シナリオ詳細
<Phantom Night2018>魔法使いのティーパーティー
オープニング
●老魔法使いの楽しみ
幻想東部の或る深い深い森の中。
大きな大木を改造したその家に、一人の老魔法使いが住んでいた。
老人の名はゼラス。知を探求し、一人魔法という深淵を覗くこの老人は――紛うこと無き奇人変人の類いである。
人里に滅多に現れることもなく一年をこの森で過ごすこの老人は、しかし一年のある日だけ唯一の楽しみとも言える催しを開催する。
「ふむ、今年もこの日がやってきたというわけじゃな」
目を細め、楽しみを胸一杯に詰め込んで、少年のような瞳で砂時計の”針”を見つめた。
「さて、今年はどのような仮装、そして魔法が見られるかのう。
ふぉっふぉっふぉっ……楽しみじゃ」
一つ笑ったゼラス老が手にした杖を振るう。
光が窓を開け放ち、天高く登っていった。
それは、御伽噺の魔法にかかった者達への招待状――
●
「お茶会のお知らせ?」
イレギュラーズの返答に『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が頷いた。
「幻想東部のユピタの森に住むゼラスという魔法使いさんからの招待よ。
このお爺さん、中々に奇人変人で人と会うことを好まないらしいけれど、この時期だけはこうして混沌中に招待状を出して御伽噺の魔法――つまり『どんな姿にもなれる』魔法にかかった人達を呼んでお茶会を開いているみたいね」
一年に一度だけ、姿形の変わった人々を招いて楽しくお茶会。
老い先短い――か、どうかはわからないが、なんとも奇特な楽しみを持つ人だ。
「森の中でお茶を飲みながら団欒だなんて、深緑にいたときを思い出しますね」
『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)が懐かしむように言う。どうやらラーシアもリリィも行く気は満々のようだった。
「主旨はお茶会だけれど、魔法の研究発表会の場でもあるようね。
ゼラス老は結構な魔法使いのようで、混沌中の魔法使いが自慢の魔法を引っさげてゼラス老に披露しにくようよ。
魔法が得意な特異運命座標ちゃん達も、行ってみたら楽しいかもしれないわね」
とはいえ、姿形の変わった者達がどのような発表をしたところで、公式に認められるわけではないが――そういう某かの柵みを嫌ったからこその、この日の催しなのかもしれない。
「そんなわけで、私とラーシアちゃんは参加確定!
貴方達もよかったら一緒に行きましょうね!」
当日の仮装はどんなものにしようか。そんなことを考えながら、ゼラス老の主催するお茶会へと想いを馳せるのだった――
- <Phantom Night2018>魔法使いのティーパーティー完了
- GM名澤見夜行
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年11月18日 21時10分
- 参加人数34/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 34 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(34人)
リプレイ
●深い森の中で
まるで魔法が解けたかのように、深い森が人々を招き入れる。
そうして木々の合間を抜け奥へと辿り着けば、自然によって作られたテーブルやイスが立ち並び、楽しげなお茶会の会場が現れた。
「ようこそ、我がお茶会会場へ。
今日はゆっくりと、楽しんで行ってくれたまへ」
目を細めて笑う顎髭の老人――ゼラス老の歓迎の挨拶と同時、すぐにお茶会は始まった。
●お茶会に魔法が映える
「そういえば、ユウは好きな飲み物とか食べ物ってあるの?」
お菓子の並ぶテーブルに付きながら、ティアが連れ添いのユウに尋ねる。
「うん、まあ甘いものは嫌いじゃないかしら」
エルフの民族衣装に身を包むユウが答えると、納得するように頷くティア。
「なるほど、今度庭園に来る時には作ってみるね。
……わわっとっ!?」
話に夢中で、テーブルの上のお菓子を獲ろうとした矢先に、バランスを崩すティア。そのままユウを押し倒すように垂れ掛かる。
「いたた……ユウ、大丈夫?」
「ちょっと、本当に貴方どんくさ過ぎない!?
