シナリオ詳細
新春へっちスライム・エンペラー対忍々の最後
オープニング
●対忍々「あけましておめでとうございます。よろしくお願いします」
――対忍々(たいにんにん)という魔物をご存知だろうか?
それは一言でいえばスライムである。だが、ただのスライムではない。
奴らはいずれも硬い・強い・早い・ついでにエロいの四拍子を揃えた恐るべきスライム達なのである。ある時は山に現れ、ある時は小規模な建物を勝手に占拠する事もあるとかないとか……それ故に何度かイレギュラーズとの交戦経験もあるほどだ。
しかし一番重要なのはその強さではなく『奴ら』という表現である。
勘の鋭い方はお分かりだろうが対忍々は一体ではない。
複数の個体が確認されており――つまり、一族を形成している魔物なのである!!
「うわあああああ――!!」
「き、きゃああああ――!!」
そして――豊穣郷カムイグラの名所たる『神ヶ浜』
夏は過ぎ去り、今や人もまばらになっている地域に……『奴』はいた。
対忍々の王である――『エンペラー・対忍々(TNN)』は!
『――!!』
天に浴びせる咆哮はまるで怒りが如く。
近くを渡り歩く一般人を襲いその身を喰らっている――いや正確には――
「その衣類を、ですね。ああまさかまたも奴に遭遇する事になろうとは……!」
言うは黒影 鬼灯 (p3p007949)が指揮する組織『暦』が一員――睦月である。
眼鏡を奥にはまるで死んだように生気のない瞳が宿っている。そりゃそうか。君、前にも被害をうけたもんね。
ともあれ対忍々は、そう。『服を喰らうスライム』なのである。
人体そのものには一切興味がない。服の繊維が好物らしく襲って食べるのだ、服を。どうしてなのかサッパリ分からないが多分そういう生態なんだろう……対忍々の事を警戒しマークしていた睦月は奴の暴走を一早く察知し偵察に来たのだが。
そんな奴が山から下りてきている。
今まで山の上など僻地に居たから一般市民の被害は少なかったが――こうなっては危険だ。今は神ヶ浜の浜辺に降りてきただけが故に甚大な被害はないが、もしも街の方へ行ったら……
「……ですが以前とは随分様子が異なる様な……巨大すぎるというか」
しかし出会っていたからこそ気付く違和感もまたあった。
奴はなんであんなに強いのか意味が分からないぐらい強力だった。
俊敏。頑強。巨大。
しかし――今目の前にいる存在は『ただ大きいだけ』の様に感じる。多くの一般市民を巻き込み更に巨大化しているものの、段々と動きも鈍くなっているような気が……もしかしてあれってただ単純に太っているだけなのでは……? え、正月太り……?
「それならば、上手くいけば打倒できるのでは……! 動きの鈍い粘着生物など……!」
「いやしかし――随分と凄まじい数の触手だ。あれは迂闊に近付けば取り込まれるぞ」
打倒の可能性を見出した睦月に対し、紡ぐは弥生。
彼もまた『暦』が一員である人物だ――罠作りの名手にして、その他道具の修理や――『色々』な事を担当している。そんな彼の目に映る対忍々の身体から生み出されているのは無数の触手だ。
周囲の人間を捕まえ、取り込み。
衣類の消化を行っている。
如何に腕力諸々が低下しているように見受けられても、この場にいる二人だけでアレの打倒は(色んな意味で)困難だ。放置していれば自重により更に動けなくなってやがては自滅するかもしれないが……
「それだと周囲の村や街に到達する危険もある、か。それに必ずではないな」
故に睦月は思考する。どうすればよいか。
奴は暴走状態にある。如何な策を講じるにしても、とにかく放置だけは無い。
されど二人では人数が足りない……そうだ、ならば!
「これは頭領にお伝えしなければなりますまい――奴と今こそ、最終決戦の時が来たと!」
「それってもしかして自分だけが犠牲になるの嫌だから巻き込むだけでは?」
睦月は答えなかった。
だが対忍々には以前から頭領たる鬼灯は何度か遭遇しており、因縁もある相手……
つまりその場に頭領が来ることは何もおかしい事ではない。更に頭領はイレギュラーズであるが故に、その繋がりから更にローレットに助力を乞う形にも出来よう。その人数をもって奴を囲めば必ずや倒せる、筈! 倒すまでに何人犠牲になるかは知らんけど。
おっとそうこうしている間にまた通行人に襲い掛かろうとして……
「うわああああコイツやばいやばいやばい、取り込もうとしてくる助けて――!!」
「いやあんなんどうすりゃいいんだよ! 俺にはどうする事も出来ないから帰ろうぜリリファ」
「私よりお色気をするなんて許せませんよムキャムキャ! 行きますよ月原さん!!」
あ、衣類を喰われた人はぺって吐き出されてる。本当に衣類以外には興味ないんだな……
ともあれこんな存在を新年から好き勝手にさせておくわけにはいかない。
カムイグラの神ヶ浜の平穏の為にも――奴を倒すのだ!! 新春のめでたさに当てられたお色気謹賀新年気分のモンスターに新年を飾らせるものか――!
- 新春へっちスライム・エンペラー対忍々の最後完了
- GM名茶零四
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年01月22日 23時50分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
リプレイ
●
――よくわからないけど、これだけの人数がいれば負ける道理なんてないわ!
