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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2018>流れ星に向かって

完了

参加者 : 35 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●流星を追う
「輝かんばかりの、この夜に」
 来たるScheinen Nacht(シャイネン・ナハト)。当然寒い。彼女──『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は人の姿を取っているとしても花の精霊だった頃があるからか、寒いのは苦手なようだった。
 そんなわけで青いマフラーをしっかりと首に巻き、シャルルはイレギュラーズを雪山へ誘った。
「雪山、って言ってもそんなに高いとこまではいかないけど。
 シャイネン・ナハトの夜は流れ星が沢山落ちるんでしょ? それを追っかける遊びがあるらしくてさ。この前の件もお疲れ様、って事で貴族から招待が届いてるんだ」
 この前の件、とは北部戦線と砂蠍との交戦だろう。鉄帝側に参戦していたイレギュラーズもいるが、それはそれ。
 それにしても星を追いかける遊び、とは。
 いや、きっと一概に遊びと決めつけるのは良くないのだ。願い祈る夜、流れるのは祝福の星。叶えてもらうために追いかけてでも祈ろうとするのなら、納得もいく──。

「えっと、縄のついた板に乗って……あ、座って、だよ。それで、雪の積もった斜面を滑り落ちるんだって」

 ──いや、ただのソリ滑りだった。
 しかも聞けば麓までのスピードを競う者もいるという。完全に遊びだ。
 コースはガチで星を追いかけるが如くの流星コースと、雰囲気を楽しめそうなのんびりコースが用意され、山の麓では飲食物の出店があったりするらしい。
「ボク? ……一応滑る予定だよ、やった事ないし」
 まだ混沌に降り立って1年にも満たないシャルル。それは人として過ごした時間と同等で、彼女の知らない事はまだまだ多い。
「まあ、向こうで会ったらよろしくね。風邪ひかないような格好にしなよ」
 きっと、雪山は凍えるような寒さだろうから。

GMコメント

●出来ること
1.そりすべりで遊ぶ!【流星コース】
2.そりすべりで遊ぶ!【のんびりコース】
3.出店を楽しむ

 皆さんは幻想貴族の招待により、流星を追う遊びに参加します。
 コースは後述の2種類。どちらも脇は高く雪が盛ってあるため、コースアウトの危険はありません。
 星が止めどなく流れ落ちる夜です。屋台なども光源は暗めに、星がよく見えるようにしています。

●1.流星コース(タグ【流星】)
 急斜面コースとか激ヤバコースとか言われます。
 傾斜が厳しく、かなりの速度で滑り落ちることができます。星を見るより遊びたい人向け。
 皆で一気に『よーいドン!』しても構いません。……が、誰かの妨害とかしようとするとソリから落ち、転がって麓に着く頃には雪だるまです。

●2.のんびりコース(タグ【普通】)
 激ヤバコースに対して普通コースと呼ばれます。
 こちらは傾斜が緩く、止まらないけど大して速くない、という絶妙な速度を保って滑り落ちます。
 1と同様、他人の妨害をすると雪だるまになります。

●3.出店を楽しむ(タグ【出店】)
 暖かい飲み物や軽食が出されています。余程のものでなければあります。また、通常のスキー場にあるような休憩所も併設されています。
 出店は外。休憩所は室内です。
 貴族開催ということで規模は大きいです。他のコースで遊ぶ一般住民も買い求めに来ています。
 これから遊ぶor遊んできて休憩、でも構いません。遊ぶ気はなく星を見に来た、滑っている人を眺めて楽しみに来た方もどうぞ。

●NPC
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)がいます。流石に冬服です。
 【流星】か【普通】にいますが、出店の方でプレイングをかけられても大丈夫です。

●注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
 同行者、あるいはグループタグは忘れずに。行き先タグは必須としません。

●ご挨拶
 輝かんばかりの、この夜に! 愁です。
 楽しく過ごせたらいいな、ということで遊びましょう。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • <Scheinen Nacht2018>流れ星に向かって完了
  • GM名
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年01月12日 22時41分
  • 参加人数35/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 35 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(35人)

竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
クロバ・フユツキ(p3p000145)
駆け出し錬金術師
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼と炎の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
剣の麗姫
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
ノーラ(p3p002582)
方向音痴
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
悪鬼・鈴鹿(p3p004538)
ぱんつコレクター
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
牙軌 颯人(p3p004994)
黄金の牙
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
閠(p3p006838)
真白き咎鴉

リプレイ

●駆ける星
 野菜が沢山入ったスープの椀を持ち、九鬼は空を見上げた。
 もうすぐ星が瞬くであろう空。この世界にも、元いた世界のように星座や物語があるのだろうか。
「星を人の命に見立てた話とかって知ってる?」
 死んだ者を流れ星と重ねて見た話。イン──刀に宿る霊はふんと鼻を鳴らした。
『信じるにしても……争いが無いこの日に星が流れるのも可笑しな話だろう』
「それもそうだね。でも──あっ!」
 思わず声を上げるも、見えた流星は一瞬で消えてしまう。
(独りぼっちじゃ寂しいし、皆で夜空を駆け回りたくならないかな?)
 そんな星への思いを汲んだかのように、段々と星が流れ始めて。

 そう──シャイネン・ナハトが、始まった。

「わぁ、凄い! 一面雪景色だよっ!」
「ねー……! どこを見ても真っ白でとっても綺麗だよ……!」
 この冬は雪や氷と沢山触れ合っている焔。けれどもソリ滑りはまだしたことがない。
「じゃあ、俺が焔にソリの楽しさを教えてあげるね……!」
 シオンは焔の言葉に微笑み、彼女の手を引いてのんびりコースへ。2人が乗り込んだのは大きめのソリだ。
「去年サンタのソリを操縦したりしたし、任せてよ……! もし転んだりしても焔は俺が護るからね……!」
 そう言って綱を握るシオン。焔はその後ろに乗り込む。
(ボクが操縦しないなら、転んで雪だるまにはならないはず!)
 水や雪との相性が良くなくとも、ソリに乗っているだけなら何も起こらない──と信じたい。
 そんな焔の願いを星が聞き入れたか、滑り出したソリはシオンに操られてするすると滑り落ちていく。頬を撫ぜる風は冷たいが、気持ち良い。空を見上げれば星が共に滑っているようで。
 滑りきった2人は飲み物で体を暖め、再び山へ。
「ほらほら、シオンちゃん! もっと遊ぼう!」
「うん……!」
 2人の顔には終始、笑みが浮かぶ。
「行くよ……飛ばされないように……ロープはしっかり握っていてね……」
 はーい、と地元の子どもたちが元気な声を上げる。完全獣化姿のグレイルはハーネスで繋がったソリを力強く引き、斜面を全力疾走で駆け降り始めた。
 ソリで遊ぶのも楽しいだろう。けれど、ソリを引っ張る役もきっと楽しいだろうと思ったのだ。
