シナリオ詳細
Destroy the goblins!
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オープニング
●
傭兵某所。
広がる荒野へと、多数の小鬼達が集まっていく。
いずれも一般的な人間種の背丈の半分ほどしかないのが特徴的だ。
多くは緑の肌をしていたが、中には青、黒、赤と異なる色の個体も交じっている。
凶悪な面構えをしており、粗野で狂暴性の高いこの生物はゴブリンと呼ばれ、混沌においてもかなりの勢力を築いており、散発的に村や冒険者、行商人などを襲うことで知られる。
巣穴でその勢力を密かに拡大している連中も少なくなく、そうした勢力は他種族の女性などを連れ去り、数を増やしているというから穏やかではない。
ただ、こうして荒野に相当数のゴブリンが集まるのは非常に珍しい。
多少群れを成してもせいぜい2~30程度であることも多い。
だが、荒野には百を優に超える群れが集合している。
「聞け、我が同胞たちよ!!」
声を荒げたのは、群れを統率する族長ゴブリン。
精悍な顔立ちをしており、全身に入れ墨を入れたそいつはシャーマンでもあるのだろう。
「我らが何もなき荒野で、こうして耐え凌いでいるのはなぜか。それは密かに決起の時を待ち、人間どもに目に物を見せてやる為に他ならない」
「「「オオオオオオオオオオオオ!!」」」
流暢に喋る族長の言葉に、ゴブリン達が一斉に吼える。
これまで、ラサの傭兵隊やローレットなどに苦渋を舐めさせられている個体も少なくないようだ。
それだけに、人間達に対する恨み辛みは非常に大きいようである。
「もうじき、我等の戦力は整う。手始めにあの人間どもの町を狙う」
族長が指し示す方向にあるのは、とあるオアシス。その湖畔にある織物で知られるエルミーツの町だ。
杖で荒野の地面を軽く叩いた族長。すると、周囲に地響きが起こる。
それだけでこの族長の力が非常に大きいことを感じさせ、ゴブリン達は族長に平伏する。
「我等の力を示すべき時は近い。各自、決起の時に備えるのだ……!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
ゴブリンどもが一際大きく猛り、吠える。
自分達の力を、この世界に蔓延る人間どもへと見せつける為に。
●
幻想ローレット。
緊急で届いたその知らせに、イレギュラーズ達の反応は様々だが、驚きを見せた者は少なくない。
「傭兵の地で、多数のゴブリンどもが決起の準備をしているそうだよ」
情報を知らせるべく、一度幻想まで戻ってきた『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)。
彼女はできるだけ多くの手が欲しいと、イレギュラーズ達へと助力を乞う。
ゴブリンは相当な数がいると見られており、荒野へとその戦力を集めているという。
彼らの狙いは、ラサの中心にほど近いオアシスの町エルミーツ。
織物を特産とするこの地で生産された絨毯は高級品として知られ、代々職人がこの地で引き継ぐ技術によって生み出された一品は、ラサでも愛用者が多いのだとか。
斥候を行った傭兵達の話によると相手は本気で、この町の制圧を考えているらしい。
なにせ、相手の名感は命を捨てて特攻する自爆ゴブリン、ゴブリン砲なる個体もいるという。
今のうちに食い止めねば、エルミーツに甚大な被害が及ぶ可能性すらあり得る状況なのだ。
「部隊は大きく3つ。町を強襲する為の部隊、迎撃の為の地上と特攻の混成部隊、そして、族長を守るための一般、近衛部隊さ」
まずは町を守る為にも、強襲部隊を叩きたい。
まだ、相手は戦力を整えている状況だ。荒野へと仕掛けていけば、ゴブリン達も自分達の目論見に気付かれたと襲い掛かってくるはずだ。
「戦場は何もない荒野。見通しが非常にいい場所だよ。相手もその空間を存分に生かしてくるはずさ」
強襲部隊は手足の生えたサメを駆るゴブリンライダーを中心に、一般兵と斥候兵で編成される。
下手に空を飛ぶと弓矢やゴブリンライダーに襲われてしまう為、上手く立ち回りたい。
「目標は強襲部隊を指揮する鼓舞指揮ゴブリンの撃破さ」
こいつを撃退、もしくは撃破できれば、強襲部隊は退くはず。次なる部隊との交戦に臨むことができるだろう。
戦況が進めば、改めてオリヴィアはイレギュラーズ達へと状況説明を行う手はずとなっている。できればそれを待ってから次なる戦いへと向かいたい。
なお、この戦いにはラサの傭兵も協力してくれるが、彼らだけではとても出ないが対処できる数ではない。他にも各地で放置できぬ事件は多数起きており、今回のゴブリン達の決起に注力できる者は決して多くなかったのだ。
「だからこそ、アタシらローレットにお株が回ってきたのさ」
どうやら、オリヴィアも戦場に立って戦うつもりらしい。それだけ人員は足りないということか。
「ともあれ、まずはエルミーツを守る為、強襲部隊の討伐だ。よろしく頼むよ」
オリヴィアはそうイレギュラーズ達へと願うのだった。
- Destroy the goblins!完了
- GM名なちゅい
- 種別ラリー
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年08月02日 19時18分
- 章数3章
- 総採用数65人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
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傭兵某所のオアシスにある湖畔の町、エルミーツ。
そこから荒野方面へと向け、ずらりと小鬼達の群れが布陣する。
