PandoraPartyProject

シナリオ詳細

僕にぴったりな煩悩VRがあるらしい

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その時、フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)は男ってバカね、と思った。
「――で?」
 行儀悪く頬杖をついて菓子を頬張っているフランツェルに『男子高校生』月原・亮(p3n000006)はうぐ、と小さく言った。
 年の瀬となれば彼の故郷では『師走』という言葉の通り何かと忙しくなるもので……曰く、年末特番を見ながらだらだらと過ごすのが男子高校生の過ごし方――寂しいとか言うなよな――だったそうだ。甘酸っぱい亮の思い出は中学生の頃に幼馴染の女の子たちとグループで初詣に行ってお神籤を見せあったり来年も一緒のクラスだったらいいね……なんて。なんて!
「だってさ、フランツェルさん。今年の俺は何してるかわかる?
 山田が買ってきた『アルテナをテナテナする本』をなんか読んでからアルテナの事を直視できないとかさ……メカ子ロリババアに毎朝を誕生日のお祝いされてるんだぜ」
「あら、おめでとう」
「違うくて……!」
 何よ、と首を傾いだフランツェルに亮はがっくりと肩を落とした。
 詰まるところ、青少年の亮は同人即売会で販売されていた同人誌を見て特異運命座標を直視できないうえに、ドキマギして悶々としたまま年末まで過ごして来たらしい。『青春』がない儘、高校生が終わってしまう事が実に、実に解せない。
「フランツェルさんだって同人誌になってただろ? グリムルートであんなことやこんなことされるやつ」
「それってどんな感覚なのかしら? 非常に興味深いとは思わない?
 私ったら、『同人誌みたいに!』みたいなのってあんまり経験ないのよね」
「……」
 ジョークも何もかもが通じない魔女だった。だからこそ、深緑で魔女だと名乗り堂々と過ごして居られるのかもしれないが――彼女が幻想王国の貴族子女であるだなんていわれても信じられない奔放ぶりである。
「いや、まあ……それでさ……。こういうのって煩悩っていうんですよ」
「ふうん?」
「俺は! この煩悩を来年に持ち越さないために、今発散しようと思います」
 除夜の鐘が聞こえる。
 それがDr.マッドハッター(p3n000088)が亮の言葉を聞いて気紛れに作成した『除夜の鐘マシーンロボ』である事を知っている亮とフランツェルは特に反応はしない。
「煩悩をVRで! 発散しようと思います!」
「ああ。分かったわ」

 ――VRだったら何でも大丈夫――

「……って言いたいのね? ふふ。OK。面白いわ」
 ごーん、と除夜の鐘が聞こえる。
 詰まるところ、VRで好き勝手してやれ、ということだ。
 さあ、VRだ。練達だ。
 思う存分、煩悩を晴らそう!(※晴れるとは言っていない)

GMコメント

 夏あかねです。今年は所有してるNPCの誕生日を忘れてました。ごめんね。亮。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです!なんでってばーちゃるだから!
 無いよりはマシな情報です。グッドラック!!!!!!

●ぴったりな『世界観』があった
 月原・亮は今年も終わりなので煩悩を晴らそうと思いました――VR世界ならめっちゃ楽しくできそうじゃん。

 除夜の鐘がごーんと聞こえる以外は世界はVRで色々あれそれされます。
 NPCに関してはVRなので本人じゃなく出てくるかもしれません。
 本人が出てくる可能性があるのは同行NPCをご覧くださいませ。
 本人じゃなくってもVRでいちゃついていいとおもう! な!

●VR配役をセレクトしてください。
 例:【魔王】
 例:【ざんげちゃん(偽)】
 どんなものでも頑張りますのでめっちゃかっこいい二つ名だけでもOKです。
 なんだって対応します。がんばろうな!

●VRの設定を決定してください
 例:過去の記憶がないけどなんだかとてもカッコよかった気のする魔王です。左目からビームが出ます。
(キャラクターの設定や口調など盛りだくさんでOKです)

●行動や、その他思いつく限りどうぞ
 想い人とイチャイチャしたいとか、なんか勇者になってかっこよくなりたいとか。
 めっちゃシリアスムーブしたいとか、それでもってのんびりと過ごしたいとか。
 VRの中でさえも仕事してる……とか、なんでもありです。VRですから。

●同行NPC
・『男子高校生』月原・亮 (p3n000006)
・『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)
・『灰薔薇の司教』フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)
 この辺りはVRに参加します。本人が居ますよ!