(怒られないかは……ちょっと心配ではあるかな……)
 危険でないように人のいない場所でやってはいるが、一抹の不安は残る。けれども後ろから聞こえる歓声と顔を撫でていく風は──どこか心地よい。
「雰囲気や流星を堪能するならのんびりコースよね」
「お話の限り、速度制御の機構はないのです。いきなり高速とかありえないのです」
 蛍と珠緒は言われるまでもなくのんびりコースへ足を向ける。2人用のソリに乗り、後ろの席で願い事をするのだ。
「それじゃスタートしましょうか」
 輝かんばかりのこの夜に、と2人は声を合わせ、ソリを滑らせる。前に座る蛍はとにかく安全運転を心がけた。
(人生には刺激よりも平穏が必要なのよ。家内安全!)
 なんて思いつつ、これも願いだろうかと小さく首を傾げる蛍。その後ろに座る珠緒は視線を空へ向けた。
 手を伸ばし続けることに意味があるのか──けれども、ここは折角だ。『星をこの手に』とでも願っておこうか。
 見上げていれば、ソリはあっという間に滑り落ちてしまう。次は蛍が願い事をする番だ。
 運転をする珠緒はよりゆっくりと進みたくなるような雪景色に目を向けるが──。
「はて」
 止め方を聞いていない、だが速いというわけではない。このまま進んでも良いだろう。
 蛍は流星を見上げ、ソリのバランスを崩さぬようそっと空へ手を伸ばす。当然ながら届かない流れ星は──ほんの少し、切なさを秘めて。
「冬だ! 雪の季節だ!」
「パパ! ママ! のんびりコースでお星様と競争だ!」
 リゲルの真似をして拳を空へ突き上げるノーラ。2つのコースを見てのんびりコースを指す。
「寒いのにノーラは元気だな」
 小さく微笑むポテトは2人とのんびりコースへ向かい、ふと首を傾げた。3人乗りのソリはあるのだろうか。
 聞いてみれば2人用までということだが──。
「まあ、3人でも何とか乗れるだろう」
 ぎゅうぎゅうと密着する形でノーラ、ポテト、リゲルの順に座る。
「アークライト号しゅっぱーつ!」
「え、いつの間にソリに名前が……?」
「カッコイイじゃないか。しゅっぱーつ!」
 ゆっくりと滑り出すソリ。わぁ、と前の2人から声が漏れる。
「あ! 上見ながら滑るとお星様凄く綺麗だぞ!」
 ノーラはほわ、と口を開けて空を見上げる。止まっている星もまるで動いているみたいだ。本当だな、とポテトも頷く。
「流れ星が沢山だ。あの星の中にリゲルとシリウスもあるんだよな?」
「ああ。落ち着いて探せばすぐ見つかりそうだな」
 どちらも冬の星、加えてここまで星空が美しく見えるのだ。その特徴を捉えるのに時間はかかるまい。
「後でゆっくり探そう」
 ポテトが肩越しに振り向いて微笑めば、リゲルもまた愛おし気に微笑み返す。
 あっという間に滑りきるとノーラが立ち上がり、もう1つのコースを指差した。
「面白かったー。今度は流星コース行ってみたいな!」
「流星コースにも行くのか……」
「ノーラはチャレンジャーだな。でも、その前に休憩も大事だ」
 リゲルの言葉にノーラは元気に頷く。頬も耳も赤くなるほどの寒さだ、何か暖かいものを買おう。
「ちょっと休憩したら次は流星コースだ!」
「そうだな。小腹が空いているなら、軽く摘まむものも買おうか」
「うんっ!」
 ノーラの手をポテトが握り、もう片方の手を「パパも!」とノーラが満面の笑みと共に出す。リゲルも微笑んでぎゅっと握り返せば、ノーラが2人の手を引っ張って──その姿はまさしく『家族』だった。


