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シナリオ詳細

【Autumn color】聖教国新生を願って

完了

参加者 : 21 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 天義──聖教国ネメシスを『冠位七罪』が一人、強欲のベアトリーチェが襲ってはや数ヶ月。
 国王にして教皇シェアキム六世の下で改革の進む天義の国内では、厳格さと異端審問を信条とする施策から寛大さと対話を重視する施策に舵を切ったことへの戸惑いと幾ばくかの反発はありつつも、少しずつ復興に向けた営みが続けられていた。

 そのような復興の最中にある都市のひとつに、グレゴリアと呼ばれる街があった。
 一時は聖騎士が聖都に駆り出されたのが遠因で背徳が蔓延り、危機に瀕していたこの街も、今や特異運命座標らの手により救われて、以前の落ち着きを取り戻している。そして、新生ネメシスを印象付けるためのモデルケースとなるべく、官民問わず奮起している……そこで。
「我がグレゴリアは聖教国の再生を国内外に知らしめるべく、復興祈念祭の開催を宣言する!」
 領主はそんな招待状を各地に送り、広く祭りの参加者を募るのだった。参加条件はただひとつ……天義の新生を願う証として、白い色を身に纏うことだ。
 白いリボンで髪を飾るのでも、白い全身鎧を着込むのでもかまわない。それさえ守っていたならば、街を訪れ祭りを楽しむのはもちろん、所定の場所代を支払い店を開くのも、仮装して復興祈念パレードに参加するのも自由。……といっても自由を盾に狼藉を働くような者がいたならば無論、たちまち街のあちこちを警備する自警団に捕らえられ、聖騎士団らの手により処罰されてしまうだろうが。

 街角にはあちこちに、パレードのために聖歌の練習をする子供たちの浮かべる笑顔や、小遣いが出るとの当局の呼びかけを聞いて奮起した貧民たちの汗水垂らす姿が見てとれる。そればかりか街が混乱の中にあった頃には狼藉を働いた罪人たちまでもが、祭りで来訪客たちを喜ばせるほど罪が赦されると信じ、献身的に祭りの参加者たちを案内したり、刑務作業の一環として作った金属細工や木工細工を売って楽しませようとしてくれる。
 特異運命座標たちがこの街を訪れて、楽しんでくれたというだけでも彼らにとっての希望になるだろう。けれどももしも余裕があるのなら、彼らのような弱者を気にかけてやるといいかもしれない……それはきっとこの天義という国の、新たな正義であるに違いないのだから。

GMコメント

 無辜なる混沌各地の秋模様を、テーマカラーとともにお送りする【Autumn color】シリーズ。聖教国ネメシスの一都市グレゴリアの色は、善なる秩序の再生を願う、穢れなき白。復興祈念祭は、グレゴリアの街、ひいては聖教国そのものの復興を願って、三日三晩開かれます。
 そんな祭りの楽しみ方は幾らでもあるでしょうが、特筆すべきものは以下のとおりです:

●露店廻りする/露店を出す
 グレゴリアには、天義国内外から多くの露店がやって来ています。工芸品や屋台料理だけでなく、射的などのゲームの露店も見られます。とりあえず聖人の逸話にあやかって聖人名を冠しておく商品も多く見つかるでしょう。
 祈念祭は、場所代さえ支払えば誰でも出店できます。せっかくギルドショップもできたことですし、売る側に回ってみるのも楽しいかもしれません。

●パレードに参加する
 3日かけてグレゴリアの隅々まで回るパレードが、復興祈念祭の目玉です。パレードは仮装での参加が許されており、参加者の中には沿道の人々をどれだけ楽しませられるか挑戦する者もいるようです。
 グレゴリア市民の間で人気の仮装は、何といっても童話作家アシュトン・ルネ・ルサージュの著作の主人公、『正義の騎士 ジルベール卿』でしょう。街ではジルベール卿は今回の祭りのきっかけを作った人物として知られており、ファンたちがこぞって金縁の白鎧の姿の仮装をしています。

●警備に回る
 これほどの祭りを開くことはグレゴリア市民たちにとって初めてなので、警備の目が届かずにいざこざが起こったり、用意した物資が上手く行き渡らなかったりする可能性もあります。もしも魔種と戦う英雄たる特異運命座標の皆様にそれらを手伝っていただけるなら、きっと街の人々は感謝して、祭りを、街を、国を、もっとよくしてゆこうという意思を新たにしてくれるはずです。