……怪我はないでしょうね……?」
以前にもこんなことがあった気がした。そんなことを思い出していると、身体をまさぐるティアの手の感触。
「ってまた何処を触ってるのよ!?」
「ご、ごめん……」
言いつつも、慌てて離れられないティアに、ユウは呆れつつも微笑むのだった。
「ふぉっふぉっ、これはすごい。
星の王子様とお姫様じゃな」
ゼラス老の前に立つサンティールとウィリアム。絵巻物の主人公のような二人がゼラス老に魔法を披露する。
「呼吸を合わせて、魔力を共鳴させるぞ」
サンティールがくるくる微かな煌めきを散らしながら杖を手繰る。
ウィリアムが剣を掲げながら手を差し伸べて、二人はしっかりと手をつなぎ合わせた。編み込まれる二人の魔力が一つの力となって現れる。
「さあさ大老、皆々さまもとくとご覧あれ!
ウィル、いくよ!」
『告げる。告げる。我は天に願いを灯す。
蒼き星の剣は翠緑の希望と共に、
風と雷と光を纏いて、彗星とならん!』
弾ける火花は星の煌めきのように、そして空に紡がれる雷光の軌跡。
「願いをそらへ、祈りをそらへ!」
『これが俺達(僕ら)の、天翔る彗星(ウィッシュスター・フライハイ)!』
深緑の世界を彩る煌めきの魔法に、ゼラス老の顔がパッと華やいだ。
空に昇る魔法に目を輝かせながら、テーブルの上に視線を戻せば、ティーポットが自然と浮かんでカップにお茶を注ぐ。欲しいと願えば、お菓子も空を飛んで自らお皿に飛び乗った。
「ほら、焔……! 空飛ぶお菓子を捕まえたよ!」
シオンが手にしたお菓子を焔に差し上げる。焔も喜び二人は微笑む。
「魔法を見ながら食べるお菓子は格別だね……!」
でも、二人一緒に食べるからこそ、もっと格別に美味しく感じるんだと、シオンは笑った。
「ボクも魔法が使えたらお礼に見せてあげたのに」
今度一緒に練習しよう、と言う焔に、シオンが応える。
「焔と一緒なら練習も楽しいよね……!」
考えた魔法は花と宝石。
互いにプレゼントすると約束して、微笑み合った。
「そーいえばデートみたいだね……!」なんて言ってみるシオンに、
「シオンちゃんと遊びに行けるのは楽しみだよ」と答える焔。
仲睦まじく、二人は茶会を楽しむ。
マナとヨハンは揃ってゼラス老の前に並び立つ。
「ほほぅ、魔女とミイラ……マミーとはまた面白い取り合わせじゃのう」
この二人がどんな魔法を見せるのか、興味に眼を輝かせるゼラス老。
「それじゃ行きますよ!」
「はい……頑張ります……!」
ヨハンがパチンと、指を鳴らせば、身体の先端より迸る稲光が空に昇っていく。次々と立ち上る電光。セントエルモの火が、薄暗い森に輝きの軌跡を残していく。
それに併せてマナが得意の回復魔法を使えば、魔力が行使される際に現れる残光が、ヨハンの電光に合わさり、光の効果を際立たせた。
「ふむ……ならばもっとよく見えるようにしようかのう……それっ!」
ゼラス老が杖を振るえば、薄暗い森が闇に包まれて、そらに駆ける電光と清浄なる治癒魔術の光が映える。
ヨハンとマナ、魔女とミイラ、二人の”光”を操った見事なパフォーマンスは、お茶会に参加する全てのものに感動を齎すのだった。
ジェームズが、一つの質問を尋ねた。
「『なりたい自分になる魔法』――その元となる魔法は存在するのか?」と。
「ふむぅ、儂もいまだ探求者である。
似たような魔法は知っておるが、それは呪詛の類いでな。人に利益を齎すような者ではないのぅ」
目を細める大老は、ジェームズの悩み、望みを見透かすように話す。
ジェームズの望みを叶わなかったが、大老との会話は、ジェームズにとって有益なものとなったはずだ。
森の中を古今東西の武器兵器が魚群のように芸術的な動きを見せる。
剣乱武闘それは、この場において目を惹く一人に贈られたもの。
「お見事ですわ。レジーナさん」
拍手を贈るは、暗殺令嬢リーゼロッテに他ならない。
「た、楽しんで頂けたのならば幸いです。
時に、お嬢様は魔法の類いは使うのですか?」
少しばかりの緊張を持つレジーナの些細な疑問に、少し小首を傾げたリーゼロッテが答える。
