シナリオ詳細
朱金の苹果の夢
オープニング
●
じわり、じわりと。
インクが羊皮紙を蝕むが如く。
夢に現実は侵食していく――
人々はうわさを口にして、それは徐々に伝播してゆく。
都市伝説の怪蔓延る無辜なる混沌にて、一つの噂が木霊した。
悪夢の苹果を食べたならば、幸福なる夢を見れるのだそうだ、と。
夢の苹果を食べたならば、不幸なる夢に取り憑かれるのだそうだ、と
然して、それは本当か。悪魔の実ではないのかと誰ぞが噂することもあっただろう。
特異運命座標の許へと持ち込まれたのは60個の果実(アンブロジア)。
夢の果実を食べた人間が目を覚まさない。だから、どうか、夢の世界で何があったのかを教えて欲しい。
皆の可能性があったならば『夢から醒める』事はできるはずだから、と。
●
ころり、とテーブルに転がしたは金の苹果。指先遊ぶそれを見下ろして『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)は「食べて欲しいんだ」と告げた。
「みんなに」
言葉にしてはどうも不安定で。
「最近だとこの銀と金の苹果が市井に溢れ出しててさ。
曰くは夢の苹果。これを食べたら夢を見るんだってさ。うん、どうも食べた人が目を覚まさない――ホラーというか、なんというか」
雪風はそう言うアニメやラノベがあったよね、と何かを思い返す様に頬を掻いた。
「ローレットでもこれはどうか、という話になって慌てて調査開始っす。
んで、食べて夢から『醒めた』のはみんな、特異運命座標。けれど、まだまだ、どういうものかは調査不足」
そこで、皆にこの調査依頼が来たわけだ、と雪風は続けた。
「この苹果はどうやって調理してもどうやって食べても構わない。
銀色の林檎を案内してるユリーカが食べようものなら、あの子は特異運命座標じゃないから昏々と眠り続けちゃうわけだから、食べていいのは特異運命座標だけ」
旅人の俺は食べれるけど、まあ、とぶつぶつと呟いて。
「皆に調査して欲しいのは、金の苹果の真意。どんな夢を見て来たのかの報告書が欲しいんだ。
できれば目覚めてすぐにでも――その記憶が鮮明なうちにね」
どんな夢を見るのか、と、あなたは雪風へと尋ねる。
「そうっすね、うんと幸福な時の夢。
……醒めたく――なくなってしまうかもしれない?」
- 朱金の苹果の夢完了
- GM名鉄瓶ぬめぬめ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年11月13日 21時19分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●夢に良いも悪いもあるのでせうか?
ヘイゼル・ゴルトブーツは苹果を真上に投げる。キラキラしたその苹果は朱金。
夢の世界もある意味平行世界。頭の中の異世界。
自称旅人の少女は夢を渡る。
何度訪れても揺れのない、まるで現実のような夢か。
それとも探索のできる夢なのか?
つながる世界は夢のまま? 夢と現実なにが正しいものなのか。
さて、みんなの夢をみてみませう。
平和な世界でどこまでも長く続く道を走るアルプス・ローダーは思う。
走るために作られたのだ。
フルスロットルで走る。峠のワインディングを楽しむ。
林道のガレ道はなんとも辟易するが走破するのもわるくない。
だけれども。
不在証明が邪魔をするはずなのに。どうしてこんなにのびのびとはしれるのだろうか?
「おとーさま。おかーさま。おにーさま。お庭に綺麗なお花が咲いたの。もう春なんだね」
遠い記憶と願いの光景。
クラリーチェ・カヴァッツァはほのあたたかい夢に揺蕩う。
家族がひとつの夕食をかこんでわたしはかーさまのお料理を手伝おうとする。
そんなあたりまえの、普通の光景。それが幸せだった。
物心付く前に死に別れたからそんな記憶は持ちえないけど。『ちいさな』少女はこの微温湯の夢に揺蕩う。
セララはアイドルとしてステージで歌う。
スポットライトが熱くボクを照らす。光るサイリウムの色は私のカラーのシャインイエロー。観客は大喜びで声援を送る。セララはその声に手を大きくふる。
不思議と観客の顔は全部同じだ。全部ぜんぶ。同じ。
ライブははねる。
少女は謳い始めた。彼女を主人公にした作品のテーマ曲を。
ヴェノム・カーネイジは寂しかった。
だからみんなみんな老若男女も敵も味方も強いも弱いも愛も憎悪もなにもかも全部殺して屍山血河。
積み上げた屍山は高くそびえ立って。そのうえで自分は殺される。
そんな夢をみるはずだったのに。
みんなみんな幸せそうで。幸せそうで。自分はそこで笑ってる。
なんだその嘘くさい夢は。そんなのが幸せなんて――。
みとめない。みとめたくない。
シャルレイス・スクァリオは有名な冒険者だ。
誰かを守って格好良く戦っている。英雄譚の、サーガの主人公のような。
蒼光の勇者なんてちょっと恥ずかしい二つ名でよばれて。
あたりまえだ、彼女がヒーローになることで不幸になるものなんて誰もいない。
自分は勇者だから!