「「「オオオオオオオオオオオオ!!」」」
叫びをあげるゴブリンの群れ。
ラサの大地を、空を揺るがすそれらの大軍に、エルミーツの人々が恐怖で体を震わせている。
「エルミーツの織物は実家でも扱っていてね。被害だなんて冗談じゃないだよ」
人馬の姿をした『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が言うように、この地は織物で知られる地だ。
「ゴブリンですか……」
攻め来る小鬼の大軍に、微笑みを浮かべる緑髪の神官男性『強欲神官』カイロ・コールド(p3p008306)も普段なら相手するモンスターではないと語ってはいたのだが。
「オアシスはラサの中でも重要な拠点……町ともなれば絶対に阻止しなければ」
星杖を構えるカイロも、前線に出るメンバーのバックアップに当たる。
「神威神楽より出て、初の景色ではありますが……」
水と緑豊かな豊穣の地からやってきた鬼人種女性、『荊棘』花榮・しきみ(p3p008719)。
なるほどと唸る鬼のしきみはゴブリンなる小鬼どもを初めて目にし、イレギュラーズの敵対対象としてそういった存在もいるのだと認識していた。
「そして、相手は略奪略取の者達。『殺せば良い』と。丁度良い練習台ではありませんか」
しきみもあの方の為、力をつけねばならぬと聖痕を刻んだグローブを両腕に装着させて。
「それでは――いざ、参りませう」
仲間と共に、素早く距離を詰めてくるゴブリンライダーから迎え撃つのである。
●
荒地を移動するゴブリンライダーが跨るのは、陸地に適応すべく手足が生えてカエルを思わせる姿になったランドシャーク。
生態系においては力のあるサメだが、群れに屈して手なずけられたそいつらはゴブリンを乗せ、荒野を駆け、跳躍する。
「ニンゲンハ、センメツダアアッ!!」
気丈するゴブリンはゴーグルの奥から街の前に待ち受けるローレット、イレギュラーズやラサの傭兵達を視認する。
そいつらを冷静に見据えるラダ。
(私一人では集られて終わりだ)
ここで多少抑えたところで、後から続々と敵はやってくる。
「なるべく離れないで下さいね」
カイロは「大神官の聖杖」の力で2人を強化するだけでなく、英雄叙事詩を歌って。
「讃えましょう。これまでの、そしてこれからの英雄達を」
彼の支援を受け、前線の2人が前に出て。
「守りは頼りないが、火力支援は任せろ」
まだ、後続が来るには時間がかかるようだが、ライフル「Schadenfreude」を構えたラダは先んじて跳躍してきたゴブリンライダー数体を巻き込み、頭上から鋼の驟雨を降らしていく。
「グワアアアッ!!」
頭上から降る弾丸に苦しむゴブリンライダー達。
弾丸の雨の切れ間にしきみが接敵し、炎を発して焼き払おうとする。
狙うはランドシャーク。攻撃力と機動力を兼ねるこいつを叩けば、乗っているゴブリンライダーを大きく弱体化できる。
ただ、しきみも下手に飛び出したりはしない。後続から狙われて瞬く間に叩かれてしまうからだ。
素早く距離を詰めてきたゴブリンライダーがしきみを狙って食らいついてきたところへ、カイロが身を挺してその食らいつきを受け止める。
「耐久には自信がありますので、私の事は気にせずに敵を攻撃して下さい」
カイロは自身の傷を癒すことができるが、多少の傷は厭うことなく、祝福の囁きを傍のメンバーへともたらしてくれる。
「疲れたら無理せずに退くんですよ~」
そんな海路の援護を受けながら、ラダはカイロへと食いついた敵へと殴りつけ、地面へと伏してしまう。
「――それでは、ご機嫌よう。来世にご期待くださいな?」
しきみは地面へと転げ落ちたゴブリンへと拳を叩き込み、トドメを刺す。鬼眼判官で死亡を確認してから、彼女は次なる敵へと向かう。
ゴブリンライダーと合わせ、徐々に近づいてくる一般襲撃部隊。
ハイセンスで警戒を強めていたラダは纏めて照準内に敵を捉え、更なる鋼の驟雨を敵陣へと打ち付けていく。
だが、そこで起こる激しい地割れ。どうやら、敵の中に相当な力を持つ相手がいるらしい。
「どうも厄介なのがいるな。ここで確実に仕留めるぞ」
たかがゴブリンと侮っていたラダだったが、想像以上の力を持つ相手の存在に気付き、その撃破を目指すのである。
成否
成功
第1章 第2節
●
続々と傭兵、エルミーツ前の荒野へと駆け付けてくるローレット、イレギュラーズ達。
まだ乱戦とまでは至っていない状況もあり、メンバー達は個々に戦闘準備を整える。
「何か最近ずっとゴブリンと殴り合ってる気がするんですが、気のせいですかね……」
可愛らしい容姿をした鉄騎種の猫耳少年、『ステンレス缶』ヨハン=レーム(p3p001117)がそう感じるのは無理もない。
「他所でゴブリン300匹とかみたけど……ここも湧くねぇ」
まだ、この混沌での生き方すら定まっていない少年、『強く叩くとすぐ死ぬ』三國・誠司(p3p008563)も先日、幻想に現れたゴブリンの大群による事件を知っていたらしい。
「ま、まぁ、それだけ数も多い魔物なのでしょうねぇ」
ヨハンは混沌のあちらこちらに湧くゴブリンに、いささか呆れも覚えていたようである。
「ごぶりん? 俺の知っている鬼とは随分違うな」
旅人である威圧感を抱かせる偉丈夫の武者、『鬼狩人』前田 風次郎(p3p008638)は元居た世界にて、鬼を倒すことを生業としていた。
ゴブリンを初めて見た彼は、差し詰め小鬼といった存在なのだろうと認識して。
「サマは違えど、人を襲う「鬼」なんだろう?」
近づいてくるゴブリンどもへと、風次郎は幅広な大剣を敵陣へと突き付けて。
「……ならば、首を置いてけ。世界が変われど、それが俺の役目だ」
ここでもまた、彼は鬼を狩るべく刃を振るう気概でいた。
