シナリオ詳細
バトルオブ予算
オープニング
●天義でも珍しいタイプの予算編成会議
治世とは、神が選ばれし者たちに与えたもうた権利にして義務である。
貧しき人々に施しを与え。罪人を教導し、あるいはうち滅ぼし。そうして遍く神の威光を、天下に知らしめることは、まさに天の義。選ばれし者たちは自らの全身全霊をもって、民の隅々にまでその義を説かねばならぬ。
それには、先立つものが必要である。
ゆえに一介の市民が行なえば恐喝か強盗の類となる金品の徴収も、神の御名の下に行なえば聖なる徴税となるであろう。
しかし……ここにひとつの問題があった。
いかに大義のための税といえども、集めうる量は決して無尽蔵ではない。絞れば絞るほど出る、というのもまた神の定めたもうた真実ではあるが、絞りすぎて民を飢えさせるようでは、当初の大義など残ろうはずもない。
一方でその税を使いたい側には、上限なんてありはしないのだった。世には無数の貧民が溢れ、力にて民を威圧する鉄帝、神聖なる治世の権利のみを享受し義務を疎かにする幻想、さらには絶対悪なる魔種らなどを思えば、兵に投入すべき費用も馬鹿にはならない。その上、説法用の衣装代、儀式用の聖水代、神とその代弁者らの威光を民に知らしめす建築費、聖なる役務にて疲労した体を癒し次なる役務に備えるためのレクリエーション費……為さねばならぬ出費は実に多岐に渡る!
そこで関係各部署は毎年、聖なる歳入をいかに分配するかに頭を悩ませるのだった。
あちらが求めればこちらが足りず、こちらを立てればあちらが立たず。その調整の権限は財務担当部署に一任されているはずが、何をどう決めても必ずどこかの部署が怒鳴りこんできて、われらの大義はこの予算では足りぬ、貴様らはわれらの大義を挫く背教者のつもりか……などと、一事が万事この調子だ。やってられるかーい!
……と、ブチ切れた財務担当者のひとりが、「もう予算が欲しい奴ら同士で殴りあって決めろよ。そうすれば神に選ばれし正しい予算の使い方するやつが勝つんじゃね」とか言いだした。あろうことか、思うように予算が通らず鬱憤を溜めていた各部署まで、そいつは名案だと手を叩いた。
そんな経緯で今ここに、神の御名の下に聖なる競技場が整えられた。それにも予算が必要だったので、少しでも費用を回収するため千席の観客席が用意され、入場料収入で賄うことになった。当然、観客席の整備にも資金は費やされた。
そうやって今年度の歳入の数割を突っこみ終えたところで……皆、はたと気づくのだ。
ところで、誰が出場するの?
俺、勝てるほどの徳とかないし痛いからやだよ。
かくして彼らは、特異運命座標へと白羽の矢を立てる。
破滅の神託を回避するために遣わされた彼らの行ないは、神の大いなる意思を代弁しているも同然。特異運命座標が選び、勝利を手にした部署こそが、最も神の御意思に適う予算投入先なのである!