そう夕子が自信満々に述べたのはさっきの事だった。
「どうしてー! どうしてこんな能力を持ってるなんて誰も言わなかったのー! ちょ、誰か教えなさいよ……って、ああ! ちょっと! そんな所に入り込んでこないで!? 下着溶かすのはマズいから! PPP倫理的にー! んっ、あ」
PPPは全年齢――! 不思議な言葉を呟きながら夕子は負けていた。
蕩けた声は風に運ばれ露消えて。
なんという事だろうか対忍々。まさかこれ程巨大とは、と。
「睦月――お前わざと黙っていたな――?」
「何のことでしょうか頭領」
鬼灯が部下の睦月を見据える。でも章殿の晴れ着に費やした反物の値段がバレた訳ではなさそうだ。よかった~(なお後日バレました)
『大きくなったわねぇ。触らせて貰えないかしら!』
「後で別のスライム買ってあげるからアレはやめようね……まぁともかく。そういう事ならば――さぁ舞台の幕を上げようか。弥生。肩を震わせてないで戦闘の準備だ!」
嫁殿に言葉を投げつつ鬼灯は往く! 睦月と弥生にも指示を出し最終決戦だと。
対忍々。既に三度目の邂逅。衣類を溶かす脅威ともこれが最後だと――!
「ていうかこんな依頼受けるイレギュラーズって全員頭おかしいのではないか?」
やめてくださいクレマァダさん、ブーメランですよ!!
ともあれ物凄く遠い目をしているクレマァダの瞳に映っているのは阿鼻叫喚の場であった。超巨大スライムに立ち向かうイレギュラーズの面々。なんで向かってるのだ、だってアレに向かうと衣類がやばいのであろう?
「あらー、おっきなスライムねー? ここまで大きいのは初めて見たわー
うふふお料理……といきたい所だけど、まずは普通に倒さないといけないのよねー?」
だがまがりなりにも依頼であるならば是非も無し――蘇芳は己が調理欲を働かせながら対忍々をどう制したものかと思案を巡らせていた。
あまりに巨体だ。しかも迂闊に近付けば衣類が犠牲になるというおまけつき。
「あらあらあら。カムイグラにもこんなのがいるのですねー。ですが皆さまー丁度いいところに火炎瓶の大量仕入れですわー。とても丁度良い代物でございますねー」
一見すると何かテロ行為の準備とも疑われかねない量の火炎瓶をユゥリアリアは揃えていた。こんな事もあろうかと! 巨大亀アズメリナに大量のギル♂のぱんつを積み込んでいたのである! やめろアズメリアが可哀そうだろ!
「これで十字砲火が出来ますわーあら、あらあら? スライムがこっちに、あらららー」
だけれども見逃す対忍々ではなかった。あらーとユゥリアリアが呑み込まれて行きますわー
「たけし! たけしじゃないの! 久しぶり、ねぇなんで降りてき……えっ僕らが城、燃やしたせい? そっかぁ」
同時。以前にも奴にあった事のある逢華はたけし(勝手にイレギュラーズ達が命名)の名を読んでいた。麓には食材がいっぱいあるけど怖い人もいっぱいだから駄目だって言ったのに!
「……んなことしらない! くらえ!! 季節外れの花火だよ!!
前の依頼からずっといる弥生お兄ちゃんと一緒に、今度こそ討つんだ――!!」
弥生さん前はいなかったもん! いなかったもんッ!!
「いやぁ皆大変そうだなぁ……俺は……まぁ遠隔攻撃ででも支援するから頑張っ……」
「零くーん! いたいた、私も加勢するよ! 一緒に頑張ろうね!」
えっ、アニー!? と零が思わず振り向いた先に、にこやかなる表情を携えたアニーがいた。聞いたのだ、ここに弱いスライムがいると。自滅寸前であれば戦闘に慣れていない者でもきっと丁度いいから……
「なんか服を食べるらしいけど、私はかなり着込んでるしだいじょーぶっ! ほーらほらスライムさーんこっちいらっしゃーい! そんな調子じゃ服を食べるのなんていつに……あれ? え、ちょっとまって、こんなに早く食べるの!!?」
「アニ――! ここのスライムはそんなに甘くないんだよ――!!」
というか最近何故かやたら強いスライムが多いのだ、えっちっちとか。
ともあれ油断していたアニーは対忍々に捕まり急速に衣類を溶かされている。大分着込んでいた筈の服は、徐々にその肌色面積を増やして……いやこれ以上は駄目だと零の一撃が飛ぶッ! フランスパンの雨あられ。
アニーを包まんとする触手周辺を削ぎ取りながら彼女を救出して――
「でやー! いけ、ナント・ギルオス砲弾!! アニー今の内下がるぞ!!」
零はギルオスを蹴りだし囮にしつつアニーを抱きしめ一気に離脱。
肌面積の非常に多い彼女にフランスパンの衣類を……いや流石に無理だが! しかし少しでも彼女を隠せるようにと四苦八苦しながら学ランも被せて。
「なんてこと! ギルオスくんが一糸纏わぬ姿で謎の光に守られながらスライムにあはんうふんされてるわぁ! 頑張って対忍々! もうちょっと、もうちょっとよぉ――!」
「君達覚えてろおお!!」
同時。零に囮にされたギルオスは対忍々に飲み込まれてその状況をアーリアに解説……こら! 確定ロールさせようとするんじゃない! たすけて――!!
「もぅしょうがないわねぇ……確かに見捨てるのはなんだし、このロープにでもってきゃあ! もぉ、対忍々に見つかっちゃったわギルオス君の所為で! ちょっとなんなのよぉこれぇ!」
媒体飛行からによる救出を試みたアーリアであったが、対忍々の襲撃によりその餌食に。
救出用に持っていた海藻(ギルオス用の下着)も溶かされ、ああなんと無惨な事か。肩の上の部分から徐々に蕩けつつある服――べとべとする感覚になんとか息継ぎしながら、これはみぴー君に報告せねばと心に刻んでいた……やめて!
