シナリオ詳細
もふもふリターンズ!
オープニング
●
『ぷわわ~!』
広い平原に、ほんの少し高い鳴き声が響き渡った。
『ぷわわ~』
『ぷわ~』
新緑薫る初夏のこと。幻想北部はようやく寒さから解放されて、暖かな陽気に包まれている。高高度にあるこの草原も例外ではなく、さわやかな風が吹き渡っていた。
そして、その風に揺られてころころと緑のカーペットを転がっていく白い妙な生物がいた。
もこもことしたやわらかそうな白い毛に覆われた丸っこい生物である。
白いもふもふに埋もれるようにしてちょこんと見えている黒い部分が顔だろうか。くりっとした丸い瞳に、ぴくぴく動く小さな鼻がついていてなんとも愛嬌のある顔だ。
そこに猫耳のような三角の耳がついていて、こちらもまた何かに反応するたびにぴょんと跳ねる。細っこい足は頼りないが、それがまた可愛い。ちなみに肉球も標準装備している。小さくもぷにぷにな肉球だ。
隙の無いもふもふは、後ろ姿もまた可愛らしいと評判で。
『ぷわわわ~』
ふわふわと見紛うまあるい尾っぽがついていた。
羊のようでいて、微妙に猫っぽくもあり、また兎のような尻尾もついている。幻想世界ならではの不思議生物というやつだろう。
あらゆるカワイイを取り込んで、その上で違和感なく共存する形に辿り着いたのは、ひとえに生き残るためとも言えるかもしれない。
しかし今そんな考察はどうでもいいのだ。その愛嬌たっぷりの姿を見た者はみるみるうちに虜になってしまうだろう……!
●
「来ましたよー!」
待ってましたとばかりに嬉しそうに報告するのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)だ。
「とーってももふもふな子たちが待っているのです!」
じゃーんとイレギュラーズに見せた写真には、白い毛玉がたくさん集まってお昼寝している姿が映っていた。
ユリーカ曰く、人懐っこいもふもふたちと交流できる広い平原が一般開放されるとの事だった。
スイカ程度の、抱えるのに苦労しない大きさのもふもふたちが自由に過ごしている平原だが、このもふもふたち、どうにももふもふっとされるのが大好きな様子。
故にこれを商売にしちゃおうと考えた一人の青年が、無造作に放置されていた平原を整備して、もふもふたちの面倒を見ることにしたらしい。
「この前のお礼と言う事で、今回はなんとタダでもふもふできちゃうのです!」
少し前に、依頼という形でもふもふたちに関わる話を受けていたイレギュラーズもいただろう。
彼等に対するお礼と、先行公開、もとい、一般開放する前にもふもふたちの調子を見るのも兼ねて招待状が届いたのだった。
「ちなみに、もふもふさん達の毛から作ったオリジナルの商品もあるみたいなのです」
真っ白いもふもふした抜け毛を捨てるのが勿体無いとの事で開発されたのは、もふもふの毛を使ったもふもふぬいぐるみやストラップ、さらには大きいものだとクッションや布団まであるらしい。
また、実用性の観点からか、もふもふの毛を使った携帯端末やパソコンの画面拭きや掃除用具なんかまで用意されているのだから充実したラインナップだ。
「もふもふさん達がいる所の傍にショップがあるので、そちらを見てみるのも楽しいかもです!」
そんな、もふもふでもふもふな一日のお誘いなのでした。
- もふもふリターンズ!完了
- GM名祈雨
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年06月05日 21時15分
- 参加人数50/50人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
リプレイ
●
本日はもふもふ日和なり。
もふもふをたくさんもふもふできて、もふもふも自分も幸せになれるなんて!
シャルレィスは初めて見たもふもふにぱちり瞬き、思わずわあと声をあげた。
「もふもふさん、初めて見たけど……本当に可愛い!」
もふもふに加え、猫の耳。肉球。尻尾。それに、つぶらなまあるい瞳。
良いとこどりなもふもふは、シャルレィスを見上げこてりと首を傾げた。
「はう……っ」
白いふわもこの魅力にやられれば、手を伸ばしもふもふと撫でる。
もふもふ。もふもふ。
そうして状態異常、『もふもふ』にかかった……!