「ゴブリンがなんぼのもんよ! 覚悟しなさい!?」
「けっ……雑魚どもが、調子に乗ってんじゃねえ」
鉄帝国軍人の娘であるラド・バウの闘士、『セイバーマギエル』リーヌシュカ(p3n000124)が叫びかけると、屈強な上半身をさらす髭面の大男、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)もゴブリンたち目がけて吠える。
「此処らはおれさまの縄張りだあ。小汚ェゴブリンどもがズカズカ入り込んでんじゃねえぞ!」
それを聞き、いきり立つゴブリン達。相手も人間如きにといった認識のようで、馬鹿にされたことに癇癪を起していたようだ。
「まぁ、君たちが人間を襲うのは勝手だ」
人の姿を取ってはいるが、その実地球外生命体だという『らぶあんどぴーす』恋屍・愛無(p3p007296)は、ドライな態度で告げる。
結局のところ、彼にとってそんなものは所詮、生存競争の一つに過ぎない。
弱い者は死ぬ。喰われる。それだけのことだ。
「だが、まぁ、僕の目と手の届く範囲でラサに仇なすモノは生かしておく理由は一つもない」
愛無はラサの傭兵団に所属していた過去がある。
それだけに、ローレットへと身を寄せた今でも、この地を汚す輩を許してはおけないのだろう。
「なんか……また大戦なのね……!」
海洋良家出身の飛行種女性、『帰る場所』トーラ・ファーレングッド(p3p007299)も傭兵の地で始まる大規模戦に加わる。
しかし、イレギュラーズとなってまだ経験の浅いトーラは、強力な魔法を覚えるには至っていない。
「さて、開けた場所が最初の舞台」
例えば、元気溌剌なハイテンション巫女、『星満ちて』小金井・正純(p3p008000)などは敵から距離をとって攻撃をと弓を構えている。
正純のように自分の長所を生かせられればいいが……、この場はトーラも割り切りを見せて。
「それでも! 何か私にもできることがあるはずだわ!」
「新人の僕一人では戦局ひっくり返せないけど、足止めくらいは……!」
誠司もまた自分の役割を考え、戦場を立ち回るべくその身を投じていくのである。
「風が呼ぶ! 海が呼ぶ! 嵐を……あーまーいっかこの辺は」
その近場では、少年風の見た目をしたスラム育ちの元盗賊、『ラド・バウC級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)も名乗りを上げようとして……途中で止めてしまう。
「長丁場だからな。コーユーのは特に、最後に立ってるのが大事だぜ」
そう新人達に聞こえるように言いながら、サンディは後方へと位置取り、「嵐を呼ぶ男」の異名通り本当に嵐を呼び寄せてみせたのである。
●
ゴブリン達もランドシャークに乗るライダーだけでなく、一般強襲部隊も前線まで到達してくる。
そいつら目がけ、前に出た風次郎は自身の闘気を仁王像として自らの背後に投影し、ゴブリンどもへとプレッシャーを与える。
「ギ……」
「グギギ……」
仁王像の睨みで、僅かにゴブリン達の進軍が遅くなった。
しかし、敵軍後方から太鼓の音が鳴り響き、敵軍内へと落雷が起こる。
「ナニヲシテイル! ニンゲンドモヲセンメツシロ!!」
それは、この強襲部隊を取り仕切る鼓舞指揮ゴブリンの声。
神輿のようなものに担がれたそいつは激しく太鼓を叩き鳴らし、さらに雷を自軍の周囲へと落とす。
「「オオオオオオオ!」」
どうやら、自分達の指揮官の能力に信頼があるらしく、一兵卒であるゴブリン達はバックの存在に安心しながらも、その指揮官の為にと死ぬ気で襲い掛かってくるようだ。
「また面白そうな敵が相手のようで……一つ兵法比べと行こうじゃないですか!」
そんな鼓舞指揮の存在に気づいたヨハンは身体を奮い立たせて。
「お前らなどに僕の戦術が負けてたまるかっ!」
ヨハンは手近なイレギュラーズや傭兵達へと呼び掛け、即席の迎撃部隊を形成して、遠距離攻撃できる者達へと呼び掛ける。
「武器を構えろーっ! オールハンデッド!!」
近場の自軍メンバーを英雄に変える全軍銃帯の号令。
傭兵達が弓や銃を手にしてまだ距離のあるゴブリンどもを狙い撃つ間、正純もその中に交じって遠距離攻撃に当たる。
「さあ、初陣です。気張って行きましょう!」
銃を手にした正純は気配を断って存在感を薄めつつ、超視力で向かい来る敵を感知し、射撃を行う。
「私の武器は見ての通り遠距離用、弓の用意は間に合いませんでしたが……」
弾丸は大きく2種。正純は威力と射程を伸ばした魔弾と魔力を弾丸としたマジックミサイルを使い分ける。
狙うはやや先行して飛び出してきていたゴブリンライダー達がメインで、正純は一般兵も合わせて狙い撃つ。
そうして、正純は自軍内だけでなく、時には少し外れた位置から敵を狙撃する。
「さすがにまだ、指揮官の捕捉は難しいですかね」
即座にその場を離れて次なる狙撃ポイントへと移動していた。
「今日はどうやら、調子がいいというか呪われてるというか」
サンディはそれが今回は丁度いいと感じたのか、呪いをセットする。
ヨハンが指揮を執っていたが、サンディも周囲で嵐を呼び起こして周囲の仲間を支援していた。
さて、前線では一般襲撃部隊とローレット傭兵混成軍がぶつかり始めていて。
「ゲギャギャアッ!!」
汚らしい笑い声を上げる一兵卒であるありふれたゴブリン達。
片手武器を振り上げて力任せに切りかかっては来るが、その力は歴戦の傭兵、イレギュラーズには明らかに劣る。
「……ふん、これでいい」
グドルフは右手で描く明るい光を自らへと撃ち込む。
それによって一時的に体力を増強した彼は反撃体制も整えつつ、向かい来るゴブリンの攻撃を山賊刀で受け止めて。