●星なんて越えて行け
「いっしょにあそぼ」
 セティアの声かけにより、彼女とヴァリューシャは共に流星コースへ。2人は仲良く雪山を登って行く──かのように見せかけて。
「いっとくけど私、ぜったい星においつくから。流星になるから」
「星に追い付くのはこの私! 幻想でぬくぬくと育った貴女に負ける気はしなくってよ!」
 謎の火花を散らしていた。
 鉄帝育ちの鉄騎種にとって、雪山は庭も同然。けれどもセティアだってソリに乗ったことはある。
(……たぶん。人生で1回か2回くらい)
 流星コースのスタート地点に降りれば、下からひゅうと風が吹きあがった。ヴァリューシャが顔を引きつらせ、セティアは「やばい」と小さく呟く。
「ね、ねえセティア。折角だから一緒に滑らない? 私、付き合って差し上げてもよろしくってよ!」
「! やばい、うれしい、ありがとう」
 セティアはぱっと顔を綻ばせた。
(1人で滑るのぱない。これ、がちめにこわい)
「わっ、ちょっと押さな──やあーーー!!!」
「!!!!」
 後ろに飛び乗ったセティアの衝撃でソリが動き出す。勢いよくソリは滑り出し──ヴァリューシャの悲鳴は麓まで続いた。
「うわわ、すっごい急斜面だね!」
 次いで驚くミルキィ、しかしそこには先の2人のような怯えは見られない。
「そりを滑るのは初めてだけど、トップで駆け下りれるようにガンガンスピード出していくよー☆」
 ……むしろ、『星を追いかけるコースだ』と納得した上でやる気満々であった。
 勢いよく滑っていくミルキィは、ふと目を瞬かせる。
(これ……ブレーキってどうかければいいんだろう?)
 通常のソリにブレーキは存在しない。つまりはまあ、これも然り。
 ぐんぐんと進んでいくミルキィの姿はあっという間に小さくなっていく。
「乗り物に乗るのは何回かあったけどソリは初めてかな? ミア、よろしくね」
「にゃふふ、最速はミア達……誰にも……まけにゃいの……!」
 ティアの言葉にミアの瞳がキラリと光る。問題ない、配達屋として乗り物の扱いは一通り押さえているのだ。
『ぶつからないようにな』
 ティアの胸元にある十字架から発せられる声と共に、2人を乗せたソリが走り始める。
「ミア社長のソリ滑りテクニック……とくと見よ……なの!」
 斜面を高速で滑り落ちるソリ。ティアは風景や楽しそうなミアの様子に目を細める──が。
「にゃああああっ!?」
「ミア!?」
 曲がり切れずに真白の壁が迫る。思わず目を瞑ったミアを抱きしめ、ティアは雪へ投げ出された。
「いったぁ……ミア、大丈夫?」
 腕の中へ声をかければ、恐る恐るミアが目を開ける。怪我はなさそうだ。痛くないことに不思議そうな表情を浮かべ、ティアが守ってくれたことに気付くと猫耳をへなりと伏せた。
「うにゃ……ごめんなの。今度は失敗しない……の」
『調子に乗るからそうなるんだぞ?』
「まあまあ、楽しかったからいいんじゃない?」
 再びソリに乗る2人。まだミアは最速を譲らないらしく、速度を上げていく。ティアはその様子を見ながら小さく微笑んだ。
「う、わあ……っ!」
 崩れそうになった体勢を持ち直し、シャルレィスはにっと笑みを浮かべた。
 星に追いつき、願いを叶えてもらうにはまだ足りない。
「もっと! もっと速く! いっけー!!!」
 加速するソリ。ふと視線を上げればそこにあるのは一面の星空。ふと、思う。
 願い、願望。それが届くものであるのなら、空へ手を伸ばせば星にも届くのだろうか。
「──って、前方不注意ー!?」
 ごろんごろんと転がったシャルレィスは雪まみれになって空へ笑った。