けれど。なぜだか心の何処かで生まれる違和感を拭うことは出来なかった。
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインは恋人と小さな診療所を開いていた。恋人の彼が作ったエッグマフィンは絶品だ。少量のケチャップが味に彩りをくわえる。
死んだはずの妹もちょくちょくとちょっかいをかけにくる。生意気なそいつのほっぺをぺちんとたたく。触れる。生きている。ああ、妹が生きているのだ!
けれど、なぜだかその頬は暖かくはなかった。
サンディ・カルタは王様だ。
ベッドで目覚めれば美人の美女が水差しを渡すのは自分だと喧嘩をする。
朝食を取ったらあとは影武者にまかせて諸国漫遊。
広い世界と還る場所と、そして美人のお姉ちゃん。最高だ。
「でもいいのかい? 狭き世界の王になんて価値はないんだ」
元の世界の海岸線をあるく。
ランドウェラ=ロード=ロウスは母と父の後ろを歩く。
記録係の青年は幸せそうなその姿を記録していく。
まるで人のように、ひとのいとなみを。
自分と同じ顔の父は自分と同じく動かない右手を母とつないでいる。武器しかもたない母の手は父の手で埋まっている。
幸せだ。ああなのになぜ打ち寄せる波はこんなに冷たいのだろう?
家のなかにはウィリアム・M・アステリズムの家族が笑っている。
家を出れば友人たちが笑っている。
この世界ではもう何も喪われない。全部ぜんぶここには揃っている。
それが自分の幸せだと思う。そう、満ち足りたそんな幸福。
だというのに、決定的な何かが足りない気がしてならない。
イシュトカ=オリフィチエはあったはずのものを失っていた。
甘いソネットも。辛辣なアネクドートも。そして言葉をも。
だからといって見たこと聞いたことや感じたことは失ってはいない。
太陽と土と風と水そして今日と絆を結んだ主人を愛している。
愛ある愚者として誰かに自身を捧げることに幸せを感じている。
私はイヌである。
その事実にイシュトカは妙なシネクドキを感じていた。
●あの殺人鬼は目覚めぬままに凶行に及んだのだろうか
あの事件は今も続いている。
マルク・シリングはそう確信しながら微睡みに揺蕩う。
今は義兄の妻になったはずのあの人は、自分の妻になっている。
他愛のない、穏やかな日々の愛のハーモニー。
それは感傷だ、マルクはそう思った。其の先にあるもののしっぽを掴むためにマルクは意識を深いところに向ける。深く、深く。
黄色い月が浮かぶ夜の帳の其の先に。黒杣・牛王は恋人に出会う。
牛王が混沌の世界の御伽噺を恋人に告げた。
胡蝶の夢ってしっている?
熱心に自分の言葉を聞いていた恋人が突然いたずらめいてささやいた。
確か自分は蝶の夢のなかの存在ではないかという思考実験のお話だ。
恋人は微笑む。其の笑顔が蠱惑的で、牛王は考えることをやめて恋人を抱きしめる。別れが近いことを惜しみながら
ボルカノ=マルゴットは赤く巨大な翼をはためかせて空を飛ぶ。
滅びのアークの破滅を回避した世界は美しくて。
少しの危険はないとはいえないけれど、世界が喪われる大きな危険はなくなった。
愛しい人々の営みを空からながめるのはとても幸せに思う。
元の世界に戻る手段もあった、だけれどもボルカノはずっとここにいる。
それは何気ない毎日。
ゴリョウ・クートンは警邏しながら歩けば知り合いが話しかけてくる。自分はそれに笑って答える。
暴れる酔っぱらいなんざ日常茶飯事。残念美人のエルフは今日もトラブルを呼び込んで。
後腐れなく笑い合って明日がくる。
馴染みの串焼き屋の栄養特価の串焼きを頬張る。なぜか、それが美味しく感じた。
いってきますと手をふって。アルファード=ベル=エトワールは遊びにでかける。
嗚呼、今日はたのしかったと赤い空に伸びる自分の影の長さが楽しかった今日への未練に見えて笑えてくる。
晩ごはんができているはずだ。アルファードはスキップを踏みながら家に帰る。
『 』
誰かが自分の名前を呼んだ。
人柱の少女は呼ばれるはずもない其の名前を呼んだ誰かに嬉しそうに答えた。
思い出は桜の下の野点傘の下。
穏やかな日差しの下であのひとを膝枕。蜻蛉は柔らかい髪を梳く。
心配せんといて。
蜻蛉は告げる。それは決して強がりではない。彼のことを思えば確かに胸は苦しくなる。
