PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2020>願いを込めてミサンガを

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●祈りの腕輪
 人は大切なものを思い浮かべ、願う。

 笑っていられますように。
 生きていてくれますように。
 幸せでありますように。

 些細なこと。けれど大切なこと。
 失ってからでは遅いのだから。


●プロミスリング
「ミサンガ、と言うのか」
 物珍しげにテーブルへ置かれたものを見下ろす『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)。はい、とブラウ(p3n000090)が頷く。
「プロミスリングとも呼ばれるそうですよ。手首だとかに巻くそうなんですけれど、願いが叶うと切れるのだとか」
 ふむ、と呟いたフレイムタンは1本の紐のようなそれを手に乗せる。よくよく見れば柄が織られており、非常に精緻だ。
 軽く引っ張ってみても切れる気配はなく、これが『願いの叶った瞬間』に切れるとは到底思えない。何かそういった魔法の類が込められているのだろうか。
 フレイムタンがそう問うと、ブラウは目をパチリと瞬かせた。
「どうなんでしょうね? 1本ずつ手作りらしいんですけれど、手作り体験もしているそうなんです」
 イレギュラーズにも案内が来ていますよとブラウは羊皮紙を咥えてずりずりずり。フレイムタンの目の前まで持ってくる。
「深緑か」
「はい。このミサンガも植物から糸を紡いで染色までしているんですって」
 深緑の片隅にある工房では手作り体験を。付近の集落ではミサンガを始めとして、チョコレートなども販売する店があると言う。
「……あれ、何してるの」
「ぴよっ、シャルルさん! ちょうど良いところに──」
 通りかかった『Blue Rose』シャルル(p3n000032)にぴょこんと飛び跳ね、彼女の方へ向かうブラウ。それまで彼はカウンターに乗ってフレイムタンと話していたわけだが、そこから地面へ飛び降りようと小さくジャンプする。

 べしゃ。

 顔から地面へこんにちは。ブラウから潰れた鳴き声が聞こえた。
 ジャンプが小さすぎてカウンターへ足を引っ掛けたのだと思われるが、
「……フレイムタン、近かったよね」
「……貴殿もこのようなことになるとは思わないだろう」
 シャルルとフレイムタンは半ば唖然としながら言葉を交わす。ブラウが微動だにしないのでフレイムタンが抱き上げ、シャルルはひよこの顔を覗き込んだ。
「大丈夫? ブラウ」
「だいじょうぶじゃないです……」
 ぐったりしたブラウはフレイムタンによって再びカウンターの上へ──は流石に危険を感じるので、彼の懐へ。隣のカウンター席にシャルルが座ってミサンガの話を聞く。
「……なるほど。それは、こう、あれだね。ブラウも買ってきたらどうかな」
 気休めかもしれないが、厄除けになればもう少し事故も減るだろう。
 不意に通りかかったイレギュラーズたちが2人と1匹に軽く手を上げて挨拶する。彼らにも教えようとブラウが飛び出し──かけたのをフレイムタンが羽交い締めにし、代わりにシャルルがイレギュラーズへ手招きしたのだった。

GMコメント

●できること
・ミサンガ手作り体験に参加する
・集落で過ごす

●ミサンガ手作り体験
 古くから続いているミサンガの手作り体験ができます。麗しき幻想種のおねーさまが教えてくれます。
 材料は深緑の植物から紡いだ糸。染色済みで、沢山の色から選べます。模様は何もない1色か、簡単な2色ストライプ。
 大仰な織り機を使うのではなく、手で紐を組んでいきます。大切な人を想って作りましょう。

●集落で過ごす
 グラオ・クローネの季節らしく、チョコレート菓子やホットドリンクが売られています。またミサンガも販売されています。
 住民たちの憩いの場である喫茶店が1軒のみあるので、暖かい場所へ行きたくて仕方がない方はそちらへどうぞ。

 周囲は木々に囲まれています。あまり奥地まで行くと迷いますが、少し程度なら村からも程よく見えないので密会に最適です。

●NPC
 私の所有するNPCは、ご希望があれば登場する可能性があります。

●注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
 同行者、あるいはグループタグは忘れずにお願い致します。

●ご挨拶
 愁と申します。甘いお話を期待されていたみたいだったのでそういう場をセッティング(?)しました。
 さあ来たれ甘いプレイング! 甘くなくても是非どうぞ!
 そんな感じで、ご縁がございましたらよろしくお願い致します!

