PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Destroy the goblins!

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 傭兵某所。
 広がる荒野へと、多数の小鬼達が集まっていく。
 いずれも一般的な人間種の背丈の半分ほどしかないのが特徴的だ。
 多くは緑の肌をしていたが、中には青、黒、赤と異なる色の個体も交じっている。
 凶悪な面構えをしており、粗野で狂暴性の高いこの生物はゴブリンと呼ばれ、混沌においてもかなりの勢力を築いており、散発的に村や冒険者、行商人などを襲うことで知られる。
 巣穴でその勢力を密かに拡大している連中も少なくなく、そうした勢力は他種族の女性などを連れ去り、数を増やしているというから穏やかではない。

 ただ、こうして荒野に相当数のゴブリンが集まるのは非常に珍しい。
 多少群れを成してもせいぜい2~30程度であることも多い。
 だが、荒野には百を優に超える群れが集合している。
「聞け、我が同胞たちよ!!」
 声を荒げたのは、群れを統率する族長ゴブリン。
 精悍な顔立ちをしており、全身に入れ墨を入れたそいつはシャーマンでもあるのだろう。
「我らが何もなき荒野で、こうして耐え凌いでいるのはなぜか。それは密かに決起の時を待ち、人間どもに目に物を見せてやる為に他ならない」
「「「オオオオオオオオオオオオ!!」」」
 流暢に喋る族長の言葉に、ゴブリン達が一斉に吼える。
 これまで、ラサの傭兵隊やローレットなどに苦渋を舐めさせられている個体も少なくないようだ。
 それだけに、人間達に対する恨み辛みは非常に大きいようである。
「もうじき、我等の戦力は整う。手始めにあの人間どもの町を狙う」
 族長が指し示す方向にあるのは、とあるオアシス。その湖畔にある織物で知られるエルミーツの町だ。
 杖で荒野の地面を軽く叩いた族長。すると、周囲に地響きが起こる。
 それだけでこの族長の力が非常に大きいことを感じさせ、ゴブリン達は族長に平伏する。
「我等の力を示すべき時は近い。各自、決起の時に備えるのだ……!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
 ゴブリンどもが一際大きく猛り、吠える。
 自分達の力を、この世界に蔓延る人間どもへと見せつける為に。


 幻想ローレット。
 緊急で届いたその知らせに、イレギュラーズ達の反応は様々だが、驚きを見せた者は少なくない。
「傭兵の地で、多数のゴブリンどもが決起の準備をしているそうだよ」
 情報を知らせるべく、一度幻想まで戻ってきた『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)。
 彼女はできるだけ多くの手が欲しいと、イレギュラーズ達へと助力を乞う。
 ゴブリンは相当な数がいると見られており、荒野へとその戦力を集めているという。
 彼らの狙いは、ラサの中心にほど近いオアシスの町エルミーツ。
 織物を特産とするこの地で生産された絨毯は高級品として知られ、代々職人がこの地で引き継ぐ技術によって生み出された一品は、ラサでも愛用者が多いのだとか。
 斥候を行った傭兵達の話によると相手は本気で、この町の制圧を考えているらしい。
 なにせ、相手の名感は命を捨てて特攻する自爆ゴブリン、ゴブリン砲なる個体もいるという。
 今のうちに食い止めねば、エルミーツに甚大な被害が及ぶ可能性すらあり得る状況なのだ。

「部隊は大きく3つ。町を強襲する為の部隊、迎撃の為の地上と特攻の混成部隊、そして、族長を守るための一般、近衛部隊さ」
 まずは町を守る為にも、強襲部隊を叩きたい。
 まだ、相手は戦力を整えている状況だ。荒野へと仕掛けていけば、ゴブリン達も自分達の目論見に気付かれたと襲い掛かってくるはずだ。
「戦場は何もない荒野。見通しが非常にいい場所だよ。相手もその空間を存分に生かしてくるはずさ」
 強襲部隊は手足の生えたサメを駆るゴブリンライダーを中心に、一般兵と斥候兵で編成される。
 下手に空を飛ぶと弓矢やゴブリンライダーに襲われてしまう為、上手く立ち回りたい。
「目標は強襲部隊を指揮する鼓舞指揮ゴブリンの撃破さ」
 こいつを撃退、もしくは撃破できれば、強襲部隊は退くはず。次なる部隊との交戦に臨むことができるだろう。
 戦況が進めば、改めてオリヴィアはイレギュラーズ達へと状況説明を行う手はずとなっている。できればそれを待ってから次なる戦いへと向かいたい。

 なお、この戦いにはラサの傭兵も協力してくれるが、彼らだけではとても出ないが対処できる数ではない。他にも各地で放置できぬ事件は多数起きており、今回のゴブリン達の決起に注力できる者は決して多くなかったのだ。
「だからこそ、アタシらローレットにお株が回ってきたのさ」
 どうやら、オリヴィアも戦場に立って戦うつもりらしい。それだけ人員は足りないということか。
「ともあれ、まずはエルミーツを守る為、強襲部隊の討伐だ。よろしく頼むよ」
 オリヴィアはそうイレギュラーズ達へと願うのだった。

GMコメント

 ローレットイレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 初のラリーシナリオをお届けいたします。

 こちらは、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)さんの関係者として登録されたゴブリン達です。
 どうやら、一族を統べる族長の元、集団で傭兵達へと喧嘩を吹っ掛けてくるようです。
 皆様の力で撃退、撃破を願います。

●ラリーの展開予定
 全ての敵がゴブリンです。
 それぞれの章で戦うゴブリンの種類は決まっております。
 数の表記がある敵はそちらのみ。
 表記がない敵は総数が不明となっております。

 なお、次章に進んだ後、1日程度で第1節を執筆、状況説明を行います。
 そちらをご確認いただいてから、2,3章のプレイングを執筆していただければ幸いです。

<第一章>========================

 障害物のない広い荒野が戦場です。
 ラサのオアシスの一つ、織物の街エルミーツを守る為、強襲部隊の指揮を執る鼓舞指揮ゴブリンの討伐が目標です。
 ゴブリンライダーの強襲に合わせ、一般兵と斥候兵が合わせて仕掛けてくるので、冷静に対処して叩きたいところです。

●強襲部隊
◎強襲本隊
・ゴブリンライダー
 手足が生えて両生類を思わせる姿となったサメを狩るゴブリンです。素早く跳躍し、頭上から敵へと食らいつきます。

◎一般襲撃部隊
・ありふれたゴブリン
 全章に登場する一般兵です。片手剣、片手斧などを振るいつつ、盾でしっかりとガードもこなし、継戦能力にも優れます。
・斥候ゴブリン
 文字通り斥候役。弓を得意とし、その鏃には様々な毒を塗り、相手を動きを止めたり、弱らせたりします。

