 そんな晴天の空の下、どうぞ愛を誓ってはみませんか?

GMコメント

 日下部あやめと申します。何卒宜しくお願い致します。
 幸福なひとときを、あなたに。お食事だけでも大歓迎です。恋人同士、友人同士、勿論、お一人様でもどうぞご参加下さい。

●『六月』の花嫁
 ジューンブライド(June bride)に肖って行われる結婚式イベントです。
 希望ヶ浜のあるチャペル『ホワイトリリー』の無料イベントだそうです。記念写真も撮って下さいます。
 ドレスを着用したり模擬結婚式の様子を撮って貰いましょう。

(1)披露宴の料理の試食
 チャペル『ホワイトリリー』では披露宴用のコース料理メニューを新規に作成したそうです。
 その試食係を募集しています。フルコース+ケーキも何種類か。カクテルやジュースも御座います。
 料理は和洋中、さまざまに取りそろえていますし、ケーキは甘さ控えめのものからとても巨大なものまで。
 皆さんにモニターとして楽しんで貰うのが目的のようです。料理自慢の皆さんは新メニューをシェフに考案してみるのもどうでしょうか?

(2)衣裳試着会
 ドレスや着物、タキシードなどの試着を行う事ができます。模擬結婚式はしないけれど……と言う方も大歓迎です。
 貴女に似合うドレスを着用して見ませんか? お好みのものを着用して見るだけで普段と違った気分になれるかと思います。
 何着でも着用可能。aPhoneでの写真撮影もOKです。

(3)模擬結婚式
 その名の通り、模擬結婚式を行えます。
 ・緑豊かで白百合とバルーンを飾った白き花のバージンロードを行くガーデンウエディング
 ・真白のチャペルと天蓋のステンドグラス。青い花を飾った海に面したチャペルウエディング
 そのどちらかを選んで模擬結婚式が可能です。参列も自由。
 本格的な結婚式を楽しむことが出来ます。

 (1)、(2)、(3)のいずれかをお選びください。
 全ての選択肢に「こんなのがあればいいな」など現実的な範囲でしたら構いません。お好きに日常をお過ごしください。

●同行者や描写に関して・注意事項
・ご一緒に参加される方が居る場合は【同行者のIDと名前】か【グループ名】をプレイング冒頭にお願いします。
・暴力行為等は禁止させていただきます。他者を害する目的でのギフト・スキルの使用も禁止です。

●NPC
 (1)と(2)、及び(3)の参列に山田・雪風とエルピス、退紅・万葉(+ペットの犬の面白山高原先輩と猫の蛸地蔵くん)が参ります。お声かけがなければ出番はありません。
 何かございましたらお気軽にお声掛けください。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

  • 再現性東京2010:誓花のホワイトリリー完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年06月27日 22時30分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
武器商人(p3p001107)
闇之雲
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
リサ・ディーラング(p3p008016)
特異運命座標
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
十七女 藍(p3p008893)
希望ヶ浜学園の七不思議
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
泡沫の胸
暁 無黒(p3p009772)
No.696
フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)
百合花の騎士
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

サポートNPC一覧(3人)

山田・雪風(p3n000024)
サブカルチャー
エルピス(p3n000080)
聖女の殻
退紅・万葉(p3n000171)
探偵助手

リプレイ


「模擬結婚式……旦那様を造り即挙式できるよう白無垢を常に着るわたしのためのような催し物!
 ここはチャペルで旦那様と誓い合い……否ッ!」
 澄恋はふるりと首を振った。普段着が白無垢、プロの花嫁である彼女は周囲の皆を幸せにしてこそだとその心に火を灯す。
 淑やかな乙女とは思えぬ花嫁力を発揮して――日々の結婚準備で培ったブライダル知識を活かし案内役を担っていた。