「やれやれ……ギルオス様、こちらへ。流石に情報屋が全裸になって倒れるなんて大変ですし」
「あっ、き、君は――アリシア! 助けてくれるのかい!?」
ええ。と直後にギルオスへと手を伸ばすアリシア。
新年早々をスライムで迎える事になるなど思ってもいなかったが……神威神楽用の衣装を身に纏い、対忍々の触手を躱しながら斬撃一閃。同時に土壁の魔術にて叩き潰す。ギルオスを救出しつつ距離を取る様に駆けて――あっ。足首に触手が。
「……ふっ」
一斉に迫りくるスライムの波。躱せない、捕まると確信した彼女は――
「――掛かってこいやぁあああああああ!!」
突っ込んだ。
ええい服が溶けるからなんだというのだ! そもそも服が溶けるぐらいで臆するぐらいなら練達のVRぱんつゲームとかメイドとかそんな依頼を受けたりもしないのだ! 急速に増える肌面積。しかし下着だけは守られる不可思議な力と共に、対忍々を討つ!
――だが。
「おいこら、誰に許可貰って人の女に手ぇ出した?」
それを看過できぬ者もいる――ミーナだ。
正直服を溶かすスライムに関わる気はなかった。だって自分を脱がしても誰も喜ばないだろ? 他の女性陣にしておく方が吉だ――なにより私自身が得するから!
いい女達の羞恥に塗れた姿を見ながら食う飯って……うまいしね。
しかしながらアリシアに。彼女に手を出すのならば話は別。
自らのコートを彼女に掛けた上で。
「殺されたいなら、初めからそう言え」
本気の殲滅を開始する。
お前はやってはいけないことをやったのだと――思い知らせる為に。
「全く。出来れば会いたくないヤツに限って、何度も出会うものだね……」
更に行人が前へ――どうして来たのかって?
そりゃあアイツを見つけてしまったのは俺だからね。
「ファーストコンタクターとしての責務。それが理由だ」
駆ける。己は奴らを発見してしまった責任を取らねばならぬのだと。
周囲の色々と守るべき事情は――シャイニング精霊、君に任せる! この依頼のCEROは君の頑張り次第だ。飛散し、この依頼を護る光となってくれ……!
肌の上を滑る感覚があるが、止まりはせぬ。
肌色に惑わされもしない――恥ずかしがる姿こそが恥ずかしがる精神に繋がるのだ。
故に戦う。退かず、ここで決着をつける為に!
「やだ、放してっ! 服溶かすのだめぇー! どーしてこんな時だけスライムって強いのー!?」
しかし犠牲者も段々と増え始めていた。通りかかった町人を庇うセリカは対忍々の触手を魔剣にて切り裂――こうとしたら分裂してきて取り込まれた。そして服の内側からじわじわと昇りくる粘液の感覚が背筋に震えを。
「ゃ、あ! 頭が、パチパチする……!」
慣れぬ感覚。
このままでは上も下もまずいと、おむねへのダイレクトアタック大ピンチにセリカは焦り。
「ええい、幾度打ち込んでもまだ立つとは! でっかいスライム如きが……ならばもう一発お見舞いして……!? なっ、このなにをする!? ぬわ――!!」
魔力を放ち続けていたルーチェも一瞬の隙を突かれて波に呑まれる。
同時――だからこそか、収束させていた魔力が暴発。
花火の様に炸裂する一撃が味方諸本対忍々の身を消し飛ばして。
「今が好機! 全てが揃ったこの舞台……一花、咲かせましょうや、コルネリアの姉御ぉ!」
混乱に乗じて往くはわんこ。見ててクダサイネと突っ込むは――ゼロ距離火炎瓶!!
必殺の一撃だ! スライムの身を丸ごと焼かんとする攻勢をかける――! が、無論至近距離でそんな事をすればわんこが折角着込んでいた十二単も大変な事にはなってしまうのだが。
「わ、わんこ……! まさか、あんなにも果敢に突撃するだなんて……」
その姿を見たコルネリアは感涙に震えるのであった。
彼女は臆していた――衣類を食べるスライムを相手にするなど、下手をすれば今まで巧みに隠し続けた熟れた身体を晒してしまう事になりかねな。そうするとセクシー枠がバレてしまい、明日から己の生活はパパラッチに追われる事になってしまうだろう……
しかしわんこの勇姿は! 彼女に衝撃を与えた!
「……アタシは間違っていた、例えこの世に二つとない熟れた果実を晒そうともアタシは負けないっ! さぁ! どこからでもかかってこ……あれ? なんでスライムはアタシをスルーするの? はっ? ヤニ臭・酒臭・ケバ臭? なぁに食わず嫌いぬかしてるんじゃ! 来いやぁあああ!!」
思わず対忍々がコルネリアから逃げようとするが、彼女は逃がさない。
わんことともに追い詰めていく。こら! 逃げるな! わんこのや他の奴にはまとわりついてるのにどういう事だよ! 溶かせよおらぁ!
「へっ、ついにわんこの服もやばくやってきやした……ですが思い残すことは何も……んっ?」
その時、見た。わんこは――今死力を尽くしてスライムを倒しているというのに――
「はー……あんなのを討伐とか、ようやるで御座るなぁ。とても正気の沙汰とは思えないで御座るよ、ずずー」
丼と飯櫃を出して、飯を食べ始めている幻介の姿を。
君子危うきに近寄らず? あ、こっち見て手を振ってる。頑張れーって?
「……」
故にわんことコルネリアの嗜好は一致した。こんな屈辱(コルネリアは狙われないという意味での)を受けている真っ最中だというのに――
「わんこぉ行くぞぉ!!」
「わーい幻介サマーわんこやりマシタヨー褒めてクダサイー♡」
――Hey! スライムカモン!
突撃幻介のお昼ご飯。ガッチリとホールドされた幻介は一瞬困惑し。
「えっ、ちょっと……まさか、お主ら!? いやだ、やめろ、離せ――!! 拙者は漬けられとぅない、スライムのシーンなど挟まれとぅない! そんなの誰も望んでおらぬで御座る! 需要がどこにも……いや、やめ……いや――!!」
理解した時には――対忍々の影が覆いかぶさっていた。
直後。別の地点でも対忍々の魔の手が迫る。
それはチェルシーだ。彼女は女の子走りでスライムに向かい――急に足が痺れだして躓いて仕方なく不可抗力でそのまま粘液へ倒れこんでしまった。ダイブ!