・練達のNPC
 お馴染みの佐伯・操さんとDr.マッドハッター、ファンさんならちょろっとお顔出しするかもしれませんが遊んでるだけなので重要な事は何も聞けないのです。

・ステータスシートのあるNPC
 VRだもんね!!!!本人は居ないけどVRでバーチャルで存在するかもです!!!!!!!!レッツトライ!!!

 年忘れ2019
 楽しくいきましょう! よろしくおねがいしまーす

  • 僕にぴったりな煩悩VRがあるらしい完了
  • GM名夏あかね
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年01月09日 22時10分
  • 参加人数30/100人
  • 相談4日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
庚(p3p007370)
宙狐
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
黒鴉 拓哉(p3p007827)
!!すらがびた

サポートNPC一覧(3人)

月原・亮(p3n000006)
壱閃
リヴィエール・ルメス(p3n000038)
パサジールルメスの少女
フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)
灰薔薇の司教

リプレイ


 ゴォーン。
 重厚な音が周囲へと響き渡る。それが梵鐘を撞く音である事はこの場の特異運命座標全員の共通見解だろう。
 つまり、煩悩を晴らす為にVRで好き勝手して満足して新たな年をしっかり迎えようという試し見なのだ。

 そんな中でもヴィクトールは寝ていた。因みに、彼のギフトの名前は『ドコデモオヤスミ』である。
「VR……? なんでしょう、それ。……ふあ……ちょっと寝てもいいかな……?」
 そう言ったまま深い深い眠りの中。そういう時もあるさ――そう、そういう時も。
 ヴィクトールが眠っている中、リュグナーは祈っていた。
 リュグナー、いいや、今は彼をギルオス・ホリス(偽)、つまりは『ニセオス』と呼ぼう。
 ニセオスは闇市パンツ教の教祖にして、有名なるぱんつ師である。
 パンツを愛し、パンツに愛されたその男。持ってるパンツの数は(情報統制)である。
 不可思議な力を持ち、世界中のパンツが勝手に集まってくる。
 そう、その正体をずっと追っていた情報屋リュグナーは気付いてしまったのだ。謎を追うならば謎になればいい。つまりは自分がギルオス・ホリスになればいい、と!
 ギルオスのデータを使用しての1日ギルオス体験。目の前でリリファがドミノをしましょうと異様に強請ってくるが、きっとこれで全ての謎が解ける!
「クハハハハ! 待っているが良い、闇市ぱんつ教祖ギルオス! 貴様の力の秘密、今明かしてくれよう!!」
 何位にだってなれるのがVR。拓哉はゴーグルを付ければ『行きたいところに行ける』んだと意気揚々とゴーグルを装着した。魔王とか勇者の戦いが見たいのだ。
 そう……『悲しい過去を持ち世界を滅ぼさんとする魔王』と『生まれも育ちも世界から祝福された典型的な勇者様』の二人が出会って、戦う、その様子を始まりから終わりまで見たいと拓哉はわくわくと世界の空になった。
「なんちゃらの部屋の壁や天井になりたいの気持ちっすね!」
 それを見れば英雄に近づける気がするのだと、ドキドキした拓哉。
 其れとは別の所で勇者と魔王(タント様)の戦いが勃発していた――

「オーッホッホッホッ! 性懲りもなくやって参りましたのね亮様!
 前回亮様はわたくしを倒せませんでしたわね……でしらたば!
 此度もわたくしが立ちはだからねば!亮様の旅路は完結できませんわ!
 そうでしょう! さあ亮様、このわたくし!」