◎指揮官
・鼓舞指揮ゴブリン×1体
 最初の部隊の指揮を執ります。
 自らは動かず、ドラムを叩いて自軍の支援を行います。
 場合によっては、敵陣へと地割れや雷を起こすことも……。

<第二章>========================

 荒野の岩場地帯で地上隊が抑える中、岩場から特攻隊が襲い掛かってきます。とりわけ爆撃をうけると致命的なダメージになるので油断は禁物です。
 こちらの部隊も、鼓舞指揮ゴブリンの討伐が目的です。

●地上、特攻混成部隊
◎地上隊
・ありふれたゴブリン
 全章に登場する一般兵。数で相手を圧倒し、後述の特攻隊の支援の為に足止めをはかります。
・守兵ゴブリン
 屈強な鎧と盾で身を固め、槍で攻撃しつつ相手の足止めを行います。
・斥候ゴブリン
 一章に引き続き登場する斥候兵。岩陰に隠れて敵を射抜き、場合によっては後述の特攻隊の援護射撃、起爆などを行います。

◎特攻隊
・自爆ゴブリン
 タル爆弾を担いだ自爆特攻を目的としたゴブリンです。
 状況によっては爆弾を切り離して退避することも……。
・ゴブリン砲
 自らが砲弾として特攻します。
 まさに自爆特攻。命を惜しまずに攻めてくる危険な相手です。

◎指揮官
・鼓舞指揮ゴブリン×1体
 全章に登場。支援強化と範囲攻撃。部隊の統率を行います。

<第三章>========================

 荒野の地下空洞での決戦です。残る勢力を全て投入してきます。
 一、二章で残っている相手も、ありふれたゴブリン、ゴブリン戦士となって編成され戦力投入されます。

●ゴブリン全軍
◎一般部隊
・ありふれたゴブリン
 全章に登場。片手武器+盾で攻めてきます。最も数が多い敵です。
・ゴブリン戦士
 三章のみ登場。一般的なゴブリンよりも戦闘能力に優れます。大きな斧やフレイルを使い、力で攻めてくるゴブリン族の戦士です。

◎近衛部隊
・守兵ゴブリン
 二章に引き続き登場。鎧と盾で身を固め、槍で攻撃。ここでは族長の周囲を固める近衛兵です。
・鼓舞指揮ゴブリン×2体(一、二章で撃退となった敵がいれば、プラスされます。最大4体が相手になります)
 全章に登場。支援強化と範囲攻撃。族長ゴブリンの傍で守兵の支援強化に当たります。

◎指揮官
・族長ゴブリン×1体
 三章のみ登場。群れを統率する族長、自然を操る術を使う恐ろしい相手です。

●NPC
◎ラサの傭兵達
 参戦できる2~30人程が参戦します。
 基本、ゴブリン一般兵とは互角以上に戦える力がありますが、数が多いこともあって、どこまで戦えるかは彼らも分からないようです。
 傭兵達に負けぬよう、ローレットの存在感を示したいところです。

◎『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)
 ご指名があれば共同戦線をとりますが、なければローレット勢に紛れて戦っていると思います。
 シャムシールを使った近接戦だけでなく、水の術を使った射撃攻撃も得意としています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • Destroy the goblins!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月02日 19時18分
  • 章数3章
  • 総採用数65人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節


 ラサの荒野に現れたゴブリン達の大群を2度退けたローレット、ラサ傭兵混成軍。
「ここから参戦する者もいるだろうからね。少し状況を整理しようか」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が改めて状況を整理すべく混成軍のイレギュラーズ、傭兵達へと説明を行う。

 1度目の交戦はラサのオアシスの一つ、織物業で知られるエルミーツを防衛しながらの戦いだった。
 平地という地形をうまく使い、混成軍は強襲してくるゴブリンライアーを蹴散らしながら、一般、斥候ゴブリンを討伐しつつ、指揮官である鼓舞指揮ゴブリンを撃破。
 街を攻めてきた部隊をほぼ壊滅へと追いやった。
 2度目の交戦は岩場での戦い。
 一般、斥候と合わせ、守兵ゴブリンで編成される地上隊と別に、岩場から自爆上等の特攻隊が襲ってきていた。
 メンバー達は特攻隊の対処に重きを置いて討伐に当たっていたのだが、指揮官鼓舞指揮ゴブリンを含む一部の地上隊を取り逃がしてしまった。
「逃げた連中は、本隊との合流をはかったはずだよ」
 まだ終わりではない。かなりの数のゴブリン達がまだこの荒野に潜んでいるはずだ。
 ローレット勢の立ち回りに助けられ、ラサの傭兵達もほとんど脱落することなくここまでついてきている。
「君達がいなければ、エルミーツすら防衛できなかっただろう」
「本当にすまない。……そして、これからも頼む」
「ああ、ここからが踏ん張りどころだ。気合い入れていくよ」
 傭兵達の感謝の言葉を聞き、オリヴィアに喝を入れてもらった混成軍はさらに岩場の先へと歩を進めていく。


 岩場からさらに進むと、何もない荒野の地面のあちらこちらへと穴が開いた場所へと至る。
 一見何もないように見える場所ではあるが、地下から漂ってくる殺気を感じた混成軍メンバー達は警戒を強めながら荒野の地下へと進んでいく。
 荒野の地下10数メートル。そこは見渡すことができるほど広い空間になっていた。
 天井も思った以上に高い上、多数の穴が開いており、日の光も差し込んでくる。よほど天井や壁を破壊しなければ、この地下空間が崩れ落ちることは無いだろう。
 さて、この場で待ち構えていたのは、荒野にいるゴブリン全軍。
 まずは一般部隊としてありふれたゴブリン。逃げてきた斥候ゴブリンなどもこちらへと含まれるが、それ以上に斧やフレイルといった高威力の武器を使うゴブリン戦士が目を引く存在だ。
 ここまで温存していただけあって、ゴブリン戦士の数は少なくない。被害が拡大する前に叩いてしまいたい相手だ。
 続いて、近衛部隊として守兵ゴブリンに加え、3体の鼓舞指揮ゴブリンが全軍の士気を高めようと太鼓を打ち鳴らす。
 地下では地割れは起こしづらいが、鼓舞指揮ゴブリン達は雷を主体として落としてくると予想される。
「ここまで我らを追い込むとは……、恐るべきはニンゲンどもよ」
 そして、最後方に位置し、近衛部隊に守られている全軍の長である族長ゴブリンこそ、今回討伐せねばならぬ敵だ。
 ゴブリンとは思えぬ知能を持つ族長は流暢に人の言葉を操ることができ、竜巻、細氷、マグマ、津波など、自然を操る多彩な技を持つ。
 下手に近づけば、壊滅しかねない恐るべき相手だ。
「だが、最後に笑うのは我等ゴブリンだ」
 族長は杖を突きつけ、ゴブリン達へと告げる。
「全軍突撃せよ。我等の命運はこの一戦に全てかかっていると知れ!!」
「「「ウオオオオオオオオオオオオッ!!」」」
 士気高く吠えるゴブリン達の声によって地鳴りすら起こり始める。
 だが、ここまで戦ってきたローレット傭兵混成軍が怯むはずもない。
 族長、鼓舞指揮合わせて4体の力に注意しながらも、メンバー達は荒野に巣食うゴブリン達との最後の戦いに臨むのである。


