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シナリオ詳細

雪の貴婦人のクロック・フラワー

完了

参加者 : 27 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 悴む掌を合わせれば、白い息が指先を辿る。
 纏う光の色さえも、全てが別物に見える――穏やかなる世界に心鎮めるは、戦乱の気配が遠ざかったからか。
 幻想の纏う冷たい気配は、顔色変えた季節のちょっとした悪戯。
 頬を紅に染めて仕舞う程に凍える風は雪の貴婦人の溜息とも言われている。
 密やかに。
 まるで、ささめきごとのように、色付く花時計はカチコチと音を立てて。


 冬物のコートを着込み、両手を擦り合わせた『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)はけほんと小さく咳き込んでみせた。
「寒いですなぁ……」
 何処か、困った様に発されたその声に『聖女の殻』エルピス(p3n000080)は小さく首傾ぐ。彼女の過ごした白き都でも、この季節になると冷たい風が吹いて居た事だろう。
「……冬、でしょう?」
「冬、です。学園物アニメの冬景色って手を繋ぐとかそう言うドキドキシーンがあって盛り上がって――」
 やけに饒舌に。首傾げた儘、『知識にない事をいわれている』と理解しているエルピスにそう言った雪風は幻想国内を騒がせた『新生・砂蠍』がひと段落したのだと、幼子の様にローレットの暖かな暖炉の前で座っていたエルピスに告げる。
「それは――罪なき人々が傷つけられないということ、ですか」
「そう。救ってくれたみんなに礼を込めて、誘ってみようと思うんすよ」
 どちらへ、と乙女は告げた。
 うろうろと彷徨う紅の瞳は何所か恥ずかし気に。シャイネン・ナハトを控えた頃、向かうは温かな場所が良いだろうかと彼は小さく告げる。
「幻想に『イイバショ』があって、エルピスも気に入るとおもうんすよね……」
「いいばしょ――」
「鍾乳洞なんだけどさ、冬はあったかいの。そこに鉱石の花で出来た時計があったりとか」
 その風景がとても美しいのだ、と。彼はそう言った。
 鮮やかに光を纏うは、岩の間から漏れ出した真昼の太陽のおかげか。
 宵と陽が混ざり合う――その場所へ、さあ、行ってみようではないか。

GMコメント

全体依頼お疲れさまでした。日下部あやめです。
のんびりとお過ごしいただければと思いご準備を。

●雪の貴婦人の鍾乳洞
 凍える空気は雪の貴婦人の溜息ともいわれる鍾乳洞です。
 貴婦人のドレスの様に裾の広がる鍾乳洞。暖かな温度を感じる事が出来ます。
 奥へ、奥へと進めばあちらこちらに鉱石の花が咲いています。
 鉱石の花で出来た時計(クロック・フラワー)が美しく、冬になれば冷たい空気と混ざりながら陽の光が差し込み幻想的な風景を見る事が出来ます。

●行動
以下をプレイング冒頭にご記入くださいませ。
※行動は文字数短縮の為に数字でOKです。是非ご活用くださいね。
同行者:グループタグやIDを冒頭にご記載ください。
時刻:【朝】【昼】【夜】
行動:【1】【2】【3】


【1】雪の貴婦人の鍾乳洞へ
美しい鍾乳洞を観光します。少しばかり足場が不安定ですのでお気を付けください。
危険性は何もございません。
雪風はこの季節に見ることのできる場所で平和だからこそ行けると皆さんにお礼の意味を込めて、ご紹介したい場所だそうです。

【2】温かな暖炉の小屋で休憩
軽食と、温かな暖炉を楽しむことのできる小屋です。
エルピスにとっては暖かな暖炉が物珍しいのですが――

【3】その他
何かございましたらご提案ください。冬空はとても寒いので防寒にはお気を付けを。
シャイネン・ナハトに向けて、拾った鉱石の花を加工したプレゼントも良いですね。
小屋で行う事ができるらしいので、よろしければ参加してみてくださいませ。


●NPC
 山田・雪風とエルピスがおります。
 お声かけがなければ出番はありません。
 余り何も考えてませんのでもしも、何かございましたらお気軽にお声掛けください。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

  • 雪の貴婦人のクロック・フラワー 完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年12月28日 23時00分
  • 参加人数 無制限
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 27 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(27人)

