PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<希譚>ぶっ殺しまくれ! 『屍行列』!<呪仔>

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『屍行列』
「倒したか?」
「ああ、もう10人はな」
 どこかに積まれた堆肥と、血と肉が腐る悪臭が周囲に漂う。バカみたいに大きな月と眼に疲労を与える街灯の点滅が俺達の気を参らせる。
 俺は深呼吸で体の調子を整えると刀にこびりついた黒い血を振り払う。相棒は自慢のリボルバーの様子を確認しながら慎重に一つずつ弾を装填していた。
 どちらもこの国には――いや、この『希望ヶ浜』では、混沌を拒絶した者達が住む偽りの日本にはあり得ない光景だろう。
「そうか、こっちは12だ」
「ったく、数が多すぎる。石神支社から離れたここでこんなにかよ」
 全くだ、イレギュラーズが来るまでの先行調査と聞いていたが余りにも数が多すぎる。疲れと人だったものを斬る感覚に腕が振るえる。
「ぞっとしねえな。このゾンビが元は一人一人の人間で、こいつらのそれぞれにも俺らみたいな人生の流れがあったと思うと――」
「おい、バカ、考えすぎるなっていわれただろ……?!」
 ふと、途方も無くなる事を考えてしまった。しまったと刀を構えなおした時にはもう遅い。
「な、なんだこいつらは?!」
 俺達は後方から突然何かに押し倒される。咄嗟にそいつを切り伏せ、立ち上がった時には数百もの死体の群れが。
「か、『屍行列』だぁ!」
 相棒のその悲鳴が、俺の最後の記憶となった。

●意訳:この辺に雑魚ゾンビがいっぱい沸くらしいよ?
「……念のために、もう一回せんせーが説明します」
 数日後、惨劇があった道路からそう遠くない静まり返った道路で、幾人かのイレギュラーズ達に『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040) が隠していた装備品の入った大きな箱を空けながら状況を説明する。
「簡単に言うとゾンビ退治、学園が予測したポイントで、迎え撃つ予定」
 再現性東京の『田舎』、石神地区には様々な都市伝説が伝わっている。卵が先か鶏が先か、その偽りの世界に造られた物語が『真性怪異』として狂気を振りまく存在と化している。
 その対象はイレギュラーズであっても例外ではない。現に何人かが連れ去られ、その救出の代償としてこの依頼をローレットが受ける事になったのだが。
「私達が倒す『都市伝説』はあるゾンビの群れ……『屍行列』って呼ばれてる」
 それはある法則に基づき、死体の群れが大名行列の如く集団移動を起こし、邪魔する者を全て殺し取り込んでいくという。決して強いなどとは口が裂けても言えない連中だがそれはあくまで戦えるイレギュラーズ基準での話。このような増殖と狂気伝染を繰り返す様な集団を放っておいては、石神地区に住まう人々がどれだけ犠牲になるかわかったものではない。
「先に調査に行った人達も行方不明になってるんだって! 早く行ってばったばった倒して助けに行かなくちゃね!」
「……メープル、いつから」「最初から!」
 装備箱から飛び出した『おてんばメープル』メープル・ツリー(p3n000199)に台詞を奪われたカルアがため息をつく。そしてこれ以上の情報も不要と判断すると立ち上がり、長槍を背負うのであった。

「いこっか、それと……あなたもあの子くらい頭軽くしていった方がいいよ……」

 だって。考えすぎると、きっと連れて行かれちゃうから。

GMコメント

 こんばんは、塩魔法使いです。
 全2~3章予定のラリーとなります。

●成功条件
 ・『屍行列』の撃退
 ・『屍行列』の再発防止
 ・全イレギュラーズの生存、帰還

●第一章『屍行列』
 希望ヶ浜の石神地区。その寂しげな田舎の一角です。
 ひび割れたアスファルトに寿命が近く点滅する街灯、道の左右にある坂の下の、希望ヶ浜の都会に新鮮な白米を提供しているであろう田園も今は死んだように眠っている。
 こんな開けた所にお化けなんて襲って来るはずがない、そう思っていると、ほら。

○ゾンビ x???
 何らかに触れてしまい狂気を受けた死体や魂を抜かれた者の成れの果て。
 どこからともなく次々と現れイレギュラーズに襲い掛かってくるでしょう。
 数は3桁以上、数えるだけ無駄。でも一体一体はそんなに強くなく召喚されたての丸腰のイレギュラーズでも1体は倒せる。頭からっぽにして無双してやりましょう。
 これだけの群れとなると彼らを統率する核がありそうなものですが……。

●プレイング書式
 1行目に【タグ】+人数(一人なら空行)、2行目以降は自由。
 必須ではありませんが、迷子を避けたい場合はどうぞ。

例:
【最強軍団】3人
ゾンビなんて自慢の魔砲で吹っ飛ばしてやる!