くらりと幸せそうにふらつくシャルレィスを見かけた行人がほんの少し腰をあげたが、その表情に軽く肩を竦め、またシートに腰を落ち着けた。
手を貸す必要がある人はいなさそうだ。
そんな行人の傍に何してるのーと言わんばかりにもふもふが歩み寄っていく。
心地良さそうに目を細めるもふもふを撫でながら、行人は辺りを見渡して。
不思議なもふもふは楽し気に。撫でる人達の表情も安らかに。
優しい世界が、確かに今ここにはあった。
もふもふをもふもふするもふもふなお誘い。
もはやもふもふが崩壊しそうであるが、ブーケは軽く首を振ってとにかくもふもふすればいいのだと頷いた。
選んだ一匹は大人しいもふもふのようで、されるがままに気持ちよさそうに目を細めている。
抱きこんだまま後ろへ倒れ込めば、やわらかな草のベッドが支えて。
「癒されるなあ。いいこ、いいこ」
ぷわわ~と鳴くもふもふは呑気に胸の上ですぴすぴと寝息を立て始める。
どうか、このやさしさの塊のような子が悲しむことがないように。
「……なぁんて」
もふもふと起こさぬように撫でながら、ブーケもまた目を閉じた。
シレオの目には一匹のもふもふが映っている。
猫のような耳に、兎のような尻尾。よく言えばいいとこ尽くめだが、裏を返せば全てが中途半端とも言える。
『ぷわわ~』
鳴き声だけは、なんだか聞いた事もないような。しかし、新種の動物というには作りがミックス過ぎるのだ。
「断然猫派の俺を、果たして満足させてくれるのかな?」
ふんと鼻を鳴らしたシレオに襲い掛かるもふもふ。
それはもう、なんかやんごとないオーラに誘われて大量にいる、もふもふ。
「……」
もふもふ。
「あ~~」
もふもふもふもふ。
「あ~~~~」
シレオの語彙が消失した。
シートに餌に、準備は万端。
もふもふが集まってるところの近くにシートを広げて、アレクシアとアリスの二人はのんびりともふもふの様子を窺っていた。
人懐っこいもふもふは、二人が座っているシートにも遠慮なくその小さな足を乗っけて遊びに来る。
掌の上の餌をもくもくと食べるもふもふに思わずアリスの頬も緩むよう。
食べ終わったのを見測ればもふもふタイム。手探りでもふもふして、アレクシアはもふもふの反応を窺ってみる。
どのもふもふされ方でもぷわわと嬉しそうに鳴くものだから、正解のもふもふし方はなさそうだ。
アレクシアがもふもふを一匹抱き上げると、おっかなびっくりなアリスもそれに倣って抱き上げて。
「どの子ももふもふしててとっても可愛い。ねっ、アレクシアさん!」
「うんうん、かわいいよねえ。お家に一匹欲しいぐらいだ」
「あはは、ちょっと分かるかな」
お持ち帰りできたら、きっと毎日がもふもふ日和。
それでも二人はここがもふもふにとって一番の場所なのだろうという事は分かっていて。
「お土産欲しいね。今日の事を忘れないように!」
「ふふ、そうだね」
ぽかぽか日和。暖かな日差しは眠気を誘い、瞼も重たくなる。
ぼんやりしているティエルは、眼前のもふもふたちとにらめっこ。
「なぁご」
『ぷわわ~』
「なぁご」
『ぷわわわ~?』
ティエルの警戒の声も意に介さず、もふもふは近付いてくる。追っ払おうとてしてし草原を叩いてみれば、そこにもふっと割り込むもふもふ。
「……」
手がもふもふに埋まっている。そして、とてもふわふわしている。
これは無害なのだと理解して、ティエルはもふっと手を突っ込んだ一匹を抱き寄せてもふもふと撫でまわして。
ぎゅっと胸にしまいこめば、もふもふと一緒にお昼寝タイムへ。
「パパ、ママ、もふもふいっぱいだぞ!」
きらきらと輝く笑顔を見せるノーラの傍では、辺り一面のもふもふに驚いたように瞬くポテトの姿。
わくわくが止まらない様子のノーラをポテトが見守り、少し遅れて餌を持ってきたリゲルを二人で迎える。
「はい、餌だぞ」
「パパありがとう!」
小さな掌に乗っかる赤い果実。それを見つけたもふもふが駆け寄ってきては餌をおねだりして。
「ふふ、可愛いな」
集まってきたもふもふをポテトは一匹抱き上げてみる。ふわふわとした毛並みは気持ち良い。
二人を眺めるリゲルは、笑顔いっぱいなポテトとノーラを見やれば満足そうに頷いた。
たくさんのもふもふに囲まれた幸せ家族。
連れて帰りたいなと零すノーラを、リゲルはやんわりと宥めて。
「じゃあ、ここでいっぱい一緒に遊ぶぞ!」
張り切るノーラに釣られて、ポテトとリゲルは笑い合う。
「辺り一面真っ白で柔らかだ。お布団みたいで面白いな」
想像するのはもふもふたちが集って出来るふわもこベッド。幸せな光景にリゲルの頬もつい緩む。
「ほら、リゲルも一緒に寝転がろう?」