「……して」
 無黒はわなわなと打ち震えていた。紹介されたチラシにはスイーツの情報が多く並んでいる。試食係を楽しみに胸を躍らせ人の波に寄ってきた。
 咲く花々は美しく、並んだドレスの中で無黒は端と気付く。周りにあるのはスイーツが並んだテーブルでは無く、衣裳棚や待合の椅子だけだ。
「どうして……。
 どうしてこうなったんすかあああああ!?」
 何か可笑しいなあとは思って居たのだ。華やぐ女性陣の声に首を捻りながらも、甘味巡りを楽しんでいて、つい。迷い込んでしまったその場所は。
「ここ待合室じゃなくて……試着会の会場じゃないっすかああああ! しかも女性側あああああ!」
 スタッフ達は彼に似合う花嫁衣装をセレクトしてくれる。メイクもばっちり仕上げれば愛らしい『花嫁さん』の出来上がりだ。
「これが……俺っすか……あれ、結構……イイんじゃないっすかね」
 自分に見惚れ、うっとりと微笑んだ無黒に「お写真も如何です?」と澄恋はそそくさとオススメしてみせる。
「一生に一度の晴れ舞台に着る相棒を探すのです、結婚式は式の前から始まっています。
 あ、雪風様! 写真集に載せるウェディングドレスを着てください、ほらシャキッとして!」
「澄恋さん、俺、男! ね!?」
「薔薇モチーフの白雪の如き一点物です。大きいリボンとかも髪につけてみますか? と〜っても似合ってますよっ!」
「ソレはあっちの世界の方――あ、待って、だめっ」
 慌てた様子の雪風にプロ花嫁の澄恋はにんまりと微笑んで、『女の子の憧れ』を作り上げるのだった。
「ふふふ、頭の良いゆーれーたる私は思いついたのですよ……。
 怪談に出て来そうな学生服を着てるから怖がられる、もっと華やかなドレスとか着れば怖がられないのでは、と!
 しかし、ここで問題が一つ……花嫁姿の動く死体って、この上なく縁起悪くない???
 こいつぁマズいですよ、うっかり他の人の撮影とかに映りこんだらお祝いムードが一気にホラーに!」
 希望ヶ浜学園の七不思議とも称される藍は逆転の発想でなるべく古い様式の白無垢を選んだ。過去なんて憶えて居ないけれど、『めっちゃ遠いご先祖様の霊』ならば縁起が良い幽霊として認識して貰えるはずと華美にならないように飾り立てる。
「今回は結婚式のイベントだね。ここでもアイドルらしく、一杯写真撮られちゃおうかな?
 ――ってわけで、まずは真っ白のウエディングドレスから! 万葉ちゃんも、早く行こうよ!」
「えっ!? ええ! 彼方さん! 一緒に撮りましょうね」
 ガーネットって呼んだ方が良いかしら、と揶揄い笑う万葉に彼方もお茶目な笑みを返す。アイドルとして『チェキイベント』もとっても大事なのだ。
 ウエディングの衣裳は多種多様。純白の次はカラードレスも、お手伝いしてくれた皆にはチェキでお礼をしておこう。
「試食会もいいっすけど、折角っすし今後着る事もないような奴も楽しんでみるっすかねー。
 周りに知り合いもいないっすし多少はっちゃけても問題ないはずっすし? とはいえいっぱいでどれが良いかどうかなんては分からないっすー」
 ドレスの種類の多さには目が回る。リサはふと、手に取ったのはレース少なめで生地の触り心地の良いドレスだった。
 色味も好ましい。試着を申し出ればスタッフ達は髪をセットアップして化粧を施してゆく。
「お、おぉ……これが私、っすか。いやー馬子にも衣裳って聞くっすけど、へへ……これで私も純白の花嫁さん、って感じっすかねー?」
 少し照れた表情で頬を書く。赤い糸は繋がっていないから、試着だけ。
 けれど、実際の場面なら――「……旦那様、今日という日を待っていました。とても、とても幸せ、です」
「……っは、なーんてガラじゃねぇっすねー。あっし、こういうキャラじゃないっすし今みたいな感じっすよねー」