「うおおおおおっ!」
吠えるグドルフは圧倒的な力でゴブリンをぶった斬り、その身体を分断してみせる。
一応、矢を使った攻撃も用意していたグドルフだが、向こうから次々にやってくる。しばらくは力任せに相手を叩き切るだけで良さそうだ。
「鉄帝国軽騎兵をなめないでよね! みーんな、ぶった切ってあげるわ!」
リーヌシュカも集中した全力攻撃のセイバーストームを近づいてきたゴブリンともに浴びせかけ、血まみれにしてしまう。
リーヌシュカの一撃には識別の効果もあり、自軍に被害を及ぼすことはない。
「エルミーツの町はわたしたちが守ってあげるんだから!」
まだまだ、戦意を湧き立たせるリーヌシュカは全力でもう一撃セイバーストームをと構えを取っていた。
「ぬううううっ!!」
前に立つと言えば、風次郎も強化してゴブリン達の前に立ちはだかる。
そして、風次郎は大剣を前方へと突き出すように構え、力を込めた渾身の一撃をゴブリンへと叩きつける。
盾を構えようが関係ない。風次郎は自らの大剣でその盾を圧し潰し、ゴブリンの体を切り裂いてしまう。
「おおおおおっ!!」
さらに風次郎は大剣を操り、次なる敵へと斬りかかる。
とにかく、彼は敵の数を減らすことに集中すべく、一般兵を中心に相手取っていく。
そこに飛んでくる矢の雨。斥候部隊が一気に射放ってきた毒の矢を、メンバー達は盾や魔法で防ぐなど対処を行う。
「態勢を立て直しましょう!」
ヨハンはそれに対し、号令を発して自軍メンバーの異常を振り払わんとする。
トーラも仲間達の回復をとあちらこちらへと駆け回り、聖なる光を発して治癒に当たっていた。
仲間の援護ができればと考えていたトーラだったが、運悪く飛んできた毒矢が彼女の身体を穿つ。
「あっ……ああっ……!」
自らが狙われる可能性をあまり考えていなかったトーラ。
視界が霞みかけた彼女は運命の力に頼ってその矢を抜き取る。
「まだ、倒れてはいられないものね!」
今度は天に祈りを捧げ、トーラは自身を含めた仲間達の毒素を振り払っていくのである。
「相応に知能はあるようだ」
斥候を行う弓兵が相当に面倒な存在だと感じていた愛無。
なまじ知能がある相手なら、情報網を分断することはマイナスにはならないと判断する。
愛無は嗅覚に頼り、群れから離れて1人で突出している者を優先して叩こうと迫る。
毒矢に射抜かれたとしても、幸い毒は効きにくい愛無だ。
「ゲゲッ……!」
弓を構える斥候ゴブリンへと素早く接近した彼は、一応と問いかける。
先程、鼓舞指揮ゴブリンの人語と思われる叫び声を聞いたゴブリン達は把握をしていた。
なら、これから自分が言うことも理解するはずと愛無は判断して。
「投降の意志は有るか。無いか。無いならば……」
次の瞬間、愛無はチェーンソーを唸らして。
「喰い殺す」
「ギ、ギゲエエエッ!!」
投降の意思なしと判断した愛無は、躊躇なくそいつを切り捨てる。
なお、無かったにしろ、寝首をかかれても面倒だと死なない程度に攻撃はしていたのだが、そのゴブリンはどちらが幸せだっただろうか。
誠司も斥候ゴブリンを見つけ次第、精密射撃で処理していく。
斥候は面倒なことに、脇へと回り込んでからこちらへと毒矢を射放ち続けている。
「御国式砲術伍の型……炎獄発破」
それらへ、誠司は燃え上がる砲弾を放ち、自身へと引き付ける。
「きた……!」
前線への負担を減らすことが彼の狙い。
しばらく、前線は目の前のゴブリンの相手で手いっぱいだ。
「ぐっ……」
立て続けにゴブリンの刃を浴びたグドルフ。
パンドラの力にすがる彼は、目の前の敵を切り裂いてから一度引き、立て直しをはかる。
そこで、サンディが通常攻撃として巻き起こすのは、自軍メンバーを避けてゴブリンだけを狙う嵐だ。
「それだけじゃないぜ!」
彼の嵐を浴びれば、様々な状態異常を引き起こす。
それを浴びて倒れるゴブリンは珍しくなく、満足に動けぬモノも出始める。
「そのまま引き裂いてやるぜ!」
「「グギャアアアアアアアッ!!」」
どん詰まりのゴブリンどもを複数、サンディの嵐は引き裂いていく。
「オリヴィアちゃん見てたかなー」
サンディの視線の先、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は小さく笑い、水の魔法でゴブリンの排除を再開していた。
少し前衛の負担が減ったことで、誠司は先程引き付けた敵を再び前線へと誘導し、そいつを前衛の傭兵達へと叩かせる。
しかしながら、加速したゴブリンライダーが攻めてくれば、誠司も黙ってはおれず射撃で妨害を行う。
「イケ、ニンゲンドモヲ、ホロボスノダ!!」
さらに、指揮官も激しく太鼓を叩きつけ、天変地異を引き起こそうとする。
「「ウオオオオオオ!!」」
さらに勢いづくゴブリン達へ、誠司が再び蒼い炎纏う弾丸を叩き込んで敵を吹き飛ばし、時間を稼ぐ。
「イレギュラーズと一緒に戦えるって、すごく嬉しいの。だから、ぜったい頑張るんだから!」
そこで、リーヌシュカが全力で必殺の一撃を浴びせかけ、目の前のゴブリンを沈黙させてしまう。
「恥ずかしい所なんて、絶対にみせられないもの!」
「ああ、負けられるかよ……!」
下がってきたグドルフを含め、ヨハンは天使の歌を響かせて回復に当たっていたが。
「鼓舞指揮ゴブリン、厄介な相手ですね」
本格的に動き出した敵の力をヨハンは垣間見ながらも、さらに自軍の為にと号令を発していくのだった。
成否
成功
第1章 第3節
●
エルミーツの前に広がる荒野。
ここで繰り広げられるゴブリンと傭兵、ローレット勢の闘いは激しさを増す中、ローレットから派遣されたイレギュラーズの数は徐々に増えていく。
「戦いの時は来たっ!」