それでもへいき、じぶんはへいきだと思いたかった。
大丈夫そうやな。
約束やもの。
じゃあいかねえと。
うん、もうええよ。
言葉が空をすべる。目を伏せ、そして開けば桜嵐。
一度だけ、よく知っている掌に頬を撫でられた気がした。
それは紅蓮と黒煙。
息が詰まる用な其の空間。覚えている。死に際。
求めるのは自らを焼き尽くす赤い舌。クーア・ミューゼルは炎に揺れる。
燃えて消えてなくなって。そうしたら何かがわかると思った。
でもそうした後どうなってほしいのかわからずに曖昧な気持ちになれば、赤い炎は消えていく。最初からなかったかのように。
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルクはほろ酔い気分で隣の誰かにもたれかかる。
其の人は文句をいいながらも付き合ってくれる。
赤い瓶青い瓶、緑に茶色に桃色に。いろいろな瓶が転がっている。お酒だらけの幸せな幻想的なそこ。一瞬だけ綺麗な髪がみえた。だけれども其の色を思い出せない。どうしても、思い出せない。
そこには数々の本の山。赤羽・大地はその知識の海に飛び込む。
それは読んだことのない未知の本。かつて感銘をうけた既知の本。
知識と物語は自分を豊かにしてくれる。見たこともないことを教えてくれる。
ただシ、ちゃんと起きられるように頑張れヨ、『大地』?
誰かのエールが耳に残っている。だから答える。
そうだな、『赤羽』。いつまでも夢に居られない。
懐かしい声が聞こえる。
ポーおきて。ごちそうがまっている。
お母さんとお父さんと弟の呼び声。ノースポールは今行く! と食卓に向かう。
そこには家族と恋人と、そして大好物のデザートと。
笑って夢と気づく。こんな時間などどこにもないのだと。だけどだから。
この夢が醒めないでほしいと少しだけ誰かに願ったら。
ほろりとしずくが頬を滑った。
悪鬼・鈴鹿は人間だ。
故郷にかえれば父と母。
なにをしていたの? と聞かれたからこたえる。
よろず屋で何でも屋をやっていると。先輩はかっこよくて友達もいて。
父様にそれは恋人かと拗ねられた。ちがうっていっても聞いてくれない。母様もなんとか言ってと言っても笑ってたすけてくれない。
そんなあるわけもない眩しい夢。
炎堂 焔は母親に起こされる。あれ? 別の世界に呼ばれて。
気の所為だったのかな?
階段を降りれば朝餉のいい匂い。お母様のお味噌汁はとても美味しい。いつか同じものが作れるようになるかな?
神社のお勤めを果たして、いつもの毎日。そういうのが幸せだとおもう。
おもうのに、なにかボタンをかけちがえたような違和感がなくならない。
おかえりなさい、おとうさん、そう呼ばれてアクセル・オーストレームは微笑む。
妻と娘と息子。三人が自分を迎えてくれる。嬉しかった。
絵に描いたような幸せな家族。
たまに起業した友人と酒を酌み交わす。そんな何気ない優しい世界がそこにある。
だけれども、なぜかアクセルはただいまと言えない。
それは欲した世界。だけれども決して帰ることのできない世界だと知っているから。
天之空・ミーナは目の前の光景をみて思う。
やっぱりこの頃が一番幸せだったのだ、と。
従姉妹と師匠と馬鹿だけど偉大な母。そして、唯一生涯たった一人の比翼のあのひと。
たくさんの戦場があった。だけどみんながいれば乗り越えることができた。
甘い夢は胸の痛みを呼び覚ます。だけれども。もうすこしこの優しい時代に揺蕩うことをおんなは思う。
最愛の妹が笑っている。レイス・ヒューリーハートが鬼となるまえの優しい時間。
血の繋がりはないけれど、ずっと一緒にいるとちかった嘘つきの妹。
記憶にあるその言葉をもらった次の日に村は滅びる。
だというのに、その日は無事に過ぎ去る。妹は笑っている。
もしかすると、村が滅びたことも、妹がいなくなったことが悪い夢だったのかも知れない。優しい世界は染み込むようにレイスの心を包み込む。
何の変哲もない其の夢こそが幸せなのだろうと思う。
本を読んで、街をあるいて。ワルド=ワルドはお気に入りの店で食事をすればローレットに来る前に一緒にいた其の人に出会う。
他愛ない話に冗談も添えて。
言ってみれば現実でもおなじようなことはあるだろう。全て世はこともなし。そんな幸せこそが尊いものなのだ。
でも。
不思議とその知人の顔は知っているはずなのに白く塗りつぶされていた。