 ジューンブライドの伝承は素敵ですねとリンディスは微笑んだ。モデルの仕事を承ろうかと自身らで衣装を選ぶコンセプトを確認してからマルクはひらりと手を振った。
「……ドレス、ですか」
 リンディスはあまりドレスには慣れていない。装飾は多くなくシンプルに。エンパイアラインですらりとした白いドレス。
 ヴェールは豪華に。キャスケードブーケを手にして、シンプルながらも大人びた雰囲気に仕上げてゆく。
 帯するマルクは黒系統のスリーピースをセレクトしていた。シャツは白、立衿にボウタイを。フロックコートで花嫁を引き立てるようにと考えて。
「お、お待たせしました!」
 慌てて近寄ってきたリンディスにマルクは「お手を」と恭しく差し出した。見とれてしまって、気の利いた言葉は言えないけれど――「リンディスさん」と呼べば、彼女はぱちりと瞬いてから笑う。
「かっこいい、ですねえ」
「リンディスさんも、綺麗だよ」
 やっとの事で伝えた言葉に彼女は「良かった」と安心したように微笑んだ。
「……ここで未来を契る皆さんは、こんな思いなのでしょうか。お互いの誓いの装束で、今だけは、真似させてください」
 そんな彼女に「リンディスさんはきっと、誰もから祝福される花嫁になれるよ」とマルクは微笑んだ。その時、隣に居るのが僕なら――言う事はできなくても、想像だけなら今日という日だけ許していて。
(今日来た皆さんと、マルクさんも幸せでありますように――)
 撮った写真を本に挟み込んで、大切な一日を忘れない様に、と目を伏せて。

「エルピスも試着してみるのはどうかな? 貴重な機会だし一緒に写真を撮って貰おう!」
 ルーキスにとっては大陸と神威神楽の違いを楽しむ機械であった。試着した白いタキシード。純白に身を包んで暫く『待ち』の時間を過ごす。
 エルピスには屹度、純白が似合う。そう思いながら、平静を装って待ちを続ければ――「ルーキスさん」と呼び掛ける声に肩が跳ねた。
「エル、ピ――」
「その……似合わない、でしょうか」
 そんなこと無いと首を振る。滲んだ綺麗だの言葉を口に出来ないまま、記念撮影をしようかと手を差し伸べた。
「エルピスは、その……け、結婚に憧れとかあったりするの?」
 ルーキスを見上げて、エルピスはぎこちない笑みを浮かべた。恋をして、破れて、名を与えられた自分は――「……屹度、遠い世界のこと、だと」
 彼女の心中を察してから、ルーキスは唇を噛んだ。心は未だ、傷んでいるのだろうか。

「アリス……ウェディングドレス……着る……可愛いの……ノルンは……タキシード……かな……?」
 こてりと首を傾げたアリスにノルンは子供サイズのタキシードを着用して来ると席を立つ。
 アリスが選んだのは可愛らしいドレスだった。ノルンを待つ時間も楽しくて。
(結婚式いいな……えへへ……アリスもいつか……女の子と……でも……ノルンばっか……見ちゃう…なんでだろ……?)
 友達にどきどきしてしまうのは何だか不思議な心地。ふわふわとした心を揺らがせたまま、アリスは呼び掛けにぱちりと瞬いた。
「わぁ……! とても綺麗で、素敵です! 思わず見惚れてしまいました!」
「ノルンも……かっこいい……よ……。良く似合ってる……」
 屹度、彼は照れるのだ。そう思って口にした言葉にノルンはぱちりと大きな紅玉の眸を瞬かせてから照れくさそうに頬を書いた。
「え、えへへ……なんだか、落ち着かなくて……服に着られるって、こういうことなのでしょうか……」 
「えへ……かっこいい服着ても……そういうところは……変わらない……ね……そうだ、aPhone持って来た…から……写真撮ろ……二人で!」
 傍らのアリスを見るだけで胸が高鳴って、ノルンの頬は赤くなる。二人で撮影した写真の中で、赤らめた頬は苹果のように熟れていた。

「雪風さんに、ウェディングドレスを試着したいので一緒に来てくれまませんか?」
「え、俺で良いの?」
「は、はい。ドレスを着た姿を雪風さんに見てもらいたいから! 雪風さんもタキシードでもドレスでも一緒に試着どうですか?」
 ドレスを着用済みの雪風は「女の子のドレスって良いよね」と微笑んだ。彼に出来れば可愛いね、とどきりとしてほしくて。
 オフショルダーでAラインのウエディングドレスを試着して、何時もより胸元を強調して、「どうでしょう」と囁いて。
「自称魔法少女ですけど、ちゃんと大人の色気だって身に付いてきてるんですよ?」
「あはは、リディアさんは可愛い、でもいいよ? よく似合ってると思う」
 にんまりと微笑んだ雪風にリディアはにっこりと微笑んだ。「雪風さんも似合ってますよ」と褒めれば彼は記念撮影! と慌てたように叫んだのだった。