十夜 縁(p3p000099)
水底の冷笑
エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)
夜鷹
ポテト チップ(p3p000294)
優心の恩寵
サイズ(p3p000319)
隠名の妖精鎌
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
青き鼓動
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
リゲル=アークライト(p3p000442)
死力の聖剣
シグ・ローデッド(p3p000483)
タクティシャン
ニーニア・リーカー(p3p002058)
混沌の名所マップ作成人
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
クーア・ミューゼル(p3p003529)
こげねこ
藤野 蛍(p3p003861)
いいんちょ
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
ノースポール(p3p004381)
白金のひとつ星
シラス(p3p004421)
特異運命座標
桜咲 珠緒(p3p004426)
メイメイ・ルー(p3p004460)
さまようこひつじ
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
トーンいらず
リヴィエラ・アーシェ・キングストン(p3p006628)
水晶角の龍
シュテルン(p3p006791)
星頌花
ヨシト・エイツ(p3p006813)
いいひと
トゥヨウ(p3p006822)
鉄打つ涙
メルティス・ローゼ(p3p006863)
ローゼン・シーカー

リプレイ


 空より散る白は、息を色付かせその指先に冷たさを運んでくる。
 赤く染まる指先を擦り合わせ、吐息を吹きかければ暖かさが感じられて。
 凍えるその場所に落ちる雪は貴婦人のドレスを彩るレェスを思わせて。
『雪の貴婦人』は冬空の下の客人たちへと、静かに微笑む事だろう――

「なんて美しいんだ……貴婦人のドレスと呼ばれるだけはある幻想的な景色だね……」
 冴える冬の空気の中を歩みながらクリスティアンの吐く息は白い。
 吐く息さえ凍り付ききらきらと輝きを返すそれに見惚れるように美しいと彼は呟き――「うわぁッ!?」
 ずるり、と足を滑らせた。凍て付く岩に尻もちをつく様に滑った彼は誰かに見られていないだろうかと周囲を見回し、雪風と目が合ったのはここだけの話だろうか。
「わ、わ……こんな、場所もあったのです、ね……!」
 メイメイの指先が鉱石の花を撫でる。美しい雪の貴婦人たちに、心が躍り転んだクリスティアンを見つけて「大丈夫です、か……?」と首傾ぐ。
「あ、ああ、大丈夫だ」
 すぐさま何時もの通りに笑みを返したクリスティアンに雪風とメイメイは顔を見合わせ、小さく笑う。
「またひとつ、すてきなものと出会うことが出来て嬉しい、です」
 たどたどしく紡いだ言葉に雪風は「心、洗われるよな」とうんうんと頷いた。
 いつでも、誰でも――こうして、この景色を楽しめるような日々が続くように。
(がんばります、ね…)

 明かりを消して、息を潜めて――光を差し込む時間を待つようにアレクシアは貴婦人のドレスの間を見遣る。
「みんな死んだ後はどうしてるのかな」
 響くのは互いの声だけ。シラスは囁くようにアレクシアを呼んだ。
「俺は考えるのが怖いよ、でもそれが頭から離れないんだ」
 シラスの脳裏に浮かぶのは兄と母。あの二人に会いたいのではない、『会いたくない』のだ。魂がなければ――そう、思ってしまうけれど。
「死後の世界か……私はあって欲しいんだよね」
「……死んだら何もなくなるなんて寂しいって、どうして?」
 シラスの問い掛けにアレクシアは唇をん、と尖らして曖昧に笑みを浮かべる。
「生前敵対するしかなかった人とも、もしかしたらやり直せるかもしれない。そんな望みが捨てられないから」
 だって、自分はうんと長生きなのだ。皆、先に過ぎていくから、それはとても寂しくて、もう一度でいいから笑いかけて欲しい――なんていうのは我儘だろうか。
 本当にそう、かな。変わるのかな。
 淀んだそれが消えるように、袖で目元を擦って「暗いね」とシラスは小さく呟いた。
 そうして差し込む光は、ほら、冷たい花をも暖かに変えていって。