「あぁん♪ やあぁぁぁんだ~れかたすけてぇ~♥」
(副音声:助けないでみてて♥)
抵抗の意志を示すが、それが逆にスライムの身体に潜り込んでいく。もがいてもがいて……いやもがいてないぞあれ。絶対自分から潜ってるぞ! こらー! 粘液の流れに合わせて全身を魅せる様なポーズを取るなー! 隠しなさーい!
「くっ、本来ならこんな雑魚スライムに負ける事なんてないのにぃ……♪」
喜々として溶けている衣類。誰か! 早く彼女に謎の光を!
「やれやれ、前に出る連中は勢いがあるな……
んっ、俺? いや俺は絶対いかねぇよ。こんな冬空で衣類剥がされたら寒いだろうが!?
役得とか眼福とか以前に冬だぞ!!? 死活問題だわ生命の!!」
多くの悲鳴が轟く中、絶対にフラグは立てまいとマカライトは立ち回っていた。
弓を構えて一撃二撃。攻撃し離脱し絶対に自分からは近付かない。
だってやばいでしょ。冬ですよ? 今気温何度だと思ってるんだ! 死ぬって! 風邪ひくって! どこでそんなに太ったか知らないけれど――うわああこっちに来るなぁあ!!
「うひゃー! 噂のえっちっちじゃん! え、厳密にはちがう? まぁ似たようなもんでしょ! おっはー! テンションあげあげぽよ――!」
次いで秋奈が超絶ハイテンションで対忍々へと。
なんか面白い事やってるからと来てみればスライムではないか! ひょっはー! なんか、こう、イベントだ! 何のイベント買って? いやしらんけど。
「リアさん、リアさんも映るー? いえーい記念写真パッシャー!」
カムイグラの神ヶ浜記念にて・秋奈ちゃん☆
そうした写真には――後ろから丁度迫りくる触手があったとか――
「うーん、でも幾ら凄く大きくて迫力があっても、この人数で戦えば楽勝だねリアちゃん!」
「なぜ今フラグ立てたんだよ焔ァ!」
同時。焔は進む戦況を目にしながらとっても信頼出来て頼りになる大事なお友達のリアと一緒に居た。離さないレベルでの密着をしながら。
だがリアは自信があった。己は無敵だと。そう、無敵。
大きかろうが所詮スライム程度に負ける筈がない。だってあたしは多くの戦いを乗り越えてきたのだから。今更スライムの一匹や二匹に負けようはずがない。だからあたしは無敵――
「いやその前に色々ツッコミ所が多いんだよ! 破壊神! てめぇなんだその恰好は……しかもなんでバケツプリン喰いながら変な本持ってんだ!! こら!!」
「そう言われても。さっき占い師がプリンを食べたら今日一日なんでも上手く行くとか言ってたのよね――だからこういう本を持ってても特に何の問題もなく私は勝てる」
何言ってんだアンタ!? とコレットに言葉を飛ばすが、彼女の顔には自信しかない。
ふっ。そもそもあんな動きの鈍い攻撃なんて避けるは容易。だからまずは占いのバケツプリンを食しつつ、この先の展開を予習する為に某シスターのあられもない姿の本をだな……んっ? 誰かの姿に似てる? 存じ上げませんな、ンッふっふ。
コレントマンの準備は万全。さぁ今こそ対忍々の身を砕かん――とすれば。
「なっ、そんな動きも出来るなんて……!?」
直情的に突っ込んだ先で待ち構えていた対忍々!
馬鹿な! 盛大に油断しただけなのに、どうして……!
四肢を拘束されるコレット。足先から昇って来るスライムの感覚が太ももまで。
「っ、ぁ……ぁ!」
冷たき、しかし柔らかくもある感覚が彼女の衣類を溶かしていく……されど! この程度で彼女が終わろうものか!
「……全て消し去ってくれるわ――ッ!!」
故に全力。暴れる姿勢に至る彼女は誰にも止められない。
対忍々の拘束を強引にぶち破り――暴力の権化が此処に再誕した。
「わわわ、コレットさんが凄い事してるよ! 僕達も続かないとね、リアちゃん……ってあれ? 何だか触手の数が凄く多くない?」
であればと焔もその雄姿に奮起し、前へ。
コレットにあれだけの触手が攻め込んでいるのだ――ならば隙もあろうと思い炎を纏いて……しかし増えた。
触手が。なんかやたら増えて気付いたら囲まれてた。えっ?
「ヒッ! な、なんなのこいつ! さっきから全然攻撃聞かないんだけど……聞いてないわよこんなの! 相手してられるもんですか……ってこら!! や、やめろぉ離せ焔ァ! お前は一人で死んでてよぉ!」
『助けて』と書いて『逃がさない』と読む。
踵を返そうとしたリアの足を焔が引っ張って二人して対忍々の渦の中へと。このスライム、案外力が強い! リアを見捨てて逃れようとする焔のふとももをぺちぺちとしながら引きずり込んで。あ、叫ぶリアさんの口元を粘膜が塞いだ!
「うあぅ、服が食べられっ! いやっ、やめっ! ひゃ、それは、ッ、そこはだめぇ!」
「も、が……! ゃ……ッ! ぁ……ほ、焔ァ――!!」
何故か表情が赤い焔。それでもリアの足を離さぬから逃げれなくて。
艶の色を魅せながら声は触手の波に塗れる。
粘性の液体が滑り落ち、そして――
『Loveだってスライムだけど悪い事をするスライムは、めっ、するの』
直後。Loveの介入が、寸での所でこの依頼を全年齢の枠組みに収めた。
Loveは対忍々同様スライム個体であり、食べられるような衣類がない。故に襲う優先度は低く――その性質を利用して戦場を縦横無尽。
『女の子がへっちな目にあうのは可哀想なの。Loveがしっかり隠してあげるの。
こんな事ばっかりしてたらスライムに風評被害が出ちゃうの』
「ぬ、ぬぁ――くそ! ギリギリの所で映らない! こんな、こんな事が――!!」
自ら被害者たちの壁となるLove――の行動にマリカは無念の号泣を。
おのれ、ここに集まっているのは誰も彼も顔面偏差値が高い者達。故に! そのキレイな体をフッ撮ってやるつもりだったのに! おい誰かこのイレギュラーズの裏切り者を早く逮捕して!