第3章 第2節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人


 ラサの荒野のとある場所は広大な地下空間が広がっている。
 そこに、大軍を集めていたゴブリン達は、今か今かとローレット傭兵混成軍の侵攻を待ち受けていた。
「「「ウオオオオオオオオオオオオッ!!」」」
 その雄叫びは地上にまで響いており、突入しようとするメンバー達の足を僅かに止める。
「その熱狂を、この団結を、人を襲う以外に向けられれば、或いは違った未来があったのかもしれないな」
 ケンタウロス型の馬の獣種、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)があり得た関係を口にしたが、もはや詮無き事。もはや、互いに積み上げた怨恨が大きすぎたのだ。
「ならば、決着をつけるしかあるまいよ」
 そのラダの脇には、岩場での戦いにて散々ゴブリン達をおちょくって楽しがっていた緑髪の神官、『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)の姿があった。
「おっと……いけない、いけない。目的を見失いかけてました」
 地面の下からゴブリン達の殺気を感じ、カイロは何をしようかと考える。
 丁度その時、傍では、2人のイレギュラーズ男性が歩いていて。
「今回はよろしくお願いします。オリーブさん」
 小柄な赤髪の旅人少年、『弓使い(ビギナー)』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)が丁寧に頭を下げ、自身が後衛の為に今回のパートナーへと前衛を頼む。
 すると、それを聞いた黒髪の機械種、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)がこんな提案を持ちかける。
「折角の機会です。剣と弓、どちらがより多くの敵を倒せるか競いませんか?」
「え、倒した数で勝負? まあいいですけど……」
 こういうのがあるとモチベーションが高まると語るオリーブに、ミヅハは戸惑いながらも頷く。
 2人は強く意気込みながらも、荒野の地下へと足を踏み入れていくのである。


 緩やかな長い下り坂を降りていき、巨大な地下空洞内で待ち受けるはゴブリン達の本陣。
 先駆けてその地下空洞へと足を踏み入れたメンバー達の姿を認め、ゴブリンどもの親玉、族長ゴブリンが叫ぶ。
「全軍突撃せよ!!」
「「「ウオオオオオオオオッ!!」」」
 吠えるゴブリン達は地上の一般兵と戦士が駆け出す。
 現状、鼓舞指揮ゴブリンは太鼓を打ち鳴らし、士気を高めるのみ。族長ゴブリンも自軍の兵を巻き込まぬよう静観の構えだ。
「頼もしい味方は大勢いますし……」
 先程の戦闘中に閃いた魔術をと、カイロはまず自らに聖なるかなを降ろす。
 続いて、カイロは手当たり次第に傭兵やイレギュラーズにも聖躰降臨を使い、反撃態勢を強めようとしていた。
 その対象の1人としてオリーブがいた。
 元々反撃できる構えを取っていたオリーブだが、それをより強化しながらも、向かい来る一般兵や戦士を迎え撃つべく長剣で乱撃を浴びせかけていく。
 出来るなら、鼓舞指揮を狙いたいところだが、現状は迫りくる相手から倒していくしかない。うまく反撃で倒れてくれる敵もいたが、何せ敵の数が数だ。
(多少なら倒し損ねても、ソレイユさんが止めを刺してくれるでしょう)
 オリーブが考えていた通り、集中を研ぎ澄ましたミヅハが弱った敵に鏃を向けて。
 横に並んで攻め来るゴブリンどもには多数の矢を弾幕の如く撃ち放ち、順番待ちとばかりに並ぶゴブリンには抉るような死の一矢で穿っていく。
「なるべく傷付いた敵に止めを刺すように……」
 オリーブが仕留めきれなかった敵を見つければ、ミヅハは神弓を向けて。
「よし、当たれ!」
 勝負のことも頭に入れて弱った敵を狙ったミヅハはそいつの頭を穿ってとどめを刺し、次なる敵をと押し寄せるゴブリンの撃退に注力する。

「敵陣に風穴を開けよう」
 そこで、圧倒的な眼力で前方を見据えたラダが後ろから敵後方を狙ってライフルを構える。
 この地下空洞はかなり広い空間ではあるが、それでも動ける範囲が制限されることに変わりない。
 ラダはそう判断して引き金を引き、敵陣へと鋼の驟雨を撃ちつけていく。
「雷がだろうと竜巻だろうと撃ち返すつもりだが……」
 前線は傭兵達が持たせてくれているが、いつ指揮官や鼓舞指揮の3体が本格的に動き出すか考えれば怖いところ。
 ともあれ、巻き込まれる危険を考え、ラダはヒット&アウェイで立ち回る。
 一度下がったラダは少ししてからまた射程に捉える範囲にまで近づき、多くの鉛玉でゴブリンどもを巻き込んでいく。
 ところで、前線ではまたもゴブリン達の注目を集めていたカイロが首を傾げて。
「別に挑発した覚えはないんですがねぇ?」
「「ギシャアアアアアアッ!!」」
 刃を振り上げる一般、戦士の攻撃を喰らいながらもカウンターでしっかりとダメージを与えるカイロ。
 彼はイモータリティによって傷を塞ぎつつ、徹底的に相手の嫌がることをと立ち回り、時には頭突きをかまして一般のゴブリンを卒倒させていた。
 とはいえ、現状は多勢に無勢。
 気力が徐々に尽きてきたミヅハが相手の進軍をとどめにかかっており、同じく気力が厳しくなってきたオリーブが一度下がって。
「倒れればそこまでなので」
 効率を下げぬよう、彼は前線を他の傭兵に預けて態勢を立て直しに当たるのだった。