  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!///
‪‪
「──‬を! 見事打ち倒してみせるのですわー!」
 おでこがきらりと輝いた。その隣からす、と顔を出したシャルレィス。亮は「どうして」と呻いた。
「……驚いている様だね、亮……。でも、今の私は魔王様に忠実な配下であり相棒!」
 魔王様の剣として全力で戦って見せると幼馴染として共に田植えをしたシャルレィスが剣を構える。
「さあ剣を取れ勇者よ! 私だって昔のように亮と手を取り合ってトラクターで田植えをしたい……けど!
 昔のまま、今のままでは何も変わらない……さあ! この剣の先に……君は何を掴んでみせるのッ!?」
「くそっ、どうして――! 俺はシャルレィスを倒さなくちゃならないのか!」
 震える手で剣を握った亮。その様子におでこを煌めかせたタント様がぴしりと指さした
「良いですわ、かかってきなさい! 愛も! 夢も! 見方を変えればそれは煩悩!
 貴方はそれを! 本気で! 乗り越えようと言うのですかしら! 亮様ッッ!!」
 その隣にぴょんぴょんと犬が飛んでいた。ホカホカでピピピチのいぬが突如として乱入してくる。
「みんなもよく知る! 犬です! 犬! わかるね、犬! ホカホカでアツアツでふわっふわの新鮮な犬!
 ね! 可愛い! 犬可愛い! 元気! 健康だから! 健康な犬! 新鮮! 産地直送でお届け犬!」
 ――勢いだけが凄い犬こと庚は鼻をぴくぴく床クンクン。撫でて撫でて徒とアピール三昧。
「お手! お手もできるお手! おかわりも! 待ても伏せもおあずけもおまわり、ゴーホーム任せて!
 取ってくる! ボール! ボール取ってきますから投げてくださいまし! 遊びましょ! ね!!!」
「……分かりましたわー!! それでは宝玉をいち早くとった者が勝利ですわー!」
 全力ダッシュの庚に亮は「待ってぇ!?」と情けない声を漏らしたのだった。今回もタントさまには勝てそうにない。
 過去に色々あったけどそんな素振りは微塵も見せずにぶははと豪快に笑って料理を出す食堂のおっちゃんがのっしのっしと顔を出す。
 タントは「あ、貴方は! 嘗ては四天王の一人であったゴリョウ様ではありませんのー!?」と叫び、シャルレィスも「四天王!」と声を荒げる。
「ぶははははー! 走るってんなら腹拵えも必要だろ! 勇者、たっぷり食え食え!」
 背をどん、と押したゴリョウに亮は山盛りのおにぎりを見て「やったー!」と跳ねた。リアルでも絶品料理のゴリョウなのだ。
 冒険者であるニアとリヴィエールは宝玉を狙う者たちを退ける金の全身鎧を着こんだ謎の巨漢が街を守護っている噂を聞いたのだった。もしかして――それっておっちゃ(以下、検閲)。
「リヴィ、冒険開始だ! 勇者と犬(?)が狙う宝玉求めて頑張ろう。
 黄金の全身鎧の謎の巨漢に負けない様に強そうな敵をばっさばっさと倒してみよう。
 楽しそうだよね、うん。何? なんか悩ましそうな顔をしてるけどさ」
「いやあ……?」
「も、もちろん他意は無いよ。決して、全く。今回参加したのも、偶然、たまたま、目についたから、だし」
 リヴィエールの訳知り顔にぐぬ、と息を飲んだニアは観念する。偶には友達の前で良い格好してみたいってのはちょっぴり、いや、結構、否定出来ないんだけれど――
 説明しよう。魔法少女蛍ちゃんは『普段は真面目で面倒見が良く、少し口煩くてちょっぴり素直になれないツンデレ委員長。でも実はチトリーノのはーと型ネックレスの愛の力で変身し、平穏な日常を守る全力全開な魔法少女』なのである。
「設定ですね? つまり桜咲は『普段は貧血ですぐ倒れてしまう病弱な女子中学生。しかしいざという時にはチトリーノの雫型ネックレスに込められた祈りの力で変身し、皆の夢と希望を守る金剛不壊の魔法少女』ということですね、わかります」
 頷いた珠緒に蛍はうんうんと頷いた。
 かつては強大なる存在の手のうちに合った珠緒を命懸けで取り戻した蛍。無二の親友とのドラマとハプニングと感動のハートフルアクションなのだと蛍は力説する。
「新たな危機に立ち向かって、力を合わせ連携や合体技を駆使したり合間の日常で学業に勤しみながら放課後にたぴったりすると」
「そう! ……そして深まる絆もイチャイチャ体感したい、なんて口が裂けても言えないわね
 あっ!? ボ、ボク、どこから口に出してた!?」
(※全部)



