シナリオ詳細
<果ての迷宮>めでたし、めでたし
オープニング
●果ての迷宮
巨大地下迷宮《果ての迷宮》。その名前くらいは幻想を訪れた者、幻想に住んでいる者、他国でも幻想に興味がある者は知っているだろう。
これまで24層まで踏破されながら、未だに底の見えない大迷宮。各層での広さは勿論の事、深さも到底図り得ない。それは24層全てがまるで個々に異世界へ繋がっているかのような、迷宮らしからぬ空間であったからである。
時には宇宙のような光景が。
時には水中のような場所を。
時にはゲームセンターのような場所で。
新たな階層へ到達するたびに新たな側面(世界)を見せる迷宮。この場所を踏破することは初代幻想国王たる勇者王の悲願であり、幻想王侯貴族の義務となっている。
だがしかし、そんなお偉い様方が遺跡へ乗り込み、踏破を目指すなど出来る訳がない。意欲があっても周りが許さないだろう。そのため彼らが認めた冒険者を名代として、『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)が果ての迷宮へ率いて行くという仕組みなのである。
王侯貴族たちは冒険者のスポンサーとなり、貢献度で互いに競い合っている。今のところは幻想国王たる『放蕩王』フォルデルマン(p3n000089)と『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロート(p3n000039)がにらみ合い、そこへ『遊楽伯爵』ガブリエル・ロウ・バルツァーレク(p3n000077)が追随、後ろを『黄金双竜』レイガルテ・フォン・フィッツバルディ(p3n000091)や諸勢力が追いかけているといった様相である。
まあ、そんな貴族たちの思惑も気にせぬ冒険者は少なくない。《果ての迷宮》事態に興味がある者、特にその階層に興味を持った者、或いは物珍しさに手を挙げる者まで様々である。
そんな彼らが向かう次の『24層』とは――。
●24層
「森、だわいね」
ペリカとイレギュラーズたちは開けた視界に辺りへ視線を巡らせる。木々の広がるそこは何処からどう見ても『森』である。こんな場所に扉だけが建っている様は何とも違和感を感じさせた。
「此処からどう進むわいね? 近くには何にもなさそうだし……」
『やあ!』
『やあ!』
再び視線を巡らせたペリカ。その耳に高い声がふたつ飛び込んでくる。それはイレギュラーズも同様で、11人はどこからかと視線を走らせた。
『こっち、こっち!』
『あー、これ見えてないよ』
『見えないの? 見えるようにしなくちゃ!』
右、左、前、後ろ。あちこちから次々と声が聞こえてきたかと思えば、それらはペリカの目と鼻の先でぽんっと音を立てた。
「わひゃあっ!」
『やあやあ!』
『これで見えるかな?』
そこに現れた2つの光は面白可笑しく宙を跳ね、イレギュラーズの周りをくるくると回る。その声と様子は無邪気な幼子のようだ。
『ようこそこの階層へ!』
『それじゃあ、ちゃんと【めでたし、めでたし】で終われるように頑張って! じゃないとストーリーテラーには会えないよ!』
「めでたし、めでたし……? そのストーリーテラーがフロアボスっぽいけど……」
ペリカが首をひねる。その言葉は話の最後――特に御伽噺などの締めくくりに使われる言葉である。この階層は御伽噺の世界なのか、とイレギュラーズが問うと光たちは楽し気に跳ねた。
『せいかーい!』
『さあさあ、御伽噺を始めよう――【むかしむかし、あるところにおんなのこがいました。】』
光が歌うように告げて、あちらを見てご覧とイレギュラーズたちに示す。言われるがままに見ると、そこには森を歩く赤いワンピースの女の子がいた。
「皆、気を付けて。分かってると思うけれど、絶対に何か起こるわい」
ペリカがイレギュラーズへそう言うと光たちはまたきゃらきゃらきゃら、と笑った。
『君たちが頑張るのなら』
『君たちがまもるのなら』
『あのおんなのこは』
『ハッピーエンドを迎えられるさ』
『その前に、我慢できなくなったストーリーテラーがやってくるかもしれないけれど!』
『さあ頑張って! 【めでたし、めでたし】が君たちを待ってるよ!』
●赤いワンピースをきた女の子
むかしむかし、あるところにおんなのこがいました。
おんなのこはおばあさんにもらった、赤色のワンピースがお気に入りでした。それを着ていくとおばあさんも喜んでくれたから、ワンピースはおばあさんへ会いに行くときのおでかけ着となっていました。
おんなのこはその日もワンピースを着て、森を歩いていました。手に持っているのはサンドイッチとワインを入れたバスケット。森の家に住んでいるおばあさんへ会いに行くために、おんなのこは家へ向かってまっすぐ歩いていました。
その足がふととまります。木のかげに隠れたおんなのこは、その先にいる怪しい人たちの様子を伺いました。どうやら盗賊のようです。
気づかれないうちに離れてしまおう。そう考えたおんなのこの耳に盗賊たちの言葉が聞こえます。
「この辺りには人食い狼が出るらしい。そろそろ場所を移した方が良さそうだ」
ひとくいオオカミですって!