成否

成功


第3章 第3節

恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華


 ラサの荒野地下での交戦に、さらなるイレギュラーズ達が駆けつけてくる。
 巫女服姿のスレンダー少女、『星の巫女』小金井・正純(p3p008000)がすでに戦いが始まる地下空洞を見回す。
「はてさて、いよいよ大詰め」
「長かった戦いも最終局面デスネ!」
 小柄なケモ耳アンドロイド、『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)は気合い十分のゴブリン達を見据えたが、こちらも負けてはいられないとテンションを高める。
「やっとココまで来たんだね。後はこの場で勝てば戦いは終わるんだ」
 見た目ゆるふわ系ながらも脳筋少女、『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)も目の前のゴブリンどもの掃討に強い意気込みを見せていた。
「これは総力戦の様相だねぇ……」
 人の姿をとったカイコガの旅人、『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)もゴブリン達に後がないことを察していて。
「後がない分、向こうは全力をぶつけて来るはず。少しも気を抜けないねぇ……!」
 しかも、単なる大軍ではないと、地球外生命体である『不退転の敵に是非はなし』恋屍・愛無(p3p007296)は見ている。
「これほどの戦闘力を持つならば、もはやゴブリンとは言うには危険すぎる」
 『共存』という道がない相手であれば、是非もなしと愛無は考え、殲滅戦の覚悟を持ってこの戦いに当たる。
「楽しいとは思わないけれど、周りの人達の勢いにおされているのかしら」
 そんな周りの仲間達の勢いに押され、機械人形を思わせる姿をしたアシェン・ディチェット(p3p008621)も迷うより先に動かなきゃと感じて身を乗り出していたようだ。
「「「ウオオオオオオオオオオオオッ!!」」」
 力を振り絞って武器を振るい、力を放出してくるゴブリン達。
 そいつらへと正純は先程に引き続き、神弓を構える。
「たくさん撃てたので個人的には満足してますが、詰めを誤らないようにしましょう」
 後方からの援護を受け、数人が前線の戦いへと加わっていく。
「皆、こんな所でやられちゃダメだよ?」
 花丸の掛け声に、わんこはもちろんと返して。
「最後に立っているのはどっちか、いざ決戦デス!!」
 白い歯を見せながら、彼女は攻撃を仕掛けていくのである。


 ローレット傭兵混成軍へと加わるイレギュラーズ達は、戦闘態勢を整えて。
「――さっ、行くよ。この手で勝利を掴んで、皆で笑って過ごせる明日を迎える為に!」
 まずは花丸が片手剣を振り下ろしてくるありふれた一般ゴブリンに対し、相手の勢いを利用して痛烈なカウンターを叩き込む。
「さて、食事の時間だ。楽しませてくれ。命を懸けて」
 前線はほぼ乱戦状態。愛無は匂いで大まかな敵味方の位置を把握し、こちらからも反撃を叩き込む。
 彼が使っているのは「首落清光」という名のチェーンソーで、一気にゴブリンの体を大きく切り裂く。
 それでもなお倒れぬ敵へ花丸が拳を叩き込み、絶命に至らしめた。
 そのタイミング、シルキィがゴブリン達から少し距離をとって。
「一気に痺れさせるよぉ!」
 仲間を巻き込まぬよう、シルキィは前方へと連なる雷撃発してゴブリン戦士を多く巻き込めるよう調整して焼き払う。
 相手が痺れれば、それだけ状態異常に苛むことができる。
 正純も仲間が敵の親玉……族長ゴブリンの元にたどり着けるよう、支援を考えて。
「月女神と星狩人の加護をここに! 天狼星!」
 この地下空洞へと眩い光を放ち、正純は敵の数を減らそうと前方へと光を煌めかせた。
「「グギャアアアアッ!!」」
 刹那、目を灼かれた敵が叫ぶ。さすがにゴブリンとて目が見えぬ中、迂闊に武器を振るって味方を傷つけるほど愚かではないだろう。
「広いとは言いましても、この場所に仲間も敵さんも集まってしまっているのだから……」
 アシェンはこの混戦の中、邪魔されずに狙いたい相手を狙う方法を考える。
 まずは、視界の戻らぬ敵へとアシェンはライフルを構えて激しい弾幕を展開し、鼓舞指揮ゴブリンを射程に入れられるよう接近をはかっていた。
「ギ、ギギ……!」
 アシェンの弾丸を浴びて前進から血を流すゴブリン達。
 一般ゴブリンに交じって、戦士達が斧やフレイル等高威力の武器を振るう。
 態勢を立て直すそれらの敵は、ありふれたゴブリン以上の戦闘能力で傭兵達を傷つけてくる。さすがに傭兵達も離脱者が出始めていたようだ。
「やっぱり、厄介な相手だねぇ……」
 そう再認識するシルキィは、戦士を優先して再度雷撃を発するべく詠唱を始める。
「あのパワーで長物振り回され続けたら、堪ったもんじゃありマセン……」
 わんこは手近な戦士へと接近し、憎悪の爪牙で圧倒する。
 放置するだけで被害が大きくなる敵だ。ならばこそ、わんこもシンプルに火力を持って叩き伏せていく。
 ドコドコドコドコドコ…………。
 だが、ゴブリン達もただやられてはおらず、鼓舞指揮ゴブリンが激しく太鼓を鳴らし始めた。
 花丸はハイセンスと直感で危機を察して。
「気を付けて、何か来るよ!」
 集まるイレギュラーズや傭兵達を狙った敵は、こちらへと雷を叩き落としてきた。
 また、別の鼓舞指揮ゴブリンは地割れも発生させ、こちら混成軍の壊滅をはかる。
 序盤にゴブリンの数を多少なりとも減らしていた混成軍は仲間達から距離を置き、被害の拡大を防ぐ。
 ただ、こればかりは立ち位置の不運もある。正純が雷の直撃を受けてしまって。
「まさか、得意の遠距離で……」
 近距離戦も備えていた正純。パンドラを使うこともできず、彼女は倒れてしまう。
 また、わんこが数人の傭兵達と地割れに飲み込まれ、パンドラの力に頼って這い上がっていた。
 強力な敵指揮官級の攻撃に苦しめられるが、それらの範囲攻撃を凌げば、またも攻撃のチャンスが生まれて。
「一網打尽です!!」
 巻き込まれぬよう下がっていたゴブリン達へ、正純がライフルを連射して鋼の周囲を撃ちつけていく。
 一時であっても射線が完全に開けば、アシェンが奈落の呼び声を発して鼓舞指揮ゴブリンを狙う。しかし、そこはしっかり守兵がカバーに当たっており、簡単には攻撃をさせてくれない。
 さらに、愛無が粘膜で生成した杭を投げつけ、敵陣のゴブリン達を傷つける。
 敵によってはそれで絶命するが、掠っただけでも生命活動を低下させてしまう。
 攻撃の手を鈍らせたそいつ目がけ、混成軍メンバーは再び攻撃の手を強めていくのである。