「VRか……何が出来るか、だな。出来るなら様々な菓子を食べ尽くしたいが、触感や味は再現できないだろうな」
 そう、世界の云う通りあくまでバーチャル世界出る以上は再現はできない。然し、彼の言葉は練達の人々の心に火をつけた。陽田・遥という研究員がやる気十分なのだ。きっと近いうちに出来るようになるだろう。テスターは任せたよ。
 さて、何もない部屋にふかふかの羽毛布団を置いてのんびりと寝るとしよう。休息も必要な事なのだ。
 彼女は異なる輝きを持つ七色の包丁をもつという、流浪の料理人。その名を美咲!
 訪れる先々で旬や特産の食材と出会い、技を振るう、できた品は無論提供者に振る舞うが、自身もいただいて楽しむのが流儀! ……だが、目の前に立ちはだかったのは暴食の魔人『無限無尽(イノセント・ブラックホール)』ヒィロであった。
「よかったのかなホイホイ出してきて、ボクは満腹だってかまわないで食べちゃう魔神なんだよ!」
「あれ? ヒィロってば、ひとりで全部食べつくそうだなんて……
 お腹が空き過ぎて、忘れちゃったのかな?
 誰かと食卓を共に囲むことの喜び――思い出させてあげる!」
 眼前に立ちはだかった美咲。大好きな美咲が居たら美咲ごと食べちゃいそうだとヒィロがぺろりと舌なめずり。
「そう! それじゃ、思う存分。食感も、火加減も、全て私の意のまま、ってね……
 さ、楽しみましょう――Bon appetit」
 結果はヒィロの完敗である。
「超宇宙ダンサー(ねこみみ)……とは私の事だよ! キラッ☆」
 とてつもなく広いステージに満員御礼状態でスーはスカートを揺らす。BGMも演出も衣装も思うがままだ。
 ごーん。
 ……ちょっと鐘の音がうるさいがそれはまあ、些細な問題だそうだ。
「今日は1日楽しんじゃうよー!」
「おー!」
 観客に呼ばれた亮にスーはウィンク一つ。同人誌とか、煩悩ってなんだっけ、と考えはしたが……VRってすごいにすぐに思考は塗り替えられた。
 さあ、踊って歌って思う存分楽しもうじゃないか!
「僕が会いたいのはママ……じゃなくておっかさん!」
 意気込んでVRを起動したジルは子供の頃の姿になって母と手を繋いでいた。
「ん? おっかさんどうしたっすか? え、ママって呼ばないと駄目っすか」
 ママよ、と彼女が口を酸っぱくしたことにジルはママと呼び変える。
「トカゲをしめれるかしら」
「大丈夫っす、ちゃんと教えて貰ったっすから。ママから教えて貰ったこと、僕はちゃんと守るっすよ」
 やけに上機嫌のジルにシステム上の『ママ』は「良い事でもあったの?」と柔らかに問い掛けた。
「うーん……それじゃ、これはママだけに話すっす。絶対秘密っすよ。
 ――僕、好きな人が出来たっす!」
 母というのは子供達にとっては倖せの象徴で、大切な存在なのだろう。
 綺麗な庭園の中でエイルと共に向き合ったスティアは穏やかな微笑の母に思い出を語る。
「お料理を作ったし、買い物をしたし、あとお友達も出来たんだよ。お母様も知ってるかな?」
 ロウライト家の子とか、と指折り数えるスティアにエイルは笑みを浮かべて頷く。
「あ、あと、サメとか……」