おんなのこはそっと離れながらむねに手を当てました。心臓がドキドキしています。このままお家に、帰ってしまおうか?
けれど、おばあさんは今日をたのしみにしているでしょう。おんなのこがいかなければ、悲しんでしまいます。おんなのこは再び、おばあさんの家へと歩き出します。
どうか出会いませんようにと願いながら進むおんなのこは、道の途中できれいなお花畑を見つけました。
つんでいったら、おばあさんも喜んでくれるかもしれない。おんなのこは寄り道して、抱えきれるだけのお花をつんでいきます。お花を両腕で抱きしめると、赤いワンピースのすそがブーケを束ねるリボンのようです。
おんなのこはゴキゲンで進んでいきます。もう少しでおばあさんのお家です。
けれど、おんなのこはソレに気付いた瞬間ばさりと花々をおとしてしまいました。ひとくいオオカミが家の中のおばあさんを狙うように、家の周りをうろついていました。
とびらも窓もぴったりと閉じられていましたが、オオカミは知恵をつけたのか家のわきにつまれていた荷をよじのぼり、屋根へあがります。その姿が煙突のなかへ消えていこうという時、森を回っていた猟師があらわれます。
「おばあさんをたすけて!」
おんなのこから話を聞いた猟師は家のトビラをこじあけ、ひとくいオオカミをしとめます。
こうしておばあさんは助けられ、おんなのこと楽しいひと時をすごしたのでした。
めでたし、めでたし。
- <果ての迷宮>めでたし、めでたし完了
- GM名愁
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●
【むかしむかし――】
それは御伽噺が始まる合図。『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はその言葉によって現れた――或いは居たのに気付かなかっただけか――赤いワンピースの少女へ視線を向ける。
「【めでたし、めでたし】まで行かないといけないわいね」
「ああ。そうじゃないと先に進めない」
『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)に頷く『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。ふよふよと浮かぶ光たちの発言から察するに、その言葉で終わる結末へ持って行けなければ先の階層は開かないのだろう。そしてここは未だ最奥まで到達されたことのない果ての迷宮未踏破区域――御伽噺の終わりまで見守っておしまい、などと簡単なわけもない。
(フロアボスは気まぐれなストーリーテラーか……もったいぶらずにさっさと出てきてもらいたいが)
語り手の名を持つ相手はこの御伽噺を歪める力を持っているらしい。一同はその歪みを正し、主人公たるあの少女を守っていかなければならないと。
全くもって――そのような事、鍛冶屋であるサイズの専門外である。歪みなどと言ったものの修理は承っていないが、受けてしまったからには力を尽くさなければならないのがハイ・ルール。この先でセーブポイントを作るためにも頑張るしかないだろう。
(故郷の禁書架迷宮みたいなものだな)
この階層の概要を知った『もふりたい』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は記憶を手繰り寄せる。その言葉を呟いたならば、他のメンバーには崩れないバベルによってなんとなく、この階層と近しいものであるのだと伝わるだろう。
ただ異なることもある。この御伽噺は可逆性――元に戻る性質――を持っていることだ。御伽噺から逸脱させようとイレギュラーズたちがどれだけ働きかけようと、あの少女も、そしてこの先で登場する者たちも御伽噺通りに動こうとするはずである。
「歪んだ話を良い結末……いや、元の結末に導け、と」
『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は呟いてにやりと笑った。
果ての迷宮は各層が全く異なる様相であり、混沌世界とは別物にも思える。この階層もまた然りだろう。だが、世界を破滅から救わんとする使命は混沌世界でも、そしてこの階層でも変わらないらしい。むしろうってつけの課題ではないか。
「違和感のないようにしたいだわね。ここはもう御伽噺の中だもの」
少女にはまだ見つかっていない。それを確認した『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)はその身に宿る因子がより濃い姿へ――真っ白な美しい鳥の姿へと変える。これならば人間姿で話しかけるよりもずっと御伽噺らしいだろう。
(とっても好きなおとぎ話……ちゃんとその一部になれていればいいのだけれど)
最初は特段好き、というわけでもなかったけれど。神社で自分より小さな子らにせがまれて、読み聞かせてあげて。それを繰り返しているうちに愛着がわいて、好きになった。何度も読み聞かせた内容は諳んじられるほどだ。