やってみるかと寝転がったポテトに手を引かれ、リゲルも一緒に寝転がって。
「あ、ノーラ。勝手に遠く行ったら駄目だぞ」
「分かった!」
もふもふに埋もれる二人の傍で、ノーラももふもふっと戯れ始める。
「にくきゅー」
もきゅっと肉球を押してみるとぷにぷにな感触が返ってきた。ぷわわ~と声があがる。
「ふふっ、もふもふいっぱいありがとうな!」
ぎゅぎゅーっともふもふを抱きしめて。
今日の幸せな日の事は、きっと忘れない。
もふもふと会える。
そんな情報を聞けば、動物好きな緋呂斗が足を運ぶのは当然のことだった。
自身の身長を心配した緋呂斗はもふもふにそーっと近付いて。
「よしよし、いいこだな」
ぷわわ~と声をあげ緋呂斗の掌に頭を押し付けるもふもふを優しく撫でる。
もっととねだるものだから恐る恐る抱き上げてみて。
腕の中で落ち着いたもふもふは小さな口で大あくびをするとうつらうつら舟をこぐ。
このまま一緒にお昼寝するのも良いかもしれないなんて、緋呂斗はゆうるり笑みを浮かべた。
ミニュイは悩んでいた。
先日の依頼のお礼との事での招待に、関わっていない自分が参加しても良いのかと。
しかし。
『ぷわわ~?』
とりあえず、もふってから考えよう。
目の前で見上げてくるもふもふを前に、思考を放棄したミニュイは一匹抱え上げる。
集う姿はまるで白いふわもこ絨毯で、敷き詰めたらきっと心地良いカーペットが出来るのだろう。
擦り寄ってきたもふもふを更に抱え目を閉じる。心地良い陽気が誘う眠気には逆らわず、もふもふな夢へと旅立った。
青々とした草を踏み、平原へ足を運んだ鳴が見たのは緑を埋め尽くすほどの白だった。
「わああ、辺り一面もふもふしてるのー!」
ぷわぷわと鳴き声をあげる白は噂のもふもふである。見ているだけでふわふわした気分になれるもふもふたちが集っている姿はなんとも可愛らしい。
駆けよれば、人懐こいもふもふは鳴の傍に集まってくる。
「ふふー、もふもふし尽くすの!」
ぎゅっと腕に抱え込み、もふもふっと頬ずりすれば楽しそうな声が返ってきた。
「もふもふ!ふわふわー!」
かわいい、まっしろ、とはしゃぐQ.U.U.A.はぴこーんとなにか思い付いた様子で。
「きゅーあちゃん、だいへんしん!」
ぼふっと白い粉を被りふわふわな毛をぺたぺたくっつけ、まるでもふもふのような姿に。
これにはもふもふたちもビックリ仰天。
何かでかいのがきたーと警戒するような声をあげながらも、傍から離れる子はいなかった。
「もふきゅーちゃんとあそぼー!」
もふもふと一緒に平原を転がり、時にはぽーんと高い高いして。群れの中にQ.U.U.A.も一緒になって遊ぶのでした。
その隣ではひたすらもふもふと、もふもふ天国を堪能するかの如くもふもふを愛でるセララの姿が。
それはもう一心不乱にという言葉がぴったりだ。もふもふたちもビックリのもふもふ具合で、捕まったもふもふはぷわわ~と悲鳴にも似た声をあげた。
その声を聞きつけた、群れの中では少し大きいもふもふが『俺が相手だ!』とでも言いたげに胸を張り、セララの胸に飛び込んだ。
近頃のお仕事は物騒なものも多く、疲れ切ったアーリアももふもふに癒させて貰おうとぐっと拳を握った。
平原には大量のもふもふ。
一心不乱にもふもふする人の姿も見付ければ、もう何も遠慮する事はない。
「もふもふ天国……!」
この小さいもふもふに執心してしまうなんて、トロイカちゃんに悪いかもと思っていたのも束の間。
もふもふの前に敵はいないのです。
夢心地のアーリアはみるみるうちに回復していく何かのゲージを幻視した。
そんな中、一匹ちょこんと丸くなるもふもふを見付けて、おいでと手招く。恐る恐る近付いてきたその子をもふもふっとして、アーリアはもふもふ天国を満喫するのであった。
そこには、一匹のもふもふがいた。
辺りを観察するカシミアをじーっと見つめるもふもふがいた。
カシミアがその一匹に気が付くのも当然の事で。
「この子に決めた~!」
目が合ったもふもふを抱き上げて、シートの上までご案内。
吟味するようにもふもふをもふもふすれば、とっても柔らかくて癒されるよう。
自分のものをもふもふした所で、というのはよくある悩みだ。やっぱり他のもふもふをもふもふしたいところ。
「気持ちいいなあ……!」
ぎゅーっと抱きしめれば、シートの上に寝転がる。
心地良い睡魔はもふもふも一緒のようで、カシミアは選んだ一匹と一緒にお昼寝へ。
ゲオルグは感動した。
やっと、やっとかのもふもふを思う存分もふれるのだと。
何度悔しい思いをしたか分からない。
しかし、今日は違う。
『ぷわわ~?』
目の前にもふもふがいるのだ!