 ――怒られるかな、とちらっと見たが若い頃はそれよりもやんちゃなエイル。スティアの鮫は母譲りなのだろうか。
「お母様、あのね。私、これから頑張るから……見守ってて? 大好きだよ」
 感謝と、それから伝えきれなかった愛を。そう言ったスティアにエイルはおいでと手招いた。
「このVRと言うマシンは本当に凄いモノですね。
 先日も戦闘訓練に使わせて頂きましたが、本物と遜色ない感覚を得られたのです」
 VRの効果は百余年生きた書庫守お墨付きである。さて、今回は煩悩という言葉を聞いてドラマの頭に浮かんだのはローレットが誇る蒼剣だ。
「煩悩……煩悩……い、いえ! レオン君のコトなんて考えていませんよ?
 そんな、どうこうしたいだなんてそんなコトは……
 ほ、本当ですよ! そんな、どうこうしたいのなら本人にお願いすれば良いですし!」
 段々とその顔が赤く赤く染まっていく。茹でた蛸を思わせる程に真っ赤にその表情は変化した。
「この間のシャイネンナハトも楽しく過ごせましたし!!
 ついつい、その時の情景を思い浮かべたり……あの時のレオン君は……」
 ぼん、と煙が吹いた。首をぶんぶんと振り続ける。まさにゲツク芸である。
 そして『ぶいあーる』に来てしまった事を後悔するErstineさん、特殊捜査班設定である。
 上司のディルクと共に敵のアジトへ潜入したは良いが……追われる展開はハードボイルドそのものだ。
「はぁ、はぁ……しつこい方々ですね……ここは私が囮に――えっ」
 静かにしろ、とディルクの声が降ってくる。耳に熱が集まり息を潜めたErstineはそのままロッカーの中に引き摺り込まれた。
「あ、あの……ロッカーに隠れるのは……その、きょ、距離が……っ」
「言ってる場合かよ」
 不機嫌そうな声にびく、と肩を揺らし、そのまま密着した状態で敵をやり過ごす。Erstineは叫んだ。
(なんでいつもこうなってしまうの……っ?!)
 煩悩です。
「……えっと、今度は不良品じゃないんだよね? 練達っていうからちょっと心配だったりして……」
 大丈夫といまいち信頼できないがフランツェルがウィンクするのを受けてMeerは頷いた。
 設定は『いろんな相手と恋愛ごっこができる』と噂のゲームの主人公。恋愛してみたいとVRを思う存分楽しむMeerは自身の外見が変化することをよく知っている。
 イケメンA君と唇が近づいたその刹那に突如として小さな少女から青年に変わって攻守逆転。様々なカップリングを思う存分楽しめるのだ!
 その様子を眺めていたラルフはそれなりにVRも進化したのかとテストを行うと自身が元の世界に居た頃へとダイブする。
(――私はね、記憶と肉体を縛られていた妻と平穏に暮らせれば良かったのだ。
 妻の呪いを解くには人類同士から争いを完全に失くす事……そんな事は不可能だったさ。
 どれだけ努力しようが何を試そうが……だから私は呪いをかけた神を殺し人類を根絶やしにしようと目論んだ)
 自身の努力は無益であった。そうは思う。だからこそ平和な世界線があればよかったがVRはしょせん自分が作り出すまやかしだ。
 虚構であればあるほどに空しい事に気付きラルフは取るべき道は決まっているのだと、そっとゴーグルを外した。