 どのような楽しみ方をするにせよ、『白い色を纏う』のを忘れずに! 特にプレイングになければ、どこかに白い布か何かを纏っているものといたします。
 それでは皆様、復興祈念祭をお楽しみ下さい……。

  • 【Autumn color】聖教国新生を願って完了
  • GM名るう
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年10月21日 22時25分
  • 参加人数21/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 21 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(21人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
コレット・ロンバルド(p3p001192)
破竜巨神
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
舞音・どら(p3p006257)
聖どら
ノエミ・ルネ・ルサージュ(p3p007196)
恩に報いる為に
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

リプレイ

●祭りのはじまり
 白いリボンを亜麻色の髪に結わえつけたなら、ポテト=アークライトはくすぐったそうにはにかみを浮かべた。それから、このまま無事に終わってほしいねと微笑んだ妻。もちろんだ、と返したリゲル=アークライトは人々に幸福をもたらすための剣。
 剣のリゲルと盾のポテト。お揃いの鎧に身を包んだ純白の夫妻は一歩踏みだした。

 グレゴリア復興祈念祭。
 その噂は遠く鉄帝にまで届いたといい、3日続くはずの祭りに訪れた人々の中には数日も前から街を訪れて祭り本番に備える者がいたと、後日纏められた報告書には記載されている。

●弱きを助け
 ジェイク・太刀川にとって最も気がかりだった事柄は、何と言っても孤児たちのことだったろう。先日の天義の混乱が遠因で、親を亡くした子供たち。一時は追い詰められていた彼らが少しなりとも笑顔を取り戻していることは、ジェイク自身にとっても何よりの救いだ。
「やあやあ、我こそはジルベールなり!」
 胸を張り町を練り歩く。格好良かったり、可愛らしかったり、不恰好だったりする白鎧を、自分たちで自由に作って身につける彼らは誇らしげに見えた……それを眺めているジェイク自身も、思わず背筋が伸びてしまうほどに。

 無論、それで戦いの傷跡が癒えたなどとは、決してアンナ・シャルロット・ミルフィールにも言えはしなかった。ただ……それでも6年前と比べたら、今のほうが希望に満ちているように思う。
 だから白い髪留めを揺らしつつ、孤児たちや貧民らの店を好んで回る。彼らのささやかな料理や可愛らしい小物を手に取って、特異運命座標の名で褒めそやす。
 皆さん、大変でしょうけれど、頑張ってね。
 そして神様――今、貴方はどんなお気持ちですか?

 孤児たちは今や疎んじられてはおらず、貧民たちも蔑ろになどされてはいない。
 そんなメッセージこそこのグレゴリアの街が、広く知らしめんとしていたことだったろう。
 ところで、この街に住まう“弱者”とは、決して孤児たちや貧民に限らなかった。罪人――ひとたび不正義の烙印を押された者たちもまた、必ずや救われねばならぬ。正義から見放された罪人たちは……今になってどれほど後悔すれども、生きるためには罪を重ねるほかなくなるがために。
 ただ……それを人々に浸透させるには、まだまだ時間をかけねばならなかったはずだ。ならば、聖王フェネスト六世の命じた恩赦の意味を、どうにか人々の目に見える形で解らせる必要がある……たとえば、夜乃 幻のように。

「おや、貴方たちの商品には、ジルベール卿の加護がついているようですね」
 刑務作業で作った彫刻を幻が手に取れば、白い蝶が現れ卿の姿を取る幻影が映る。その時人々の中から「神は貴方を赦します!」という声が上がって、罪人は神の慈悲へと感謝する。
 それは……奇術にすぎぬものではあった。けれどもそれが奇跡だと誰もが信じれば……人を救うことくらいはできる。

 あーあ。柄にもなく真面目なアシスト発言をしてしまった。
 聖女風の白っぽいローブに身を包んだ人物は、密かに可笑しそうに表情を変えた。辺りはいまだおちょくっていい雰囲気じゃないけれど、昔と比べたら随分と楽しい気がした。
 誰かがようやく発言の主に気がついて、有難みを求めて追いかけてくる。それを人ごみの中に身を躍らせて逃げ……舞音・どらは窮屈な聖女衣装を脱ぎ捨てて、家々の屋根に上がるとパレードを探す。