(……やっぱり願い事は自力で叶えないとね!)
「ひゃっほー!!」
 大きな跳躍と共に斜面へ飛び込んだQ.U.U.A.は──ソリなど使っていなかった。1度バランスを崩せば雪だるまへまっしぐらなのだが、そこは自らのバランス感覚で転倒せずに済んでいる。
「こんなこともできちゃうよー!」
 ジャンプ台でバク転をしたり、トリックを決めたり。果てには逆立ちヘッドスピンを決めようとして──。
「おおっと! でもだいじょうぶ!」
 ごろごろと雪だるまになるも、Q.U.U.A.はニコニコ顔。なにせ流れ星にもなり、雪だるまにもなったのだ。
「1回で、2つおいしい!」
 まだまだ楽しいも面白いも、終わらない。
 嬉し気に尻尾を揺らすヨルムンガンドがシャルルを誘い、流星コースへ連れていく。
「以前、空を眺めて流れ星を追いかけた時があったんだ」
「……どうだった?」
「暫くしたら虚しくなったが……」
 1人ではなく、2人なら。
 ソリを滑らせ始めると一気に加速する。思わずシャルルは顔を引きつらせた。
「大ジャンプするぞ……! 私たちが星になるんだ!」
「はっ? まっ、ヨルム──」
 止める間も無く浮遊感が襲う。のちに2人は雪の斜面を転がり、雪塗れになりながらヨルムンガンドはシャルルへ笑いかけた。
「へへ……空飛んでるみたいで楽しくなかったかぁ?」
「吃驚、した。……でも」
 ごろり、と空を見上げたシャルルは目を閉じ──小さく口角を上げる。
「……うん。悪くない」
 結乃はずりずりと2人用のソリを引きずり、華鈴の元まで運んで来て滑ろうと誘う。
「コースは2つあるって。のんびりとのんびりじゃないやつ……っぽい」
「少しくらい速い方が面白そうじゃな」
 速度を楽しみたいと思いつつ、2人で滑るのだからと結乃にも問う。
「後ろからおねーちゃんにしがみつくから、速い方でもだいじょうぶ!」
 結乃の言葉に華鈴は頷いた。
 ──しかし、華鈴は慢心していたのだ。危ないことはないだろう……と。
 スタート地点でソリに腰かけた2人の顔が強張る。だって斜面が見えない。
「おおおおねーちゃんこれ、斜面なの? 崖って言わない?」
「う、うむ……ちょっと想定とは違うのぅ。これならのんびりコースの方が良さそうじゃ……あ」
 引き返そうとしたが誤ってソリは進む。2人を包む浮遊感、そして打ち付ける風。
「おねえちゃんが楽しいならいいけどまってやっぱりああああ!!!」
 耳元で聞こえる悲鳴に遠い目となりながら、華鈴は思った。
 これはこれで楽しいけれど、次はのんびりがいい。
 そんなコースのスタート地点、たしりと踏みしめる足が雪に沈む。
「にわとり代表として、このコースは制覇させてもらうわー!」
 ばさりと純白の翼を広げるトリーネ。その近くには小さなソリ(っぽいもの)が置かれている。ソリがなくとも、形がそれらしくあれば良いのだ。
「……あ。だ、誰か押して! スタートができないわ!」
 足をバタバタさせつつ押してもらう。速度は上がっていくがニワトリに不可能はない。故に問題はな──。
「あ、まず……このカーブは……こけえええぇ!?」
 ごろごろごろごろ。
 雪だるまと化したニワトリは雪だるまって冷たいのねと感想を残し──伸ばしかけた翼がパタリと力を失った。
「シエラちゃん、こっちこっち! どっちが先に、ふもとへ到着するか競争しませんか?」
「やるやる! 負けないよー!」
 セレネとシエラは仲良く流星コースへ。斜面へ視線を移したシエルはすっと血の気が引いていく音を聞いた……気がした。けれども再びセレネを見れば、彼女はその恐怖より好奇心の方が勝っているようで。