「ええ、まあ。けれど人に魅せるような類いのものではありませんわね」
優雅にお茶を楽しむ令嬢の答えに頷いて、レジーナはしばしこの令嬢との会話を楽しむことにした。
「新しいお茶でございます、ご主人様、お嬢様」
なんて、執事の装いで参加者のお世話をするのはグレイルだ。ゼラス老の魔法で自動給仕ながら、それでは寂しいとお世話に精を出す。
「おう、バトラーさんよ新しいデザートができたぜ。運んでくんな!」
同じような感じで、赤鬼扮するゴリョウも台所を借りてお菓子作りだ。
鬼まんじゅうに、鬼ゆずジャム、鬼餅などと、赤鬼謹製のデザート各種が、グレイルの手によって運ばれる。
「ふぅ、これはなかなか大変ですね」
やりがいを感じつつ、その仕事の大変さを覚えたグレイルは、後に小休止で口にした紅茶の暖かさに、ホッと息を漏らすのだった。
ジルーシャがストラディバリウスを奏でながら魔法を披露する。
「だってホラ、お茶会には音楽がつきものじゃない♪」
と、陽気に微笑むジルーシャの身体を茨の鎧が包み込み、音楽に合わせてそれはソーンバインドと入れ替わる。
「素敵な音楽……これなら。
ゼラスおじいさま、見ていてくださいね」
ジルーシャの奏でる音楽にインスピレーションを受けたアニーが、人々の幸せを願うように天女の羽衣をふわっと靡かせ空に舞う。
深い音色に、茨の舞い。そこから立ち上る天女が空で幸せを願い舞い踊り、最後はジルーシャが空へと昇らせたマジックフラワーによって、華が開いた。
「お見事。ふぉっふぉっふぉっ素晴らしいものじゃのぅ」
立ち上がり拍手を響かせるゼラス老の笑いが二人の元に届いた。
ラルフの真面目な指導に、テキトーに答えるミルヴィの注意力は散漫だ。やれやれと、頭を抑えるラルフがゼラス老に挨拶する。
「さて、私の魔術は邪道でしてね。触媒魔術があるでしょう?
あれを科学の要領で術式を解析、原理をこういったマジックカードに組み込むのです」
「ほう科学との融合とは面白い」
ラルフの得意技の数々にゼラス老も興味津々と目を輝かせる。
「アタシは踊りと音楽を媒介にした強化と付与魔術サ、お客様御覧あれってネ?」
ラルフのアシスタントのように振る舞うミルヴィも得意の魔術を見せて、滞りなく魔法の披露が終わろうとしたその時。
「普段の恨み! 芋羊羮になりやがればーか!」
ボンッと煙をあげて、ラルフが芋羊羹の姿に変わる。ぴゅーっと走り逃げるミルヴィに頭を抱えてラルフが呆れかえった。
「本当にお前は……真面目にやれば良い物を……」
「ふぉっふぉっふぉっ、愉快な娘じゃのう」
ハプニングを笑うゼラス老に非礼を詫びて、ラルフは悪戯娘を追いかけた。
「おおなみ こなみに あるなみ ないなみ
せかいは なみで できている
ゆらゆら ゆれて つつけば きえる♪」
「素晴らしき波濤の響き。甘美なこの波に揺られれば、自らの意思も手放してしまいそうじゃのう」
持ちうる全てを操って、漣をイメージした仮装のカタラァナが操る波が森を支配する。
ゆらりゆらりと船漕いで、一瞬の静寂の狭間が心地良い。
そうして、また新しい波が生まれていった。
女性の姿となったルフトはここぞとばかりにラーシアとリリィの二人に密接する。両手に華の熱烈なスキンシップに二人は驚いて、「もう、悪巫山戯して」と微笑んだ。
二人に手渡される氷の華。
花言葉を知ってか知らずか、二人は喜んだ。
「私、二人のこと、大好きよ」
「ありがとうございます」「ふふ、女の子になると積極的になるのね」
二人の反応にルフトは悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
「魔法――神秘を行使するこのアーツは元来攻撃的なものを差すことが多い。
じゃが、平和的な魔法と言う物もあって然るべきだろう。それは魔法の在り方として一つの到達点なのじゃからな」
アレクシアとアリス。二人の見せる魔法は花火という。
人を楽しませる、笑顔にさせる為だけの無為な魔法だ。でもそれをゼラス老は魔法の一つの到達点と評した。
「と言っても夏祭りとかで打ち上げるあれとはちょっと違うよ!