「くくぅ……! でも、それでも体が……か、らだが……求める……
イタズラという快楽を!!」
それでも諦めきれぬ。撮った写真にみんな幾ら払ってくれるか分かったもんじゃないんだから! だから、さぁ早く! 皆スライムに飲まれろ――と、していたらそんなマリカが呑み込まれて、うわぁ――!
「悪は滅びた……かはともかく、スライムとはここまで大きくなるものなのですね……んーしかしなるほど。これは奇妙にして実に興味深い生態。出来ればもう少し餌は多い方が……」
更にそんな様子を見据えているのはノワールである。
餌――つまり他のイレギュラーズ――ん”ん”っ、なんでもありません。
とにかくこのスライムの観察を。己が知識欲を満たせればと眺めつつ……おっと援護もしますよ?
「流石にサボる訳にもいきませんしね。まぁこうやって火炎瓶を投げ込んでいる分には安全ですし……おや?」
その時。なんぞや足が重くなったと思って視線を落とせば。
そこに在ったのは触手。足首掴んでいる対忍々の魔の手――ああああ~!!
「ええい。また一人やられたか……! くっ。どうなってもせめてパンツだけは死守させてもらおう。これだけは譲れぬ一線なのだから……!」
同時。レベリオは対忍々の注意を引きながら戦場を駆けている。こうして引き付けている間は他の者への攻撃も多少は和らごう……それはそれとして捕まるのは絶対に嫌だが。
「くっ! 手甲なんて只の餌か!? ええいこのままでは追いつかれる……だが頼むぞ皆! 俺がやられた時は、局部だけは隠してくれ! これは俺の……最期の……!」
願いだ――という言葉が紡がれるよりも前に対忍々に押し倒された。レベリオ――!!
「あれが対忍々……こんな個体の生物データが欲しいのか、財団の変態サイエンティスト共め。まさか衣服を溶かすスライムとは……」
たまげたよ、と紡ぐのはエクレアだ。
だが相手は所詮服を溶かすだけのスライム。ふっ、ならば余裕である。
僕のクソザコ腕力よりも劣る対忍々よ――!
「さあ来るんだ対忍々。僕の強さと格の違いを――思い知らせてあげよう!」
負けました。ああ~とひん剥かれるエクレア。
各所を隠す謎の光が無ければ即死だったぜ……!
「HAHAHA! なるほど、こいつぁ危険な奴だ――だが安心しなレディ達!」
次々に増える犠牲者、の前に立ったのは貴道だ!
「ミーの後ろに隠れると良い! ミー? ミーは問題ないさ――
だってミーの身体に恥じる場所などない! このままいくぜ!!」
迫りくる触手を己が拳で撃ち落としつつ貴道は前進。
大丈夫――少ないシャツが溶かされようが何も問題ない。いざとなればエクレア同様に謎の光が全年齢を保ってくれる! 故に見るがいいこの完成されたボディを!! どこに恥じる必要があるというんだHAHAHA――え、衣類以外は興味ない? 興味持ちなユー!
瞼を閉じてレディ達の姿を視えないようにしながら、彼はスライムを打つのだ。
しかし……くそぅ、どうしてこんな事になったのだとマリアは思考していた。
想起するは過去。ユリーカが深刻そうな顔をしながら押し付けてきた依頼書……何度床に依頼書を叩きつけた事か……その中でも奴……名を出すことも憚られるあの忌々しいスライムと近似する者が……目の前にいる!
「佐里君はともかく! ヴァリューシャだけは絶対に私が守ってみせるよ!!」
「マリアさん私は!?」
「頑張って! 虎は信じてる!」
そんなー(´・ω・`)と言う佐里を横目にマリアは奮闘していた。
が、このスライム手強い。幾ら叩いてもまだ無事そうで。
「くっ! 囲まれますわ!! ですが……諦めません! 他の誰を犠牲にしても私だけは生き残ってみせますわ! うおおお――これでも喰らいなさい!! ローレットの人間爆弾、ギルオスを――!」
また僕を犠牲にするな君達――!! 言うは虚しくヴァレーリヤはギルオスやら通行人を捕まえて(その衣類を)対忍々の方へと投げた。こらー!!
「これでもまだ満腹になりません事!? ……仕方ありませんわね。
全滅するよりも勇敢なる囮……志望者を募って生贄……英雄を決めましょう!」
うん、そうだねヴァリューシャ! はい! じゃーんけーんぽいっ!
「……ヴァレーリヤさん、普通に負けましたね?」
「……お……おほほほ、負けた人が生贄とは言っていなくてよ! さぁ観念してスライムの海に落ちなさい! さぁ、さぁ!! マリィ手伝ってくださいまし!」
「うん、そうだねヴァリューシャ!」
「なんでですか! 言い出しっぺなんだから観念してください! あ、ちょっと!! ヴァレーリヤさんもマリアさんも押さないでくださ……ぴぇ――!!」
ヴァリューシャのお言葉は全てにおいて優先される……!
佐里君、犠牲になって! ごめんね!
「囮作戦が各地で決行されているね……えっ? いやもう囮とかやらないからね?」
肌を晒す相手は決め……ているかは分からないが、それ以前にもう奴は動けないから必要ないとリウィルディアは思考している。
それにしても奴とは色々あったものだ――思い出したくもない思い出を脳裏によぎらせる。伏見さんの大事な物の奪還に、その次は睦月さんが調査に送り込まれて――弥生さんいたもん! いません!