科学と幻想が入り混じった世界からの旅人、『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)は決起の掛け声を上げる。
目の前には、夥しい数のゴブリン。向こう見ずな小鬼の群れに、黒い肌をした大男、いや、大オーク、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が「ぶはははっ!」と豪快に笑う。
「半端に知恵もった命知らずは手に負えねぇなぁ、全く!」
「キャヒヒヒ、全く持ってド派手に攻め込んでくるもんデスネ!」
こちらも特徴的な笑い方をしていた、狼耳と尻尾を生やす『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)。
彼女もまたエルミーツの街はやらせないと、住民達の為に戦う構えだ。
「そっちも色々思う所があるんだろうけど……それを理由に、みすみす街を襲わせる訳には行かないねぇ」
人の姿を得たカイコガである旅人、『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)も、この状況は見過ごすことができなかったらしい。
「悪いけど、その攻勢はここで食い止めるよぉ!」
「今こそ花丸ちゃんの力を示す時っ! ……なんちゃって!」
「かかってくるなら迎え撃つ、貴様らの好きにゃあさせマセンヨ!!」
シルキィの掛け声に合わせ、花丸、わんこも武器を手に身構えていた。
ほぼ同じタイミング。
「待って、パパ! ……じゃなかった、アークライト殿! 置いて行かないでください!」
天義の騎士見習い、『聖少女』メルトリリス(p3p007295)は同行の男性を呼び止めようとしながら追いかける。
その前を歩く、混沌の地で勇者たらんと剣を振るう『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)も現地での状況を直に目にして。
「こんな数のゴブリン……見たことがない」
「はわっ、こ、こんな数のゴブリンがいたなんて知らなかった」
徒党を組むという言葉があったが、そんなレベルではなくもはや軍隊だとアランもメルトリリスも感じていた。
アランはどうしてもと言うから、彼女を連れてきたのだが……。
「しっかりついて来いよ、メルト。ゴブリンに捕まったら何されるか分からねェからな」
「勿論です! 引けを取るつもりはありませんが、ううっ、捕まったらと思うと……ヤダヤダ!」
想像するのも憚られると大きく首を振るメルトリリスだが、この娘をカバーしながら戦うなどアランにとっては造作でもないこと。
「ここは派手に暴れるか!」
アランは大剣を抜き、メルトリリスと共に敵陣へと突撃していくのである。
●
すでに、戦況はゴブリンの強襲部隊が直接先にやってきていたイレギュラーズ、傭兵達とぶつかっている。
「ワレラノチカラ、トクトミセテヤルノダ!!」
神輿に担がれた鼓舞指揮ゴブリンが太鼓を叩きながら自軍の士気を高める。
「「「ウオオオオオオオオオッ!!」」」
それだけで、ありふれたゴブリンですらも屈強な一兵卒へと変わる。指揮官としての力量は確かだ。
そこへ、新たにやってきたメンバー達が手数を埋めるように加わって。
「楽器叩いてる指揮者っぽいのがいるみたいだねぇ……」
シルキィはその鼓舞指揮ゴブリンを狙うべきと考えるが、そう簡単には近づけずにいた。
ゴリョウはというと、聖躰降臨を自らへと降ろしてから、大声で敵の気を引く。
「ぶはははっ! かかってこい。片っ端からぶっ潰してやるぜ!」
鋭い眼光、力強い声、どっしりとした体躯。
ゴリョウに目を付けたゴブリンどもが片手の刃を、毒矢を、ランドシャークを使って襲い掛かってくる。
彼は次々に襲い掛かってくるゴブリンどもの攻撃を、天狼盾『天蓋』で受け流す。
「防御特化の能力はこういう時の為にあるってな!」
ゴリョウは一般襲撃部隊を引きつけに当たるのは、ゴブリン達が人海戦術としているからである。
数の優位を活かして広い範囲で攻め込み、防御の弱い部分から浸透していって乱戦に持ち込む。そんな風に、ゴリョウは敵指揮官の狙いを読んで。
「なるほど、小細工抜きで強力だ」
その為、防御の硬い部分……自身をタンクとして数を引き寄せるしかないとゴリョウは判断したのだ。
両軍のせめぎ合いが続く中、花丸は前衛の1人として加わる。
まだ、戦いは始まったばかりだが、この後傭兵達が戦線から脱落していく可能性は低くない。
彼らが残れば残るほど、後の戦闘でも有利になると花丸は判断して。
「戦いの流れは……」
直感とハイセンスを十分に生かし、花丸は戦況を読み取る。何かあれば、すぐに周囲へと伝達する構えだ。
もちろん、攻撃にも花丸は加わる。できる限り、集中してから相手の刃に対して拳でカウンターを顔面へと叩き込んで地面へと沈めていった。
前線を支えるメンバー達から、わんこは前線の端の方からゴブリン達へと当たっていく。
「数で攻めて来るならば、纏めて蹴散らして減らすまでデス」
中央部は乱戦となっているが、わんこも一兵卒であるゴブリンの数減らしをと考える。
「初手くらい思いっきりいくデスヨー!!」
これ以上乱戦になれば、味方を巻き込む。だから、最初だけはとある程度敵陣へと近づいたわんこは、ゆび抜きグローブをはめた両手の拳を旋回させて。
「一気に薙ぎ払いデス!」
刃を振り被ってきたゴブリンや、ランドシャークで飛び掛かるゴブリンライダー目がけ、わんこは裏拳を叩き込んでいく。
思いっきり敵陣へと自らの技を叩き込んだわんこ。
「ねえ、大丈夫!?」
気遣って駆けつけてきた花丸。わんこも彼女に倣って前線へと加わり、狼さながらの力で殴りつけて目の前の敵を圧倒していたようだ。