魔力を使って空に本物の花の形を描くんだ!」
「本物の花火とは違って、私達の魔法の腕が何よりの鍵だし、
ぶっつけ本番って感じで少し心配だけど二人ならきっと大丈夫」
火花を使わない花火。どのように描き出すのか、ゼラス老は内に秘めたドキドキを堪えきれない様子だ。
「それじゃ、アリス君、やろうか!」
「こっちはいつでも大丈夫だよ、アレクシアさんっ!」
『せーのっ!』
杖と杖が重なって、空へと魔力が立ち上る。幾重にも広がる魔力の帯が花弁一枚一枚を描き出す。
「おぉ……っ! 見事!」
立ち上がるゼラス老の顔が華のように綻んだ。
【二人はジュリーネ】。頭にこけちゃんことトリーネを乗せた樹里が、トリーネの力を持って空に浮く。
「ほっ、鳥にお嬢ちゃんが捕まっておるのぅ」
ゼラス老の前に飛んできた二人が何をするか。知っているのは樹里だけだ。
「お見せしましょう。
これぞ二人の力を合わせた超最新式超高速移動砲……!」
「あ、せっかくだから私もぴよスターを合わせましょう。お披露目お披露目。
せーの」
「――樹里のまほぉおぉおぉぉおおぉおぉぉ……!!
――こけええぇぇぇぇぇぇ!!!??」
ドップラー効果を発生させながら、魔力を放って吹き飛んでいく樹里とトリーネ。何も知らされてなかったトリーネの悲鳴が響き渡る。
「欠点は後ろ向きに突き進むこととこけちゃんがハロウィンの日にしか飛べないことくらいでしょうか……何ら問題ありませんね」
「……うん。欠点しかないわね!!」
落ちてきたひよこが魔力障壁をつつくなか、「もう一度」と言う樹里にトリーネの悲鳴が再び響き渡った。
「―――サクラちゃん。……ぷんぷん」
サクラと二人お茶会を楽しむアマリリスは、在る事を思い出しぷんすこ真剣に怒っていた。
曰く、危険人物であると知られる死牡丹梅泉に喧嘩を売ったとか。
「いやいや、そんな。喧嘩を売ったなんて。ちょっと剣の手ほどきをお願いしただけですよ?」
その実は「弟子をとってみる気はない?」などというある意味喧嘩を売るより無謀極まる内容だったわけだが。
ごまかし笑いを出しつつも、大口叩いた自覚もあった。
「何故そう、貴方は!
手解きって……んもう! 危険過ぎます! 私は反対ですからねっ!!
ま、まあサクラちゃんがそうしたいなら、止めないけどぉ……」
引き留めきれないアマリリスはサクラに甘い。
「心配してくれてます?」
「べ、べつに~心配なんじゃありませんし~~!
もう、おじいさまの厳格な血はどこへいったのです?」
紅茶を啜りつつ祖父の名を出すアマリリスに、サクラは顔に青気を浮かべて、
「お、お祖父様にはどうかご内密に……。殺されちゃう……」
などと言いつつも、天義騎士としての覚悟を真摯に掲げる。
「その天義騎士たる心構えは素晴らしいです――今日はでも、女の子でいましょ?」
凜とした二人の騎士はそうして漸くお茶会を楽しみ始めた。
「あたし達の魔法、どうぞご堪能ください」
「ふふ、緊張してしまいますが、楽しんでくださいね」
青白く光るヴァイオリンと銀の横笛が並ぶ。リアとラーシアの即席のセッションは感情を揺さぶる、魔法と呼べる代物だ。
(この感情……すごい、本当に今日一日を全身で楽しんでいるのね)
ゼラスの嬉々とした感情を汲み取って旋律へと変える。
賑やかで、楽しくて、ワクワクドキドキするような今日という日を表す楽曲が、いつまでも響き渡った。
「私だって伊達にお茶室を持っているわけじゃないのよ?