「雪の貴婦人……雪の女王とか、どこかで聞いたような気はしますが、別物ですかね」
 防寒具に身を包み珠緒は蛍に手を引かれて歩む。もこもことした着ぶくれ姿が可愛らしいと笑う蛍は鍾乳洞の中は暖かいのね、と不思議そうに瞬いた。
「ふむ。これはあれですね……。外ほどには、季節による変化がないのでしょう」
「気を付けてね。周りに見惚れてると足が滑っ――」
 気を付けますと小さく笑う珠緒に身を張って『例』を見せた蛍の頬が赤く染まりゆく。気を付けますね、と頷いた珠緒の手をちょいと引いて蛍は「見て」と子供の様に微笑んだ。
「本当に綺麗な景色……一生忘れられない思い出になるわ」
「これが、石の花……永い年月をかけ、生まれたものなのでしょうね……」
 それは知ることのない歴史を物語る様に咲き誇る。珠緒がぼんやりと呟く言葉に蛍は緩く頷いた。
「召喚がなければ、桜咲の余命は数か月ほどであったと思います。
 お友達ができ、思い出を作れ……混沌様様です。段々と、欲がでてきてしまいますね」
「一緒に観光できて……桜咲さんが自分の目と足で楽しめるのも、召喚されたからこそ、なんだよね。そう考えると、こっちの世界も悪くないかもってボクも思えるんだ」
 この思い出を大切にして――鍵に付けられる小さなキーホルダーにしよう。忘れられない、思い出に出来る筈なのだから。

 足場が悪くても飛べるから。けれど、万が一が無いように空を飛んでいこうと提案するルチアーノにノースポールは頷いた。
「ふふっ手袋越しでも温かいね。
 早起きした甲斐があって、クロック・フラワーが綺麗だね」
 ゆっくりと時を刻むそれを見遣りながら微笑むルチアーノにぴたりと体を寄せてノースポールは「キラキラしてて、不思議な場所だね」と瞬いた。
「時の流れは変わらないはずなのに……クロックフラワーの針も、ゆっくりに感じるよ」
 二人一緒だからこそ刻まれる時が嬉しくて――
「思えば地球にも観光地は沢山あったけど……こんな和やかな気持ちで鑑賞したことはなかったよ」
 ノースポールと一緒だからこそ、こうして穏やかに景色を見て、その心が幸福に溢れるとルチアーノはノースポールへ微笑みかけた。
 お互い傷だらけ。けれど、こうして時を重ね、言葉重ね、想い重ね――クロック・フラワーが刻む秒針の1つ1つが重なる喜びを溢れ出させるから。
「辛いことがあったとしても今日のこの時間を支えに、頑張っていけそうな気がするよ。ポー、これからもよろしくね!」
「今日という日が、時計の針に置いてかれても……。
 私も、いつでも思い出して頑張れるよ。こちらこそ! よろしくねっ♪」


「楽しみで眠れなかったとか、わたしは子供か……」
 小さくぼやいて、メルティスは桜色にも近い銀髪をふわりと揺らした。
 暖炉の前に腰かければ、暖かさがどうにも心地よくて――歩いて見て回ったクロック・フラワーの感動も微睡の中に落ちていきそうではないか。
「あー……眠い?」
「ああ、大丈夫……。そうだ、鉱石の話なんだけど」
 欠伸をかみ殺し、メルティスが雪風に告げるのは本で読んだという知識。この世界の出身ではない雪風にとってそれは珍しく面白そうに彼は幾度も瞬いた。
「夜になれば、星を見たいから……」
「なら、体験が終わったら一回寝て夜に備えるのもいい……んじゃないかな……」
 俺もアニメ見るためによくやった、なんて小さく告げられたそれにメルティスは緩く笑みを浮かべて。
 デート。そう呼べば何所か気恥ずかしさが心に登る。レイチェルは頬を赤らめながら、シグと共に鍾乳洞へと足を踏み入れた。
「……ふむ。いつも以上に緊張してないかね? 滑って転倒したら大変だからな――」
 シグは少し揶揄う様にレイチェルの指先をそっと掴み上げる。寒いからといつも以上にフードの外套を下ろした彼女の頬にはいつも以上の朱が差し込んでいた。
「成程……中が乱反射するような構造になっているのか。だからこうも光り輝くと」
 その性質からか蘊蓄を口にするシグははっとした様に口噤む。
「……すまんな。どうも純粋に楽しめない性格……なのかも知れん」
「いや、興味深いぞ?」
 愛しい人が話すことなら何だって、楽しいもので。月の光も好きだけれど、陽の光も悪くないと瞳を輝かせたレイチェルは小さく笑う。
 一際美しく見えた華一輪。こっそりと、贈り物として感謝を込めて貴方へ――いつもありがとな、シグ。
「幻想にこんな綺麗な場所があるなんて知らなかったよ。
 混沌生まれの僕でも知らなかったのに、雪風君はよくこんな場所知ってたね」
 何時も配達で飛び回ってるから名所は知ってると思ったんだけどなぁと少しばかり悔し気に言ったニーニアに雪風は「へへ」と小さく笑う。
 折角知った美しい場所。サーカスの一件が終わった後もまた忙しくなったからと全力で休むニーニアは「クロック・フラワーも見てみたいけど、道中も綺麗なんだね」とその丸い瞳を輝かせた。