  • <グラオ・クローネ2020>願いを込めてミサンガを完了
  • GM名
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年03月04日 22時15分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
ポテト=アークライト(p3p000294)
ハニーゴールドの温もり
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
神話殺しの御伽噺
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ヨハン=レーム(p3p001117)
ステンレス缶
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
アリス(p3p002021)
オーラムレジーナ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
藤野 蛍(p3p003861)
二人でひとつ
ラクリマ・イース(p3p004247)
協調の白薔薇
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
沁入 礼拝(p3p005251)
足女
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
魔風の主
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
おもちゃのお医者さん
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ゼファー(p3p007625)
never miss you
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
アカツキ・アマギ(p3p008034)
放火犯
築柴 雨月(p3p008143)
夜の涙

リプレイ

●思いを紐に
「早起きしてここまで来たから、あまり人が居ないね」
「昔から妹のお守りをしていたからね、こういう草を編んだりするのは得意なんだよ」
 話しかけるライセルに、隣のラクリマは全く返事をしない。視線すらブレない姿はどうも聞こえていないらしく──あまりにも真剣な表情にくすりと笑みを浮かべた。
(こういう横顔が綺麗なんだよな)
 微笑まれたことにも気づかないラクリマは、黒と白の2色で気持ちを込めながら編む。手先が器用というわけでもないが、気持ちがこもっていれば問題ないのである。
「ミサンガを交換しようか」
「良いですよ。深緑の植物を使い、白き森の神の加護がある俺が作ったのですから、きっと叶います」
 渡された少し歪な目のミサンガを見下ろし、ライセルは笑みを浮かべる。自分の願いは笑顔を見ることだというのに、あまりにも自信満々な彼がいるものだからこちらが笑顔にさせられてしまう。
「ありがとう。じゃあこれも」
 ライセルはミサンガとともにカルミアの花を渡す。このミサンガは切れるだろうか。願わくばその時は、一緒に喜びたい。
「おや、アルテミア。どうしたの?」
 紐色を変えてもらったウィリアムがふと見ると、ああでもないこうでもないとアルテミアが唸っていて思わず声をかける。
「ずいぶん真剣だったね。何をそんなに願いたいのかな」
 彼の問いにアルテミアはそっと目を伏せて。赤の紐を見ながら呟くように告げた。
「……何年も前に攫われて生き別れた──大切な双子の妹との再会を、ね」
 彼女の話を聞くうちに手が止まるウィリアム。それは彼女の立場が自分と似ていたから。
「普通に考えればもう諦めて当然だけれど……双子だからかしら、心が告げるの、彼女はまだ生きているって」
 こんな話をしてごめんなさい、と謝る彼女にウィリアムは緩く首を振った。
「妹で、双子。僕と同じだ。うちのは元気だけど、その感覚は分かるよ」
 だからきっと、その感覚は正しいものだ。
 自分も祈ろうと言う彼にアルテミアは微笑んで、ウィリアムの手元へ視線を向けた。
「ウィリアムさんはどんな願いを込めて編むの?」
「僕の願い事?」
 不意の質問に彼は目を瞬かせる。
「……健康第一、かな」
 ──家族や友人の願いが叶うまで、健やかであれ、と。
「この手の作業はけっこう自信あるぜ」
 シラスは濃淡2色の黄色い紐を丁寧に編み、先ほどの言葉通り綺麗に仕上げていく。
 上げる相手──アレクシアと言えば青、だと思う。だから空を照らす陽の光を思わせる黄色で『笑顔が陰らないように』と願いを込めて。
 仕上がりを確認して振り向けば、彼女はまだ作業の真っ最中。いそいそと見守るシラスは、楽しい気分についつい口元が綻んでしまいそうで。
(どんなミサンガが出来るのかな)
 ちらりと見えてしまった色は青と赤。できた! と声を上げたアレクシアと互いの手首へ結んでプレゼントし合う。
「赤はね、シラス君がすっごく上昇志向が強いからその熱を表現したの」
 青は彼女の色──かと思いきや、イメージは広い空。彼女にとって幸せの色の1つだったもの。自らの熱を原動力として、夢や幸せを掴んで欲しいという願いが込められているのだ。
「いつかシラス君の夢が叶って、このお守りが切れる日を楽しみにしてる!」
 満面の笑みで告げるアレクシアは、けれど伝えてない意味もある。
 シラスの印象は間違いなく、青は彼女自身の色。
 ──何かあっても、きっと護るからね。