そんな世界観の一端を担うのならば、もし登場人物になるのならば。御伽噺には人も出て来るけれど、動物や妖精……そんな人ならざるモノたちが普通にお喋りする方が多い気がするのだ。案内、道標といった役どころならば、特に。
「俺も行こう」
妖精の大きさとなったサイズも華蓮と共に少女の元へ。声をかけた2人に少女は目を丸くしながらも、見知らぬ存在に怯えるということはないようだ。
「まあ、綺麗な白鳥さんと……妖精さん? 初めて見たわ!」
「俺は森の妖精だ。確かにあまり人前へは出てこないけれど、人が嫌いなわけじゃない」
自らをカースドであると言うサイズは、どう名乗るべきかと頭をずっと捻らせていた。妖精女王として旅人がよく名を挙げる『ティターニア』などはあまりにも光に満ちた種であるが故に名乗りづらく、さりとて他の妖精をさほど知っているわけでもない。
故に無難な『森の妖精』を名乗ったが、果たしてこんな説明で納得してもらえるのか――と言うのは杞憂で、少女は「そうなのね」とあっさり頷いた。
(これで大丈夫なのか……? いや、変に探られるよりはいいんだが)
値もしれない、その存在を示すのが己の言葉しかないような妖精を信じてしまう彼女の警戒心が心配だ。本当に悪い者に気付けるなら良いのだが。
「私はラトマ。妖精さんと白鳥さんはなんて名前なの?」
赤いワンピースの少女――ラトマの問いにサイズと華蓮はそれぞれ答える。そして華蓮が同行を願い出ると、これもやはりあっさりとラトマは頷いた。
「もちろん! これからおばあさんへ会いに行くの、賑やかになっておばあさんもきっと嬉しいわ!」
「それはいい。このままだと疲れてしまうから、肩に乗せてもらっても?」
本当はさほど疲れるなんてこともないけれど、口実のため――そう告げたサイズをラトマは肩に乗せ、華蓮という名の白い鳥と共に歩き始める。3人は和やかに、森の話などをしながらおばあさんの家へ向かい始めたのだった。
「あなたは森の妖精で、鍛治の妖精でもあるの?」
「ああ。武器の修理……って言っても、ラトマさんは持ってないと思うけど。専門外でも多少の修理はできる筈だよ」
なんて自分の事も交えながら、この森にはこんな場所があるんだとさりげなく教えるサイズ。ラトマもおばあさんへ会いに行くため何度も通っているようで、中にはすでに知っている情報もあるようだ。
それを陰ながら見送ったその他一同は、それぞれの行動を開始する。全員が全員、ラトマについて行く必要はないのだ。むしろ歪みが発生すると知っているからこそ先回りができる。
「それじゃあ、預かるわね」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は汰磨羈と『闘技戦姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)から黒猫とファミリアーを預かり、空を見上げる。春らしくぽかぽかとした陽気だ。だが、そこに浮かぶいくつかの雲にイーリンは
目を細める。
汰磨羈のギフトで召喚されたこの黒猫は汰磨羈の体の上か、或いは影の上しか移動できない。雲がかかってしまったら消えてしまう可能性も視野に入れたほうが良いだろう。
とはいえ途中までは同行するのだし、その間ならいくらでも作り直してもらえるだろう、と考え直して。イーリンはラトマたちが向かった先を見据えた。
(ストーリーテラー……物語を作り、それを壊して楽しむ存在、ね)
子供の遊びのような行い。もしくは自身の作品に対する無尽の欲求が為すことなのか。いずれにせよ暴き、阻止しなくては。
「行きましょう――神がそれを望まれる」
森を進むラトマたちは、ふと脇から覗いた影に立ち止まる。そこにいるのは1人の村娘……に扮した『ハム子』主人=公(p3p000578)だ。今回は女性アバターである。
「キミは1人でこの奥に向かうの?」
「1人じゃないわ。サイズさんとカレンさんがいっしょだもの!」
ラトマは屈託のない笑顔でそう返す。確かにその肩にはちょこんと乗ったサイズと、傍らをついてくる華蓮がいる。その姿を人としてカウントするかは置いておくとしても、確かに1人ではなさそうだ。
なるほど、と頷いた公はラトマへ一緒に行かないかと誘った。
「ボクも用事があって、この先へお花を摘みに行かなきゃいけないんだ。一緒に行かない?」
「ええ、喜んで!」
こうして公もまた、ラトマと共に森を行く。それより少しばかり先へと回っていたアーマデルは本来の登場人物以外に何者かがいないか気配を探っていた。
(本来ならば……盗賊たちと人喰い狼、ラトマの祖母、それに猟師か)
御伽噺というものは、不必要な登場人物が出てこない。関わるべき者のみが描写される。ならばそこから逸脱して登場してくるものはストーリーテラーの生み出した歪みと見て良いだろう。
ラトマに接触しようとする者がいれば、共に道行く3人の仲間がどうにかしてくれるだろうが、それより前に討てるのならばその方が良い。
「酒蔵の聖女、周囲に――」
不審者はいないか、と続けようとしたアーマデルは振り返り、瞳をすがめた。酒蔵の聖女と呼ばれた霊魂はその辺りを浮遊しながら実にやる気なく、さけ……と呟いている。