●仮装パレード
 パレードは出発地点である神殿を出て、大通りから枝葉の通りへと入ってゆくところだった。パレード参加者の中にはその一部だけを練り歩く者もいれば、体力の続く限りどこまでも練り歩き続ける者もいる。パレード列の先頭で白い服に赤マントをたなびかせるクリスティアン=リクセト=エードルンドは……当然、後者に当たる人種だ。
「ふふふ、見たまえエリヤ、ツバキ、それからアンジェ、ガーネット、ナイル! 皆が僕たちの麗しい姿に釘付けじゃないか!」
「ノジャァ~~~……」
 ファサッと前髪を掻き上げたなら、可愛らしく着飾らせられたロリババアたちは不満げな鳴き声を上げた。
「何々? そろそろ歩き疲れたって? 大丈夫、歩けなくなったら順番に負ぶっていってあげるさ!」

 何かが致命的におかしい気がしたけれど、今日のグレゴリアはそんな光景も、パレードの非日常の中にすっかり呑み込まれてしまったかのようだった。はたして……今までこんな光景を、この国で見たことがあっただろうか? 今日ばかりは祖国を胸を張ってロゼット=テイに紹介できるとカイト・C・ロストレインはほっとして……ふと近くの店の看板に目を留める。
「ロゼットくん。どうやら白いものを身につける祭りの日に焼肉を出す、挑戦的な店があるようだよ」
 焼肉って、以前より案内をお願いしていた“天義の美味しいもの”だったっけ? そんな疑問が浮かぶより早く、ロゼットの鼻腔を香ばしい香がくすぐる。カイトも「祭りの醍醐味は買い食……もとい騎士たる者、常に敵襲に備えて補給の機会を逃すな」と説くし、今日の昼食はこの店で決まりだ。
「なるほど。ケバブに似ているけどパンとかには挟まないのだねぇ」
 ラサとの違いはそれだけじゃなく、メニューに意味深な聖句が添えられてることなどもあるのだが、それを解説するカイトの言葉は、肉に夢中な今のロゼットの耳には届いていなかった。ようやく彼女が反応したのは、カイトのこんな発言くらいだ……:
「おっと、あっちにもステーキの屋台があるよ!」

 お肉に目の色を変える2人の後ろを、聖歌隊を乗せた山車が通り過ぎていった。けれども彼らの合唱はしばしお休みだ……何故なら今は天使の独唱パート。山車の周囲を翼で舞う華蓮・ナーサリー・瑞稀の姿はまさに天使のようだ。……そんな大役を任されてしまった華蓮自身は、本当に自分でいいのかと困惑もするけれど。
 ……でも、天上の音色にて人々は皆英雄だと称えるさまは、確かに人々を勇気づける天使の歌だと言えた。ひょんなことから関わったこの街の復興は、全てそういった英雄たちの手により支えられている……天義のこれからを新たに作るのも、そういった名もなき英雄たちだ。

 そんな願いを歌いきる。それは華蓮ばかりではなく、ともに歌う聖歌隊にとってもよほどのプレッシャーになっていたのかもしれない。時刻はパレードが街の西側をひと巡りして戻ってきた夕方、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤが露店で自らの智謀に酔っていた頃のことだった。
「教義ではなく料理を広めることで、『クラースナヤ・ズヴェズダー』への親近感アップ! さらに稼いだお金を施せば主の御心にも沿うことができる、一石二鳥のはいご注文ですわねー!」
 そうしてふと見る子供たちの顔は、随分と疲労に彩られていた。それは聖なる貢献の代償であろう。しかしプレッシャーを見事耐え切った少年少女たちの得意気な様子は愛おしい。
「頑張って練習した貴方たちに、出来たてのボルシチをサービスしておきますわねー!」
 これで身体をよく温めて寝て、明日も元気に歌えるように……ああっ、善行をした後のウォトカは美味しい!