その間に、シルキィは弓や魔法など遠距離攻撃を行う仲間を視認しつつも、敵指揮官をギリギリ狙える程度まで前に出る。
既に戦っている仲間達が敵部隊の数を減らしてくれていたこともあり、なんとか届きそうだと判断したシルキィ。
「いくよぉ~」
挨拶代わりにと自らの精神力を弾丸へと変えたシルキィの弾丸は、見事に鼓舞指揮ゴブリンへと一撃を与える。
「グワッ!?」
続けて攻撃ができれば、撃破に大きく近づいていたことだろう。
「クソ、ニンゲンメ……!」
虚を突いて初めて指揮官へと一撃を与えたが、そいつは周囲のゴブリンに守りを固め刺せてしまったのだった。
丁度その頃、前線を預かったアランが自らのリミッターを外して疑似聖剣を用いた二刀の構えより十字の斬撃を刻み込み、どんどん敵を倒して戦線を押し上げようとしていた。
その傍では、メルトリリスも前方目がけて魔砲を発し、多数のゴブリンを撃ち貫く。
近場の敵には、拳で威力は絶大のノーギルティ。その一撃で倒しきることはないとはいえ、その後しっかりと近場の傭兵がとどめを刺してくれるので安心だ。
「ぐっ……」
アランはメルトリリスを守りながらも、敵を蹴散らしていたのだが、それが合間に治癒魔術でアランの回復にも当たっていたメルトリリスには少しばかり不満げだったようで。
「……そんなに頼りないかな、ううーん! 守られてるだけのメルトではありませんからねっ!」
傍に立っているのは勇者なのだ。騎士としてそれは何と光栄なことか。
「我が騎士としての才を今ここでお見せ致します!」
守られてばかりでなく、アランと共に並び立つ為にメルトリリスは奮起し、さらにゴブリン目がけて殴り掛かっていく。
さて、その時シルキィはもう一撃鼓舞指揮ゴブリンへと精神力の弾丸を叩き込もうとしていたのだが。
「……いけない、離れて!!」
直感で危機を察した花丸の呼びかけを受け、その場から自軍メンバーが距離を置くと、そこに雷が叩き落とされる。
「グギャアアアアアアッ!!」
丁度、そこで前に出てきたゴブリンどもが、雷に焼かれて倒れていく形に。
その間に、わんこが指鉄砲を使い、雷の落下地点の向こうにいた斥候ゴブリンを強襲していく。
「グ……、ヒルムナ!!」
「「オ、オオオォォ……!」」
鼓舞指揮ゴブリンが叫びかけるが、今のフレンドリーアタックによって部下達の士気は確実に下がっていた。
徐々に体力を削られていた最前線のゴリョウは一層身を固めて。
「こっからは更にしぶとくなるぜ!」
まだまだ先は長い。こんなところで倒れてはいられないと彼は吠え、さらなるゴブリンどもの注意を引いていくのである。
成否
成功
第1章 第4節
●
ゴブリンの軍勢の第一陣は、エルミーツの街を狙って襲ってきていたが、徐々に集まる傭兵、ローレット勢にかなり押されてきている。
「ナニヲシテイル、イッキニセメタテロ!!」
「「オ、オオォォ……!!」」
鼓舞指揮ゴブリンが太鼓を叩いて部下達に力を与えようとするが、敵軍は士気がかなり下がってきていたようだ。
軽食喫茶兼酒場の店長である色黒女性、『エージェント・バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は店のテーブルクロスなどの買い付けにエルミーツを訪れていたのだが……。
「ゴブリンの襲撃だって!?」
そういえば、ラサでローレットの仕事をしたことは無かったなと考えるモカは全世界的有名店主を目指すべく、ここで活躍して知名度アップを目指す。
そのモカが現場に駆け付けたところ、続々と増援とやってきたメンバーの姿が。
「ゴブリン……」
ラサをメインに活動する色白で小柄な女性、『Ultima vampire』Erstine・Winstein(p3p007325)はどんな敵であろうとも、この国に仇なす者ならば早急に始末をと駆け出す。
「…………」
このラサの地で傭兵となった紺色の髪の女性、『声なき傭兵』白鷺 奏(p3p008740)は考える。
(召喚前は傭兵として何度も戦った相手だけど)
彼女にとっても、この規模での襲撃は初めてだった。
「ここまでゴブリンが居るとなると、なかなか壮観だな」
これでもかなりの数を先行のイレギュラーズ達が倒しているが、それでも正義感の強い黒縁眼鏡の青年『探索者』浅木 礼久(p3p002524)は乾いた笑いを浮かべるが、笑いごとでないと表情を引き締めて。
この戦場のどこかですでに戦っているオリヴィアに良いところを……と考えつつ、礼久もまた戦線に加わっていく。
(全力で迎撃しよう)
声を発することのできない奏は街を守る為にも、たかがゴブリンと侮ることなく迎撃に向かう。
「へぇ、神使最初の仕事は小鬼退治か!?」
イレギュラーズとして、豊穣の地を出て初めての依頼としてゴブリン退治に臨む『笑う青鬼』八寒 嗢鉢羅(p3p008747)は腕を鳴らす。
今回の依頼の為に、彼が用意したのは軍馬だ。
「こいつに乗って景気よく、初陣大暴れと行こうじゃねぇの!」
嗢鉢羅は威勢よく、馬に乗って駆け出していく。
そんな彼を、ゴブリンライダーが目をつけて素早く迫っていく様を、小柄な猫科の獣種、『虹の橋を歩む者』ロゼット=テイ(p3p004150)がじっと見詰めて。
「なるほど、砂漠サメに乗って高速移動かあ。いや、感心するね」
正義、社会性といったものは大切なのだろうが、生きるということに全力な様は素晴らしい。
「厄介者も生きる為に必死と思えば、敬意を払うのに戸惑いもないね」
ロゼットはそんなゴブリン達の生き様を絶賛すらする。
「だけど、ね? 本当にわかっているのかな?」
――果たして、このラサの砂漠、荒地は、常に君らの味方であり続けるのかな?