念願のもふもふを前に、少しぐらい欲張っても罰は当たらないだろうともふもふを呼び寄せて。
ギフトで呼びだしたもふもふなジークも交えて、もふもふ。
今だけはこのもふもふたちと至福な一時を過ごしても文句は言われまい。
もふもふ。もふもふ。ぷわわと鳴く白いもふもふを心行くまで堪能しようと手を伸ばした。
とにかく、もふもふをもふもふする。
セティアはそれだけを胸にもふもふたちの中でソファを作り出して腰かけた。
ぶひも今日はほっとくのだ。不思議な椅子と餌につられ集まってきたもふもふたちの一匹を拾い上げ、セティアはじっと見つめる。
「じっかのねこに、ちょっとにてる」
『ぷわわ?』
「なきごえは、にてない」
もふっと白い毛玉に顔を突っ込めばもふもふをもふもふして堪能する。
名前はと尋ねたもふもふが意味を理解して答えるはずもなく。
「ぷわ? こっちはぷわわ? これはぷわ二号?」
一匹、二匹、……眠たい。
おやつ時なのもあって、もふもふたちはおやつに釣られる。
近くの一匹にご飯をあげていれば、チックはぼくもぼくもと集ってきたもふもふに囲まれていた。
不思議な生き物だけれど、可愛らしい。ふわふわと撫でるとぷわわと鳴いて。
「暖かくて、ふわふわ。とても……癒される、かも」
ぷにぷにと肉球も堪能すれば、チックはふわりと翼を広げる。
自分にはないふわふわした白に、もふもふたちも興味津々。
「翼……もふもふ、する?」
小さな脚では届かない。身体ごともふっとしやすいように、チックは翼を寄せてみて。
もふもふは翼の中に納まると、嬉しそうにぴるぴる耳を動かした。
今日はたくさんの初めての日。
羊のようなもふもふと触れ合うのも。君とのデートも。
手を繋いだルチアーノとノースポールは眼前で丸くなるもふもふを前に、屈んでみて。
「ポーは動物は……」
平気、と聞く前に。その答えは表情に見てとれる。
「うん、動物好きだよ! ルークは? きっとクセになるよ」
ルチアーノの手を引いて、ノースポールは白いもこもこに近付いて。
こうすればいいんだよと見せるようにノースポールが撫でれば、それに従って恐る恐るルチアーノももふもふを撫でてみる。
「うわっ、手が吸い込まれた」
ひとつひとつ驚きの連続で、目を白黒させてもふもふと触れ合うルチアーノをノースポールは見守って。
なんだか、今日は可愛らしい。
なんて、言ったらきっと怒っちゃいそう。内緒にしておこうと胸にしまって。
「ポーもほら、抱きしめてみようよ」
「わわっ」
そんなノースポールを抱き寄せて、もふもふと一緒に包み込むルチアーノ。
一緒に抱きしめられて、近い距離にドキドキと胸が鳴る。ぎゅっと抱きしめ返せば、ふたりと一匹だけの幸せ空間の出来上がり。
癒す側も、今日はお休み。周りにもふもふを侍らせて、ジルーシャはのんびりもふもふを堪能する。
つい調香師としての職業病か、この香りがしたら最強なのではと思い至ってじいともふもふを見つめてみる。
「ねえ、うちで働いてみる?」
なんて声をかけるものの、もふもふたちは首を傾げるばかり。
冗談よと鼻をちょんとつつけば、きゅっと目を瞑ってぷわぷわと鳴いて。
「アラ、ここの毛ちょっと絡まってるわね」
そうして見つけた毛玉をちょいと梳いてやると、ぼくもーぼくもーと忽ちもふもふたちに囲まれるジルーシャ。
「ふふ、いいわよ。こっちにいらっしゃい」
癒される側は癒す側へ。鼻歌混じりにもふもふと集う白いふわもこの手入れをしていくのであった。
ご機嫌に一匹のもふもふを抱きかかえたマナは、さわやかな風を感じながらあの日に思いを馳せる。