 鼓舞指揮ゴブリンら指揮官級のゴブリンも、何度も大技を連発するのは難しいようだ。
 その時間稼ぎを一般、戦士がメインとなって抑えにかかる。
 守兵の一部も前進を始めており、まだまだゴブリン達の攻撃は激しい。
 一気に敵が距離を詰めてくれば、イレギュラーズ達も再び戦列を組んで直接ゴブリン達とぶつかっていく。
 地下空洞内で激しい剣戟音が鳴り響く中、愛無は奥で太鼓を叩いて自軍の部下の士気を高める鼓舞指揮ゴブリンを見据えて。
「可能な限り、早急に指揮官クラスを潰したいが」
 放置していれば、またも雷や地割れを使ってくるに違いないと愛無は考える。
 アシェンが敵陣深くまで死の凶弾を叩き込み、ようやく鼓舞指揮ゴブリンへとダメージを与えられるようになってきてはいたが……。
 まだまだ敵軍の数は多いこともあり、愛無は傭兵達と火力を集中させる。
 全盛の力を引き出す彼は腕部粘膜を展開することで形成した巨大な鋏で戦士を握り潰し、ダメージも回復していく。
「やられてばかりじゃいまセンヨ!」
 わんこはたまたま相手にする守兵にガードの堅さを感じれば傲慢の左拳で打ち込み、ガードを崩して痛烈な一撃を叩き込む。
 だが、それだけで敵は倒れず、盾で守りを固めながら鋭く槍を突いてくる。
 戦士と連携し、距離を詰めたシルキィへと狙いを定めていた守兵ゴブリン。
 彼女を庇うべく花丸が身を挺し、傷だらけの拳を叩き込んで守兵を倒してしまう。
 そのシルキィが自分を狙った戦士もろとも、前方のゴブリンどもへとうねる雷撃を浴びせかけ、手前の戦士を黒焦げにしてしまったのだった。

成否

成功


第3章 第4節

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
花榮・しきみ(p3p008719)
お姉様の鮫


 ラサの荒野での戦いが続く。
 ゴブリンの指揮官勢が動き出す段になって、この地下空間へと現れるイレギュラーズの姿が。
「まあ、沢山のゴブリンさんたち。まだまだ懲りずに泉を狙っているのですか?」
 エルミーツ防衛からこちらへと駆けつけてきた神威神楽出身の少女、『荊棘』花榮・しきみ(p3p008719)がゴブリン達の様子に呆れて。
「その熱意を、ご自分で水でも掘る方向へとすれば?」
 元は、この厳しい自然環境にあるラサの地で、耐え凌いでいた相手。得られぬ物を求めるのは、人もゴブリンも変わらないとしきみは諦観も見せる。
「洞穴の中はゴブリンの巣っていう奴ですか? 冗談じゃあないですよ」
 銀の髪で片目を隠した『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はここに向かってくる途中、鼓舞指揮ゴブリンが使った雷や地割れを使っていたのを目の当たりにして。
「それにしても、あいつら知能も無いのにどうやって魔法使ってるのか不思議でたまりません」
 一般のゴブリンは利香の言うように知能は低いが、指揮官級はその認識を覆すほどの力を持っているのだろう。
「…………」
 まだ大きな動きを見せぬ族長ゴブリンなどは、流暢に人間の言葉を操ることができる。
 部下の数も徐々に減ってきていたこともあり、そいつもそろそろ動き出すはずだ。
 その前に、継戦を続けるメンバー達は、態勢を整え直していて。
 緑髪糸目の神官、『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は持ち込んだ燻製肉を食べつつ休憩する。
「こんな乱戦時ではがっつり食べる暇なんて中々ありませんし、今が好機です」
 引き締まった体を持つ赤髪の少年、『弓使い(ビギナー)』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)もカイロと同様に十分に休息をとり、再戦に臨む。
「傷も癒えました。再出撃です」
 そして、ミヅハと共に参加していた大柄な鉄騎種男性、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)もまた再び攻めるべく前に出る。
「一度の攻めでは終わりません。一度でダメなら三度、三度でダメなら十度、十度でダメなら百度攻めれば良いのです」
 それは大概鉄帝民らしいと感じるオリーブだが、それが悪いとは思わない。少なくとも、今回の依頼においては。
「さて、稼がせて貰います!」
「んじゃ、行きますか!」
 利香もオリーブに合わせ、戦闘行動を開始するのである。