●NPC
 戦闘が不安な場合は、以下のNPCのどちらかにサポートをお願いできます。
 NPCは同行イレギュラーズに合わせてレベルシンクされます(下限・上限あり)。
 同行の有無に関係なく、絡みが無ければ描写量は最低限に押さえます。

○カルア
 盾役、反応が凄く低い。名乗り口上や防御技術【変動】スキル、再生+反射のパッシブを持ちます。なんで教師姿だって? 趣味さ。
 
○メープル
 回復力優れる癒し手です、高威力の【識別】範囲攻撃も可能だが打たれ弱い。実はめっちゃビビってる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <希譚>ぶっ殺しまくれ! 『屍行列』!<呪仔>完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月08日 22時01分
  • 章数2章
  • 総採用数42人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節


 月下の石神地区、その比較的広い道路――といっても車が辛うじてすれ違える程度だが――その道路に、線香立てが置かれる音が響き、立てられた一本の線香が不可思議な色の煙を放つ。
「この煙にゾンビは釣られてくるんだって、希望ヶ浜からの支給品」
 水田は眠り、虫は一匹も鳴いちゃいない。耳が痛くなるほどの静寂に包まれた田舎の道路に僅かな緊張と線香の煙が漂う。
 ただ時間だけが流れ続け、緊張に耐え切れず誰かが唾を呑んだその瞬間後方から物音が響く。一瞬でイレギュラーズ達の筋肉が強張り、手馴れの者ならば即座に戦闘の構えを取ったであろう。
「……な、何アレえっ!?」
 そして、振り返ったイレギュラーズ達はそれが神出鬼没である理由を知る――やつらは地面から這い出て枯草を薙ぎ払い、暴れまわる猛牛の群の如き勢いでイレギュラーズ達へと飛び掛かって来たのだ!


第1章 第2節

昼子 かぐや(p3p009597)
ガンカタ巫女

「ゾンビィ!?」
『ガンカタ巫女』昼子 かぐや(p3p009597)の驚愕の言葉を肯定するかの如くゾンビの泥まみれの手が彼女に向けて振り下ろされる。かぐやは咄嗟に出した刀で辛うじてその手を吹っ飛ばすと、不快に顔を歪めながら後方に下がる。
「臭いし遅いし気持ちわるぅ、マジ最悪なんだけど!」
 召喚されて僅か数回の依頼でこんな目に合うとは、かぐやは内心毒付きながら護身用の拳銃に込めた弾丸を呻くゾンビの脳天に向けてぶっ放す。流石に脳を撃たれればと言ったところか、拳銃に込められた退魔の力のお陰か、動かなくなったゾンビを前にかぐやは呼吸を整える。こんな変態ゾンビに襲い掛かられたらたまったものではない、二度と近づけてやるものか。前衛が盾となり、食い止めている所にかぐやは次々と押し寄せるゾンビから距離を取る様に逃げながら銃弾をぶちかます。
「おさわり禁止だっつってんだろこのド変態ゾンビ!!」
 弾倉を交換しながらかぐやは思い出す。石神地区についてよく孫娘の恐怖を煽る様に語ってくる宮司の祖父の事を。今思えばあれから夜にトイレも行けなくなった、そう思えばこのゾンビ達に文句の一つや二つも言いたくなる。
「ああもう! ゾンビぶっ飛ばしたら爺ちゃんに文句言ってやる!」
 前衛の背を撃たぬ様かぐやは震える手を抑え、ゾンビの足を止める様に次々と撃ち続けるのであった。

成否

成功


第1章 第3節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

「メープル!」
「サイズ!」
 ゾンビから逃げ回るメープルの元へ反射的に飛びつく様に、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)が彼女の震える体にそっと腕を伸ばす。
「話は聞いていたけど練達がこうもホラーになるとは……」
 そのままゾンビの爪と歯を躱し、地面の目と鼻の先の高さで手に持ったロケット花火に火をつけゾンビに向けて発射すると追加で爆竹の轟音も追加。そっとメープルを放すと自らの肉体に魔力障壁を展開し、己が肉体を盾にする!
「さて、どうしたものか……」
 自らを取り囲むゾンビを前にサイズは次の手に悩む。いつもの様にここで自らに染みついた妖精の血を使い真の力を解き放つわけにはいかない――たとえメープルが構わないと言うと分かっていても。
 この障壁をゾンビは打ち破る事はできないだろうが時間の問題、最悪このままこの身を捧げるしか……そうサイズが覚悟を決めた瞬間、突然コンクリートを突き破る力強いツルがゾンビの躰を掴み、サイズの周囲の仲間ごと薙ぎ払う!
「おっとぉ、もう戦えない妖精じゃないんだよ?」
 満面どや顔なその声の主にサイズはため息をつく。さっきまで怖がって戦う事すらできなかったじゃないか……何はともあれ隙は出来た。
「感謝するぞ、メープル!」
「サイズ、やっちゃえー!」
 サイズはその僅かな好機を逃さないと魔砲を展開し、先程まで自らを覆っていたゾンビの群れへ容赦なく全力のレーザーを叩き込んだ――!

成否

成功


第1章 第4節

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
チクワ=ザ=アークゴッド(p3p009420)
誰だお前!