『さけ……酒がない……』
「帰ったら払うから」
何せこの霊魂は『旨い酒を浴びる程呑みたい』という未練を持っている故に、何かを頼もうとすればことあるごとに酒である。そしてアーマデルはこれまでの経験により報酬前払いの危険性を大いに理解していた。勿論、彼女限定で。
「ほら、哨戒してくれ。でないと帰った後の酒も無しだ」
うううう、と唸る霊魂。ただ酒を呑んでいたい、しかし言われたことをしなければ酒もない。目の前にニンジンをぶら下げられたウマの如く――とまでは言わないが、霊魂もまたお手伝いに駆り出されたのだった。
(御伽噺か……奴隷だったころは読み漁ってたな)
『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト(p3p008506)は大きく跳躍し、枝へ飛び乗って目的の家を探しながら進んでいた。彼が目指すはおばあさんの家――そこにいるおばあさんと、後から来るであろうオオカミの護衛である。最後には殺されるオオカミだが、この御伽噺においては脅威の対象という重要な立ち位置の登場人物でもある。それが現れる前にいなくなっても困るし、ラトマが来る頃におばあさんがこと切れていても決して【めでたし、めでたし】には繋がらない。
とはいえ――代役が叶わないのはおばあさんの方だ。いざとなればオオカミ(脅威役)はヲルト自身が勤め、殺されたフリでもすることができる。
おばあさんの家は森の中にあり、木々に囲まれた地ではその屋根も視認しにくい。それでもどうにか場所を変え、回数を重ね、ヲルトは道伝いに探しておばあさんの家を発見した。
こじんまりとした平屋だ。窓からの様子は伺い知れないが、ふわりと香る匂いはおばあさんが何か料理中であることを知らしめる。
家の周囲に危険がないことをそっと確認したヲルトはおばあさんからも、そして他者からも見つからないように物陰へ隠れた。あとは不審者かラトマたちが来るのを待つだけである。
(何があったかな……御伽噺)
外への注意を怠らず、しかしその頭の片隅では以前の記憶が掘り起こされる。珍しい血液の保持者と言うこともあり、最高級奴隷であったヲルトは幻想で起こっていたような大奴隷市などでそうやすやす買い叩かれるようなことはなく。そして買われる前にもひどい扱いなど受けもせず。非常に高待遇な環境で育つ中、当然本も与えられていた。幼い頃には絵本で、そして育てば文字でも御伽噺には触れたものだ。
城から攫われるお姫様、助けに行く勇者――なんて決まりきったような物語もあれば、魔法使いの弟子になるような物語もあったり。今なら旅人(ウォーカー)が増えたことによって異世界の童話も広まっていることだろう。
歪みの発生しない――未だ物語では登場しえないこの舞台は、とても静かで、優しい時間が流れていた。
(この辺りは盗賊たちが仕掛けた罠か)
森の中に点在する罠を解除しながら『揺るがぬ炎』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は辺りを見回す。罠はどれも対動物に仕掛けられたもので、食糧確保のものとも捕らえられるし人を狙ったものとも考えられる。
歪みか否か、白か黒かもつきにくいながらウェールはそれをひとつひとつ解除し、残骸を脇へ退けたところであった。
(花畑も罠がバレにくそうだが……いや、まだ盗賊たちの話を聞いていないのだったか?)
御伽噺ではそこで人食い狼の話を聞くはずだ。そろそろそちらを警戒した方が良いだろうとウェールは移動し始める。
本来ならば【めでたし、めでたし】で終わる物語。それを捻じ曲げてバッドエンドにすることがフロアボスたるストーリーテラーの狙いなのだろう。そしてその目的は物語の最後まで生きている筈の登場人物を殺せば叶う。
(最も狙い目は最後……3人とも揃った時だろうか)
ラトマ、おばあさん、そして猟師。この3人が集うのはおばあさんの家の前――つまり最後も最後である。そこまで気は抜けない。
一同はいずれも盗賊たちから話を聞く場面で歪みが発生するのではと予想していた。ウェールだけでなくアーマデルもまた、哨戒を切り上げて身を隠しながら御伽噺の行く先を窺う。
きゃらきゃら。きゃらきゃら。楽しそうな笑い声が聞こえるも、ラトマは全く反応しない。御伽噺の外――イレギュラーズたちにしか聞こえないのかもしれない。
「【その足がふととまります】」
歌い上げるその声と全く同じタイミングで、ラトマの足が止まる。華蓮が彼女へ呼びかけると、ラトマは小声で慌てたように木の影へ華蓮と公を誘導した。
「【木のかげに隠れたおんなのこは、その先にいる怪しい人たちの様子を伺いました。どうやら盗賊のようです】」
光の声など聞こえていないのだろうに、ラトマは息を詰めて複数の人影を伺う。それらはいずれも男で、戦闘員であることが腰に下げた武器から見て取れた。
「この辺りには人食い狼が出るらしい。そろそろ場所を移した方が良さそうだ」
「食われちゃたまんねぇからな」