「う、うーん……僕こういうの苦手なのですけど上手く作れるでしょうか」
 女の子の方が得意だったりしますよね、と視線を向けたヨハンへ頷く数子──いや、怒られそうだからミーティアと呼ぼう。
(ヨハンくんともっと仲良くなれますように)
 彼へレクチャーしつつ自分のミサンガを完成させたミーティアはそう願いを込めて、ヨハンへ「交換しない?」と提案する。
「もちろん良いですよ!」
「じゃあはい、利き腕出して! 私が付けてあげるわ!」
 ヨハンの手首に巻かれる赤とピンクのミサンガ。ミーティアも同じように巻いてもらうと、その色にあら、と目を瞬かせた。
「えへへ、ミーちゃんと僕の髪色ですっ! バレちゃいました?」
 これでずっと友達だとヨハンは笑う。彼女が慣れない世界で、いつでも自分を頼ってくれるように。
「ふふ、大事にするわね! 願いが叶うように、毎日付けるわ! ヨハンくんもちゃんと付けておいてよね!」
「はい!」
 互いのミサンガに願いを込めて──2人の顔に、笑顔が咲いた。
 アリスとゼファーの前には、色も光沢も様々な細い紐。沢山の中から『此れ』と言う色を見出すには十分な時間が必要だ。
「わたし達の未来の色って、何色でしょうね」
 まだ曖昧とした先の話。薔薇色とか、虹色でなくていい。けれど無色透明じゃなくて何かしらの色が付いていたら、きっと素敵だから。
「それじゃあ。其の色は今日此処で決めてみましょうか。蜂蜜ちゃん?」
「ええ。未来の色、願いの色……教えてくれる? 愛しい風」
 蜂蜜へと贈るのは、燦然と輝いたように思えて手に取ったイエロアイリス。幸せを彼女に、自身に運んでくれそうな予感とともに願いを織る。
(2人で、幸せになれますように)
 風へ選んだのは柔らかくて暖かな、卵の殻の色。
 感傷的で、少し神経質そうな少女のようで──それでいて無垢な色。
 彼女が孤独でないその先へと羽ばたけるようにと祈って。
(そして願わくばその隣にわたしが居ます様に)
 2人の進む道に、幸あれかし。
 何色にしようかと視線を巡らせていた蛍はつと珠緒の瞳を見た。そしてその色を探して──ああ、あった。
「珠緒さんは何色にするの?」
「珠緒は、淡い青紫を選びました」
 見せられた色に蛍は一瞬瞠目してから嬉しそうに目を細める。それは心の落ち着きを支えてくれる色──藤色だ。
 2人は基本的な編み方を教わりながら、丁寧にしっかりと編んでいく。
(簡単に切れちゃって願いまで途切れちゃったら、嫌だもの)
 大切な願いをかけたいから、尚更。
「身に着けて過ごすほど、願いを叶えるため力を蓄えるのだとか」
 身に着ける事が大事なのだろうと珠緒は納得しつつ、自らのミサンガを完成させる。なかなか良いものに仕上がったのではないだろうか。
「それじゃ利き腕の手首に結んで、」