「どの服装も似合いそうですね。エルピスは、シンプルな方が好きでしょうか? それとも、可愛らしく?」
 雪之丞にエルピスは「雪さんに、お任せ……したいかもです」と緊張したようにドレスを眺めて居る。
 女の子同士となれば、チョイスにも変化が出てくる。こうした場所には縁が無いという雪之丞は「色々見て回りましょうか」と微笑んだ。
 派手すぎないものから、と選んで一枚一枚、感想を言い合って。試着した物はちゃんと写真に残すのだ。
「少し、大人っぽいでしょうか」
「いいえ、それもとても素敵です。あ……あの、雪さんは、和装? ですよね。あの、わたしも」
 雪さんと同じようなものを、とねだるような彼女に雪之丞は大きく頷いた。
 少し大人びたドレスの雪之丞と白無垢のエルピスで。普段とは『反対』を身に纏って身を寄せて撮影を。
「――自撮り、というらしいです。聞いてから、一度、エルピスと撮影してみたいと思ったので」

「結婚ですか、そんなもの全く興味ありませんわ!
 ……ありませんけれど、少しぐらい覗いてみても良さそうですわね……」
 フィリーネは折角なら着物を着てみたいと試着室で和装を見て回る。レガド・イルシオンの出身であるフィリーネにとって、神威神楽のような絢爛な装いは余り見慣れぬものなのだ。
「こちらの着物というものを試着いたしますわ」
 選んだのは色打掛。シンプルな白無垢も素晴らしいが、美しい銀髪を持つ彼女には柄を飾ってあげた方が普段の装いとの違いが出るであろうというスタッフの気遣いだ。
 高潔なるヴァレンティーヌの令嬢は試着室で見様見真似――とも行かず、係の着付けに身を任せる。
「意外とわたくしにも着物は似合うかもしれませんわね」
 aPhoneで撮影してみれば、今日の思い出が飾られる。心を踊らせて、外に出てみればガーデンウェディングが行われていた。
 その様子を茫と眺めるフィリーネは「わたくしは結婚を――」と口にしてから言い淀んだ。
 しようと思えば出来る。けれど、それが自身の幸せになるのかは分からなくて。只、澄んだ空の下で関係ないと呟いて。


「六月の花嫁のイベントです! いろいろやってるのですよ! でもどこに行こうか悩むのでして……
 ……うん、とりあえずいろんな場所に行って思い出に残すのですよ! そのためのaPhone! なのでしてー!」
 煌めくのはピンクダイヤモンドの眸。ルシアはaPhoneを握りしめ、ふんわりとしたブロンドを揺らす。
 ドレスやチャペルを見て回るのも楽しかった。その中でも何より彼女の興味を引いたのは『美味しそうな匂い』なのである。
「……あれ、なんだかいい匂いがするのですよ? 披露宴の料理の試食会です! たくさんの種類の料理があるのですよ
 新メニュー考案もあるのでして! ……新しいアイデアのために試食会、行ってくるのです!」
 料理や呈茶の技術を活かして作り上げるのは茶葉を練り込んだ紅茶のシフォンケーキ。ふんわりと焼き上げればレストランスタッフが生クリームを添えてくれた。
「結婚式……結婚……ニルはまだよく、結婚のことわからないのですけど、結婚式ってはじめてなので、とっても気になります」
 こてん、と首を傾いだニルの傍らで万葉は「なら、色々見て回りましょうね」と微笑んだ。
「ごちそうがいっぱい! これは結婚のお祝いのごはんなのですね。ウェディングケーキっておっきいのですね……」
 驚くほどの大きさ。ケーキ入刀は『はじめての共同作業』と呼ばれる事を伝えれば見てみたいとニルの眸はきらりと輝いた。
「面白山高原先輩と蛸地蔵くんもケーキ食べれるのですか? ニルたちのとはちょっと違うけど、おそろいのケーキ?
 ……じゃあ、みんなみんな、一緒にお祝いできるのですね」
「そうなのよ。わんちゃんやねこちゃんにも特別なの。ニルさんも一緒にお祝いしようね!」
 微笑んだ万葉に「はい!」とニルは面白山高原先輩や蛸地蔵くんに微笑みかけるのでした。
「えへへ、ドレスの試着も興味はあったけど、花丸ちゃんって言ったらやっぱりご飯だよねっ! フルコースにケーキも食べられるって事なら尚更にっ!」
 お腹をくうと鳴らした花丸の隣でくすりと笑みを浮かべたエルピスは「おなか、すきますね」と微笑んだ。
「美味しいご飯は皆で食べるともっと美味しいしねっ!」
「そうね! ね、ね、花丸さんは何を食べる?」
 身を乗り出した万葉に「あの大きなケーキ……ウェディングケーキだよね? 大きいなー、それにすっごいお洒落だし」と返した花丸は思いついたように眸をきらりと輝かせる。
「あ、あれも食べて大丈夫なんだよね? 後で何か言われたりしないよね!?」
「い、言われないと、思います」
「先輩達には別のケーキ用意して貰って入刀してみる!?」
 薔薇やクリームの飾られたウエディングケーキ。眺めてから、楽しげに笑った万葉に花丸は「ケーキ入刀!」と堂々と宣言したのだった。