「「「オオオオオオオオ!!」」」
 ゴブリンどもは、鼓舞指揮ゴブリンが打ち鳴らす太鼓の音を受けて士気を高め、全力でローレット傭兵混成軍へと襲い掛かってくる。
 一般、戦士に紛れ、守兵も前進し、指揮官級を守ろうとしており、族長、鼓舞指揮に近づくのは難しい。
「敵の数もだいぶ減ってるだろうし……」
 それでも、ミヅハは後方に下がっているタイミング、鼓舞指揮ゴブリンに攻撃が通っていたのを確認している。
 それらを意識するミヅハは集中を研ぎ澄まし、魔弾を放つ。
「グアッ!」
 太鼓を叩いていたそいつまでミヅハの矢が届き、痛みに叫び声を上げていた。
「現状はこちらが優勢ですね。このまま言いたいところですが……」
 戦術眼を使い、地下空洞内の戦闘を俯瞰して見つめる『群鱗』只野・黒子(p3p008597)。
 冷静沈着な黒子は如何にして勝機を見出すかを考えながら、敵陣を崩すべく砂嵐を巻き起こす。
「「グギャアアアアアアッ!!」」
 中心を調整して自軍メンバーに当たらぬようにすれば、敵指揮官級をも巻き込めるような状況となってきている。
 敵軍が乱れれば、自軍メンバーの勢いも増す。
 オリーブは敵との数の差を埋めるべく、苛烈に乱撃を浴びせかけて前線の一般、戦士をより多く撃破していく。
 聖なるかなをその身におろしたカイロが前線に戻ると、またもゴブリン達が彼へと注意を向けてきていて。
「言葉は通じませんが、真面目に戦えと言っている気がします」
 ギャアギャア叫ぶ部下のゴブリン達の主張をなんとなく汲み取るカイロ。体力、精神力補給の為、彼自身は至って真面目に立ち回ってはいるのだが。
「戦えば戦うほど儲けられるのです。やる気が湧いてきますねぇ」
 ともあれ、カイロは前線でゴブリン達の攻撃を引き受けながらも、英雄を讃えるその詩を響かせて周囲の仲間達を奮い立たせる。
 その範囲内にはしきみや『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)の姿がある。
 オリヴィアや周囲の傭兵達が切りかかったゴブリンに重ね、しきみが取り出した式符より現した毒蛇を食らいつかせ、ゴブリンどもを倒していく。
 彼女はローレットの一員として戦いながら、ぼんやりと考える。
(私も命を救って下った恩人とも言える方へと、並々ならぬ思いを擁いておりますよ)
 それは届かぬ淡い恋慕。
 ゴブリン達が砂の都を求めていたように、しきみもまたとある人への愛を求めている。
 ただ、得られぬものへの情熱というものは、斯くも無様だと思い知らされるようで。
「ああ……八つ当たりですよ」
 そう自覚してしまった彼女は生み出した冥闇の黒鴉を放ち、ゴブリンの体を穿っていく。
 利香は、鼓舞を行うゴブリンとその守りを固めるゴブリン達を狙い接近する。
 作戦は指揮官の統率を乱し、こちらのペースにもちこむことだ。
「つまり何時もの奴ですよね!」
 飛び込む彼女は即座に、一番近い位置にいる鼓舞指揮ゴブリンへとチャームを行う。
「グ、ギギ……!」
 そいつの意識を強く自身に向ければ利香の思惑通り。
 手前へと簡易装備で近づいてくれば、ミヅハがゆっくりと神弓を引いて。
 深く、強かに敵を抉る死の凶弾。
「グ、ガアッ……!」
 それによって、身体を貫かれた鼓舞指揮ゴブリンが血を流し、止められずにいる。
「人間どもめ……!」
 それまでじっと戦況を見つめていた族長ゴブリンも小さく頭を振りながら、ゆっくりと動き出したのだった。


 敵陣の様子を見ていた黒子も、目の前の空間を歪ませて一般ゴブリンを倒していた。
 その時、族長が立ち上がり、何か大きく空中に杖で描く。
 族長ゴブリンが動けば、ミヅハもできる限り距離をとって狙おうとする。
 なお、こちらが射程に捉えれば、相手もまた攻撃の範疇に収めるということでもある。
 族長がこの場へと発生させたのは、先程の地割れから起こすマグマだ。
「なっ……」
 族長の攻撃が当たれば、痛いところでは済まない。
 十分注意していたはずだったミヅハだが、発生したマグマを全身に浴びてしまって倒れてしまう。傭兵達が倒れる彼を助け、後方へと下がっていく。
「立て直しを図りましょう」
 戦い続ける仲間の為、友軍から疲弊と不安を「奪い」、活力を取り戻していた黒子。
 だが、タイミングを合わせたかのように鼓舞指揮も雷を叩き落とし、それに黒子が巻き込まれて崩れ落ちてしまった。
 傭兵達もちらほら倒れる者が増えてきており、混成軍の被害の被害も大きくなってきていた。
 ただ、大技を使った敵にできた隙を、イレギュラーズ達は逃さない。
 仲間達の支援強化と、カバーに当たっていたカイロはマグマからも仲間を守りつつ、前に出ていた守兵の武器を側面から叩く。
 軌道を逸らして態勢を崩した敵を、カイロは聖杖で首を突いて倒してしまう。
「そんな雷、私の前じゃただの静電気にもなりませんよ!」
 利香はというと、雷を落とす簡易装備の鼓舞指揮1体の接近を受け、雷魔法で強化した魔剣グラムで切りかかった。
 続くしきみが毒蛇を食らいつかせた直後、迅速な撃破をとオリーブも攻撃を重ねる。
 極限にまで高めた攻撃性を持って、オリーブは火焔を起こして鼓舞指揮ゴブリンの体を焼き払っていく。
「タダデ スムト思ウナ……!」
 激しく太鼓を叩き鳴らすそいつは周囲の部下達に攻撃をと促すが、現状は他の傭兵やイレギュラーズ達に抑えられて鼓舞指揮の援護はできない。
 まして、ここで守兵らが優先して守るは族長だ。
 ほぼ孤立してしまったそいつへ、利香が迫って。
「ボスを倒すにはまず側近から、ってね!」
 魔剣グラムの属性を一時的に炎へと転換した彼女は、魔法、瘴気、格闘と怒涛の連撃を浴びせかけていく。
 大きく態勢を崩したそいつへしきみが攻め入り、見えない悪意を放つ。
 逃れようとも、鼓舞指揮は大きく目を見開いて態勢を崩してしまって。
「グ、グワアアアアアアッ!!」
 敵は自ら開いた地割れの中へと、身を投じてしまったのだった。

成否

成功


第3章 第5節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
氷室 沙月(p3p006113)
鳴巫神楽
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人