こう見えて、自分でも美味しく淹れられるだから? フフ!」
「……いつもありがとう、王子!!」
アリスな仮装のクリスティアンと、コヨーテと言いつつ実にネコなロクが仲良くお茶会を楽しむ。
クリスティアンに頼まれて、デザートを集めに走るロクは、いつものように悪戯を思いついた。
「スコーン、カボチャパイ、マドレーヌ……
そしてこっそりわたしが作ってきた泥クッキー!
大きな砂利や異物を取り除いた純度百パーセントの貴重なそこらへんの泥んこを!
丁寧に生地に練りこんだ! 見た目はただのチョコクッキー!!」
「ありがとう、紅茶もちょうど入ったわよ! さあ、召し上がれ? ……美味しい?」
微笑みを浮かべるクリスティアンに差し出される”チョコクッキー”。
「え! 私を驚かせようと手作りのチョコクッキーを……? 嬉しい、頂くわ!」
ガリ、ガリッ、ゴキ……ッ!(パンドラの削れる音)
(何かしら……? クッキーから泥のような味がする気がするわ……!)
(お腹壊さないよね……歯も折れないよね……王子だし!)
エプロンドレスと同じように青ざめていくクリスティアンがおしりを押さえてトイレに駆け込むのは直ぐのことだった。
お化けの仮装でゼラス老の元に来たナキが魔法とはなにかと尋ねる。
「ふぅむ、難しい質問じゃのう。それは技術であり、世界を支える法則である、と言えるかのう」
「技術ということなら、ボクにもできるのです」
霊魂魂魄を操るナキの”技術”は優れたもので、ゼラス老は感心する。
「素晴らしき技術じゃ。儂も今日は似たような魔法を使っておるぞ」
自動給仕のポットやお菓子は精霊達に”お願い”して行っているという。
それはネクロマンシーにもほど近い、魂魄との助け合いの力だ。
ナキはしばらくの間、ゼラス老と霊魂との関係について言葉を交わすのだった。
召喚魔法を見せるというエリーナに、ゼラス老は存分にやるがよい、と多重に高レベルの保護魔法を張って見せた。
「行きます! ネリー! スティーリア! アモル!」
呼びかけに応じて、妖精達が現れ姿を見せる。その見目麗しい妖精達にゼラス老も我慢が出来なくなったようだ。
「ほっほっほっ、素晴らしき哉、妖精達。ならば儂も見せよう、出でよホーリンハイトの城よ!」
音を立てて現れる小人の城。中から妖精達がワラワラと現れる。
「まあ、素敵です!」
エリーナのギフトによって現れたお茶会の妖精とともに、一時お茶会会場は妖精達でいっぱいになるのだった。
「よかったら、私の魔法も見てって頂戴?」
ゼラス老の元を訪れた”魔女”のアオイが楽しげに杖を掲げる。
夜空に瞬く星の光が杖の先、星形の装飾に収束させていく――
「撃ち放て、シューティングスター!」
全力で撃ち放たれる閃光の矢が、流星纏う軌跡を描いて森を保護する魔力障壁に叩きつけられる。
「この魔法……どうだったかな?」
「ふぉっふぉっふぉっ、見事な威力じゃ。
儂の特別な障壁が五枚も破られてしもうたわい」
感心したように拍手を送るゼラス老。見事と言われてつつも、未だ余裕そうなゼラス老にアオイは少し悔しさを覚えるのだった。
とっておきの魔法があると、ミルキィがゼラス老に披露する。
巨大ジェラートを降らす独特のスイーツマジックに、こりゃ美味いとゼラス老は喜色の笑みを浮かべた。
「ふっふー、次はハバネロミストを披露するよ!
この霧の辛さにはきっとゼラスくんもびっくりするはずだよ!」
「ハバネロ……異界の神ハバ・ネロかっ!