 清純なる白百合が揺れるその場所で夫婦の誓いを契れば幸福になれるのだという。
 流石は練達だと感心するリュティスをテーブルへとエスコートしたベネディクトはどうだろうか、と微笑みかける。
「今日は披露宴の料理の試食を行っていてな。リュティスも興味があるだろうと思ったんだが」
「確かに興味はありますね。お誘い頂き、ありがとうございます」
 学びの場所になる筈だ、と。頷くリュティスの足下でポメ太郎が尾をゆらりゆらりと揺らしている。
「犬用のケーキもあるらしい。少しなら構わないだろう? リュティス」
「……たまのご褒美くらいあげても良いでしょうか? ずっとダイエットばかりですと可愛そうですし」
 ぴん、と尾が立ち上がり『本当ですか?』と眸がきらりと輝いた――気がする。ベネディクトは早速と少しずつ多くの種類の試食に向かう。
 リュティスはと言えばシェフとのメニュー交換を念頭に、ベネディクトの動向を確認していた。彼の好む物は従者としてチェックしておくべきだからだ。
「美味いな、悪くない。この旬の野菜を使った皿は気に入ったよ」
 微笑んだベネディクトに頷くリュティス――その傍らを離れてゆくポメ太郎は面白山高原先輩を見つけて「先輩!」と駆け寄った。
 可愛らしい衣裳に身を包んだ面白山高原先輩と蛸地蔵くん。「どうしたポメ太郎」「なんにゃ」と問い掛けてくれる二匹がポメ太郎は大好きだった。
「わん!」
 ――万葉にはこんにちはと言っているような気がした。「こんにちは」と微笑んでおててをちょこりと握る万葉は「ポメさん、ベネディクトさんが呼んでるみたいよ?」と指さして。
 折角の記念だからチャペルを背景に二人と一匹で写真が撮りたい。そう微笑んだベネディクトにポメ太郎は「後で先輩とお写真を!」と懇願したのだった。
「ありがとう、これで思い出が一つ出来たな」


「会長はね、牧師やりたい! やっぱりいつか羽衣教会が練達の冠婚葬祭を担うようになった時のために練習しとかないとだしね!」
 えへんと、胸を張った茄子子にとって羽衣協会が練達の冠婚葬祭を担う日は近い気がしてきた。
 教義から言葉を引用して『良い感じ』に挙式で使えるように心がけよう。
 そう、例えば――
「病める時も、健やかなる時も、互いが互いの片翼となり、死が二人を分かてても、再び相見えるまで傍に寄り添い、共に天へと至ることを誓いますか?」
 まだまだ結婚は考えていないから。取り敢えずは皆を祝っていたいのだ。