「こほん。ともかく、たけしもこれで終わりだよね。ふふ、なんだか感慨深いなぁ……あれ? たけし、いつのまにそんな近くに、うわ」
周囲の支援だけ行っていたら逃げ遅れた。ぴえん。
「あはは、なんか僕、悪酔いしてるぅ? 見知ったスライムの幻覚が……え、ウソ、たけし?」
同時。リウィルディアと共に対忍々とは縁が深いラズワルドは驚愕していた。
いやね初詣と言ったらお神酒だしね。ちょっと一升瓶やら何やらちょっと拝借してご機嫌だったんですよ。そしたらね? 酔いも醒めるかのような勢いでね? 対忍々の王――たけしと再会した訳で――
「はぁ? 正月太りぃ? 散々僕らのこと追い回しといてそのザマ? えんぺらーとか言っといてメタボじゃん、ばぁかばぁか。くそざこスライム。所詮全年齢の枠組みスライム~♪」
だから滅茶滅茶煽る。そのまま、勢いで開けた瓶で造った即席火炎瓶投擲!
「はぁ~コイツとの対戦ももう三度目。ま、こう何度もやり合えば要領はバッチリってワケよ……いいわね、イレギュラーズ? こいつは服だけを狙うスライム……だから服が無くなった奴は用済みでノーマークになるわ」
次いでゼファーも往く。したり顔と共に衣類に手を掛けながら――ゼファーさん?
「だから私は最初から脱ぎ、うおっ! うおおお! 止めてくれるな! これが実際有効な手な訳よ! ていうかコイツに! 一張羅を捧げるのはムカつくわ! だから止めてくれるな!! それに私の身体に恥じる所なんてないわッ――!!」
貴道と同じような理論を掲げながらいきなり脱ぎに掛かった! 誰かー! 止めてあげてー!
服が溶かされる事など何のことはないが、こんな程度の奴に舐められるのは気に入らないのだと彼女は叫ぶ。恵まれボディをこの世界に晒す事に何の羞恥があろうか。でもダメ。謎の光さんが過労死しちゃう!
「しかし一理ある。自らの身体、見せて不都合がある様な所はない! ――溶かしたければ溶かすがいい! 剣が使えぬのは不便だが、貴様程度に全霊を尽くす程でもない!!」
同時。ブレンダがスライムに囚われながらも力任せに引き千切って。
服を溶かすとは面倒だ。だが面倒以上ではない。
鎧だけは最初から脱いで来たが……まぁ下着は必要経費だ。溶けても特に問題はない!
「そうだよぉ、カムイグラの風紀を護るのは大事だからねぇ……ふふっ。なんとかカムイグラがえっちな国家じゃないって事を示す為に、お仕事始めていこっかぁ!!」
ゼファーがガチで抑えられている間に、シルキィもまた往く。
ふっ! 如何に服を溶かすスライムであろうと、遠い距離から攻撃をしておけばいいのだ。近付かなければ問題ない……ふふふ! そう!
ま
さ
か
糸を伝ってツライムがこっちにやって来るなんてこともないだろうしねぇ~!
「あははは! いやぁ後衛やっててよかったねぇ~!
あれ、なんだろうこのスライムっぽい粘液は、うわあああ~」
シルキィ――! 糸を引っ張られて一瞬で取り込まれてしまった!
あわわと暴れている間に溶かされる衣類。豊満なりし胸部装甲のベールが今、脱がされようとしている……へへ、えっちな蚕だぜ……!
そして鹿ノ子も――この国の風紀を護らねばと考えていた。
いや厳密には国と言うよりも……天香・遮那の事である。
「もしもこのスライムを止められず、遮那さんが巻き込またら……そんなのはだめッス!」
街へ出る前に成敗せねばと、覚悟を決めて跳躍す。
迫る触手。されど、動きを見据えれば回避も出来るものだ。
寸でで交わし、すれ違いざまに高速一閃。
――斬り捨てる。
傷口を狙い、負所箇所を狙い。例え山の如き相手であろうと彼女の意志はそれより気高く。
「衣服が溶かされたくらいで戦意喪失していたら……大切なひとを守れないッス!!」
彼女には己よりも大事なものがあるのだから。
かかる粘液が微かに鹿ノ子の服を溶かすも、臆さず彼女は――更に前へ。
「ちくしょおおおお!! 死なば諸共、オラ来いよスライム!! なんなんだよテメェは、死ね! バカ糞、こんたれ! 山にずっと籠ってろよバーカァアアア!!」
直後。鹿ノ子とは別方面で長髪を重ねているのは――プラックだ。
その姿は、その、なんというか。その。
パンイチであった。
彼は正気だ。どうせ服が溶かされるならば――脱いでおけばいいと。違いますゼファーさん、貴女とは違う考えなので座っててください。ともあれ、さぁ皆今の内だ!
「よし、ギルオス! 亮!
プラックが尊厳を生贄にしてくれている内にフォーメーションAじゃ!」
「え、なんだそれ?」
「フォーメーションAは――こうじゃ!」
同時。クレマァダがギルオスと亮を遮蔽物としてスライムの攻撃を凌ぐ!
ぎゃあああと声が聞こえてくるが、すまんの。普段なら絶対しない戦法じゃが、相手が相手。ほら、我もそう簡単に肌を晒しとうないし……乙女の気持ちは分かって欲しいのじゃ……
そして時間を嗅いでくれてる間にその後ろから魔術ドーン!
「ぐすぐす……皆の尊き犠牲、我は忘れぬぞ……ってギャー!」
でも対忍々が物量戦仕掛けてきたら流石に壁も保たなかった。引きずり込まれていくー!