……うん、こいつは名案だ。彼らを招聘して、自由に部署を選んで戦ってもらおう。
今回も各部署が足並みを揃えて同意して……予算は特異運命座標らへの報酬のため、さらに無駄遣いされたのだった。
- バトルオブ予算完了
- GM名るう
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年01月03日 21時50分
- 参加人数24/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 24 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(24人)
リプレイ
●選手入場
会場はにわかに沸き立っていた。唐突に降って湧いたお祭りに純粋に大はしゃぎする若者、何となくお上の複雑な事情を察しつつも背信者と後ろ指を差されたくなくて会場に足を運んだ老人、そして御神籤に一家の命運を賭けて大量の寄進をした結果奥さんに首を締めあげられている旦那……多くの観衆の目に囲まれて、闘技j……もとい神聖なる予算編成のための競技場の四方の扉は開く。
「都市開発の意義は、我らの生活のためである! その中に当然貧民街の民も居る!」
白きたてがみに紅き瞳の黒馬に跨った『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)の、神々しきまでの呼びかけが人々の心を打った。
あるいは『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の鋼鉄の拳が咆哮とともに天高く突き上げられて、審問部は正々堂々騎士らしく相応しい戦いを行なうことを誓う……無論、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)の盾もそれに応えて掲げられ、受けて立たんという姿勢を見せつけるのだが。
「何ということでしょう……既に会場には、獣のように本気の戦争をしに来た猛者が大勢です!」
早くも歓声が満ちた議場の隅々にまで、魔法で増幅された『白のヒロイン』アマリリス(p3p004731)のアナウンスが届いた。
「神の隣人を愛せよという有難い言葉を無視した血を血で洗う予算戦争は、はたしてこれからどうなることか? もはや、このような大会を開く予算が既にもったいなく感じますが野暮ですね! あの魔種や盗賊王をことごとく討ち取った特異運命座標に武器を持たせるとは、特異運命座標の無駄遣い加減が逆に心地良いです!」
「おい誰か守護騎士様の発言を止めろ!」
「アミ―リアさん交代のお時間です!」
……なんか実況席のほうでひと騒動起こり、何故か実況担当が『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)に変わったりしつつも、各チームは所定の位置まで進んで睨みあう。
騒がしかった観客席もしんと静まり返って、人々が唾を飲む音すらも聞こえてくるかのようだった。聞こえるのは聖餐を配っては“心ばかりの喜捨”を求める、『ドリームパンツピクシー』セティア・レイス(p3p002263)の声ばかり。
そして……ゴングは鳴らされた。同時に動きだす特異運命座標たちの間に、突如として謎の高笑いが鳴りひびく!
「オーッホッホッホッ! 審問部の皆様へ告ぎますわッ!!」
●大乱闘
そう……それは宣教部のチームカラーそのものの少女であった!
きらめく金髪! きらめく桃瞳! きらめく笑顔にきらめくポーズ! きらめく態度! きらめく性根! きらめく大声はクソうるさい……その名は、
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「オーッホッホッホッ! 我々は必ずやあなた方に勝利し!
神殿騎士の装備を!
威光溢れる逸品に刷新することをお約束致しましょうッ!!」
いきなり始まった宣教部『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)の対審問部勝利宣言とともに、『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)と『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が同時に行動を開始した。
「見た目って大事よねェ、変な服じゃ民への示しがつかないんじゃない?」
このステキにくだらないお祭り騒ぎに便乗せずにどうするものかと、リノのナイフがリズムを刻む。
「威光なき使徒を神はお認めになるのかしら?」
彼女が民へと問いかけたなら、ほうぼうから返ってくるのは「神の使徒には神の威光を!」の大合唱!
「そのとおり!」
そんな民の願いに応えた声は、はるか空中からやってきた。
「生きるためだけなら質実剛健だっていいけれど、神殿騎士は威光ある使徒だ」
僕らの神様♪ 白い神様♪
金の光は 貴い輝き♪
人々の心を 癒して包むよ♪
壮麗な金の刺繍を施された純白のローブをたなびかせ、空中を舞いながら歌うルチアーノからは、無数の金貨が降ってきた。きっと彼の歌にある『金の光』は、この金貨のことなのだろう……まあ本物じゃなくて金貨形のチョコなんだけど。子供たち大感激。
「ぐぬぅ!? これだけ四面楚歌では堪らんな」
思わず『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)が悲鳴を上げた。その体にはリノによる傷が無数に刻まれており、さらに審問部を責めるかのような民たちの声。実に堪えがたい……堪えきれぬ歓喜にジョセフのマゾヒスティックな胸は張り裂けそうだ!