「すごくすごくきれいだった!」
 想いを込められたら嬉しいとシャルレィスは拾った鉱石の花を懸命に加工する。
 小屋のアドバイザーに聞いて初心者でも作れそうなオススメは簡単なブローチの様で。
「あんまりこういうの作った事ないからなぁ……うーん、あ、これだと少し太陽みたい?」
 試行錯誤しながら空飾る真冬の太陽の様に大輪をブローチの土台に飾ればキラキラと光を帯びる。
「大変だったけど、なかなかうまくできたよね?」
 光に翳せばそれは鮮やかな色味を帯びて――冬空を暖かに照らす様に輝き返す。
「これならプレゼントにしても大丈夫かな?」
 こくこくと頷くエルピスにシャルレィスは嬉しそうに笑みを浮かべた。
 折角の誘い。折角の鍾乳洞。ふらりと寄ってはいいけれど一人は何処か詰まらないと竜胆は悩まし気に呟いた。
「雪風。エルピス。軽食でもどうかしら?
 一人も何だかつまらないし………まっ、一人になりたいって時もあるけれど、ソレはソレってね」
 こく、と頷くエルピスと軽食を選ぶ雪風を見遣りながら竜胆はくすくすと笑う。
「雪風とこうして話すのもお誘いの時に顔を合わせた位だったかしら?」
「あー……かもっすね。オンナノヒト、苦手で、」
 その、ともじもじという雪風に竜胆は「だからもう暫く付き合ってくれると助かるわ。ほら、軽食位で良いなら奢らせてもらうから。ねっ?」と冗談めかす。
「いや、勿論、めっちゃ誘って欲しいってか……」
「はずかしがり、らしいです」
 ぱち、と瞬くエルピスに竜胆は可笑しそうに小さく笑う。
「ねえ、エルピス。暖炉が気になってるみたいだけど、どうかしたの?」
「あの……見た事が、あまり……」
 そうしている所にずばんと飛び込むはミーア。
 飛んで火に入る冬のねこ。流石はこげねこ、と言った調子の彼女は心躍らす様に暖かな暖炉に飛び込んでゆく。
「暖炉なのです! 流石雪国、大規模なのです! いただくのですーーー!!!」
 煤が周囲に飛び散れば精霊たちがその後を片付けるように姿を現した。
「あの……」
 エルピスはきょとんとしたままミーアを見て竜胆に首傾げる。
「暖炉は――飛び込む、もの、ですか……?」