 スピネルの手をぎゅうと握ってからルビーは「えへ-」と照れた笑いを滲ませた。
 結婚式は参加したことがないから、そう告げれば「ルビーが良ければ言ってみよう」とスピネルは微笑んだ。
 再会したばかりで少し気恥ずかしい。指環の位置はまだ違う位置だから――まだまだ遣ることは沢山あるのだとスピネルは決意するようにルビーと共に式場を訪れた。
「あ、万葉さん。無事に再会することが出来たよ」
「良かった! あれ? ルビーさんは参列者なの? 折角なら模擬結婚式をしてみたりとか」
 どうかしら、と微笑んだ万葉にルビーは中指に嵌めた白詰め草の指環を見せてから「まだまだ早いから、今は他の人のを見て学ぶの」と微笑んだ。
 折角のウェディングドレスなら、本番に着てみたい。「それより、万葉さんはどうなの?」と揶揄うように声掛ければ、万葉は「私は、誰も相手が居ないのよねえ」と少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「俺と章殿は永らく共にいるが実は式を挙げたことは無いんだ。
 まあ硝子の匣で眠っていた章殿を連れ出して以来連れ回してるから式を挙げる概念が無かったんだが……故に模擬とはいえ式を挙げられる機会を得られたのはこの上ない幸せだ」
 そう微笑んだ鬼灯に「女の子の夢よ?」と章はくすくすと微笑んだ。お人形サイズのドレスも折角ならばとスタッフが用意してくれた。
 旦那様にも是非に、と着用を奨められた白のタキシードは落ち着かないが、章が喜んでくれるならそれでいい。
「ねえ、鬼灯くん。綺麗な場所ねぇ」
 白百合も好きならば、帰ったら君との庭園に植えよう。薔薇の花と百合の花。美しい、君の好きな物ばかり。
「――いつか本当の式が挙げられたらいいな、章殿」

「模擬、お遊び、結婚ごっこ。それなら小鳥も怖くない」
 ――なんて、そんなことを考えて依頼を引受けた武器商人の予想とは違って、ヨタカの勇気は十分だった。
 番になりたいと涙した夜から一年と少しだけ。ずっと隣を歩んでくれる保証なんてないから――大切な月が他の誰かを選ぶ日が来るかも、と。
 そう思っては沈んでしまう。そんな思いが式を挙げるのさえ恐ろしかったのに。
「ヨタカ」
 アドラーの呼び掛けにヨタカの方がびくりと跳ねた。模擬の結婚式と言えどもヨタカにとっては大切な。
 息子のラスヴェートにも合わせたいと告げれば、アドラーは真顔ではあるが何処か嬉しそうに目を細めて。
 武器商人は見栄えが良いだろうと白いウエディングドレスに身を包んでいた。そんな麗しの月を見る度にヨタカは歓びに溢れる。
「愛する俺の月、あの夜からもう随分日が経ってしまったね……。
 これからの人生、ずっと君の事を大切にするから……もう一度キミに言う……俺と結婚して下さい」
 跪いて、その細い指に結婚指輪を。ヨタカに父アドラーは気が向けばアストラルノヴァの紋章を恋人に授けなさいと祝福の言葉の代わりに告げたのだという。
 指環なんて、想像していなかったから。きょとん、としてしまったけれどと武器商人は笑みを零して。
「……怖くなくなったんだァ。愛する我(アタシ)の小鳥、可愛いヨタカ。おまえの時間を全部、我(アタシ)にちょうだい」
 ぜんぶ、ぜんぶ、あげる。
 そんな様子をラスヴェートは嬉しそうに見守っていた。
「どうだろうラスヴェート。このドレス、似合っているかな?」
 頷く小さな可愛い子。「アストラルノヴァ公」と武器商人は向き直って共に写真をと乞うた。皆揃って撮った写真は愛しの小鳥に素晴らしい勇気を与えるだろうから――


「披露宴といえばウェディングケーキ! パティシエとしては一度は作ってみたいよね♪」
 ミルキィはすっごいウエディングドレスを提案してみると心を躍らせた。
「すごくでっかいケーキはもうあるみたいだし…アイスケーキなんてどうかな?
 アイスの上にメレンゲかけて、ブランデーでフランベしたら式場のムードもロマンチックなりそうだし、味もバッチリ!
 ちょっと試作品作ってくるからシェフに試食してもらおう♪」
 彼女の調理を見詰めていた万葉は「わあ、すごい。私も試食して良いかしら?」と楽しげに走ってゆく。
 折角ならば皆で料理を楽しみたいものだ。