(タクマシクナッタツヨイ……)
 ここでやめるなんて言いだせない、かといって滑るのは死と同義にすら感じられる。
「れっつごー! きゃーーー!」
 飛び出すセレネに釣られるシエラ。思わず発動したギフトにより無表情に見えるが──。
(でも全然怖いでーす!!)
 恐怖までは無に変えてくれない。けれどもここはやらねばならぬ時。
「エターナル・イレギュラーズドリフトォォォ!」
 巧みなソリ捌きは先行くセレネに並び、接戦を繰り広げる。悲鳴を上げつつも楽しんでいたセレネは彼女の白髪を見て目を細めた。
(お揃いになったみたい)
 同時のゴールを決めた2人。目を回したシエラへ駆け寄ってセレネは抱きつく。それは「楽しかった」を全身で表すようで。
(……でも、成長したセレネを見れたのが1番楽しかったな)
 なんて、シエラは思うのだ。
「……自慢ではありませんが。私の運動神経的にソリを滑るというのは不可能に近い御業なわけです」
 何か言いたげな様子にアンナが促せば、樹里からはそんな返事が返ってきた。それだけではない、まだ続く。
 魔砲のように発車されればさしもの樹里も滑れるのでは、とか。最初から雪だるまになる、とか。
 樹里はドヤ顔でアンナを覗き込む。
「どうでしょうか」
「…………」
「どうでしょうか!」
「雪玉が前提の時点で却下。というか普通に転がるより酷そうなのだけど」
 ばっさりと切られ、アンナと同じソリへ乗ることになった樹里。ぎゅっと抱きつき、悪戯をしないと真剣な顔で言い募る。
「絶対に何もしないでね。良い? "何一つ"余計な事はしないで」
 言葉を強調して前を向くアンナ。油断ならない対象を後ろに置いておくのは不安だが、前に乗せたら確実に手元を狂わせて転ぶ。
(なんでその運動神経で、このコースを希望したのかしら)
「……ひぅっ!?」
 つつ、と脇腹をなぞられる感触。一瞬ののち、手元がぶれて派手に横転した。
(前でも後ろでも危険だわ……)
 なんて思っても時遅し。
 残るは漆黒と紫銀、1対の人影。
「へぇ……激ヤバコースだなんて、もはやこれはアタシへの挑戦ね」
 目を細めるルーミニス。その傍らでいち早くクロバが動き出す。
 このために装備を軽量化、知人からブースターを譲り受けた。スタートダッシュをミスるなど許されない。
「さあ、漆黒の流星が瞬く今この刻(とき)を──その目に焼き付けろ!!!!」
 極限まで高めた力は黒を白へと染める。赤の瞳を前方へ、クロバは勢いよくコースへ飛び出した!
「流星、ね……なら、その流星がアタシを追いかけてくるような滑りを見せてあげるわ!!」
 ソリに飛び乗ったルーミニスは空気抵抗を減らすうつ伏せのスタイル。流星コースを滑ろうとしていた一般人がぎょっと目を剥き「おい、」と止めようとするが、クロバ以上のスピードで滑って行ったルーミニスはもう見えない。
 双方に負けたくない、妨害なしの真剣勝負。
 追い抜き追い越され、互いにできる限りの最高速度をキープする。何人抜かして注目を浴びようと、彼らが意識しているのはお互いだけだ。
 不意に雪の中へクロバが消え、それを避けたルーミニスは勝利を確信した。
 だが。
「──まだだ!」
 はっと視線を後ろにやれば、猛然と滑り落ちてくるクロバの姿。麓は目前、彼が追い付く前に逃げ切ればルーミニスの勝ちだ。
 2人はスピードを落とさず、むしろ加速して降りて行き──周囲からは同時と見えたが、本人たちは如何だろうか。