それは藤堂夕が母親と暮らすようになって一年後。
夕との距離の縮まらない母親が企画したひとつの思い出。
夕は母親と初めてつくるバタークッキーの思い出。あのときお母さんはたくさん話しをしてくれた。他愛のない日常会話。
私もおかあさんに「いっぱいおはなしをした」。
あれ? そうじゃなかったかもしれない。たくさんクッキーができたことは覚えている。でも、其の味はなぜか思い出せなかった。
リゲル=アークライトは恋人の住む世界の夢。
恋人が女神と再会するのを眺める。
素敵な方だった。そして彼女の関係する神にあう。
彼女を俺にくださいと告げれば、恋人は恥ずかしそうににしていた。
それがおかしくて笑う。
リゲルは告げる。ともに世界のすべてを見て回ると。
幸せな未来を築きあげると。
ポテト チップは常春の聖域に還る。
自然以外はなにもない其の場所が恋人に気に入ってもらえるといいなと思う。
少女のような女神に急にいなくなったことをわびて、だきしめる。
太陽の香りがする。
安堵する兄に撫でられていたら、あろうことか恋人がとんでもないことをいいはじめる。いやそのつもりだったけれど。
恥ずかしくなってくる。
恋人の言葉に合わせて一緒に生きていくと決めたと告げる。
恋人が手をにぎる。
でも。
『女神様たちがどんな答えをかえしたか覚えていない』
『兄神様と女神様がどんな顔をしていたかおぼえていない』
●そして。
かれらイレギュラーズは現の今。
でもよく周りをみてみて。眠りに付く前と貴方は同じなのかしら?
ねえ、貴方は本当にちゃんと「起きているの?」 それとも夢のまま?
悪魔の尻尾。ピルグリムテイル。
嫉妬してるのはだれかしら?
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ピルグリムテイル第二幕のご参加ありがとうございます。
今回の結果については事前に菖蒲GMとは相談してあります。
夢も悪夢もプレイングを頂いたときに二人でほんとに皆さんからいいプレイングをいただいてGM冥利に尽きると喜んでおりました。
菖蒲GMのご入院により続きは菖蒲GMが復帰された頃になると思います。
知らせを御本人より聞いたときにはとてもびっくりしましたが、代筆の任を戴けたことは光栄に思っています。
菖蒲GMの早い快癒を祈っています。
とても素敵な考察の貴方と深い部分に到達した貴方にはすこし多めにレベルをつけておきました。
楽しんでいただけますと嬉しく思います。
GMコメント
やめぬめのやめのほう、菖蒲です。
苹果の果実(アンブロジア)。
前回は『朱金メトロノウム』『錆銀トロイメライ』という導入がございましたが未読でも問題ございません。
【『朱金の苹果の夢』『錆銀の苹果の悪夢』は排他処理がかかっております。
両方に参加することは出来ませんのでご注意ください】
皆様にはこの怪し気な苹果を食べていただきます。
あなたが見るのはとびきり幸福な夢なのです。
醒めてしまうのが惜しくなってしまう様な、そんな夢。
旅人ならば元の世界で過ごしているかもしれませんし、死した誰かといるかもしれない。
美味しいものを食べたり、なんてことない日常を過ごしたり――恋人同じ夢を見ているかもしれません。
・プレイングが不幸なものであっても、幸福な夢と変貌します。
・プレイングでは幸福な夢を描いてください。
・誰かと示し合わせた夢であれば、ID指定を行う様にしてくださいね。夢の世界はいともたやすく逸れてしまいます。
***注意***
この依頼の返却と同時に
『悪夢レベル1』
という称号が配布されます。この称号の意味は今はまだわかりません。
夢で深淵に深く関わることができたPCさんにはこのレベルの数値が上昇する可能性があります。
また今後この称号をお持ちの方はセットした上で一連の依頼に参加していただけますと、悪夢レベルの上昇があります。
ぬめGMのものでもやめのものでも構いません。同じとして扱います。
やめ側とぬめ側を行ったり来たりしてもらってもかまいません。
セットされてなかった場合はレベルは追加されませんのでご注意ください。
どうぞ、よろしくお願いします。
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