「おじさま! おっきなけーきがある! あれ食べたい!」
 ぐんと身を乗り出したルアナに「あれはウェディングケーキでは……いや、あれも試食可能なのか」とグレイシアはまじまじと見遣る。
 スタッフに問い掛ければ切り分けましょうかと準備を整えてくれている。希望すればケーキ入刀も体験する事が可能なのだそうだ。
「ウエディングケーキってなぁに?」
「ふむ…大事なお祝いをする時に用意されるケーキ……と言ってわかるだろうか?」
 少女にとってそれは『お祝いのケーキ』という認識となって。グレイシアはケーキを楽しみにしているのだろうかとルアナの横顔を見遣るが――
「お祝い用のケーキだからこんなおっきくて、豪華なんだ……っと。ケーキより先にご飯食べたほうがいい?」
 ああ、何時もおやつは夕飯が食べられなくなる事を注意していたからか、その効果が感じられて『親心』に歓びが溢れる。
「そうだな、まずはご飯を試してみよう」
 頷き、食事を撮りに行くグレイシアの背中を眺めながらルアナは取り分ける皿をぎゅうと掴んだ。
(結婚式で何するかは知らないけど、結婚は知ってるんだよ? ……おじさまは何も言わないから聞かないし聞けないけど)
 彼が結婚について語らないのは、昔そうした誓いを交したのだろうか。ルアナは少しばかりの『もやもや』を飲み込むように食事を口内に放り込んだ。

「模擬結婚式をしたいのは、やまやまですけれど……そんなことをしたら、それで満足してやしまわないかと、心配ですの。
 ですので……おたのしみは、また今度、きょうは、お料理の下見に、きましたの」
「ぶはははっ、俺としちゃノリアの綺麗なドレス姿も見てみてぇけどな!」
 優しい彼の言葉にノリアは目を伏せた。そんなゴリョウが大好きで、一緒に料理を見にいくだけでも嬉しいのだ。
 並んだ料理を見下ろしながら、確認するゴリョウの袖をノリアはおずおずと引っ張った。
「ゴリョウさん……これら、お作りには、なれますでしょうか……?
 わたしには、ゴリョウさんの作った、ゴリョウさんのお米を使った料理が、いちばんですから……結婚式の料理も、そうだとうれしいですの」
「作れるかどうかなら、作れるな。なるほど、うちの米を売り込むにも丁度良さそうだ」
 にい、と微笑んだゴリョウは披露宴に『クッキングパフォーマンス』を売り込むと準備を始めた。
 オススメはグリルパフォーマンスだ。鉄板で肉や野菜をダイナミックに焼くことで五感全てが楽しめる。
 肉類はフランベで焔を揚げて、炒飯でぱらりと米粒を回せてみたり。
 女性陣にはスピニングボウルサラダもオススメだった。高速回転するボウルは目を引く、見た目に美しく味付けにムラもない。
 冷やしながら合えることで得られる野菜の食感も良い。米を入れれば洋風ちらし寿司も出来ると宣伝する彼の姿をノリアは微笑ましく見て居た。
 新郎がそんな風にパフォーマンスをするのは如何だろう? 屹度、とっても特別な日ができあがりそうだ。

 花嫁衣装はノーサンキュー。式場に相応しいパーティードレスは清潔な青地。イーリンは傍らのウィズィをそっと見遣った。
「ノリアが言ってたのよね、自分たちはいつ死ぬかわからない。だから今、式をするんだって」
 皿の上に山ほど積み上げた肉の数々。野菜も食べなさいとサラダを取り分けたウィズィは「いつ死ぬか分からないから、か……」と呟いた。
 なりたい自分になれるあの魔法の夜に。二人で花嫁衣装に袖を通して。あの時のイーリンは目を伏せていた。
 見てはならない夢だと諦めるみたいに――まだ私と付き合い始める前の話、けれど。
 あの諦観は、屹度。

――救えなかった命がある。託された願いがある。過去に落としてきたものがある。だから私にとって、ウェディングドレスは届かない夢――

 寂しいことを言わないで、なんて言う事はできなかった。その横顔を見るだけで、そんな言葉引っ込んでしまったから。
 花嫁衣装をじっと見ている彼女の横顔が、愛おしい。
『私と並んで』、『私と同じ視線で』、『同じ夢を見ている』――それだけで、いつかを夢見てしまうのだ。
「一緒に着ようね、ウェディングドレス」
「……そうね、いつか、きっと」

 こうして私達は、愛を囁くの。
 こうして私達は、未来を誓うの。
 幸あれかしと。
 願いながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加有難う御座いました。
 どうか、皆様が祝福に毎日を送れますように。

 面白山高原先輩と蛸地蔵くんも沢山構って頂けて喜んでおります。

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