そんな問いを、ロゼットは攻め来るゴブリン達へと投げかけるのだった。
●
すでに、この場には多くの傭兵、イレギュラーズ達が交戦を繰り広げている。
「いくぜオラァーッ! 突撃じゃぁー!」
軍馬の機動力を生かす嗢鉢羅は、生意気にもサメに跨る小鬼目がけ、ブラッディスピアを幾度も突き出して敵を牽制する。
嗢鉢羅はすぐに馬を引かせて離脱し、再びゴブリンライダー目がけて牽制の連撃を繰り出す。
「足を止められねぇようにしねぇとな!」
嗢鉢羅の作戦は軍馬の機動力が生命線。彼は特に斥候の毒矢に注意して馬を走らせていた。
そんな最前線近くまで飛び込んだ礼久だが、できることは支援だけだと彼は自認している。
(とはいえ、でくの坊になるつもりはない)
彼はまず、可能な限り設置型の音爆弾を仕掛けていく。
相手は奇襲が大好きだと思われるゴブリンだ。隙を見せればそれだけで大怪我をしかねない。
聴覚を有しているのは、指揮官の声を認識していることで明らか。
パアン、パアアアン!!
「ギ……ッ!?」
炸裂していく音爆弾に驚くゴブリン達。
今のうちにと、礼久はエスプリである軍師に重ね、赤い熱狂を最大限に発揮できるよう、自軍前線近くへと移動していく。
その範囲内にいた奏はゴブリンの数を減らすべく、身体強化魔術で自らを強化して銀色の刃で正面から敵を切り伏せる。
「…………」
一気にゴブリンやゴブリンライダーが飛び掛かってきたのを見れば、奏はすぐさまガンブレードへと武器を持ち換えて弾を込めた。
「…………!」
紫電一閃。トリガーを引くと同時に放たれた煌めきは、複数のゴブリンどもを薙ぎ払う一撃は、見事にそれらの敵を切り裂き、荒野へと沈めていく。
(いくら矮小とはいえ、相手はより弱きを殺し、女を攫う怪物)
奏に容赦などない。確実に彼女は小鬼どもを仕留めていく。
傍では同じく、支援を受けたErstineは、周囲にヒーラー、タンクとなるイレギュラーズがいることを確認して、大鎌を手にする。
「彼等の勢いは凄いわ……、私も負けてられない!」
初期に比べれば勢いは衰えてきているが、戦列に加わるErstineにはまだまだゴブリン達は奮い立って襲ってきているように感じられたようだ。
斥候役が弓を射るばかりでなく刃を手にしているのは、戦線を維持するだけの数が減ってきている証拠。
そいつらを、Erstineは魔力を込めた大鎌でなぎ払い、続けざまに敵を翻弄して告死の一撃で彼女は斥候の1体の命を刈り取る。
前線を切り開く者、敵の攻撃を受ける者、回復支援に当たり続ける者……。
Erstineは近場の自軍メンバーと共闘し、時には邪剣を操って敵を惑わせ、仲間にそいつを託す。
しばらく前線で敵の刃、矢、爪牙を浴びていたErstineの傷を礼久が癒しに当たる間、前に出たモカが両サイドの敵と合わせて残像が見えるほどの速さで蹴りかかっていく。
「ハアッ!」
1体が倒れ、両側の斥候が襲ってくると、モカは回し蹴りを食らわせて片側のゴブリンを沈め、連続して殴り蹴るのコンビネーション攻撃を叩き込んでもう1匹も叩き伏せていた。
その時、戦略眼で何かを察した礼久。戦場へと太鼓の音が鳴り響き始めていたのだ。
「指揮官が何か仕掛けてくるはず……」
ここにきて、大きな動きを見せる敵指揮官は、ローレット、傭兵の混成軍を一気に叩くつもりなのだろう。
そこで、ロゼットは前へと歩きながら、淡々と敵陣へと語りかける。
「我らを生かし、我らを殺す」
――我らを本当に支配している無慈悲な支配者は、いったい誰なのか。
――どんな存在もどんな工夫も打ち崩す試練の王は誰なのか。
ゴブリンどもはこちらのメンバーへの攻撃へと躍起になっており、全くロゼットの語りに耳を傾けてはいない。
「――そう、砂漠、ラサの砂漠こそ、祖先達が生き、だれひとりの区別なく帰りしこの砂の死者の国こそ、試練の王よ」
ロゼットは呼びかけによって、敵前方へと呼び起こしたのは……。
「吹き荒れろシムーンケイジ、砂漠の砂嵐よ」
まさに、このラサの地で巻き起こる熱砂の嵐はゴブリン達を巻き込んで吹き荒れ、その命を奪い去っていく。
ゴブリンライダー数体も巻き込まれており、嗢鉢羅が一気にそいつらを攻め落とす。
すると、戦線が開け、自軍からでも神輿に担がれていた鼓舞指揮ゴブリンの姿が露わになる。
「グギギ、ヨクモ……!」
神輿を担いでいたゴブリンが嵐によって倒れ、鼓舞指揮ゴブリンも地割れを起こそうとしていた詠唱と手が止まってしまった様子。
「…………」
そいつへと、髪の隙間から眼光を煌めかせた奏が距離を詰め、間合いへと踏み込んで指揮官の胸部を切り裂く。
続き、モカも高速の蹴撃を浴びせかけ、鼓舞指揮ゴブリンの動きを止めて。
「ありふれたゴブリンも大事だけれど、地割れや雷を起こす指揮官も見逃せない存在ね」
敵指揮官へと告げながら、Erstineが形作った黒の大顎は次の瞬間、目の前の餌を貪り喰らう。
「グギャアアアアアァァ…………!!」
地面に落ちた神輿が血に濡れ、そこに乗っていたはずの塊を目にしたゴブリン達。
「「ヒッ、ヒイイイッ……!!」」