●流星を見上げる
「……やっぱり一緒に居たらその内バレちゃうわよねぇん」
 ぽつりと呟いた輪廻。カップを脇に置き、仮面と髪へ手が伸びる。酒へ口をつけていた鈴鹿は、輪廻の姿にこれ以上ないほど目を見開いた。
 輪廻は鈴鹿に「ただいま」と言って微笑みかける。
「隠していてごめんねん? 鈴鹿ちゃんが私のせいで人を恨んでるみたいだったから、それを乗り越えて貰いたくて隠れてたのよん」
 鈴鹿は震える唇で輪廻の名を紡ぐ。
 気づかなかった。いや、違うのだと思い込んでいた。自分の前で死んだ大切な人と同じ名の、赤の他人なのだと。
「……ごめんなさい。今まで気づけなくて……沢山、私の嫌な部分を見せちゃって……でも、」
 許されるのなら──もう1度、慕わせてほしい。
 鈴鹿の言葉に輪廻は目を細め、その頭を優しく撫でた。
「勿論よん。これからは絶対に、離れないからねん?」
「……はい! お帰りなさい、輪廻姉様!」
 泣き笑いの表情を浮かべて輪廻に抱きつく鈴鹿。それを周囲は温かく、または何事かと見守っていたが──誘惑するように肌を晒し始めた2人へ毛布が飛んできたのは、また別の話。
 そんな出店からほど遠く離れた、山の上空で。
 真白い、もこもこに着こんだ飛行種がふわりと飛んでいく。雪のような髪に紛れ、鈴がリンとその身を揺らす。
 木の天辺へ降り立った閠は鈴の反響音で人が居ないことを確認し、上を向いて垂れ布を外した。
「ふわあ……」
 小さく溜息が漏れる。
 人が居ない場所に向かったのは、呪いとも思えるような贈り物(ギフト)を発動させないため──そして、何を願うか考えたいという事もあった。
 けれど、そんな悩みは星を見た途端消え去って。
(……こんなふうに綺麗なものを、また見られますように……うん、今はそれでいいよね)
 だって両手で包んだココアのカップは暖かく、空を駆ける星はこんなにも──美しい。
 場所は戻って出店場。ふらふらとクリスティアンがやってくる。
「ま、まさか流星コースで転がり落ちるなんて……」
(あの瞬間、背中に何かが当たったような気がしたけど……)
 まさか故意に落とされた──なんていやいやそんなわけは。だってそうだとしたら犯人は──。
「寒かったね……!! 雪冷たかったね王子!! あそこのお店寄ってちょっと暖まっていこうよ!!」
 ──クリスティアンを出店へ導こうとするロクになってしまうのだから。
 ポタージュを買ってほっと一息つくクリスティアンの傍ら、ロクが「わたしこの姿でも受け取れるよ! ほらおてて!!」と前足を差し出してホットミルクを受け取る。
「王子も何か買った? ひと口ちょうだい!」
 彼女の言葉に「ポタージュだよ」と言いながら器を渡すクリスティアン。猫舌ならぬ犬舌はあるのだろうかとも考えたが、少なくとも熱いものは苦手でなさそうか。
「さて、身体も暖まってきたことだし、もう1回滑りに行こうよ!」
 そんなことを考えていたクリスティアン、ロクの発言に顔を強張らせた。
「いや、僕はもう、」
「大丈夫だよ!! もうわざとソリから突き落としたりしないよォ!! 雪だるまになった王子をそのまま放置したりしないよォ!! おねがい信じて!!」
「ちょっと待ってよ、わざと突き落したりしないって言ったかい? 僕が助けを求めるのを見えないふりをしていたのかい!?」
 ロクを振り向けばそこにはキラッキラの眼差しでクリスティアンを見つめるコヨーテの姿。思わず逃げ出した彼をロクは追いかけ──流星コースのスタート地点まで追っかけ回した。
 その流星コースから滑り降りてきたアオイとアーリアはぐったりと即席ベンチへ座り込んだ。
「あ、あおいくん生きてるかしらぁ……?」
 屍のようなアオイをつつけば「なんとか生きてる……」と消え入りそうな声が返ってくる。
 アオイはのんびりコースに向かうはずが、心構えも準備もできずに流星コースへ連れていかれ。アーリアも悲鳴を聞いて楽しんでいたはずが、うっかり転倒に巻き込まれ。辛うじて雪だるま化は避けられたものの、2人ともグロッキー状態であった。
「叫びすぎたし、暖かい飲み物でも飲みましょー?」
 この休憩中に生き返っておかねば、と2人は出店を眺め見る。片やが選んだのは甘いホットココア、もう片やが選んだのは体の温まるホットワイン。各々温かいカップを持ちながらほう、と息をついた。
「それにしても、滑る前にお酒を飲まなくてよかったわぁ……飲んだ後だったら……」
「いや、俺だったら滑った後でも酒とか飲むのは……」
 うぷ、と口元を押さえ。2人はぐったりとしながらひと時を過ごす。
 そんな彼らよりは幾らかマシか。しかし颯人も舞花もどこかしらに雪を積もらせていた。颯人は苦笑しながら頭の雪を払う。
「それなりに運動神経には自信があったのだが、ダメだったな」
「これはこれで、技術とか……あるか。競技で聞いた事あるような気がする。難しいものですね」
 もはやこれは小さい子のお遊び、というより大人の競技に近い。
 お茶を颯人から受け取った舞花は礼を言いつつ、暖かなカップを両手で包んだ。疲れへ追い打ちをかけるような冷たさが幾分か和らぐ。
 颯人は小さく息をつく舞花からそっと視線を移した。
 先程は気にする余裕さえなかったが、改めて見上げれば星も美しく感じるもの。
「……今日はそれなりに疲れはしたが、面白かった。これに懲りず、また良ければ付き合って貰えれば有難い」
 その言葉に舞花は颯人へ視線を送り、次いで同じように星空を見上げた。
 空気の澄んだ冬の空は星が良く見え──悪くない、と思わせて。
「こういう事に誘われた事もあまり無いので。また是非に」

 今宵はシャイネン・ナハト。
 約束も、願いも。どうか叶いますように──。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 冬のひと時、お楽しみいただけたでしょうか。
 再びご縁がございましたら幸いです。

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