「こんなに次々とゾンビが……石神地区って何かあったところじゃなかったっけ」
 倒せど倒せど勢いは止まらず、ゾンビの洪水の中『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は一人呆れたように両手を上げ首を振る。
「ホント神殿で人がなに死んでんねんでって話なんだよね」
「ちくわ大明神」
「何よあなた」
「チクワ=ザ=アークゴッドである」
「いやそうじゃなくて」
 腰を折られ怪訝そうな顔を浮かべるセリアを眺める、『誰だお前!』チクワ=ザ=アークゴッド(p3p009420)もまたこのゾンビの群れと再現性都市の未来を真に憂うものであった。
「弊板はこの救われぬ者たちも救わねばならぬ」
 チクワは願う。このようなゾンビにもちくわの光が差し込み、救われれねばならぬ。
 ちくわは全ての衆生を救済する存在であるからである。
 たとえセリアのツッコミポジを何かすごいのに取られたメープルが向こうでぽかんとしていてでもある。
「オン・ノウマクサマンダ・チクワボダナン・ソワカ――である!」
 チクワは全ての魔力を一点に収束する。それは凄まじい光と電荷を超高濃度に圧縮、ゾンビの群れに大穴を開けるのである!
「うひゃあ!?」
 魔砲で消し飛んだゾンビの洪水が拓かれる、視界が開け、燃え盛る戦場に空いた大穴に見えるはチクワ、まさにちくわ大明神であった。
「メープル君とセリア君と言ったか」
「そ、そうだけど」
「何かしら」
 一時的にゾンビの群れが収まった時、チクワの声が二人を呼びかける。近づいた二人にチクワはこう、自らの情報を解放した。
「弊板は戦闘中に動けぬ、二人のちくわぶの様な援護に期待する」
「そうね、壁にして後ろから攻撃させてもらうわね」
「わかった、範囲攻撃で……ん?」
 再び違和感に硬直した妖精、それはお構いなしに魔本を開くセリア。迫りくるゾンビに彼女が右ポケットから取り出し放り投げたものは無数の火花の雨あられ!
「安心なさい、倒れたらその時は担いで逃げるぐらいはしてあげるから!」
 後方に飛び退いたセリアの魔力が複雑な軌道を描きゾンビを蹂躙する。間髪いれず放たれる一撃一撃が光線となりチクワの周囲のゾンビを焼き払い、同時に注意をセリアに引き付ける!
「そして核になる存在を見つけたら……最大火力で楽にしてあげるわ!」
 その言葉の通りセリアの夜目は深夜の道路の敵であろうとも強敵を見逃さない。
 なんだかんだ彼女はベテランだ、少なくとも戦えている間ならば問題ないだろう、と。チクワはそう考えると、隙を見せたゾンビの後ろからごんぶとレーザーを叩き込むのである。

成否

成功


第1章 第5節

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反


「成程、屍行列」
『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)の怒りの魔力が迸る拳がゾンビの頭をその狂気ごと吹き飛ばし、その骸が坂を転げ落ちていく。その骸を踏み越え、次から次へとゾンビが湧き出てくる。
「既に滅んだ破滅をもたらす存在、か」
 どこか呆れた様な笑い声。この雑魚のそれぞれに破滅をもたらす能力など無いだろう。だが、この数は厄介だ。決して無傷で乗り切るとはいくまいし、現にこの肉の濁流が仲間達を分断し、散り散りにしてしまっているのだ。
「ったく数が多いなあ! なんたらオブデッドの世界に迷い込んじまったか?」
 R.R.の頭を砕こうと飛び掛かったゾンビの腕が変幻自在な三節根に引きちぎられる。体勢を崩したゾンビの胸元を容赦なく長い刃が貫通する。
「ヒュー! 相変わらずパワフルだナァ!」
 この様な状況下であろうとも、『マジ卍やばい』晋 飛(p3p008588)は決して臆することなくドーパミンを滾らせるとカルアにスパム缶を放り投げる。
「ほらよ、竜の姉ちゃんでもこっちの方が嬉しいだろ?」
「……飛さんのお陰で助けに来れたけど」
 こっちは笑えない冗談と苦笑を浮かべるカルアはスパム缶を受け取り一旦ポケットに仕舞うと飛から飛び降り、R.R.を庇うように回り込む。
「大丈夫?」
「ああ、問題ない」
 R.R.とカルアの視線が合うと二人は同時に頷く。敵を引き付けて欲しい、危険だろうが――その言葉は言わずとも伝わって。
「大丈夫、それが私にできる事だから」
 R.R.を護ると槍を構えたカルアは彼が憎む破滅の軍団の中へと突貫する。彼女の咆哮に意識が支配されたゾンビの脳天にR.R.はゆっくりと包帯の撒かれた銃を向け、引き金を引いた。赤子の手を捻るより容易いとはこのことか。
「心配するな、あんたには当てない」
 そう、極限を超えた彼の領域に敵などいない。銃口から放たれた幾百もの魔弾はその破滅の力を以て化物どもの足を打ち抜き。その肉体を今度こそ地に還せと撃ち滅ぼしていく。そして、仲間が吹き飛ばされてもなお止まらず愚直に突き進むゾンビにはこれでもかと言わんばかりに飛からの『おかわり』が追加されるのである。
「おっと、カルアを護るのは俺の仕事だぜ?」
 始めはガトリングに始まり、弧を描き着弾した榴弾、そしてそのパワーアーマーを活かした大胆かつ華麗な回し蹴り――カルアの前で親指を立てどや顔を決める飛にカルアは思わず笑いを浮かべてしまうのであった。
「……もう、張り合わないの」
「おっ、笑ったなカルア! いいねぇ、女は笑ってるのが一番だ!」
 大きな声で笑う飛にR.R.は「次が来るぞ」と銃を眼前の群れへと向け構え、飛もまた任せとけとその手に握る武器を変質させる。
「おう、ジャズでも聴きながら一丁やろうや!」
 せまりくるゾンビの群れを前に3人は再び迎撃の体勢を取る。さあ、こいつらを喰らってやろうではないか。