その会話にラトマは息を呑んだ。公たちもまた警戒しながら、それでもまだ今なら気づかれていないと揃って離れようとした、その時。
「【おんなのこはそっと離れようとして――落ちていた小枝を、パキリと踏んづけてしまったのです!】」
ラトマの足元で小さく、何かが割れる音がした。
「誰だ!」
「っ……」
「ここから離れて。今すぐ!」
ひゅ、とラトマが息を吸い込む。同時に公は変身バンクで村娘の変装から姿を変え、盗賊たちの元へと躍り出た。庇う、あるいは癒すならばラトマの肩に乗ったサイズや華蓮がその役目を担うだろう。ならば公は想定外の脅威――歪みを押しとどめなくては。
「やはりか」
アーマデルもまたその身を晒し、盗賊たちと対峙する。こうなることはある程度予測していたが、御伽噺の通りに『盗賊たちから』狼の情報が聞けたならば歪みを修正する程度、御伽噺に支障はないだろう。
「さあ、怨嗟の音色を聞け……!」
未練の結晶がひとつ、それが奏でるは刃軋り歌う怨嗟の音。不協和音に幾人かの盗賊たちが当てられる。そこを狙いすましたように公のブランディッシュが盗賊たちを襲った。
「これは……一体……」
「ラトマさん、俺の前に出ないように。少しずつでいいから後退するんだ」
サイズはラトマの肩から降り、氷のバリアを展開しながら彼女へ促す。華蓮、ラトマ、そしてサイズの順に戦線離脱した3人は先ほどの光景が嘘のような平穏な森の中で息をついた。
「大丈夫か?」
「うん……でも……」
「【心臓がドキドキしています。このままお家に、帰ってしまおうか?】」
光が御伽噺に記されたラトマの心情を告げる。華蓮はぽてぽてとラトマの足元へ進み出て、彼女を見合揚げた。
このままだと御伽噺から彼女の行動が外れてしまう。この御伽噺はおばあさんとラトマが無事に出会えて【めでたし、めでたし】になるのだ。
「勇気を出して……少しだけ頑張って。おばあさんは貴女を楽しみに待ってるのだわ」
「楽しみに……うん。そう、だよね。折角このワンピースも着てきたんだもん、おばあさんのところに行かなきゃ!」
「ああ。大丈夫だ、何かあったら絶対に守る。それが鍛冶妖精……いや、森の妖精の役目だ」
サイズも後押しするように頷き、ラトマがホッとした表情を見せる。これならばまだ、暫くは進んで行けそうだ。
(主人公の心が折れたら、御伽噺はそこでお仕舞いだからな)
イレギュラーズたちは今、最初の歪みからラトマを掬い上げたのだった。
一方、歪みとして使われた盗賊たちはと言えば更なる援軍によって徐々に押されていた。
「この先には――通さん!」
ウェールの妖刀が淡い焔を宿し、敵を殺さずダメージのみを与えて行く。ミルヴィは近づいてきた盗賊を二振りの剣で翻弄した。
「アタシが相手してあげる……さあ、激しく踊りましょ!」
肢体を躍動させ、妖しい剣舞と視線が盗賊たちを釘付けにしていく。しかして逆に、そうやすやすと捕まるような彼女ではない。
「これで、仕舞いだ」
数だけは多く、近距離にならざるを得なかったアーマデルはその微妙な間合いを奪って闇の一撃を見舞う。呻きながら倒れた盗賊を見下ろし、一同は援軍がないかと辺りを見回した。
「……大丈夫そう、みたいだネ」
「ああ。なら俺はさっさと次の場所へ向かおう」
ミルヴィの言葉に頷きながらウェールが背中を向ける。その姿はともすれば、先ほど話していた人食い狼にも見えてしまうかもしれないから、と。
各々がその場で散らばり、公もまたラトマたちの元へ戻っていく。戦線離脱した彼女らは、しかし公の身を案じて待っていたらしい。
「だましていてごめんね。実は、森に住むオオカミや盗賊の調査に来た騎士だったんだ」
村娘の服装は調査対象に警戒されないためのカモフラージュだったが、そこで巡り合ったのがラトマ。ここで止めてもまた森へ入って来られてしまうかもしれないと、同行を願ったのだと告げた。
「まあ、騎士様……」
「様なんてつけなくていいよ。この森の奥におばあさんが居るなら、そこまで護衛させてくれないかな?」
先ほどの盗賊たちは倒したものの、話に出ていたオオカミはまだ野放しだ。ラトマもそれを思ったのか、躊躇いなく頷く。
それよりもずっと先、全力で移動したウェールはおばあさんの家までの道や花畑に落とし穴などが存在しないかと注意深く調べていた。
落とし穴というトラップは実に単純で、浅ければ脱出も容易だ。しかしそのそこに木の枝、それも尖った部分を上に向けて設置するだけで、重力により十分な殺傷力が出る。辺りどころが悪ければ死の危険も存在するのだ。
だがしかし、結果として落とし穴は存在しなかった。理由もなく突然出てくるわけではないということなのか、全く別の理由なのか定かではないが――ともあれ、ウェールによって『落とし穴はない』と安全性が確認されたのである。この後ラトマたちが来るまでの時間を思えば、何者かが歪みとなって穴を掘り始めても間に合わないだろう。
ウェールは更に先まで調査すべく、歩を進めたのだった。
さて、盗賊撃退に集まらなかったイレギュラーズが何をしているかと言えば、ヲルトはいち早くおばあさんの家へ向かい、引き続きの警戒を行っていた。そして残るイーリンと汰磨羈はと言えば――。