 と蛍が挑戦するも、これが意外と難しい。結びますよと珠緒が告げると利き腕を差し出された。
(利き腕の手首で籠める願いは……)
 恋愛に関するものだと、聞いた事がある。
 ──貴女の半身に、生涯の伴侶になれますように。
 結ばれたミサンガを優しく撫でた蛍は、珠緒に請われるがまま利き腕の手首へミサンガを巻く。もう願いは叶っている気がするけれど──ならばより、深く。
 色取り取りな紐を前にして雨月が思いついたのは友人の姿。
(あいつが重い病気にかからないように)
 女っぽいってバカにされそうだ。確かによくクラスの女子がつけていたし可愛いけれど──折角のグラオ・クローネだから。
 選んだのは赤と青紫の紐。初めて作るとなれば難しくも思えるが、医者志望としては器用でなくてはならない。これくらいぱぱっと作れたいものだ。買うのは最終手段、と雨月は真剣にミサンガを組んでいく。
 アーリアとミディーセラは仲良く背中合わせ。さて、相手に似合う色は何だろう?
(ミディーくんと同じ灰色にしましょ!)
 決め手は背中に感じるふわふわの尻尾。そこへラベンダー色を少し足して。
「あらぁ、」
 見せ合えば同じことを考えたミサンガが2本。いつも相手のそばにいたい、一筋の自分カラー。
 自分の作ったミサンガへ最後の仕上げとキスを落として──はい、どうぞ。
 イーハトーヴの視界に飛び込んだ、様々な色。思わず吸い寄せられるようなそれに、何でどう染めたのかと考えずにはいられない。
 だが1人でなかったと思い出し、慌てて彼女──サンティールの方を向いた。
「ご、ごめんね。俺、どうしてもこういうの好きで……」
「どうして? あやまることないさ。
 ここにはきみの『だいすき』が詰まってるんだから!」
 そうでしょ? と笑みを零すサンティールに浮かべるのは苦笑いでなく照れ笑い。肯定されるのは殊更嬉しくて、でもほんのちょっぴり照れ臭い。
 色を選んで編み始めたイーハトーヴは、願いを声に出し始めたサンティールへと顔を上げた。
「しってる? これはことだま。おまじないだよ」
「そうなの? それじゃあ……『晴れの日も雨の日も、君が笑顔でいられますように』」
 全員がずっと笑顔でいることなどできない。だけどなるべく沢山、大切な友達が笑顔でいられたら。
「願うくらいはいいよね?」
「もちろん! 悲しいいろに染まっているより、ずうっといいさ」
 そうして出来上がったミサンガへ、サンティールは勿体ぶるように手を差し出す。イーハトーヴは2色の青が入り混じったそれをそっと掌へ乗せてあげて。代わりにと掌に乗せられたのは夜明けに微睡む月を思わせる──蜜色と東雲色のそれ。
 ──蹲っていた時に差し伸べてられた掌は、とても暖かかった。
 ──可愛らしい旅鳥の、止まり木になりたかった。
 双方に暖かな想いと、感謝を込めて。