だが彼は恍惚に浸るのを一時止め、ぐいと仮面に覆われた顔を救民部のほうへと向けた。そして不気味に嗤いつつ。
「しかし、それもこれも全ては救民部の不透明な予算使用のせい……うふふ、ふひっ。私にさらなる甘美な苦痛を与えてくれたまえ……何ッ!?」
被虐趣味の裏返しの嗜虐的攻撃は……けれども『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)の大盾の前には、彼女の体に届くことすら叶わなかった。苦痛なら召喚前に十二分に味わっていたし、その上で彼女は実力と幾ばくかの幸運をもって、自ら絶望の底から脱出する力を手に入れたのだから。
「恵まれない人達に必要なのは、今を生きる糧と、底辺を脱出するための知識や実力の獲得だと思うんだ……だから救民部にこそ勝利と予算を!」
力を得たからといって自惚れるのではなく、それを誰かのために振るうヒィロの姿に、観客たちもわき立っていた。そして彼らの祈りをいっそう強くする、『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)の独白。
「私は、貧しい家だった……。だから、今でも憶えてる……小さい頃にもらった、炊き出しのスープ、おいしかったって……」
観客の幾人かは、涙さえをも流しているようだ。きっと昔は貧しかったが、今では信心が報われて競技場に足を運べるほどの余裕を得た者たちだったのだろう。そんな彼らがタイミングよくセティアに横からパンとワインをさし出されたならば、思わず予定外の喜捨をさせられる羽目になる。
「主のお恵みに感謝を」
「あと、神様の御心に従ってこのパンを作ってくれた『聖ピエール』のパン職人たちにも感謝しないとねー。……あっ、このパンに『キリアン・ワインセラー』のワインが合うって教えてくれたことにも感謝だよ。飲めない人にはこっちのぶどうジュースでも」
『海月』メーア・クヴァーレ(p3p006841)のそんな補足は、なんでセティアの配るパンが儀式用のシンプルなやつじゃなくってスナック感覚なガーリックトーストやらホットドッグだったりするのかに一定の理由付けをしつつ、かつこの作戦に協力してくれた人々への感謝を店の宣伝という形で伝えるものである。
経済は回り、税収も増える。つまり分配されるべき予算も増えるということで、少しでも争いの種が減ればいい……んだけどねホントに。セティアが喜捨額をカップとかに刻んでゆくから、観客たちの間で変な信仰心競争が始まってるんだよね。ウハウハだよね。
だがそんな場外冷戦が始まっている間にも、アミ―リアの実況は新たな展開の始まりを告げていた。
「さぁ各陣営、まずは全員に一定以上の練度があり人数も多い救民部から減らしておきたいところ……けれどもあぁーっと! 茶屋ヶ坂『戦神』秋奈(p3p006862)選手、宣教部の売ってきた喧嘩を買ったぁ!」
そう……秋奈には何よりも大切なことがある。
それは装備のカッコよさ。戦いの中に生きる者として、これだけは何より譲れない!
「装備はダサいよりかっこいいほうがいいでしょ!!! 性能より見た目、性能より見た目でしょ!!!!!」
なんか体に闘争を求めさせてる感じに鼻歌を歌いつつ暴れまわってるけど……あれその主張しててなんで審問部に与してるんだ秋奈は。
「は????? あのゴテゴテっぷり見て宣教部が今よりカッコいい装備作れるって本気で思うの????????」
言われてみれば成金趣味的なルチアーノを指差して秋奈は気炎を吐いた。そしてむっとした彼の空中からの遠隔攻撃で一方的にふっ飛ばされる……ルチアーノはローブの裾ひとつ汚しやしない。
百合子の奥歯がぎりりと鳴った。
「バトルロイヤルゆえ卑怯者とは呼ばぬ。……だが、吾が白百合清楚殺戮拳は狡い真似はせぬ……行くぞ! 策を弄さば弄せ!」
高らかな名乗りを挙げるとともに、真正面からつき出された美少女(※種族名)の拳は、受けて立つリゲルの盾を穿つ!