彼らは一目散に、後方に向かって逃げ出していったのだった。
成否
成功
GMコメント
ローレットイレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
初のラリーシナリオをお届けいたします。
こちらは、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)さんの関係者として登録されたゴブリン達です。
どうやら、一族を統べる族長の元、集団で傭兵達へと喧嘩を吹っ掛けてくるようです。
皆様の力で撃退、撃破を願います。
●ラリーの展開予定
全ての敵がゴブリンです。
それぞれの章で戦うゴブリンの種類は決まっております。
数の表記がある敵はそちらのみ。
表記がない敵は総数が不明となっております。
なお、次章に進んだ後、1日程度で第1節を執筆、状況説明を行います。
そちらをご確認いただいてから、2,3章のプレイングを執筆していただければ幸いです。
<第一章>========================
障害物のない広い荒野が戦場です。
ラサのオアシスの一つ、織物の街エルミーツを守る為、強襲部隊の指揮を執る鼓舞指揮ゴブリンの討伐が目標です。
ゴブリンライダーの強襲に合わせ、一般兵と斥候兵が合わせて仕掛けてくるので、冷静に対処して叩きたいところです。
●強襲部隊
◎強襲本隊
・ゴブリンライダー
手足が生えて両生類を思わせる姿となったサメを狩るゴブリンです。素早く跳躍し、頭上から敵へと食らいつきます。
◎一般襲撃部隊
・ありふれたゴブリン
全章に登場する一般兵です。片手剣、片手斧などを振るいつつ、盾でしっかりとガードもこなし、継戦能力にも優れます。
・斥候ゴブリン
文字通り斥候役。弓を得意とし、その鏃には様々な毒を塗り、相手を動きを止めたり、弱らせたりします。
◎指揮官
・鼓舞指揮ゴブリン×1体
最初の部隊の指揮を執ります。
自らは動かず、ドラムを叩いて自軍の支援を行います。
場合によっては、敵陣へと地割れや雷を起こすことも……。
<第二章>========================
荒野の岩場地帯で地上隊が抑える中、岩場から特攻隊が襲い掛かってきます。とりわけ爆撃をうけると致命的なダメージになるので油断は禁物です。
こちらの部隊も、鼓舞指揮ゴブリンの討伐が目的です。
●地上、特攻混成部隊
◎地上隊
・ありふれたゴブリン
全章に登場する一般兵。数で相手を圧倒し、後述の特攻隊の支援の為に足止めをはかります。
・守兵ゴブリン
屈強な鎧と盾で身を固め、槍で攻撃しつつ相手の足止めを行います。
・斥候ゴブリン
一章に引き続き登場する斥候兵。岩陰に隠れて敵を射抜き、場合によっては後述の特攻隊の援護射撃、起爆などを行います。
◎特攻隊
・自爆ゴブリン
タル爆弾を担いだ自爆特攻を目的としたゴブリンです。
状況によっては爆弾を切り離して退避することも……。
・ゴブリン砲
自らが砲弾として特攻します。
まさに自爆特攻。命を惜しまずに攻めてくる危険な相手です。
◎指揮官
・鼓舞指揮ゴブリン×1体
全章に登場。支援強化と範囲攻撃。部隊の統率を行います。
<第三章>========================
荒野の地下空洞での決戦です。残る勢力を全て投入してきます。
一、二章で残っている相手も、ありふれたゴブリン、ゴブリン戦士となって編成され戦力投入されます。
●ゴブリン全軍
◎一般部隊
・ありふれたゴブリン
全章に登場。片手武器+盾で攻めてきます。最も数が多い敵です。
・ゴブリン戦士
三章のみ登場。一般的なゴブリンよりも戦闘能力に優れます。大きな斧やフレイルを使い、力で攻めてくるゴブリン族の戦士です。
◎近衛部隊
・守兵ゴブリン
二章に引き続き登場。鎧と盾で身を固め、槍で攻撃。ここでは族長の周囲を固める近衛兵です。
・鼓舞指揮ゴブリン×2体(一、二章で撃退となった敵がいれば、プラスされます。最大4体が相手になります)
全章に登場。支援強化と範囲攻撃。族長ゴブリンの傍で守兵の支援強化に当たります。
◎指揮官
・族長ゴブリン×1体
三章のみ登場。群れを統率する族長、自然を操る術を使う恐ろしい相手です。
●NPC
◎ラサの傭兵達
参戦できる2~30人程が参戦します。
基本、ゴブリン一般兵とは互角以上に戦える力がありますが、数が多いこともあって、どこまで戦えるかは彼らも分からないようです。
傭兵達に負けぬよう、ローレットの存在感を示したいところです。
◎『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)
ご指名があれば共同戦線をとりますが、なければローレット勢に紛れて戦っていると思います。
シャムシールを使った近接戦だけでなく、水の術を使った射撃攻撃も得意としています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします!
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