成否

成功


第1章 第6節

白藤棣 夜依子(p3p009614)
今日のお天気どうですか

 気分爽快で戦う戦闘狂もいればそうでない者も当然いる、というか普通この死臭と迫るアンデッドの群れに辟易としない方がおかしい。
『今日のお天気どうですか』白藤棣 夜依子(p3p009614)も当然その後者寄りの存在。一応近くにいた梟を呼び観察にあたるが、本当に多い、死体、死体、死体の群れ。
 予想通り、奴らは石神神社近くの一点で掘った穴へ我先に潜り込み、こちらへと向かっている。つまり穴の中にいるゾンビはまだまだ多く、敵の増援は止まらないというわけだ。
「これなんて悪夢? 今すぐ家に帰りたい」
 酒クズやめて心機一転などと考えていた数分前の自分が憎くて仕方ない、なんならここでヤケ酒キメてしまいたい。だがこのままじゃあ帰る事もままならない。
「こうなったら……拳一つでゾンビ全部ぶっ飛ばすしかないって事よね……」
 腹立たしい思いを隠しながら、夜依子は眼前のゾンビへ向けて思い切り魔力をぶつけ吹っ飛ばすのであった。嗚呼、神秘術はこいつらに触れなくていいからやりやすい――

成否

成功


第1章 第7節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

「なるほど、つまり無双しろと言うことだな?」
「どーん! ばーんってするのだわ!」
 乱雑に群がり、攻撃に消し飛んでいくゾンビの群れを前に『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)は腕を伸ばし叫ぶ章姫に微笑ましく頷く。そんな最中にも彼らの周りのゾンビ共は足元に置かれた呪符の地雷の如き爆発に吹き飛び、消し飛んでいく。
「……ところで神無月、霊関係の仕事と言う事で声をかけたはいいが……少々張り切りすぎじゃないか?」
「何かおっしゃいましたか頭領」
 気まずそうに背後を振り返れば鬼灯と同様の装束を纏った青の瞳の忍――神無月が御札を手に目を細める。
「ご心配なく、この様に接近前に除霊すれば問題ありません――喝!」
 思わず背筋にかつての悪夢が過り凍り付く鬼灯。
「それに、どこぞの異様な粘性生物と違ってこちらの方々はわたくしにとってただの玩ち……相性が良いので」
 その目は明らかに『仕事しろ頭領、しないと壊すぞ』と……そこまでは言ってない気もするけど間違いなく言ってる。兎に角幕を上げようそうしよう。
「ゾンビさんと紅茶をするのだわ?」
「こいつらに章殿の茶は贅沢すぎる――おい、貴様、本気にすると万死に値するぞ!?」
(神無月が手抜きして)迫るゾンビを鬼灯は睨みつけると魔糸を絡ませた金属球をしならせ、怒りの撃退モードに入る。別にゾンビにお茶をする知性は絶対ないはずだが、それでもどうしても許せない鬼灯なのであった。

成否

成功


第1章 第8節

セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

「死者の行列、か」
 かつてイレギュラーズが相対したそれを想起しながら、『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は道路を埋め尽くす奴らを観察する。あれと比べれば赤子の悪戯にも等しいが、何にせよ奴には目的があるはずだ。
 なら調べさせて貰おう。セレマはするりと死者の流れに割って入ると、美しい微笑を浮かべ、死者の瞳へと語りかける。セレマの美しさは命を感じさせ、同時に剥製をも想起させる――醜い骸にこの生命を滅ぼす術はなく、ただその筋肉を焼き尽くされるのみ。
「他愛も無いな、さて、交渉と行こうじゃないか」
 セレマは比較的状態の良い妙齢の女性の瞳を見つめ、語りかける。
「さあ、可愛らしいお嬢さん」
 もはや肺も機能してはいないだろうが、何かを話そうとする魂の気配は感じ取れる。それだけで意志の疎通は十分に可能である。
「少しボクとお話ししようか。キミの目的について――」
『あト、5ニん』
「ほう、物を数える感性はあるのかい、あと5人でどうなる?」
『ハジメハ10、次に9、次に8、イタイタイタイクルシたい』
 理解のできない数字の羅列。拒絶するかの如くセレマの頭に走る頭痛、気が付けば女性の死体は別の骸に貪られ、この魂とはもう交感を期待できまい。ああなんと醜く、面倒な光景か。セレマは酷く落胆するのであった。
「死体風情が、口封じか? それとも敵味方の区別すらつかないのか? この死体どもは……」
 