今はこんな小さなもふもふではあるが、あの日は大きなもふもふだった。もう一度と機会を願っていたからには、こうしてまたもふもふ出来る事を嬉しく思うのだ。
「幸せです……」
ぎゅっと抱きしめたもふもふを楽しみながら、小さな肉球をぷにぷにしてみて。
いつでももふもふ出来るのは嬉しいと、帰り道にショップに寄ることを決意する。
たくさんのもふもふと戯れてはみたいものの、今日はもふもふしに来た人もたくさんだ。
今日は一匹だけ、と心に決めたマナを狙う、もふもふの影。
この後、マナが世話を見たもふもふたちがマナを見付けて飛びかかって行くことを、彼女は未だ知らない――。
「な、何よこの可愛いの暴力は……!?」
ぷるぷると震えるミラーカの前には、耳をぴるっと動かして、小首を傾げるもふもふの姿が。
揺れる指先で突いてみれば、小さな尻尾がぱたぱた揺れる。揺れている、多分。
くっと目を逸らしてみるも、その先にはまるっこいもふもふに戯れる少女の姿が。
思わずじっと見つめてしまうが、気付かれる前にはっとして視線を逸らして。
「カワイイなんて思ってないけど!」
あげた悲鳴が嘘だなんて、誰が聞いても分かることだった。
言葉に反してミラーカはもふもふを抱え、ぷにぷにの肉球をぷにぷにして、とてつもなく癒されている様子だったのだから。
もふもふ。もふもふ。
「いつかも見たな、こういうもこもこ共……」
集うもふもふの群れを眺めたクロバは眉根を寄せてもふもふを眺めていた。
考えているのはもふもふをもふもふしたいだけならば気にしない事である。
レオンハルトに押し付けられたもふもふを受け取りながら、まるで狩人のような視線をじいと向ける。
これにはもふもふもタジタジだ。
命題は、いかにしてキレイに効率よくカットしていくか。
「ふむ。……なかなか、いじりがいのある毛並みしてんな?」
隣でもふもふをつついているレオンハルトを傍目に、クロバはきょとんとしている一匹のもふもふを弄り始めた。
両手を腰に。足を肩幅に開いて。
どどーんと構えるリカナの前には見覚えのあるもふもふが。
きゅるんとした瞳で遊ばないのとでも言いたげに首を傾げたもふもふを見下ろして。
「ふふふ……この前はよくももふ死させてくれたわね……!」
そう、リカナは復讐に来たのであった……!
分裂期を過ぎ、大きさの安定したもふもふはいくらもふもふしてもぽーんと弾けることはない。
「私は帰ってきた!」
お覚悟ともふもふを抱き上げればとことんもふもふをもふもふする。もふもふ。もふもふ。
ついでにトリートメントでのお手入れも忘れないあたりちゃっかりしている。
「見て見てシオンちゃん! すっごく可愛いよっ!」
「わーっ……! 本当だ、もふもふふわふわが沢山……!」
『もふもふな同好会』の面々はふわもこに囲まれて幸せな一時を過ごしていた。
一言でいうと最高だと評したいぐらい、魅力的なもふもふたち。
混沌世界に来てから目にするものは数あれど、焔の瞳には目の前でぽよんぽよん遊ぶもふもふが特に可愛く映るよう。
おいでと声を掛ければ、ぷわわと鳴き声が返ってくる。
「ふむ……」
その傍ら、ミディーセラはもふもふを吟味しながらも、まだまだ力不足ねと内心胸を張っていた。
自慢の尻尾をふるりふら。
こちらも負けじともふもふなのです。
『ぷわわ~』
「ふふ、しっかり精進するのですよ」
参りましたとでも言いたげなもふもふを、ミディーセラが優しく撫でればもふもふは満足げに転がって。
「一匹くらい持って帰ってもふもふ寝たい……」
「ずっと一緒にいると、なんだか眠たくなってきちゃうよねえ」
「よーし、おやすみー……」
そう告げたシオンの瞼がゆっくりと落ちて閉ざされる。しかし、もふもふする手は止まらない……!