「いい拳だ……だが」
しかしどれほど盾を打てども、天高く輝く免罪符までは、さしもの美少女も奪えなかった。
「私の剣で笑顔にできる人々がいる限り、私は決して斃れない。
そう……その人々とは、国の未来を支える子供たち! 救民部に不正義の疑惑があるのであれば、リゲル=アークライトの名をもって調べあげてみせよう! そして浮いた予算が出たのであれば、その分で全ての飢えた人たちへとより良き食材を! 願わくば主食副食汁物そしてデザートとフルコース!」
それはすなわち『いいんちょ』藤野 蛍(p3p003861)が日本――召喚前の世界で学んだ、いわゆる『食育』という概念であった!
「義務教育を受けたボクは知ってるんだ……富者にはパンとサーカスを、貧者にはパンと教育を! 知識の輝きこそ貧者の武器にして、国の未来を照らす光となるのよ!」
彼女は聖女のように未来を説いて、聖女のように癒しの力を振るう。さらにファミリアーとする鳥からもたらされる情報は、彼女の作戦指示に聖女の未来視にも似た的確さをもたらしている! そして彼女の聖なる行ないを妨げる者は、ヒィロが決して許さない!
……だが全ては、聖なる力ではなく教育ゆえの力であるのだ。だからたとえば『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)のような、その価値を正しく理解できる者からすれば、救民部が実際に市価より高く物資を購入していることは確かであるものの、それは多くの人が「貧民にはこれで十分」と見なしているものよりも高品質な食材を購入するためだということは一目瞭然だ……それが貧民のためってより「だって自分たちも同じもの一緒に食べるわけだし粗悪なの嫌じゃん」って理由なのは伏せておくとして。
だがその時、『望の剣士』天之空・ミーナ(p3p005003)がキレた。
「私にゃ小難しい政治の話だとかあんたらの事情なんざ知らねぇがね。基本、労働を与えて、それに見合った正当な給料をやってりゃ国って回るんだよ」
それからイーリンのほうをチラと見て、何やらアイコンタクトを決めたかと思えば、次はパトロンたる都市整備部の面々にも聞こえるように、大声で釘を刺しながら特攻を決める!
「ああ、当然人件費はケチるなよ? 金は天下の周り物。その為には、労働の場と娯楽の場とを作らなきゃ話になんねーんだよ」
「然様! 我ら勝利の暁には、新たな住居と、そのための仕事と報酬。そして開発に携わった知識と経験が、新たな恵みを生むであろう! 生活の真の場は信仰にある!
であれば、貧民街の民は幸いである! 手を取り合い、救済し得る立場なのだから!」
ミーナの後ろから飛んできたイーリンの術が、正義はここにありとばかりに救民部含めて何人かを巻き添えにした。
「くっ、救民部の潔白を証明したのに狙われるだなんて、きっと私のカリスマ力のせいね……!?」
茶化しつつスティア、無事脱落。反撃はミーナが邪魔して届かせず、アミ―リアの実況シャウトが会場内に響く!
「都市整備部と審問部の板挟みになった救民部、早くも脱落へのカウントダウンかー!?」
「フレー! フレー! あーか!
フレー! フレー! あーお!
フレー! フレー! しーろ!
フレー! フレー! きーん!」
観客席でぴょんぴょん跳ねながらボンボンを振る『星頌花』シュテルン(p3p006791)の応援が、乱戦の渦の中にいる各陣営を励ましていった。親切な人が「いちばん勝ってほしいとこだけを応援するんだよ」と教えてあげようとして……でも覚えたての振付とたどたどしい口ぶりで分け隔てなく健闘を祈る、ずっとこの国で生きてきて初めて“楽しさ”を見つけた彼女をひと目見たならば、そんな野暮なアドバイス、誰にもできるわけがない!
おお、何たる愛であろうか。それはまさしく主の御心である。愛とは互いを認めることであり、憎しみを和解に導くことである。そう……『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)のように!