成否

成功


第1章 第9節

ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて

 血は滴り、肉は踊り、轟音が屍を吹き飛ばす。圧倒的な大規模な戦闘の光景に『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)はとにかく1体でも多くのゾンビを仕留めんと神秘術を展開する。怨念が飽和し、動きが硬直した死体が次々と土に押しつぶされ再び大地へ帰っていく。
 何処かの墓場から呼び起こしたのだろうか、圧倒的な死体の数にドゥーは疲弊しながらも丁寧にトドメをさしていく。
「どうか安らかに、眠って」
 遥か彼方、ドゥーはゾンビが這い出てくる根元の方角を見つめながら一歩でも多くゾンビの群れをかき分けていく。これだけの死体がありながら疎通ができそうな魂は感じ取れない。一度ゾンビになり、狂気に汚染された者のそれはともかく、彼らに襲われたであろう生徒の物はどこへいってしまったのだろうか?
「……僕達がなんとかしなきゃ」
 ……ドゥーは覚悟を決め、ゾンビの激流をかきわけていく。
 もし彼らもまた『この中に居る』としたら頼れるのは、そして彼らを救えるのは自分達、イレギュラーズしかいないのだから。

成否

成功


第1章 第10節

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

「ゾンビやと? なら俺の出番やな!」
 夜妖退治なら自分の右に出る者はいないだろう、そう『大阪人』結城 晴人(p3p004465)は掌に拳をぶつけながら力を籠める。……え、名前が違う? ハロルド? ハンマーマン? 知らない人ですね、現に聖剣だって見えないじゃないですか。
「大分数も減って来たみたいやな、後は全部俺に任しとき!」
 晴人はマギ――じゃなくて、悪霊退散の詠唱を適当に唱えるとゾンビの攻撃を遮断する結界を展開、そのオーラを叩き盛大にゾンビ達を吹き飛ばすと威勢よく叫び突撃!
 もはやゾンビ達に何もする事はできない。後は晴人の独断場。
「砕け散れェ! 大阪殺法【喜連瓜破】!」
 ゾンビの骨を掴み、そのまま盛大に群れへと向けて吹っ飛ばす!
「往生せぇやァ! 大阪殺法【正雀】!」
 凄まじい大阪人の百裂脚が鬱陶しい死体の群れを破壊する!
「これでも食らえやァ! 大阪殺法【弥刀】!」
 トドメと言わんばかりに振り下ろした手刀が強烈な衝撃波を纏い、その頭蓋骨を破砕する!
「しゃおらあっ! 見たか大阪拳法! 俺もやればできるもんやな!」
 晴人は空に吠え、仲間の負担を減らすべく。あるいは無敵の自分の体を酷使し魔を全て滅ぼすべく、その拳を再び死体へ向けてぶつけるのである!

成否

成功


第1章 第11節

日野森 沙耶(p3p008801)
火ノ守

 ゾンビの肉が縦に切り裂かれる。真っ二つに倒れていくゾンビの骸を前に『火ノ守』日野森 沙耶(p3p008801)は太刀を鞘に収める。個々が弱く数が多いというのはいい事だ。面倒な事は考えなくていい。何よりこの骸を倒す度に、この掌に握られた刀の使い方がより手に馴染んでくる気さえしてくる。
「怪異を斬るは凶祓の本分。それが元の世界でも、混沌でも……頑張ろっか、燎?」
 後方には仲間がいる、自分が考えやるべき事は一つ。この軍団を効率よくかつ手際よく切り捨てる事のみである。
 沙耶は構えると体勢を低く突撃、視線の合っていないゾンビの足を突き、崩れた所を素早く薙ぎ払う。鮮血が奔り、死体の上に動かなくなった新たな死体が覆いかぶさる。
 だが、自分が倒さねばならぬ敵は、皆が探し求めている敵はこの程度ではないはずだ。沙耶はより強く集中し、一際早い動きのゾンビの頭を目がけて刀を振り下ろす――!
「……ッ!」
 刀が弾かれる。金属と金属がぶつかる音が確かにした。沙耶は体勢を取り直し、再び群衆を睨みつけるもそれはすでにゾンビの群れに紛れてしまったようだ。
「もしかして、今のが?」
 今の交戦が本体に繋がる手掛かりになるかもしれない――沙耶は手に残る感触を仲間に伝える為、死体の群れに道を切り拓くのであった。

成否

成功


第1章 第12節

三上 華(p3p006388)
半人半鬼の神隠し

「考えてすぎると連れていかれる、か」
 攻撃の衝撃に耐えきれず自壊したゾンビを前に『半人半鬼の神隠し』三上 華(p3p006388)は考える。目の前にいる連れていかれた彼らの境遇を、彼らは何を考えてしまったのかと。そして彼らをまとめ上げる存在は何なのかと。
『神隠しにも似たそれの事をどうしても考えられずにはいられない』
 意識を思考に取られた華の背後からゾンビが迫りより――斬り捨てられる。