 ラサ地下、ローレット傭兵混成軍とゴブリン大軍の戦いは熾烈を極めていた。
 後方へと一度下がった『不退転の敵に是非はなし』恋屍・愛無(p3p007296)はゴブリン達の勢いに押されて。
「やれやれ。改めて戦いは数だな」
 もはや、数を数えるのも面倒で止めてしまった愛無だが、まだ指揮官である族長ゴブリンが健在なのは確認済みだ。
「消耗戦になってきましたね」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が改めてザッと戦況を確認したところ、ゴブリンは半数近くを失う状況。
 混成軍にも脱落する傭兵が出ており、このままでは勝敗を問わず甚大な被害となるだろうと、オリーブは語る。
「想像以上にしぶとい、というかあちらはとうに捨て身だったな」
 人馬の女性、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が改めてゴブリン達が死に物狂いでこの戦いに臨んでいることを再認識する。
「鼓舞指揮ゴブリンは1体撃破できましたね」
 さらにオリーブは残りが2体いることを確認する。先の岩場戦で逃した1体が合流して戦力となっていたのだ。
「ミヅハさんも痛そうでしたが、死んでいませんね」
 オリーブからそう声を掛けられた『弓使い(ビギナー)』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は仲間から手当てを受け、頭をかく。
「まさかこの距離まで届くなんて……甘く見てたなぁ」
 先程、敵が地面から噴き出したマグマを浴びた旅人のミヅハからすれば、「滅茶苦茶痛かった」程度で済んだのは僥倖だったが、反面、これで生きている状況なのは人間じゃなくなったような気分だと彼は複雑な想いを抱いていたようだ。
「では再出撃して貰いましょう。戦いは終わっていませんよ!」
 それでも、またも戦いに駆り立てるオリーブに応じ、ミヅハも愛用の弓を握りしめる。
 そんな状況の中、援軍としてメンバーが駆けつけてきた。
「ごめんなさぁい、ラサは酒場が多くてゆっくり飲んでたら出遅れちゃった!」
 調子よく現れた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だが、彼女が言うように援軍が欲しい状況には違いない。
「洞窟の中に入ってゴブリンと戦うのですね……」
 『元々は普通の女の子』氷室 沙月(p3p006113)は改めて、地下空洞で待ち伏せていたゴブリン達にとって有利な地形だと認識する。
「こっちのゴブリンさんは、悪いゴブリンさんですね」
 『ふゆのいろ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)が対する敵が凶悪な面構えをして傭兵達へと襲い掛かっているさまを見る。
 別所にて、ローレットに雇われたゴブリンに訓練してもらったというエル。
「鍛えて貰ったゴブリンさんに自慢できるように、エルは頑張ります」
 彼女は大鎌を構え、敵意を持って襲い来るゴブリン達と対する。
「すごく激怒しているようにも見えますが……私には関係ないのでさっさと処分しましょう」
 相手の憤りをさらりと受け流す沙月が刀に手をかけ、目つき鋭くゴブリン達を見据えた。
 数人ではあるが、ローレットから援軍が駆けつけたことで混成軍の士気も幾分か高まる。
 最初から戦いっぱなしの『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)はこれまで持ち込んだ食料で満腹になっており、注射器を使って首に増強剤を撃ち込んでいた。
「これで準備は十分ですね~」
 イレギュラーズが状態を整える間、傭兵達が死力を尽くして戦線を持たせているが、もう限界が違いとラダは見て。
「私も腹を括る必要があるのだろう」
「いよいよ決戦ね、さぁ最後の一仕事よッ!」
 『Ultima vampire』エルス・ティーネ(p3p007325)が気合を入れると、続々とイレギュラーズ達が戦線に戻っていく。
「雑にならぬよう確実に潰していこう」
 しばらく、小鬼は見る気もしなくなりそうだと愛無は思わず愚痴を零しつつ歩き出すと、オリーブがなおも語気に力を入れて。
「今が好機。攻め込んで首級を上げ、味方を鼓舞し、敵の士気を挫きましょう」
 今度こそはと彼は長剣を握りしめ、ゴブリン達へと駆け出していくのである。


 疲弊した傭兵達が下がり、前に出るイレギュラーズ達。
「大分数が減ってきたとはいえ、まだまだ沢山お相手がいるわねぇ」
 アーリアは改めて押し寄せてくるゴブリン達の多さを逆手に取り、攻撃を仕掛けることに。
「危ないわよぉ」
 声をかけたアーリアは族長の周囲を固める守兵らを中心にして、甘い菫色の……「パルフェ・タムールの囁き」を。
「皆、頭も心もぐずぐずに溶けて、同士討ちしちゃいなさぁい!」
「「ウ……ガアアアアアッ!!」」
「奴ら……何をしおった……!?」
 突然叫び出すゴブリン達。族長も異常を察して事態の把握に当たる。
「まだいくわよぉ」
 その間も、アーリアは敢えて族長は避けて何度か多くのゴブリンへと囁きかけ、場を混乱させていく。
 背後から襲われる形となる前線の一般、戦士達も対処せざるを得ない。
 オリーブは纏めてそれらのゴブリン達を長剣による乱撃で叩き伏せていくと、相方である後ろのミヅハは高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に……。
「つまり行き当たりばったり!」
 攻撃を避けられるようスイットマニューバで対処しながら、ミヅハは貫通力のある魔弾で多数のゴブリン達を貫いていく。
「下がってくれ、ここは僕が」
 仲間達へと呼び掛けた愛無は粘膜で生成した杭で、別のゴブリン達を穿っていった。
 正気に戻った守兵が壁となるが、愛無は問題ないと判断して。
「指揮官までの『壁』が今更、避けるとも思えん。徹底的に潰していこう」
 敵陣へ風穴を穿つ為、そして、敵の要をここで潰す為。
「二度と同じ事が起きないように」
 後方から敵陣を狙い、ラダが圧倒的な眼力で見つめていたのだが、様子がおかしいことに気づく。
 前線が崩れたゴブリン達が全身してくる様子がないのだ。
「狡い戦法を使うなら、自分も狡い戦法を使われる事、覚悟してるわよね?」
 エルも遠距離攻撃が当たるギリギリのラインから、能力を阻害する簡易封印を施し、ゴブリンどもの無力化を図っていたのだが……。
「……族長ゴブリンさんが何か術を……!」
 増援のエルも察していたが、最初からこの場で戦うメンバーとしてはすでに体感した流れだ。急いで後方へと退避すると、今度はそこへ津波が巻き起こる。
「全てを洗い流せ……!」
 一定範囲には限られるが、虚空より現れた大量の水がまるで渦の様になって巻き起こる。
 その水もまた地割れの中へ。ゴブリンの遺体なども飲み込まれていたようだ。
 一方で、混成軍は事前に族長の動きを察知していたものも多く、後方へと下がって被害を抑えていた。
「モノドモ、ススメ!!」
「イマイマシイニンゲンドモヲ」
 ただ、ゴブリン達もそこは考えていたようで、今度は鼓舞指揮2体が進軍を指示する。
 時間を置き、自我を取り戻した一般、戦士ゴブリン達の指揮系統をスイッチして軍を動かす族長ゴブリンの手並みはさすがだ。
「エルはよわよわなので、近くで殴られるのは嫌です」
 残るゴブリンが束になって全身してくる中、距離を詰められたエルはノーモーションで衝術を放って敵を弾き飛ばす。
 入れ替わるように前に出てきたのはカイロだ。
「……さて。残念ですが、貴方達にオアシスは差し上げられません」
 これまで、囮、遊撃と敵陣を翻弄してきたカイロは、攻撃を受けながらも反撃態勢をとって。
「どうやっても諦めないと言うのならば、死んで下さい」
 ゴブリンに回復するという考えはほとんどないらしく、カイロの防戦技術によって、弱った戦士達も倒れていた。
 ところで、イモータリティ、聖躰降臨と使って戦ってきていたカイロはそれらの術に魔力の流れに違和感があったらしい。
「……術式を変えてみますか」
 先の2種を少しだけ変化させ、自分なりに昇華させたカイロ。
 彼に向けて鼓舞指揮ゴブリンが雷を叩き落とし、地割れを発生させるが、彼はそれらを耐えきってみせる。
「ええ、ええ。いいですね、この感覚は」
 思った以上の効果を得られたようで、彼は満足げに頷く。
「今ここで命名しましょう。『グリードリターナー』、そして『治癒光(試)』です!」
 族長ゴブリン目指して突き進むカイロの後に、他メンバー達が続く。
「はぐれない様にして戦わなきゃ」
 前線から置いて行かれぬよう、沙月は背水の構えで戦いに臨む。
 防御を犠牲にした構えとあって、単独行動を避ける沙月は周囲の仲間と共に敵の撃破を目指す。
 少し間をおいて、エルスが交戦を行っている。
 傍にヒーラーがいないのがエルスにとって少しだけ懸念材料ではあったが、そこはカイロが単身囮役となってカバーしてくれている。
 エルスも前衛として片手で持てる大鎌と魔術を合わせた攻めでゴブリンどもを追い込む。
 そこを、沙月が大業物『斬鬼』で強烈な薙ぎ払いで追撃し、戦士を仰け反らせるようにして撃破する。
(味方前衛を族長ゴブリンの元へ送り届けるために。そして奴を守る兵を引きはがすために……)
 ラダもゴブリンを蹴散らすべく、互いの前線よりゴブリンの陣営側に向けてLBL音響弾を投げ込む。
 激しく周囲を巻き込む爆発によって、奇妙な音を発しながら爆風が巻き起こり、ゴブリンどもが吹き飛んでしまう。
 再度、敵陣が開けると、混成軍は一気に攻め込んでいく。
 もはや、ゴブリン達に彼らを止めるとは出来ない。