春眠、暁を覚えず。
ミディーセラの尻尾を抱えて、ついすやすやと眠ってしまっても仕方のないことだ。
そんなシオンに釣られて、ミディーセラに見守られた焔もまたうとうとと夢に誘われていったのでした。
広い平原の新鮮な空気を思いっきり吸い込んで。
軽く背伸びをすれば、吐き出して。
心地良い天候のなか、セレネはもふもふを手招くべく、もふもふたちの餌を用意する。
「セレネちゃん、また一緒に遊べて嬉しい!」
その背中に声をかけるのはルアナだ。嬉しいはちゃあんと言葉にする。ぱちり瞬くセレネは釣られてくすくす笑いかけて。
「これがもふもふさんの餌……美味しいのかな?」
「ご飯ですよ……ふふ」
ふわふわ集まってくるもふもふたちに、驚かさないように小さく声をかけてみる。
食べ終わったもふもふのうち、一匹をセレネがそっと抱きかかえた。
それを見たルアナも恐る恐ると手を伸ばす。
「ふあー。ふかふかであたたかくて、優しい気持ちになるねえ」
「はい、あったかくて……それに」
まん丸な子を抱き上げたセレネがルアナを見やる。笑顔の少女を見て、セレネもまた微笑みながら。
「ルアナさんと一緒なので、優しいも2倍……ですね」
見下ろす先には白いもふもふ。円らな瞳でにらめっこ。
その狙いは、恐らく竜胆の手にある餌だろう。
「……な、何よ。この餌が食べたいの?」
仕方がない子たちねと餌を差し出せば、ぷわぷわ嬉しそうな声をあげて小さな口でぱくぱく餌を頬張る。ゆっくり、と言ってもきっと聞かないだろう。
ころりと転がるもふもふに、そうっと手を伸ばせば触れてみる。
「これは……」
もふ、もふ。もふもふ。
「って、アハハ。くすぐったいじゃない!」
もふもふを押し付けて撫でてーとしてくるもふもふに機嫌もよく。
帰りにはもふもふグッズを買い揃えねばと、気付けばすっかり虜になっている竜胆なのでした。
ファミリアのひよこを遊ばせるつもりだったトリーネはそわそわと白い身体を揺らす。
自分もまた遊びたい気持ちになるのは、きっともふもふが予想以上に愛くるしい生き物だったからに違いない。
しかし、安寧は長く続かなかった。
「そこの妙に腹減るフォルムなふわもこ、待ってくれないか」
背中を預けられる相棒探しに着てきた結依がぐうとお腹を鳴らしトリーネを追いかける。
先程までもふもふしていたもふもふはぽつりと取り残され、鶏を追いかけ始める結依の背中を不思議そうに眺めていた。
「そう言われて待つ鶏はいないわー!?」
ばたばたともふもふを隙間を縫って走るトリーネに迫る結依。
それを見かけて応援する樹里。気分はさながら、観客席でカーチェイスを眺めるようで、思わず手元にあったもふもふ用の餌を口へ運ぶ。
……案外、悪くない。
穏やかな気候、もふもふが集う平原、そしてそこに添えられる鶏と少年の追いかけっこ。
素敵ねなんて思う暇もなく、エトは悲鳴を聞きつけた。
その傍にいたアンナにも勿論トリーネの悲鳴は聞こえていて。
「た、助けてー!」
鶏が悲鳴をあげている。アンナは聞いたことのある声に得心するも、自分たちの方へ向かってきていると知ればさっとエトの後ろへ隠れた。
状況が読み込めないエトの元へ鶏が飛び込んでくる。という風に見えるが、この鶏はトリーネであり、食べれない鶏である。多分。
とりあえず保護したエトは困惑した表情で一人ひとりを見渡して、まずは初対面のトリーネたちへ挨拶を。
「私はトリーネ! 食べられない鶏よ! 本当よ!」
必死な訴えは果たして心に届いたのだろうか。
一段落ついた謎の集団は、もふもふに囲まれながら団欒に移る。トリーネは常に結依を警戒してはいたが。