「ああ――よし、切り替えた」
 振り返り、何時のまにか背後で自分を狙うゾンビの数を数えると華は息を整える。
 全く、少しでも考えただけでこうも狙われるとは油断も隙も無い相手だ。
「さあ。物言わぬ死体に戻そうじゃないか」
 華は刀についた血を振り落とすと一際体躯の大きなゾンビ目がけて魔力込めた刃を向ける。数は減ったが、次第に頑丈な奴も増えてきた。さあ、もう一押しと行こうじゃないか。

成否

成功


第1章 第13節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
灰羽 裕里(p3p009520)
期怠の新人

「再現性東京の町外れは、混沌の町とそう変わらないんだな」
 ある者は体を張り、ある者は暴れまわる最中、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は後衛から前衛の支援に当たりながらそんな事を考えていた。流石は練達というべきか、街頭があり、水田は機械で綺麗に整えられているが。それでもこの石神地区は街中よりは心が落ち着くというものだ。
「畑があって、人気があって、暗がりが大きくて……危険がある」
 ……ゾンビがいなければ。
 彼女の眼前で閃光が走り、遥か前方のゾンビどもの頭が瞬く間に吹っ飛ばされる。わずかな硝煙の臭いを感じながらラダは銃弾を込めなおす。
「うん、アンデッド、ばかり、だね」
 前衛のバリケードを突き破り、何人かのゾンビがこちらへと漏れ出てくる。能がない奴だ――目を動かし指示をするラダに頷き『期怠の新人』灰羽 裕里(p3p009520)はガトリングの引き金を引き、無数の弾丸を見舞いする!
 轟音が鳴り響き、足を失ったゾンビどもは前のめりに倒れ、続く銃弾に転がされていく。
「もっと、奥に、進まないと、無理だよね」
「そうだな……向こうにゾンビどもが這い出ている大穴がある。そいつを潰さない事にはいつまでも――立て直せ、次がくるぞ!」
 ラダが警告を飛ばし、裕里は気だるそうに次の攻撃へと移る。警告されるまでもなく敵は良く見えている、見えてはいるが、本当に数が多くて面倒臭い――
 裕里の弾丸はその周囲のゾンビを薙ぎ払い、仲間に近いゾンビは慎重にラダの弾丸がひとつずつ撃ち抜いていく。
「ラダ、さん、前に」
「ああ、そろそろ私達も進んだ方がいいな、しかし親玉の姿が一向に見えないが――!」
 走り、倒れた味方の救出に走ろうとしたラダは異様な気配を察知し、身をかがめ攻撃を回避する。頬に血を流させたそれは弾丸の様であり、また骨の様な感覚を感じさせた。
「これは、ゾンビが、蹴った、とか?」
「だろうか……まさか、な?」
 殴る、噛みつく程度の奴らに遠距離の手段はない筈。不可解な感覚を浮かべながら二人は死体の根源へと先を急ぐのであった。

成否

成功


第1章 第14節

アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
デボレア・ウォーカー(p3p007395)
海に出た山師

 積み重なった屍の山の中から光が漏れる。それは内側でより強く光り輝き、閃光となってゾンビを吹き飛ばしながら炸裂する。
「輝くおでこは根性の証! デボレア参上なんだから!」
 貰った傷を全て反射すると言わんばかりに眼球が焼ききれそうなほど眩いおでこを輝かせながら仁王立ちする『海に出た山師』デボレア・ウォーカー(p3p007395)は頭を振り自らを襲ったゾンビの山を薙ぎ払い、遅れ道路から炸裂する火柱がゾンビ達を空高く吹き飛ばす。
「作戦大成功! みんな楽にしてあげたんだから!」
 尽きかけた体力を文字通りの根性で立ち上がりながら、デボレアの名乗り口上が再びゾンビを呼び込み、集め、吹き飛ばす。仲間の盾となり走るゾンビをその小さな体躯で受け止め激流溢れるゾンビの川を上流へ、上流へと進撃していく。
「これが! 根性! なんだからぁ!」
 全てを切り裂く勢いの光はまるで天の雲を切り拓くかの様で。吹き飛ばされたゾンビの肉体は舗装された道路を転がると、その裂け目から吹き上がった黒い炎に貫かれ、亡骸も残さずこの世から消滅する。
「なにこれ、ゾンビ……?」
 苛立たしく『闇と炎』アクア・フィーリス(p3p006784)がその右腕を振るえば、遠く離れた火柱は闇夜の中でもより視認できるほどの深い闇をより強め灰を吹き飛ばす。その心に揺れる心などはじめから存在しない、ただ灼いて、全部苦しんで死ねばいい。
「理由はいらないよね、殺すね」
 アクアの殺戮に理論や定石という言葉は無いと言わんばかりに、その虚ろな緑の瞳に映った物から順番にその身から噴き出す憎悪の炎で破壊していく。自らの肉が痛めつけられようとも遠方の死者の群れを腕から湧き出る炎を振るい破壊し、その後に目の前の死体に気が付き、身に纏った呪いで振り払う。
「死人の分際で纏わりつくな! この群れる事しか知らない能無しが!」
 殺してなお生きるとはこれ以上の理不尽があってなるものか。死んだんだから、殺してやったんだから動くな。まだ動いている、殺さなきゃ。殺さないと。
 ただ純粋な殺意だけを秘めたアクアの足は、自然により多くのゾンビを求めてゆっくりと動くのであった。