「VRメカさん&アナザーきゅーあちゃん、おっひさしぶりー!!ヾ(≧▽≦)ノ
 げんきしてた?(´▽`) ひさしぶりのVRせかいだから、きゅーあちゃんもいっぱいたのしんじゃうよ!(>ヮ<)」
 折角なんでも出来るからQ.U.U.A.は「せーの」で格好も職業も場所も何もかももランダム設定。スペシャルきゅーあちゃんなのだ。
「それじゃ、ランダムするよ!(`・ω・´) せーの! while(1){rand();}!」

 ――私達、入れ替わってる―――!?
 ゼファー。ゼファーが見下ろせば清廉なる白と機械の手。OK、ヴァレーリヤだ。
「私の予想が正しければ、ヴァレーリヤが私の姿で彷徨っているはず。早く見つけなきゃ大変なことに……」
 遅かったとゼファーはがっくりと項垂れた。酒瓶を手にして入れ替わっている事も気づかずに悪酔いするゼファー(中身:ヴァレーリヤ)が彼女の前には居たのだ。
「オーッホッホ、最高ですわ! ここではどんなお酒も飲み放題ですのね
 えっ、もうこれで終わり? そんな事……許しませんわ! ひっく
 おらー、早く次のお酒を持って来なさい! さもなくば、この子の命はなくてよ!」
 こんな聖職者が居て堪るか。「なんつーことしてくれやがりますかね!?」と滑り込んだヴァレーリヤ(中身:ゼファー)に悪酔い淑女は顔を上げて「私……?」と首を傾いだ後立ち上がった。
「ゼファー!? 違いますの! これはお酒を持って来てくれないのが悪……離して、離して下さいましー!」
 業が深い不良司祭なのである。
 そんな業が深い不良司祭と同じ様に業が深い男子高校生は「ああー」と叫んでいた。
 亮が手にしたのは『焔ちゃんが泣くまで触手に弄られる本』であった。
 依頼を受けて魔物退治に向かったイレギュラーズのホムラ。目標は倒したが、情報にはない触手を持った魔物が現れて――「だ、だめぇっ、こ、こんな姿見ちゃ!? ……ぁ、ぁんぅ!」
 何の因果か見てしまった。VRゴーグルを外せば目の前には焔が立っている。
「しょ――」
「しょ?」
 触手と言いかけて亮は御免と焔に叫んだ。暫く彼女の顔は直視できなさそうだ……。
 ちょぉ強い姫騎士まいはたわわなバストでとっても強いのだと胸を張る。
「麻衣だぞ! でも麻衣だからへっちによわいんだ! あと触装はアイデンティティっす!」
 どんな姫騎士だって同人誌みたいにくっ殺されるのだ。なんたって、麻衣ちゃんなのだから。
 雑になんだかアハンでウフンされる展開しか浮かばなかったがたわわなバストを使えば何だってできる!
「さて、フランツェルさん。弊社の新規シリーズ『光のザントマン』をお楽しみいただきましょうか」
「あら? それって同人誌のやつかしら? 楽しそうね」
 光のザントマンはこれまでのザントマンと異なり双方の合意に基づいて幻想種に限らぬ幅広い種族をターゲットにして展開するそうだ。臆す事ない魔女に『光のザントマン』は衣装ですと投影した。
 あられもない恰好で首輪を付けられた状態でオークションに掛けられるフランツェル。その瞳は相変わらず楽し気だ。彼女を購入した光のザントマンはほぼ布などないに等しい衣装で奉仕を命じた。
「こういう時ってどういえばいいのかしら? 『ご主人様』?」
 そっと膝に手を掛けてにんまり笑ったフランツェルに外から亮が「ストップー!」と叫んだのだった。
「ストップついでに! ほら! 農家!」
 突然指さされた農家のあんちゃんクリスティアン。
「やっさいの為ならえ~んやこ~ら! どっこいしょ~! 美味しい野菜のた~めにどっこい、しょーっ!
 うちの野菜は鮮度と味が売りだよ! 食べた瞬間に口の中で暴れだすような……」
 本当に野菜が暴れ始める。それを見ながらメカコロリババアが頭をぶんぶんと振っていた。
「亮くん! 前のVRはロバ初心者の眼にはちょっと変な光景に映っただろうね!
 わたしあれからロボットのこと、勉強したんだよ! 生ロリババアはセンシティブな光景だったからロボット! 初心者向け! ロボットだからかっこいい!」
「怖いよ!?」
 亮が叫ぶ。練達ビル群を背景に1頭の身重のメカコロリババアが寒さに打ち震え除夜の鐘マシーンの音と共に叫ぶ。
「そう……煩悩の数だけ! メカ子ロリババアは!108回の鐘の音に合わせ!
 メカ子ロリババアを産む! わたしの煩悩! わたしの望み!! 地に満ちなさいわが子たち!! あああああ産まれアッ」

 ――非常にセンシティブな映像が流れました――

 ブーケと呼ばれたパカダクラはのんびりと歩いていた。
 そう、パカダクラ。

『混沌に生息する大型の草食獣で、主に鉄帝や傭兵で騎乗や牽曳を目的とした役畜として飼育される。
 毛が抜けにくく体臭も余り無い一方で毛が絡みやすく、毛玉ができやすいため、日々のブラッシングと定期的なトリミングは欠かせない。
 夜間の寒冷な気温から内臓や関節を保護する目的で、頭部や胸部、足首の毛を残し、
 他の部位は日中の暑さに負けぬよう刈り込むという、用便性からきたカットが標準であったが、
 近年は練達による技術発達と共に次第にファッション化されており、現在数多くのトリミングスタイルが開発されている。
 性質は従順で強靭、のんびり屋。
 ――混沌生物図鑑より』

 うろうろとしているパカダクラが擦り寄ったのはファン・シンロン。
「おや、かわいいですネ」
「君がそんなことを言うなんて珍しじゃないか。明日はキャンディーでも降り注いできて大騒ぎになるのではないかね?」
 マッドハッターの茶化す声が聞こえたがブーケはそちらにも撫でてとのんびり近寄って行った。

「……あれ、おきたら、誰も居ない……?
 結局これ、何だったかわからなかったのです、ただ……なんかチャンスを逃してしまったような、気が……?」
 目を擦って起き上がったヴィクトールが周囲を見回した。どうやらVRの稼働時間は終わったようで――練達のスタッフがこちらへどうぞ、と何気ない対応をしてくるだけだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度は楽しくVR有難うございます!
 ちょっぴりえっちだった方に関しては亮君が目を合わせられないって。思春期だもの。
 皆さんの煩悩が(ゴーン)減っていけばいいな(ゴーン)と思います!(減ってなさそう)

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