エトが溜息を吐く。どうしてこんなことになったのか……それは、神のみぞ知るというもので。
ふっと顔をあげた先では未だにもふもふ用の餌を頬張る樹里の姿。
隣のアンナももう樹里さんだからと諦念がちである。
お二人もどうと勧める樹里の言葉をやんわり断りつつ、エトは持ち込んだものを思い出す。
「全くもう……あなたたち、育ち盛りなのだからちゃんとしたものを食べなさいね!」
結依と樹里を交互に見たエトが鞄を探ればバスケットを取り出して。蓋を開けば中には色彩豊かなサンドイッチが。
「もふもふを眺めながら、ご一緒いかがかしら?」
ぷわぷわと鳴き声をあげるもふもふが一目散に駆け寄ってくる。
「まあ、まあ……もふもふさん、ぷわわ~よ!」
足元にすり寄られれば、ソフィラもご挨拶を返して。
暖かな日差しに揺られ夢心地。
もふもふを優しく撫でながら、ソフィラは貰い物のに思いを馳せる。
以前、ここで奏でたフェリチタ。
貰い物は初めてでもないのに、対価で貰ったものなのに、――なんだか、いつもより嬉しくなった。
くすぐったくて、ふわふわしてしまう気分は目の前のもふもふみたい。
嫌ではないのは確かだけれど、どうしてそんな心地になるのだろうか。
「ううん……よく、わからない……わ……」
終わりの見えない考え事はぽかぽかの陽気に解かされ、ソフィラは夢に誘われていった。
少し大きなもふもふがルーキスに枕にされている。
しかし、それを気にした様子もなく、下のもふもふはぷうぷう寝息を立てていた。
「もふもふが一匹、もふもふが二匹」
まるでどこかの数え歌のようにマリスはもふもふをルーキスに積み上げていく。
それを見た鈴音もまたもふもふを腕に抱えて傍に来て。
「えっと、もふもふが3匹、もふもふが4匹~♪」
ぽん、ぽん、ともふもふを乗っけてみる。上に積み上がったもふもふは首を傾げながらもルーキスの上でくつろぎモードだ。
まだまだ積む心算であろうマリスと、そのお手伝いをしている鈴音を見ながら、ルナールもまたもふもふを撫でてみる、が。
「……」
あまりにももふ積みが長くなりそうなので、もすっと突いてみるともふもふはぴゃーっとルーキスの上から逃げて行った。
「ふにゃー、意地悪っ子がいるのですぅ」
「おにーちゃんの手により理想郷が崩壊」
べしっとルナールの顔面に押し付ける鈴音は、ぷいと顔を逸らすとマリスの傍に尻尾を絡めてすとんと座って。
「おにーちゃん抜きの理想郷建設はダメだ」
「はいはい、私にとっての最大の癒しはルナールですともー?」
べすっと顔面攻撃を喰らったルナールは目を回しているもふもふを引っぺがし、ルーキスの腕の中を取り返して満足そう。
「野良で会えないかなー。マスコットに良さそう」
「確かに、確保したいところだな」
まったりもふもふを眺めるルーキスと、ルーキスの翼を撫でて意味ありげに頷くルナール。
その傍らには。
「鈴音だってもふもふの猫さんですにゃ~」
「……少なくとも、このもふもふは良いものかと」
わんにゃん問答の末に相思相愛の様相に辿り着いた鈴音とマリスの姿があった。
「(これがあの……噂の……もふもふが……)」
言葉には出さず、無言のまま見下ろす先にいるのは一匹のもふもふだ。
きゅるんとした丸い目で不思議そうにヨタカを見上げているもふもふとの遭遇は、夢にまで見た瞬間である。
ぷわわ~と、まるでどうしたのとでも言いたげに鳴くもふもふにそっと手を伸ばすと、ほどよいもふもふを触れた掌を押し返してくるようで。
「ふか……ふか……」
思わず零れた言葉は意味もなく。
感極まる心地の中、ヨタカは無抵抗にもふもふされているもふもふに顔を埋め、抱きしめる。
ハッキリ言おう……もふもふは……最高……!