『エーリカ』はその姿を宵の下で躍らせた。闇色の外套を纏わず、差し伸べた指先に聖女の殻はぱちりと瞬く。
「わたし、エーリカ……わ、わかる?」
「ええ……ええ……ふふ、聞こえます」
 心に語り掛けなくても聞こえている。その聖女としての声音とは違う少女の、柔らかな声。その耳朶にもエーリカの声が聞こえていると――只、それだけで、エーリカはとてもうれしいと息を付く。
「あの」
 もじもじと、縮こまり乍らエルピスの掌に乗せたのはちいさな、淡く輝くひかり。
 精霊たちと作り出した、ともしびの星。エーリカが『ねがいぼし』と呼んだそれをエルピスは指先で転がして。
「一生懸命つくったの」
「エーリカ様が……?」
 こくり、と頷いて。エーリカがおずおずと下ろした指先を追い掛けてエルピスはきゅ、と握る。
「あのときあなたが伸ばしたてのひらは、ちゃんと、ひかりに届くんだって。
 それをかたちにして伝えたくて…………もらって、くれる?」
 頷いた蒼と青がぶつかり合った。 
「ね、エルピス。わたし、……あなたのおともだちに、なれるかな」
「わたしを、おともだちとよんでくれるのですか」
 それは、とても嬉しくて――ああ、どこか、気恥ずかしい。
 鍛冶師であるトゥヨウは何か作りたいけれど、と周囲をきょろりと見回した。
「あの、……何かを作ると、聞いて」
 ぱちりと瞬くエルピスは雪風の背後から「何か、作って頂いても」とおずおずと小さく呟く。
「ええ。大丈夫ですよ」
 御禁制の酒をお供えし、石と大地に感謝したトゥヨウは初めて触る素材を確認しながらデザインよりも確りと確かなものを作る為にその手を進める。
 鉱石そのものを楽しむケースに小振りな花を限界まで薄くしたレターセット。クロック・フラワーの性質を残すため――指輪に透かしを掘って時計にと、作業を進める彼女にエルピスは「きれい、ですね」と何処か嬉しそうに囁いた。
 黙々とクロック・フラワーを木箱に収めて加工する作業を進めるヨシトは時計としての機能がなくとも置物に出来るだろうと手を進める。
「それ、どこに送るんすか?」
 問う雪風に、ヨシトは「実家のエイツ家に決まってんだろ」と素っ気なく言った。
「あの家、鉄帝らしく脳筋の集まりだからあんまし華美な飾りなくてなぁ。
 せめてこういう綺麗なモンの一つでも置いて、余裕ある名門らしさを出してもらわんと……おい止めろ、なんだその生温い眼差しは!?」
「え、いやあ……」
 ツンデレが家族の為に頑張ってる――なんて雪風が暖かな視線を向ければヨシトが違ぇと反発し続ける。
「違うからな! ?別に家族のためじゃねぇよ!
 あの家が脳筋の集まりとか見られたら廻りめぐって俺まで脳筋に見られるだろうが!?」
 騒ぐその様子を眺めながらラクリマは鉱石の花を手に加工するぞと意気込んだ。
 白い指先がしっかりと鉱石を握りしめる様子をじ、と見つめたエルピスが「どなたかへ……?」と首傾げる。
「シャイネンナハトで誰にあげるのかって? 勿論自分用だ!!!!!!
カナシクナンテナイゾカナシクナンテ!!!! 独り身最高独り身自由!!!」
 胸張ってそう告げるラクリマ。ぱち、ぱちと何度も瞬くエルピスは何処か可笑しそうに小さく笑い「自由、はすてきです」と頷いた。
「シンプルなブローチを作って何時も着る洋服につけるのです!」
「ふふ……完成、とっても楽しみ」
 横で見て居ると腰掛けたエルピスにラクリマは柔らかに微笑んだ。
 ゴリョウは『百花調理用具』を用意して、作業をする人々にもホットミルクを配る。
 丸くなった雪風に「よぉ、ホットミルクでも飲んでいかねぇか? ハチミツ垂らして心も身体も温まるぜ?」と笑み浮かべた彼は外側を温める暖炉だけではなく、身体を内側からぽかぽかと温めるものも悪くはないだろうと準備を進めていた。
「あ、あざっす……」
「ぶははっ、良いもん見た後は心が震えるが、その後に心を休めることで更に見たものの良さを感じ直すことが出来るもんだ。まぁゆっくりしていきな。オメェらのその笑顔が見れるだけで俺は満足よ!」