「……いないわね」
「ああ。この森、中々広大だ」
イーリンはラムレイに騎乗し、汰磨羈は鍛えられた自らの足でその速度に合わせて。広大な森の中、猟師を探し回っていた。何せ御伽噺では最後にしか出てこない役柄だ。手がかりのひとつすらもなく、故に足の速い2人で探し回っているのだが――相手もまた移動するだろうし、入れ違いになっている可能性もある。
しかしながら、御伽噺が進んできたこともあってか。大捜索の果て、2人はようやく猟師を捕まえることができた。猟師からしてみれば、こんな森の中でうら若き乙女が2人。しかも猛烈な速さで自身の方へ向かってくるのだから動揺も困惑もするものであったが。
「失礼、この近くに老婆の家があるとあると思うのだけど、ご存じない?」
「老婆……ああ、モリス婆の家だね。この道をずっと行った先だよ。何か用事が?」
「人食い狼の話を聞いてな。安否を確認しに向かうところだ」
汰磨羈の言葉に猟師は表情を険しくする。曰く、猟師自身もその話は耳にしており、今もオオカミを狙って見回りをしていたところだったのだと。
「ふむ。ならば、一緒にそのモリス婆の家まで来ていただけないだろうか?」
「道も確実でしょうし、オオカミが出た時も私たちだけでは対処しきれないかもしれない。どうかしら」
地の利は自身らより猟師の方があるはずだ、と押せば猟師は納得の色を見せる。元々モリス婆の安否確認には行く予定だったそうで、2人が向かう話で別所を調べに行くべきかとも思ったらしい。
(危なかったわ)
なら一緒によろしく、と挨拶しながらイーリンは心の中で冷や汗をかく。危うく猟師が遠ざかってしまうところだった。いや、この場合オオカミが退治できれば猟師はいなくても良いのだろうか?
何にせよ、御伽噺の強制力で最後は居たと思いたい。
「では、私は先行して障害物がないか確かめよう」
「お願いね」
イーリンは猟師とともに。汰磨羈は道中のトラップがないかを確認に。二手に分かれ、前を走っていく汰磨羈をイーリンの影に残された黒猫が見送った。
「こんにちは! この辺の人カナ?」
ミルヴィはやや後方からラトマたちへ追いつき、声をかける。サファイアの瞳にラトマを映した彼女はにこりと微笑みを浮かべた。その表情にラトマは目をぱちぱちと瞬かせる。
「綺麗な人……」
「ふふ、アリガト! ねえ、良かったら一緒についていってもいい? この辺り、物騒だって聞いたから」
ミルヴィの魅了にかかったラトマは、この人数でいるのに心配だから同行したいという言葉にもさしたる疑問を持たず頷く。綺麗なサファイアの瞳をもっと見ていたい、なんて。
「【おんなのこは、道の途中できれいなお花畑を見つけました。】」
光たちの読み上げる御伽噺に沿って、森の脇に美しい花畑が見え始める。ラトマは目を輝かせて小走りにそちらへ進んだ。
「摘んでいったら、おばあさんも喜んでくれるかも!」
「少しくらいの寄り道は楽しいけれど、本当の目的までは忘れちゃだめだわよ?」
キラキラした瞳のラトマに華蓮がそっと釘を刺す。もしかしたらこのまま花畑で日が暮れてしまうかもしれない。バッドエンドではないけれど、決められた【めでたし、めでたし】には行きつかない可能性もあるのだ。
「それと、蜂とか、変な花を見つけたら私たちに声をかけるのだわ」
これは此処にいないアーマデルからの助言だ。地面の裂け目があったならば先に罠解除で訪れているウェールが気づき、わかりやすいようにしてくれているだろう。されどその時には気づけない対象であれば、それから守るのはここにいるイレギュラーズの仕事だ。
「すごい花畑! アタシも摘んでいこうっと」
元々それを理由に訪れたていにしているミルヴィはラトマと共に花を摘んでいく。腕一杯に花を摘んだラトマはバスケットを腕へかけ、花を抱きしめた。
「ふふ、良い匂い!」
花に顔を寄せ、その香りを吸い込もうとした、その瞬間だ。
「――危ない!」
肩に止まっていたサイズが飛び上がり、摘んだ花から飛び出してラトマを狙った蜂を庇う。驚いた彼女の手から花がばらばらと落ちた。咄嗟にミルヴィが剣を抜き放ち、容赦のない剣の花吹雪を浴びせて行く。その図体は小さくともモンスターであるらしく、公とも力を合わせ執拗に攻撃を重ねたことで蜂はようやく地面へ落ちた。
「間一髪だったね……」
「ありがとう、サイズさん」
動かくなったことを公が確認し、礼を告げられたサイズはいやと小さく首を振る。気付くのにあと少し遅れていたら間に合っていなかったかもしれない。
落ちた花を拾い上げたラトマは、今度こそおばあさんの家へと向かい始めた。
(庇うばかりじゃダメだから、鍛冶師として御伽噺の歪みを治していきたいが……)
できそうな事は少ないだろう、とラトマの肩に止まったサイズはぼんやり思う。というか、鍛冶師として歪みを治すってどうやるんだろうか。戦うためのものではないというのに。