成否

成功


第1章 第15節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
アト・サイン(p3p001394)
観光客
エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反
アム・ハーバーランド(p3p009564)
未知への期待

「やっと抜けれましたねえ」
 地上ではゾンビが目に着く生き物へと飛び掛かり、イレギュラーズ達はその悉くを打ち破っていく。『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は屍行列の隙を突き、なんとか宙へと抜け出すと一人考察に浸り出す。僅か下を走りながら、ゾンビはエマに気が付くことがない。その大半が墓場から掘り起こされた死体であろう奴らは既に五感などなく、獲物の思考を頼りに襲っているのだ。それは量か、あるいは質か――どちらにせよ、思考が漏洩する事のないエマにとっては関係のない事である。
「それに先行隊の魂も死体も見つからないのは不思議でごぜーますね」
 その目的が自己増殖であるならば生存していないにせよ、『この中にいるはずなのに』何故見つからないのか。狂気を伝搬する事もかなわぬほど肉体が損壊したのか、あるいは。
「……そろそろ佳境でごぜーますねえ」
 考えながらエマはゆっくりと大地の喧噪を眺め続ける。エマが眼下に見下ろすのは水田の一つに空けられた、死者が這い出る大穴。イレギュラーズ達が彼らと遭遇した地点から数百メートルほど離れた、屍行列の根源。
「……斬る!」
『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)は抜刀の凄まじい力を利用し、凄まじい回転斬りで群がる獲物を薙ぎ払う。残心をとり、周囲の気を取り込むと裸眼を細め、カルアの方へ視線を移す。
「ほんっとうに……多い!」
 長槍を駆使し必死にゾンビを押し返そうと腕に力を込める彼女に対し、流れるように凄まじい突きを繰り出すと空気が押し出され、風圧で彼女の周囲のゾンビが吹き飛ばされていく。
「大丈夫か?」
「うん、まだ……!」
 一息つきポケットにしまっていた眼鏡を再び付けなおし、山を人差し指で押ししっかりと外れないのを確認すると、修也はカルアの応戦へと向かう。穴から這い出し、まだ活発な個体が多いのか本来ならば死んでいるはずのダメージを受けてなお動き続けるゾンビが地面を這いずり二人へと襲い掛かろうとするも、『探求と覚悟』アム・ハーバーランド(p3p009564)の放った優しくも決意に満ちた炎に焼かれ、灰へと返っていく。
「『屍行列』……死者を弄ぶような怪異とかずいぶんと悪趣味だよ」
 アムはそっと炎を飛ばした手を下ろすと、安息を得たであろう人達へと鎮魂の祈りを捧げる。あと少し、あと少しだ。敵は強くなってきたが勢いは明らかに弱まってきている。今はただ戦闘を続行し、彼らに鎮魂を捧げねば。アムは戦斧を取り出し力いっぱい握りしめると大声を上げゾンビ目がけて飛び掛かるのであった。
 その最中、修也の手がカルアに差し伸べられる。
「悪かったな、新しい作戦につき合わせて」
「ううん、作戦は凄く良かった、問題ない……けど」
 多少の傷ならばひとりでに治るが、この長期戦で流石に疲労がたまってきたのか座り込んだカルアに修也は治療を施す。
「まだいけそうか? この数だ。無理は禁物だぞ」
「ありがと、もう平気!」