●酒と喧嘩と不正義と
 メインイベントは一旦の終わりを告げれども、大人たちのイベントはこれからが本番だ。
「酒だ酒、酒持ってこい!」
「だから少し待っててくれって! 本店まで取ってくるから時間がかかるんだ!」
「しまった、チーズも切れちまってんのか! 一緒に取ってきてもらえばよかったなぁ!」
「チーズまで!? おお神よ、汝は我を見放し給うたか!」
 そんな飲兵衛どもの輪にアーリア・スピリッツも入りたかったけれど、今日ばかりは酒豪はお休みだ。はいはい、と宥めて箒で飛んでゆき、伝令やら荷物運びやらを片っ端から手伝ってやる。昼間は加えて迷子の面倒まで見たりして……そんな多忙な一日の間、驚くべきことに彼女は一滴たりとも呑んではいない。
 だって、あの日から天義は何かが違う。これからはお酒で辛さを紛らわす必要もない、いい国になってくれるのだろうか?
 このアーリアが正義を象徴する白い服を着て、祭りを後押しする側に回る……それがこの国の変化の証左だと言えるかもしれない。

 もっとも……それが一切の諍いから縁遠いことを意味するのかと問われれば、んなわけないのではあるが。
 一転して解放的な雰囲気になった街。この国の必ずしも倫理観を理解しているとも限らぬ来訪者たち。そしてお酒。警備役の銀城 黒羽はどこでも引っ張り凧だ。
「なんだコラ、やんのかテメェ!」
「上等だ。ママに泣きつくなら今のうちだぞ」
 あわや一触即発の2人に割って入ったものは、闘気の鎖を伸ばした黒羽であった。
「は? 何だテメェは!」
「邪魔すんじゃねえ!」
 今度は仲良く黒羽に殴りかかってゆく2人。けれどもどれだけ殴っても倒れぬ彼を相手しているうちに……いつの間にか喧嘩の原因なんて忘れてしまうのが酔っ払いってやつだ。
「折角の祭りなんだ、楽しくいきな」
 黒羽に肩を叩かれたなら、2人は狐につままれたような顔で、再び着席して酒を呑み始めた。居合わせた人々の拍手が聞こえる……けれどもそれで済むトラブルは、この祭りではまだまだ序の口のほうだ。

「ひったくりだ! あいつを捕まえろ!」
「天より降る愛と正義の白き稲光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参! 人々の憩いにして救いであるこの祭りを邪魔する輩には愛を!!」
 どごーん!
 凄まじい爆音が辺りに響いて、哀れなひったくり犯は目を回して気絶した。無限乃 愛の魔砲は愛の力を調整されて、普段のピンクから復興祈念祭向けの白へと進化済み! しかも同時にバリアを張ることにより、なんと……二次被害の抑止を実現!!

 ……ところで誰か、彼女が拘置所で一晩明かした理由を説明する必要のある人っている?

●露店廻り
 そんな大騒ぎがあった翌日も、つつがなく朝は迎えられていた。店々には売り切れてしまった品が再び並び、威勢のいい掛け声がそこかしこで響く。そういった一面は午後や夜とはまた一味違う……おそらくはこの時間帯こそが、最も普段のグレゴリアに近いものだろう。
 観光客向けというよりは市民向け。祭り向けのものならどこでも手に入ったけれども、この街らしい店を見つけるのなら、きっとこんな時間の散策が一番に違いない。

「グレゴリアって、何が美味しいんだろうね?」
 マルク・シリングがそう訪ねたけれども、天義出身のサクラさえもが首を横に振ってみせた。
「あんまりこっちには来たことないんだよね」
 すると店の入口を覗きこみながら声を弾ませたスティア・エイル・ヴァークライト。
「つまり……探す楽しみがあるってことだね」
 なるほど、スティアの言うとおり。だからマルクも店の奥へと訊ねてみれば、返ってきたのはおばちゃんのこんな一言だった。
「グレゴリアの……なんてのは思いつかないけれど、やっぱりこの時期は葡萄とかかねぇ?」
 葡萄……つまりは聖なる飲み物たるワイン。さらに、もちろん秋の果物も多いさなどと聞いたなら、俄然やる気を出さぬわけにはゆかない。
「見て見て! クレープみたいな食べ物があるよ!」
 薄い小麦粉の生地で包んだフルーツに、スティアの瞳が輝いた。今日は何だかフルーツ山盛りの気分……それを思いっきり頬張ろうとしたならば、サクラが彼女の手を引っ張る。
「あ、あっちにはマルクが言ってたバター芋!」
 さらにはアルコールが飛ぶまで暖めたホットワインやら、ベーグルっぽいパンやらも……美味しそうなものを見つけてぐいぐいと通りを進もうとするサクラは、いつしかすっかり振り回す側だった。
 仕方ない。今はこうして楽しむことが、復興をお祝いすることだという彼女の持論はもっともなんだから。お土産用の紅茶探しなんて最後に回して、スティアもどんどん楽しまなくちゃ損だ!
 そうやって、出会うもの全てを思い出に変換してゆく2人。だから形に残るものも用意しておこう……見守るマルクの内ポケットには、孤児院がチャリティーで売り出していた、小さなキーホルダーが3つ忍ばせられていた。