 落ち着いた暗めの金色と、明るい薄茶色。
(ラグジュアリーな組み合わせだな、これ)
 図らずもそうなってしまったのは、ウィズィとエクスマリアの髪色を選んだからで。
「ねえ、親友。……お願いがあるんだけど」
 ミサンガの中に髪を織り込みたいと言うウィズィに、エクスマリアは頷く。他でもない親友の頼みだ。
「マリアも、ウィズィのを、貰いたい」
「ふふふ、いーよぉ。どうぞ!」
 手編みだからこそできる技。ほんの小さな、けれど確かな繋がりを交わらせて編み込むのだ。
 親友は何を願うの、という言葉にエクスマリアはちらりと視線を動かす。
「……そうだな、親友の笑顔が、幸福が、この先も曇らぬように」
 そしてどちらも欠けず世界を救って、故郷へ自分が帰ったとしてもまた会いに来られるように。
 どれ1つとして譲らない、譲れない大切な願いだ。
「私は親友の夢が叶いますように……かな!」
 元の世界も、恋だって捨てられない。茶と金と親友の髪に、それぞれ願うのだ。
 大切な人の色。そしてその人が大切にする人の色。礼拝はその2色を選んで少し難しいと言われた図案に挑戦する。
(私の大切な方はとても寂しい方)
 愛されることに慣れないあの人へ、形あるものでそれを示したい。
 本当はこちらを見て、愛して欲しいと思うから。引き裂いてしまいたいと悪魔が囁くこともある。
 でも、きっと。満たされたこともないのに誰かを愛するなんて、不健全だ。だからあの人が満たされたと確信するまで、礼拝は注ぎ続けるだろう。
 幸せになるように、良い縁が繋がるように。絡みついた黒白に願いを込める。
(リゲルが幸せでありますようにと願いを込めて作らないとな)
 青と緑──自分たち夫婦の色を選んだポテト。リゲルも色を選んで席に着いた。
「想いを籠めるにはうってつけだな」
 2人とも、一編み一編み願いを込めて。
 編むごとにポテトのことを祈っていたリゲルは、彼女に請われて腕を出す。ポテトが長さの確認をしたら交代だ。
「ぶかぶかにならないよう気を付けていかないとな」
 華奢な妻の手首で長さを測ったリゲル。もう少し編み進めるも、先に完成した彼はポテトが真剣に編む姿を眺めた。
「……できた」
 ほう、と息をついたポテトは早速リゲルの手首へ巻く。彼の幸せを願って編んだけれど、幸せにするのは自分自身だ。
「俺もポテトの幸せを願って作ったぞ!」
 彼女の瞳と自分の髪色で編まれたミサンガは目も揃っていて商品のよう。職人のような手業にポテトが口を尖らせる。
「わかってはいたけれど……」
「でもポテトの方が、手作り感が出せていて温かみがあると思うぞ?」
 悪戯っぽくキスを落としたリゲルは彼女の額に自らのそれをこつんと合わせて。
「一緒に幸せを見つけていこうな」
「ああ。これからもいっぱい幸せになろう」
 微笑み合う2人。その周りでは「なんだか急に珈琲が欲しくなった」と言う者が続出していたのは、また別の話である。
「フレイムタンくん! ミサンガ作り体験はこっちだって!」
 彼を誘った焔は強烈な視線を感じ、目を向ける。やけに見てくる少女は──何かあったのだろうか。
 聞いてくるねと少女、アカツキの元へ向かう焔。炎っぽかったからという理由に首を傾げるも、焔は1人で不安ならとミサンガ作りに誘う。その瞬間、彼女の表情は明らかに安堵した。──いざ目的を達成しようと思って緊張していたのだ。
 そんな彼女の『目的』とは焔が誘ったフレイムタンにあるのだが、2人とも知るよしなく。
「いいよねフレイムタンくん?」
「もちろんだ」
「妾はアカツキ・アマギ、以後お見知りおきを。というやつじゃな!」
 炎の精霊種だけでなく旅人とも縁を作れたアカツキはにっこり。彼女、炎が大好きな幻想種なのである。
「白と赤の2色にするかのう」
「ボクは赤と橙の2つで作ってみようかな」
「赤と……そうだな、この黄色にしよう」
 赤が揃ったのは偶然か、否か。
 アカツキは同居人をイメージに、健康第一を。焔はどうしようかと首を傾げて。
「……これからも皆と楽しく過ごしたいなとかでもいいのかな」
 良いと思うぞとフレイムタンが焔へ微笑む。だって願いは、自由なものだから。