 話で聞いた事があれど、こうして鍾乳洞に訪れるのは初めてだとポテトはリゲルと手を繋ぎながら笑みを浮かべた。
「雪の貴婦人と呼ばれるような鍾乳洞なんて楽しみだ。
 私は鍾乳洞自体初めてだが、リゲルは他の所で見た事あるのか」
「俺は洞窟探検は珍しくないが、これほど美しい鍾乳洞を目にするのは初めてだよ」
 光帯びて輝く鉱石に、月がまるで粧うように降り注ぐ。
 手にしたクリスマスローズをランタンの如く輝かせ、行こうと手を引く彼にポテトは「リゲルのギフト……」と眩そうに目を細めた。
「鉱石の花……なんだか宝石みたいだな」
 それはリゲルが世界から得た贈物によってイルミネーションの様に光り輝く。鮮やかなそれにポテトはぱちりと瞬いた。
「リゲルにしか出来ない、凄く素敵なプレゼントだな」
「ああ――それから……これも」
 指輪にできるだろうかと差し出した鉱石の花。ポテトは「私も見つけたんだ」と何所か嬉しそうに笑み浮かべる。帰ったら、共に贈り合おうと指先を絡めて。
「わぁ……っ、とっても綺麗……! 見て見て十夜さん、これが鉱石の花なのね!」
 瞳をきらりと輝かせたリヴィエラはくるり、とスカートを揺らし縁を手招いた。
「……っと、そう走るんじゃねぇよ、嬢ちゃん。転んじまっても知らねぇぞ?」
 苦笑浮かべ、前往くリヴィエラの頭をぽん、と撫でた縁は彼女が元居た世界が『この場所』に似ているのだと聞き、ホームシックもあるのだろうと認識した。まだ、年若い彼女にとって、郷愁の念が湧きあがるのは当たり前だ。
 撫でられた頭にどこか嬉しさと恥ずかしさが混じりリヴィエラは宙へと翼を羽搏かせる。差し込む月光の下――歌い上げる曽於声音は美しい。
 瞬けば二種類の鉱石。鉱石の花と、ここに遺された思い――“遺思”の花。
(――私は大丈夫よ、もう寂しくないわ。こんな素敵な場所を作ってくれてありがとう)
 観客席として隅に腰かけ謳う彼女を眺める縁は鉱石とリヴィエラの角が光を帯びて呼び合う様だと感じていた。
 鉱石の中、鉱石の角持つ旅人の歌声響く。これは最高に贅沢な時間ではないだろうか。
 カンテラをぶら下げて、ゆっくりと進むサイズにとって美しい鉱石は贈物――ではなく、自身の食事だった。溶かしてその鎌に取り込めれば、と寒さの中を緩やかに進んでゆく。
(生憎俺は孤独の半妖半鎌――故に鉱石の花は溶かして鎌で食らうようだな……)
 小さな呟きを飲み込む様に貴婦人のドレスから降りる月明かりが美しい。
 ほう、と白い息を吐きながらマナは「綺麗……」とぱちりと瞬いた。
 月明りで美しく煌めく鉱石たち。その輝きは貴婦人の首筋飾った宝玉を思わせる。
「絵に納めたいくらい本当にお綺麗です……」
 スケッチブックを持って来るべきだったかと、小さく首傾げ、その景色をしかと両眼に映し込む。
「また……今度はあの方と一緒に見に来れたら良いですね……」
 きっと――喜んでくれるだろう。
 鍾乳洞とはどんなところだろうか。シュテルンはゆっくりと進む。色々と見て回る、それがとても楽しみで。
「しょーにゅーどー、どーくつ、中?
 あの、みたいな、タラタラ? が、しょーにゅーどー?
 あれ、は、どーなってる、するの? なんだか、不思議……」
 ぱちりと瞬くシュテルンに雪風は「わ、わからない」と困った様に頬を掻いた。分からないの『お揃い』にシュテルンは触ってみようと雪風を手招く。
「つるつる? 硬い? ……ドロドロ、思ったのに、とっても、不思議!
 すっごい、昔から、ある、する?! なんだか、神様の、世界、みたい……しんぴ? だっけ」
「確かに、神秘的すなあ……。うん、なんてーか、神様の世界、確かに」
 頷く雪風んシュテルンは減らりと微笑んで見せる。新しい物は何時だって神秘にあふれているから――
「シュテ、しょーにゅーどー、凄い凄いって、感動、だね!  また、見たい、な……また、来ても、いーい?」
 吐く息は白い。勿論、と雪風は頷いて何時も通りの困り顔に笑みを浮かべた。
 雪の貴婦人は何時も穏やかに。そのドレスのように広がる裾を持ち上げて――さあ、また、今度いらっしゃって。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 寒さ、暑さの時期にそれぞれ往く鍾乳洞はすがたをかえるもので。
 この雪の貴婦人の鍾乳洞もきっと、夏になればまた姿を変えるのでしょう。
 大きな戦い、お疲れさまでした。

 この度はご参加ありがとうございました。また、ご縁がございましたら。

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