どこか恍惚な表情を浮かべヨタカはもふもふを堪能したのであった。
●
「私、あまりかわいいというものがよく判っていないのですよね……」
店内に並ぶありとあらゆるもふもふグッズを前に、ヘイゼルは小首を傾げて見せた。
目の前に並ぶもふもふぬいぐるみやもふもふストラップも、もふもふしているとは思うもののいまいちピンと来ない。
「んー、そんなのは適当でいいんだよー」
隣に並ぶクロジンデがふわふわと笑えば、かわいいねーとぬいぐるみをつつく。
今日はクロジンデの奢りだ。お世話になったお礼に、との事だが、ヘイゼルはクロジンデのお勧めを貰う事にした。
「このもふもふで編んだ、飾り紐なんてどーかなー?」
クロジンデが選んだのはもふもふの毛を三つ編みにした飾り紐。シンプルながら、とんぼ玉のワンポイントが可愛らしい一品だ。
髪を結ぶ物はいくつあっても困らない。クロジンデの気の利いた選択にはヘイゼルもこくりと頷いて。
「有難うございます、大切にしますね」
「もふもふさん。触り心地良かったです……」
可愛かった、ともふもふに思いを馳せるクラリーチェ。帰る時間になる前にと、お土産を探しにショップに足を踏み入れて。
お休みを貰って訪れたからには、何か喜んでもらえるお土産を探したい。
手に取ったのは、クッキーにキャンディの食べるもの。口にしやすいそれらには、もふもふ印のパッケージ。
それと、と、足を延ばした先にはふかふか枕。
「たまには、ご褒美があっても良いですよね」
丁度欲しいと思っていたのだ。帰り道の事を考えるといささか物が多いような気もしたけれど。
枕にも色々と種類があるようで。
ぽふぽふとクラリーチェが寝心地を確かめる横で、黒羽もまた枕を吟味していた。
愛用があったとしても、使い続ければ枕もぺしゃりと潰れてしまうもの。
機能を果たさなくなった枕の代わりを探しに来ていたのだ。
枕にはそれぞれ『ぼくの毛で作りました!』的なロゴが貼ってあるが、どう見ても全て一緒のもふもふに見える。
「……頭がこんがらがりそうだ」
もふもふなもふもふ――そもそも、何か別の呼び名はないのだろうか。
あらぬ方向に思考が飛びかけるのを首を振って阻止して、黒羽はまた枕探しに没頭するのであった。
気が付けば、思っていたよりもずっと時間が経っている。
「はーっ、もふもふ気持ちよかったなあ……」
みつきはもふもふを撫でた時のあのもふもふ感が忘れられず、帰ってからも是非とショップに立ち寄った。
きっと欲しい物があるはず。
「ぐぬぬ……全部買っていきたい、が。そんな金はないしなぁ」
もふもふラインナップはみつきの想像以上で、迷いに迷ってひとつのコーナーで足を止める。
目についたのはもふもふを模した枕だ。
これだ、とピンときたみつきは、もふもふをもふもふするように枕を抱き上げて、レジへと向かった。
大勢で賑わったもふもふの平原。
「うん、今年も良い感じ!」
お誘いを出した張本人は、一匹のもふもふを抱えながら満足そうに頷くのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
もふもふ! ご参加ありがとうございました。
良いもふもふ日和を~!
GMコメント
祈雨と書きまして、キウと申します。
皆様にもふもふなお誘いをお届けに参りました。もふもふは至福!
●場所・時間帯
暖かな陽気に恵まれた、広い平原です。
森に囲まれ、開けた場所には大量のもふもふ。そして傍に休憩所兼ショップがあります。このショップでは、レジャーシートやもふもふ用の餌を受け取ることができます。
お誘いはお昼時~夕方までの日中です。それ以外での来訪はお控えください。
●できること
【1】もふもふたちと戯れる
柵で囲まれた広い平原の中で、自由に過ごしているもふもふと戯れることができます。
一人につき2,3匹確保しても余裕がある程のもふもふがいるので安心してもふもふをもふもふしてください。
欲張りな人はたくさんチャレンジしてみても良いかも……?
【2】ショップを見る
もふもふの毛で作ったたくさんの商品があります。
オープニング以外にも、もふもふモチーフのクッキーやチョコの食品類や、もふもふが描かれたマグカップなども置いてあるようです。
一般的なお土産屋さんにあるようなものなら大体あります。
※あれもこれもとすると、結果的に描写が薄くなってしまう可能性があります。どちらかに絞ってプレイングを書くと良いかもしれません。
●注意
お連れ様がいる、あるいは団体での参加の場合は、相手の名前とID、もしくは団体名の記載をお忘れなくお願いします。
愛称のみの場合、迷子になりやすいので、きちんと記載して頂けると助かります。
白紙でのプレイング提出の場合、描写が薄くなる可能性があります。ご了承ください。
Tweet