 幻とジェイクは同じ色合いのミサンガを編んでいた。けれど2人とも異様に真剣なのは、ミサンガに願ってでも叶えたいことがあるから。
 生きている限り、死は怖い。それを敏感に感じ取り、そして愛する者に命の刻限が課せられたと知れば藁にもすがりつきたいくらいだ。

 ──ジェイク様を殺させない。
 ──命に替えてもジェイク様を蝕む冠位魔種を倒してみせる。

 ──幻のためにも、こんな所で負けてたまるか。
 ──絶対に冠位魔種を倒してみせるんだ。

 蒼と灰のミサンガが2組。互いに付け合うと、幻の眦からぽろりと涙が溢れて。
「え、あれ、」
 おかしいな、幻が手を伸ばす前にジェイクが唇で拭う。肩を抱く温もりはとても心地よくて。
「大丈夫だ俺は死なねえ。冠位魔種だってぶっ倒せるさ」
 自身の胸の中で泣く愛しい人。彼女を優しく、力強く抱きしめたジェイクは小さく目を細める。
 ……この後、身を切るほどに辛い別れがあることを、幻はまだ知らなかった。


●ひと時に想いを
「入ったからには何か頼まねぇとな。飲みたいモンはあるかい、嬢ちゃん」
 わかってはいたが──深緑は幻想種ばかり。喫茶の席についてようやく緊張を解いた十夜は羽織を脱ぐ。その動きに小さく広がった『臭い』が鼻を掠め、彼は蜻蛉からさりげなく身を離した。そんな彼女から「旦那」と呼ばれて視線を向ける。
「ねぇ、ちょっと手首出して」
 言われるがままに手を出すと、明滅する光が詰まった香水瓶を傾けられた。ほんの少しのそれを手首に馴染ませ蜻蛉は満足そうに微笑む。
「……そんな高そうな香水、こんなおっさんに使っちまったら勿体ねぇぞ?」
「気にされる方が落ち着かんし……うちも同じものつけとるから、”これで一緒の匂いやよ?”」
 タイミングよく運ばれてくるホットチョコ。にこりと笑う蜻蛉に十夜は肩を竦めた。
(……やれやれ、今度は揃いの香りの方が気になって落ち着かねぇな)
 手首から香るそれを彼女も身に纏っているのだと意識してしまう。
 ホットチョコを飲みながら、けれどと蜻蛉は思う。香りで、想いで消したいものは消せない。
 それでも『本当に消えますように』と──願掛けするくらい、良いだろう。

 雪之丞は膝をぽんぽん。シオンが嬉しそうにそこへころりと転がる。
「グラオ・クローネですが、いつもどおり、ですね」
「んー……確かに……でも俺はそれでも嬉しい……」
 膝の上は心地よく、うとうとし始めるシオンの耳に『今日は少し特別』の言葉。次いで口の中へ何かを入れられ、シオンはぱっと目を開けた。
「チョコレートだ……!!」
「親愛を込めて、手作りチョコレートです。お口に合うでしょうか」
 勿論だとこくこく頷くシオン。甘くて美味しくて、つい笑顔になってしまう優しい味。
 ふとシオンは鞄を手繰り寄せ、中に入っていた小箱を雪之丞へ差し出す。
「はいこれ……! 俺からもゆきのじょーにチョコレート……!!」
「……! ありがとうございます。嬉しいです」
 手作りではなく、市販の品。それでも用意してくれた気持ちが嬉しくて。
 ──今日はグラオ・クローネ。素直な感謝の気持ちを、貴方に。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 様々な想い、決意、願い。叶うと良いですね。

 今回、ピンときた方に称号をお送りしています。ご確認下さい。

 またのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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