「もう平気なの!? カルっちはどうなってるの!」
「あれは再生力がおかしいからなー? メープルはまだ装備も防具も揃ってないし……」
 後方で喚くメープルを宥めながらサイズは彼女の口に白い魔法薬を流し込みながらやれやれと首を振る、案の定ガス欠になっているじゃないか。
「随分と頼もしい魔法を使えるようになった様だけど……もう行けそうか?」
「けっ、けほ……何かめっちゃ元気出てきた! 回復は任せて!」
 妙に効きすぎた気もするが……とにかく、元気に杖をぶんぶん振るメープルに背を任せてサイズはゾンビの群れに飛び込む。焔の魔力を鎌に纏い、群がるゾンビの首を燃やし跳ね飛ばすのだ。
「一気に決めてやる……食らえ! エクスプロード!」
 その体力が尽きかけようともサイズは炎の舞いを止める事はない。全ては妖精を護るために。その処刑は終わることなく、延々と続くかのように思われた……サイレンの音にサイズが気付き、その手を止めるまでは。
「せめて、もう少しだけ――ん、なんだあれは! パトカー? 一般人が何でここに!?」
 ゾンビを勢いよく弾き、あるいは動かなくなったものを乗り越えながら、パトカーがこちらへと迫ってくる。サイズが辛うじて飛んで躱すと、激しいドリフトの白煙と共にそれは停止し、前後に備え付けられていた木材の簡易的なバリケートと共に道路を封鎖するのであった。
 なんだ。とサイズは瞳を閉じ呆れるのであった。こんな登場をする様なイレギュラーズは彼らぐらいしかいないな、と。
「動くな! ロレ視庁よ! 貴方達には器物破損、傷害罪、暴行罪、殺人未遂及び殺人罪――あとなんかあったかしらアト?」
「僕たち襲ってきてるんだから公務執行妨害でいいだろ、万能だぞ?」
「それじゃあ撃てないじゃない。とにかく今すぐ伏せて掌を頭の後ろに向けなさい!」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)のぶっきらぼうな物言いにそっけなく突っ込みを入れながら『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は魔書で車を殴り抜けようとするゾンビ達を迎撃する。
「ちょっと、話が違うじゃない。ねぇ、ゾンビ映画だと警官ってどうなるの?」
「所謂ヤラレ役だね! 主人公一行に加わらないと容赦なく死ぬよ!」
 スーツ姿のアトは軽口を叩き笑みを浮かべると自慢のリボルバーを取り出し、弾倉にある魔力弾を乗り越えようとするゾンビ共へ向けて全て叩き込む。ゾンビの脳天で炸裂した玉は複数の金属片に分かれ、バリケートを超えようとする無法者を血に沈めていく。
「特にこんなバリケードに立てこもっている連中は数に押し負けたり、デカブツとかが突如として現れてふっ飛ばされるもんさ!」
 口は災いの元。数十秒ゾンビの流れを食い止めた車は次第に体重で押しつぶされ、下の水田へと転がり落ちた所に巨大な影が現れる。
「言わんこっちゃないじゃない、こちらロレ視庁、マル妖につき特殊兵装の使用申請……って。ああ、びっくりした」
 これは下手なバリケードよりは安全ね――イーリンがその真紅の瞳で見つめるは闇夜よりも昏い漆黒の影の蠕動。肉とは最も程遠く、同時に最も肉らしい『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)の肉の壁。
「任せたわよ」
「屍どもを抑え込むのは得意だ。嗚呼『私』は確かに『私』を理解したぞ。Nyahahahaha!!!」
 その影は無数の触腕を為し、蠢くゾンビの身を絡めとり、蕩かしていく。臓物は肉。にくはホイップクリーム。
「貴様等の蠢きと私の蠕動、何方が肉らしいのか比べ給えよ。楽しい愉しいホイップクリームの横断だ。Nyahahaha!!!」
 幾ら血肉を貪ろうにもその不滅なる肉体を破壊する方法などあるはずもない。少なくとも、彼女よりも不滅という『辞書』が相応しいイレギュラーズはローレットにはそうはいないだろうから。
 オラボナの巨大な体躯の背後から飛のパワードスーツが迫りよる。その足に備え付けられた車輪から火花を放ちながら飛はオラボナを飛び越えると、ゾンビどもの顔面に鉄拳を叩き込むのであった。
「ウゼェ、発生源は目の前にあるってのに、クッソウゼェ! カルアちゃんとメープルは疲れたろ、下がってな!」
 二人を発見した飛のボディスーツから電子音が鳴り響き、鉄が唸りを上げアスファルトを貫く音が鳴り響く。それは蜘蛛の如き鋭い脚と幾多の武装が積まれた彼の所有する特殊戦車である。
「そいつは改造試作機のカイセンってんだ! デートの前に怪我されたら困るからなあ! メープルもよく頑張ったな、そいつを乗り回して楽し……ってあぁ?」
 二人からの礼を期待して飛が振り向けば既にメープルの姿はなく、遠く離れて気まずそうな顔をしているカルア。そして飛の肩を叩くサイズ。
「凄い勢いでメープルが飛び込んでたから、離れた方がいいぞー?」
「ああ? 俺がそうしろっつったんだ。それに主砲を使わない限りそんなに酷い事は……」
 直後何かを察した飛が屈むと戦車の主砲が唸りをあげ、凄まじい爆風が吹き荒れる。
「どひゃあ!?」
「……言わんこっちゃない」
 あの機械馬鹿妖精にこの手の兵器を貸そうものなら、壊れるまで使い倒す。
「っ、いいねえ、気に入ったぜ! そのままバカスカ撃っちまいな! 俺もまとめて轢き殺してやらあ! ……ってもう死んでるか! っははは!」
 ヤケクソか本当に気に入ったのか、飛はメープルの爆撃も気にせず大笑いをすると再びゾンビの群れへと強烈な蹴りとパンチを打ちかましにブースト全開で飛び掛かる。この混沌とした状況をオラボナが笑い飛ばす中、アトは呆れた様にイーリンへと声をかけた。
「何はともあれ、あの穴への道は切り拓けた様だ――ド派手にかましてくるといい」
「ええ、そうね――『神がそれを望まれる』」
 イーリンは拳銃を放り投げると取り出した魔書から戦旗を取り出し、爆発を巧みに避けながら水田に開いた大穴の近くへ駆けていく。
「ああ、やっぱり君にはそれが似合う――ド派手に崩落させてやるといい」
 その軌跡は流星の如く、戦旗が紫の尾を引き、その魔眼は真紅に輝く。穴から這い出ようとしたゾンビが必死に腕を伸ばそうにも既に試合は決していた。

「カリブルヌス!」

 紫の燐光が屍行列の根元を巻き込み、全てを浄化していく。ああ、嗚呼、これでどうか終わりますように――

成否

成功

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