「クレマァァァァダァァァァァ!! 畜生! 俺が、俺が羞恥を捨ててあれそれしてるのにそりゃねぇよ!! ていうか本来二の次でも死ぬほど大切だがな!! くそっ、あ、ダメだこれ俺も呑み込まれ、くそっ! くそっ! ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ」
すごく酷い事になっているなと呑み込まれ行くプラックを見据えながら、グリムは阿鼻叫喚の渦の場に吐息一つ。なんか追い詰めている気はするのだが、そうでない気もする……どう戦ったものかと思案して。
「……まぁなるようになるか」
突っ込んだ。半ば自棄である。
懐で炸裂させる一撃が、包まんとする触手ごと弾くのだ。これを連発しておけば蒸発――する筈。するといいなぁ。万一だめでも……まぁ服が溶かされるのは仕方ない事だとして諦めよう。
「むむむ! これが衣類を食べるスライムですとー!? いいぞもっとやれ! 可能な限り肌色を増やすのですぞ――!(けしからん!これは早く討伐せねばですな!)」
はっ、本音と建前が逆に!? つい漏れてしまった言葉に驚愕しているのはジョーイだ。分かるぞジョーイ。その気持ち分かるぞ! でも欲望はそれとして仕事はこなしますぞ!
それに真面目に仕事をしていたらちょっとぐらい眼福な出来事はあるかもしれない。
となれば恐れている暇はありませんぞ! 勇気の一歩の先に桃源郷があると信じて!
「吾輩は引かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! であります!
いきますぞー! ホワアアアア、あッ、あああああ――!!」
途中から声色が変わった理由はお察しください――
「なんと存在からして不埒な……! このような魔物、許せるものでありません! ましてや女性の衣類を狙うなど言語道断、この私が相手になりましょう!」
格好いい事を言っているノニだがこの男、実は全裸である。
否。全裸だけど全裸じゃない。一応ギフトで衣類を着ている様には見えている。やっぱ全裸だ。その所為かスライムは彼に困惑している。こいつ――まさか――と。
「ふっ『決して服を侵されないギフト』には怯えますか。
――底が見えましたね対忍々!!」
魔力を注いで内側から破壊しよう。そう、すなわち体の表面! 素肌の総てから魔力を注いで! おのれ、大体全裸のノニめ――ぐあああ!
「ぬぉらあああ――!! 服を溶かすってんならよぉ、何重にも着込んでおけばいい話だろ! やってやんぞこん畜生めが! 覚悟はできたか。俺はできたぞ!」
一方で取り込まれて倒されるのが服の枚数が少ない故であるならばと。
滅茶苦茶着込んでもう雪だるま状態なのがニコラスだ。
なぁにこの服が溶かされる前に終わらせればいいのだと……急いで攻撃を重ねるも、でもこれ対忍々からすれば御馳走にしか見えない。滅茶苦茶早いスピードで、あ、あ、やばいやばいやばい!
「はっ! もうパンツ一枚しか服が残ってねぇだと!? 待て、よせやめろ。来るんじゃねぇ!! つ、次はどこから来るつもりだ!! 俺に近寄るんじゃねぇえ~~!!」
諦めなければやれると思っていた――でも無理だったぜ――
後にニコラスはにこやかな顔でそう語ったのだとか。
「なんとまぁ……しかし、図体は大きくても布面積は極小にございますれば。
皇帝対忍々さまにおかれましては、あまり目にも留まらぬ事と成りましょう」
同時。庚は獣の姿で戦場を駆けていた。
旨味を消す――さすれば皇帝から目の優先度は下がろうと。
「それにしましても、よくもまあここまで大きくおなりにあそばされましたね。些か細分化させねばなりませぬ……あぁご安心を。たけし様がママになるお手伝いを及ばずながらこのカノエ、お承り致します」
何言ってんだこいつ。対忍々はそう思うが、庚は止まらない。
聖なるカノエの光、カノエフラッシュにて……分離させるのだ。いざ出産!
「ひぃぃぃぃなにこれなにこれ対忍々って何!? こわっ!!」
更に影踏も必死に跳躍しながら布をバラまいていた。
正直逃げたい。でも上司も出張ってるのに帰るとかできない。ひんっ。仕方ないので布をばらまき奴の注意を引く――ちなみに彼がばらまいている布というのは――
「ははは……上司を見捨てるのは社会人としてだめだけど、ぱんつをばらまく行為は社会的に死ぬんじゃないかな……?」
どーかこの行為が世間に伝わりませんようにと願いながら、それでも暦の為に彼は往く!
「成程。一太刀でも見誤れば、即座に危険域。それこそが対忍々……」
至東は迫りくる触手を躱しながら死線を潜っていた。
此度の敵は、うん、でんじゃーである。
攻めて良し責めて良しのスライムが、こうも大きくなるとは……どうしてこうなった。いずれにせよ素肌剣術の観音打流、師範代の名に懸けて必ず勝利せねばならぬ――! まぁ拙者の他に師範も門弟もおらぬゆえ、オートマで全部拙者になっちゃうんだけどネ。
「こうやってちょいちょい切ってるだけでも中々の圧。
俄然燃えてき申す……あっ、ああ――」
師範代に――敬礼!
敗れるイレギュラーズもいれば、対忍々は更に肥大化するものだ。あぁまたぶくぶく太って……
「正直、臨界点を超えて食べ続けた場合どうなるか興味深いけど。三度目の正直、とも言うからね」
だからルフナは往く。今日ここで、全ての決着をつけるのだと。
暦の人達とTNNの悲しい因果の鎖……悲しい……? とにかく終わらせるのだ。
鬼灯の方をちらりと見ながら。
「任せてよ鬼灯さん、僕ら浅い付き合いじゃないし、言いたいことなんてわかってるよ。
嫁殿さんを最優先、でしょ?」
「無論だ。嫁殿の守護は何よりも優先される……!」
まぁ危なくなったら近くの面白忍者カレンダーを蹴りだして囮にすればいいしね、と思考しながら。放つのは――光の翼だ。その欠片が戦場に舞う。煌めく光が絶妙に皆を包み、各所を隠して全年齢を保って……!