 敵陣はもはや総崩れ。
 部下の大半を失い、指揮官級のゴブリンが態勢を立て直しきれぬ中、イレギュラーズ達が苛烈に攻め立てる。
「こういうのはリーダーを倒せたら、あとは烏合の衆になるはず」
 取り巻きである鼓舞指揮ゴブリンを含め、ミヅハは族長を中心として神弓から強烈な弾幕攻撃を展開していく。
(って言っても、どいつも俺より強いんだけどな……)
 個々のゴブリンすら、下手な傭兵を上回る力を持つと、ミヅハはその力を評していたのだ。
「エルの攻撃、ちょっと痛いですよ」
 続き、エルもケガをしているゴブリンへと簡易封印を施し続ける。
 気力がなくなっても、エルは遠距離術式を発動し続け、ゴブリン達に攻勢へと転じる隙を与えない。
「グウッ……!」
 鼓舞指揮の1体は岩場から継続しての戦い。体力敵に厳しいのか、顔を顰め続ける。
 そこへ攻め入るオリーブ。ミヅハの弾幕に助けられながらも、鼓舞指揮目がけて闘気を纏わせた拳を叩き込み、さらに火焔を立ち上らせて追撃して。
「グ、グワアアアアアアアッ!!」
 ついに耐え切れなくなった鼓舞指揮の身体が業火に包まれ、消し炭へとなっていった。
「「うおおおおおっ!!」」
 ぼろぼろになっていた傭兵達もこの機を逃さず、気力を振り絞って仕掛けていく。
 激しく太鼓を打ち鳴らす最後の鼓舞指揮。
 混成軍が集まるのはいいが、さすがに族長を巻き込むのを恐れてか、ピンポイントで狙える雷を起こしてくる。
 しかし、それはほとんどカイロが請け負ってくれている状況だ。
 この隙に、鼓舞指揮へと接近した愛無が腕部粘膜を展開し、大きなハサミ状にして乗っていた神輿ごと砕かんとしていく。
(此処まで来てしまえば、禍根だけが残るのは避けたい)
 この状況で敗走でもしようものなら、ゴブリン達の思う壺。愛無は根絶やしにするつもりでハサミに力を込めていく。
 深く傷つく鼓舞指揮が逃れようとしていたのを、沙月が見過ごさずに追い打ちする。
 躊躇なく繰り出される沙月の刃。それが敵の体を大きく切り裂き、絶命へと追いやった。

 取り巻きを倒され、瞳を閉じる族長。
 しかしながら、そいつは大きく目を見開いて。
「例え、我等が滅びても……!」
 もはや、自らの滅びは免れぬと判断し、そいつは大きく手を広げて何か唱え始める。
「多少の傷など、覚悟の上だ」
 同時に、ラダが言い放つ。
 我々が潰される前に頭を潰す。元より、この戦いは生存競争なのだ。
 ラダが全力で放つライフルの一撃はまるで嵐の如き銃声を響かせる。
 直後、初めて族長に攻撃が届き、赤いモノを迸らせる。
「喰らえ、人間どもよ……!」
 族長は自らの手前で大きな竜巻を巻き起こす。
 嵐と竜巻のぶつかり合いに、激しい風が地下空洞内を駆け巡る。
 カイロは身を引き裂かれそうな竜巻を耐え凌ぎ、治癒の光を自らに向けながらじっと堪える。
「さあ、私の報酬となりなさいっ!」
 相手は大技を使った直後。そこでイレギュラーズ達が畳みかけて。
「ゴブリンはゴブリンでも……ラサを脅かすのであれば、私はこの大鎌で滅し尽くしていくのみよ……ッ!」
 エルスもそれに加わり、トドメを刺そうと膨張した黒の大顎を形作り、族長目がけて一閃させる。
「…………!」
「族長さんにはもっといいもの見せてあげるわぁ」
 エルスが繰り出した直死の一撃に貪られる族長へ、アーリアが続いて。
 左手の投げキスからアーリアが真っ赤な恋の炎を放って大きく炎上させ、虚空へと指で異空間への扉を開く。
「ふふ、中々キツいわよぉ?」
 刹那月の裏側へと導かれた族長は、これまで体感したことの無い感覚を味わって。
「ぐ、おおおっ……!」
 想像を絶するほどの苦痛の中、その命を散らしていったのだった。

 残るゴブリンの掃討も粗方終わり、長きに続いたゴブリンとの戦いも幕を下ろす。
 疲労困憊の中、傭兵とローレット勢が勝利を実感し、喜びを分かち合うのだった。

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM