シナリオ詳細
<Chaos Cherry Blossoms>虹に染まる木々を見上げて
オープニング
●虹の森
春が近づいていた。
暖かな風の到来は、心を軽くし、心機一転新たな気持ちをわき上がらせる。
ローレットにいる者達もその例に漏れる事なく。代わり映えのしない日常を払拭しようと、皆で何か気分を入れ替えようと話が盛り上がった。
「ならお花見しましょうよ! お花見! いいわよーお花見は!
皆でワイワイ喋りながら花を見上げる。ただ、それだけなのに気分はそれはもう入れ替わるんだから!」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)の妙なテンションの高さに若干引きつつも、「なるほど花見か」とイレギュラーズは思案する。
「花見か。楽しそうね。私も花見は好きだぞ。何と言っても食い放題だ」
『はらぺこ王女さま』ルーニャ・エルテーシア(p3n000050)がうんうんと頷きながら言う。食い放題の花見など聞いた事はないが、そこに突っ込んでもめんどくさいので聞き流す事にする。
「花より団子だなんてお子様ね」
なんてリリィがからかうが、花見というだけでテンションを上げてるリリィも十分お子様だ。
「ならあそこに行きませんか? 深緑の西部にある虹の森!」
「あら、良いわね! 久しぶりに行きたいわ!」
『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)手を合わせて提案する。リリィがまた妙にテンション上がって同意した。
「虹の森?」
聞き返すと、ラーシアは懐かしむように目を細めて説明してくれた。
「迷宮森林の一画に魔物達のいない平和な場所があるんです。
どういうわけか、そこの木々は七色の花を咲かせていて、見上げれば一面虹のような光景が広がっているんですよ。
深緑育ちには割とメジャーな場所かも知れませんね」
なるほど、それは幻想的な光景が広がっていることだろう。混沌ならではと言うところか。
「決まり! 決定よ!
諸々の準備は任せてちょうだい。バッチリ準備して特異運命座標ちゃん達を案内するわ!!」
カラカラと笑いながら、パパっとスケジューリングするリリィ。よっぽど花見が楽しみなのだろう。
「花見……虹の森ね」
確かに最近皆で纏まったイベントをすることが少なかったかもしれない。
良い機会だ。久々に羽根を伸ばすのもよいだろう。
虹の森。どんな光景が広がっているのか、楽しみだ。
- <Chaos Cherry Blossoms>虹に染まる木々を見上げて完了
- GM名澤見夜行
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年04月15日 22時25分
- 参加人数35/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 35 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(35人)
リプレイ
●虹彩が煌めく
深緑西部。
鬱蒼とした迷宮森林の遊歩道を抜けると、突然目に飛び込んでくる極彩色の景色。
多種多様な花が咲き、虹に輝く花弁達が舞い散り踊る。
魔物も決して寄りつかないこの場所ならば、日々、可能性の蒐集に奔走する特異運命座標達も一時の安らぎを得て、穏やかに過ごせることだろう。
春。
虹を見上げるような、お花見の開始である。
●
「すっごーい、虹色だよ!?」
興奮気味に隣にいるリラを何度も叩くミュール。
「ってみゅる、そんなに叩くな!」なんて言いながら、桃色以外のお花見に二人は心が躍る。
「こう足下の花びらを吹き飛ばして……みんなの上に花びらの虹をかけたい!」
「いや待て大変なことになったらどうする……?」
止めるリラを無視してミュールは魔力を編んで――
「ほーら、吹き荒れろー」
調整失敗した魔力の暴風が竜巻となって、虹に染まる花びらをまさに花嵐の如く舞わせていく。
「だから言ったじゃないか……!」
リラの批難の声にミュールはカラカラと笑って、
「いやでも、ほら、綺麗だよ? ね?」
てへっと舌を出した。
虹の森に虹色の花雨が降る。
周りの皆に謝りながらも、二人はこんな花見も有りかも知れないと思った。
虹色の木々、咲き誇る虹の花弁を見上げながらシャルレィスとタントが楽しげにくるくる回る。
踊るように近づけばシャルレィスが一つ尋ねた。
「タント様は何色の花が好き?」
「何色の……ふーむむ!」
少し悩むもタント様の答えは明快で、
「…いえっ、虹の色はすなわち光の色。
なれば、わたくしはどの色も等しく好きですわー!
英雄色を好むということですわね!」
それは違う、と突っ込み笑った。
「折角だもん、特に気に入った花は近くまで行って良く見てみようよ!」
青が好きというシャルレィスが恭しく手を差し出す。
「あら、エスコートして下さるのですかしら? ではお願い致しますわ!」
「お任せください、お嬢様……なんてね♪」
虹の木漏れ日の中、甘い香りに包まれて。
なんだかポカポカ気分に眠気が沸いてくる。
二人は一つ頷いて、虹の絨毯に飛び込んだ。
全身で春を感じる二人は、きっと素敵な虹色の夢を見るに違いない。
深い呼吸がひとつ、ふたつ。
虹の森に来るのは初めてだけど、想像以上の光景にアニーは感嘆の息を漏らす。
「この光景は想像以上だ……!
俺、こんなに色んな花が咲く木を初めて見たぜ……!」
その言葉に、そういえば零は異世界からやって来たのだと、アニーは思い出した。
なんだかアニーは興味が湧いてきて瞳を輝かせて零に尋ねる。
「そうだ……! ねぇ! 零さまの世界のことを教えて? ――なんでも!」
「聴きたいなら喜んで。
俺が知ってる事なら、なんでも教えるぜ!」
語って聞かせるは《地球》と呼ばれた星の《日本》という国の話。
初めて聞く異文化は深緑の山で暮らしていたアニーにはとても新鮮で魅力的で。
「零さまがいた世界ならきっと良いところなんでしょうね。
もっと、お話を聞かせて下さい……!」
「ああ、それじゃ叩いて楽しいワニワニさんの話でもしようか――」
虹色の花の下、尽きることのない話に華が咲いた。
握りあい繋がる手が暖かな気持ちを伝えてくる。
リゲルとポテトは極彩色の木々の下を、興奮を覚えながら散策していた。
「精霊の世界――緑美しい世界だと想像しているが、花見の風習もあったりしたのかい?」
過ごしていた聖域を思い出しながらポテトがこくりと頷く。
「花見は……桜に限らないけど、綺麗な花を見ながらみんなでご飯食べたり騒いだりはあったな」
翻って、リゲルの過ごした天義は白一色の印象だ。それなら、とポテトがリゲルの頭の上についた花びらを手に取り言葉を続ける。
「天義が真っ白なら、家の中からでも色づけていこう。
ここの花も手伝ってくれそうだ」
「ああ、そうだね」とリゲルは微笑んだ。
暖かな陽射しが木漏れ日となって降り注ぐ。
暖かくなっても手は繋いでいたい。ポテトのそんな思いを汲むようにリゲルは優しく手を握り返した。
夜にはライトアップされるという話だ。それも楽しみだと、二人はゆっくりとした時間に身を委ねていった。
足取り軽く。
蜻蛉が待ち合わせの場所へとつけば見慣れた少女と連れ添う少年が待っていた。
「サティ、この子が言うてた子?」
頭を下げて挨拶すれば、サンティールが互いを紹介してくれる。
お友達でライバルなウィリアム。お姉さんみたいな蜻蛉。
サンティールの紹介はどこかくすぐったくて、クスりと笑みがこぼれる。
「初めまして。俺はウィリアムだ……です」
綺麗な蜻蛉を前に些か緊張の持つウィリアムは何だか口調がおかしくて、微笑ましい。
(まだまだ可愛らしい娘やと思てたのに、やるやないの)
なんて姉というより母親の心持ちの蜻蛉。
そんな視線がどこか落ち着かなくて、ウィリアムはソワソワしてしまう。
「ふたりともこの世界で出来た大切なひとたち。
おともだち同士になれたら、もっとすてきだなって思って。
こういうのってそうそう、『シンボクカイ』っていうんだよね!」
二人を繋ぐサンティールは、こうして縁を繋げられたことを喜んで、
「あら、おてて? はい、繋いで行こか」
「手か。あぁ」
二人と手を繋いで歩き出す。
虹に輝く森は三人の出会いを祝福し、より一層の輝きを放つようだった。
【月夜二吼エル】の三人は仲良くレジャーシートを広げて花見をしながらの食事会だ。
「一緒に食べる子が多い方が、きっと楽しいもの~」
と言うレストに誘われるままに付いて来たルーニャが、涎を垂らしながら目の前に置かれた七色団子へと手を伸ばそうとしていた。
「どうやら味にアタリがあるみたい~?
んふふ~、何だかドキドキするお花見になりそうね~」
「……当たり入りって。激辛ロシアン団子とかじゃねぇよな? 大丈夫だよな?」
「もう我慢できーん! 戴くのじゃ!」
レイチェルが恐る恐る手を伸ばし、長い串に刺さった団子を頬張った。ルーニャも我慢の限界で、一口で団子を全て口に入れた。
「んっ!?」
「んんんっ!!?!?」
カッと二人の目が見開いた。レストが面白いものでも見たように「んふふ~」と笑う。
「……ふむ。この私が、悪戯する事を忘れるとでも思ったかね?」
「こ、このっ、鼻がツーンとするぜ! これわさびだな!?」
レイチェルが鼻を押さえて苦しそうに飲み物を探す。
「美味いだろう? ……黄色がカラシ、緑色がわさび、赤色がタバスコ入りだ。
ほれ、チェリーウォーターである。これで口直ししたまえ」
シグからチェリーウォーターを受け取って、レイチェルは事なきを得た。
「あらあら、ルーニャちゃん平気かしら~?」
「辛ぅ……痛ぅ……鼻ツーンぅ……」
悶絶しているルーニャに一同は噴き出して、ゆったりと葉擦れの音を響かせる木々を見上げた。
嗚呼、今はこの時を楽しもう。
【三角】な三人はいつも通りの状況ではあるが、目の前に広がる暗黒物質(料理)が虹色の木々と相まって、危険地帯を想像させる光景である。
そんな中にあって笑顔を崩すことのない死聖は流石と言わざるを得ない。
「ありがとう、今日のはとても手が込んでいて特別美味しそうだね。
じゃぁ、早速――頂くとするよ」
「はい、お兄ちゃん! 玉子焼きだよ、あーん!」
「あーん………っ!?」
口にした途端、”あの”死聖の笑顔が崩れ驚愕に染まる。口の中に広がるこの世ならざるハーモニーは、しかし美味に感じられるのだ。
「美味……しい……うん、凄く美味しいよ♪
……本当に、本当に凄く頑張ったんだね、偉いよ、由奈」
崩れた笑顔を戻し、抱きしめ撫で上げる。
その後ろでは聖奈が由奈の料理の数々に戦々恐々としているのであった。
ややあって、死聖は二人に用意した料理を披露する。これに聖奈は「師匠、貴方が神か」と大層喜んだ。
「嬉しい! 嗚呼……こんなに幸せなんて……お兄ちゃん大好きです♪」
言葉を走らせて暴走する由奈が一人トリップモードとなる。
その隙に死聖が料理を手に取り聖奈へ向ける。
「じゃぁ、聖奈、あーん♪」
「……って、うえええ!? あーん……ですか?
……妹さんがトリップしてる隙に……」
「それとも……これが良いかい?」
口渡ししようと顔を近づけて――恥ずかしがった聖奈は奪い取るように取って口に入れた。
「……ん、美味しいです、師匠……聖奈は幸せなのです」
その言葉に死聖は微笑んで、赤面する聖奈を見つめ続けるのだった。
「お花見だー!」と連れ添い歩くのはマルベートとアレクシアだ。
虹に色づく花々を見れば、話題も当然花になる。
「君はどの花が好きなんだい?」
マルベートの質問に小首を傾げてアレクシアは考える。
「クチナシかな。控えめだけどいい香りもするし、『喜びを運ぶ』っていう花言葉がなんだか素敵だなって思うんだ」
私も誰かに喜びを運びたいって思うから、その答えにマルベートは満足そうに微笑んだ。
「色取り取りの花はどれも綺麗だけど、私は赤い花が好きだな」
そう言ったマルベートはどこか懐かしむように過去の情景を想起する。世界が全て赤に染まる光景はなんと美しかったものか。
少し感傷的になってしまったかも、と微笑んだマルベートに首を横に振ったアレクシアが言う。
「もっとそう言う話聞きたいな。好きなものとかなんでも!」
「おっと、質問タイムかい?」
「意地悪なくらい質問しちゃうよ! 最初はね――」
もっと互いの事が知りたい。
虹彩の中、距離を縮める二人の質問会はいつまでも続くのだった。
花見と言うのがよく分からないと言うロクとクリスティアンは、二人揃って足下を眺めて花見を満喫していた。
「赤色、黄色、緑色! ……こう! あ、ちょっと難しいなあ。
ほら、王子、何かに見えない?」
「花びらを並べて……それは何を表したんだい? うーん、ちょっとわからないなぁ」
ロクのすることはいつも難しい。腕を組み答えを模索する。
「……わからない? ざんねん。……王子だよォ!」
「僕?」
「赤くてかっこいい王冠と服! 遠目にも目立つ金髪! そしてそしてエメラルドを埋め込んだようなすてきな緑の瞳! 王子だよォ!」
おお、なるほどと膝を叩いた。
「そういわれてみれば――……うん、僕だ! ははは!」
そうして笑っていると、不意に強風が吹いた。
「あっ……花びらの僕が……。花びら王子が飛んで行ってしまう……」
「ああ、王子が風にさらわれてしまう……。
さよなら王子。さよなら、さよなら! また合う日まで! さようならー!」
また春に……ここで会おうねーっあおうねーアオウネー……木霊する声が第一部(?)の終わりを告げた。
――続く、かもしれない。
「おぉ……! 凄いな! 色とりどりとはまさにこのことだ」
片手には大切な手を。もう片方の手には早起きして作ったお手製のお弁当。
ラノールとエーリカは光彩が零れ落ちる木漏れ日の道を歩きながら目を奪われていた。
「きれい」
「……おや、ふふ、ほらあそこ。私達とおんなじだ」「……ふふ、ほんとうだ」
寄り添い合うように咲く赤と青の花。それは二人の瞳とお揃いで。特別を感じる小さな奇跡に微笑みあった。
樹の麓に腰を下ろして、胸一杯に呼吸する。
眩しさと嬉しさが、暖かな広がりを見せて心に満ちた。
こつん、とエーリカがラノールの肩に頭を寄せる。獣としての本能が親愛を示すように自然と頬を寄せ返した。
目を細めてエーリカが言葉を伝える。
「ね、ラノール。
これからも、わたしにたくさんのいろをおしえてね」
「ふふ、無論だとも」
願わくば、君の人生も色鮮やかになりますように。
祈りと願いを抱きしめて、二人は静かに自然の中へと溶けていった。
「すごいきらきらだね。それにあまいはなのにおいがいっぱいだっ」
馬に、犬に、鷹。ついでに空中を泳ぐシャチもいる。
大切な動物達と一緒にリリーはお花見散策中だ。
「レブンはひろいところばっかりだったもんね、こういうのもたまにはいいとおもうよっ」
ゆっくり歩いて、時に珍しい花に鼻を寄せて。蜜を取りに来た小さな虫たちもお供につけて。
広がる虹の景色の中を、リリーと動物達は満足するまで練り歩くのだった。
魔法少女的な二人も今日と言う日は普通の女の子だ。
「じゃーん! ハンバーグでしょー、タコさんウィンナーでしょー、卵焼きにスパゲティにチキンライス――」
早起きして作ったお弁当を見せるセララは、ハイデマリーとのお弁当勝負に自信ありげだ。
「セララ作れたのですか? ふむ……」
驚きつつもハイデマリーも用意したお弁当を披露する。ボリュームがあり、セララに負けず劣らずの内容だ。
「セララがすきそうなものをある程度いれたので……。
被ってる料理おおいですね。失敗だったかな?」
「そんなことないよ。さぁ勝負だ!
まずはボクのお弁当を食べてみてよ。はい、タコさんウィンナー。
あーんして? あ~ん」
ハイデマリーは躊躇しつつも、辺りを見回してから思い切って出されたウィンナーを口に入れた。うん、ちゃんと焼けている。
「じゃあ次はマリーの番ね。美食家セララが判定しちゃうのだ。
あ~ん――」
仕方の無い人だと思いつつ、笑顔で食事をしているセララを見るともっと食べさせたくなるハイデマリーであった。
目の前の光景が、過去の自身を思い出させる。
夢の残滓を運んでいたあの時を。
幻は恐れにも似た不安を感じただろうか。
この世界を救ったあと――もし元の世界へ戻るのならば。
死の概念のない世界に、今はもう戻りたいとは思わなかった。
「僕は奇術師として死にたい。肉体のある生物として死にたい――」
高鳴る鼓動も興奮も、すべて生あるからこそなのだから。
在りし日の世界を想起して、幻は一人想いを吐露するのだった。
「子供の頃に両親に連れられてここに来た事があったと思います。
緑色の花って珍しいから、私はここに来ると緑の花は必ず見ていました」
そんな思い出話を口にしていたリディアは、暖かな木漏れ日に包まれて次第に目蓋が落ちていき……。
「ふふ、寝ちゃったわね」「起こさないようにしておきましょう」
そんなリリィとラーシアの囁きも夢の中には届かない。
このあと目を醒ましたリディアが見守る二人を「ママ」と呼んで赤面したのも、後々の想い出となるはずだ。
「ほら、アリスこっちだ……!」
手を引くヨルムンガンドに連れられて、一際花びらの舞い落ちる虹の並木へと足を踏み入れる。
「虹の様に見える花々……本当に綺麗だなぁ!」
「春って言えばサクラ! ……って感じだったけど、
この虹の森の花もそれに負けない位とっても素敵かもっ!」
楽しげにはしゃぐ二人。ヨルムンガンドは地面に舞い落ちた花びらを大量に掬い上げてアリスに呼びかけた。
「って、ヨルさんどうしたの?」
「アリス、見ててくれ……! そらぁ……!」
手にした花びらの山をアリスの頭上に舞わせる。
「ふふ、虹色の花吹雪だ……!」
「凄い、すっごーいっ!」
目を輝かせて、アリスがくるくる回る。
そして不意に思案して、
「うーん、うーん……よしっ! ――それっ、虹よっ!」
「おぉ……! 魔法の虹色花吹雪だ!」
そんな即席魔法が楽しくて、嬉しくて。
一頻り笑って疲れたら休憩だ。
「ふふん、アリス……おいでぇ」
膝を叩いて膝枕を誘う。アリスはすこし恥ずかしがりながらも、
「お、お邪魔するね……?」
と身体を預けた。
「……アリス頭の向き逆」
「はわっ!?」
笑いが漏れた。
「ニーナさん! 一緒に歌いましょう!」
「……そう、一緒に歌を……えっ」
なんだか色々小難しいことを考えていた女神(ニーナ)だったが、先手を取ったすぴかちゃんの言葉に思わずコクコクと頷いた。
ニコりとSpica's Smileを振りまいて、身体でリズムを取りながら聞き覚えのある歌を歌い出す。ニーナも続くようにハーモニーを響かせた。
月と星。二人の胸元で揺れるネックレスが、虹色に輝いた。
虹の森に歌が広がっていく。
聞こえてくる歌に、ビーナスは一人思わず口ずさむ。
その身の性質、宿るギフトによって、ビーナスは常に一人ぼっちだった。
どうせ近づいても嫌われる。だから今日も一人こっそりと過ごしていたのだが――。
「うわっ、なんか貴方モヤモヤするわねっ! っていうかなんかイライラ? すごいわねっ!」
大分失礼なことを言いながら怖い物知らずのルーニャが話しかけてきた。
「……あなた、私の事がイヤじゃないの?」
「なんかヤな感じするけどモリモト君(エア友達)が気のせいって言ってるから気のせいよ! ふふん羨ましいでしょ」
エア友達(ギフト)によって精神の安定を常に図ることのできるルーニャは、ビーナスのギフトの影響が小さいようだ。まあ只のおバカだからなのかもしれないが。
「それより、歌うならあそこの二人のように楽しそうに歌うのよ。なんだったら混ぜてもらうわよー」
「……え……それは、ちょっと……」
拒否ろうにもルーニャはすでに歌を唄う二人の元へと走っていた。
「あぁ……どうしよう……」
さてはて、この強引なはらぺこ王女の誘引の結末は――?
「ね、せっかくだからアンタたちも出てらっしゃいよ。一緒にお花見しましょ♪」
ライトアップされた木々の中、音色を響かせ精霊達を呼ぶ。
ジルーシャの呼びかけに応じて出てきた四属性の精霊達が、気儘に虹の森で遊ぶ様に、思わずほっこりしてしまう。
ふと視線を移せば、Q.U.U.Aが何やら大きな紙を置いて花びらを乗せていた。近づいて覗き込んでみれば、まぁなんと見事な肖像画(リリィ・クロハネ)
「できたー☆(ゝω・)v」
「まあ、お見事ね」
「こんなことも出来ちゃうよ(>ヮ<)」
ドリームシアターで花びらのアートがアニメーション。色が映り変わって、さながらプロジェクションマッピングだ。
「おそらもじめんもにじいろの、ダブルレインボー!ヾ(≧▽≦)ノ」
「素敵。それじゃ合わせて一曲奏でましょうか」
木々に映る幻影と、周囲を踊る精霊。その中心で優雅に音色を響かせながら、ジルーシャは調香師らしく花の香りに興味を持つのだった。
ライトアップされた虹の森を走る。
「すごいすごーい!」
弾ける笑顔。弾む鼓動。シュテルンにとってここは夢の国だ。
「緑、ピンク、青、黄色、赤! 全部、全部、花は好き!」
心の状態を花として見えるシュテルンにとって花はとても身近な存在だ。それがどんなに良い物であっても、悪い物であっても。みんな好きでいたいと願っている。
「でも――みんな幸せ、花、咲くといーなぁ、思う、する!」
空に広げた両手が、虹の光彩で輝いた。
●舞い落ちる
人の気配の消えた虹の森。
変わらず草花は虹の彩りを見せて、多様な生命の輝きを見せている。
いずれ、この花たちも枯れ落ちて、新たな命を宿すだろう。
そうして季節を巡り、大樹が見守る中、また咲き誇る。
いつまでも、そんな夢のような場所が続けばいいと、訪れた人々は感じ思うのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
虹の森でのお花見楽しんで貰えたでしょうか? 一時の休息になったような、そんな気がします。
食い意地張ってた人はあんまりいませんでしたね。団子より花。良いと思います。
ご参加頂きありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
春ですね。お花見企画です。
深緑は虹の森でカラフルなお花見を楽しみましょう。
●虹の森について
深緑西部の迷宮森林の一画にある公園のような場所です。
植えられている木々が、どういうわけか色とりどりの花を咲かせていて、その光景は虹のようです。
広々としたスペースが広がり、簡単な運動なども出来るでしょう。
魔物はいないので、武器はソウビして無くても安心です。
●出来る事
虹の森でお花見を行います。
お花見と聞いて思いつくことなら、大体の事が出来るはずです。
一人で参加される方も、二人以上で参加される方も以下のシチュエーションを選択してください。
【1】花を見上げる。
色とりどりの花を見上げます。
木々に咲く花は大凡七つの色に分けられるようです。
好きな形、好きな色の花の下、思いを語るのもよいかもしれません。
時間帯を指定すればライトアップされた虹の森を楽しめるでしょう。
【2】料理を食べる。
用意されたお食事を戴きます。
料理はびっくりするほど大量に用意されていますので、自由に飲食を楽しんで下さい。
自前でお弁当を用意したりしても良いかも知れませんね。
食べ放題ではありません。
【3】その他
虹の森で出来る事は何でも出来ます。
迷惑にならないように気をつけましょう。
●書式
書式運用しています。
出来るだけ沿うようにプレイングを記載ください。
一行目:上記出来ることから【番号】または内容
二行目:同行PCやグループタグを記載ください。NPCにご用命ならばこちらに。完全単独もこちらに記載ください。
三行目以降:自由記載
●NPC
リリィ=クロハネ、ラーシア・フェリル、ルーニャ・エルテーシアの他、ステータスシートのあるNPCは『ざんげ』以外、呼べば出てくる可能性があります。
リリィとラーシアは久々に来た虹の森にテンションを上げています。ルーニャは一生もぐもぐ食べます。
幻想アイドルすぴかちゃんは呼べばお歌を歌いに出てくるかもしれません。
●その他
・可能な限り描写はがんばりますが描写量が少ない場合もあります。その点ご了承ください。
・同行者がいる場合、書式に従ってグループ名の記載をして頂く事で迷子防止に繋がります。
・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
・白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の参加者に迷惑をかけたり不快にさせる行動等、問題がある場合は描写致しません。
・アドリブNGという方はその旨プレイングに記載して頂けると助かります。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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