「お聞きください救民部の方々ー? 都市清掃・貧民窟再開発の人手として貧民窟の住人を雇い、それによってできる仕事に計画後も携われるような都市整備であれば、お互い手を取りあえるのではありませんかー? ひとまず争いの場である聖なる競技場は宿舎にでもしましょう」
「……仰るとおりです」
救民部の中から賛同の声を上げたのは、同じく癒し手である桜咲 珠緒(p3p004426)だった。
「都市計画は、公共事業化して貧民の雇用や集合住宅の導入をすれば、支援と再開発を同時に行うことができます。
装備デザインとかは、それこそ今回同様、イベント形式で公募すればよいのでは? 多くの発想が寄せられるとともに、お金もたくさん動きます。
同様に救民部も不透明な物資購入に対する審問を受け入れ、全てを説明し、不正義を正します……これこそ協調と予算確保の両得になるはずです。戦を略すと書いて戦略……参考になれば幸いです」
もっとも、いかに代理人同士で和解したからといって、肝心の依頼人たちが和解しなければ意味はないのだが。少なくとも審判長のジジイは競技場宿舎化計画のところでつまらなさそうな顔をした。
だが見よ……呪われし死霊術を操るアイリスの姿を。魂籠より出でし魂がユゥリアリアを苦しめる罪は、彼女自身も知るであろう。かつて故郷たるこの国にて断罪されかけた力にて、ただ呼吸を荒げながら苦しみに耐えつづけるユゥリアリアを責めねばならぬ彼女を救うには、依頼人たち自身による共闘の宣告が必要とされる……いや全部傍目からの勝手な解釈なんだけどね。
そんなわけで救民部と都市整備部の代表は立ち、互いに強く握手を交わしたのだった。
「おっと、ここに歴史的融和が達成されたー! 対する他の部署ははたして!?」
けれどもこれは本当に、歴史的融和と言えるのだろうか? ちょーっと雰囲気に流されただけで、結局今年限りのものになったりしない? ねぇ大丈夫?
そこで、『魔法騎士』セララ(p3p000273)の出番だ。
「一見無駄に見えた大会開催費用も、有意義な結果になったことが市民たちの前で証明されたね。今後も予算の使い道は全部門、ちゃんと市民に公開してね……それが清い心ってものだよ!」
観客を証人とするという形で各部門に釘を刺したセララのアピールは、そんな観客への呼びかけだけに留まらないものだ。何故なら彼女のギフトによって、この大会の全ては記録され、相互理解の大切さを楽しく学べる教育漫画となって人々に販売される! その上、売り上げは予算の足しにもなる一石二鳥!!
「これは我々も意地を張れなくなりましたなぁ審問部長」
「まるで私が意地を張ってるようにも聞こえますが水に流しましょうか宣教部長」
ブラヴォー、ブラヴォー。かくして4部署はすっかり和解して……。
「……って、もうちょっと先輩方の胸を借りて戦ってたかったぜ!?」
『荒野の珍味体験者』クリストファー・J・バートランド(p3p006801)が、思わぬ方向から共闘路線に異を唱えた。まだ、経験が浅いことは自覚している。だからこの機会を逃さずに、闘技場では学びにくい乱戦の中での立ち回りを身につけようかと思ったのに……。
その真摯な姿勢がなんか審判長の感動を呼んだようだった。
「良い心がけじゃ! ならば審判長権限で、出場者は以降も、形式上の優勝部署が決まるまで力を尽くすものとする!」
「あざっす司祭様!」
すでにかなりズタボロなクリスが表情を輝かせたならば、百合子も拳から暗黒のオーラをたち昇らせて、いっそう白百合清楚殺戮拳の冴えを天義に轟かせんとする。くすり、とリノの口元にも楽しげな笑みが浮かんで、さらに観客たちを興奮させて黒字化に貢献しようと、しなやかな獣のようなたち回りにて人々を魅せる!