いや、いかんぞぉ、儂ゃあいつに辛みを刺激されたことがあるのじゃが、そりゃもう三日は寝付けんかったぞい」
ゼラスの制止を振り切り漂う霧が生み出される。
「うひゃー、辛い! 辛いぞぉ……!」
噎せるゼラス老はしかし、どこか楽しそうにその霧を楽しむのであった。
「ふふ、賑やかですね。
あの魔法はなんでしょうか?」
ごく普通の、魔法使いと魔女に扮した二人。裕人に解説を求める美由紀は魔法の素養はない。
「なんでも激辛の霧だってさ。ちょっと吸い込んでみようか。
――げほげほっ、うわー、これは辛いっ」
「ふふふ、大丈夫ですか? お茶入れますね」
この世界に同時期に来た二人は、森に飛び交う魔法を不思議そうに眺めながら、ゆったりとお茶とお菓子を楽しむ。
裕人の魔法解説に耳を澄ましながら、美由紀は異世界のお茶の味をジックリと味わうのだった。
参加者といくつか言葉を交わしていたアイリスが、リリィの隣に座る。
アイリスに気づき話を振ったリリィに、アイリスは夜の森の歩き方が詳しいと答えた。
「夜目がすごい効くわけじゃありませんが、星や月は……綺麗に見えます、し、
夜にしか咲かない花も、あるんです
そういうのを見られるのも、夜ならではの楽しみ、です」
「わかるわぁ。私も深緑にいた頃はよく一人夜の森を歩いたものよ。
夜、良いわよねぇ……」
互いにハーモニアということもあるだろうか。夜の森を眺めながら、夜の森の楽しみ方を微笑み合いながら語り交わすのだった。
●賢者が見せる光景
「ふぉっふぉっふぉっ、皆、愉快な仮装に、見事な魔法、素晴らしい茶会であったぞ。
これは礼じゃ。
視界に飛び込む光景をしかと目に焼き付けて変えるが良い!」
莫大な魔力が迸り、ゼラス老を中心に閃光が放たれる。
同時、移り変わる景色は『深層心理で望んだ光景』。
それは、或る者には故郷が移り、或る者には夢見た城が移るだろう。また或る者は戦場たるやもしれない。
幻覚以上の本物たらしめるこの魔法こそ、ゼラス老が『なりたい』と願った魔法使いの魔法なのだ。
今はまだ、この深い森を包む程度の規模だ。
でも、いつの日か、ファントムナイトの夜にこの魔法が混沌中を包み込む日がくるかもしれない。
そんな日を夢見て、森に潜む奇人変人たるゼラス老の親しみの籠もった笑いが、夜の森に響き渡るのだった。
――happy the Phantom Night.
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
魔法使いのティーパーティーは如何だったでしょうか。
ちょっと書き過ぎちゃいましたね。反省。
いろいろ称号だしました。もらえた方はゼラス老の特別お気に入りです。
依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
一年に一度の収穫祭です。
とびきりの仮装ととびきりの魔法を装備してゼラス老を驚かしに行きましょう!
●出来る事
基本はお茶会。余録で魔法研究発表会。
ゼラス老は貴方の仮装に興味津々です。アピールしていきましょう。
一人で参加される方も、二人以上で参加される方も以下のシチュエーションを選択してください。
ピンポイントにシチュエーションを絞った方が描写量が上がるはずです。
【1】お茶会に参加
楽しく、騒がしく? 静かに?
収穫祭で収穫した野菜などを美味しくデザートにして。
お茶を飲む、それだけが楽しい物なのです。
【2】魔法を披露する
ゼラス老に魔法を披露します。
攻撃的な魔法もゼラス老のすごい魔法障壁があるので安心です。
個性に富んだ魔法で、ゼラス老をびっくりさせて上げましょう。
【3】その他
その他、迷惑にならない範囲で自由に楽しめます。
●書式
書式運用しています。
出来るだけ沿うようにプレイングを記載ください。
一行目:上記出来ることから【番号】または内容
二行目:同行PCやグループタグを記載ください。NPCにご用命ならばこちらに。完全単独もこちらに記載ください。
三行目以降:自由記載
●NPC
リリィ=クロハネ、ラーシア・フェリルの他、ステータスシートのあるNPCは『ざんげ』以外、呼べば出てくる可能性があります。
リリィは優雅にお茶してます。ラーシアは魔法を披露する気で張り切っています。
●その他
・可能な限り描写はがんばりますが描写量が少ない場合もあります。その点ご了承ください。
・同行者がいる場合、書式に従ってグループ名の記載をして頂く事で迷子防止に繋がります。
・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
・白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の参加者に迷惑をかけたり不快にさせる行動等、問題がある場合は描写致しません。
・アドリブNGという方はその旨プレイングに記載して頂けると助かります。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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