 ……そんな朝の空気もいつしか終わり、辺りは再び熱気に包まれている。再びパレードが注目を浴びる……と思いきや、衆目が集まったのはコレット・ロンバルドの巨躯だ。
 3mの体を屈ませて、小さな木工細工をひとつひとつ見てゆく彼女。貧民たちや罪人たちの習作の中から気にいったものを選んでゆくコレットを噂にでも知る者は、誰も彼女の傍で不正義を働こうなどとは思うまい。
 マイペースにお土産を買い終えた彼女は、腕に巻く白いスカーフをたなびかせながら、地図を凝視しながら立ち去っていった。お土産の次はどこで食事しよう? どの遊びの屋台に挑戦しよう?

 遊び……と言えばメリー・フローラ・アベルの脳裏には、苦い思い出が蘇る。以前、射的の店で遊んだ時は……ちっとも当たらない銃に苛立って、台ごと吹っ飛ばしたら怒られちゃった!
 おっかない店主のゲンコツに、弁償と店の手伝いまでついて来た……ああ、今射的の屋台を見ても思い出す!
「こうなったら、悪さをする人にこの怒りをぶつけてやるわ!」
 ちょうど近くで発生したスリ事件の犯人に向けてリアル射的ゲーム!!

 ……はい拘置所2人めね。そ、そんな潤んだ目してもダメだからね!

●祭りを終えて
 そんなこんながありつつも2日目を終えて、そのまま最も盛大に盛り上がった3日目も終えて。

 リゲルはポテトの焼いた菓子を持って、ともに各所の関係者たちに挨拶回りしていた。
「領主閣下や聖騎士たちだけでなく、子供たちも、罪人たちも、街の全ての人たちもありがとう」
 全ては皆が一丸となってくれたお蔭だ。この街全てに神のご加護があらんことを。
 けれども……ポテトは知っているんだ。そう感謝するリゲル自身も、その一丸になった人々のひとり。感謝されるに足る人物なのだと。
 だから……そっと彼の頬へとキスをする。
 お疲れ様。これはリゲルのお蔭でもあるんだよ、と。

 そんなことがあった夜。ノエミ・ルネ・ルサージュは、警備の自警団や聖騎士たちからの報告を取り纏めていたところだった。
 細かいトラブルこそ多かれど、総じればこの規模の祭りにしては平和なほうだったろう。それも皆が訓練どおりの動きをほぼできていたお蔭。さて……彼女もようやく戦利品に目を通す。
 ジルベール卿をあしらった手芸品や絵画。素人作品かもしれないけれど、いずれも同じジルベール卿ファンの手による、ノエミには大切なお宝だ。

「――この通り、本祈念祭の経済効果は、十分ご満足いただけるものであったかと思います」
 新田 寛治のプレゼンが室内に響く。集まるのは交易商や貴族・司祭など富裕層……PPP, Ltdによるグレゴリア復興債の売り込みを切っ掛けに、この街への投資に興味を持った者たちだ。
 そんな彼らを前にして、寛治の舌はよく回る。
「無論。この利益を一過性のものには終わらせません。キーワードは『より豊かなグレゴリアへ』。では、次のプランをご覧下さい――」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 グレゴリア復興祈念祭、そして【Autumun color】へのご参加、ありがとうございました。一時は荒廃が迫っていたグレゴリアの街も、この祈念祭、そして特異運命座標の皆様がそれにご参加くださったことを通じて、大きく変わってゆくに違いありません。
 願わくば天義という国全体が、活気に満ち溢れた国となってゆきますように。

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