どうにかして何かを修理したいのならば、きっと全てが済んでからだろう。ラトマの持っているバスケトやワンピース、それにおばあさんの家にあるものも破損したら多少は修理できるはずだから。
前方を進むミルヴィはエコーロケーションで地理を何となく感じながら進んでいく。そしてひそかに用意してある癇癪玉が手元に存在することを、そっと確認した。
汰磨羈はおばあさんの家までの道を走りながら罠がないかと確認する。しかしながらどうやら――既に破壊された後のようで。しかもご丁寧に道の脇まで寄せられているのだから、これはこの道を安全に通したい者、即ち仲間であるイレギュラーズの誰かということだろう。
前方を見た汰磨羈ははっと目を見開く。その先にあるのはおばあさんの家と、身体の大きな獣。恐らくは話に出ているという人食い狼だ。
相対するのはずっと警戒していたヲルト、そしてイレギュラーズからの要請で加勢にと真っすぐこちらへ向かっていたペリカ。そしてウェールは家の外へ出てきている老人を庇っているようだった。
(戸締りを確認なんて言っている場合じゃないな)
出てきたところを狙われたか、それとも物音に驚いて確認しに来たのか。いずれにせよ守る対象が外に居るのならば戸締りも関係あるまい。
「こいつ、手ごわいのだわさ!」
「それでも、ここで止めないとな」
ヲルトの右手首から放出された血が人食い狼の精神を弄らんと力を持つ。汰磨羈が加勢すると時を同じくしてイーリン、そしてラトマ達……全員が家の前まで辿り着いた。
「おばあさん!」
ラトマの声が響く。狙われているのはヲルトだが、その近くに身近な人がいるとなれば安心もできまい。
(だから、オレに引き付けて全部避ける)
ヲルトは俊敏な動きで人食い狼を翻弄する。多少傷ができたとて構うものか。むしろ――そこからが本領発揮だ。
近未来予測をしたイーリンは魔眼の呪いを得物へと齎す。まだまだ温存していかなければ、セーブポイントを作るまでは気が抜けないのだから。
ラトマの元から公も飛び出し、イーリンの攻撃に屋根へと逃げた狼を空中から追い詰める。
「私たちが押さえている間に、トドメを!」
汰磨羈は後方の猟師へ向かって叫んだ。集中できる状態ならほぼ確実に仕留められるだろうし、
(恐らく、それが最後のフラグだ)
乾いた銃声が空気を震わせる。華蓮は注意深く辺りを見回した。
(ストーリーテラーの妨害は、ない……?)
ここで妨害し、誰かを殺しにかかるかと思ったが――しかしここで、場の静寂さに気付く。あまりにも静かすぎるのだ。戦いが終わったからではない。鳥のさえずりも、風の音もない。
「ラトマさん?」
サイズが微動だにしないラトマを見上げて固まる。いや、固まっているのはラトマの方だ。瞬きひとつせず、オオカミの方を見つめたまま。
御伽噺の、世界の時が、止まっていた。
おばあさんの家の前、大きく開けた地面へ突如として影が落ちる。瞬く間に伸びあがったそれは巨大な男性の姿をとった。その手に持った羽ペンが空中へ文字を描き、それが黒く発光する。
「! 歪みか……」
アーマデルが呟く。ああして歪みを作ってこの世界へ送り込んでいたのだろう。最も、それはこれまでの盗賊たちとは異なり黒く輪郭を模ったまま、あれよりは弱いのだろうが。
「蹴散らしてあげる」
イーリンの髪が紫に淡く光る。紅玉の光を湛えた瞳は残光を残し、真っすぐにどこまでも歪みともどもストーリーテラーを貫いた。それでも立ち上がる歪みをウェールの放った獣性の焔が取り巻き、視線を攫って行く。
(私も……私だって……)
もやもやと育つ嫉妬を身に纏い、華蓮は仲間たちを見た。少しでも、回復手として役に立てるように。輝かしい皆の強さに見合うくらいに働けるように。
アーマデルの放つ怨嗟の音が敵の動きを鈍らせにかかり、公のブランディッシュが増えた歪みの体力を次々と削いでいく。
止めどなく描き、武器や生物らしきものを創造するストーリーテラーにイーリンは瞳を眇めた。御伽噺をずっと書き換えようとして、イレギュラーズたちに邪魔されて。けれど。
「貴方が書き換えたいのは自分の筋書きじゃないのかしら。ねえ、汰磨羈ならどうする?」
「私ならどうする、か。――生憎、前に進む事しか考えていないのでね!」
イーリンの攻撃に合わせ、追撃に追撃を重ねて行く汰磨羈。生憎と長期戦にするつもりはないのだ。
歪みたちと相対する仲間たちを華蓮が全力で支援する。攻撃に転じる暇もないほどに忙しいが、そちらで役に立てるのならばそれでもかまわない。
「皆、頑張って!」
天使の歌が響く。それを受けたウェールは固まったままの登場人物たちを気にしながらも、自身へ引き付けられた歪みへ全力で攻撃をくりだした。
徐々に歪みの数が減り始めたのはストーリーテラーのガス欠か。しかしそれはイレギュラーズたちもまた然り。イーリンはそのギリギリで再び近未来予測をすると、瞬間的に魔力を燃え盛らせその身を障壁としてストーリーテラーの前に立ちはだかる。ここで自分が使い潰れたとしても、それで勝ちが手に入れば良いのだ。
ニィと笑みを浮かべ。視線はそらさぬまま、イーリンは唇を開く。
「アイツはこういう筋書きは、考えてなかったのかしら。ね、ミルヴィ?」