かくして――。
●優勝、そして
「優勝は、リナリナどのじゃ――と言いたいところじゃが、お前さん、部署ナシとは一体全体どういうことじゃ?」
「え? 部署って何それ美味しい?」
いろいろと激戦が続いた挙句、優勝を横から掻っ攫ったのはまさかの無所属参加者、『パンツオブ爆心地』リナリナ(p3p006258)であった。
何故彼女が勝てたのかって? 考えてもみよう――この大会は部署対決のバトルロイヤルである。無差別に攻撃してくるお邪魔虫にわざわざ迎撃なんてしてると他部署に対して隙を作ってしまうという構造のせいで、彼女は好き放題漁夫の利できるのである。
……しかしながら、この戦いに真の勝者がいるのだとすれば、おそらく『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)に違いなかったろう。
「このような諍いの原因は、予算というパイが増えないことなのです」
彼はプレゼン資料を手に、司祭たちへと力説する。けれども十分な資産さえあれば、専門家は十分な運用益が出せるのだ、と。
「そう……たとえばこの私のような」
「こ、この運用実績は!?」
「しかも悪徳貸金業には手を染めずに!?」
一都市の予算を丸々運用するファンド。
その利益が信託報酬だけでもはたしてどれほどになるものか、ちょっと考えたくもない。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
そんなわけで、バトルのようなバトルでないようなバトルロイヤルがくり広げられた第1回予算獲得闘技大会でした。思った以上に皆様しっかり予算のことを考えてくださったようで、GMとしても感激しております。各部門の人々も、お蔭で随分と改心した……ようではあるのですが。
この改心、来年までちゃんと保つんでしょうかね? また下らない諍いを始めたりしないでしょうかね?
来年(正確には今年の年末)似たようなシナリオが出なければ、きっと本当に心を入れ替えたんだと思います。その時は彼らの未来を祝福してあげてください。
GMコメント
そんなわけで大乱闘しようぜ!!
どうも皆様、るうでございます。各部署の公約を参考に、お好きなところに肩入れしてお好きなようにお戦いください。試合形式は、半径100mの何もないフィールドに全員詰めこまれて行なうバトルロイヤル形式。人数が多い部署ほど勝ちやすいとは思いますが、作戦次第でどうにでもなりえます。
プレイングの冒頭に、【】で囲った数字をご入力ください。各選択肢に対して、掲示板での発言が早い順に最低5名程度の描写保障をいたしますが(白紙や不適切なプレイングである場合を除く)、それ以上はプレイング内容次第で書いたり書かなかったりします。
【1】都市整備部(チームカラー:赤)として大会に参加
清き心は清き町から、をスローガンに、都市清掃・貧民窟再開発計画の予算増額を求めています。救民部からは再開発計画が貧民の生活の場を破壊すると批判されています。
【2】救民部(チームカラー:青)として大会に参加
炊き出し等の貧民支援・民衆教育の予算増額を求めています。ただし審問部の主張によれば、支援物資の購入元の選定に不透明があり、市価より高く落札してるとか……。
【3】審問部(チームカラー:白)として大会に参加
軍で警察で裁判所です。神殿騎士の訓練費用・天義中央政府の招集に応じる派兵費用の予算増額を求めています。宣教部からは「騎士の装備がダサいからうちに任せろ」文句言われてます。
【4】宣教部(チームカラー:金)として大会に参加
神の威光を知らしめるには、神殿と聖職者の威光から。神殿改築や聖職者の衣装の新調のための予算増額を求めています。神殿の増改築は常に都市整備部の都市計画ガン無視です。
【5】その他
解説役とか、同時開催される賞金つきお御籤(つまりは神殿公認の闘技場賭博)への参加とか。
なお優勝しても、審判長のお祭り好き司祭様からのお褒めの言葉と称号以外、何も出ません。MVPも優勝者ではなくどれだけ印象的な行動をしたかで決まるので、そのつもりでよろしく!
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