「脅威に挑むというのなら……風巻源四郎暁威の子孫として助太刀せねばなりません。
そう、たとえこの先の道が、へっちの戦いに繋がるとしても……!」
そして威降も鋭い決意と共にいざや対忍々の懐へと。
あらゆる手段をもってして立ち向かうその姿を守り抜こう。
「衣服を食われても構わぬ。こんな程度で二の足を踏んでいられるものか――!」
祖先の名に恥じぬ為にも彼は退けぬ。
見捨ててはならぬ在り様が――あるのだから!
「まあまあ、エンペラー・TNN様ったら♪
もうこんなトコまで脱がして……なんて積極的なお方♪」
その時、対忍々の攻勢に顔を赤らめるのは澄恋だ。
あぁん♪ なんという情熱的な歩み寄り方なのでしょうか……いくらわたしが可愛くて気が遣えてNo.1お嫁さん(未婚)だからって、そう急ぐことはないのですよ♡ この澄恋め、素敵な殿方との心の準備できておりますゆえ、じっくりと……
「…………は? これひょっとして溶かしてるんですか?」
だが気付いた。澄恋には一切の興味がないのだと。
いやそればかりか――ウン百万GOLD相当の白無垢が――
「――クソが!! なにをしでかしておるかッ!
ただ資源を貪るだけの粘液塊ごときが、被堅執鋭たる鬼人を舐めおって……!!」
直後、ブチ切れた彼女は、去年結婚詐欺で全財産取られた怒り諸共コイツへと。
心臓抉り取る一撃――芯に響かせる剛力剛打! その名もはーと・きゃっち♥
『――!!』
その時、対忍々の身体が大きく震えた。
今までとは異なる反応だ――限界が近いのか。
物を喰い過ぎて自滅の崩壊も加速しているのだろう……後は放っておいても死にそうだが。
「たけし……そう。とうとう……お別れしゃきゃいけないみたいね」
瞬間。現れたのはアリスだ。
対忍々の王、たけし(と名付けたのがアリス)。
その服装は――喪服であった。
あぁ、思い出すわたけし。あなたと最初に出逢ったのは桜の季節。
暖かい陽光を受けてキラキラ輝く姿を見て『たけし』って名付けたの。夏と云えば、学校で苛められていた貴方はカーチャンの後ばっかり付け回して……でも秋には家計が厳しいのだからって高校を出たら働くと言っていたけれど、陰では誰よりも勉強をしていたの、知ってるわ。そして冬の季節――え? 巻きで?
「じゃあ仕方ないわね『不甲斐ない母をお許し下さい~息子の学費の為に~』。
来月発売予定だから、よろしくね」
BR版では全ての謎の光とモザイクが晴れます! 特典映像は火炎瓶の作り方!
「バイバイ、たけし」
――また、ね。
こうして対忍々の王は滅びた。
ある者には心の傷を。
ある者はむしろ自分の身体に誇りを持つから別に良かった。
色々あったが――対忍々は皆の攻勢と奴自身の悪食による自滅により滅びた。
こうしてカムイグラの浜辺には平穏が訪れたのである――眼福でしたやったぜひゃっほい。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
対忍々はこれで……滅びた……!(?)
ありがとうございました!
GMコメント
あけましておめでとうございます!! 新年名物、新春へっちスライムです。
●依頼達成条件
エンペラー・TNNをぶちのめす!
●戦場?
豊穣カムイグラに存在する名所『神ヶ浜』の浜辺です。時刻は昼ぐらい。
季節が冬ですのであんまり人はいないのですが、近くの神社に初詣に行く人物がいたりするのか、ゼロではありません。後述する対忍々が現れ稀にいる人々を襲っていますのでぶちのめして撃退してやってください!
●敵戦力
『エンペラー・TNN(弱)(めちゃでか)』
髭と王冠を携えた対忍々です。元々は山や森の中に現れる存在だったのですが、以前イレギュラーズ達の攻撃によって(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3792)住処から這いずり出てきた結果、麓まで来てしまったようです。
硬い・強い・早い・エロいの四拍子を揃えたスーパーオールラウンダー・エンペラー・スライム……でした。現在は肥大化し、通常の対忍々の三十倍近い体積があります――が、それは山から下りたら所謂エサになる衣類が多すぎて『太り過ぎ』たようで、能力値が滅茶苦茶低下しているようです。
耐久力だけはありますが攻撃力が皆無。
もはやただのへっちなだけのスライムです。
とにかく衣類を食べようとして来ます。奴の触手に捕まると服を消化されますのでお気を付けください。(念の為申し上げますと装備ロストとかはしませんのでご安心ください)
え、人体は溶かされないのかって?
そこはベジタリアンなのでご安心ください。食べません。
とにかくなんとか捕まらないようにしつつボッコボコにしてやってください。
いいか、捕まるなよ。絶対捕まるんじゃないぞ。絶対だぞ!!
●味方NPC
・睦月
忍集団『暦』の一人。真面目な性格で、普段は主に会計役を担当しています。
前回エンペラー・TNNに遭遇した一人なのですが、また色々あって出会っちゃいました。運命かな? 対忍々滅すべし、慈悲は無いの精神でなんとか倒そうと試みています。
・弥生
忍集団『暦』の一人。罠作りの名手で、道具の作成や修理の他『色々』担当してます。
皆さんの援護などを担当する事でしょう。
・ギルオス・ホリス(p3n000016)
近くを通り掛かったら巻き込まれました。逃げてます。たすけてー!
・リリファ・ローレンツ(p3n000042)
スライムを千切っては投げ千切っては投げしてますが、とても解決しそうにありません!
・月原・亮(p3n000006)
正直帰りたい。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。衣類以外は。
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