「さーてね、でもこの物語をハッピーエンドで終わらせるのはアタシ達さ!」
二振りの剣を交差させ、返すミルヴィ。彼女は任せたの言葉に頷いた。
すさまじい連続斬りがミルヴィから繰り出され、的確に急所を貫いていく。ぐらりとよろめいたストーリーテラーは、それでも持ち直そうとしたが。
「……終わりだよ」
奏でられしは心こそ聖剣と謳われた勇士の諦観。どこか虚ろなその音が、ストーリーテラーを今度こそ屈服させた。
影が消える。ほうと息をついた一同は、おばあさんの家の扉が淡く光っているのを見た。
「どうやら、次の扉みたいだわさ」
大剣を収めたペリカが告げる。未だ御伽噺の世界は止まったままだが、恐らくは外の者――イレギュラーズが消え、登場人物だけになれば何事も無かったかのように動き出すのだろう。
オオカミは猟師の手で死に、ラトマとモリス婆は互いが生きていることを喜び合う。
【めでたし、めでたし】。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
さあ、先に進みましょう。
またのご縁をお待ちしています。
GMコメント
●成功条件
『誰の名代として参加して』この階層を踏破すること。
またその先でセーブポイントを作ること。
※セーブ、名代に関しては後述します。
●階層特徴
この階層は【赤いワンピースをきた女の子】の御伽噺の中のようです。この御伽噺を無事に終わらせる必要があります。
御伽噺は気まぐれなストーリーテラーによってバッドエンドへ歪められます。どこがどのように歪められるかはわかりませんが、イレギュラーズが介入して歪みを修正してあげることで御伽噺は進行します。
つまり、このシナリオではプレイング中に『どこで不測の事態が起こるか予想し、対処法を書く』必要があります。
皆さんは女の子に接触しても構いませんし、こっそり後をつけても構いません。女の子と他愛無いお喋りなどをしても構いません。
ただし、物語から逸脱した行動を取らせようとしても、どこかで必ず修正力が働きます。
イレギュラーズが歪みを正していけば、歪みを作るフロアボス《ストーリーテラー》は邪魔者を排除しに乗り込んでくるでしょう。
このフロアボスを倒すことによって、次の階層へ向かうことができます。
●フィールド
森の中です。日中の春らしい気候で、それなりに広大なようです。
道なりにいくとおばあさんの家があります。
●エネミー
・ストーリーテラー
この階層のフロアボスと呼ばれる存在であり、彼を倒すことで次の階層へ進むための扉が出現します。
その名の通り『物語を語る者』であり、しかしながら『物語を歪める者』です。その姿はシルクハットをかぶった男性――の巨大な影です。大きな影溜まりから上半身程度が生えているような状態です。
武器や魔物を想像して創造し、イレギュラーズへと向かってきます。動き出しはそこまで早くありませんが、手数に優れています。
魔物個体はさほど強くありませんが、数で押されないよう注意する必要があるでしょう。またその姿はストーリーテラーが想像したものになるため、獣であったりモンスターであったり人であったりするでしょう。
・歪み×???
御伽噺の世界で現れるストーリーテラーの手先です。これはストーリーテラーが想像したものになるため、獣であったりモンスターであったり人であったりするでしょう。ただし、御伽噺の世界観から逸脱する存在は発生しません。
これらはその姿かたちに見合った攻撃方法や力、知能を持っています。ストーリーテラーが即席で創造したものよりは強くなります。
姿によっては人語を理解し話すことができますが、これらは世界の一般知識しか知りません。歪みであれど『登場人物』の範疇です。これらは総じて赤いワンピースの少女を狙い、御伽噺のバッドエンドを目指すように動きます。
●NPC
・赤いワンピースの少女
この御伽噺の主人公です。名はラトマ。『登場人物』であり御伽噺に沿った動きを定められています。
皆さんが接触すればラトマは盗賊たちに対してと同じように警戒するでしょうが、友好的に接してあげれば打ち解けるでしょう。
戦闘能力はありません。ただの女の子です。
・『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)
タフな物理系トータルファイター。
皆さんの指示に従ってくれます。
・光たち
ふよふよと浮かぶふたつの光です。言動は幼げですが、ストーリーテラーの手下であるようです。
攻撃はしてきませんが大変気まぐれで、姿を見せるときもあれば見せない時もあります。
●ご挨拶
愁です。果ての迷宮4度目はおとぎの世界へ。
めでたし、めでたしに向かいましょう。
それではよろしくお願い致します。
※セーブについて
幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。
※名代について
フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。
Tweet